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~文献紹介~
 小児における生命を脅かす胸痛に対するスクリーニングの効果

Effectiveness of Screening for Life-Threatening Chest Pain in Children
       Susan F. Saleeb, Wing Yi V. Li, Shira Z. Warren and James E. Lock

     Pediatrics 2011;128;e1062; originally published online October 10, 2011;
          PEDIATRICS Volume 128, Number 5, November 2011
背景
小児の胸痛は一般小児科、救急部門、小児循環器科でよ
くある訴えであり、成人では心臓の問題のサインである
のと異なり、小児の胸痛の原因のほとんどが筋骨格系・
消化器系・肺・心因性で、心源性はきわめて稀である

小児の胸痛に対して、過剰に患者・親・医師が懸念を
もち医療資源が利用されるが、非常にまれに起こる心
源性の突然死が大きく報道されることで永遠にぬぐわ
れない。
           目的
胸痛を主訴に循環器科を受診し、心原性と診断されな
かった小児の、心原性の突然死の発生率を調査。
方法

・ 2001.1.1 ~ 2009.12.31 (9 年間)

・ボストン小児病院を胸痛を主訴として受診した 6歳以上
の
 小児 3700 人(既知の重症先天性心疾患は除外)

・人口統計、臨床的特徴、医療資源の利用(検査)、診断名
について後方視的に検討。

・ National (前者; CDC, Social security death index を用いて調査
           death index, 後者;社会保障庁ともに 92-98% の
。          精度で死者をみつけることができると考えられて
         いる)
病歴について

 胸痛 : 運動時の胸痛かどうか


既往歴 : 炎症性疾患・悪性疾患・血栓傾向・膠原病・喘息・心疾患・
     不安 / うつ         (川崎病)

 家族歴 : 不慮の突然死・肺高血圧・心筋症・血栓傾向・
 不整脈・
       膠原病・心疾患
初期の所見について

身体所見 :病的心雑音、異常 II 音、ギャロップ、摩擦音、
        stigmata of connective tissue disease


  心電図 : 全患者に施行
結果1

患者 : 3700 例
年齢 : 中央値 13.4 歳、 7 ~ 22.3 歳
フォローアップ期間 : 中央値 4.4 年( 0.5 ~ 10.4 年)
              17,886 人年


運動時の胸痛は 1222 例( 33 %)
結果2
結果3

施行された選択的検査
 ・心エコーは 1410 例( 38%) 、運動時胸痛の 696/1222 例
( 57% )で施行
   うち所見あり 168/1410 ( 11.9% )、さらに胸痛と関連しそう
なもの 0.8%
 ・運動負荷心電図は 769(20.8%) 、陽性所見は1例のみで偽陽性
 ・ホルターは 491(13.3%) 、リズム不整は 13 例(単発の PVC は除
外 ?)
 ・ MRI 23 、エコー診断の確認として施行
 ・ MIBI シンチ  11 、異常なし
結果4

循環器科フォローアップとなったのは 263 名 (7%)


心原性の胸痛と推定されたものは 37 例( 1% )
 その他は原因不明 52% 、筋骨格系 36% 、肺 7% 、胃腸系 3% 名、不安による
もの 1%


死亡は 3 例で 2 例は自殺、 1 名はダンスパーティー中の後腹膜出血であった
(非心原性だけでなく、心原性の胸痛も心臓突然死は 0 であった)
考察


心原性突然死の発生率は推定 0.6-6.2 人 /10 万
主な原因は、
  左心系閉性疾患( HCM , AS など ) 、
  冠動脈異常(冠動脈起始異常、冠動脈瘤など)
  悪性不整脈( VT±QT 延長症候群など)
運動中により起こりやすい
ボストン小児病院の例で..
             .
      心原性突然死となりうるものと陽性所見・病歴



DCM  -労作時胸痛、家族歴あり
HCM  -労作時胸痛、 ST-T 変化、心機能
頻脈性不整脈 - 13/16 は運動時胸痛、 14/16 は動悸を伴う、
( VT 2 例ほか)
            通常心電図の異常は 4/16 、 2/16 は失神。 QT 延
長はなし
心筋炎 -安静時胸痛であるが、全 4 例が先行して病的状態で救急外来で
診断
       心電図異常3、心機能低下1
Single CA  - 運動時の胸痛
「結論」

ボストン小児病院における 9 年間、 3700 人(約 18000
人年)の検討では、胸痛の訴えで帰宅した小児のうち
、心臓疾患に起因する死亡はゼロであった。


今後の研究の焦点は、胸痛の評価ガイドラインを確立
し (担当医師の裁量によらず)、過剰な不安の緩和、
不必要な紹介・検査の削減につなげることである。
Precordial catch 症候群 ( Texidor の疼き)
  Precordial Catch 症候群 ( Texidor の疼き)は、成人よりも小児と若者における胸痛の訴えの
一般的な原因のひとつである。非常に強い鋭い痛みで、典型的には左胸部に出現し、呼吸時
に悪化する。症状は、だいたい数秒から数分の持続で(数回の呼吸で治まることもある)、
完全に消失する。
1955 年に Miller と Texidor によって最初に報告され、 10 例の患者で、 1 人が Miller 自身であっ
た。 1978 年に Sparrow と Bird が、 45 例の報告し、おそらくもっと頻度が高いだろうと述べ
ている。 1981 年の Pickering 、 1989 年の Reynolds によって、小児の症例報告もされた。
【症状】
安静時にしばしば起こる突然発症の左前胸部痛。痛みは局所化しており、心筋梗塞のような
放散痛はない。深呼吸で悪化することがある。症状は、数秒から数分の持続であり、症状が
ある間、患者にその場で止まって浅く呼吸することが多い。発症の頻度は、毎日であったり
、時々であったり、年に数回であったりと様々である。痛みは強さも様々で、軽い鈍い疼痛
から瞬間的な視力喪失を生じるほどの激痛のこともある。これらは、ある筋肉群の局所的な
痙攣と考えられている。
【治療】
身体所見と心電図
クリック       LVH   93(2.5%)
漏斗胸        ST 変化  27(0.7)
心雑音        RVH   23(0.6)
異常 II 音    期外収縮  11(0.3)
摩擦音        CRBBB   8(0.2)
関節可動域亢進    心房肥大  3(0.08)
           2度 AVB   1(0.02)




     日本の胸痛について検討したもの
     は?「心臓」?
訳1
目的 :探究 決定 循環器科を退院した非心臓と推測される胸痛患者の中での心臓突然死の発生率
方法 >6y、 2001.1-2009.12 、 Children’s Hospital Boston に紹介された胸痛のある患者 を検討-人口統計的特徴、臨床的特性、資源利用( resource utilization )、推定診断。
生命を脅かす胸痛に対するスクリーニングの効果
( 目的 ) 心臓疾患専門クリニックを、心原性と診断されなかった胸痛で退院した児の、心原性の突然死の発生率を調査
( 方法 )2001.1-2009.12  にボストン小児病院を受診した>6yのうち、胸痛を主訴としたものの人口動態的特徴、臨床的特徴、財源の利用、診断名について再検討した。
患児は US national death index,social security death index (米国社会保障庁の死亡者録)を用いて調査した。
( 結果 ) 全部で 3700 名の胸痛の患児 ( 中央値 13.4 歳、 7 ~ 22.3 歳 ) を再検討した。フォローアップ期間は中央値 4.4 年( 0.5 ~ 10.4 年)で全部で 17,886 患者・年のフォ
ローアップデーターとなった。労作時の胸痛は 1222 例( 33 %)で失神を伴ったものが 15 例あった。心原性のものは 37 例で残りの 3663 名( 99 %)は、原因不明 1928
名、筋骨格系 1345 名、肺 242 名、消化器系 108 名、不安によるもの 34 名、薬剤によるもの4名であった。救急部門の受診は 670 名( 18 %)あり、 263 名は胸痛に関し
て心臓疾患フォローアップ外来の受診があった。死亡は3名で2名は自殺、1名は特発性の後腹膜出血であった。
( 結果 ) 胸痛は小児ではよくみられる症状だが、心臓原性のものはまれである。 10 年間の心疾患外来の受診 ( 約 18000 患者 . 年 ) を再検討してみても、クリニックを退院
した患児で結果的に心疾患により死亡した者はいなかった。


小児の胸痛は一般小児科、救急部門、小児循環器科でよくある訴えであり、学校や運動を長期に休むことにつながる・・患者,親,医師の不安から。成人には心臓の問題
のサインであるのとちがい、数多くの研究が 小児の胸痛の原因のほとんどが良性特発性で、骨格筋・胃腸・肺・心因性で、心源性はきわめて稀である。 Pantell らが青少
年の胸痛の 44% が心臓発作と関連があると報告したが、専門でない大衆のこの誤った解釈が、頻繁な医学的検査や医師が親の不安をとる難しさの原因となっている。この
誤解は、本当にまれに起こる突然心臓死という悲劇が大きく報道されることで永遠にぬぐえない。
この研究の目的は、心源性でないと診断されて帰宅した胸痛小児患者が、結果的に心臓死したかどうかを調査するものである。多くの検査をしても心源性の率は低いので
、我々のグループは  standardized clinical assessment and management plans (SCAMPs) という形でガイドラインを作ったー適切な資源利用の促進と診断の正確性を維持あるいは改善し
ながら不要な検査を減らすために。
方法: 2001.1-2009.12 ボストン小児病院で、患者は胸痛の最初の外来(>6y)の請求票の ICD-9 で分類される。
評価と診断はこの研究のときはまだ標準化されていなくて、循環器科の判断もまだ。
患者は、他院での胸痛精査で心臓は異常なしとされていた者,(不完全な記録),重症心疾患がわかっている者,全身疾患の検査の一環や心臓疾患の家族歴から検査され
たもの は除外して、レトロスペクティブに調査。
吟味:人口統計的特徴、臨床的特性、循環器検査、推定診断、フォロー受診とともに分析。
運動に胸痛が優勢になるか。 HR が明らかに上昇する強い運動で優勢になるものを運動時胸痛「 ExertionalCP 」と定義。階段や歩行は強い運動ではない。炎症性疾患・悪性
疾患・過凝固状態・膠原病・喘息の病歴は関連ありと考慮した。家族歴は不慮の突然死・ PH ・心筋症・過凝固・不整脈・膠原病・ CHD を考慮。加えて家族歴に早期の冠
動脈疾患も記録。
身体所見は病的心雑音、異常 II 音、ギャロップ、摩擦音、膠原病の傷? stigmata をふるいにかけた。
ECG は全患者に施行、循環器科の判断でさらに心エコー・ MRI ・運動負荷テスト、シンチ( MIBI) 、ホルターが追加された。生存状態と死因は、 National death
index ( CDC )と Social security death index の両方で確認した。
統計:最初の結果は心臓に関連した死亡。臨床症状と心臓検査の数が数と割合で表した。可変する値は中央値とレンジで表した。
集団: 4165 人の患者が胸痛に該当、 3700 人が研究対象。除外になったのは既知の心疾患( 164) 、ミスコード( 123) 、不完全な記録( 107) 、全身疾患検査の延長 (38) 、
正常であったが 2nd オピニオンのため (33) 。
中央値 13.4 歳( 7 ~ 22.3 歳 ) を再検討した。フォローアップ期間は中央値 4.4 年( 0.5 ~ 10.4 年)で全部で 17,886 患者・年のフォロー。1年に 235-500 人の患者が紹介さ
れ増加傾向である。
訳2
病歴: Minor CHD   42(1.1%) (病歴聴取で)
家族歴(両親 / 兄弟): DCM6   HCM5   Noncompaction2   ARVC1 、、突然死 13
身体所見・心電図:クリック 52(1.4%), 漏斗胸 42, 心雑音 31, 異常 II 音 12, 摩擦音 9, 関節可動域亢進 5
LVH   93(2.5%),ST 変化  27(0.7),RVH   23(0.6), 期外収縮  11(0.3),CRBBB   8(0.2), 心房肥大  3(0.08), 2度 AVB   1(0.02)
選択的検査:心エコー 1410 ( 38%) 、うち異常なし 1242(88.1%) 、胸痛と関連する可能性がある所見 11(0.8%) ・・・ SingleCA3 、心嚢液5、心機能低下(心筋炎 )1   HCM1
DCM1 。残り 157 は胸痛と関連しないと思われる偶然発見のもの。 MRI23 件はエコー診断の確認のため。運動時胸痛の 696/1222(57%) にエコー検査。
運動負荷テスト( EST) は 769(20.8%) 例に行い変化がみられたのは1例のみで偽陽性と考えられた;運動時胸痛と動悸と EST で ST 低下の症例で、心エコーと MIBI シン
チで異常なかった。
90 例の閉塞性 / 拘束性を含む呼吸器系。高血圧6例、 QT 延長2例はほかの検査で異常なし。1例は安静時胸痛で ST 上昇し運動負荷は耐えられず MIBI で側壁虚血の疑
い(フォローの途中で途切れる)。
MIBI は他に 17 例に行ったが異常なし。
ホルター 491 ( 13.3%) 、リズム不整は 13/3700 ( 0.4%) で、 SVT 9、 AT 1、 NSVT 1、 VT 1(薬剤負荷では誘発できず)、 PVCs42% 1例でエコー np 、 11/13 は動悸
の訴えあり。
診断:推定される胸痛の原因(図2)。筋骨格系(肋軟骨炎, Precordial catch 症候群,不特定の胸壁痛)。消化器系( GER 、胃炎、食道炎、便秘)。肺(主に喘息ほか胸膜
痛、呼吸器感染症、過換気)。心臓由来は37( 1%) ー心外膜炎は安静時胸痛で体位変換で増強しあごに放散痛あり (n=3 )摩擦音 (n=3 )心電図変化 (n=6 )心エコーで心
嚢液 (n=4 )。心筋炎も安静時で先行する感染 (n=4 )、 ectopy on examination(n=2 )心電図変化 (n=1 )エコー心機能低下で1週間で改善 (n=1 )。
SingleCA のうち 2/3 は安静時胸痛で心電図は異常なし。
心臓由来の胸痛と判断される患者の大多数は示唆的な症状(とくに運動時の胸痛)があり、病歴や家族歴、検査の異常、更なる検査を要するような心電図異常と関連があ
る。
最初の病歴、身体所見、心電図所見をもとに現在 CP SCAMP を実施している。
先に述べたように、最初のスクリーニング陽性例の大多数には心エコーを勧め、陰性例ではエコーや負荷試験などの検査を省くように勧める。
今回の 3700 例では、ほぼ3分の1が運動時の症状で、10のうち1がほかの関連性のある病歴や身体所見、心電図所見があった。 CP SCAMP をこれに適用するとすると
、臨床的に関連性のある陽性所見にし、誤った診断を減らすために集団を再分配したほうがよい。循環器医による CP SCAMP はコストを減らしうるが、一般小児科医によ
る modify した CP SCAMP が最も効率的であるべきなので、計画が進行中である。理論上は、効果的なスクリーニングされれば 50% 以上は循環器科に紹介する必要はない。
 この研究は疑わしいが過少に評価された所見も明らかにする。 2/3700 の自殺があった。うつや不安の病歴は 15 %しかなかったが過小評価と思われる。・・・
 この研究にはいくつかの限界がある。後方視的検討で、患者の症状・病歴・身体所見の記録に基づいている。胸痛に対して異なるアプローチで医療提供者の判断でいろ
んな検査がされている。我々は生命を脅かす疾患を含む心疾患を見逃している可能性もある。さらに死亡につながる重大な心疾患をとらえられていないかも。
National death index (もう一方も)は 92-98% の精度で死者をみつけることができると考えられているので、見落としは少ないと考えられる。
挿入・・・考察
推定の心原性突然死は 0.6-6.2 人 /10 万と言われている。主な原因は HCM 、冠動脈異常、悪性不整脈、運動中により多い。
DCM  労作時胸痛、家族歴
HCM  労作時胸痛、 ST-T 変化、心機能
頻脈性不整脈  13/16 は運動時胸痛、 14/16 は動悸を伴う、通常心電図の異常は 4/16 、  2/16 は失神
除脈なし

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  • 1. ~文献紹介~ 小児における生命を脅かす胸痛に対するスクリーニングの効果 Effectiveness of Screening for Life-Threatening Chest Pain in Children Susan F. Saleeb, Wing Yi V. Li, Shira Z. Warren and James E. Lock Pediatrics 2011;128;e1062; originally published online October 10, 2011; PEDIATRICS Volume 128, Number 5, November 2011
  • 3. 方法 ・ 2001.1.1 ~ 2009.12.31 (9 年間) ・ボストン小児病院を胸痛を主訴として受診した 6歳以上 の  小児 3700 人(既知の重症先天性心疾患は除外) ・人口統計、臨床的特徴、医療資源の利用(検査)、診断名 について後方視的に検討。 ・ National (前者; CDC, Social security death index を用いて調査 death index, 後者;社会保障庁ともに 92-98% の 。 精度で死者をみつけることができると考えられて いる)
  • 4. 病歴について 胸痛 : 運動時の胸痛かどうか 既往歴 : 炎症性疾患・悪性疾患・血栓傾向・膠原病・喘息・心疾患・      不安 / うつ (川崎病) 家族歴 : 不慮の突然死・肺高血圧・心筋症・血栓傾向・ 不整脈・       膠原病・心疾患
  • 5. 初期の所見について 身体所見 :病的心雑音、異常 II 音、ギャロップ、摩擦音、         stigmata of connective tissue disease 心電図 : 全患者に施行
  • 6. 結果1 患者 : 3700 例 年齢 : 中央値 13.4 歳、 7 ~ 22.3 歳 フォローアップ期間 : 中央値 4.4 年( 0.5 ~ 10.4 年)               17,886 人年 運動時の胸痛は 1222 例( 33 %)
  • 8. 結果3 施行された選択的検査  ・心エコーは 1410 例( 38%) 、運動時胸痛の 696/1222 例 ( 57% )で施行    うち所見あり 168/1410 ( 11.9% )、さらに胸痛と関連しそう なもの 0.8%  ・運動負荷心電図は 769(20.8%) 、陽性所見は1例のみで偽陽性  ・ホルターは 491(13.3%) 、リズム不整は 13 例(単発の PVC は除 外 ?)  ・ MRI 23 、エコー診断の確認として施行  ・ MIBI シンチ  11 、異常なし
  • 9. 結果4 循環器科フォローアップとなったのは 263 名 (7%) 心原性の胸痛と推定されたものは 37 例( 1% )  その他は原因不明 52% 、筋骨格系 36% 、肺 7% 、胃腸系 3% 名、不安による もの 1% 死亡は 3 例で 2 例は自殺、 1 名はダンスパーティー中の後腹膜出血であった (非心原性だけでなく、心原性の胸痛も心臓突然死は 0 であった)
  • 10. 考察 心原性突然死の発生率は推定 0.6-6.2 人 /10 万 主な原因は、   左心系閉性疾患( HCM , AS など ) 、   冠動脈異常(冠動脈起始異常、冠動脈瘤など)   悪性不整脈( VT±QT 延長症候群など) 運動中により起こりやすい
  • 11. ボストン小児病院の例で.. . 心原性突然死となりうるものと陽性所見・病歴 DCM  -労作時胸痛、家族歴あり HCM  -労作時胸痛、 ST-T 変化、心機能 頻脈性不整脈 - 13/16 は運動時胸痛、 14/16 は動悸を伴う、 ( VT 2 例ほか)             通常心電図の異常は 4/16 、 2/16 は失神。 QT 延 長はなし 心筋炎 -安静時胸痛であるが、全 4 例が先行して病的状態で救急外来で 診断        心電図異常3、心機能低下1 Single CA  - 運動時の胸痛
  • 12. 「結論」 ボストン小児病院における 9 年間、 3700 人(約 18000 人年)の検討では、胸痛の訴えで帰宅した小児のうち 、心臓疾患に起因する死亡はゼロであった。 今後の研究の焦点は、胸痛の評価ガイドラインを確立 し (担当医師の裁量によらず)、過剰な不安の緩和、 不必要な紹介・検査の削減につなげることである。
  • 13.
  • 14. Precordial catch 症候群 ( Texidor の疼き)   Precordial Catch 症候群 ( Texidor の疼き)は、成人よりも小児と若者における胸痛の訴えの 一般的な原因のひとつである。非常に強い鋭い痛みで、典型的には左胸部に出現し、呼吸時 に悪化する。症状は、だいたい数秒から数分の持続で(数回の呼吸で治まることもある)、 完全に消失する。 1955 年に Miller と Texidor によって最初に報告され、 10 例の患者で、 1 人が Miller 自身であっ た。 1978 年に Sparrow と Bird が、 45 例の報告し、おそらくもっと頻度が高いだろうと述べ ている。 1981 年の Pickering 、 1989 年の Reynolds によって、小児の症例報告もされた。 【症状】 安静時にしばしば起こる突然発症の左前胸部痛。痛みは局所化しており、心筋梗塞のような 放散痛はない。深呼吸で悪化することがある。症状は、数秒から数分の持続であり、症状が ある間、患者にその場で止まって浅く呼吸することが多い。発症の頻度は、毎日であったり 、時々であったり、年に数回であったりと様々である。痛みは強さも様々で、軽い鈍い疼痛 から瞬間的な視力喪失を生じるほどの激痛のこともある。これらは、ある筋肉群の局所的な 痙攣と考えられている。 【治療】
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  • 16. 身体所見と心電図 クリック LVH   93(2.5%) 漏斗胸 ST 変化  27(0.7) 心雑音 RVH   23(0.6) 異常 II 音 期外収縮  11(0.3) 摩擦音 CRBBB   8(0.2) 関節可動域亢進 心房肥大  3(0.08) 2度 AVB   1(0.02) 日本の胸痛について検討したもの は?「心臓」?
  • 17. 訳1 目的 :探究 決定 循環器科を退院した非心臓と推測される胸痛患者の中での心臓突然死の発生率 方法 >6y、 2001.1-2009.12 、 Children’s Hospital Boston に紹介された胸痛のある患者 を検討-人口統計的特徴、臨床的特性、資源利用( resource utilization )、推定診断。 生命を脅かす胸痛に対するスクリーニングの効果 ( 目的 ) 心臓疾患専門クリニックを、心原性と診断されなかった胸痛で退院した児の、心原性の突然死の発生率を調査 ( 方法 )2001.1-2009.12  にボストン小児病院を受診した>6yのうち、胸痛を主訴としたものの人口動態的特徴、臨床的特徴、財源の利用、診断名について再検討した。 患児は US national death index,social security death index (米国社会保障庁の死亡者録)を用いて調査した。 ( 結果 ) 全部で 3700 名の胸痛の患児 ( 中央値 13.4 歳、 7 ~ 22.3 歳 ) を再検討した。フォローアップ期間は中央値 4.4 年( 0.5 ~ 10.4 年)で全部で 17,886 患者・年のフォ ローアップデーターとなった。労作時の胸痛は 1222 例( 33 %)で失神を伴ったものが 15 例あった。心原性のものは 37 例で残りの 3663 名( 99 %)は、原因不明 1928 名、筋骨格系 1345 名、肺 242 名、消化器系 108 名、不安によるもの 34 名、薬剤によるもの4名であった。救急部門の受診は 670 名( 18 %)あり、 263 名は胸痛に関し て心臓疾患フォローアップ外来の受診があった。死亡は3名で2名は自殺、1名は特発性の後腹膜出血であった。 ( 結果 ) 胸痛は小児ではよくみられる症状だが、心臓原性のものはまれである。 10 年間の心疾患外来の受診 ( 約 18000 患者 . 年 ) を再検討してみても、クリニックを退院 した患児で結果的に心疾患により死亡した者はいなかった。 小児の胸痛は一般小児科、救急部門、小児循環器科でよくある訴えであり、学校や運動を長期に休むことにつながる・・患者,親,医師の不安から。成人には心臓の問題 のサインであるのとちがい、数多くの研究が 小児の胸痛の原因のほとんどが良性特発性で、骨格筋・胃腸・肺・心因性で、心源性はきわめて稀である。 Pantell らが青少 年の胸痛の 44% が心臓発作と関連があると報告したが、専門でない大衆のこの誤った解釈が、頻繁な医学的検査や医師が親の不安をとる難しさの原因となっている。この 誤解は、本当にまれに起こる突然心臓死という悲劇が大きく報道されることで永遠にぬぐえない。 この研究の目的は、心源性でないと診断されて帰宅した胸痛小児患者が、結果的に心臓死したかどうかを調査するものである。多くの検査をしても心源性の率は低いので 、我々のグループは  standardized clinical assessment and management plans (SCAMPs) という形でガイドラインを作ったー適切な資源利用の促進と診断の正確性を維持あるいは改善し ながら不要な検査を減らすために。 方法: 2001.1-2009.12 ボストン小児病院で、患者は胸痛の最初の外来(>6y)の請求票の ICD-9 で分類される。 評価と診断はこの研究のときはまだ標準化されていなくて、循環器科の判断もまだ。 患者は、他院での胸痛精査で心臓は異常なしとされていた者,(不完全な記録),重症心疾患がわかっている者,全身疾患の検査の一環や心臓疾患の家族歴から検査され たもの は除外して、レトロスペクティブに調査。 吟味:人口統計的特徴、臨床的特性、循環器検査、推定診断、フォロー受診とともに分析。 運動に胸痛が優勢になるか。 HR が明らかに上昇する強い運動で優勢になるものを運動時胸痛「 ExertionalCP 」と定義。階段や歩行は強い運動ではない。炎症性疾患・悪性 疾患・過凝固状態・膠原病・喘息の病歴は関連ありと考慮した。家族歴は不慮の突然死・ PH ・心筋症・過凝固・不整脈・膠原病・ CHD を考慮。加えて家族歴に早期の冠 動脈疾患も記録。 身体所見は病的心雑音、異常 II 音、ギャロップ、摩擦音、膠原病の傷? stigmata をふるいにかけた。 ECG は全患者に施行、循環器科の判断でさらに心エコー・ MRI ・運動負荷テスト、シンチ( MIBI) 、ホルターが追加された。生存状態と死因は、 National death index ( CDC )と Social security death index の両方で確認した。 統計:最初の結果は心臓に関連した死亡。臨床症状と心臓検査の数が数と割合で表した。可変する値は中央値とレンジで表した。 集団: 4165 人の患者が胸痛に該当、 3700 人が研究対象。除外になったのは既知の心疾患( 164) 、ミスコード( 123) 、不完全な記録( 107) 、全身疾患検査の延長 (38) 、 正常であったが 2nd オピニオンのため (33) 。 中央値 13.4 歳( 7 ~ 22.3 歳 ) を再検討した。フォローアップ期間は中央値 4.4 年( 0.5 ~ 10.4 年)で全部で 17,886 患者・年のフォロー。1年に 235-500 人の患者が紹介さ れ増加傾向である。
  • 18. 訳2 病歴: Minor CHD   42(1.1%) (病歴聴取で) 家族歴(両親 / 兄弟): DCM6   HCM5   Noncompaction2   ARVC1 、、突然死 13 身体所見・心電図:クリック 52(1.4%), 漏斗胸 42, 心雑音 31, 異常 II 音 12, 摩擦音 9, 関節可動域亢進 5 LVH   93(2.5%),ST 変化  27(0.7),RVH   23(0.6), 期外収縮  11(0.3),CRBBB   8(0.2), 心房肥大  3(0.08), 2度 AVB   1(0.02) 選択的検査:心エコー 1410 ( 38%) 、うち異常なし 1242(88.1%) 、胸痛と関連する可能性がある所見 11(0.8%) ・・・ SingleCA3 、心嚢液5、心機能低下(心筋炎 )1   HCM1 DCM1 。残り 157 は胸痛と関連しないと思われる偶然発見のもの。 MRI23 件はエコー診断の確認のため。運動時胸痛の 696/1222(57%) にエコー検査。 運動負荷テスト( EST) は 769(20.8%) 例に行い変化がみられたのは1例のみで偽陽性と考えられた;運動時胸痛と動悸と EST で ST 低下の症例で、心エコーと MIBI シン チで異常なかった。 90 例の閉塞性 / 拘束性を含む呼吸器系。高血圧6例、 QT 延長2例はほかの検査で異常なし。1例は安静時胸痛で ST 上昇し運動負荷は耐えられず MIBI で側壁虚血の疑 い(フォローの途中で途切れる)。 MIBI は他に 17 例に行ったが異常なし。 ホルター 491 ( 13.3%) 、リズム不整は 13/3700 ( 0.4%) で、 SVT 9、 AT 1、 NSVT 1、 VT 1(薬剤負荷では誘発できず)、 PVCs42% 1例でエコー np 、 11/13 は動悸 の訴えあり。 診断:推定される胸痛の原因(図2)。筋骨格系(肋軟骨炎, Precordial catch 症候群,不特定の胸壁痛)。消化器系( GER 、胃炎、食道炎、便秘)。肺(主に喘息ほか胸膜 痛、呼吸器感染症、過換気)。心臓由来は37( 1%) ー心外膜炎は安静時胸痛で体位変換で増強しあごに放散痛あり (n=3 )摩擦音 (n=3 )心電図変化 (n=6 )心エコーで心 嚢液 (n=4 )。心筋炎も安静時で先行する感染 (n=4 )、 ectopy on examination(n=2 )心電図変化 (n=1 )エコー心機能低下で1週間で改善 (n=1 )。 SingleCA のうち 2/3 は安静時胸痛で心電図は異常なし。 心臓由来の胸痛と判断される患者の大多数は示唆的な症状(とくに運動時の胸痛)があり、病歴や家族歴、検査の異常、更なる検査を要するような心電図異常と関連があ る。 最初の病歴、身体所見、心電図所見をもとに現在 CP SCAMP を実施している。 先に述べたように、最初のスクリーニング陽性例の大多数には心エコーを勧め、陰性例ではエコーや負荷試験などの検査を省くように勧める。 今回の 3700 例では、ほぼ3分の1が運動時の症状で、10のうち1がほかの関連性のある病歴や身体所見、心電図所見があった。 CP SCAMP をこれに適用するとすると 、臨床的に関連性のある陽性所見にし、誤った診断を減らすために集団を再分配したほうがよい。循環器医による CP SCAMP はコストを減らしうるが、一般小児科医によ る modify した CP SCAMP が最も効率的であるべきなので、計画が進行中である。理論上は、効果的なスクリーニングされれば 50% 以上は循環器科に紹介する必要はない。  この研究は疑わしいが過少に評価された所見も明らかにする。 2/3700 の自殺があった。うつや不安の病歴は 15 %しかなかったが過小評価と思われる。・・・  この研究にはいくつかの限界がある。後方視的検討で、患者の症状・病歴・身体所見の記録に基づいている。胸痛に対して異なるアプローチで医療提供者の判断でいろ んな検査がされている。我々は生命を脅かす疾患を含む心疾患を見逃している可能性もある。さらに死亡につながる重大な心疾患をとらえられていないかも。 National death index (もう一方も)は 92-98% の精度で死者をみつけることができると考えられているので、見落としは少ないと考えられる。 挿入・・・考察 推定の心原性突然死は 0.6-6.2 人 /10 万と言われている。主な原因は HCM 、冠動脈異常、悪性不整脈、運動中により多い。 DCM  労作時胸痛、家族歴 HCM  労作時胸痛、 ST-T 変化、心機能 頻脈性不整脈  13/16 は運動時胸痛、 14/16 は動悸を伴う、通常心電図の異常は 4/16 、  2/16 は失神 除脈なし