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法社会学の対象と方法 
樫村志郎 
14年10月11日土曜日
1. 社会学研究の対象は何か 行為者 vs. 行為 
1. Blumer vs. Znaniecki 
2. 社会的行為の合理性は何か 科学的 vs. 常識的 
1. Parsons vs. Schutz 
3. 常識的合理性の探求方法は何か 哲学的 vs. 経験的 
1. Schutz vs. Garfinkel 
話題 
1 
14年10月11日土曜日
背景 
1. エスノメソドロジーの起源 
1. Garfinkel (1917-2011))による説明/Rawls の研究 
2. エスノメソドロジーの誤解と理解 
1. Coser, Coleman/Israel, Wilkins, Olsen (文献I) 
3. 法社会学の理解 
1. 教科書における自己理解 
2 
14年10月11日土曜日
エスノメソドロジーの起源 (1) 
1. American Pragmatism 
1. Florian Znaniecki (1882-1958) 
1. Social Actions.(1936 New Yoyk: Farrar & Rinehart). 
2. W.I.Thomas (1863-1947) 
1. "Definition of Situation" 
3. Kenneth Burke (1897 -1993) 
1. 1935 Permanence and Change: An Anatomy of Purpose. 
3 
14年10月11日土曜日
エスノメソドロジーの起源 (2) 
2. Phenomenology 
1. Alfred Schutz (1899-1959) 
1. 1943 "The Problem of Rationality in the Social World" 
2. 1945 "On Multiple Realities" 
3. 1953 "Common Sense and Scientific Interpretation of 
Human Action" 
2. Aron Gurwitsch (1901-1973) 
1. The Field of Consciousness (1951, 1964) 
4 
14年10月11日土曜日
エスノメソドロジーの起源 (3) 
3. Talcott Parsons (1902 -1979) 
1. The Structure of Social Action: A Study in Social 
Theory with Special Reference to a Group of 
Recent European Writers. (1937, 1949) 
2. 1951The Social System. 
5 
14年10月11日土曜日
Znaniecki の文化科学 
1. 社会的価値 (social values) と態度 (attitudes) 
1. 社会的価値とは、「何らかの社会集団のメンバーに利用可能 な経験的内容と意味 
をもち、その意味に関連して、活動の対象であるか、そうなり うるあらゆる資料 
any datum having an empirical content accessible to the members of some social group 
and a meaning with regard to which it is or may be an object of activity」である。食 
物、貨幣、大学、科学理論等はその例である (トーマス/ズナニエッキ([1918-20] 
1983: 21, Znaniecki 1969: 69)。 
2. 態度とは、「個々人の意識的過程であって、その社会的世界におけるその人の現 
実のまたは可能な活動を決定するもの a process of individual consciousness which 
determines real or possible activity of the individual in the social world 」である。たと 
えば、空腹感は食物という価値をもとめる行為を決定する個人的過程。 
6 
14年10月11日土曜日
Blumer の行為者vs. Znaniecki の行為 
1. Blumer 
1. 「ある人を憎むということは、かれを 憎まれる対象として見ることである。一つの 
対象 (すなわち価値) として、かれの「憎まれる」特徴は、憎む態度と ともに発現 
するのである。 To hate a person is to view him as a hated object; as an object (or value), 
his “hated” character emerges with the attitude of hatred」(ブルーマー [1939: 24- 82] 
(1983): 172)。 
2. Znaniecki 
1. 「価値の意味が この価値へ向かう態度と混同されてはならない。というのは、それ 
(ある価値の意味) とは、それが行為者にとっのその価値の関連性にあるのではな 
く、かれによって現にあるいは潜在的に経験される、他の諸価値との関連性にある 
からである。ある 単語の意味は、それが指示する諸対象との間の象徴的関連であ 
るが、この語に対す る態度とは、たとえば、それが高級だとか、低級だとか、聖 
的だとか、俗的だとか という評価のことである。(ズナニエッキ [1979] 1983: 93) 
7 
14年10月11日土曜日
Mannheim の文化科学と意味理論 (1) 
1. 「あらゆる文化的産物は、その全体性において、この呈示の上で、3 
つの独特な「意味の階層」を呈示するだろう。(a)その客観的意味、 
(b)その表出的意味、(c)その証拠記録的 (documentary) または証明 
としての意味。・・・文化的産物は、これに対して、もしわれわれが 
それをたんにそれ自身―その客観的意味―として見るときにそれが用 
いられるその「意味の階層」のみに注意するときには、その正統で真 
実の意味における理解がなされないのである。われわれはその完全な 
意義を尽くしたいと思うならば、それを表出的および証拠記録的意味 
をもつものとみなければならない。」「世界観の解釈について」 
1952[=1923]: p.43 
2. -> Garfinkel 1967: Chapter 3 (Common Sense Social Structure through 
Documentary Method of Interpretation.) 
8 
14年10月11日土曜日
Mannheim の文化科学と意味理論 (2) 
1. 例示 
1. 私が友人と一緒に道を歩いているとする。物乞いが角に立って 
いる。私の友人はかれに施しをする。かれの身振りは、私にと 
って、物理的現象でも生理的現象でもない。一つのデータとし 
て、それは、ただ意味の乗物である。すなわち、「援助」のそ 
れである。・・・社会学的領野(sociological field)―そこでは 
それは「社会的援助」というカテゴリーに理論的に包摂される 
―に属する。街角の男が「物乞い」となり、私の友人が「援助 
を与える人」になり、かれの手の中の一片の金属が「施し」と 
なるのは、一つの社会的コンテクストにおいてである。 
9 
14年10月11日土曜日
Mannheim の文化科学と意味理論 (3) 
2. 表出的意味 
1. 感知された運動たる慈善のジェスチャーは、「援助」とい 
う客観的意味のみを与えられるだけではないだろう。同時 
に、第2の階層として、いわばその上に上書きされるのは、 
表出的意味(the expressive meaning)である。この第2のタ 
イプの意味は、それが主体(the subject)とかれの実際の経 
験の流れ(his actual stream of experience)から切り離すこと 
ができず、むしろその完全に個人化された内容は、この 
「親密性の宇宙(intimate universe)」への関連性によって 
のみ獲得される。 
10 
14年10月11日土曜日
Mannheim の文化科学と意味理論 
(4) 
3. 証拠記録的意味 (documentary meaning) —例示 
1. 私がみるもののすべての含意を分析して、私は、突然、「慈善の行 
為」が実は、偽善の一つであることを発見するかもしれない。そ 
のとき、私にとっては、その友人が何を客観的に行なったか、彼 
がその行為で何を表出しようとしたり意味したかは重要でなくな 
り、大事なことは、いまや、かれのその行為により、意図されて 
いないにせよ、かれについてなにが証拠だてられているか(what is 
documented about him)ということになる。かれの贈与の中にかれ 
の「偽善」の証拠を見ることにより、私はまた、かれの行為を 
「文化的対象化」(cultural objectification)として解釈している。 
11 
14年10月11日土曜日
Mannheim の文化科学と意味理論 
4. 証拠記録的意味 (2) —定義 
(5) 
1. ある文化的産物が表出的意味のみならず、証拠記録的意味として把 
握されるときはいつでも、それは、もう一度、それ自身を超えて 
何か違ったものを指示する―しかし、つぎの点に注意せよ、この 
「何か違ったもの」はもはや私の友人によって実際に抱かれている 
志向的内容ではなく、その行為によって証拠立てられ、かつ、倫 
理的観点で、「偽善的」人格として明らかにされる、かれの「本 
質的人格(essential character)」なのだ。いまや、私は解釈の同一 
の技術を、かれの人格のすべての他の顕現に対しても適用できる― 
かれの表情、ジェスチャー、足取り、話のリズム。そして私がこ 
の解釈的方法をとる限り、かれのすべての衝動、かれのすべての行 
為は、ある新しい意味の層を呈示するのである。 
12 
14年10月11日土曜日
Znaniecki の行為理論 
1. 社会的行為の概念 
1. 「その客体が、個々のあるいは集合としての、意識ある存在 (conscious beings)であり、その 
目的が、それらの存在に影響することであるような、行為」。 
2. 社会的行為の意味的構成 
1. 行為者は、その社会的行為を、社会的対象、社会的方 法、影響力の社会的媒体等を考慮し 
て、ふさわしく構成する。 
3. 社会的行為の文化的構築と維持 
1. 多くの場合、社会に は、行為のタイプが存在し、それは、ある一般的な条件のもとで、他 
者にある変化 をもたらす処方箋として利用可能である。たとえば、行為者は、客を招待す 
るとい う行為は、その行為の客体が「友人」であり、「招待状」のような適切な方法を用 
いることによって、達成可能であると信じることができる。その企図が失敗すると きに 
も、対処の処方箋がいくつかあり、その失敗を予防するための処方箋も存在す ることが多 
い。これらは、行為というものが、トーマス/ズナニエッキ [1918-20]1983 の用語でいえば、 
一つの価値であり、他の社会的諸価値との関連性の中で理解 されることを示している。 
13 
14年10月11日土曜日
Parsons による社会的行為の合理性 
への問い 
1. Garfinkel The Perception of the Other: A Study in Social Order (1952)    
1. 「われわれが学んだ―あるいは、われわれが例証した―のは、社会秩序の問題が、そ 
の構成の中で、いつでもそれを描く言語に相対的であるということであった。したが 
って、分析的に社会秩序の問題を代表するための可能な方法は、きわめて多数にな 
る。秩序の諸理論が実際には一定数しかないということから、自文化中心主義 
ethnocentrism が分析的理論の道筋に置いたさまざまな制約を疑わざるを得ない。その 
ような自文化中心の影響力がいかに微妙なものでありうるかは、フッサールが「自然 
的態度」とよんだものの現象学について、われわれが今日よりももっとよく知るまで 
は、あきらかになるまい。」 
2.  あらゆる言語 (または、理論) が一つの規約以上のものではないかどうか、そして事 
実いかなる社会学的理論もイデオロギー以上のものになりうるかどうかは、今日の社 
会学理論の貧困さの基礎の上では、開かれた問いであるといわなければならない。」 
(Garfinkel 1952: 23) 
14 
14年10月11日土曜日
社会的行為の構成的特徴としての 
科学的合理性 
3. 「(I) Parsons の行為者は、理論家が社会システムを用いることで記述する現実世 
界に住まわされているだけではない。そうではなく、理論家の観点から、システ 
ムが安定的であるとき、Parsons の行為者は、それぞれの相手方から介入を受ける 
ことなくかれらの協調的事項を管理するための、かれら自身の道徳的権利の条件 
として、互いに、現実世界の知識を要求しあい、この知識を実現しあうのであ 
る。」( Garfinkel 1963, p. 167) 
4. (II) 各緊急要件は、一組の条件を与え、その条件の変化する性質は、理論家の観 
点から見て、行為者の状況の中で、この行為者の正当な期待と事象の実際の到来 
との間の非整合性の源泉となる。」(ibid., p.168) 
5. 社会学者は他の人間の行為ばかりでなく、その他の人間のもつ世界の知識をも、 
問題的な現象として含む、ある世界を科学的に記述しなければならない、その結 
果として、社会学者は、「合理性 rationality」という用語によって志向されるさ 
まざまな現象について、なんらかの作業的決定を行なわなければならない。(ibid) 
15 
14年10月11日土曜日
社会的行為の合理性の目録 (1) 
(1) <カテゴリー化と比較> 
(2) <許される過誤>。「一致の良さ」 
(3) <「手段 means」の探索。> 
(4) <選択肢と結果の分析。> 
(5) <戦略。> 
(6) <タイミングへの配慮。> 
(7) <予測可能性 predictability。> 
(8) <手続の諸ルール。> 
(9) <選択 Choice。> 
(10) <選択の根拠 grounds of choice。> 
(11) <目的―手段関係の、形式論理学 
の諸原則との両立可能性。> 
(12) <意味論的明晰さと明瞭さ。> 
(13) <「それ自身のための」明晰さと 
明瞭さ。> 
(14) <状況の定義と科学的知識の間の 
両立可能性。> 
16 
1. Schutz->Garfinkel 1967 Chapter 8 [1960] 
14年10月11日土曜日
社会的行為の合理性の目録 (2) 
2. 合理性は感情中立性ではない 
1. しばしば、合理性の意味は、人がその行為に付属させる感情―た 
とえば、「感情中立性 affective neutrality 」、「無感情的」、「距 
離をとった」、「中立的」および「非人格的」―を意味する。本 
論文の理論的課題については、しかし、人がかれの環境に対して 
そうした感情をもって接しうるという事実は、興味深くない。科 
学的探求者が、かれの仮説が実証されることについて情熱的であ 
ることを禁ずるものは何も無い。しかし、つぎのことは興味深い 
―人がかれの環境に対するかれの感情を、かれが語っていること 
の有意味性や、ある知見の保証根拠として、述べるということで 
ある。Garfinkel 1967 [1960] Chapter 8 
17 
14年10月11日土曜日
社会的行為の構成的特徴としての 
常識的合理性 Schutz 
3. 日常生活の態度 
1. 「日常生活の態度 attitude of daily life 」にある人の行為が支配 
されているところでは、<4つの重要な例外を除き、>諸合理 
性のすべてが生起しうる。・・・これらの基準の行動的対応物 
は、先の検討では、諸合理性の(11) から(14) で記述された。 
2. 「私が強調したいことは、合理性の理想は、日常的思考の「独 
特の peculiar 」1様相ではなく、またそうありえないこと、ま 
たそれはしたがって日常生活における人間行為 [human set は 
human act の誤植] の解釈の方法論的原則ではありえないという 
ことである。」[Garfinkel 1967[=1960] p.79] 
18 
14年10月11日土曜日
社会的行為の構成的特徴としての 
常識的合理性 Garfinkel 
1. 社会的安定性の十分条件としての合理性 
1. 「探求と解釈の行為が、常識にとって異国的な、科学的活動のルールによって 
支配されるという事実の一つの帰結は、さらなる推測の根拠としてある命題 
を用いるという決定が、そのルールの使用者がそれを用いる事に対して<社 
会的な>支持を期待できるかどうかと、独立に変化するということである。 
しかし、日常生活のしょそうていによって支配される諸活動の中では、信頼 
できる知識の集合は、諸命題をさらなる推測と行為の正当な根拠として使用 
することに関するそのような厳格な制限に服することはない。日常生活の関 
連性のルールの内側では、正しく用いられた命題とは、その使用について、使 
用者が、特定的に、社会的な支持を期待できるようなものであり、また、そ 
の使用によって、使用者がかれの集合体における正真正銘の地位を他者に対 
して証明できるようなものなのである。」 (Garfinkel 1967[=1960], p.281) 
19 
14年10月11日土曜日
常識的合理性の経験的探求として 
のエスノメソドロジーの成立 (1) 
1. 「観察可能な行動生起の領域を把握するために合理的行為の定義を決めておく 
必然性はない。この帰結は、重要でかつパラドキシカルな結果であり、それ 
は、われわれが、これまでなかったほど綿密に合理的行為の諸特性を研究する 
ことを許すものである。 (注 15) 」(ibid.) 
2. 「理想的な科学者の像を行動の記述的カテゴリーを構成するための手段として 
用いるかわりに―そして、合理的、没合理的、非合理的、反合理的というもの 
はそうしたカテゴリーである―、諸活動の合理的諸特性が、上記の諸合理性の 
リストやそれらの諸特性の集合から離れて見いだされるままに、それらを記述 
するという経験的課題をもって、諸活動の合理的諸特性が問題にされることが 
できる。」(ibid.) 
20 
(注 15) = Weber のformal/substantive rationality についての注 
14年10月11日土曜日
常識的合理性の経験的探求として 
のエスノメソドロジーの成立 (2) 
3. 「合理性の諸特性は活動解釈のための方法論的原則として取り扱われるのでは 
なく、それらは、経験的に問題を含む素材としてのみ取り扱われるべきであ 
る。それらは、データとしての地位のみをもち、より親近の行動諸特性が説明 
されるのと同じ仕方で、説明されることになる。」( Garinkel 1967[=1960], p. 
282) 
4. 「地位構造の諸特性が達成行動の生起や、組織された反抗や、スケープゴート 
行動や、職業移動の諸チャンスや、なんでもについて、どれほど関連的かを問 
うのとまったく同様に、われわれは、地位構造の諸特性が、行為者の行動が諸 
合理性を示す度合いに対して、どれほど決定的かを問うことができよう。そう 
すると、つぎのような問題が、答えを求めていることに気づく。」(ibid.) 
21 
14年10月11日土曜日
常識的合理性の経験的探求として 
のエスノメソドロジーの成立 (3) 
5. 「なぜ、科学的理論化の諸合理性が、日常生活の態度によって支配される行為の連続性に 
対して破壊的であるのか?この2つの「態度」の相互遷移が、それぞれによって支配され 
る持続的活動の著しい混乱なしには、不可能にするような社会的仕組みは何なのか?わ 
れわれが今日の社会で知っているような、多数の人が、社会的仕組みが不利的を被る事 
無く科学的態度を採用する事ができるだけでなく、それを採用することができるため 
に、この態度になじみがなく、多くの場合に、害を受けるような人々の生活に対して、実 
質的な要求を行なう事ができるようになるための、社会的仕組みとはいかなるものでな 
ければならないか?一言で言うと、行為の合理的諸特性は、社会学者によって、哲学的コ 
メントの領域から取り去られ、経験的研究に引き渡されることができる。」(ibid.) 
6. 「無数の研究問題を包含する一つの一般的ルールを述べることができる。<諸活動の諸 
特性のいかなるものについても条件付けになるものとしてわれわれが理解するいかなる因 
子も、諸合理性の条件付けとなる一つの因子である。>」(ibid.) 
22 
14年10月11日土曜日
結論と示唆 (1) 
1. Garfinkel のエスノメソドロジーは、初期の研究とZnaniecki、Thomas, 
(Burke) 等の原型の上に、(エトセトラ文言(規範の非完結性)、非 
厳密科学(Helmer & Rescher 1958)、cultural dope 等の文学的象徴、社会 
学的理論化の規範(態度)等のアイディアが組み合わされつつ)、 
SchutzとParsons の両理論の独特の変容として成立してきた。 
2. エスノメソドロジーは、Znaniecki, Mannheim, Weber, Parsons とつながる 
文化科学としての社会学の伝統に属する。 
3. その主要な方法原則は、(1) 文化的対象の独自存在、(2) 自然科学の変型 
としての方法論(文化的対象の観察と一般化による知識の獲得)、(3) 社 
会学の対象としての行為、(4) 行為により集団的に構成・支持・維持され 
る文化の解明、(5) 文化的意味変容への実践的関心、である。 
23 
14年10月11日土曜日
結論と示唆 (2) 
4. 法社会学の対象は、文化的対象としての法そのものではない。法 
は、法制作行為によって集団的に構成・支持・維持される文化的 
対象である。それは法学の対象である。 
5. 社会学の対象は社会的行為であることから、法社会学の対象は、 
法的行為(人びとが法を使用する行為)である。法の定義は、人 
びとの行為の合理性・非合理性を解明するという観点から、検証 
する必要がある。 
6. 法社会学の方法は、法的行為の合理性の解明可能性に焦点をおく 
必要がある。そのため、法的合理性の経験的解明が必要である。 
24 
14年10月11日土曜日
文献 I 
1. Coleman, James S. 1968 Review of Studies in Ethnomethodology by Harold 
Garfinkel. American Sociological Review, Vol. 33, No. 1. (Feb., 1968), pp. 126-130. 
2. Coser, Lewis A. 1975 Presidential Address: Two Methods in Search of a 
Substance. American Sociological Review, Vol. 40, No. 6 (Dec., 1975), pp. 691-700 
3. Israel, Marvin 1969 Comment on James Coleman's Review of Harold Garfinkel's "Studies 
in Ethnomethodology," The American Sociologist, Vol. 4, No. 4 (Nov., 1969), pp. 335-336. 
4. Olsen, Virginia 1970 Ethnomethodology and Ethnography. Social Science & Medicine, 
Vol.3, pp.414-418. 
5. Wilkins, James 1968 Review of Studies in Ethnomethodology. American Journal of 
Sociology, Vol.73, No.5 (Mar., 1968), pp.642-643. 
25 
14年10月11日土曜日
文献 II 
1. Garfinkel, H. (1963) Parsons' Solution of the Problem of Social Order as a Method for Making Everyday Activities Observable 
"From the Point of View of the Actor." (Unpublished draft) 
2. Parsons T., (1960) Pattern Variables Revisited: A Response to Professor Dubin, American Sociological Review Vol. 25, No. 4 
(Aug., 1960), 467-483. 
3. Dubin, R. (1960) Parsons' Actor: Continuities in Social Theory. American Sociological Review, Vol.25, No. 4: 457-466. 
4. Garfinkel et al. (1977) Panel: When is Phenomenology Sociological? The Annals of Phenomenological Sociology, Vol.2: 1-40. 
5. Garfinkel, Harold 1960 The Rational Properties of Scientific and Common Sense Activities. Behavioral Science vol. 5(1): 
72-83. 
6. Garfinkel, Harold 1967 Studies in Ethnomethodology, Polity Press. 
7. Garfinkel, Harold 1956a Some Sociological Concepts and Methods for Psychiatrists. Psychiatric Research Reports, vol. 6 (Oct. 
6): 181-195. 
8. Garfinkel, Harold 1956b Conditions of Successful Degradation Ceremonies, American Journal of Sociology, vol.61 No.5 
(Mar.) :240-244. 
9. Mannheim, Karl 1952[=1921-22] "On the Interpretation of Weltanschauung" in Essays on the Sociology of Knowledge, Tr. and 
ed. by Paul Kecskemeti (New York:Oxford U.P.): 33-83. 
10. Blumer, Herbert 1979 Critiques of Research in the Social Sciences, An Appraisal of Thomas and Znaniecki's The Polish Peasant 
in Europe and America. Transaction Press. Reprint of 1939 ed. published by Social Science Research Council, New York. 
26 
14年10月11日土曜日

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法社会学の対象と方法

  • 2. 1. 社会学研究の対象は何か 行為者 vs. 行為 1. Blumer vs. Znaniecki 2. 社会的行為の合理性は何か 科学的 vs. 常識的 1. Parsons vs. Schutz 3. 常識的合理性の探求方法は何か 哲学的 vs. 経験的 1. Schutz vs. Garfinkel 話題 1 14年10月11日土曜日
  • 3. 背景 1. エスノメソドロジーの起源 1. Garfinkel (1917-2011))による説明/Rawls の研究 2. エスノメソドロジーの誤解と理解 1. Coser, Coleman/Israel, Wilkins, Olsen (文献I) 3. 法社会学の理解 1. 教科書における自己理解 2 14年10月11日土曜日
  • 4. エスノメソドロジーの起源 (1) 1. American Pragmatism 1. Florian Znaniecki (1882-1958) 1. Social Actions.(1936 New Yoyk: Farrar & Rinehart). 2. W.I.Thomas (1863-1947) 1. "Definition of Situation" 3. Kenneth Burke (1897 -1993) 1. 1935 Permanence and Change: An Anatomy of Purpose. 3 14年10月11日土曜日
  • 5. エスノメソドロジーの起源 (2) 2. Phenomenology 1. Alfred Schutz (1899-1959) 1. 1943 "The Problem of Rationality in the Social World" 2. 1945 "On Multiple Realities" 3. 1953 "Common Sense and Scientific Interpretation of Human Action" 2. Aron Gurwitsch (1901-1973) 1. The Field of Consciousness (1951, 1964) 4 14年10月11日土曜日
  • 6. エスノメソドロジーの起源 (3) 3. Talcott Parsons (1902 -1979) 1. The Structure of Social Action: A Study in Social Theory with Special Reference to a Group of Recent European Writers. (1937, 1949) 2. 1951The Social System. 5 14年10月11日土曜日
  • 7. Znaniecki の文化科学 1. 社会的価値 (social values) と態度 (attitudes) 1. 社会的価値とは、「何らかの社会集団のメンバーに利用可能 な経験的内容と意味 をもち、その意味に関連して、活動の対象であるか、そうなり うるあらゆる資料 any datum having an empirical content accessible to the members of some social group and a meaning with regard to which it is or may be an object of activity」である。食 物、貨幣、大学、科学理論等はその例である (トーマス/ズナニエッキ([1918-20] 1983: 21, Znaniecki 1969: 69)。 2. 態度とは、「個々人の意識的過程であって、その社会的世界におけるその人の現 実のまたは可能な活動を決定するもの a process of individual consciousness which determines real or possible activity of the individual in the social world 」である。たと えば、空腹感は食物という価値をもとめる行為を決定する個人的過程。 6 14年10月11日土曜日
  • 8. Blumer の行為者vs. Znaniecki の行為 1. Blumer 1. 「ある人を憎むということは、かれを 憎まれる対象として見ることである。一つの 対象 (すなわち価値) として、かれの「憎まれる」特徴は、憎む態度と ともに発現 するのである。 To hate a person is to view him as a hated object; as an object (or value), his “hated” character emerges with the attitude of hatred」(ブルーマー [1939: 24- 82] (1983): 172)。 2. Znaniecki 1. 「価値の意味が この価値へ向かう態度と混同されてはならない。というのは、それ (ある価値の意味) とは、それが行為者にとっのその価値の関連性にあるのではな く、かれによって現にあるいは潜在的に経験される、他の諸価値との関連性にある からである。ある 単語の意味は、それが指示する諸対象との間の象徴的関連であ るが、この語に対す る態度とは、たとえば、それが高級だとか、低級だとか、聖 的だとか、俗的だとか という評価のことである。(ズナニエッキ [1979] 1983: 93) 7 14年10月11日土曜日
  • 9. Mannheim の文化科学と意味理論 (1) 1. 「あらゆる文化的産物は、その全体性において、この呈示の上で、3 つの独特な「意味の階層」を呈示するだろう。(a)その客観的意味、 (b)その表出的意味、(c)その証拠記録的 (documentary) または証明 としての意味。・・・文化的産物は、これに対して、もしわれわれが それをたんにそれ自身―その客観的意味―として見るときにそれが用 いられるその「意味の階層」のみに注意するときには、その正統で真 実の意味における理解がなされないのである。われわれはその完全な 意義を尽くしたいと思うならば、それを表出的および証拠記録的意味 をもつものとみなければならない。」「世界観の解釈について」 1952[=1923]: p.43 2. -> Garfinkel 1967: Chapter 3 (Common Sense Social Structure through Documentary Method of Interpretation.) 8 14年10月11日土曜日
  • 10. Mannheim の文化科学と意味理論 (2) 1. 例示 1. 私が友人と一緒に道を歩いているとする。物乞いが角に立って いる。私の友人はかれに施しをする。かれの身振りは、私にと って、物理的現象でも生理的現象でもない。一つのデータとし て、それは、ただ意味の乗物である。すなわち、「援助」のそ れである。・・・社会学的領野(sociological field)―そこでは それは「社会的援助」というカテゴリーに理論的に包摂される ―に属する。街角の男が「物乞い」となり、私の友人が「援助 を与える人」になり、かれの手の中の一片の金属が「施し」と なるのは、一つの社会的コンテクストにおいてである。 9 14年10月11日土曜日
  • 11. Mannheim の文化科学と意味理論 (3) 2. 表出的意味 1. 感知された運動たる慈善のジェスチャーは、「援助」とい う客観的意味のみを与えられるだけではないだろう。同時 に、第2の階層として、いわばその上に上書きされるのは、 表出的意味(the expressive meaning)である。この第2のタ イプの意味は、それが主体(the subject)とかれの実際の経 験の流れ(his actual stream of experience)から切り離すこと ができず、むしろその完全に個人化された内容は、この 「親密性の宇宙(intimate universe)」への関連性によって のみ獲得される。 10 14年10月11日土曜日
  • 12. Mannheim の文化科学と意味理論 (4) 3. 証拠記録的意味 (documentary meaning) —例示 1. 私がみるもののすべての含意を分析して、私は、突然、「慈善の行 為」が実は、偽善の一つであることを発見するかもしれない。そ のとき、私にとっては、その友人が何を客観的に行なったか、彼 がその行為で何を表出しようとしたり意味したかは重要でなくな り、大事なことは、いまや、かれのその行為により、意図されて いないにせよ、かれについてなにが証拠だてられているか(what is documented about him)ということになる。かれの贈与の中にかれ の「偽善」の証拠を見ることにより、私はまた、かれの行為を 「文化的対象化」(cultural objectification)として解釈している。 11 14年10月11日土曜日
  • 13. Mannheim の文化科学と意味理論 4. 証拠記録的意味 (2) —定義 (5) 1. ある文化的産物が表出的意味のみならず、証拠記録的意味として把 握されるときはいつでも、それは、もう一度、それ自身を超えて 何か違ったものを指示する―しかし、つぎの点に注意せよ、この 「何か違ったもの」はもはや私の友人によって実際に抱かれている 志向的内容ではなく、その行為によって証拠立てられ、かつ、倫 理的観点で、「偽善的」人格として明らかにされる、かれの「本 質的人格(essential character)」なのだ。いまや、私は解釈の同一 の技術を、かれの人格のすべての他の顕現に対しても適用できる― かれの表情、ジェスチャー、足取り、話のリズム。そして私がこ の解釈的方法をとる限り、かれのすべての衝動、かれのすべての行 為は、ある新しい意味の層を呈示するのである。 12 14年10月11日土曜日
  • 14. Znaniecki の行為理論 1. 社会的行為の概念 1. 「その客体が、個々のあるいは集合としての、意識ある存在 (conscious beings)であり、その 目的が、それらの存在に影響することであるような、行為」。 2. 社会的行為の意味的構成 1. 行為者は、その社会的行為を、社会的対象、社会的方 法、影響力の社会的媒体等を考慮し て、ふさわしく構成する。 3. 社会的行為の文化的構築と維持 1. 多くの場合、社会に は、行為のタイプが存在し、それは、ある一般的な条件のもとで、他 者にある変化 をもたらす処方箋として利用可能である。たとえば、行為者は、客を招待す るとい う行為は、その行為の客体が「友人」であり、「招待状」のような適切な方法を用 いることによって、達成可能であると信じることができる。その企図が失敗すると きに も、対処の処方箋がいくつかあり、その失敗を予防するための処方箋も存在す ることが多 い。これらは、行為というものが、トーマス/ズナニエッキ [1918-20]1983 の用語でいえば、 一つの価値であり、他の社会的諸価値との関連性の中で理解 されることを示している。 13 14年10月11日土曜日
  • 15. Parsons による社会的行為の合理性 への問い 1. Garfinkel The Perception of the Other: A Study in Social Order (1952)    1. 「われわれが学んだ―あるいは、われわれが例証した―のは、社会秩序の問題が、そ の構成の中で、いつでもそれを描く言語に相対的であるということであった。したが って、分析的に社会秩序の問題を代表するための可能な方法は、きわめて多数にな る。秩序の諸理論が実際には一定数しかないということから、自文化中心主義 ethnocentrism が分析的理論の道筋に置いたさまざまな制約を疑わざるを得ない。その ような自文化中心の影響力がいかに微妙なものでありうるかは、フッサールが「自然 的態度」とよんだものの現象学について、われわれが今日よりももっとよく知るまで は、あきらかになるまい。」 2.  あらゆる言語 (または、理論) が一つの規約以上のものではないかどうか、そして事 実いかなる社会学的理論もイデオロギー以上のものになりうるかどうかは、今日の社 会学理論の貧困さの基礎の上では、開かれた問いであるといわなければならない。」 (Garfinkel 1952: 23) 14 14年10月11日土曜日
  • 16. 社会的行為の構成的特徴としての 科学的合理性 3. 「(I) Parsons の行為者は、理論家が社会システムを用いることで記述する現実世 界に住まわされているだけではない。そうではなく、理論家の観点から、システ ムが安定的であるとき、Parsons の行為者は、それぞれの相手方から介入を受ける ことなくかれらの協調的事項を管理するための、かれら自身の道徳的権利の条件 として、互いに、現実世界の知識を要求しあい、この知識を実現しあうのであ る。」( Garfinkel 1963, p. 167) 4. (II) 各緊急要件は、一組の条件を与え、その条件の変化する性質は、理論家の観 点から見て、行為者の状況の中で、この行為者の正当な期待と事象の実際の到来 との間の非整合性の源泉となる。」(ibid., p.168) 5. 社会学者は他の人間の行為ばかりでなく、その他の人間のもつ世界の知識をも、 問題的な現象として含む、ある世界を科学的に記述しなければならない、その結 果として、社会学者は、「合理性 rationality」という用語によって志向されるさ まざまな現象について、なんらかの作業的決定を行なわなければならない。(ibid) 15 14年10月11日土曜日
  • 17. 社会的行為の合理性の目録 (1) (1) <カテゴリー化と比較> (2) <許される過誤>。「一致の良さ」 (3) <「手段 means」の探索。> (4) <選択肢と結果の分析。> (5) <戦略。> (6) <タイミングへの配慮。> (7) <予測可能性 predictability。> (8) <手続の諸ルール。> (9) <選択 Choice。> (10) <選択の根拠 grounds of choice。> (11) <目的―手段関係の、形式論理学 の諸原則との両立可能性。> (12) <意味論的明晰さと明瞭さ。> (13) <「それ自身のための」明晰さと 明瞭さ。> (14) <状況の定義と科学的知識の間の 両立可能性。> 16 1. Schutz->Garfinkel 1967 Chapter 8 [1960] 14年10月11日土曜日
  • 18. 社会的行為の合理性の目録 (2) 2. 合理性は感情中立性ではない 1. しばしば、合理性の意味は、人がその行為に付属させる感情―た とえば、「感情中立性 affective neutrality 」、「無感情的」、「距 離をとった」、「中立的」および「非人格的」―を意味する。本 論文の理論的課題については、しかし、人がかれの環境に対して そうした感情をもって接しうるという事実は、興味深くない。科 学的探求者が、かれの仮説が実証されることについて情熱的であ ることを禁ずるものは何も無い。しかし、つぎのことは興味深い ―人がかれの環境に対するかれの感情を、かれが語っていること の有意味性や、ある知見の保証根拠として、述べるということで ある。Garfinkel 1967 [1960] Chapter 8 17 14年10月11日土曜日
  • 19. 社会的行為の構成的特徴としての 常識的合理性 Schutz 3. 日常生活の態度 1. 「日常生活の態度 attitude of daily life 」にある人の行為が支配 されているところでは、<4つの重要な例外を除き、>諸合理 性のすべてが生起しうる。・・・これらの基準の行動的対応物 は、先の検討では、諸合理性の(11) から(14) で記述された。 2. 「私が強調したいことは、合理性の理想は、日常的思考の「独 特の peculiar 」1様相ではなく、またそうありえないこと、ま たそれはしたがって日常生活における人間行為 [human set は human act の誤植] の解釈の方法論的原則ではありえないという ことである。」[Garfinkel 1967[=1960] p.79] 18 14年10月11日土曜日
  • 20. 社会的行為の構成的特徴としての 常識的合理性 Garfinkel 1. 社会的安定性の十分条件としての合理性 1. 「探求と解釈の行為が、常識にとって異国的な、科学的活動のルールによって 支配されるという事実の一つの帰結は、さらなる推測の根拠としてある命題 を用いるという決定が、そのルールの使用者がそれを用いる事に対して<社 会的な>支持を期待できるかどうかと、独立に変化するということである。 しかし、日常生活のしょそうていによって支配される諸活動の中では、信頼 できる知識の集合は、諸命題をさらなる推測と行為の正当な根拠として使用 することに関するそのような厳格な制限に服することはない。日常生活の関 連性のルールの内側では、正しく用いられた命題とは、その使用について、使 用者が、特定的に、社会的な支持を期待できるようなものであり、また、そ の使用によって、使用者がかれの集合体における正真正銘の地位を他者に対 して証明できるようなものなのである。」 (Garfinkel 1967[=1960], p.281) 19 14年10月11日土曜日
  • 21. 常識的合理性の経験的探求として のエスノメソドロジーの成立 (1) 1. 「観察可能な行動生起の領域を把握するために合理的行為の定義を決めておく 必然性はない。この帰結は、重要でかつパラドキシカルな結果であり、それ は、われわれが、これまでなかったほど綿密に合理的行為の諸特性を研究する ことを許すものである。 (注 15) 」(ibid.) 2. 「理想的な科学者の像を行動の記述的カテゴリーを構成するための手段として 用いるかわりに―そして、合理的、没合理的、非合理的、反合理的というもの はそうしたカテゴリーである―、諸活動の合理的諸特性が、上記の諸合理性の リストやそれらの諸特性の集合から離れて見いだされるままに、それらを記述 するという経験的課題をもって、諸活動の合理的諸特性が問題にされることが できる。」(ibid.) 20 (注 15) = Weber のformal/substantive rationality についての注 14年10月11日土曜日
  • 22. 常識的合理性の経験的探求として のエスノメソドロジーの成立 (2) 3. 「合理性の諸特性は活動解釈のための方法論的原則として取り扱われるのでは なく、それらは、経験的に問題を含む素材としてのみ取り扱われるべきであ る。それらは、データとしての地位のみをもち、より親近の行動諸特性が説明 されるのと同じ仕方で、説明されることになる。」( Garinkel 1967[=1960], p. 282) 4. 「地位構造の諸特性が達成行動の生起や、組織された反抗や、スケープゴート 行動や、職業移動の諸チャンスや、なんでもについて、どれほど関連的かを問 うのとまったく同様に、われわれは、地位構造の諸特性が、行為者の行動が諸 合理性を示す度合いに対して、どれほど決定的かを問うことができよう。そう すると、つぎのような問題が、答えを求めていることに気づく。」(ibid.) 21 14年10月11日土曜日
  • 23. 常識的合理性の経験的探求として のエスノメソドロジーの成立 (3) 5. 「なぜ、科学的理論化の諸合理性が、日常生活の態度によって支配される行為の連続性に 対して破壊的であるのか?この2つの「態度」の相互遷移が、それぞれによって支配され る持続的活動の著しい混乱なしには、不可能にするような社会的仕組みは何なのか?わ れわれが今日の社会で知っているような、多数の人が、社会的仕組みが不利的を被る事 無く科学的態度を採用する事ができるだけでなく、それを採用することができるため に、この態度になじみがなく、多くの場合に、害を受けるような人々の生活に対して、実 質的な要求を行なう事ができるようになるための、社会的仕組みとはいかなるものでな ければならないか?一言で言うと、行為の合理的諸特性は、社会学者によって、哲学的コ メントの領域から取り去られ、経験的研究に引き渡されることができる。」(ibid.) 6. 「無数の研究問題を包含する一つの一般的ルールを述べることができる。<諸活動の諸 特性のいかなるものについても条件付けになるものとしてわれわれが理解するいかなる因 子も、諸合理性の条件付けとなる一つの因子である。>」(ibid.) 22 14年10月11日土曜日
  • 24. 結論と示唆 (1) 1. Garfinkel のエスノメソドロジーは、初期の研究とZnaniecki、Thomas, (Burke) 等の原型の上に、(エトセトラ文言(規範の非完結性)、非 厳密科学(Helmer & Rescher 1958)、cultural dope 等の文学的象徴、社会 学的理論化の規範(態度)等のアイディアが組み合わされつつ)、 SchutzとParsons の両理論の独特の変容として成立してきた。 2. エスノメソドロジーは、Znaniecki, Mannheim, Weber, Parsons とつながる 文化科学としての社会学の伝統に属する。 3. その主要な方法原則は、(1) 文化的対象の独自存在、(2) 自然科学の変型 としての方法論(文化的対象の観察と一般化による知識の獲得)、(3) 社 会学の対象としての行為、(4) 行為により集団的に構成・支持・維持され る文化の解明、(5) 文化的意味変容への実践的関心、である。 23 14年10月11日土曜日
  • 25. 結論と示唆 (2) 4. 法社会学の対象は、文化的対象としての法そのものではない。法 は、法制作行為によって集団的に構成・支持・維持される文化的 対象である。それは法学の対象である。 5. 社会学の対象は社会的行為であることから、法社会学の対象は、 法的行為(人びとが法を使用する行為)である。法の定義は、人 びとの行為の合理性・非合理性を解明するという観点から、検証 する必要がある。 6. 法社会学の方法は、法的行為の合理性の解明可能性に焦点をおく 必要がある。そのため、法的合理性の経験的解明が必要である。 24 14年10月11日土曜日
  • 26. 文献 I 1. Coleman, James S. 1968 Review of Studies in Ethnomethodology by Harold Garfinkel. American Sociological Review, Vol. 33, No. 1. (Feb., 1968), pp. 126-130. 2. Coser, Lewis A. 1975 Presidential Address: Two Methods in Search of a Substance. American Sociological Review, Vol. 40, No. 6 (Dec., 1975), pp. 691-700 3. Israel, Marvin 1969 Comment on James Coleman's Review of Harold Garfinkel's "Studies in Ethnomethodology," The American Sociologist, Vol. 4, No. 4 (Nov., 1969), pp. 335-336. 4. Olsen, Virginia 1970 Ethnomethodology and Ethnography. Social Science & Medicine, Vol.3, pp.414-418. 5. Wilkins, James 1968 Review of Studies in Ethnomethodology. American Journal of Sociology, Vol.73, No.5 (Mar., 1968), pp.642-643. 25 14年10月11日土曜日
  • 27. 文献 II 1. Garfinkel, H. (1963) Parsons' Solution of the Problem of Social Order as a Method for Making Everyday Activities Observable "From the Point of View of the Actor." (Unpublished draft) 2. Parsons T., (1960) Pattern Variables Revisited: A Response to Professor Dubin, American Sociological Review Vol. 25, No. 4 (Aug., 1960), 467-483. 3. Dubin, R. (1960) Parsons' Actor: Continuities in Social Theory. American Sociological Review, Vol.25, No. 4: 457-466. 4. Garfinkel et al. (1977) Panel: When is Phenomenology Sociological? The Annals of Phenomenological Sociology, Vol.2: 1-40. 5. Garfinkel, Harold 1960 The Rational Properties of Scientific and Common Sense Activities. Behavioral Science vol. 5(1): 72-83. 6. Garfinkel, Harold 1967 Studies in Ethnomethodology, Polity Press. 7. Garfinkel, Harold 1956a Some Sociological Concepts and Methods for Psychiatrists. Psychiatric Research Reports, vol. 6 (Oct. 6): 181-195. 8. Garfinkel, Harold 1956b Conditions of Successful Degradation Ceremonies, American Journal of Sociology, vol.61 No.5 (Mar.) :240-244. 9. Mannheim, Karl 1952[=1921-22] "On the Interpretation of Weltanschauung" in Essays on the Sociology of Knowledge, Tr. and ed. by Paul Kecskemeti (New York:Oxford U.P.): 33-83. 10. Blumer, Herbert 1979 Critiques of Research in the Social Sciences, An Appraisal of Thomas and Znaniecki's The Polish Peasant in Europe and America. Transaction Press. Reprint of 1939 ed. published by Social Science Research Council, New York. 26 14年10月11日土曜日