静岡大学情報学部「データベースシステム論」講義スライド 第９回：ＳＱＬ応用演習２　ビューとトリガ、アクセス権

1. データベースシステム論
2016年度 前期 水曜 1･2時限 情24教室
担当：横山昌平
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 1p.

2. 講義計画
• 関係データベースの歴史と基本概念
• SQLの基礎と応用(演習を含めつつ)
• データベースの設計と構成
• SQL問い合わせ処理とそれを支える技術
• 関係データモデル以外のデータベース
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 2p.
※現時点での予定です。進捗に応じて変更します。
27Apr.
20Apr.
13Apr.
25May
18May
11May
1June
8June
29June
22June
20July
13July
6July
27July

3. データベースシステム論
演習３ 課題 答え合わせ
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 3p.

4. 提出課題3 IN句・EXISTS句
• 以下の問い合わせのSQL文を作成せよ。
• ただし以下の３通りのクエリを作れ
• IN句を使って表す
• EXISTS句を使って表す
• スカラー副問い合わせを使って表す
• 提出物
• 各SQLとその出力結果
• 出力結果は当然全て同じものでなければならない
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 4p.
(全ワインの)平均価格未満のワインを１つで
も持つ産地のdidと産地名(distinct)を表示せよ

5. 1
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 5p.
SELECT * FROM vineyard
WHERE did IN
(SELECT did FROM wine
WHERE price<(SELECT avg(price) FROM wine));
SELECT * FROM vineyard
WHERE EXISTS
(SELECT NULL FROM wine
WHERE vineyard.did = wine.did
AND price<(SELECT avg(price) FROM wine));
SELECT DISTINCT wine.did,district
FROM wine JOIN vineyard
ON wine.did = vineyard.did
WHERE price <(SELECT avg(price) FROM wine));

6. データベースシステム論
第９回 ＳＱＬ応用演習２ ビューとトリガ、アクセス権
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 6p.

7. これまでに学んだSQL構文
• ＳＱＬの役割
• データ定義言語
• テーブルの作成 (CREATE TABLE)前々回
• ビューの作成 (CREATE VIEW)
• データ操作言語
• タプルの挿入・削除・変更 (INSERT, DELETE, UPDATE)前々回
• 問い合わせ (SELECT)前回
• データ制御言語
• トランザクション管理 (BEGIN, ROLLBACK)あとで
• ユーザ管理とセキュリティ (GRANT, REVOKE)
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 7p.

8. ビュー(VIEW)
• テーブル
• CREATE TABLEで作ったテーブル
• 実表(base table)と呼ぶ
• SELECTの結果として得られたテーブル
• 導出表(derived table)
• SELECTの結果に名前を付けたもの
• ビュー表(view table)、ビュー(view)と呼ぶ
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 8p.
CREATE VIEWビュー名
AS query

9. ビュー(VIEW) － 例
• wineテーブルには産地のIDしか無いから不便
• 毎回vineyardテーブルと結合して利用する
• じゃぁ、その問い合わせをVIEWにしよう！
• あたかもテーブルの様に使えます(SELECT以外は別途説明)
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 9p.
CREATE VIEW wine_list AS
SELECT wid, name, district, price
FROM wine JOIN vineyard
ON wine.did = vineyard.did;
SELECT * FROM wine_list;

10. 三層スキーマアーキテクチャ
• 内部スキーマ：データの物理的格納構造（二次記
憶上でのデータ編成法）とアクセスパス（インデ
クスなどの特定のデータに対するアクセス方法，
アクセスメソッドとも）を記述する．
• 概念スキーマ：内部スキーマの上にあり，物理的
な詳細情報を隠蔽し，データベースに格納される
実体のデータ型，関係，制約，操作を利用者全体
に対して論理的に記述する．
• 外部スキーマ：概念スキーマの上にあり，その一
部を特定の利用者グループ（アプリケーションプ
ログラムも含む）からのアクセスに対して記述し，
残りの部分を隠蔽する．ビューともいう
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 10p.
第三回目のスライド

11. 三層スキーマアーキテクチャ
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 11p.
概念スキーマ
内部スキーマ
外部スキーマ 外部スキーマ外部スキーマ
ディスク上にどう格納する？
いわゆる行と列からなる表
データ型、制約etc
ビュー
第三回目のスライド

12. ビューの概念
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 12p.
ビュー
wine_list
wid
name
district
price
テーブル
vineyard
did
district
テーブル
wine
wid
name
did
price
概念スキーマ 外部スキーマ
ユーザー
SQL
仮想的なテーブル

13. ビューは挿入・更新可能？
• このビューは複数のテーブルに跨っている
• districtはvineyardテーブルから
• それ以外はwineテーブルから
• ビューに表れていないカラムもある
• didはJOIN条件には使われているがビュ－内に無い
• 挿入・更新できない？？
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 13p.
CREATE VIEW wine_list AS
SELECT wid, name, district, price
FROM wine JOIN vineyard
ON wine.did = vineyard.did;
この話は長くなるので、まずは手を止めて話を聞いてください。

14. トリガーを使えば可能
• トリガーとは
• 文字の意味は「引き金」
• ＲＤＢとしての意味は
• テーブルやビューに対して何等かの操作が加わった時に、
別の操作を誘発させる仕組み。
• 実行形態として二種類に分けられる
• 実行タイミングとして３+１種類ある
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 14p.
文例：データベースシステム論の単位を落とした事
が引き金となって、大学を留年した。
行トリガ 文トリガ
BEFORE AFTER INSTEAD OF WHEN

15. トリガ作成
• イベント：SELECT, DELETE, UPDATE等
• 関数名：PostgresではSQLを直接書けないのでちょっと不便
• ただ関数はユーザが定義できる
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 15p.
CREATE TRIGGERトリガ名
[BEFORE|AFTER|INSTEAD OF] イベント
ON テーブル名 FROM 参照テーブル名
FOR EACH [STATEMENT|ROW]
[WHEN 条件]
EXECUTE PROCEDURE 関数名(引数);
※PostgreSQLが提供しているのは現時点ではSQL標準のサブセット

16. ビューに挿入するトリガ
• 考え方
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 16p.
ビュー
wine_list
wid
name
district
price
テーブル
vineyard
did
district
テーブル
wine
wid
name
did
price
INSERT INTO wine_list
VALUES(
,
‘コンチャ・イ・トロ’,
‘チリ’,
980
);
widの最大値+1
スカラ副問い合わせ
(SELECT MAX(wid)+1 FROM wine)
widの最大値+1
INSERT
トリガ
関数

17. ビューに挿入するトリガ
• wine_listにINSERTされた時に発動
• ビューにINSERTされる代わりに(INSTEAD OF)
• 挿入される行毎に(FOR EACH ROW)
• function_insert_wine_listという関数が実行される
• ↑この関数内でwineテーブルに挿入すればＯＫ
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 17p.
CREATE TRIGGER trigger_insert_wine_list
INSTEAD OF INSERT
ON wine_list
FOR EACH ROW
EXECUTE PROCEDURE function_insert_wine_list();

18. func_insert_wine_list関数定義
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 18p.
CREATE FUNCTION function_insert_wine_list()
RETURNS TRIGGER
AS $$
BEGIN
INSERT INTO wine
VALUES(
NEW.wid,
NEW.name,
(SELECT did FROM vineyard WHERE district = NEW.district),
NEW.price);
END;
$$ LANGUAGE plpgsql;
• NEWにはINSERT文で挿入する値
が入っている。(当然OLDもある)
• wineテーブルに入れるdidはラス
ター副問い合わせを使って 、
vineyardテーブルから求める。
• 関数の中は「PL/pgSQL」という
SQLとの親和性の高いプログラ
ミング言語で記述する。(その他
CやPython等様々な言語がサポー
トされている)

19. 実践：関数とトリガの定義
• 講義Webページに記載しているSQLのコピペで
構いませんので、関数とトリガを定義してくだ
さい。
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 19p.

20. 実践：ビューへの挿入と確認
• wine_listビューにデータを挿入してみましょう。
• 挿入はできましたか？
• select * from wine_listで確認
• wineテーブルにも挿入されていますか？
• select * from wineで確認
• 正しいdidが付与されていますか？
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 20p.

21. データ制御
• GRANT文、REVOLE文
• ユーザへテーブルへのアクセス権限を設定
• と、その前に
• ユーザを作って
• ログアウトしそのユーザでログイン
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 21p.
CREATE USER ore PASSWORD ’oreore’;
dbsys=>¥q
# psql –d dbsys –U ore

22. ユーザoreの問い合わせ
• ユーザoreはwine_listをSELECTする権限が無い
• postgresはdbsysの所有者の為「全権限」を持つ
• oreにwine_listをSELECTする権限を付与する
• GRANT文を使う(ついでにINSERT権限もつけよう)
• 一度ログオフしてpostgresユーザでログインしてから実行
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 22p.
SELECT * FROM wine_list;
dbsys=> SELECT * FROM wine_list;
ERROR: リレーション wine_list への権限がありません
GRANT SELECT,INSERT ON wine_list TO ore;

23. ユーザoreの問い合わせ続き
• 権限付与が成功していたら次の結果を得る
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 23p.
SELECT * FROM wine_list;
dbsys=> SELECT * FROM wine_list;
wid | name | district | price
-----+---------------+------------+-------
1 | シャブリ | ブルゴーニュ | 2400
2 | ジュヴレシャンベルタン | ブルゴーニュ | 3000
3 | サンテミリオン | ボルドー | 5800
4 | オーメドック | ボルドー | 2200
5 | サンセール | ロワール | 2800
6 | シャンパン | シャンパーニュ | 4000
(6 行)

24. アクセス権限の定義
• GRANT文(アクセス権限の付与)
• アクセス権
• SELECT, INSERT, UPDATE, DELETE等
• ALL :全権限
• REVOKE文(アクセス権限の剥奪)
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 24p.
GRANT アクセス権
ON テーブル名 TO ユーザ名;
REVOKE アクセス権
ON テーブル名 FROM ユーザ名;

25. 権限の有用な使い方
• できた？ - NO!
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 25p.
SELECT * FROM wine;
SELECT * FROM vineyard;
dbsys=> SELECT * FROM wine;
ERROR: リレーション wine への権限がありません
dbsys=> SELECT * FROM vineyard;
ERROR: リレーション vineyard への権限がありません
ビュー: wine_list
テーブル: wine
テーブル: vineyardユーザ: ore ユーザ: postgres
SELECT,INSERT

26. データベースシステム論
講義前半のまとめ と 講義後半の概要
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 26p.

27. 第１回 ガイダンス
• DB (Database)とは？
• 大量のデータを保持するためのシステム
• RDB (Relational Database)とは？
• 関係データモデルに基づいたデータベース
• RDBMS (Relational Database Management System)とは？
• RDBに対しデータの管理・処理機能をパッケージ
• SQL (Structured Query Language)とは？
• RDBを操作する為の宣言型プログラミング言語
• 宣言型言語とは？
• 手続型は”how”を記述するのに対し”what”を記述
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 27p.

28. 第２回 データベースの歴史と今
• 様々なデータモデル
• ネットワーク型データモデル(1960年代)
• 階層型データモデル(1960年代後半)
• 関係データモデル(1970年代)
• Web三層システム
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 28p.
DBサーバブラウザ Webサーバ

29. 第３回 関係データモデルと関係代数
• 三層スキーマアーキテクチャ
• 外部スキーマ、概念スキーマ、内部スキーマ
• 制約
• (内部)キー
• 人工キー、自然キー、候補キー、主キー、代理キー、複合キー
• 外部キー
• 定義域制約
• 関数従属性
• 関係代数part1
• 選択、射影、集合和、集合差、集合積、直積、商、リネーム
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 29p.

30. 第４回 関係代数(結合演算・集約演算)
• 関係代数part2
• 結合演算
• クロス結合(cross join) = 直積
• Θ結合, 等結合(Θ-join, equijoin)
• 自然結合(natural join)
• 準結合(半結合,semijoin)
• アンチ結合(antijoin)
• 外部結合
• 左外部結合, 右外部結合, 完全外部結合
• グルーピングと集約
• 整列
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 30p.

31. 第５回 PostgreSQLのインストール
• PostgreSQL
• オープンソースのRDBMS
• 参考：同じぐらい気軽に使えるRDBMS
• MySQL
• 世界No1のシェアを持つオープンソースRDBMS
• 紆余曲折の末、現在はオラクルの傘下にある
• Firebird
• 第三のオープンソースRDBMS
• ユーザはまだ少ない(特に日本において)
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 31p.

32. 第６回 ＳＱＬ基礎演習１
データの定義と操作
• ＳＱＬ演習 day1
• CREATE TABLE文
• ALTER TABLE文
• DROP TABLE文
• INSERT文
• UPDATE文
• DELETE文
• 表・行の削除における外部キーの振る舞い
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 32p.

33. 第７回 ＳＱＬ基礎演習２
データの問い合わせ
• ＳＱＬ演習 day2
• SELECT文
• 射影
• AS句(リネーム)
• WHERE句／HAVING句(選択)
• ORDER BY句(整列)
• GROUP BY句(集約演算)
• 集約関数
• 様々な組み合わせによる問い合わせ
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 33p.

34. 第８回 ＳＱＬ応用演習
結合演算
• ＳＱＬ演習 day3
• 結合演算
• JOIN～ON句
• JOIN
• LEFT JOIN, RIGHT JOIN, FULL JOIN
• EXISTS句, IN句
• それを使ったアンチ結合の実装
• 副問い合わせ
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 34p.

35. 第９回 ＳＱＬ応用演習２
ビューとトリガ、アクセス権
• ＳＱＬ演習 day4
• ビュー
• CREATE VIEW句
• トリガー
• ビューの更新
• CREATE TRIGGER句
• CREATE FUNCTION句
• ユーザへのテーブルのアクセス権付与と剥奪
• GRANT文
• REVOKE文
• ビューの権限付与によるアクセス可能情報の制限
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 35p.

36. 講義後半のキーワード(予定)
• データベースの設計(第10回講義)
• 従属性
• 正規形：第一、第二、第三、Boyce-codd
• 物理的なデータ格納法(第11回講義)
• 二次記憶・一時記憶
• インデクス
• データベースの最適化(第12回講義)
• トランザクション(第13回講義)
• 障害と復旧(第14回講義)
• RDB以外のデータベース(第15回講義)
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 36p.

37. 次回予告
第１０回 データベースの設計
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 37p.

38. 第10回 データベースの設計
• 漠然とした「情報」を関係データベースのテー
ブルとしてどのように設計すると良いのかの基
本的な考え方を学びます。
• 来週学ぶこと
• 従属性
• 正規化
• スキーマ分解
• 予習
• 対応箇所：教科書第５章
• 関連個所：CREATE TABLE文
データベースシステム論 第 回2016 [ 9 ] 38p.