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伝統工芸品データブック
中山圭太郎
1.概要
県や市・区が指定するなどした日本全国の伝統工芸品のデータブックです。縮小しつつある各産地の伝統工芸品に
ついて、文献や Web サイトにより存在を確認して作成しました。LinkData.org を用いて、オープンデータにしまし
た。自主的に設定した伝統工芸品の定義により、日本国内に約 1,400 強の品目があることがわかりました。
2.詳細
(語彙)できる限り共通語彙基盤コア語彙 2 を用いましたが、コア語彙 2 ではカバーできず、工芸品を扱う上で必要
と思われる項目については「工芸品ドメイン語彙」を作成して対応しました。
(エンドポイント)伝統工芸品のエンドポイントは以下 URL です。本データセットは LOD4ALL に登録していますの
で、SPARQL 問い合わせが可能です。
http://databasediv.com/kogei/dentokogeihin_ttl.txt
http://lod4all.net/ja/datasetdetail.html?graph=http://linkdata.org/work/rdf1s2802i/dentokogeihin
(データ項目)それぞれの伝統工芸品について、企業数と従事者数を調査しました。企業数または従事者数が少なく、
伝統的工芸品産業の振興に関する法律で伝統的工芸品の要件として示されている『一定の地域で当該工芸品を製造す
る事業者がある程度の規模を保ち、地域産業として成立していること。』を満たさなくなっていると考えられる工芸品
に関しては、「希少」項目を”真”(データの上では「1」)として、シグナルを入れました。
3.活動と発展
経済産業省が伝統的工芸品産業の振興に関する法律(略称:「伝産法」)により都道府県別に伝統的工芸品を指定し
ています。すべて一律の対応ではないものの都道府県と市区町村は個々の呼称で伝統工芸品を指定し、保護と振興す
る取り組みを行っています。日本全域を1つのデータベースで伝統工芸品を扱い、LOD 形式のオープンデータで整理
したことは意義あると考えています。今後、各種媒体においての基礎資料として活用できることや、位置情報と伝統
工芸(文化)を重畳して表示するアプリケーションや、伝統工芸品の文化に基づき旅行計画を策定するアプリケーシ
ョンや、伝統工芸に関する産業動向を地域別に視覚化するアプリケーションへの発展性があると考えています。
もともとは伝統工芸の実態調査とデータセット作品の制作活動にあたり、縮小している原因を追求し、抜本的な解
決策を見いだすことが目的でした。活動の過程で、企業数や従事者数、市場規模等のデータ収集は難航しました。10
年前まではいくつかの統計資料が確認できるものの以降の年の資料が見つからない状況となっています。原因として、
あまりの縮小により近年は全国がまとまった統計資料が存在しないことがわかってきました。伝統工芸品においては、
従事者数(伝統工芸の職人数)が最後の1人となっている例は少なくなく、市場規模を算定し、公開できるような状況で
はありませんでした。このような状況下、情報が古く不正確なことがあったとしても、データがないことよりも、あっ
た方が保護のための発展的活動ができると考え、データを整理したものです。主に、政府の統計資料として発表した
最後の年である 2006 年の資料を用いて、工芸品全体についてできる限りデータを揃えました。数値データは古く直
近の状況とは離れているものもあるかもしれません。しかしながら、伝統工芸品の情報をオープンデータのデータブ
ックにすることで、個々の産地で伝統工芸品の存在を知り、何かできることはないだろうかと考える市民がたった1
人でもいいから増やしたいという思いからです。特にデータの上で技術の存続が危機的状況と考えるものを自主的に
「希少伝統工芸品」と定義して、シグナルを入れました。伝統的工芸品は 100 年以上の歴史があるものを指します。
データブックのための本調査が全国各地で伝統工芸品を地域資源だと再認識し、活かされ、次の 100 年へと受けつぐ
ためのきっかけになることを願うものです。

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