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函館近海の魚類から採取した
マイクロプラスチックの調査
北海道函館中部高等学校
科学部2年 マイクロプラスチック(MP)班
はじめに
日本の一人当たりのプラスチックの排出量は世界でも上位である
https://www.bing.com/ck/a?!&&p=a25624f897cf5f01JmltdHM9MTY2MjE2MzIwMCZpZ3VpZD0yMzE1ZTdiMC00ZWI2LTYxYzMtMTE5
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2xlVXNlUGxhc3RpY19zdXN0YWluYWJpbGl0eS5wZGY&ntb=1
図1 プラスチック容器包装ごみの発生量(百万トン)と一人当たりの発生量(kg/人)
はじめに 昨年行った研究では…
実験①
塩分の違いによる
プラスチックの浮遊量
実験②
砂浜に含まれる
プラスチック量の調査
Google mapより引用
浮遊する
プラスチックは
濃度により変化する
海岸から離れるほど、
砂浜のプラスチックは
増える
函館近海産の魚類からプラスチックは検出されるのか?
大森浜の砂浜からはプラスチックが検出された。
事前調査
7種類の魚を用いて2つの予備実験行った
予備実験により、魚の胃の中に
マイクロプラスチック(MP)が
含まれていることを確認した
予備実験①
胃の表面を純水につけて、ろ過→顕微鏡で観察
予備実験②
胃を水酸化カリウム水溶液10%に浸し、ろ過
→顕微鏡で観察
↳ソイの胃
実験道具①②
左:ホッケ(積丹)
中央:サバ(青森県太平洋沖)
右:イワシ(三陸南部沖)
↳国土地理院より作成
実験方法①
1. 魚の消化管を切り開く
2. 純水が入ったビーカーに
それぞれの消化管を入れ、
30回ずつ水の中で振った
切り開いたサバの胃
3. 1日置いた後、吸引ろ過を
行い、ろ紙の乾燥後、顕微
鏡で観察し個数を数えた
ろ過中の様子
実験方法②
1.水酸化カリウム(KOH)
10 %の水溶液を作る
2. 消化管を浸し、室温で放置
KOHに浸したイワシえら
3. 吸引ろ過を行い、ろ紙の
乾燥後、顕微鏡で観察し、
MPの個数を数えた
KOHに浸した後の
イワシえら
実験②
KOH 繊維状 固体状 繊維状 固体状 繊維状 固体状
えら 7 0 22 3 13 0
胃 23 17 20 9 9 4
腸 4 0 7 1 18 0
イワシ ホッケ サバ
実験①
純水 繊維状 固体状 繊維状 固体状 繊維状 固体状
えら 5 1 29 20 10 2
胃 29 0 19 0 12 5
腸 20 9 21 0 15 0
イワシ ホッケ サバ
結果
表1(実験①の結果)
表2(実験②の結果)
全体
実験①②全体において、検出された繊維状のMPがおよそ83 %
結果
全体
実験②のサバから検出されるMPの個数が最も少ない
繊維状のMPの色は青色のものが多い
図2 プラスチック合計量の比較
0
10
20
30
40
50
えら 胃 腸 えら 胃 腸
個
数
純水(実験①) KOH(実験②)
実験①② プラスチック合計量の比較
イワシ ホッケ サバ
結果
イワシ
実験①②どちらも、胃の中に含まれるMPの数が最多
図2 プラスチック合計量の比較
0
10
20
30
40
50
えら 胃 腸 えら 胃 腸
個
数
純水(実験①) KOH(実験②)
実験①② プラスチック合計量の比較
イワシ ホッケ サバ
結果
ホッケ
実験①②を合計すると、えらは56個、胃は48個、
腸は29個となり、えらが最多
サバ
実験①②のMPの合計個数が最も少ない
図3 ホッケの消化管ごと
の実験①②合計量 図4 それぞれの魚のMP検出量
115
183
88
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
200
個
数
イワシ ホッケ サバ
56
48
29
合計
■えら
■胃
■腸
考察
全体の結果から考えられること
検出したMPのおよそ83 %が繊維状
→プランクトンと誤って摂食
イワシの結果から考えられること
実験①②で胃の中に最多
→プランクトンと誤って摂食した
考察
イワシの結果から考えられること
体積 えら 胃 腸
実験① 10.5 5.5 4
実験② 13.5 7 1
全体の結果から、体積が大きいと検出されるMP量も多いと
考える
表3 イワシの消化管の体積(mL)
実験①②のイワシの腸のMPの差
→腸の体積が大きいと、MPも堆積されやすい
考察
えらに含まれるMPが最多である
→呼吸時にMPが、えらに付着する
ホッケの結果から考えられること
MPの合計個数が最も少なかった
→プランクトンと誤って摂食することはない
サバの結果から考えられること
どの魚からもMPが検出されたことから、
北海道南部から石狩湾付近ではMP汚染が進行して
いることが言える
今後の展望
課題 MPの同定
①ヨウ化ナトリウム水溶液を用いる
上澄み液のろ過により、区別する
②大きな消化管を持つ魚を調査する
③生息域と関連をつける
以上の実験を行い、今後はより明確な結果を得る
参考文献
[1]国連環境計画(UNEP)報告書 「シングルユースプラスチック」pp.5 図 1.5
(2018 年 6 月)
[2]牛島大志ら,日本内湾および琵琶湖における摂食方法別に見た魚類消化管中のマ
イクロプラスチックの存在実態(水環境学会誌 Journal of Japan Soiety
WaterEnvironmentVol.41.No.4,pp.107-113(2018))
[3]中嶋亮太・山下麗,海洋マイクロプラスチックの採取、前処理、定量方法(海の研
究(Oceanograhy in Japan),29(5),129-
151,2020,doi:10.5928/kaiyou.29.5_129)
ご覧いただきありがとうございました。
本研究に際し、北海道大学大学院水産科学研究院教授の綿貫 豊先生ならびに、
特定専門職員の今井久美子先生から多くのご助言とご指導をいただきました。
また、本研究で使用した魚の試料については、生活協同組合コープさっぽろひ
とみ店ならびにスーパーセンターTRIAL北美原店にご協力をいただきました。こ
の場をお借りして感謝申し上げます。

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