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担当小松充孝 
24 July. 2014 
2014年度小児看護勉強会 
3-1. ショック総論 
Ver. 1.1
まずは復習から 
• 前回のアナフィラキシーの勉強会で 
ショックについて簡単に説明しました! 
• 覚えてますか? 
– ショックの定義 
– 組織への酸素供給 
– 代償機序 
– 分類
ショックの定義 
• 組織への酸素と栄養の供給が不十分で、 
代謝需要を満たせないために起こる危機 
的状況⇒ ショック≠ 血圧低下ではない! 
• ショックによる不十分な組織潅流が持続 
すると、細胞や臓器に不可逆的な障害が 
生じ、急速に心肺機能不全へと進行、心 
停止となる
組織への酸素供給 
• 組織への十分な酸素供給は 
– 組織への血流が十分であること 
– 血液中の酸素含有量が十分であること 
• 前負荷 
• 心筋収縮力 
• 後負荷 
1回拍出量 
× 
心拍数 
心拍出量 
× 
酸素含量 
酸素供給量 
– 小児で心拍出量が低下する理由は、1回拍出 
量の低下であることが多い
ところで 
• 1回拍出量は1回の心拍で送り出される血 
液量です 
• 以下の3つによって規定されます 
– 前負荷:収縮前に心室に存在する血液量 
– 心筋収縮力:収縮の強さ 
– 後負荷:心室が収縮した時に受ける抵抗
代償機序 
• 1回拍出量が低下した場合、組織への酸素 
供給を維持するため代償機序が活発になる 
– 頻脈 
– 体血管抵抗の増加 
• 皮膚が冷たく、発汗 
• CRT (capillary Refilling Time)の延長 
• 末梢の脈が微弱、脈圧の減少 
– 心筋収縮力の増加 
– 静脈緊張の増加
ショックの徴候代償機序から 
• 心拍数増加 
– 心臓: 頻脈 
• 体血管抵抗増加 
– 皮膚: 冷感、蒼白、発汗 
– 循環: 毛細血管再充満時間の遅延 
– 脈拍: 末梢脈拍微弱、脈圧減少(dBP↑) 
• 内臓血管抵抗上昇 
– 腎・腸管: 乏尿、嘔吐、イレウス
ショックの徴候5P 
• Pallor 
– 蒼白 
• Pulmonary insufficiency 
– 呼吸不全 
• Pulselessness 
– 脈拍触知不能 
• Perspiration 
– 冷汗 
• Prostration 
– 虚脱
外傷初期診療ショックの徴候 
SHOCK 
• S: Skin 
– 冷たい、蒼白、発汗 
• H: HR 
– 頻脈 
• O: Outer bleeding 
– 外出血の有無の確認 
• C: CRT 
– capillary refill time (毛細血管再充満時間) 
• K: Ketsuatsu (血圧)
ショックの分類 
• 重症度別 
– 代償性 
• sBPが正常範囲内+ 組織潅流不十分な徴候 
– 低血圧性(非代償性) 
• sBPの低下+ 組織潅流不十分な徴候 
• 病型別 
1. 循環血液減少性Hypovolemic shock 
2. 血液分布異常性Distributive shock 
3. 心原性Cardiogenic shock 
4. 閉塞性Obstructive shock 
5. 貧血性Anemic shock
低血圧の定義 
年齢収縮期血圧(mmHg) 
満期産の新生児 
(0~28日) 
<60 
乳児 
(1~12ヵ月) <70 
小児 
1~10歳 
血圧の5パーセンタイル 
<70 + (年齢×2) 
小児 
>10歳以上<90
低血圧性ショックへの進展を阻止! 
• ショック≠ 血圧低下 
• 代償性ショックの状態で介入しなければ、 
低血圧性ショックへ進展⇒ 致死的 
– 代償性ショック⇒低血圧性ショック:数時間 
– 低血圧性ショック⇒心停止:数分
ショックの認識フローチャート 
臨床的徴候循環血液量減少性血液分布異常性心原性閉塞性 
気道(A) 開通性気道は開通しており、維持できる/維持できない 
呼吸(B) 
呼吸数増加 
呼吸努力正常~増加努力性 
呼吸音正常正常(±ラ音) ラ音、呻吟 
循環(C) 
収縮期血圧代償性ショック⇒ 低血圧性ショック 
脈圧低下状況で異なる低下 
心拍数増加 
末梢の脈微弱反跳・微弱微弱 
皮膚蒼白・冷感暖/冷感蒼白・冷感 
CRT 遅延状況で異なる遅延 
尿量減少 
神経学的(D) 意識レベル早期は易刺激性⇒ 晩期は嗜眠 
身体診察(E) 体温状況によって異なる 
PALSプロバイダーマニュアルより一部改変
ショックの管理 
• 目標 
– ショックの迅速な認識・介入・離脱 
– 組織への酸素供給を回復させ、組織潅流と代 
謝需要のバランスを改善すること!! 
• 管理の基本 
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– 心拍出量と血液分布の改善 
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酸素投与方法 
• どのような投与法がありますか? 
– 低流量システム 
• 鼻カニューレ 
• 単純フェイスマスク(最大酸素吸気濃度: 60%) 
– 高流量システム 
• 部分再呼吸式リザーバーマスク 
• 非再呼吸式リザーバーマスク 
• ショックや呼吸障害時には高流量システ 
ムを使用する!
高流量システム 
部分再呼吸式リザーバーマスク非再呼吸式リザーバーマスク
高流量システム 
部分再呼吸式リザーバーマスク 
• 単純フェイスマスクにリ 
ザーバーバッグが附属 
• 吸入酸素濃度:50-60%以 
上⇒高流量(10-12 L/min) 
の酸素流量が必要 
• リザーバーを膨らませて 
から装着 
• リザーバーバッグが虚脱 
しない様、流量を調節 
非再呼吸式リザーバーマスク 
• マスク側面と、マスク・ 
リザーバーバッグ間に吸 
気方向の一方向弁が装着 
• 呼気はマスク外へ排出 
• 吸入酸素濃度:95%以上⇒ 
高流量(10-15 L/min)の酸 
素流量が必要 
• 流量不足は容易に低換 
気・低酸素となる
血管の確保 
• 輸液蘇生や薬剤の投与のために血管確保 
が重要になります 
– まず初めに 
• 末梢静脈へのカニューレ挿入を試みる 
– 挿入困難な場合 
• いたずらに末梢確保に時間を取らない 
• 骨髄針を用いて骨髄路を確保する
骨髄路の確保 
• 物品 
– イリノイ骨髄針(当院採用) 
– 消毒・輸液ライン 
• 穿刺部位 
– 脛骨近位内側の脛骨粗面(平らな面)が第一選択 
– 脛骨結節の1-3cm遠位を目安として、針先をや 
や下方に向けて穿刺する 
• 大腿骨遠位端・内踝・上前腸骨棘なども穿刺部位と 
して用いられる事あり
イリノイ骨髄針 
• デプスガードで挿入する 
深さを調整 
• 幼児・小児の場合、表皮 
から骨皮質を貫通するま 
でほとんど1cm以内 
• 穿刺後、スクリュー 
キャップを外し、スタイ 
レットを引き抜く時に骨 
髄針自体を引き抜く可能 
性があり注意する! 
イリノイ骨髄針添付文書から
手順 
1. 下肢を軽度外転・外旋し、膝を軽度屈曲 
2. 穿刺部位を消毒(イソジン使用) 
3. 骨髄針にて穿刺 
– 穿刺部位の裏側に手を回さないこと! 
4. 確認 
– 針が支えなく立つ 
– シリンジにて陰圧をかけると骨髄液が引ける 
– 生理食塩水が抵抗なく注入でき、周囲が腫れない 
5. 固定骨髄針を直接テープで固定する
輸液蘇生 
• ショックにおいて輸液療法は重要 
– 循環血液量と組織潅流の回復 
• 知っておきたいこと! 
– どの輸液製剤を用いる? 
– どの程度の投与量? 
– どの程度の速度?
体液の体内分布 
体内総水分量(total body water: TBW) 
ICF 間質液血漿 
ECF 
• 体内総水分量(total body water: TBW) 
成人・小児: 60% 乳幼児: 65% 新生児: 75% 
‐ 細胞内液(intracellular fluid: ICF) : 40% ⇒全年齢で変わらず 
‐ 細胞外液(extracellular fluid: ECF): 20(-35)% 
‐ 血漿(血管内): 5% 
‐ 間質液: 15(-30)%
輸液をすると 
• 原則 
– 輸液は血管内に入り、間質へと移動して、さ 
らに細胞内液へと移動する 
– ショックで大切なのは循環血液量を増大させ 
ること! 
– 細胞外液へ長くとどまる輸液製剤を選択する 
細胞内液間質血 
漿 
ECF
輸液製剤を1L投与した場合 
輸液製剤 
組成の内訳細胞内液 
(8) 
細胞外液(4) 
等張液自由水間質(3) 血管内(1) 
生理食塩水 
(Na: 154 mEq/L) 
1000 mL 0 mL 0 mL 750 mL 250 mL 
ソリタT1® 
(Na: 90 mEq/L) 
590 mL 410 mL 275 mL 545 mL 180 mL 
ソリタT3® 
(Na: 35 mEq/L) 
360 mL 640 mL 425 mL 430 mL 145 mL 
5%糖液 
(Na: 0 mEq/L) 
0 mL 1000 mL 665 mL 250 mL 85 mL
輸液製剤 
• 種類 
– 等張晶質液(細胞外液) 
• 生理食塩水(Na+: 154, Cl-: 154mEq/L) 
• 乳酸リンゲル液(ラクテック®) 
– (Na+: 130, K+: 4, Ca2+: 3, Cl-: 109, L-Lactate-: 28 mEq/L) 
• 酢酸リンゲル液(ヴィーンF®・ソリューゲンF®) 
– (Na+: 130, K+: 4, Ca2+: 3, Cl-: 109, Acetate-: 28 mEq/L) 
• 重炭酸リンゲル液(ビカーボン®) 
– (Na+: 135, K+: 4, Ca2+: 3, Mg2+: 1, Cl-: 113, HCO3 
-: 25, 
Citrate3-: 5 mEq/L) 
• 乳酸(lactate) vs 酢酸(acetate) vs 重炭酸(HCO3 
-) ??
乳酸vs 酢酸vs 重炭酸 
• 乳酸も酢酸も代謝されることによって、 
最終的には重炭酸を生み出します 
– 主に代謝される場所 
• 乳酸:肝臓・腎臓 
• 酢酸:全身の筋肉⇒乳酸より代謝が早い 
• 重炭酸:代謝されずにそのまま緩衝剤として働く 
– 健康な人に使用する場合⇒差はない 
– ショック時 
• 乳酸は高くなっている。。。 
• 当院では乳酸リンゲルではなく、酢酸リンゲル(ソ 
リューゲン®)を使用
輸液の投与量と投与時間 
• では輸液蘇生時の1回投与量は? 
① 5 mL/Kg 
② 10 mL/Kg 
③ 20 mL/Kg 
④ 30 mL/Kg 
⑤ 50 mL/Kg 
• 答えは①、②、③です 
– 投与量はショックの原因によって異なります
ショックの原因別 
輸液投与量・投与速度 
ショックの分類輸液投与量投与速度 
循環血液量減少性ショック 
血液分布異常性ショック 
20 mL/kg 
(必要時繰り返す) 
5-10分かけて 
心原性ショック(非中毒性) 5-10 mL/kg 
(必要時繰り返す) 
10-20分かけて 
代償性ショックを伴うDKA 10-20 mL/kg 
(必要時繰り返す) 
1時間かけて 
中毒 
(カルシウム拮抗薬, 
βアドレナリン遮断薬など) 
5-10 mL/kg 
(必要時繰り返す) 
10-20分かけて 
PALSプロバイダーマニュアルより一部改変
輸液蘇生の効果評価 
• 循環血液量減少性ショック患児に対して 
– 20 mL/kgの生理食塩水を投与しました 
– どのような所見に注意して治療効果判定を行 
いますか? 
– 治療が効果的と判断する所見 
– CRTの改善、血圧の上昇、心拍数の低下、呼 
吸数の減少、尿量の増加、意識状態の改善
モニタリング 
• 治療効果判定のため、以下の項目を頻回 
もしくは継続的にモニターする 
– SpO2 
– 呼吸回数 
– 心拍数 
– 血圧と脈圧 
– 意識状態 
– 体温 
– CRT 
– 尿量 
バイタルサインが重要!!
ショック時の検査 
• ショックの病因や重症度、臓器機能障害、 
代謝障害などの評価目的に施行 
– 血液検査 
• 血算、電解質(Na, K, Cl, Ca)、乳酸 
• 血糖(必ず簡易血糖値も測定する) 
• 血液ガス(ショック時には動脈血で評価する) 
– 病原微生物検査 
• 培養検査:カテーテル採尿による尿培養、血液培養 
• 迅速検査:必要に応じて各種ウイルス抗原検査 
– 画像検査 
• レントゲン検査・CT検査・超音波検査etc
血糖について 
• 低血糖は重症小児で良く認められる 
– グルコースの利用が高く、貯蔵が少ないなど 
から小児は低血糖の高リスク 
– 定義新生児<45mg/dL, 乳児~小児<60mg/dL 
– 低血糖の遷延は脳に永続的な障害をもたらす 
• 管理 
– 頻回の血糖測定 
– 低血糖時:Glu 0.5-1g/kg 
(= 20%Glu 2.5mL/kg, 10%Glu 5mL/kg) 
20%Glu (=200g/L = 200mg/mL) 2.5mL/kg =500mg/kg =0.5g/kg
輸液蘇生時の糖含有製剤の使用 
• ショックに対する輸液蘇生にブドウ糖含 
有製剤をルーチンで投与してはならない! 
• 理由 
1. 大量のブドウ糖負荷 
2. 高血糖 
3. 血清浸透圧の上昇 
4. 浸透圧利尿 
5. 循環血液量減少 
⇒ショックをさらに悪化させる
浸透圧の計算式 
• 血漿浸透圧(正常範囲: 285-295 mOsm/kgH2O) 
=2×(Na+) + Glu(mg/dL)/18 + BUN(mg/dL)/2.8 
{+ Mannitol (mM) + Alcohol (mM)} 
• 例題 
– 生理食塩水⇒ Na:154×2 = 308 mOsm/kgH2O 
– ソリタT1® ⇒ Na:90×2 + Glu:2600/18 = 324 
– 5%糖液⇒ Glu:5000/18 = 278 
生理食塩水: Na: 154mEq/L, 5%糖液: Glu: 5% (=50g/L = 50000mg/10dL = 5000mg/dL) 
ソリタT1®: Na: 90mEq/L, K: 20mEq/L, Cl: 70mEq/L, Glu: 2.6% 
____:non-effective osmoles ⇒ 細胞膜を自由に通過するため浸透圧差を生み出さない
酸素や輸液投与の次は・・・ 
• 酸素投与や十分量の輸液したけど、、、 
• 安定しない場合やより安定化するために 
• 『薬剤』を投与します 
– どのような種類の薬剤が使用されますか?
ショックの治療に用いる血管作動薬 
種類薬物効果 
陽性変力作用薬• アドレナリン 
• ドパミン 
• ドブタミン 
• 心筋収縮力増加 
• 心拍数増加 
• SVRにさまざまな作用 
ホスホジエステラーゼ阻害薬 
(陽性変力性血管拡張薬) 
• ミルリノン 
• イナムリノン 
• SVRの低下 
• 冠動脈血流量の改善 
• 心筋収縮力改善 
血管拡張薬• ニトログリセリン 
• ニトロプルシド 
• SVRと静脈緊張の低下 
血管収縮薬(昇圧薬) • アドレナリン 
• ノルアドレナリン 
• ドパミン 
• バソプレシン 
• SVRの上昇 
• 心筋収縮力増加 
(バソプレシン除く) 
SVR:体血管抵抗PALSプロバイダーマニュアルより
ショックの初期管理のまとめ 
• 気道の確保&酸素投与、 
– 必要時補助換気 
• 血管確保 
– 末梢静脈、駄目ならぱっぱと骨髄路へ 
• 輸液蘇生 
– 基本は等張晶質液20mL/kg, 5-20分で投与 
– 循環改善するまで投与を繰り返す 
– 心原性は別ですよ、、、 
• 適切なモニタリング 
– バイタルが大切! 尿量やCRTも 
• 臨床検査 
– 血糖値に注意して 
• 薬物療法 
– 病態に応じて使い分けよう
小児救急医療 
Off the Jobトレーニングコース 
• BLS Basic Life Support 
• PALS Pediatric Advanced Life Support 
• PFCCS Pediatric Fundamental Critical 
Care Support 
• PEARS Pediatric Emergency Assessment, 
Recognition, and Stabilization
小児のショック 総論

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小児のショック 総論

  • 1. 担当小松充孝 24 July. 2014 2014年度小児看護勉強会 3-1. ショック総論 Ver. 1.1
  • 2. まずは復習から • 前回のアナフィラキシーの勉強会で ショックについて簡単に説明しました! • 覚えてますか? – ショックの定義 – 組織への酸素供給 – 代償機序 – 分類
  • 3. ショックの定義 • 組織への酸素と栄養の供給が不十分で、 代謝需要を満たせないために起こる危機 的状況⇒ ショック≠ 血圧低下ではない! • ショックによる不十分な組織潅流が持続 すると、細胞や臓器に不可逆的な障害が 生じ、急速に心肺機能不全へと進行、心 停止となる
  • 4. 組織への酸素供給 • 組織への十分な酸素供給は – 組織への血流が十分であること – 血液中の酸素含有量が十分であること • 前負荷 • 心筋収縮力 • 後負荷 1回拍出量 × 心拍数 心拍出量 × 酸素含量 酸素供給量 – 小児で心拍出量が低下する理由は、1回拍出 量の低下であることが多い
  • 5. ところで • 1回拍出量は1回の心拍で送り出される血 液量です • 以下の3つによって規定されます – 前負荷:収縮前に心室に存在する血液量 – 心筋収縮力:収縮の強さ – 後負荷:心室が収縮した時に受ける抵抗
  • 6. 代償機序 • 1回拍出量が低下した場合、組織への酸素 供給を維持するため代償機序が活発になる – 頻脈 – 体血管抵抗の増加 • 皮膚が冷たく、発汗 • CRT (capillary Refilling Time)の延長 • 末梢の脈が微弱、脈圧の減少 – 心筋収縮力の増加 – 静脈緊張の増加
  • 7. ショックの徴候代償機序から • 心拍数増加 – 心臓: 頻脈 • 体血管抵抗増加 – 皮膚: 冷感、蒼白、発汗 – 循環: 毛細血管再充満時間の遅延 – 脈拍: 末梢脈拍微弱、脈圧減少(dBP↑) • 内臓血管抵抗上昇 – 腎・腸管: 乏尿、嘔吐、イレウス
  • 8. ショックの徴候5P • Pallor – 蒼白 • Pulmonary insufficiency – 呼吸不全 • Pulselessness – 脈拍触知不能 • Perspiration – 冷汗 • Prostration – 虚脱
  • 9. 外傷初期診療ショックの徴候 SHOCK • S: Skin – 冷たい、蒼白、発汗 • H: HR – 頻脈 • O: Outer bleeding – 外出血の有無の確認 • C: CRT – capillary refill time (毛細血管再充満時間) • K: Ketsuatsu (血圧)
  • 10. ショックの分類 • 重症度別 – 代償性 • sBPが正常範囲内+ 組織潅流不十分な徴候 – 低血圧性(非代償性) • sBPの低下+ 組織潅流不十分な徴候 • 病型別 1. 循環血液減少性Hypovolemic shock 2. 血液分布異常性Distributive shock 3. 心原性Cardiogenic shock 4. 閉塞性Obstructive shock 5. 貧血性Anemic shock
  • 11. 低血圧の定義 年齢収縮期血圧(mmHg) 満期産の新生児 (0~28日) <60 乳児 (1~12ヵ月) <70 小児 1~10歳 血圧の5パーセンタイル <70 + (年齢×2) 小児 >10歳以上<90
  • 12. 低血圧性ショックへの進展を阻止! • ショック≠ 血圧低下 • 代償性ショックの状態で介入しなければ、 低血圧性ショックへ進展⇒ 致死的 – 代償性ショック⇒低血圧性ショック:数時間 – 低血圧性ショック⇒心停止:数分
  • 13. ショックの認識フローチャート 臨床的徴候循環血液量減少性血液分布異常性心原性閉塞性 気道(A) 開通性気道は開通しており、維持できる/維持できない 呼吸(B) 呼吸数増加 呼吸努力正常~増加努力性 呼吸音正常正常(±ラ音) ラ音、呻吟 循環(C) 収縮期血圧代償性ショック⇒ 低血圧性ショック 脈圧低下状況で異なる低下 心拍数増加 末梢の脈微弱反跳・微弱微弱 皮膚蒼白・冷感暖/冷感蒼白・冷感 CRT 遅延状況で異なる遅延 尿量減少 神経学的(D) 意識レベル早期は易刺激性⇒ 晩期は嗜眠 身体診察(E) 体温状況によって異なる PALSプロバイダーマニュアルより一部改変
  • 14. ショックの管理 • 目標 – ショックの迅速な認識・介入・離脱 – 組織への酸素供給を回復させ、組織潅流と代 謝需要のバランスを改善すること!! • 管理の基本 – 血液酸素含有量の最適化 – 心拍出量と血液分布の改善 – 酸素需要の抑制 – 代謝障害の是正
  • 15. 酸素投与方法 • どのような投与法がありますか? – 低流量システム • 鼻カニューレ • 単純フェイスマスク(最大酸素吸気濃度: 60%) – 高流量システム • 部分再呼吸式リザーバーマスク • 非再呼吸式リザーバーマスク • ショックや呼吸障害時には高流量システ ムを使用する!
  • 17. 高流量システム 部分再呼吸式リザーバーマスク • 単純フェイスマスクにリ ザーバーバッグが附属 • 吸入酸素濃度:50-60%以 上⇒高流量(10-12 L/min) の酸素流量が必要 • リザーバーを膨らませて から装着 • リザーバーバッグが虚脱 しない様、流量を調節 非再呼吸式リザーバーマスク • マスク側面と、マスク・ リザーバーバッグ間に吸 気方向の一方向弁が装着 • 呼気はマスク外へ排出 • 吸入酸素濃度:95%以上⇒ 高流量(10-15 L/min)の酸 素流量が必要 • 流量不足は容易に低換 気・低酸素となる
  • 18. 血管の確保 • 輸液蘇生や薬剤の投与のために血管確保 が重要になります – まず初めに • 末梢静脈へのカニューレ挿入を試みる – 挿入困難な場合 • いたずらに末梢確保に時間を取らない • 骨髄針を用いて骨髄路を確保する
  • 19. 骨髄路の確保 • 物品 – イリノイ骨髄針(当院採用) – 消毒・輸液ライン • 穿刺部位 – 脛骨近位内側の脛骨粗面(平らな面)が第一選択 – 脛骨結節の1-3cm遠位を目安として、針先をや や下方に向けて穿刺する • 大腿骨遠位端・内踝・上前腸骨棘なども穿刺部位と して用いられる事あり
  • 20. イリノイ骨髄針 • デプスガードで挿入する 深さを調整 • 幼児・小児の場合、表皮 から骨皮質を貫通するま でほとんど1cm以内 • 穿刺後、スクリュー キャップを外し、スタイ レットを引き抜く時に骨 髄針自体を引き抜く可能 性があり注意する! イリノイ骨髄針添付文書から
  • 21. 手順 1. 下肢を軽度外転・外旋し、膝を軽度屈曲 2. 穿刺部位を消毒(イソジン使用) 3. 骨髄針にて穿刺 – 穿刺部位の裏側に手を回さないこと! 4. 確認 – 針が支えなく立つ – シリンジにて陰圧をかけると骨髄液が引ける – 生理食塩水が抵抗なく注入でき、周囲が腫れない 5. 固定骨髄針を直接テープで固定する
  • 22. 輸液蘇生 • ショックにおいて輸液療法は重要 – 循環血液量と組織潅流の回復 • 知っておきたいこと! – どの輸液製剤を用いる? – どの程度の投与量? – どの程度の速度?
  • 23. 体液の体内分布 体内総水分量(total body water: TBW) ICF 間質液血漿 ECF • 体内総水分量(total body water: TBW) 成人・小児: 60% 乳幼児: 65% 新生児: 75% ‐ 細胞内液(intracellular fluid: ICF) : 40% ⇒全年齢で変わらず ‐ 細胞外液(extracellular fluid: ECF): 20(-35)% ‐ 血漿(血管内): 5% ‐ 間質液: 15(-30)%
  • 24. 輸液をすると • 原則 – 輸液は血管内に入り、間質へと移動して、さ らに細胞内液へと移動する – ショックで大切なのは循環血液量を増大させ ること! – 細胞外液へ長くとどまる輸液製剤を選択する 細胞内液間質血 漿 ECF
  • 25. 輸液製剤を1L投与した場合 輸液製剤 組成の内訳細胞内液 (8) 細胞外液(4) 等張液自由水間質(3) 血管内(1) 生理食塩水 (Na: 154 mEq/L) 1000 mL 0 mL 0 mL 750 mL 250 mL ソリタT1® (Na: 90 mEq/L) 590 mL 410 mL 275 mL 545 mL 180 mL ソリタT3® (Na: 35 mEq/L) 360 mL 640 mL 425 mL 430 mL 145 mL 5%糖液 (Na: 0 mEq/L) 0 mL 1000 mL 665 mL 250 mL 85 mL
  • 26. 輸液製剤 • 種類 – 等張晶質液(細胞外液) • 生理食塩水(Na+: 154, Cl-: 154mEq/L) • 乳酸リンゲル液(ラクテック®) – (Na+: 130, K+: 4, Ca2+: 3, Cl-: 109, L-Lactate-: 28 mEq/L) • 酢酸リンゲル液(ヴィーンF®・ソリューゲンF®) – (Na+: 130, K+: 4, Ca2+: 3, Cl-: 109, Acetate-: 28 mEq/L) • 重炭酸リンゲル液(ビカーボン®) – (Na+: 135, K+: 4, Ca2+: 3, Mg2+: 1, Cl-: 113, HCO3 -: 25, Citrate3-: 5 mEq/L) • 乳酸(lactate) vs 酢酸(acetate) vs 重炭酸(HCO3 -) ??
  • 27. 乳酸vs 酢酸vs 重炭酸 • 乳酸も酢酸も代謝されることによって、 最終的には重炭酸を生み出します – 主に代謝される場所 • 乳酸:肝臓・腎臓 • 酢酸:全身の筋肉⇒乳酸より代謝が早い • 重炭酸:代謝されずにそのまま緩衝剤として働く – 健康な人に使用する場合⇒差はない – ショック時 • 乳酸は高くなっている。。。 • 当院では乳酸リンゲルではなく、酢酸リンゲル(ソ リューゲン®)を使用
  • 28. 輸液の投与量と投与時間 • では輸液蘇生時の1回投与量は? ① 5 mL/Kg ② 10 mL/Kg ③ 20 mL/Kg ④ 30 mL/Kg ⑤ 50 mL/Kg • 答えは①、②、③です – 投与量はショックの原因によって異なります
  • 29. ショックの原因別 輸液投与量・投与速度 ショックの分類輸液投与量投与速度 循環血液量減少性ショック 血液分布異常性ショック 20 mL/kg (必要時繰り返す) 5-10分かけて 心原性ショック(非中毒性) 5-10 mL/kg (必要時繰り返す) 10-20分かけて 代償性ショックを伴うDKA 10-20 mL/kg (必要時繰り返す) 1時間かけて 中毒 (カルシウム拮抗薬, βアドレナリン遮断薬など) 5-10 mL/kg (必要時繰り返す) 10-20分かけて PALSプロバイダーマニュアルより一部改変
  • 30. 輸液蘇生の効果評価 • 循環血液量減少性ショック患児に対して – 20 mL/kgの生理食塩水を投与しました – どのような所見に注意して治療効果判定を行 いますか? – 治療が効果的と判断する所見 – CRTの改善、血圧の上昇、心拍数の低下、呼 吸数の減少、尿量の増加、意識状態の改善
  • 31. モニタリング • 治療効果判定のため、以下の項目を頻回 もしくは継続的にモニターする – SpO2 – 呼吸回数 – 心拍数 – 血圧と脈圧 – 意識状態 – 体温 – CRT – 尿量 バイタルサインが重要!!
  • 32. ショック時の検査 • ショックの病因や重症度、臓器機能障害、 代謝障害などの評価目的に施行 – 血液検査 • 血算、電解質(Na, K, Cl, Ca)、乳酸 • 血糖(必ず簡易血糖値も測定する) • 血液ガス(ショック時には動脈血で評価する) – 病原微生物検査 • 培養検査:カテーテル採尿による尿培養、血液培養 • 迅速検査:必要に応じて各種ウイルス抗原検査 – 画像検査 • レントゲン検査・CT検査・超音波検査etc
  • 33. 血糖について • 低血糖は重症小児で良く認められる – グルコースの利用が高く、貯蔵が少ないなど から小児は低血糖の高リスク – 定義新生児<45mg/dL, 乳児~小児<60mg/dL – 低血糖の遷延は脳に永続的な障害をもたらす • 管理 – 頻回の血糖測定 – 低血糖時:Glu 0.5-1g/kg (= 20%Glu 2.5mL/kg, 10%Glu 5mL/kg) 20%Glu (=200g/L = 200mg/mL) 2.5mL/kg =500mg/kg =0.5g/kg
  • 34. 輸液蘇生時の糖含有製剤の使用 • ショックに対する輸液蘇生にブドウ糖含 有製剤をルーチンで投与してはならない! • 理由 1. 大量のブドウ糖負荷 2. 高血糖 3. 血清浸透圧の上昇 4. 浸透圧利尿 5. 循環血液量減少 ⇒ショックをさらに悪化させる
  • 35. 浸透圧の計算式 • 血漿浸透圧(正常範囲: 285-295 mOsm/kgH2O) =2×(Na+) + Glu(mg/dL)/18 + BUN(mg/dL)/2.8 {+ Mannitol (mM) + Alcohol (mM)} • 例題 – 生理食塩水⇒ Na:154×2 = 308 mOsm/kgH2O – ソリタT1® ⇒ Na:90×2 + Glu:2600/18 = 324 – 5%糖液⇒ Glu:5000/18 = 278 生理食塩水: Na: 154mEq/L, 5%糖液: Glu: 5% (=50g/L = 50000mg/10dL = 5000mg/dL) ソリタT1®: Na: 90mEq/L, K: 20mEq/L, Cl: 70mEq/L, Glu: 2.6% ____:non-effective osmoles ⇒ 細胞膜を自由に通過するため浸透圧差を生み出さない
  • 36. 酸素や輸液投与の次は・・・ • 酸素投与や十分量の輸液したけど、、、 • 安定しない場合やより安定化するために • 『薬剤』を投与します – どのような種類の薬剤が使用されますか?
  • 37. ショックの治療に用いる血管作動薬 種類薬物効果 陽性変力作用薬• アドレナリン • ドパミン • ドブタミン • 心筋収縮力増加 • 心拍数増加 • SVRにさまざまな作用 ホスホジエステラーゼ阻害薬 (陽性変力性血管拡張薬) • ミルリノン • イナムリノン • SVRの低下 • 冠動脈血流量の改善 • 心筋収縮力改善 血管拡張薬• ニトログリセリン • ニトロプルシド • SVRと静脈緊張の低下 血管収縮薬(昇圧薬) • アドレナリン • ノルアドレナリン • ドパミン • バソプレシン • SVRの上昇 • 心筋収縮力増加 (バソプレシン除く) SVR:体血管抵抗PALSプロバイダーマニュアルより
  • 38. ショックの初期管理のまとめ • 気道の確保&酸素投与、 – 必要時補助換気 • 血管確保 – 末梢静脈、駄目ならぱっぱと骨髄路へ • 輸液蘇生 – 基本は等張晶質液20mL/kg, 5-20分で投与 – 循環改善するまで投与を繰り返す – 心原性は別ですよ、、、 • 適切なモニタリング – バイタルが大切! 尿量やCRTも • 臨床検査 – 血糖値に注意して • 薬物療法 – 病態に応じて使い分けよう
  • 39. 小児救急医療 Off the Jobトレーニングコース • BLS Basic Life Support • PALS Pediatric Advanced Life Support • PFCCS Pediatric Fundamental Critical Care Support • PEARS Pediatric Emergency Assessment, Recognition, and Stabilization

Notas do Editor

  1. 心拍出量を維持するための最初の防御機構は心拍数の増加 第2は重要臓器以外の臓器から重要臓器へ血流を再分布あるいはしゃんとする⇒体血管抵抗を増加させること 心筋収縮力の増加 静脈平滑筋の緊張が高まると、血管床として大容量を占める静脈系から心臓へより多くの血液を移動 脈圧はしばしば小さくなる⇒体血管抵抗が増大すると拡張期血圧が上昇 敗血症などでは脈圧は大きくなる⇒体血管抵抗が低下
  2. 循環血液量減少性ショック 下痢、出血、嘔吐、不十分な水分摂取、浸透圧利尿、サードスペースへの水分喪失など 血液分布異常性性ショック アナフィラキシー、敗血症、神経原性ショック 心原性 心筋炎/心筋症、心不全、不整脈、先天性心疾患など 閉塞性 心タンポナーデ、緊張性気胸、PDA依存性心疾患、広範囲肺塞栓 物理的な血流障害により心拍出量が低下する状態