SlideShare uma empresa Scribd logo
1 de 61
Baixar para ler offline
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
2
「作れば売れる時代」から、競争が激しくなり消費者が選択できる時代になった結果、マーケティングが生まれた。
マーケティングは、競合との差別化ポイントを明確にして顧客や見込み客に伝えるためのフレームワークである。
顧客ニーズを分析し、いかに競合製品/サービスよりも自社製品/サービスのほうがニーズを満たしているのかを競った。
しかし、さらに時代が進み画期的な商品も短期間でコモディティ化する「差別化」そのものが難しい時代になった。
機能的な差異がなかったり、わかりにくかったりするときに、消費者は何を元に購買決定しているのか?
消費者の購買決定と結びつくニーズや心象の体系と、それらを作り上げるためのフレームワークをブランディングと呼ぶ。
この講座では、マーケットシェアの時代からマインドシェアの時代になった今、もっとも重要なビジネスの概念であるブランディ
ングの体系を学んでいただく。
また、マインドシェアを高めるために必要なブランド・バリューについて理解し、継続的な活動を行うための基礎固めをする。
はじめに
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
ブランドとは?
3
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
4
腕時計
スーツ
靴
雑誌
自動車
パソコン
香水
アクセサリー
お腹が空いたら?
ボールペン
ミネラルウォーター
牛乳
ノート
靴下
コピー用紙
洋服を買う店はどこ?
書籍を買う店はどこ?
電化製品を買う店はどこ?
シャンプーを買う店はどこ?
あなたが購買行動をとるとき、購入する商品は事前に
決定していますか?
決定している場合はそのブランド名を書いてください。
(複数回答可)
演習
ブランドとは?
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
5
ブランドとは何か?
ブランドとは? 商品・サービス(そのものだけではなく、それらのプロモーションも含む)と接す
るあらゆる機会を経て、消費者の心の中に立ち上がるものが、その商品・サービスの
ブランド・イメージ (Brand Image) である。ある消費者が何らかの購買ニーズを抱
いたときに、まっさきに想起される商品・サービスは、その消費者に対してブランド
を確立していると言える。このように購買ニーズが発生したときに特定の商品やサー
ビスを連想させ、購買決定に影響を及ぼす力を持つものがブランドであり、消費者の
購買行動に影響を及ぼすことを意図してブランド構築を行うことをブランド戦略と言
う。また、当協会ではブランドの価値を高める活動を継続して行うことをとくにブラ
ンド・バリュー戦略と呼ぶ。
企業側からみた「ブランド」 とは、製品・サービスそのものであり、またその製品・
サービスを競合製品と識別、差別化を意図した要素の集まりのことである。同じブラ
ンドであっても、企業側から見たブランド・イメージと消費者から見たブランド・イ
メージがずれてしまっていては、意図的なブランドの構築ができているとは言えない。
ブランド・マネージャーは、自社のブランドを顧客にどのようにとらえてほしいのか
(ブランド・アイデンティティ (Brand Identity))を明確にし、そのプロセスを設
計・管理しなければならない。
ブランドは競合他社の製品・サービスと識別し差別化するために使用される。この
「識別」と「差別化」の違いは重要である。企業側にとっては「識別」だけではなく
「差別化」が可能になっていてはじめてブランドとしての意味を持つからだ。 この目
的のために製品・サービスに(物理的にだけではなく)付与される名称やデザインな
どのあらゆる要素を「ブランド要素 (Brand Element)」と呼ぶ。
「識別」は単に区別ができるということであるが、「差別化」というのは「他の競
合他社の製品・サービスと明らかに違う優位性・唯一性」が存在するということであ
り、この違いにより消費者の購買決定を左右する力を持つということである。このと
き、消費者の購買決定を左右する力を持たないのであれば、その優位性・唯一性は正
しい意味での優位性・唯一性ではない。差別化の手法は「ブランドの確立」以外にも、
「機能・品質の差別化」や「高付加価値サービス」など様々だが、差別化に失敗した
場合は価格競争に巻き込まれる危険性が高まる。差別化が難しい日用品などのコモディ
ティーの場合は、ブランドを確立することで差別化を図ることができる。
ブランドとは「ある売り手あるいは売り手の集
団の製品およびサービスを識別し、競合他社の
製品およびサービスと差別化することを意図し
た名称、言葉、サイン、シンボル、デザイン、
あるいはその組み合わせ」
アメリカ・マーケティング協会によるブランドの定義
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
6
資産としてのブランド
ブランドとは?
(P&Gのブランド売買の例)
1. 日本ヴィックスを買収
※便秘薬「コーラック」、ニキビ治療薬「クレアラシル」、哺乳瓶消毒剤「ミルトン」、
塗布風邪薬「ヴィックス ヴェポラッブ」、のど薬「ヴィックス コフドロップ」
2. 「クレアラシル」をブーツ・ヘルスケア・ジャパンに売却
3. ヘルスケア製品ブランド「ヴィックス」(ヴィックス ヴェポラッブなど)を大正製薬
へ
4. 「コーラック」を大正製薬に売却
ブランドは資産として売買の対象になる。これをブランド・エクイティ (Brand
Equity) と呼び、次の式で表すことができる。
ブランド・エクイティ = 資産 ­ 負債 = 正味資産
ブランド・エクイティの提唱者であるデービッド・アーカーによれば、その構成要
素には「ブランド・ロイヤルティ」「ブランド認知」「知覚品質(消費者が感じる品
質)」「ブランド連想」がある。資産価値の算出方式には大きく分けて「財務データ
法(財務資産としての価値)」と「 質問調査法(顧客ベースの価値)」のふたつのア
プローチ方法がある。
ブランドは資産として売買の対象になる
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
7
自家用車のブランドを次の基準で分類したとき、各象
限に代表的なブランド名を記入してください。
演習
ブランドとは?
高級
手頃
ファミリー
スポーティー
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
8
説明では、「競合他社の製品・サービスと明らかに違
う優位性・唯一性が存在するときに差別化できている」
とあります。機能・品質・サービスにおいて優位性・
唯一性がないときでも、ブランドは確立できるのでしょ
うか?
できるとしたらその理由は?
自分の体験を踏まえて考えてください。
演習
ブランドとは?
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
9
「機能やデザインで差別化している例」と「機能やデ
ザインに差はないがブランドで差別化している例」を
挙げてください。
ここではパッケージやロゴなどもブランドだと考えて
ください。
演習
ブランドとは? 機能やデザインで差別化している例
機能やデザインに差はないが、ブランドで差別化している例
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
10
ブランドはそのブランドを持つ商品・サービスと、競
合他社の商品・サービスを識別する機能を持ちます
が、この機能が企業と消費者に利益をもたらすケース
と、損失を与えるケースを考えてください。
演習
ブランドとは? 企業と消費者に利益をもたらすケース
損失を与えるケース
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
11
ブランドの歴史
ブランドとは?
古くから、放牧している家畜が他人の所有物と紛れてしまわないように、自らの所
有物であることを示す「焼印」を押す風習がある。 英語の「brand」にはこの「焼印」
という意味があり、「焼印をつける」ことを意味する brandr という古ノルド語から
派生したものだと言われている。また、中世ヨーロッパのギルド社会では生産者を識
別し、信用のための出所表示としての商標を義務づけていた。このようにブランドと
は古来より、生産者が他の生産者の製品と区別するための手段であった。
しかし、焼印は単に自分の所有物であることを示し、また中世の商標は生産者を識
別する機能だけを持つ。これらは今日で言うところの「ブランド」とは別のものであ
る。今日の「ブランド」とは、単に所有権の主張や生産者の識別のためのものではな
く、競合との差別化を図り消費者の購買決定に影響を与えることを意図するものであ
る。
現代では、流通の発展により消費者の購買選択肢は飛躍的に拡大したが、同時に消
費者が購買決定のさいに利用できる情報が飛躍的に増大したわけではなく、購買決定
は難しくなった。そのため、消費者はブランドが信頼できるものかどうかで購買決定
する傾向が強まり、ブランドの認知という面で地方の中小メーカーは大手のメーカー
に太刀打ちできず、淘汰される傾向にある。
所有権の表示
ブランド機能の変遷
生産者の識別
競合との差別化
放牧する牛への焼印 ギルドによる統制
商標の保護
企業によるブランド戦略
ナショナルブランドの成立
「ナショナルブランド」とはTVCMなどの全国規模の広告により高い知名度を持ち、全国どこで
も手に入れることができるもの。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
12
ブランドを守る
ブランドとは? 商標:商標登録することによって効力を発揮する、自社の商品・サービスと他社の
それとを識別するための標識。
商号:会社の名称。同一営業所で同一の営業については複数の商号を持つことはで
きない。類似商号の規制は現在廃止されていて、不正競争防止法を適用する。
意匠:デザインのこと。意匠登録することで効力を発揮する。
ブランド要素の多くは法律で保護の対象となりうる。
ブランドを管理するためには、自社のブランド要素が
他社によって不正に利用されていないかどうか、常に
監視する必要がある。
商標 商号 意匠
法律 商標法
商法、商業登記法、会社
法
意匠法
保護の対象 商品・サービス 商人の名称
新規性と創作性があ
り、美感を起こさせ
る外観を有する物品
の形状・模様・色彩
のデザインの創作
対象の要素
文字・記号・図形・立体と、
これらの組み合わせ
日本文字、ローマ字、ア
ラビア文字、一部の記号
有効期限 登録から10年(更新は永続) 登記以降 期限無し 登録から20年
その他 先出願主義
一般的に商標を明記するさいに使用される記号には、™(trade mark)、
®(registered trademark)などあるが、日本の法律で定められているのは「登録
商標」という表記のみであり、「™」「®」などは慣習として使用されている。 施行規
則第17条によれば「登録商標」と表示するよう努めなければならないと定められてい
るが、表示しなくても罰則はない。また、権利が取得されていない名称に ® の表示を
付すと虚偽表示(第74条)とされるおそれもある。
企業間の公正な競争の実施を確保するため不正競争防止法が定められている。
代表的な不正競争行為の類型として次のようなものが挙げられる。
・周知表示混同惹起行為
・著名表示冒用行為
・商品形態模倣行為
・原産地等誤認惹起行為
・代理人等商標無断使用行為
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
13
ブランド紛争
ブランドとは? (一澤帆布工業)
京都にある一澤帆布工業は、赤いタグが縫い込まれた布製のカバンで有名だった。
2001年、3代目の死去に伴い、相続人である子供たちの間で相続を巡りトラブルに
なる。当時、3男が社長を務めていたが、長男側が提出した遺言状が2006年に有効
と判定され、長男が社長に就任した。
しかし、3男は社長を解任されると信三郎帆布を新たに立ち上げ、一澤帆布工業の
職人も全員が新会社に移転してしまった。そのため一澤帆布工業は半年ほどのあいだ
営業停止に追い込まれた。
その後、両社は意匠の似通った製品を製造・販売しているが、長男側が3男側を商
標権侵害で提訴するなど、ブランドの毀損がつづいている。
同様のトラブルは横浜元町のバッグブランド「キタムラ」と「キタムラK2」の間で
も起こっている。
(キユーピー)
1998年、キューピー人形の著作物を発行したローズ・オニール遺産団体より日本に
おける著作権を許諾された「日本キューピークラブ」の代表が、キユーピーマヨネー
ズの登録商標(キユーピーの文字と人形)は 著作権侵害にあたると提訴したが、請求
を棄却された。
(マールボロ・フライデー)
ブランドが確立された事例として頻繁に紹介される「マールボロ(Marlboro)」の
価格をメーカーであるフィリップ・モリスが、1993年4月3日に20%引き下げること
を発表した。低価格煙草などとの価格競争のためであった。発表のあとフィリップ・
モリスの株価は26%下がった。それだけではなく、同様に消費材のブランド・メーカー
(コカ・コーラ、ハインツ、ペプシコ、RJR ナビスコなど)の株価も同様に急落した。
その日、S&P500指数(スタンダード・アンド・プアーズ社が算出しているアメリカ
の代表的な株価指数)は1.98%低下した。「マルボロマンが落馬した日」「マーケティ
ングが死んだ日」「ブランドが死んだ日」などと呼ばれた。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
14
ブランドの種類
ブランドとは?
ブランド戦略とは、このような様々な製品において、競合する他製品と差別化する
ためにブランド要素を管理し一貫したブランド・イメージを構築・維持していく活動
である。
例えば、上図におけるコーポレートブランドと製品ブランドが消費者に矛盾したも
のとして捉えられかねない場合は、一貫したブランド・イメージを構築するか、ある
いは製品ブランドとコーポレートブランドを意図的に分離する必要がある。
ブランド戦略が成功すると、ブランド名が製品の普通名詞として通用するようにな
るケースがあるが、その場合は結果的に他社の参入を許すことになりかねないので注
意が必要である。
いち消費者として「ブランド」と言われると、商品と
しての「ブランド」を連想するかもしれないが、ブラ
ンド・マネージメントの対象になるブランドは商品だ
けではない。
※ここで重要なのは、「どのブランドが何に分類され
るべきか」ということではなく、「ブランドとして扱
うことができる領域は広い」という理解である。
機能やデザインで差別化している例
ブランドの対象 ブランドの種類 例
製品
(有形財)
消費財
個別ブランド
製品ブランド
ナショナルブランド ホッチキス、カップヌードル
生産財
サービス
(無形財)
流通業
者
プライベートブランド トップバリュ(イオン)
セブンプレミアム(セブン-イ
レブン等)
ストアブランド
その他 ディズニーランド
組織
コーポレート(企業)ブランド ソニー、東大
事業ブランド 三井のリハウス、いい部屋ネ
ット
人 パーソナルブランド イチロー、岡本太郎
場所・特産品 地域ブランド 魚沼、関(サバ)、銀座
その他 成分、技術 Q10
一般的な企業におけるブランドの関係
コーポレート(企業)ブランド
事業ブランド 事業ブランド 事業ブランド
ファミリーブランド ファミリーブランド
製品ブランド 製品ブランド
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
15
以下のブランドネームについて、それぞれ対象とブラ
ンドの種類を記入してください。
演習
ブランドとは? ブランドネーム 対象 ブランドの種類
パナソニック
Apple
VIERA
ルイヴィトン
関サバ
無印良品
ユニクロ
Intel
Mac
東大
レクサス
ダイナーズクラブ
松阪牛
ブルゴーニュワイン
牛角
化粧惑星
MacBook Pro
赤十字
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
ブランドの仕組み
16
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
17
ブランドの仕組み
ブランドのメカニズム
ブランドを
想起
消費者
ニーズが
発生
コンタクト
ブランド要素
ブランド再認
ブランド再生
ブランド認知
Brand Recognition
Brand Recall
Brand Awareness
Brand Element
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
18
ブランド・イメージと
ブランド認知
ブランドの仕組み
ブランドを想起するプロセスは以下の2通りで説明されることが多い。
・ブランド再認 (Brand Recognition):ブランド要素に接したさいにブランドを思い出す
こと。
・ブランド再生 (Brand Recall):ニーズが発生したさいに、ブランドを思い起こすこと。
どちらのプロセスを経るにしても、その前提として消費者がブランドに対する知識を持っ
ていることが必須となる。
ブランド再認の場合
ブランド要素に触れたときにブランドを想起するには、ブランドに対する認知がすでに
あり、それと接したブランド要素との間の関連性を認識している必要がある。
ブランド再生の場合
消費者の心の中でニーズが発生したときブランドを思い出すには、ニーズが生まれたと
きにそのブランドを連想する必要がある。つまり、消費者の心象においてニーズとブラン
ド(この場合は、ブランドに結びついているイメージ群:ブランド・イメージ (Brand
Image))が連結している必要がある。
ブランドの設計において、以下の点に注意すべきである。
・どのようなブランド・イメージを持たせたいか:ブランド・アイデンティティ (Brand
Identity)
・消費者がそのブランドからどのような連想(ブランド連想 (Brand Association))を
するか?
・期待されるニーズとどのように連結できるか?
・連想するイメージ群からニーズとブランドを結ぶ、キーとなる概念は何か?
・競合製品はどのようなブランド・イメージを持つか?
消費者はブランドをどのように認知し記憶・想起する
のだろうか。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
19
ブランドの仕組み
ブランド再認を起こすには、ブランド体験を反復させることができれば可能であるが、
ブランド再生を向上させるには(カテゴリー内で一番に想起されるブランドでないかぎり)
適切な製品・サービスカテゴリーや購買状況、消費状況などと記憶内で連想が結びついて
いる必要がある。それらの連想は「ニーズ」が発生し「購買・消費」するというプロセス
の軸からずれてはならない。
※カテゴリー内で一番に想起されるトップ・ブランドでは、ブランド再認とブランド再生の区別はあまり重
要ではないかもしれないが、他カテゴリーの競合との差別化を意識する必要がある。
これらのブランド再生を引き起こすブランド連想の集まりが「ブランド・イメージ」と
呼ばれる。ブランド・マネージャーにとって、 消費者に意図した通りのブランド・イメー
ジ(ブランド・アイデンティティとその消費者の個人的な体験や価値観が連想で結びつい
た状態) を持ってもらうためにコントロールできるのは、ブランド要素とブランド体験だ
けである。
ブランドのターゲットとなる消費者がブランドを想起
するとき、このブランドは「認知」されていると言え
る。「ブランドを認知する」(Brand Awareness)
という状態はブランド再認(Brand Recognition)と
ブランド再生(Brand Recall)で形成されることを学
んできた。
ブランド認知のプロセス
ブランドを
想起
消費者
ニーズが
発生
コンタクト
ブランド要素
ブランド再認
ブランド再生
ブランド認知
Brand Recognition
Brand Recall
Brand Awareness
Brand Element
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
20
ブランドの仕組み
一般にブランド連想の強さを作り出す要素として、次のようなものが挙げられる。
ブランドを設計するうえで重要なのは、ブランド、ニー
ズ、ポジティブなイメージ・フィーリングの間で強い
連想の結びつきを生み出すことであるが、では連想を
強めるにはどうすれば良いのだろうか?
連想の強さ
単純接触効果(Mere Exposure Effect)
最初に聞いたときは「二度と聞きたくない」と思った曲でも、コンビニなどで何度も耳にするうちに、知らずと口
ずさむようになり「嫌いだ」という気持ちもなくなる、という経験は、多くの人が体験していることだと思う。
このように、何度も接することで好感が増していくことを「単純接触効果」と呼ぶ。
単純接触効果は新製品・新規企業の場合に有効である。その場合、何度も繰り返しブランド体験を提供することは
ブランド再認を高めるのに確実に効果がある。しかし一方、メディアへの露出が多い企業ほど評価も低い傾向があ
るという調査もあるように、既存製品・既存企業の場合は接触する回数が多いということが良い結果を生み出すと
は限らない。 単純に接触回数の多いことが結果的に多様なブランドイメージの連想を生んでしまい、好悪両方の感
情を生み出し、意図しない結果に至ることがある。
直接的なブランド体験
ブランド情報の関連性と一貫性
消費者にとって関心のある情報:「重要」な情報ほど記憶されやすい
接触回数
ちなみに購買決定に至る要因のうちで、影響力が大きいものから順に並べると下記のよ
うになる。
1 過去の経験
2 口コミや非商業的な情報
3 広告
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
21
以下のニーズから連想するブランド名をひとつあげて
ください。また、どういう連想でそのブランド名を想
起したかも書いてください。
演習
ブランドの仕組み 年を取ったら住みたい街
連想
ブランド名
喉が渇いた
連想
ブランド名
仕事の疲れ・ストレスを解消したい
連想
ブランド名
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
22
以下のニーズから連想するブランド名をひとつあげて
ください。また、どういう連想でそのブランド名を想
起したかも書いてください。
演習
ブランドの仕組み 年を取ったら住みたい街
連想
ブランド名
喉が渇いた
連想
ブランド名
仕事の疲れ・ストレスを解消したい
連想
ブランド名
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
レゴ
1
23
以下のブランド名から連想するキーワードを自由に連
想して、キーワード間を連結してください。
演習
ブランドの仕組み 2
3 4
京都
ハーレーダビッ
ドソン
GAP
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
24
ブランドの仕組み
ブランドとは、キャッチコピーやロゴマーク、あるいはブランド名そのものでなく、
その商品が提供する価値、様々なブランドを構成する要素(ブランド要素)やブランド
とのコンタクト体験とが複合的に結びついて、消費者の心の中で作り上げられる心象で
ある。
ブランド要素の主な機能は「他の商品と区別する手段」であり、ロゴやキャッチコ
ピーなど様々な要素があるが、重要なのは、それらの要素が一貫したブランド・イメー
ジを与えることができるように設計・管理することである。
またこれらの主要なブランド要素以外にも、顧客が体験するブランド体験 (Brand
Experience)(ブランドとのコンタクトの集積)もブランド・マネージメントを考える
上で欠かせない要素のひとつである。
「ブランド」という言葉を聞いて一般的に連想される
のはブランド・ロゴであるが、ロゴはブランドそのも
のではなくブランドの1要素である。
(目立つブランド要素を排除することで差別化する「ノンブラン
ド戦略」もブランド戦略のひとつと言える)
このように、ブランドとブランド要素を混同すること
がよくあるので注意が必要だ。
ブランドの要素
ブランド
体験
ブランド・
イメージ
(=ブランド連想
の体系)
消費者
ブランド要素 例
名前(ブランドネーム) シャネル
ロゴ・ マーク・商標 キユーピー
キャッチコピー インテル
入ってる
パッケージ コカコーラ
キャラクター ミッキーマウス
色 マクドナルド
ジングル・音楽 日立
匂い アバクロ店舗
ドメイン kakaku.com
ブランド・
アイデンティティ
企業
どう思ってほしいか
どう思っているか
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
25
ブランドの仕組み
ブランド要素を設計するさいは、以下の点に注意する。
ブランドの要素の設計
記憶可能であること
意味が豊富であること
:製品カテゴリーの性質やブランド固有の属性、ベネフィット、パーソナリティ
長期的に適用可能で柔軟であること
法律で保護が可能であること
また、国際的なブランドを構築するさいには以下の点にも留意する。
移転可能であること
:他の国・文化圏でも通用する。他の製品に転用可能である
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
26
身近な商品を題材に、その商品に含まれるブランド要
素をリストアップしてください。
演習
ブランドの仕組み
缶飲料 自動車 洋服 スターバックス
商品名
ブランド要素
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
27
身近にあるブランドのブランド要素を以下の視点から
評価してください。
・記憶可能であること
・意味が豊富であること
・長期的に適用可能で柔軟であること
・法律で保護が可能であること
・各ブランド要素の間に一貫性があり、相乗効果を期
待できること
・移転可能であること
演習
ブランドの仕組み
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
ブランドの重要性
28
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
29
消費者のメリット
ブランドの重要性
消費者のメリット1:探索コストの低減
ブランドの最も基本的な機能は「競合との識別」である。消費者は、ブランドにつ
いてすでに知っていることから、知らないことを仮定して合理的な期待を抱くことが
できる。 消費者はブランドを認識することで目当ての商品を素早く探すことができる
ようになる。 この信頼関係が成立するには、ブランドが保証している品質(ブランド・
プロミス)が達成されていることが暗黙の前提となる。
消費者のメリット2:リスク回避
さらには、そもそもその「目当ての商品」を決定するさいに、すでに信頼がおける
と分かっているブランドの商品を選択することで、購入以前に品質や手に入れること
ができる価値についてある程度の保証が得られる。消費者はブランドを利用すること
で、下図のように様々なリスクを低減することができる。
ここまでの説明で触れてきたように、ブランドは消費
者の心の中で製品・サービスがどのような位置を占め
るのかに影響し、ひいては消費者の購買行動の意思決
定において重要な役割を果たす。では、ブランドを意
識することで消費者にとってはどのような利益がある
のだろうか。
機能的リスク 購入した商品が、購入者が期待した機能を果たさない。
身体的リスク 購入した商品が、使用者や周囲の人々の健康や身体に危害を加える。
金銭的リスク 購入した商品の提供する価値が、支払った価格に見合わない。
社会的リスク 購入した商品が、社会的な迷惑をもたらす。
心理的リスク 購入した商品が、使用者の精神・心理に悪影響を及ぼす。
時間的リスク 選択の失敗などにより、他商品を探索するという機会費用が発生する。
ケビン・レーン・ケラー「戦略的ブランド・マネジメント」
購買行動における消費者のリスク
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
30
ブランドの重要性
消費者のメリット3:価値の獲得
ブランドから消費者が手にする価値には、製品の基本的な機能である物理
的・機能的価値(製品・サービスそのものが持つ価値)、広告・デザインを
含めた製品に付加されている情報やコスト、利便性など製品以外の価値であ
る情緒的・感覚的価値があり、様々なレベルで差別化を図る必要がある。
価値の分類は研究者により、様々である。
(例)
・アーカー:機能的便益,情緒的便益,自己表現的便益
・和田:基本価値,便宜価値,感覚価値,観念価値
・長崎:物理的価値(保護的機能、取り扱い利便機能、情報提供機能)、精神的価値(情
緒的機能、意味付け機能)
どの分類が正しいかが問題なのではなく、消費者にとって機能や品質だけが価値を持って
いるのではない、という認識が重要である
物理的価値
機能的価値
商品が提供する価値
情緒的価値
感覚的価値
製品から変更・削除すると、
製品そのものの機能に影響が
あるもの(例 掃除機の吸引)
製品から変更・削除しても、
製品そのものの機能に影響が
ないもの(例 掃除機の色)
消費者のメリット4:自己イメージへの投影
消費者は、ブランドを購入・使用することで、自分自身にブランドのキャ
ラクターを重ね合わせることができる。 消費者がブランド・イメージを自
己に投影することは、周辺価値あるいは情緒的価値と言える。ダニエル・
ブーアスティンによれば、ブランドは『友愛会、宗教団体、そしてサービ
ス組織が果たしていた機能を果たす。すなわち、人々が自分は誰であるか
を定義し、その定義を他者に伝達するのを助ける』。言い換えれば、ブラ
ンドは消費者が自分の所属する準拠集団を決定・宣言する役割を果たす。
ブランドがこの役割を果たすためには、ブランド自身のキャラクター
(ブランド・パーソナリティ)が明確で競合と差別化できている必要があ
る。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
31
企業のメリット
ブランドの重要性
企業のメリット1:識別
ブランドは、製品の取り扱いと追跡調査を容易にする。
企業のメリット2:他社製品との差別化
製品に固有の連想と意味付けをすることで、他社製品と機能・品質以外の部分におい
て差別化することができる。
ブランドによる差別化が成功すれば、
満足した顧客が再購買するのが容易になる
需要予測の精度がアップする
企業のメリット3:付加価値を高める
差別化に成功し、ブランドを付加価値とすることができれば、プレミアム価格(利益
の幅が大きい)での販売が可能になる。
企業のメリット4:法的保護を受けられる
・ブランド名:商標権
・製造プロセス:特許権
・パッケージデザイン:意匠権
・プロモーションのコンテンツ:著作権
など
一方、企業側にとってみれば、強いブランドを構築す
ることに成功すればマーケティングの効率が飛躍的に
向上することになり、さらにブランド要素の多くは法
的に保護される対象になるため、参入障壁を築くこと
が可能になる。また、ブランドは資産として評価され
売買の対象となりうる。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
32
企業活動においてブランドがなぜ重要なのか、消費者
の視点と企業の視点の両方を含めて説明してください。
演習
ブランドの仕組み
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
33
ブランドとしての条件を満たすものと、そうでないも
のの違いを述べてください。
演習
ブランドの仕組み
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
34
あなたの個人的な購買行動において、ブランドがどの
ように影響しているのか分析してください。
ブランドとノンブランドのふたつの競合が購買候補に
挙がっているとき、購買決定にブランドがどのように
影響しているか?  プロモーションだけではなく「ブ
ランド体験」「ブランド連想」の影響を考えてくださ
い。
演習
ブランドの仕組み
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
ブランド・バリューとは?
35
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
36
ブランド・バリュー
ブランド・バリューとは?
「ブランド・バリュー(Brand Value)」とは
ブランドが打ち出す価値のことであり、消費者のみならず、企業のすべてステーク
ホルダー(従業員、取引先、消費者、社会など関わる全ての人)に影響を及ぼす。こ
の価値を高めることがブランド・バリュー戦略の目的となる。価値を高めることが、
ステークホルダーのブランド・ロイヤルティ(Brand Loyalty)を高めることに繋が
り、持続可能性を高めることにつながる。
「ブランド・バリュー」は単にそのブランドが生み出
す売り上げだけを意味するものではない。
継続的なマインドシェアを高めるための活動の結果、
ブランドの価値を高めることを目的とする。
ブランド・バリューを高める活動は継続的な活動
ブランド・バリューを評価する
ブランド・バリューを評価するには、独自に指標を持つ必要がある。
例:売り上げ、従業員満足度、従業員在籍年数、来店頻度、顧客のライフタイムバ
リュー、などなど
※どの指標に重みを置くかは各企業の判断による。
※指標は継続性が重要なので、同じ条件で指標を調査しつづけること。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
37
ブランド・バリュー スパイラル
ブランド・バリューとは?
ブランドを構築し維持する活動は、一過性のものでは
なく、継続してこそ意味がある。
ブランド・バリュー戦略のPDCA
Plan
Do Check
Action
ブランド・バリューを増大させるスパイラルイメージ
ブランド・アイデンティティ
消費者 従業員 地域住民
ステークホルダー
ブランド・バリュー
増大
ブランド・ロイヤルティ
ブランド再生
ブランド再認
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
ブランドの構築
38
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
39
ブランド構築イメージ
ブランドの構築
ブランド・アイデンティティ
消費者
ニーズが
発生
ブランド体験
ブランド要素
ブランド再認
ブランド再生
ブランド認知
Brand Recognition
Brand Recall
Brand Element
どう思ってほしいか
企業
ブランド・
イメージ
どう思っているか
連想
これ知ってる!
このニーズには
このブランド!
ここだけコントロール可能
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
40
ブランド構築の目的
ブランドの構築
1. ブランド・アイデンティティーの決定
・顧客は誰か?
・商品/サービスはなにか?(差別化できるポイントは?)
・顧客のどんなニーズからブランド再生を起こしたいか?
・顧客の心の中で、どのようなポジションを確保したいか?
ブランド・アイデンティティとは、ブランドにどのようなブランド・イメージを持たせたいか、つま
り、顧客にどのようなブランド連想を抱いてほしいのかを意味する。顧客はブランド要素に接したと
き、なんらかのイメージを連想する(ブランド連想)。その連想の体系全体がブランド・イメージで
あり、ブランド・アイデンティティは、どのようなブランド・イメージを訴求するかを端的に表現し
たものとなる。そこにはブランドの優位性・唯一性、そして顧客が受け取る価値が含まれていなけれ
ばならない。
2. ブランド要素の設計
・顧客はどのようなブランド体験をするのか?
・ブランド要素はどうあるべきか?
ブランド・アイデンティティを作成したら、その後に作成するブランド要素はこのブランド・アイデ
ンティティと一貫したものでなければならない。また、様々なマーケティングツールを利用すること
になるが、それらにはブランド要素を含まなければならない。
3. PDCAサイクルの実施
・どうやってブランド・バリューを増大させるか?
・ブランド要素/ブランド体験のブラッシュアップ
ブランドを構築する目的は、「ブランド再生」を起こ
す状況を構築し、持続可能な事業構築することである。
ブランド構築のさいに、企業側が制御可能であるのは
「ブランド・アイデンティティ」と「ブランド要素」
のみであるため、それらを適切に設計することが重要
になる。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
41
マーケティングの基礎知識
ブランドの構築
ブランド構築のステップを理解するためにはマーケティ
ングの知識も必要になる。ここでは、構築ステップを
実施するために最低限必要な情報について説明する。
マーケティングとは単に広告や市場調査・販売促進のことではなく、「売れる仕組
み」を作る活動すべてのことである。つまり、顧客のニーズを把握し、満足度を高め
て、再購買を促す仕組みを意図的に作ることである。
マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによっ
て、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会
上・経営上のプロセスである。 フィリップ・コトラーによるマーケティングの定義
マーケティング活動には、顧客と接するすべての活動を含む。企業にとって、顧客
は下図のようなプロセスで成長していく。マーケティングの対象となる消費者が、ど
の段階にいるのか(見込み客か?顧客か?)によって、アプローチが異なる。
消費者
見込み客
顧客
リピーター
マーケティングの目的は次のような式で表すことができる。
マーケティングの目的 = 顧客生涯価値  x 顧客数
顧客生涯価値とは、顧客がある製品・サービスあるいは企業に対して、関係がある
間に支払う金額の合計である。再購買の機会が増えたり、購買単価が上がったり、顧
客である期間が延びることで、顧客生涯価値も向上していく。
顧客生涯価値を高める
顧客獲得 固定客化
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
42
マーケティングの流れ
ブランドの構築
基本的なマーケティングの流れは次のようになる。
1. 環境分析と市場機会の発見
需要予測、顧客ニーズの把握、3C分析
3C分析では、図のように顧客ニーズを満たし、かつ競合他社が参入できない領域を
探る。
顧客(Customer)
自社(Company)
競合他社(Competitor)
2. 市場細分化
STPマーケティング ※次ページ参照
3. マーケティング計画
・目標の作成
・4P/4Cなどを使用してマーケティングミックスを検討
・実行計画の作成
4. 実行
5. 結果の分析
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
43
STPマーケティング
ブランドの構築
ある製品・サービスを市場に送り出すさい、最初に見
込み客を選定しなければならない。つまり、すべての
消費者の間から、その製品・サービスを買う「見込み」
がある層を抽出する。この選定のことをセグメンテー
ション、 ターゲティング と呼ぶ。
マーケティングには、様々な理論や方法論があるが、もっとも代表的な手法が、フィ
リップ・コトラーが提唱したSTP(セグメンテーション、 ターゲティング、ポジショ
ニング)マーケティングである。
STPマーケティングは、マーケティングの初期段階において、
・誰に対して
・どのような価値を提供するか
を明確にするための手法であり、以下の手順で行う。
1. セグメンテーション (Segmentation)(セグメント化):市場細分化
市場をある基準で分割・グループ(セグメント)化する。年齢、性別、居住地など
分割する基準は様々である。
2. ターゲティング (Targeting)(ターゲット選定)
セグメンテーションされたグループ(セグメント)から、標的とすべき市場を選定
する。
「消費者」の中から「見込み客」を選定するということ。
3. ポジショニング (Positioning)
標的とする市場(見込み客)の心の中で、どのようなポジションを占めたいのかを
決める。顧客ニーズと提供できる価値、差別化できるポイント(独自性)を考慮する。
このとき、ポジショニングマップを作成し、ビジュアル化することが多い。
市場
セグメンテーション ターゲティング
ターゲット
様々な条件で繰り返す
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
44
マーケティングミックス
ブランドの構築
マーケティングミックスとしては、ジェローム・マッカーシーが提唱した4Pが有名
である。
・Product(製品) :製品、サービス、品質、パッケージ 等
・Price(価格) :価格、割引制度、支払条件 等
・Place(流通) :チャネル、輸送、流通範囲、品 え、在庫 等
・Promotion(プロモーション) :販売促進、広告、ダイレクトマーケティング 等
これに対し、ロバート・ラウターボ−ンは顧客の視点からマーケティングを考える
必要があるとし、4Cを提唱した。
・Customer value(顧客価値) :顧客がその商品を手に入れたり、使用したりす
ることで得られる価値 等
・Customer cost(顧客コスト) :時間、面倒臭さ、支払った金額 等
・Convenience(利便性) :入手することの容易さ 等
・Communication(コミュニケーション) :顧客が欲しがる情報を提供する 等
マーケティングにおいて重要なのは、どのようなマーケティングミックスの枠組み
を使用するにしても、それぞれのマーケティングツールの間で一貫したコンセプトに
従ったメッセージングが行われることである。
実際にマーケティング活動を考えるさい、その対象範
囲は広大になってしまう。マーケティング戦略を考え
るさいに利用されるマーケティングツールを組み合わ
せるための枠組みをマーケティングミックスと呼ぶ。
MECEとフレームワーク
MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは日本語で「もれなくダブりなく」と
いう意味である。分析や企画などをするさい、情報を網羅しなければならない機会は非常に多い。その
さいに、情報を「もれなく」、そして「ダブりなく」集めなさい、ということである。
しかし、「ダブりなく」は、集めた情報を検査すれば確認できるとしても、「もれなく」は、どのよう
に実現すれば良いのであろうか?
厳密な意味で、情報をもれなく収集するのは不可能であるが、情報収集の枠組みを予め用意し、その枠
組みに必要な情報を集めていく方法をとることで、現実的には「もれなく」を達成することが可能にな
る。このように使用する枠組みのことをフレームワークと呼ぶ。フレームワークには、様々な種類があ
る。このテキストで紹介する4P/4CやSWOTなどもフレームワークである。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
45
マーケティングが販売プロモーションと違う点をリス
トアップしてください。
演習
ブランドの構築
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
46
ブランド構築のステップ
ブランドの構築
1. ブランディングの目的(事業の目的、マーケティングの目的、3C)
2. セグメンテーション:市場規模調査
3. ターゲティング:顧客層調査
4. ポジショニング:ブランド連想の調査
5. ブランド・アイデンティティの作成
6. ブランディングの目標策定:戦術レベルでの目標作成
7. ブランド要素・ブランド体験の設計:ブランド体験シナリオ、4P/4C
8. ブランディング計画の作成:実行計画と実施
ブランド・バリュー戦略とは、ビジネスを俯瞰し個々
の活動がブレないようにするためのフレームワークの
一つと捉える事が可能である。そのため、事業戦略や
マーケティング戦略などと矛盾することなく、それら
の上に構築するというイメージで臨む必要がある。
これらのプロセスの間に様々なドキュメントを作成することになるが、ブラン
ド構築という視点で見ると、以下のドキュメント類はとくに必須である。
ガイドライン:ブランド要素の使用規約
ブランド・ステートメント:そのブランドの価値観・思想・ミッションなどを
関係者全員で共有する
STPマーケティング
ペルソナ
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
47
ブランド構築のステップ
1. ブランディングの目的
ブランドの構築
ブランドを構築する目的は、事業やマーケティングの
目的と基本的には同じとなる。単なる事業戦略やマー
ケティング戦略としての活動ではなく、ブランド構築
/維持として意識的に活動していく理由は、近視眼的
な直近の売り上げのみを目的とするのではなく、長い
目で見たステークホルダー(顧客だけではなく)との
関係構築を行うという意思表示でもある。
つまり、そもそもブランド・バリュー戦略を行うので
あれば、直近の売り上げのみを目的としてはならない。
それよりも長期的に持続可能な事業として育てる意識
が必要となる。
製品
既存 新規
市場
既存 市場浸透戦略 新製品投入戦略
新規 市場拡大戦略 多角化戦略
現実的には、どのブランディングもその目的は「製品を認知させ、売り上げを上げ
る」ことだが、そのプロセスは様々であり、売り上げを上げるためにどのような事業
戦略をとるのかがブランディングに(また、その目的として)反映させなければなら
ない。事業戦略の区分を上記のアンゾフの製品・市場マトリックスで説明すると以下
のようになる。
・市場浸透戦略:既存製品で既存市場(顧客層)を対象に行う→リピーターの増加
・市場拡大戦略:既存製品で新規市場を対象に行う
・新製品投入戦略:新規製品を既存の市場に投入するさいに行う
・多角化戦略:新規製品を新規の市場に投入するさいに行う
既存市場を対象にすると決まっている場合は、厳密に言えばこの次のプロセスであ
る「セグメンテーション・ターゲティング」は不要となるが、その代わり現在行って
いる顧客とのコミュニケーションについて効果測定を行う。既存のマーケティング戦
略の効果測定と市場調査を行うことで、ポジショニングの変更が必要となることもあ
る。
※アンゾフの製品・市場マトリックス
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
48
ブランド構築のステップ
2. セグメンテーション
3. ターゲティング
ブランドの構築 セグメンテーション
市場をセグメントに分割しターゲット市場を抽出するさい、根拠となるデータ(市
場と顧客の分析)が必要となる。
新規製品の場合はデータに基づいて製品開発を行ったり、あるいは新製品にふさわ
しいターゲット市場を選定したりと、製品開発と市場調査の順序はケースバイケース
である。
市場を分割する枠組みとして代表的な例は以下のものがある。
地理 Geographic 国、地域、天候
人口統計 Demographic 性別、年齢、教育、家族構成、収入、職業、宗教、言語
価値観 Psychographic ライフスタイル、価値観、行動規範
準拠集団 Reference
Group
人の価値観や行動に影響を与える集団
セグメントの抽出の仕方は、
・市場全体から分割していくトップダウンアプローチ
・特定の個人の属性分析を集計していくボトムアップアプローチ
がある。
既存市場を対象にするとき、状況によってはボトムアップでセグメンテーション・ター
ゲティングを定義し直すこともありうる。つまり、現状の顧客情報をもとに共通する顧
客像を作り上げるのだ。このように、事前に想定していた層とは違う顧客が中心になっ
ているというような場合は、実情にあわせた定義をしたほうが良い。
※コミュニケーションの手法として、実際のターゲットとは異なる層に向けたメッセージングを行うこと
もある(女子高生が購買層の中心であっても、「少し大人の女性」への憧れを表現したコミュニケーション
を行う例など)ので、顧客層が想定と異なる場合、急激にコミュニケーションの内容を変化させるのは注意
が必要である。
ブランドの対象となる市場を選定するため、市場細分
化(セグメンテーション)して選定(ターゲティング)
する。
統計データや市場調査などをもとにターゲットとする市場を細分
化/選定する。これらのステップは、ブランディングの目的によっ
て行うべき作業が変わる。忘れてはならないのは、このプロセス
が「どこに顧客がいるのか」を探る作業であるということだ。
売りたい製品がある
製品にあわせたターゲット市場を選択
→ 市場規模は適切か?アプローチが可能か?
狙いたいターゲットがある
ターゲットが欲しがる製品の提供
→ ターゲットのニーズは?
顧客は誰なのか知りたい(既存市場・既存製品)
既存の顧客の分析
ターゲティング
マーケティングの対象となるセグメント(ターゲット市場)を選択する。選択され
たセグメントが、十分な市場規模(規模と成長度)を持っていることが重要である。
顧客像の調査が必要になる。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
49
ブランド構築のステップ
4. ポジショニング
ブランドの構築
ここで注意が必要なのは、これらの項目は分類することが目的なのではなく、適切なポジショ
ニングを発見するためのヒントである、ということだ。
新たなポジショニングを発見するためには、自分自身や顧客が持っている思い込みに気づく
必要がある。そのためにも、ポジショニングマップを作成する前に結論が自明のものだと思っ
たとしても、上記のすべての方向性について検討しておくことが望ましい。
ポジショニングとは、標的とする市場(見込み客)の
心の中で、どのようなポジションを占めたいのかを決
めることである。
既存製品と新規製品ではアプローチが異なる。
既存製品
顧客の心の中でどのようなポジションを占めているのか?
競合との関係は?
購買しなかった客にとっては、どのようなポジションだっ
たのか?
現状のポジションを変えることは可能か?
新規製品
市場の中で独自性を出せるポジションは?
競合はどのようなポジションを占めている?
空いているポジションはあるか?
製品属性 製品そのものに独自性があるか?
ベネフィット 製品・サービスが提供する便益に独自性があるか?
購買状況、消費状況 製品・サービスの買い方や使い方に独自性があるか?
顧客 ターゲットそのものに独自性があるか?
競合との対立 競合と対立している部分は?
競合との違い 競合と対立していないが異なる部分は?
競合との類似 競合と同じ部分は?
競合の設定 別カテゴリーあるいは別ランクの製品・サービスを競合と見なせるか?
メタファー まったく別の商品カテゴリーのブランドに例えることはできるか?
ポジショニングの方向性として代表的なものを挙げる。
これらの例として、以下のようなものが考えられる。
製品属性 電気を使わない暖房器具、音質がクリアな携帯電話、水に溶けるメモ用紙
ベネフィット フィルターを掃除しなくて良いエアコン、2倍の速さで剃れるシェイバー
購買状況、消費状況
朝6時から並んで整理券を手に入れないと買えない店、水のいらない下痢
止め薬、使い捨てコンタクトレンズ
顧客 高齢者のためのスーパー
競合との対立 VHSとβ、ノートパソコンとデスクトップ
競合との違い お代わり自由、座り心地の良いシート
競合との類似 リンク機能、エコロジーに配慮した製法
競合の設定 TV番組の競合はインターネットや携帯
メタファー
お母さんの味、ママの味、マッサージ業界のリッツ・カールトン、家電の
ジャガー、ホテル並の家事代行
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
50
ポジショニングマップ
ブランドの構築
ポジショニングマップの形式
条件1(低)
条件1(高)
条件2(低) 条件2(高)
競合1
競合2
自社
製品
様々な条件で繰り返す
このように、自社製品がどのような位置を占めるかだけではなく、競合がどのよう
な位置を占めるかも知っておく必要がある。競合製品が自社製品と同じポジションを
占めている場合、その競合製品と自社製品がどこで差別化できているのかを知るため
に、条件を変えてマップを何度も書き直す。最終的に決定したポジションが顧客にとっ
て意味のあるものかどうか、厳しくチェックする。意味のあるものでなければ、ポジ
ショニングマップを作成しても無駄になってしまう。
このようにしてポジショニングを策定するさいに、 自社製品がどの位置を占めて競
合製品がどこに配置されるのか決定するため、前提となる調査情報が必要になる。調
査方法は様々であるが、ここでは連想マップを紹介しておく。連想マップとは、ブラ
ンドやニーズとつながるキーワードから、調査対象に自由連想してもらい、連想の関
連と強さを分析する方法である。
ポジショニングマップは次のような形式で作成する。
連想マップの例
海
夏
水着
日焼け
水泳
サ
ー
フ
ィ
ン
※ペルソナにとっての連想の関連の強さを分析する。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
51
ブランド構築のステップ
5. ブランド・アイデンティティ
ブランドの構築
ブランド・アイデンティティは、顧客にどのようなブ
ランド・イメージを持ってほしいかを表現したもので
ある。
ブランド・アイデンティティを規定する目的は、ブランド・バリュー戦略を実施し
ていく中で、顧客が体験するすべてのブランド体験が一貫性を保ち、顧客の記憶の
中で意味を持って連結されるように、すべてのコミュニケーションにおいて軸とな
る概念を関係者全員が共有することである。したがって、ブランド・アイデンティ
ティはできるだけ簡潔でかつ誤解されないものである必要がある。
ブランド・アイデンティティは「顧客にどのようなブランド・イメージを持ってほ
しいか」を表現したものであるから、顧客視点に立って考えなければならない。
下図のそれぞれの要素について考えていく。
1. ターゲットのどのようなニーズ(Needs)に答えるのか?
2. どのような便益(Benefit)を提供するのか?
3. どのようなポジティブな感覚(Feeling)を与えるのか?
4. ニーズと感覚の間で何が生まれるか?
5. ニーズと便益の間で何が生まれるか?
6. 便益と感覚の間で何が生まれるか?
7. すべてを統合するものは何か?
Needs
Feeling Benefit
このプロセスは、表現を変えればUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)を作成し、
共有するためのプロセスとも言える。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
52
ブランド構築のステップ
6. ブランディングの目標策定
ブランドの構築
具体的な数値目標を作成する。
右の戦略マップを用いて、一目で把握出るようにしておく。
A リーチ可能な見込み客リスト獲得
B 見込み客の顧客化
C 顧客のリピーター化
D リピート頻度の増大
E 客単価の増大
上記それぞれについて施策を策定する必要がある。
顧客数 売上
市場
見込み客
顧客
リピーター
平均リピーター数
A
B
C
E
D
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
53
ブランド・バリュー戦略マップ
ブランドの構築
期限: 年 月
顧客数 売上
市場
見込み客
顧客
リピーター
平均リピート回数
A
E
B
C
D
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
54
ブランド構築のステップ
7. ブランド要素・
ブランド体験の設計
ブランドの構築
見込み客や顧客とのコンタクトポイントである、すべ
てのブランド要素とそこでの体験を設計する。
ブランド要素とその体験をリストアップし、それぞれ設計していく。
下図のそれぞれの要素について考えていく。
1. コンタクトポイントは?
2. 使用方法は?
3. 顧客はどのような体験をしてほしいか?
4. 禁止事項
5. 推奨事項
6. 必要であれば利用方法のガイドライン
7. 戦略マップのどこを目的としたものか?
8. 効果目標
9. ブランド・アイデンティティと矛盾しないか?
すべてのブランド要素をリストアップし、戦略マップと照らし合わせること
で、足りないブランド要素が把握できる。
ブランド要素 概要
コンタクト
ポイント
推奨 禁止
要素A 公式サイト
要素B
要素C
要素D
要素E
…
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
55
ブランド構築のステップ
8. ブランディング計画の作成
ブランドの構築
ブランド要素ごとに、実行計画を作成する。 前項でリストアップしたブランド要素それぞれについてスケジュールを作成する。
スケジュールを作成するさいに、単純に「制作」や「公開」などとして終了する
のではなく、それぞれのPDCAサイクルをスケジュールに記載しておくこと。
ブランド要素 概要 マップ番号 目標 KPI
コンタクト
ポイント
推奨 … スケジュール
要素A A 10 公式サイト
要素B B 15
要素C C 5
要素D D
要素E E
…
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
56
ブランド構築のステップ
最後にチェック!
ブランドの構築
ブランド戦略の概略をまとめる。
右図のブランド・バリュー・ピラミッドを下から埋め
ていき、ブランド・アイデンティティとの矛盾を再
チェックする。
When? Where?
What?
How?
Why?
Who
am I?
いつ、どこで?
なにを?
どのように?
なぜ?
私は何者か?
ブランド・バリュー・ピラミッド
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
57
以下の製品・サービスの主なターゲット市場は、どの
ようにセグメンテーションされるか説明してください。
※ターゲット市場は複数あっても構いません。
・名刺のスピード印刷
・新宿駅前の街頭占い師
・東京郊外でイチゴ狩り
・高級ハンバーガー
・大学受験情報提供ウェブサイト
・格安焼き肉チェーン
演習
ブランドの構築
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
58
自分でテーマを決めてポジショニングマップを作成し
てください。
(コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、歌手
など)
演習
ブランドの構築
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
59
ブランド体験を設計するためには、ターゲットとなる
消費者の行動を理解する必要があります。
以下の製品をブランディングするという設定で、
・ターゲティング
・ポジショニング
・ターゲットの行動シナリオ(どのようなライフスタ
イルを持ち、いつどのようなブランド体験をするか)
を考えてください。
・ノンカロリーの缶チューハイ
・品川駅構内に新設されたビジネスホテル
・携帯用空気清浄機
・水のいらない胃薬
・東武特急スペーシア(浅草・新宿・池袋から日光・
鬼怒川まで2時間)
・ペット用健康保険
・浪曲専門の寄席
演習
ブランドの構築
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps
60
新規ブランドの構築を実際に試してみてください。テー
マは自由に設定して構いません。
(例)和菓子、携帯電話、コピー機、歯科医院、焼き
鳥屋、カフェ、図書館、途上国支援
ブランド構築のシミュレーション
演習
ブランドの構築
61
2015年01月15日 第1版
作成 株式会社つくるひと
監修 株式会社つくるひと 代表取締役 小野ゆうこ
発行所 一般社団法人 ブランド・バリュー協会
〒 150−0013
東京都渋谷区恵比寿1−15−9 シルク恵比寿ビル2階
本書の内容の一部または全部を許可無く複写(コピー)することは、法律で定められ
た場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。
一般社団法人 ブランド・バリュー協会
ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム
Brand Value
Basic Knowledges & Building Steps

Mais conteúdo relacionado

Mais procurados

Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査
Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査
Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査Meiji University / 明治大学
 
Mktg02 マーケティングとは何か
Mktg02 マーケティングとは何かMktg02 マーケティングとは何か
Mktg02 マーケティングとは何かTakeshi Matsui
 
知福!惜福喲!
知福!惜福喲!知福!惜福喲!
知福!惜福喲!cscqkepongkl
 
Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学
Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学
Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学Meiji University / 明治大学
 
戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)
戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)
戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)取締役
 
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回Yasuchika Wakayama
 
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回Yasuchika Wakayama
 
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回Yasuchika Wakayama
 
不確実性への挑戦Ver0.1
不確実性への挑戦Ver0.1不確実性への挑戦Ver0.1
不確実性への挑戦Ver0.1naoto kyo
 
中小企業B2Bマーケティング(web版)
中小企業B2Bマーケティング(web版)中小企業B2Bマーケティング(web版)
中小企業B2Bマーケティング(web版)Koichi Fukunaga
 
第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』
第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』
第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』Shu Takeda
 
「営業術」で営業力をアップする
「営業術」で営業力をアップする「営業術」で営業力をアップする
「営業術」で営業力をアップする弘実 佐野
 
ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5
ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5
ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5naoto kyo
 
お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?
お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?
お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?torix-corp
 
10 Steps to Product Market Fit - Japanese Translation
10 Steps to Product Market Fit - Japanese Translation10 Steps to Product Market Fit - Japanese Translation
10 Steps to Product Market Fit - Japanese TranslationMomoko Nagaoka
 

Mais procurados (20)

Marketing 10 クチコミの影響力と効果測定
Marketing 10 クチコミの影響力と効果測定Marketing 10 クチコミの影響力と効果測定
Marketing 10 クチコミの影響力と効果測定
 
Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査
Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査
Marketing 04 客観的に状況を把握する市場調査
 
Marketing 05 消費者はいかに行動するか?
Marketing 05 消費者はいかに行動するか?Marketing 05 消費者はいかに行動するか?
Marketing 05 消費者はいかに行動するか?
 
Marketing 00 全体の構成
Marketing 00 全体の構成Marketing 00 全体の構成
Marketing 00 全体の構成
 
Mktg02 マーケティングとは何か
Mktg02 マーケティングとは何かMktg02 マーケティングとは何か
Mktg02 マーケティングとは何か
 
知福!惜福喲!
知福!惜福喲!知福!惜福喲!
知福!惜福喲!
 
Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学
Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学
Marketing 09 消費者の感性を科学する感性工学
 
戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)
戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)
戦略とは何か?|経営戦略フレームワーク活用講座(初級編)
 
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第4回
 
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第1回
 
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回
慶應ビジネススクール 新事業創造体験 2018年 第2回
 
不確実性への挑戦Ver0.1
不確実性への挑戦Ver0.1不確実性への挑戦Ver0.1
不確実性への挑戦Ver0.1
 
中小企業B2Bマーケティング(web版)
中小企業B2Bマーケティング(web版)中小企業B2Bマーケティング(web版)
中小企業B2Bマーケティング(web版)
 
第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』
第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』
第2回クラウド・マーケティング研究会『クラウドサービスのバリューチェーン分析』
 
「営業術」で営業力をアップする
「営業術」で営業力をアップする「営業術」で営業力をアップする
「営業術」で営業力をアップする
 
ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5
ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5
ソーシャルメディア活用のワークショップ ver1.5
 
シェアリングエコノミー
シェアリングエコノミーシェアリングエコノミー
シェアリングエコノミー
 
お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?
お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?
お客様が当社を選ぶ「理由」に焦点を当てる営業とは?
 
10 Steps to Product Market Fit - Japanese Translation
10 Steps to Product Market Fit - Japanese Translation10 Steps to Product Market Fit - Japanese Translation
10 Steps to Product Market Fit - Japanese Translation
 
ビジネスモデルの詳細定義
ビジネスモデルの詳細定義ビジネスモデルの詳細定義
ビジネスモデルの詳細定義
 

Semelhante a Curriculum

BCDのABC Reborn
BCDのABC RebornBCDのABC Reborn
BCDのABC RebornShu Iwami
 
BCDのABC(最新版)
BCDのABC(最新版)BCDのABC(最新版)
BCDのABC(最新版)Shu Iwami
 
Learning kotler's basic marketing in one hour
Learning kotler's basic marketing in one hourLearning kotler's basic marketing in one hour
Learning kotler's basic marketing in one hourKoichi Okubo
 
Lean startup コアの概念 overview_jp
Lean startup コアの概念 overview_jpLean startup コアの概念 overview_jp
Lean startup コアの概念 overview_jpYuki Sekiguchi
 
Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)
Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)
Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)Takaaki Umada
 
Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014
Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014
Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014Shin Yamamoto
 
45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄
45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄
45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄Yukio Saito
 
顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)
顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)
顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)Takashi Tsutsumi
 
2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥Tsutomu TOBITA
 
2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥Tsutomu TOBITA
 
ブランドメッセージについて
ブランドメッセージについてブランドメッセージについて
ブランドメッセージについてKiyohisa TAKADA
 
マーケティング4.0とクチコミの効果測定
マーケティング4.0とクチコミの効果測定マーケティング4.0とクチコミの効果測定
マーケティング4.0とクチコミの効果測定Motohiko Tokuriki
 
ブランドシェア 2014
ブランドシェア 2014ブランドシェア 2014
ブランドシェア 2014Edelman Japan
 
2018意思決定会計論④
2018意思決定会計論④2018意思決定会計論④
2018意思決定会計論④Tsutomu TOBITA
 
140612 digital casestudies_ver1.0
140612 digital casestudies_ver1.0140612 digital casestudies_ver1.0
140612 digital casestudies_ver1.0Yoichi Nishikawa
 
Letro サービス資料
Letro サービス資料Letro サービス資料
Letro サービス資料AAsolution
 
B2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計について
B2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計についてB2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計について
B2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計についてNori Takahiro
 
会社紹介資料 0107
会社紹介資料 0107会社紹介資料 0107
会社紹介資料 0107ssuser3b8a32
 

Semelhante a Curriculum (20)

BCDのABC Reborn
BCDのABC RebornBCDのABC Reborn
BCDのABC Reborn
 
Csvセミナー2014 07 25
Csvセミナー2014 07 25Csvセミナー2014 07 25
Csvセミナー2014 07 25
 
BCDのABC(最新版)
BCDのABC(最新版)BCDのABC(最新版)
BCDのABC(最新版)
 
Learning kotler's basic marketing in one hour
Learning kotler's basic marketing in one hourLearning kotler's basic marketing in one hour
Learning kotler's basic marketing in one hour
 
Lean startup コアの概念 overview_jp
Lean startup コアの概念 overview_jpLean startup コアの概念 overview_jp
Lean startup コアの概念 overview_jp
 
Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)
Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)
Lean Customer Development と顧客インタビュー (技術者/研究者発スタートアップのためのリーンスタートアップ)
 
Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014
Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014
Healthcare Business Model Innovation RevB 3oct2014
 
45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄
45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄
45分で理解する マーケティングリサーチ・トレンド入門 斉藤之雄
 
顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)
顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)
顧客開発モデル概要(Samurai Venture Summit 4)
 
2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥
 
2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥2018工業経営(九産大)⑥
2018工業経営(九産大)⑥
 
ブランドメッセージについて
ブランドメッセージについてブランドメッセージについて
ブランドメッセージについて
 
マーケティング4.0とクチコミの効果測定
マーケティング4.0とクチコミの効果測定マーケティング4.0とクチコミの効果測定
マーケティング4.0とクチコミの効果測定
 
ブランドシェア 2014
ブランドシェア 2014ブランドシェア 2014
ブランドシェア 2014
 
2018意思決定会計論④
2018意思決定会計論④2018意思決定会計論④
2018意思決定会計論④
 
140612 digital casestudies_ver1.0
140612 digital casestudies_ver1.0140612 digital casestudies_ver1.0
140612 digital casestudies_ver1.0
 
Letro サービス資料
Letro サービス資料Letro サービス資料
Letro サービス資料
 
B2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計について
B2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計についてB2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計について
B2Bデジタルマーケター養成講座 DAY1〜デジタルによるB2Bマーケティングの変化の把握、そしてそのスタート地点としてのペルソナ設計について
 
会社紹介資料 0107
会社紹介資料 0107会社紹介資料 0107
会社紹介資料 0107
 
会社紹介資料
会社紹介資料 会社紹介資料
会社紹介資料
 

Último

ストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdf
ストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdfストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdf
ストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdfmasakisaito12
 
シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料
シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料
シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料シンフォニティ 株式会社
 
202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)
202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)
202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)KayaSuetake1
 
UP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチ
UP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチUP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチ
UP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチユニパー株式会社
 
Service-introduction-materials-misorae-leadership
Service-introduction-materials-misorae-leadershipService-introduction-materials-misorae-leadership
Service-introduction-materials-misorae-leadershipYasuyoshi Minehisa
 
株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店
株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店
株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店ssuserfb441f
 
20240427 zaim academy counseling lesson .pdf
20240427 zaim academy counseling lesson .pdf20240427 zaim academy counseling lesson .pdf
20240427 zaim academy counseling lesson .pdfssuser80a51f
 
ストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdf
ストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdfストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdf
ストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdfmasakisaito12
 

Último (8)

ストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdf
ストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdfストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdf
ストックマーク株式会社がお客様へご提供しているAnews概要資料のご共有.pdf
 
シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料
シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料
シンフォニティ株式会社(SYMPHONITY , Inc.) 会社説明・人材採用資料
 
202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)
202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)
202405_VISIONARYJAPAN_engineerteam_entrancebook(ver2.1)
 
UP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチ
UP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチUP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチ
UP103シリーズ パワーコメット ユニパー スライドレールタイプ 瓦揚げ機 ウインチ
 
Service-introduction-materials-misorae-leadership
Service-introduction-materials-misorae-leadershipService-introduction-materials-misorae-leadership
Service-introduction-materials-misorae-leadership
 
株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店
株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店
株式会社MAVEL会社概要_アフィリエイト広告_運用型広告_LTVを予測しLOIを最適化する広告代理店
 
20240427 zaim academy counseling lesson .pdf
20240427 zaim academy counseling lesson .pdf20240427 zaim academy counseling lesson .pdf
20240427 zaim academy counseling lesson .pdf
 
ストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdf
ストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdfストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdf
ストックマーク株式会社がご提供しているAnews(エーニュース)概要紹介.pdf
 

Curriculum

  • 2. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 2 「作れば売れる時代」から、競争が激しくなり消費者が選択できる時代になった結果、マーケティングが生まれた。 マーケティングは、競合との差別化ポイントを明確にして顧客や見込み客に伝えるためのフレームワークである。 顧客ニーズを分析し、いかに競合製品/サービスよりも自社製品/サービスのほうがニーズを満たしているのかを競った。 しかし、さらに時代が進み画期的な商品も短期間でコモディティ化する「差別化」そのものが難しい時代になった。 機能的な差異がなかったり、わかりにくかったりするときに、消費者は何を元に購買決定しているのか? 消費者の購買決定と結びつくニーズや心象の体系と、それらを作り上げるためのフレームワークをブランディングと呼ぶ。 この講座では、マーケットシェアの時代からマインドシェアの時代になった今、もっとも重要なビジネスの概念であるブランディ ングの体系を学んでいただく。 また、マインドシェアを高めるために必要なブランド・バリューについて理解し、継続的な活動を行うための基礎固めをする。 はじめに
  • 4. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 4 腕時計 スーツ 靴 雑誌 自動車 パソコン 香水 アクセサリー お腹が空いたら? ボールペン ミネラルウォーター 牛乳 ノート 靴下 コピー用紙 洋服を買う店はどこ? 書籍を買う店はどこ? 電化製品を買う店はどこ? シャンプーを買う店はどこ? あなたが購買行動をとるとき、購入する商品は事前に 決定していますか? 決定している場合はそのブランド名を書いてください。 (複数回答可) 演習 ブランドとは?
  • 5. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 5 ブランドとは何か? ブランドとは? 商品・サービス(そのものだけではなく、それらのプロモーションも含む)と接す るあらゆる機会を経て、消費者の心の中に立ち上がるものが、その商品・サービスの ブランド・イメージ (Brand Image) である。ある消費者が何らかの購買ニーズを抱 いたときに、まっさきに想起される商品・サービスは、その消費者に対してブランド を確立していると言える。このように購買ニーズが発生したときに特定の商品やサー ビスを連想させ、購買決定に影響を及ぼす力を持つものがブランドであり、消費者の 購買行動に影響を及ぼすことを意図してブランド構築を行うことをブランド戦略と言 う。また、当協会ではブランドの価値を高める活動を継続して行うことをとくにブラ ンド・バリュー戦略と呼ぶ。 企業側からみた「ブランド」 とは、製品・サービスそのものであり、またその製品・ サービスを競合製品と識別、差別化を意図した要素の集まりのことである。同じブラ ンドであっても、企業側から見たブランド・イメージと消費者から見たブランド・イ メージがずれてしまっていては、意図的なブランドの構築ができているとは言えない。 ブランド・マネージャーは、自社のブランドを顧客にどのようにとらえてほしいのか (ブランド・アイデンティティ (Brand Identity))を明確にし、そのプロセスを設 計・管理しなければならない。 ブランドは競合他社の製品・サービスと識別し差別化するために使用される。この 「識別」と「差別化」の違いは重要である。企業側にとっては「識別」だけではなく 「差別化」が可能になっていてはじめてブランドとしての意味を持つからだ。 この目 的のために製品・サービスに(物理的にだけではなく)付与される名称やデザインな どのあらゆる要素を「ブランド要素 (Brand Element)」と呼ぶ。 「識別」は単に区別ができるということであるが、「差別化」というのは「他の競 合他社の製品・サービスと明らかに違う優位性・唯一性」が存在するということであ り、この違いにより消費者の購買決定を左右する力を持つということである。このと き、消費者の購買決定を左右する力を持たないのであれば、その優位性・唯一性は正 しい意味での優位性・唯一性ではない。差別化の手法は「ブランドの確立」以外にも、 「機能・品質の差別化」や「高付加価値サービス」など様々だが、差別化に失敗した 場合は価格競争に巻き込まれる危険性が高まる。差別化が難しい日用品などのコモディ ティーの場合は、ブランドを確立することで差別化を図ることができる。 ブランドとは「ある売り手あるいは売り手の集 団の製品およびサービスを識別し、競合他社の 製品およびサービスと差別化することを意図し た名称、言葉、サイン、シンボル、デザイン、 あるいはその組み合わせ」 アメリカ・マーケティング協会によるブランドの定義
  • 6. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 6 資産としてのブランド ブランドとは? (P&Gのブランド売買の例) 1. 日本ヴィックスを買収 ※便秘薬「コーラック」、ニキビ治療薬「クレアラシル」、哺乳瓶消毒剤「ミルトン」、 塗布風邪薬「ヴィックス ヴェポラッブ」、のど薬「ヴィックス コフドロップ」 2. 「クレアラシル」をブーツ・ヘルスケア・ジャパンに売却 3. ヘルスケア製品ブランド「ヴィックス」(ヴィックス ヴェポラッブなど)を大正製薬 へ 4. 「コーラック」を大正製薬に売却 ブランドは資産として売買の対象になる。これをブランド・エクイティ (Brand Equity) と呼び、次の式で表すことができる。 ブランド・エクイティ = 資産 ­ 負債 = 正味資産 ブランド・エクイティの提唱者であるデービッド・アーカーによれば、その構成要 素には「ブランド・ロイヤルティ」「ブランド認知」「知覚品質(消費者が感じる品 質)」「ブランド連想」がある。資産価値の算出方式には大きく分けて「財務データ 法(財務資産としての価値)」と「 質問調査法(顧客ベースの価値)」のふたつのア プローチ方法がある。 ブランドは資産として売買の対象になる
  • 7. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 7 自家用車のブランドを次の基準で分類したとき、各象 限に代表的なブランド名を記入してください。 演習 ブランドとは? 高級 手頃 ファミリー スポーティー
  • 8. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 8 説明では、「競合他社の製品・サービスと明らかに違 う優位性・唯一性が存在するときに差別化できている」 とあります。機能・品質・サービスにおいて優位性・ 唯一性がないときでも、ブランドは確立できるのでしょ うか? できるとしたらその理由は? 自分の体験を踏まえて考えてください。 演習 ブランドとは?
  • 9. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 9 「機能やデザインで差別化している例」と「機能やデ ザインに差はないがブランドで差別化している例」を 挙げてください。 ここではパッケージやロゴなどもブランドだと考えて ください。 演習 ブランドとは? 機能やデザインで差別化している例 機能やデザインに差はないが、ブランドで差別化している例
  • 10. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 10 ブランドはそのブランドを持つ商品・サービスと、競 合他社の商品・サービスを識別する機能を持ちます が、この機能が企業と消費者に利益をもたらすケース と、損失を与えるケースを考えてください。 演習 ブランドとは? 企業と消費者に利益をもたらすケース 損失を与えるケース
  • 11. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 11 ブランドの歴史 ブランドとは? 古くから、放牧している家畜が他人の所有物と紛れてしまわないように、自らの所 有物であることを示す「焼印」を押す風習がある。 英語の「brand」にはこの「焼印」 という意味があり、「焼印をつける」ことを意味する brandr という古ノルド語から 派生したものだと言われている。また、中世ヨーロッパのギルド社会では生産者を識 別し、信用のための出所表示としての商標を義務づけていた。このようにブランドと は古来より、生産者が他の生産者の製品と区別するための手段であった。 しかし、焼印は単に自分の所有物であることを示し、また中世の商標は生産者を識 別する機能だけを持つ。これらは今日で言うところの「ブランド」とは別のものであ る。今日の「ブランド」とは、単に所有権の主張や生産者の識別のためのものではな く、競合との差別化を図り消費者の購買決定に影響を与えることを意図するものであ る。 現代では、流通の発展により消費者の購買選択肢は飛躍的に拡大したが、同時に消 費者が購買決定のさいに利用できる情報が飛躍的に増大したわけではなく、購買決定 は難しくなった。そのため、消費者はブランドが信頼できるものかどうかで購買決定 する傾向が強まり、ブランドの認知という面で地方の中小メーカーは大手のメーカー に太刀打ちできず、淘汰される傾向にある。 所有権の表示 ブランド機能の変遷 生産者の識別 競合との差別化 放牧する牛への焼印 ギルドによる統制 商標の保護 企業によるブランド戦略 ナショナルブランドの成立 「ナショナルブランド」とはTVCMなどの全国規模の広告により高い知名度を持ち、全国どこで も手に入れることができるもの。
  • 12. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 12 ブランドを守る ブランドとは? 商標:商標登録することによって効力を発揮する、自社の商品・サービスと他社の それとを識別するための標識。 商号:会社の名称。同一営業所で同一の営業については複数の商号を持つことはで きない。類似商号の規制は現在廃止されていて、不正競争防止法を適用する。 意匠:デザインのこと。意匠登録することで効力を発揮する。 ブランド要素の多くは法律で保護の対象となりうる。 ブランドを管理するためには、自社のブランド要素が 他社によって不正に利用されていないかどうか、常に 監視する必要がある。 商標 商号 意匠 法律 商標法 商法、商業登記法、会社 法 意匠法 保護の対象 商品・サービス 商人の名称 新規性と創作性があ り、美感を起こさせ る外観を有する物品 の形状・模様・色彩 のデザインの創作 対象の要素 文字・記号・図形・立体と、 これらの組み合わせ 日本文字、ローマ字、ア ラビア文字、一部の記号 有効期限 登録から10年(更新は永続) 登記以降 期限無し 登録から20年 その他 先出願主義 一般的に商標を明記するさいに使用される記号には、™(trade mark)、 ®(registered trademark)などあるが、日本の法律で定められているのは「登録 商標」という表記のみであり、「™」「®」などは慣習として使用されている。 施行規 則第17条によれば「登録商標」と表示するよう努めなければならないと定められてい るが、表示しなくても罰則はない。また、権利が取得されていない名称に ® の表示を 付すと虚偽表示(第74条)とされるおそれもある。 企業間の公正な競争の実施を確保するため不正競争防止法が定められている。 代表的な不正競争行為の類型として次のようなものが挙げられる。 ・周知表示混同惹起行為 ・著名表示冒用行為 ・商品形態模倣行為 ・原産地等誤認惹起行為 ・代理人等商標無断使用行為
  • 13. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 13 ブランド紛争 ブランドとは? (一澤帆布工業) 京都にある一澤帆布工業は、赤いタグが縫い込まれた布製のカバンで有名だった。 2001年、3代目の死去に伴い、相続人である子供たちの間で相続を巡りトラブルに なる。当時、3男が社長を務めていたが、長男側が提出した遺言状が2006年に有効 と判定され、長男が社長に就任した。 しかし、3男は社長を解任されると信三郎帆布を新たに立ち上げ、一澤帆布工業の 職人も全員が新会社に移転してしまった。そのため一澤帆布工業は半年ほどのあいだ 営業停止に追い込まれた。 その後、両社は意匠の似通った製品を製造・販売しているが、長男側が3男側を商 標権侵害で提訴するなど、ブランドの毀損がつづいている。 同様のトラブルは横浜元町のバッグブランド「キタムラ」と「キタムラK2」の間で も起こっている。 (キユーピー) 1998年、キューピー人形の著作物を発行したローズ・オニール遺産団体より日本に おける著作権を許諾された「日本キューピークラブ」の代表が、キユーピーマヨネー ズの登録商標(キユーピーの文字と人形)は 著作権侵害にあたると提訴したが、請求 を棄却された。 (マールボロ・フライデー) ブランドが確立された事例として頻繁に紹介される「マールボロ(Marlboro)」の 価格をメーカーであるフィリップ・モリスが、1993年4月3日に20%引き下げること を発表した。低価格煙草などとの価格競争のためであった。発表のあとフィリップ・ モリスの株価は26%下がった。それだけではなく、同様に消費材のブランド・メーカー (コカ・コーラ、ハインツ、ペプシコ、RJR ナビスコなど)の株価も同様に急落した。 その日、S&P500指数(スタンダード・アンド・プアーズ社が算出しているアメリカ の代表的な株価指数)は1.98%低下した。「マルボロマンが落馬した日」「マーケティ ングが死んだ日」「ブランドが死んだ日」などと呼ばれた。
  • 14. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 14 ブランドの種類 ブランドとは? ブランド戦略とは、このような様々な製品において、競合する他製品と差別化する ためにブランド要素を管理し一貫したブランド・イメージを構築・維持していく活動 である。 例えば、上図におけるコーポレートブランドと製品ブランドが消費者に矛盾したも のとして捉えられかねない場合は、一貫したブランド・イメージを構築するか、ある いは製品ブランドとコーポレートブランドを意図的に分離する必要がある。 ブランド戦略が成功すると、ブランド名が製品の普通名詞として通用するようにな るケースがあるが、その場合は結果的に他社の参入を許すことになりかねないので注 意が必要である。 いち消費者として「ブランド」と言われると、商品と しての「ブランド」を連想するかもしれないが、ブラ ンド・マネージメントの対象になるブランドは商品だ けではない。 ※ここで重要なのは、「どのブランドが何に分類され るべきか」ということではなく、「ブランドとして扱 うことができる領域は広い」という理解である。 機能やデザインで差別化している例 ブランドの対象 ブランドの種類 例 製品 (有形財) 消費財 個別ブランド 製品ブランド ナショナルブランド ホッチキス、カップヌードル 生産財 サービス (無形財) 流通業 者 プライベートブランド トップバリュ(イオン) セブンプレミアム(セブン-イ レブン等) ストアブランド その他 ディズニーランド 組織 コーポレート(企業)ブランド ソニー、東大 事業ブランド 三井のリハウス、いい部屋ネ ット 人 パーソナルブランド イチロー、岡本太郎 場所・特産品 地域ブランド 魚沼、関(サバ)、銀座 その他 成分、技術 Q10 一般的な企業におけるブランドの関係 コーポレート(企業)ブランド 事業ブランド 事業ブランド 事業ブランド ファミリーブランド ファミリーブランド 製品ブランド 製品ブランド
  • 15. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 15 以下のブランドネームについて、それぞれ対象とブラ ンドの種類を記入してください。 演習 ブランドとは? ブランドネーム 対象 ブランドの種類 パナソニック Apple VIERA ルイヴィトン 関サバ 無印良品 ユニクロ Intel Mac 東大 レクサス ダイナーズクラブ 松阪牛 ブルゴーニュワイン 牛角 化粧惑星 MacBook Pro 赤十字
  • 17. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 17 ブランドの仕組み ブランドのメカニズム ブランドを 想起 消費者 ニーズが 発生 コンタクト ブランド要素 ブランド再認 ブランド再生 ブランド認知 Brand Recognition Brand Recall Brand Awareness Brand Element
  • 18. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 18 ブランド・イメージと ブランド認知 ブランドの仕組み ブランドを想起するプロセスは以下の2通りで説明されることが多い。 ・ブランド再認 (Brand Recognition):ブランド要素に接したさいにブランドを思い出す こと。 ・ブランド再生 (Brand Recall):ニーズが発生したさいに、ブランドを思い起こすこと。 どちらのプロセスを経るにしても、その前提として消費者がブランドに対する知識を持っ ていることが必須となる。 ブランド再認の場合 ブランド要素に触れたときにブランドを想起するには、ブランドに対する認知がすでに あり、それと接したブランド要素との間の関連性を認識している必要がある。 ブランド再生の場合 消費者の心の中でニーズが発生したときブランドを思い出すには、ニーズが生まれたと きにそのブランドを連想する必要がある。つまり、消費者の心象においてニーズとブラン ド(この場合は、ブランドに結びついているイメージ群:ブランド・イメージ (Brand Image))が連結している必要がある。 ブランドの設計において、以下の点に注意すべきである。 ・どのようなブランド・イメージを持たせたいか:ブランド・アイデンティティ (Brand Identity) ・消費者がそのブランドからどのような連想(ブランド連想 (Brand Association))を するか? ・期待されるニーズとどのように連結できるか? ・連想するイメージ群からニーズとブランドを結ぶ、キーとなる概念は何か? ・競合製品はどのようなブランド・イメージを持つか? 消費者はブランドをどのように認知し記憶・想起する のだろうか。
  • 19. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 19 ブランドの仕組み ブランド再認を起こすには、ブランド体験を反復させることができれば可能であるが、 ブランド再生を向上させるには(カテゴリー内で一番に想起されるブランドでないかぎり) 適切な製品・サービスカテゴリーや購買状況、消費状況などと記憶内で連想が結びついて いる必要がある。それらの連想は「ニーズ」が発生し「購買・消費」するというプロセス の軸からずれてはならない。 ※カテゴリー内で一番に想起されるトップ・ブランドでは、ブランド再認とブランド再生の区別はあまり重 要ではないかもしれないが、他カテゴリーの競合との差別化を意識する必要がある。 これらのブランド再生を引き起こすブランド連想の集まりが「ブランド・イメージ」と 呼ばれる。ブランド・マネージャーにとって、 消費者に意図した通りのブランド・イメー ジ(ブランド・アイデンティティとその消費者の個人的な体験や価値観が連想で結びつい た状態) を持ってもらうためにコントロールできるのは、ブランド要素とブランド体験だ けである。 ブランドのターゲットとなる消費者がブランドを想起 するとき、このブランドは「認知」されていると言え る。「ブランドを認知する」(Brand Awareness) という状態はブランド再認(Brand Recognition)と ブランド再生(Brand Recall)で形成されることを学 んできた。 ブランド認知のプロセス ブランドを 想起 消費者 ニーズが 発生 コンタクト ブランド要素 ブランド再認 ブランド再生 ブランド認知 Brand Recognition Brand Recall Brand Awareness Brand Element
  • 20. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 20 ブランドの仕組み 一般にブランド連想の強さを作り出す要素として、次のようなものが挙げられる。 ブランドを設計するうえで重要なのは、ブランド、ニー ズ、ポジティブなイメージ・フィーリングの間で強い 連想の結びつきを生み出すことであるが、では連想を 強めるにはどうすれば良いのだろうか? 連想の強さ 単純接触効果(Mere Exposure Effect) 最初に聞いたときは「二度と聞きたくない」と思った曲でも、コンビニなどで何度も耳にするうちに、知らずと口 ずさむようになり「嫌いだ」という気持ちもなくなる、という経験は、多くの人が体験していることだと思う。 このように、何度も接することで好感が増していくことを「単純接触効果」と呼ぶ。 単純接触効果は新製品・新規企業の場合に有効である。その場合、何度も繰り返しブランド体験を提供することは ブランド再認を高めるのに確実に効果がある。しかし一方、メディアへの露出が多い企業ほど評価も低い傾向があ るという調査もあるように、既存製品・既存企業の場合は接触する回数が多いということが良い結果を生み出すと は限らない。 単純に接触回数の多いことが結果的に多様なブランドイメージの連想を生んでしまい、好悪両方の感 情を生み出し、意図しない結果に至ることがある。 直接的なブランド体験 ブランド情報の関連性と一貫性 消費者にとって関心のある情報:「重要」な情報ほど記憶されやすい 接触回数 ちなみに購買決定に至る要因のうちで、影響力が大きいものから順に並べると下記のよ うになる。 1 過去の経験 2 口コミや非商業的な情報 3 広告
  • 21. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 21 以下のニーズから連想するブランド名をひとつあげて ください。また、どういう連想でそのブランド名を想 起したかも書いてください。 演習 ブランドの仕組み 年を取ったら住みたい街 連想 ブランド名 喉が渇いた 連想 ブランド名 仕事の疲れ・ストレスを解消したい 連想 ブランド名
  • 22. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 22 以下のニーズから連想するブランド名をひとつあげて ください。また、どういう連想でそのブランド名を想 起したかも書いてください。 演習 ブランドの仕組み 年を取ったら住みたい街 連想 ブランド名 喉が渇いた 連想 ブランド名 仕事の疲れ・ストレスを解消したい 連想 ブランド名
  • 23. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps レゴ 1 23 以下のブランド名から連想するキーワードを自由に連 想して、キーワード間を連結してください。 演習 ブランドの仕組み 2 3 4 京都 ハーレーダビッ ドソン GAP
  • 24. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 24 ブランドの仕組み ブランドとは、キャッチコピーやロゴマーク、あるいはブランド名そのものでなく、 その商品が提供する価値、様々なブランドを構成する要素(ブランド要素)やブランド とのコンタクト体験とが複合的に結びついて、消費者の心の中で作り上げられる心象で ある。 ブランド要素の主な機能は「他の商品と区別する手段」であり、ロゴやキャッチコ ピーなど様々な要素があるが、重要なのは、それらの要素が一貫したブランド・イメー ジを与えることができるように設計・管理することである。 またこれらの主要なブランド要素以外にも、顧客が体験するブランド体験 (Brand Experience)(ブランドとのコンタクトの集積)もブランド・マネージメントを考える 上で欠かせない要素のひとつである。 「ブランド」という言葉を聞いて一般的に連想される のはブランド・ロゴであるが、ロゴはブランドそのも のではなくブランドの1要素である。 (目立つブランド要素を排除することで差別化する「ノンブラン ド戦略」もブランド戦略のひとつと言える) このように、ブランドとブランド要素を混同すること がよくあるので注意が必要だ。 ブランドの要素 ブランド 体験 ブランド・ イメージ (=ブランド連想 の体系) 消費者 ブランド要素 例 名前(ブランドネーム) シャネル ロゴ・ マーク・商標 キユーピー キャッチコピー インテル 入ってる パッケージ コカコーラ キャラクター ミッキーマウス 色 マクドナルド ジングル・音楽 日立 匂い アバクロ店舗 ドメイン kakaku.com ブランド・ アイデンティティ 企業 どう思ってほしいか どう思っているか
  • 25. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 25 ブランドの仕組み ブランド要素を設計するさいは、以下の点に注意する。 ブランドの要素の設計 記憶可能であること 意味が豊富であること :製品カテゴリーの性質やブランド固有の属性、ベネフィット、パーソナリティ 長期的に適用可能で柔軟であること 法律で保護が可能であること また、国際的なブランドを構築するさいには以下の点にも留意する。 移転可能であること :他の国・文化圏でも通用する。他の製品に転用可能である
  • 26. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 26 身近な商品を題材に、その商品に含まれるブランド要 素をリストアップしてください。 演習 ブランドの仕組み 缶飲料 自動車 洋服 スターバックス 商品名 ブランド要素
  • 27. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 27 身近にあるブランドのブランド要素を以下の視点から 評価してください。 ・記憶可能であること ・意味が豊富であること ・長期的に適用可能で柔軟であること ・法律で保護が可能であること ・各ブランド要素の間に一貫性があり、相乗効果を期 待できること ・移転可能であること 演習 ブランドの仕組み
  • 29. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 29 消費者のメリット ブランドの重要性 消費者のメリット1:探索コストの低減 ブランドの最も基本的な機能は「競合との識別」である。消費者は、ブランドにつ いてすでに知っていることから、知らないことを仮定して合理的な期待を抱くことが できる。 消費者はブランドを認識することで目当ての商品を素早く探すことができる ようになる。 この信頼関係が成立するには、ブランドが保証している品質(ブランド・ プロミス)が達成されていることが暗黙の前提となる。 消費者のメリット2:リスク回避 さらには、そもそもその「目当ての商品」を決定するさいに、すでに信頼がおける と分かっているブランドの商品を選択することで、購入以前に品質や手に入れること ができる価値についてある程度の保証が得られる。消費者はブランドを利用すること で、下図のように様々なリスクを低減することができる。 ここまでの説明で触れてきたように、ブランドは消費 者の心の中で製品・サービスがどのような位置を占め るのかに影響し、ひいては消費者の購買行動の意思決 定において重要な役割を果たす。では、ブランドを意 識することで消費者にとってはどのような利益がある のだろうか。 機能的リスク 購入した商品が、購入者が期待した機能を果たさない。 身体的リスク 購入した商品が、使用者や周囲の人々の健康や身体に危害を加える。 金銭的リスク 購入した商品の提供する価値が、支払った価格に見合わない。 社会的リスク 購入した商品が、社会的な迷惑をもたらす。 心理的リスク 購入した商品が、使用者の精神・心理に悪影響を及ぼす。 時間的リスク 選択の失敗などにより、他商品を探索するという機会費用が発生する。 ケビン・レーン・ケラー「戦略的ブランド・マネジメント」 購買行動における消費者のリスク
  • 30. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 30 ブランドの重要性 消費者のメリット3:価値の獲得 ブランドから消費者が手にする価値には、製品の基本的な機能である物理 的・機能的価値(製品・サービスそのものが持つ価値)、広告・デザインを 含めた製品に付加されている情報やコスト、利便性など製品以外の価値であ る情緒的・感覚的価値があり、様々なレベルで差別化を図る必要がある。 価値の分類は研究者により、様々である。 (例) ・アーカー:機能的便益,情緒的便益,自己表現的便益 ・和田:基本価値,便宜価値,感覚価値,観念価値 ・長崎:物理的価値(保護的機能、取り扱い利便機能、情報提供機能)、精神的価値(情 緒的機能、意味付け機能) どの分類が正しいかが問題なのではなく、消費者にとって機能や品質だけが価値を持って いるのではない、という認識が重要である 物理的価値 機能的価値 商品が提供する価値 情緒的価値 感覚的価値 製品から変更・削除すると、 製品そのものの機能に影響が あるもの(例 掃除機の吸引) 製品から変更・削除しても、 製品そのものの機能に影響が ないもの(例 掃除機の色) 消費者のメリット4:自己イメージへの投影 消費者は、ブランドを購入・使用することで、自分自身にブランドのキャ ラクターを重ね合わせることができる。 消費者がブランド・イメージを自 己に投影することは、周辺価値あるいは情緒的価値と言える。ダニエル・ ブーアスティンによれば、ブランドは『友愛会、宗教団体、そしてサービ ス組織が果たしていた機能を果たす。すなわち、人々が自分は誰であるか を定義し、その定義を他者に伝達するのを助ける』。言い換えれば、ブラ ンドは消費者が自分の所属する準拠集団を決定・宣言する役割を果たす。 ブランドがこの役割を果たすためには、ブランド自身のキャラクター (ブランド・パーソナリティ)が明確で競合と差別化できている必要があ る。
  • 31. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 31 企業のメリット ブランドの重要性 企業のメリット1:識別 ブランドは、製品の取り扱いと追跡調査を容易にする。 企業のメリット2:他社製品との差別化 製品に固有の連想と意味付けをすることで、他社製品と機能・品質以外の部分におい て差別化することができる。 ブランドによる差別化が成功すれば、 満足した顧客が再購買するのが容易になる 需要予測の精度がアップする 企業のメリット3:付加価値を高める 差別化に成功し、ブランドを付加価値とすることができれば、プレミアム価格(利益 の幅が大きい)での販売が可能になる。 企業のメリット4:法的保護を受けられる ・ブランド名:商標権 ・製造プロセス:特許権 ・パッケージデザイン:意匠権 ・プロモーションのコンテンツ:著作権 など 一方、企業側にとってみれば、強いブランドを構築す ることに成功すればマーケティングの効率が飛躍的に 向上することになり、さらにブランド要素の多くは法 的に保護される対象になるため、参入障壁を築くこと が可能になる。また、ブランドは資産として評価され 売買の対象となりうる。
  • 32. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 32 企業活動においてブランドがなぜ重要なのか、消費者 の視点と企業の視点の両方を含めて説明してください。 演習 ブランドの仕組み
  • 33. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 33 ブランドとしての条件を満たすものと、そうでないも のの違いを述べてください。 演習 ブランドの仕組み
  • 34. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 34 あなたの個人的な購買行動において、ブランドがどの ように影響しているのか分析してください。 ブランドとノンブランドのふたつの競合が購買候補に 挙がっているとき、購買決定にブランドがどのように 影響しているか?  プロモーションだけではなく「ブ ランド体験」「ブランド連想」の影響を考えてくださ い。 演習 ブランドの仕組み
  • 36. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 36 ブランド・バリュー ブランド・バリューとは? 「ブランド・バリュー(Brand Value)」とは ブランドが打ち出す価値のことであり、消費者のみならず、企業のすべてステーク ホルダー(従業員、取引先、消費者、社会など関わる全ての人)に影響を及ぼす。こ の価値を高めることがブランド・バリュー戦略の目的となる。価値を高めることが、 ステークホルダーのブランド・ロイヤルティ(Brand Loyalty)を高めることに繋が り、持続可能性を高めることにつながる。 「ブランド・バリュー」は単にそのブランドが生み出 す売り上げだけを意味するものではない。 継続的なマインドシェアを高めるための活動の結果、 ブランドの価値を高めることを目的とする。 ブランド・バリューを高める活動は継続的な活動 ブランド・バリューを評価する ブランド・バリューを評価するには、独自に指標を持つ必要がある。 例:売り上げ、従業員満足度、従業員在籍年数、来店頻度、顧客のライフタイムバ リュー、などなど ※どの指標に重みを置くかは各企業の判断による。 ※指標は継続性が重要なので、同じ条件で指標を調査しつづけること。
  • 37. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 37 ブランド・バリュー スパイラル ブランド・バリューとは? ブランドを構築し維持する活動は、一過性のものでは なく、継続してこそ意味がある。 ブランド・バリュー戦略のPDCA Plan Do Check Action ブランド・バリューを増大させるスパイラルイメージ ブランド・アイデンティティ 消費者 従業員 地域住民 ステークホルダー ブランド・バリュー 増大 ブランド・ロイヤルティ ブランド再生 ブランド再認
  • 39. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 39 ブランド構築イメージ ブランドの構築 ブランド・アイデンティティ 消費者 ニーズが 発生 ブランド体験 ブランド要素 ブランド再認 ブランド再生 ブランド認知 Brand Recognition Brand Recall Brand Element どう思ってほしいか 企業 ブランド・ イメージ どう思っているか 連想 これ知ってる! このニーズには このブランド! ここだけコントロール可能
  • 40. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 40 ブランド構築の目的 ブランドの構築 1. ブランド・アイデンティティーの決定 ・顧客は誰か? ・商品/サービスはなにか?(差別化できるポイントは?) ・顧客のどんなニーズからブランド再生を起こしたいか? ・顧客の心の中で、どのようなポジションを確保したいか? ブランド・アイデンティティとは、ブランドにどのようなブランド・イメージを持たせたいか、つま り、顧客にどのようなブランド連想を抱いてほしいのかを意味する。顧客はブランド要素に接したと き、なんらかのイメージを連想する(ブランド連想)。その連想の体系全体がブランド・イメージで あり、ブランド・アイデンティティは、どのようなブランド・イメージを訴求するかを端的に表現し たものとなる。そこにはブランドの優位性・唯一性、そして顧客が受け取る価値が含まれていなけれ ばならない。 2. ブランド要素の設計 ・顧客はどのようなブランド体験をするのか? ・ブランド要素はどうあるべきか? ブランド・アイデンティティを作成したら、その後に作成するブランド要素はこのブランド・アイデ ンティティと一貫したものでなければならない。また、様々なマーケティングツールを利用すること になるが、それらにはブランド要素を含まなければならない。 3. PDCAサイクルの実施 ・どうやってブランド・バリューを増大させるか? ・ブランド要素/ブランド体験のブラッシュアップ ブランドを構築する目的は、「ブランド再生」を起こ す状況を構築し、持続可能な事業構築することである。 ブランド構築のさいに、企業側が制御可能であるのは 「ブランド・アイデンティティ」と「ブランド要素」 のみであるため、それらを適切に設計することが重要 になる。
  • 41. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 41 マーケティングの基礎知識 ブランドの構築 ブランド構築のステップを理解するためにはマーケティ ングの知識も必要になる。ここでは、構築ステップを 実施するために最低限必要な情報について説明する。 マーケティングとは単に広告や市場調査・販売促進のことではなく、「売れる仕組 み」を作る活動すべてのことである。つまり、顧客のニーズを把握し、満足度を高め て、再購買を促す仕組みを意図的に作ることである。 マーケティングとは、製品と価値を生み出して他者と交換することによっ て、個人や団体が必要なものや欲しいものを手に入れるために利用する社会 上・経営上のプロセスである。 フィリップ・コトラーによるマーケティングの定義 マーケティング活動には、顧客と接するすべての活動を含む。企業にとって、顧客 は下図のようなプロセスで成長していく。マーケティングの対象となる消費者が、ど の段階にいるのか(見込み客か?顧客か?)によって、アプローチが異なる。 消費者 見込み客 顧客 リピーター マーケティングの目的は次のような式で表すことができる。 マーケティングの目的 = 顧客生涯価値  x 顧客数 顧客生涯価値とは、顧客がある製品・サービスあるいは企業に対して、関係がある 間に支払う金額の合計である。再購買の機会が増えたり、購買単価が上がったり、顧 客である期間が延びることで、顧客生涯価値も向上していく。 顧客生涯価値を高める 顧客獲得 固定客化
  • 42. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 42 マーケティングの流れ ブランドの構築 基本的なマーケティングの流れは次のようになる。 1. 環境分析と市場機会の発見 需要予測、顧客ニーズの把握、3C分析 3C分析では、図のように顧客ニーズを満たし、かつ競合他社が参入できない領域を 探る。 顧客(Customer) 自社(Company) 競合他社(Competitor) 2. 市場細分化 STPマーケティング ※次ページ参照 3. マーケティング計画 ・目標の作成 ・4P/4Cなどを使用してマーケティングミックスを検討 ・実行計画の作成 4. 実行 5. 結果の分析
  • 43. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 43 STPマーケティング ブランドの構築 ある製品・サービスを市場に送り出すさい、最初に見 込み客を選定しなければならない。つまり、すべての 消費者の間から、その製品・サービスを買う「見込み」 がある層を抽出する。この選定のことをセグメンテー ション、 ターゲティング と呼ぶ。 マーケティングには、様々な理論や方法論があるが、もっとも代表的な手法が、フィ リップ・コトラーが提唱したSTP(セグメンテーション、 ターゲティング、ポジショ ニング)マーケティングである。 STPマーケティングは、マーケティングの初期段階において、 ・誰に対して ・どのような価値を提供するか を明確にするための手法であり、以下の手順で行う。 1. セグメンテーション (Segmentation)(セグメント化):市場細分化 市場をある基準で分割・グループ(セグメント)化する。年齢、性別、居住地など 分割する基準は様々である。 2. ターゲティング (Targeting)(ターゲット選定) セグメンテーションされたグループ(セグメント)から、標的とすべき市場を選定 する。 「消費者」の中から「見込み客」を選定するということ。 3. ポジショニング (Positioning) 標的とする市場(見込み客)の心の中で、どのようなポジションを占めたいのかを 決める。顧客ニーズと提供できる価値、差別化できるポイント(独自性)を考慮する。 このとき、ポジショニングマップを作成し、ビジュアル化することが多い。 市場 セグメンテーション ターゲティング ターゲット 様々な条件で繰り返す
  • 44. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 44 マーケティングミックス ブランドの構築 マーケティングミックスとしては、ジェローム・マッカーシーが提唱した4Pが有名 である。 ・Product(製品) :製品、サービス、品質、パッケージ 等 ・Price(価格) :価格、割引制度、支払条件 等 ・Place(流通) :チャネル、輸送、流通範囲、品 え、在庫 等 ・Promotion(プロモーション) :販売促進、広告、ダイレクトマーケティング 等 これに対し、ロバート・ラウターボ−ンは顧客の視点からマーケティングを考える 必要があるとし、4Cを提唱した。 ・Customer value(顧客価値) :顧客がその商品を手に入れたり、使用したりす ることで得られる価値 等 ・Customer cost(顧客コスト) :時間、面倒臭さ、支払った金額 等 ・Convenience(利便性) :入手することの容易さ 等 ・Communication(コミュニケーション) :顧客が欲しがる情報を提供する 等 マーケティングにおいて重要なのは、どのようなマーケティングミックスの枠組み を使用するにしても、それぞれのマーケティングツールの間で一貫したコンセプトに 従ったメッセージングが行われることである。 実際にマーケティング活動を考えるさい、その対象範 囲は広大になってしまう。マーケティング戦略を考え るさいに利用されるマーケティングツールを組み合わ せるための枠組みをマーケティングミックスと呼ぶ。 MECEとフレームワーク MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)とは日本語で「もれなくダブりなく」と いう意味である。分析や企画などをするさい、情報を網羅しなければならない機会は非常に多い。その さいに、情報を「もれなく」、そして「ダブりなく」集めなさい、ということである。 しかし、「ダブりなく」は、集めた情報を検査すれば確認できるとしても、「もれなく」は、どのよう に実現すれば良いのであろうか? 厳密な意味で、情報をもれなく収集するのは不可能であるが、情報収集の枠組みを予め用意し、その枠 組みに必要な情報を集めていく方法をとることで、現実的には「もれなく」を達成することが可能にな る。このように使用する枠組みのことをフレームワークと呼ぶ。フレームワークには、様々な種類があ る。このテキストで紹介する4P/4CやSWOTなどもフレームワークである。
  • 45. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 45 マーケティングが販売プロモーションと違う点をリス トアップしてください。 演習 ブランドの構築
  • 46. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 46 ブランド構築のステップ ブランドの構築 1. ブランディングの目的(事業の目的、マーケティングの目的、3C) 2. セグメンテーション:市場規模調査 3. ターゲティング:顧客層調査 4. ポジショニング:ブランド連想の調査 5. ブランド・アイデンティティの作成 6. ブランディングの目標策定:戦術レベルでの目標作成 7. ブランド要素・ブランド体験の設計:ブランド体験シナリオ、4P/4C 8. ブランディング計画の作成:実行計画と実施 ブランド・バリュー戦略とは、ビジネスを俯瞰し個々 の活動がブレないようにするためのフレームワークの 一つと捉える事が可能である。そのため、事業戦略や マーケティング戦略などと矛盾することなく、それら の上に構築するというイメージで臨む必要がある。 これらのプロセスの間に様々なドキュメントを作成することになるが、ブラン ド構築という視点で見ると、以下のドキュメント類はとくに必須である。 ガイドライン:ブランド要素の使用規約 ブランド・ステートメント:そのブランドの価値観・思想・ミッションなどを 関係者全員で共有する STPマーケティング ペルソナ
  • 47. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 47 ブランド構築のステップ 1. ブランディングの目的 ブランドの構築 ブランドを構築する目的は、事業やマーケティングの 目的と基本的には同じとなる。単なる事業戦略やマー ケティング戦略としての活動ではなく、ブランド構築 /維持として意識的に活動していく理由は、近視眼的 な直近の売り上げのみを目的とするのではなく、長い 目で見たステークホルダー(顧客だけではなく)との 関係構築を行うという意思表示でもある。 つまり、そもそもブランド・バリュー戦略を行うので あれば、直近の売り上げのみを目的としてはならない。 それよりも長期的に持続可能な事業として育てる意識 が必要となる。 製品 既存 新規 市場 既存 市場浸透戦略 新製品投入戦略 新規 市場拡大戦略 多角化戦略 現実的には、どのブランディングもその目的は「製品を認知させ、売り上げを上げ る」ことだが、そのプロセスは様々であり、売り上げを上げるためにどのような事業 戦略をとるのかがブランディングに(また、その目的として)反映させなければなら ない。事業戦略の区分を上記のアンゾフの製品・市場マトリックスで説明すると以下 のようになる。 ・市場浸透戦略:既存製品で既存市場(顧客層)を対象に行う→リピーターの増加 ・市場拡大戦略:既存製品で新規市場を対象に行う ・新製品投入戦略:新規製品を既存の市場に投入するさいに行う ・多角化戦略:新規製品を新規の市場に投入するさいに行う 既存市場を対象にすると決まっている場合は、厳密に言えばこの次のプロセスであ る「セグメンテーション・ターゲティング」は不要となるが、その代わり現在行って いる顧客とのコミュニケーションについて効果測定を行う。既存のマーケティング戦 略の効果測定と市場調査を行うことで、ポジショニングの変更が必要となることもあ る。 ※アンゾフの製品・市場マトリックス
  • 48. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 48 ブランド構築のステップ 2. セグメンテーション 3. ターゲティング ブランドの構築 セグメンテーション 市場をセグメントに分割しターゲット市場を抽出するさい、根拠となるデータ(市 場と顧客の分析)が必要となる。 新規製品の場合はデータに基づいて製品開発を行ったり、あるいは新製品にふさわ しいターゲット市場を選定したりと、製品開発と市場調査の順序はケースバイケース である。 市場を分割する枠組みとして代表的な例は以下のものがある。 地理 Geographic 国、地域、天候 人口統計 Demographic 性別、年齢、教育、家族構成、収入、職業、宗教、言語 価値観 Psychographic ライフスタイル、価値観、行動規範 準拠集団 Reference Group 人の価値観や行動に影響を与える集団 セグメントの抽出の仕方は、 ・市場全体から分割していくトップダウンアプローチ ・特定の個人の属性分析を集計していくボトムアップアプローチ がある。 既存市場を対象にするとき、状況によってはボトムアップでセグメンテーション・ター ゲティングを定義し直すこともありうる。つまり、現状の顧客情報をもとに共通する顧 客像を作り上げるのだ。このように、事前に想定していた層とは違う顧客が中心になっ ているというような場合は、実情にあわせた定義をしたほうが良い。 ※コミュニケーションの手法として、実際のターゲットとは異なる層に向けたメッセージングを行うこと もある(女子高生が購買層の中心であっても、「少し大人の女性」への憧れを表現したコミュニケーション を行う例など)ので、顧客層が想定と異なる場合、急激にコミュニケーションの内容を変化させるのは注意 が必要である。 ブランドの対象となる市場を選定するため、市場細分 化(セグメンテーション)して選定(ターゲティング) する。 統計データや市場調査などをもとにターゲットとする市場を細分 化/選定する。これらのステップは、ブランディングの目的によっ て行うべき作業が変わる。忘れてはならないのは、このプロセス が「どこに顧客がいるのか」を探る作業であるということだ。 売りたい製品がある 製品にあわせたターゲット市場を選択 → 市場規模は適切か?アプローチが可能か? 狙いたいターゲットがある ターゲットが欲しがる製品の提供 → ターゲットのニーズは? 顧客は誰なのか知りたい(既存市場・既存製品) 既存の顧客の分析 ターゲティング マーケティングの対象となるセグメント(ターゲット市場)を選択する。選択され たセグメントが、十分な市場規模(規模と成長度)を持っていることが重要である。 顧客像の調査が必要になる。
  • 49. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 49 ブランド構築のステップ 4. ポジショニング ブランドの構築 ここで注意が必要なのは、これらの項目は分類することが目的なのではなく、適切なポジショ ニングを発見するためのヒントである、ということだ。 新たなポジショニングを発見するためには、自分自身や顧客が持っている思い込みに気づく 必要がある。そのためにも、ポジショニングマップを作成する前に結論が自明のものだと思っ たとしても、上記のすべての方向性について検討しておくことが望ましい。 ポジショニングとは、標的とする市場(見込み客)の 心の中で、どのようなポジションを占めたいのかを決 めることである。 既存製品と新規製品ではアプローチが異なる。 既存製品 顧客の心の中でどのようなポジションを占めているのか? 競合との関係は? 購買しなかった客にとっては、どのようなポジションだっ たのか? 現状のポジションを変えることは可能か? 新規製品 市場の中で独自性を出せるポジションは? 競合はどのようなポジションを占めている? 空いているポジションはあるか? 製品属性 製品そのものに独自性があるか? ベネフィット 製品・サービスが提供する便益に独自性があるか? 購買状況、消費状況 製品・サービスの買い方や使い方に独自性があるか? 顧客 ターゲットそのものに独自性があるか? 競合との対立 競合と対立している部分は? 競合との違い 競合と対立していないが異なる部分は? 競合との類似 競合と同じ部分は? 競合の設定 別カテゴリーあるいは別ランクの製品・サービスを競合と見なせるか? メタファー まったく別の商品カテゴリーのブランドに例えることはできるか? ポジショニングの方向性として代表的なものを挙げる。 これらの例として、以下のようなものが考えられる。 製品属性 電気を使わない暖房器具、音質がクリアな携帯電話、水に溶けるメモ用紙 ベネフィット フィルターを掃除しなくて良いエアコン、2倍の速さで剃れるシェイバー 購買状況、消費状況 朝6時から並んで整理券を手に入れないと買えない店、水のいらない下痢 止め薬、使い捨てコンタクトレンズ 顧客 高齢者のためのスーパー 競合との対立 VHSとβ、ノートパソコンとデスクトップ 競合との違い お代わり自由、座り心地の良いシート 競合との類似 リンク機能、エコロジーに配慮した製法 競合の設定 TV番組の競合はインターネットや携帯 メタファー お母さんの味、ママの味、マッサージ業界のリッツ・カールトン、家電の ジャガー、ホテル並の家事代行
  • 50. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 50 ポジショニングマップ ブランドの構築 ポジショニングマップの形式 条件1(低) 条件1(高) 条件2(低) 条件2(高) 競合1 競合2 自社 製品 様々な条件で繰り返す このように、自社製品がどのような位置を占めるかだけではなく、競合がどのよう な位置を占めるかも知っておく必要がある。競合製品が自社製品と同じポジションを 占めている場合、その競合製品と自社製品がどこで差別化できているのかを知るため に、条件を変えてマップを何度も書き直す。最終的に決定したポジションが顧客にとっ て意味のあるものかどうか、厳しくチェックする。意味のあるものでなければ、ポジ ショニングマップを作成しても無駄になってしまう。 このようにしてポジショニングを策定するさいに、 自社製品がどの位置を占めて競 合製品がどこに配置されるのか決定するため、前提となる調査情報が必要になる。調 査方法は様々であるが、ここでは連想マップを紹介しておく。連想マップとは、ブラ ンドやニーズとつながるキーワードから、調査対象に自由連想してもらい、連想の関 連と強さを分析する方法である。 ポジショニングマップは次のような形式で作成する。 連想マップの例 海 夏 水着 日焼け 水泳 サ ー フ ィ ン ※ペルソナにとっての連想の関連の強さを分析する。
  • 51. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 51 ブランド構築のステップ 5. ブランド・アイデンティティ ブランドの構築 ブランド・アイデンティティは、顧客にどのようなブ ランド・イメージを持ってほしいかを表現したもので ある。 ブランド・アイデンティティを規定する目的は、ブランド・バリュー戦略を実施し ていく中で、顧客が体験するすべてのブランド体験が一貫性を保ち、顧客の記憶の 中で意味を持って連結されるように、すべてのコミュニケーションにおいて軸とな る概念を関係者全員が共有することである。したがって、ブランド・アイデンティ ティはできるだけ簡潔でかつ誤解されないものである必要がある。 ブランド・アイデンティティは「顧客にどのようなブランド・イメージを持ってほ しいか」を表現したものであるから、顧客視点に立って考えなければならない。 下図のそれぞれの要素について考えていく。 1. ターゲットのどのようなニーズ(Needs)に答えるのか? 2. どのような便益(Benefit)を提供するのか? 3. どのようなポジティブな感覚(Feeling)を与えるのか? 4. ニーズと感覚の間で何が生まれるか? 5. ニーズと便益の間で何が生まれるか? 6. 便益と感覚の間で何が生まれるか? 7. すべてを統合するものは何か? Needs Feeling Benefit このプロセスは、表現を変えればUSP(ユニーク・セリング・プロポジション)を作成し、 共有するためのプロセスとも言える。
  • 52. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 52 ブランド構築のステップ 6. ブランディングの目標策定 ブランドの構築 具体的な数値目標を作成する。 右の戦略マップを用いて、一目で把握出るようにしておく。 A リーチ可能な見込み客リスト獲得 B 見込み客の顧客化 C 顧客のリピーター化 D リピート頻度の増大 E 客単価の増大 上記それぞれについて施策を策定する必要がある。 顧客数 売上 市場 見込み客 顧客 リピーター 平均リピーター数 A B C E D
  • 53. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 53 ブランド・バリュー戦略マップ ブランドの構築 期限: 年 月 顧客数 売上 市場 見込み客 顧客 リピーター 平均リピート回数 A E B C D
  • 54. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 54 ブランド構築のステップ 7. ブランド要素・ ブランド体験の設計 ブランドの構築 見込み客や顧客とのコンタクトポイントである、すべ てのブランド要素とそこでの体験を設計する。 ブランド要素とその体験をリストアップし、それぞれ設計していく。 下図のそれぞれの要素について考えていく。 1. コンタクトポイントは? 2. 使用方法は? 3. 顧客はどのような体験をしてほしいか? 4. 禁止事項 5. 推奨事項 6. 必要であれば利用方法のガイドライン 7. 戦略マップのどこを目的としたものか? 8. 効果目標 9. ブランド・アイデンティティと矛盾しないか? すべてのブランド要素をリストアップし、戦略マップと照らし合わせること で、足りないブランド要素が把握できる。 ブランド要素 概要 コンタクト ポイント 推奨 禁止 要素A 公式サイト 要素B 要素C 要素D 要素E …
  • 55. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 55 ブランド構築のステップ 8. ブランディング計画の作成 ブランドの構築 ブランド要素ごとに、実行計画を作成する。 前項でリストアップしたブランド要素それぞれについてスケジュールを作成する。 スケジュールを作成するさいに、単純に「制作」や「公開」などとして終了する のではなく、それぞれのPDCAサイクルをスケジュールに記載しておくこと。 ブランド要素 概要 マップ番号 目標 KPI コンタクト ポイント 推奨 … スケジュール 要素A A 10 公式サイト 要素B B 15 要素C C 5 要素D D 要素E E …
  • 56. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 56 ブランド構築のステップ 最後にチェック! ブランドの構築 ブランド戦略の概略をまとめる。 右図のブランド・バリュー・ピラミッドを下から埋め ていき、ブランド・アイデンティティとの矛盾を再 チェックする。 When? Where? What? How? Why? Who am I? いつ、どこで? なにを? どのように? なぜ? 私は何者か? ブランド・バリュー・ピラミッド
  • 57. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 57 以下の製品・サービスの主なターゲット市場は、どの ようにセグメンテーションされるか説明してください。 ※ターゲット市場は複数あっても構いません。 ・名刺のスピード印刷 ・新宿駅前の街頭占い師 ・東京郊外でイチゴ狩り ・高級ハンバーガー ・大学受験情報提供ウェブサイト ・格安焼き肉チェーン 演習 ブランドの構築
  • 58. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 58 自分でテーマを決めてポジショニングマップを作成し てください。 (コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、歌手 など) 演習 ブランドの構築
  • 59. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 59 ブランド体験を設計するためには、ターゲットとなる 消費者の行動を理解する必要があります。 以下の製品をブランディングするという設定で、 ・ターゲティング ・ポジショニング ・ターゲットの行動シナリオ(どのようなライフスタ イルを持ち、いつどのようなブランド体験をするか) を考えてください。 ・ノンカロリーの缶チューハイ ・品川駅構内に新設されたビジネスホテル ・携帯用空気清浄機 ・水のいらない胃薬 ・東武特急スペーシア(浅草・新宿・池袋から日光・ 鬼怒川まで2時間) ・ペット用健康保険 ・浪曲専門の寄席 演習 ブランドの構築
  • 60. 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps 60 新規ブランドの構築を実際に試してみてください。テー マは自由に設定して構いません。 (例)和菓子、携帯電話、コピー機、歯科医院、焼き 鳥屋、カフェ、図書館、途上国支援 ブランド構築のシミュレーション 演習 ブランドの構築
  • 61. 61 2015年01月15日 第1版 作成 株式会社つくるひと 監修 株式会社つくるひと 代表取締役 小野ゆうこ 発行所 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 〒 150−0013 東京都渋谷区恵比寿1−15−9 シルク恵比寿ビル2階 本書の内容の一部または全部を許可無く複写(コピー)することは、法律で定められ た場合を除き、著作者および出版社の権利の侵害になります。 一般社団法人 ブランド・バリュー協会 ブランド・バリュー構築プロジェクト カリキュラム Brand Value Basic Knowledges & Building Steps