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円滑にすすめるサービス・ツールの作製
The development of the designed tools for understanding of robotic surgery. -
The collaborative research about the framework to develop the novel medical
service using design method
磯谷周治1) , 吉橋昭夫2), 吉田光治3), 堀江重郎1)
1)順天堂大学大学院医学研究科泌尿器外科学
2)多摩美術大学情報デザイン学科
医療×デザイン プロジェクト
Notas do Editor よろしくお願いいたします。 おはようございます。私は順天堂大学泌尿器科の磯谷周治ともうします。本日は,私たちが,多摩美術大学と行なっている医療xデザインの協働プロジェクトの発表をさせていただきます。
実を言うと,私はデザインに関してはまったくの門外漢です。自分でも,ちょっと図々しいのではないかとも思いますが。発表させていただく機会をいただけました。ありがとうございます。 私の発表は,次の発表の多摩美の吉橋先生の発表とペアになっています。私のパートでは主に,このプロジェクトを始めたきっかけと,どのようにプロジェクトに取り組んだのか,そして医療者側からみた評価について発表させていただきます。 なぜこのプロジェクトを始めたかですが,そのまえにおおまかな背景とせつめいさせていただきます。
医療における意思決定,つまり誰が治療の主導権をもっているかについての歴史をざっくりわけると,この3つにわけられます。
昔は,医療者側がやりたい医療をする,「先生におまかせします」「わたしにまかせてください」という医療でした。ヒポクラテスとか赤髭とかですかね。でもこれだと,医者や病院の技量に差があった場合や,悪い事を考える医者がいるかもしれず,どこでも同じ質の高い医療が受けられるわけではありません。
そのため,さいきんではEvidence Based Medicineという医療に全体がシフトして,論文やガイドラインに沿った理由のはっきりした医療が受けられるようになってきました。
そしてこの先には患者中心型医療があるといわれています。 この今,主流となっているEvidence Based Medicineは日本語に訳すと
根拠に基づく医療と言う意味で, エビデンスレベルをとても重要と考えます。エビデンスレベルとは,この表のように研究論文の種類や内容によってを決められます。
たとえば,無作為化比較対照試験のメタアナリシスが最強のエビデンスレベルIaで,専門家の意見や経験は一番エビデンスレベルが低いとされます。つまり,主治医の個人的な意見はエビデンスが全くないということになります。 そしての治療の推奨度は,先ほどのエビデンスレベルにわけた論文の結果によって決まってきます。
例えば有る治療を行なうほうがいいとすすめられるのは,論文レベルでいうと1-2のエビデンスレベルの高い研究によって証明されていることについてのみとなります。
つまり,エビデンスが全くない主治医の個人的な意見は,治療の方針の決定に影響することはないということになります。
そのようにして論文を基礎に積み上げられた,知識の集積として診療アルゴリズムが作製されています。
例えば,これは腎臓がんの診療アルゴリズムです。
このように細かく癌のステージ毎に治療方法が決まっています。逆に言うと,正当な理由なく,このアルゴリズム以外の治療を行なったばあい,不適切な治療を選んだと考えられます。 このようにアルゴリズム化されたevidence based medicine は,患者さんの希望とか,そのときの感情は考慮されていません,また,どんどん新しい治療が出てくると,治療アルゴリズムが変わっていきます。それもあり,現在のevidence based medicineに基づく医療は患者にとっては,全貌が把握しにくく,直感的に理解できないような複雑な医療となってきています。
自分がよく理解出来ない治療を受ける患者さんは,治療自体がうまくいかない事が多いです。これはとても大きな問題なのです。 つまり今の医療において,治療アルゴリズムを患者の希望とすり合わせる作業が,とても大切になっています。ほんらいであれば,この作業にこそ個々の医師の力量が問われるのですが,これは,とても難しいです。
どうしたら,うまく出来るだろうと考えて,いろいろ探しているときに発見したのが,情報デザイン,サービスデザインの分野でした。
特にイメージが重なったのは,情報デザインのなかでも,アルゴリズムとして動作する機械と人間のあいだにたつ,コンピュータのOSに代表されるようなインターフェースです。たとえばOSは,コンピュータとユーザーのあいだに立って,ユーザーの行動をコンピュータ処理に反映するように働きます。
良いOSであれば,とくに意識する事なしに,ユーザー目的に応じてコンピュータの演算機能を引き出す事が可能です。 このOSと同じような方法論で,治療アルゴリズムを患者の希望とすり合わせるシステムを作製することができないだろうか,と考えた訳です。
もしも,このユーザーインタフェース・システムが情報デザイン・サービスデザインの手法で作られると,
医療における意思決定はevicdence based medicineから脱却して次のステップに進む事になると思います。
つまり,サービスデザインの方法論による患者中心型の医療が実現されていると思われます。
なぜなら,そもそもサービスデザインの方法論で設計されたユーザーインタフェースとは,ユーザー中心,つまり患者中心になるように設計されるからです。
でも,それをこれまでの教育を受けてきた医師がつくるのは,とても難しい事なのです。なぜなら,ユーザー中心という考え方自体が希薄で,エビデンス中心に教育を受けてきているからなのです。
そのような事も考え,私たちが相談してみたのが多摩美術大学でした。まず昨年の8月ぐらいに,情報デザイン学科の吉橋先生にメールを送ってみました。さいわい話を聞いていただき,順天堂大学,多摩美術大学のあいだで,情報デザインの共同研究が始まる事となりました。 共同研究として,私たちが昨年度にとりあげたのはロボット手術において医療者―患者間の情報伝達を円滑にすすめるサービス・ツールの作製でした。
みなさん,ロボット手術をご存知でしょうか?ダ・ビンチと呼ばれるロボットを使うので,ダ・ビンチ手術とも呼ばれます。ご存知の方,手を挙げていただいてもよろしいでしょうか。ありがとうございます。 じつは私の属している順天堂大学泌尿器科は,全国でも有数の前立腺癌の治療を行なっている施設です。なかでも,とくに力を入れているのが前立腺のロボット手術で,癌にかかった前立腺を手術ロボットを使って取ってしまうという治療方法で,年間に120例ぐらい,月に10例ぐらいの症例を手術しています。
実際の手術はこのように行なわれます。患者さんのお腹にロボット内視鏡を挿入してこのようにロボットが動きます。体の中ではこんなふうになっていて,それをモニタで見る訳です。実際の術者は,患者さんからははなれた,サージャンコンソールと呼ばれる操作専用の機械に座って,このように指を使って,ロボットの鉗子を操作します。 実際に,このロボット手術を行なうメリットとしては
普通の内視鏡手術と違って,ロボット手術の内視鏡は3D立体視が出来るタイプであり,立体的な3Dの視野が得られます。 また,先ほどの動画でも登場した手術ロボット特有の、高度な操作性と自由度をもっている鉗子があげられます。このような特長によって,ロボットならでは細かく縫ったりという操作が簡単に出来るようになりました。 これは国内のロボット台数を表すグラフです。
私たちは,2012年の4月からロボット前立腺癌手術を行なっています。ちょうどこの時期にロボット前立腺手術の保険適応が承認され、爆発的に日本全国にロボットが導入されています。今後さらにロボット手術は増えていく事が予想されます。 そのような,ロボット手術をテーマに選んだ理由は
このように,ロボット手術は日本の中でも,比較的に新しく,それほど詳しく知っている人がいないことが理由です。つまり,医師—患者間で共通認識が十分に作られておらず,近未来的なイメージがある一方で,無機質で新奇な医療が想起され,齟齬が生じていることがあります。 私たち,医師も伝える努力はするのですが,うまく伝える方法が分からなかったりします。
これは,ロボット前立腺摘除術の解説動画を作り,you tubeのアップして,順天堂のホームページで紹介したものですが,全然見られていません。1年でたった241回しか閲覧されませんでした。
なにかが良くないと感じ,この度の研究では次のような目標をたてました。 まず
医療者と患者のあいだの手術の情報伝達を円滑におこなうことを目的としました。
さらに,情報が円滑に伝わる事によって,医療体験(手術体験)の満足感が向上し,ひいては医療者の業務負担の軽減や医療資源を有効利用につながる事を副次的な目的とせっていしました。 方法です。
順天堂大学泌尿器科にて医療用手術ロボット「ダ・ヴィンチS」を用いて前立腺全摘除術をうけた患者,治療に関与した医師を対象として,多摩美術大学情報デザイン学科の学生・教員と順天堂大学大学泌尿器科医師,医学生が研究を行ないました。 実際の実動部隊としてのメンバーは,順天堂側から私と吉田さん,多摩美側から吉橋先生と,学生さん4人で合わせて6人で活動をおこないました。 具体的な方法等は次の吉橋先生の発表でお願いしてありますが,このようなプロセスで研究をおこないました。 まず課題の設定として。院内のフィールドワーク調査や,患者のインタビュー動画を用いて,実際の手術を患者がどのように受け止めたか調査しました。 その調査結果をもとに,どのようなサービス・デザインを構築するか,デザイナーと医療者間で検討をおこない,後で紹介する3つのコンセプトを提案し,それぞれのコンセプトに沿ったツールのプロトタイプを3個作製しました。 そして作ったプロトタイプは,実際に使用してもらうことが想定される順天堂大学泌尿器科の医師によって評価が行われました。評価には,それぞれのプロダクトについて作製者がプレゼンし,使い方の説明を行ない,実際にプロダクトを手に取ってもらう事で,アンケート方式の評価をおこないました。
ちょうどこの週はアルゼンチンの泌尿器科医も当院をおとずれており,国際的な評価にもなりました。 3つのプロダクトを簡単にしめします。
電子書籍版ロボット手術説明書,ロボット手術説明用模型 ,体験者の声ー手術体験者インタビュー記事 を作製しました。
それぞれのプロダクトのコンセプトは患者が扱える医療知識,感覚で理解,デジタルが苦手な人でも気軽に体験と言ったものでした。 プロダクトの評価を示します。
プロジェクトに加わっていない医師の評価はおおむね良好でした。「興味がある」との回答が86%で 「使ってみたい」が 83%でした。 否定的な意見もいただきました。それには, 費用対効果が不明な事や,医学的な内容の不足,説明の手間が増える可能性があるなどが上げられました。 まとめです。ロボット手術における医療者―患者間の情報伝達を円滑にすすめるサービス・ツールを試作した。デザインの手法を用いたアプローチは医療者にとって有益なツールとなりうる可能性が示唆された。
ありがとうございました。