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BRAの審査と登録
山川宏
Slack内の議論へはこちらから、
https://wba-initiative.org/17902/
講演の内容
• BRAの審査基準について
• BRAデータベース構想
• BRA構築の動機づけに向けた取り組み
• まとめ
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
なぜBRAを審査する必要があるのか?
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
BRAが役割を果たす役割
• 脳型ソフトウエアを開発する際の機能
要求仕様書
• 脳型ソフトウエアの生物学的妥当性
(忠実度評価)における比較対象
BRAが脳の真実に近いという意味での適
切さが一定程度は保証されるべきである。
BRAの適切度を担保し正式登録するため
に、BRAを選抜する審査が必要。
脳参照アーキテクチ
ャ(BRA)
BRA活用
脳型ソフトウエア
神経科学の論文・データ
脳情報フロー
(BIF)
仮説的コンポーネント図(HCD)
BRA設計
新規
開発
忠実度
評価
適切度
評価
SCID法
割付
制約
開発
構築
比較
比較
比較
• Dysfunction再現による医療応用
• 対人インタラクションの設計
• マインド・アップロードの器
• ML技術の統合による脳型AGI開発
適切度の審査基準(登録には以下の全てを満足する必要がある)
形式審査: 専門性を要しない 本審査: 専門性を要する
BIFの認定性 HCDのBIFへの整合性 HCDの機能性
審査
基準
BIFに記述された構造/
現象記述の要素が、
BRAデータベースに未
登録であり(新規性)、
現状の何れかの神経科
学知見に直接・間接的
に支持される(認定性)。
HDC内の全ての構造
要素が、BIFのROI内
の登録済み/予定の
構造に対応づく (整合
性)。またROIが担う
目的が明示されてい
る(整合性)。
HDC内の達成プロ
セスや各コンポーネ
ントの振る舞いが、
BIFのROI内の登録
済み/予定の生理学
的知見に整合してい
る(整合性)。
HCDが、構造に従っ
たコンポーネントの
振る舞いの連鎖によ
って(のみ)ROIが
担う目的を達成でき
る動作機序を構成し
ている(機能性)
審査
基準
補足
事項
支持を担保する資料は、
原則として査読付き論
文等の論旨に含まれる
記載である。
ー ー
学術成果として採録
されるには、通常、
HCDに新規性が必要
である。
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
Circuit
適切度評価: BIFの認定性(形式審査)
形式審査
BIFの認定性
審査
基準
BIFに記述された構造/
現象記述の要素が、
BRAデータベースに未
登録であり(新規性)、
現状の何れかの神経科
学知見に直接・間接的
に支持される(認定性)。
審査
基準
補足
事項
支持を担保する資料は、
原則として査読付き論
文等の論旨に含まれる
記載である。
Connection
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レクチャー
適切度評価: HCDのBIFへの整合性(形式審査)
形式審査
HCDのBIFへの整合性
審査
基準
HDC内の全ての構造要
素が、BIFのROI内の登
録済み/予定の構造に
対応づく (整合性)。ま
たROIが担う目的が明示
されている(整合性)。
HCDの構造要素がROI内の構造に対応づく
• Circuit: A,B,C,Dが夫々に対応
• Connection: 上記Circuit間の接続と向きが対応
ROI
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レクチャー
適切度評価: HCDの機能性(本審査)
本審査
HCDの機能性
審査
基準
HCDが、構造に従った
コンポーネントの振る
舞いの連鎖によって
(のみ)ROIが担う目的
を達成できる動作機序
を構成している(機能性)
審査
基準
補足
事項
学術成果として採録さ
れるには、通常、HCD
に新規性が必要である。
HCDにおいて、目的(TLF)を達成する
実行可能な方法の論理が構築できて
いるかを専門家が審査する。
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
適切度評価: HCDの機能性(本審査)リレーを例に
本審査
HCDの機能性
審査
基準
HCDが、構造に従った
コンポーネントの振る
舞いの連鎖によって
(のみ)ROIが担う目的
を達成できる動作機序
を構成している(機能性)
審査
基準
補足
事項
学術成果として採録さ
れるには、通常、HCD
に新規性が必要である。
リレーON動作
1.『電装品スイッチ』を入れます(=ONする)
2.『端子A』~『端子B』間に電気(小電流)が流れます
3.『コイル』へ電気が流れます
4.『コイル』に磁場が発生します
5.『鉄芯』に磁力が生じて磁石となります
6.『鉄芯』が『可動鉄片』を引き寄せます
7.『可動接点』が『固定接点』と接触します
8.『端子C』~『端子D』間がつながります
9.『バッテリー(+)』から『電装品』へ電気が供給されます
10.『電装品』が動作を開始します
参考:MITSUBASANKOWA, リレーの構造と動作原理, https://www.mskw.co.jp/support/car/relay
動作機序
実行可能
な方法の
論理
目的
HCDにおいて、目的(TLF)
を達成する実行可能な方
法の論理が構築できてい
るかを専門家が審査する。
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レクチャー
講演の内容
• BRAの審査基準について
• BRAデータベース構想
• BRA構築の動機づけに向けた取り組み
• まとめ
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レクチャー
BRAデータベース (αバージョン)に関わるデータフロー
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レクチャー
Mei Sasaki, Naoya Arakawa, Hiroshi
Yamakawa,
Construction of a whole brain reference
architecture (BRA), International
Symposium on Artificial Intelligence and
Brain Science, Poster No. 31, 2020.
脳の構造/現象およびSCID
法等
で構築した機能仮説をデータ化
Estimate Fidelity of Program
生物学的妥当性(忠実度)の種類
• 解剖学的構造のコード類似性
• 部品の振る舞いの類似性
• 神経活動現象の再現性
Stub driven development
最初は学習機能を持たないモジュール
を実装し、適宜機械学習に置き換え
BRAを登録するデータベースの検討
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レクチャー
④
⑥
⑤
③
②
①
BRA設計
貢 献 者 が作 成 し
たBRAを、評価
者 が 審 査し た 上
で、BRA-DBに登
録する
BRA活用
開 発 者 が作 成 し
た コ ー ドの 忠 実
度 を 自 動評 価 し
つ つ 、 競技 会 な
どを行う。
①
BRAはどのように利用されるか
(理想的なユースケース図)
講演の内容
• BRAの審査基準について
• BRAデータベース構想
• BRA構築の動機づけに向けた取り組み
• まとめ
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レクチャー
将来構想:学術Journal等連携による査読体制の確立
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レクチャー
投稿者
研究実績としてBRA登
録が追加され、成果が
認知されやすくなる
WBAI
認定された機能仮説を
BRAに正式登録できる
学術Journal等
形式審査で選抜された
質の高い投稿に査読資
源を集中できる
形式審査(非専門家による)
本審査(専門家による)
BRAデータも投稿
Win-Win関係
BRAデータに関わる体制構築にむけて
当面
1. 論文作成
2. Journal投稿
3. WBAIで形式審査
→データ登録
4. 研究会などへデータ
論文投稿
将来
1. 論文作成
2. WBAIで形式審査
→データ登録
3. 連携Journalにデータ
とともに投稿
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
講演の内容
• BRAの審査基準について
• BRAデータベース構想
• BRA構築の動機づけに向けた取り組み
• まとめ
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
まとめ: BRAの審査と登録
• BRAについて「脳の真実への近さ」を見積もる適切度が必要
– BRAは、脳型ソフトウエアの開発や評価に利用される起点である
• 適切度評価の審査基準は、BIFの認定性、HCDのBIFへの整合性、
HCDの機能性からなる
• 専門性の必要ない形式審査と、専門性を要する本審査に分離
• BRAデータベースの構築にむけて、基礎検討を行った
– BRAの設計と活用の面からユースケースを作成
• 一定の労力を要するBRA構築を動機づけるために、専門性を要
する本審査のみを学術雑誌の査読に依存する連携体制を検討。
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
本レクチャー全体の総括
• 当NPOでは、脳型AGIの構築手法としてBRA駆動開発を提唱
• 解剖学的構造に整合するように機能を分解することでBRAを構
築するSCID法を紹介した (→ 本レクチャーの主題)
• 脳の広域にわたる標準化されたBRAの整備がもたらすもの
– 応用: Dysfunctionの再現、対人インタラクション、脳型AGI
– 神経科学: 脳機能の体系的な理解、神経科学実験のテーマ設定
• BRAの質を保つため認定/登録する審査基準の確立を進めている
• BRAを登録するデータベースの基本設計を進め資金獲得を検討
• 学術誌等との連携でBRA構築の動機づけ構築を検討している
• 諸活動に関心ある方の参加をお待ちしています→Slack登録
WBA #1 https://wba-initiative.org/17902/
レクチャー
Slack内の議論へはこちらから、
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