https://www.watney.co.jp/course?wix-vod-video-id=3edb2850f9af4779b44c6456f9d1dd39&wix-vod-comp-id=comp-jfnqv23o# 大阪大学大学院経済学研究科 中川功一 准教授 WEB経営学講座 WATNEY（ワトニー） https://watney.co.jp/

1. 大阪大学大学院経済学研究科
中川功一
Allegro_assai@hotmail.com
国際経営
(12)
国際パートナーシップ

2. 売上の大きさの順番を考えてください。
アップル
サムスン
鴻海
ソニー
22兆円
20兆円
15兆円
7兆円
世界の電機メーカー売上高（2016年）

3. HonHai （鴻海）

4. 鴻海のビジネスモデル“EMS”：生産に絞り込む
鴻海：生産（＋調達、一部開発）
アップル
企画・開発
アップル
販売
企業B
企画・開発
企業B
販売
企業C
企画・開発
企業C
販売
鴻海（そしてアップル）のビジネスモデル
一般的な製造業企業
のビジネスモデル
企業A
企画・開発
↓
生産
調達
↓
販売

5. 出所：石原昇（2010）

6. 鴻海をはじめとした台湾企業は、
なぜ強いのか？
すべてを一社でやりきろうとするビジネスよりも、
鴻海やアップルのように特定領域に絞り込むほう
が有利に立てるのは、なぜなのだろうか？

7. 国際パートナーシップ
「世界各国の企業の強みを繋ぎ合わせる」
パートナーシップ型が広がる背景：グローバル競争の過熱
競争の激化とスピードアップ
様々なビジネスモデルの登場
企業固有の強みが世界的に分散
近年の産業競争事情を踏まえれば、きわめて理にかなった、現代的国際化の手法
直接投資で国際化
「自社で全部やる」
パートナーシップで国際化
「強みを繋ぎ合わせる」
事業展開のスピード 遅い 速い
事業展開のコスト≒リスク 大きい 小さい
競争力の源泉 自社 パートナー企業各社
国際間連携 やりやすい 難しい
利害対立表面化しやすい
利益の帰属 自社のみ パートナーと配分
海外での学習 知識・経験を獲得できる 知識・経験獲得は限定される

8. 国際パートナーシップの具体的形態
現地ビジネス対応型
○現地ビジネスを代理でやってもらう
○現地ビジネスを共同で行う（JV）
グローバルビジネス対応型
○生産委託 ※既に説明済み
○開発委託＆オープンイノベーション
○ビジネス・プロセス・アウトソーシング

9. ○現地ビジネスを代理させる
各国市場でのビジネスを現地企業に委託する。
自社直接投資では収益がコストに合わない、あるいは自社出資で
の事業展開が難しい、リスクが高いと判断される場合に採用される。
大幸薬品・正露丸の販売は、中国・台湾を除きすべて各国販売代理店や輸入商社に委託

10. ○現地ビジネスの共同実施：JV
新大洲本田
バイク産業における、グローバルトップ
のホンダと、中国国内トップの新大洲
の合弁会社。
2000年頃、世界でリードしていたホン
ダだが中国では価格競争に勝てず苦
戦。一方の新大洲は海外メーカーのバ
イク設計をコピーして成長してきた企業。
ただし当時は中小のコピーバイクメー
カーとの競争で業績を悪化させていた。
中国ビジネスでの勝利のため、2者は
2001年に中国事業を合弁とすることに。
ホンダの技術力・ブランド力・販売網と、
新大洲のコスト競争力（生産手法と調
達）・販売網を繋ぎ合わせ、中国市場
でのシェアを盤石のものとし、収益性も
回復させた。

11. 開発委託
新技術・新製品を生み出す研究開発活動を委託する。
下流の製品設計業務の一部を委託する「オフショア開発」、上流の新規技術開発を
委託する「オープン・イノベーション」とに分けられる。
オフショア開発
主として新興国の安価で優秀なエンジニアを活用した“開発の低コスト化”を狙うもの
1991年設立。大連を中心に23000人を抱える中
国ソフトウェア・オフショア開発最大手。
日・米・欧の企業からソフトウェア開発業務の委
託を受ける。
オフショア開発では、国をまたいで2企業間
で製品設計という情報資産の受け渡しをし
なければならない。このため、2国両方の言
語や文化、商慣行に精通し、また製品やソ
フトウェアの技術についても理解のあるブ
リッジ人材 の存在が大切とされる。
開発
委託

12. オープン・イノベーション
クローズド・イノベーションオープン・イノベーション
技術開発を自社で一貫して行う他者の技術シーズを活用して技術開
発を行う。自社技術の外部活用もある
背景
• 技術開発競争のスピードアップ→自社だけでは間に合わない・足りない
• 技術・知識・アイデアが世界中に拡散→自社で必要としている／思いも
つかなかった技術・知識が、世界のどこかにある可能性が高くなった

13. 米国とくにシリコンバレーでは
すでに広範に採用されている
○シスコシステムズ A&D （Acquisition and development）
積極的に、自社にない技術を（技術単体あるいは企業ごと）買う。買
収を担当する専門部署が、買収プロセス・ガイドライン等を構築し、
また社内の技術状況を深く理解することで、買うべき企業・技術、そ
の買収額を明確にしていく。
○アップル
iPhone：デザインとUIのコア技術は有するが、部品・ソフトウェア等の
多くを世界中から外部調達する。
iTunes：アプリケーションの半数以上が海外他社製
→これら他者技術の全てがアップル自体の競争力になっている
○このほかインテル・マイクロソフトも実践

14. ビジネス・プロセス・アウトソーシング
会社のスタッフ（間接部門）業務やノンコア業務をコストダウンのために海外
アウトソースする。テレフォンオペレーションやWeb管理、経理部門などで採
用が広がっている。コア部門への資源集中の策として利用される。
BPOの事例
シャープの顧客対
応・家電修理業務の
外注（→マスター
ピースグループ）

15. 小括＆Next
国際パートナーシップは、グローバル競争に即応する、
現代的でスマートな経営手法。その効果は、鴻海や
アップルに如実に顕れている。
効果的なパートナーシップ構築の手法もまた、学習す
る必要がある。

16. 垂直絞り込みか、垂直統合か
＝市場メカニズムか、組織のメカニズムか
市場メカニズム
取引企業を競争させ、ベストな価
格・性能を提案した企業と取引する。
●競争圧力によるコスト・品質改善
●取引先の選択肢が増える
●パートナーの資源・資金が使える
●投資リスク小さくスピードも速い
組織メカニズム
経営理念・目標・戦略・文化などを
共有し、部門間で協力する。
●協力によるコスト・品質改善
●利害衝突がない
●自社で利益総取りできる
●両方の事業について学習できる
企業
A
企業
B
企業
C
自社
競争
部門B
部門A
協力

17. 演習
アップルはスマートフォン生産を海外アウトソースし、
サムスンはスマートフォン生産を国内で垂直統合している。
それぞれ、なぜそのような方針を採用しているのか、調べ
た情報をもとに議論して下さい。
市場メカニズム
取引企業を競争させ、ベストの
価格・性能を出せる企業と取引。
●競争圧力でコスト・品質改善
●取引先の選択肢が増える
●パートナーの資源・資金活用
●投資リスク小、スピードも速い
組織メカニズム
経営理念・目標・戦略・文化など
を共有し、部門間で協力する。
●協力によるコスト・品質改善
●利害衝突がない
●自社で利益総取りできる
●両方の事業での学習

18. アップル
生産をアウトソース
サムスン
自社生産
ものづくりと技術に強みがあり、
垂直統合している日本企業に
対抗するには！
→デザインとマーケティングに
集中すべきだ！
正解はひとつではない！
そして、各社が競争に勝ち抜くために
理論を戦略立案に反映させている。
デザインとマーケティングに強
みがあり、垂直絞り込みしてい
るアップルに対抗するには！
→技術力と生産能力を武器に、
垂直統合の強みを活かすべき
だ！

19. まとめ（3/3）
• 垂直統合するか、パートナーシップを活用す
るかという「結論」が大切なのではなく、なぜ
その結論になるのかという「論理」が大切。
• ちゃんと論理的に活用されているならば、
垂直統合も、パートナーシップも、どちらも企
業にメリットをもたらしてくれる。