2019年10月15日開催、JLAステップアップ研修（２）政策動向の分析で用いたスライドです

1. JLAステップアップ研修(2)
領域：図書館を運営する
令和元年10月15日（火）
会場：日本図書館協会
田原市中央図書館 是住 久美子
政策動向の分析

2. 2
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講義中の写真撮影も
可能です
０．はじめに

3. 3
０．はじめに（自己紹介）
是住 久美子（これずみ くみこ）
2003年～2018年
京都府立図書館勤務
2011年～2013年
国立国会図書館関西館勤務
2018年4月～
田原市中央図書館勤務

4. 田原市図書館の概要
 職員数：３６名
（正職１１、嘱託２２、臨時３）
 組織チーム：９チーム
（ＰＲ、参考郷土、学校連携、児童、
にじいろ、元気はいたつ便 ほか）
 中央館
２分館（赤羽根・渥美）
 移動図書館車：２台
 人口１人当 貸出１１点
中央図書館（外観） ２階からの様子

5. 本日のゴール
運営の基礎となる国や自治体の
政策動向や社会環境の変化を知
り、図書館経営にかかわる大局
的な視点を得る。

6. １．統計から見る現代の図書館

7. 公立図書館数の推移
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会
微増傾向
3,277

8. 「平成３０年度社会教
育調査 中間報告 調査
結果のポイント」（文
部科学省）より
社会教育施
設の現状
3,360

9. 未設置の市区町
村がまだ存在
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会
公立図書館の設置率の推移

10. 減少傾向
公立図書館の貸出数の推移
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会

11. 図書館の国民１人当たり貸出冊数
「平成３０年度社会教育調査 中間報告 調査結果のポイント」（文部科学省）より
微減

12. １施設当たりの利用者数の推移
「平成３０年度社会教育調査 中間報告 調査結果のポイント」（文部科学省）より
「諸集会の参加者数＋帯出者数
（図書を借りた延べ人数）」

13. 図書館費が増なの
に資料費が増えず
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会
公立図書館の図書館費・資料費の推移
資料費
図書館費
１館当
資料費

14. 全体数増
専任減
非常勤・委託派遣が増
職員数の推移
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会

15. 職員数の推移（割合）
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会
2018年
専任・兼任が２７％
非常勤・委託が７３％

16. 図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会
司書・司書補数の推移
全体数は増加
専任減、非常勤等が増

17. 図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会
司書・司書補数の推移（割合）
専任が２４％
非常勤・委託が７６％

18. １館当たりの職員数の推移
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会

19. 市区町村立図書館の指定管理者導入状況
図書館雑誌2019年6月号「日本の図書館統計と名簿」日本図書館協会

20. 「平成３０年度社会教育調査 中間報告 調査結果のポイント」（文部科学省）より
平成17年度1.8%
↓
平成30年度18.9%
指定管理者制度導入施設の割合の推移

21. 2．国の図書館政策

22. 文部科学省の組織再編（平成30年10月）
総合教育政策局の設置
公共図書館、学校図書館が地域学習推進課所管に変わり、
学校教育と社会教育の分断が解消された。

32. 令和2年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧（令和元年8月）

33. 令和元年度新任図書館長研修において、
令和２年度地方財政措置追加要望（調整中）として以下の項目
が紹介されました。
・都道府県立図書館に障害者サービス担当職員1名を置くため
の経費を要求（都道府県立図書館が核となった視覚障害者支援
を構築）
・都道府県立、市町村図書館で活動する読書支援員の謝金（対
面朗読・音訳者、点字作成者）を要求
・都道府県立・市町村立図書館のサピエ図書館の年間使用料を
要求
・都道府県立・市町村立図書館のデイジー再生機などの費用

41. 3．自治体の図書館政策

42. 42
地方自治法第2条第4項「市町村は、その事務を処
理するに当たっては、議会の議決を経てその地域
における総合的かつ計画的な行政の運営を図るた
めの基本構想を定め、これに即して行うようにし
なければならない」という条項規程によって1969
年に法制化された制度。
2011年5月「地方自治法を改正する法律」により、
基本構想の法的な策定義務がなくなった。
総合計画（基本構想・計画・
マスタープラン）

43. 43
地方自治法第2条第4項「市町村は、その事務を処
理するに当たっては、議会の議決を経てその地域
における総合的かつ計画的な行政の運営を図るた
めの基本構想を定め、これに即して行うようにし
なければならない」という条項規程によって1969
年に法制化された制度。
2011年5月「地方自治法を改正する法律」により、
基本構想の法的な策定義務がなくなった。
総合計画（基本構想・計画）

45. 45
総合計画の構成例
基本構想（10年程度）
―基本計画（5年程度）
―実施計画（3年程度）
総合計画（基本構想・計画・
マスタープラン）

46. 46
総合計画体系図の例
大垣市 総合計画の体系図より
https://www.city.ogaki.lg.jp/sp/0000002142.html

47. 47
教育基本振興計画
生涯学習推進計画
図書館サービス計画
個別計画
図書館サービス
(基本）計画と
上位計画との
整合性は？
上位計画に
図書館が位置
付けられてい
るか

48. 48
・会計年度は4月～3月
・会計年度における歳出（1年間
の支出）は、その年度の歳入（1年
間の収入）を充てる
→予算編成（1年間の収入見込みを
立てて支出の計画をつくる）
行政の仕組み（予算はどう決
まるか）
今村寛「自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと？」より

49. 49
予算編成のスケジュール例
予算編成方針の通知、説明会（10月中～下旬）
経常的予算要求締切（11月上旬）
経常的経費ヒアリング（11月中旬～）
臨時的経費（重点事業）要求締切（11月中旬）
予算要求の公表（11月下旬）
臨時的経費（重点事業）ヒアリング（11月下旬～）
財政課長査定（12月中旬）
予算の市民説明会（12月中旬）
首長査定（1月上旬）、予算内示（1月中旬）
最終内示（1月下旬）、予算案公表（2月上旬）
行政の仕組み（予算はどう決
まるか）
吉田博他「自治体 予算要求の実務」より
各課（図書館も）
が予算要求を行う

50. 50
２月に翌年度の予算案を議会に提出
３月中に議会の承認を受ける
議会が予算案の内容を審査し、
問題がなければ多数決で予算が
承認され翌年度からお金を使える
ようになる
議会との関係
今村寛「自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと？」より

51. 51
支出は収入の範囲内でないと使えない
【財源】
・特定のことにしか使えない特定財源
補助金など
・自由に使うことができる一般財源
市税など
厳しい財政状況
今村寛「自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと？」より

52. 52
義務的経費
必ず払う必要がある経費
公債費（借金の返済）
扶助費（社会保障生活保護、児童手当等）
人件費（職員の給与等）
厳しい財政状況
今村寛「自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと？」より

53. 53
一般財源の使い道
・過去の公共事業で作った借金の返
済が高止まりで続く
・社会保障費が増え続けている
→必ず払う必要がある義務的
経費の割合が高くなる
厳しい財政状況
今村寛「自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと？」より
さらに老朽化してき
た施設の修繕費が増
える

54. 54
新たな政策に投資する財源がない
収入を増やすか支出を減らすか
収入はすぐには増えない（税収減）
→今やっていることの見直し
選択と集中
自治体のビジョン（総合計画）が重要に！
厳しい財政状況
今村寛「自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと？」より

55. 55
厳しい財政状況
事務事業の見直し（手法）
・スクラップアンドビルド
別事業を廃止して新規事業を行う
・シーリング
要求枠を設定
・サンセット方式
期限を切って検証を行う
・ペアアズユーゴーの原則
財源確保の基本ルール
吉田博他「自治体 予算要求の実務」より

56. 56
厳しい財政状況
・「要るものは要る」は通用しない
・全体最適の視点も大事
・使うために「稼ぐ」工夫
特定財源を確保する
協賛金や寄付金を募る
今村寛「自治体の台所事情 財政が厳しいってどういうこと？」より

57. 4．ファシリティマネジメントと図書館

58. 58
公共施設等総合管理計画
昭和40年代～50年代に大量に建てられた公共施設の大規模修
繕、建て替え時期が到来
自治体の財政状況の悪化→全ての施設の現状維持は不可能
人口減少、高齢化→公共施設に対する需要の変化
公共施設の見直し
耐震化、長寿命化、統合、廃止を計画的に行う
PPP,PFIの活用

59. 5．まちづくりと図書館

60. 60
中心市街地の活性化に関する
法律の一部を改正する法律
住宅や店舗の郊外化、中心部の空洞化
人口減少、高齢化→行政サービス、インフラの全域維持が
困難に
コンパクトシティの実現へ
中心市街地に都市機能を高密度にまとめ、徒
歩や公共交通での移動がしやすい都市
インフラの維持管理、福祉・医療等の行政サ
ービスも効率化

61. 61
中心市街地の活性化
にぎわいの創出
豊橋市 「第２期豊橋市中心市街地活性化基本計画」より
図書館の持つ集客力
の高さに注目

62. 62
図書館の首長部局への移管
地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るた
めの関係法律（第９次地方分権一括法案） 2019年3月
図書館、博物館、公民館等の公立社会教育施設について、自
治体の判断によって教育委員会から首長部局へ移管可能に
教育委員会
図
書
館
博
物
館
公
民
館
学
校
首長
産
業
観
光
都
市
計
画
市
民
協
働

63. 63
図書館の首長部局への移管
図書館をまちづくりの中核施設にという思惑
・観光や産業を所管する部署との連携が円滑
になる（かも）
・他部署と一緒に補助金を申請することなどで
予算が潤沢になる（かも）
・政治的中立性の確保への懸念
・継続性・安定性の確保への懸念
・教育機関としての役割衰退の懸念
・指定管理者制度の導入が進む（かも）

64. 6．図書館の運営方法の変化

65. 民間資金
公的資金
公共 民間
運営関与度
民間事業
直営
業務委託
包括的
業務委託
公設民営
民設公営
指定管理
者制度
DBO
BTO
BOT
BOO
コンセッション
PPP
PFI
永見まり子氏作成

66. 66
公民連携 公の比率が大
直営
・正職員のみ
・正職員＋非常勤職員
・正職員＋非常勤職員＋施設維持管理等委託
・正職員＋非常勤職員＋施設維持管理等委託
＋図書館業務委託
・非常勤職員のみ
など

67. 67
公民連携 民の比率が大
指定管理者制度
2003年6月スタート。公共施設等の管理、運営
を企業やNPOなどの民間組織に運営を任せるこ
とができるようになった
PFI
1999年7月スタート。公共施設等の建設、維持
管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術
的能力を活用して行う手法
指定管理者は
建築はやらない

68. 地方自治体
PFIの基本スキーム
特別目的会社
（SPC)
金融機関
保険会社
利用者
コンソーシアム
・建設会社
・運営会社
・図書館業務会社
PFI
事業契約
出資
委託契約
サービス
提供
契約

69. 69
PPP・PFIでも図書館は直営
パターン
・安城市図書情報館（アンフォーレ）
サービスの継続性を重視し、図書館は
直営とした
・紫波町図書館（オガール紫波）
PPPによる建物建設後、図書館部分を
SPCが紫波町に売却。町が運営。

70. 70
好む好まざるにかかわらず図書
館においても公民連携はいっそ
う進む傾向にある
・直営であっても、正規職員が減少し、非正規
職員が主力になっている現状がある
・直営であれ、指定管理であれ、限られた資源
を使って、質の高い図書館サービスを持続的
に提供し、図書館員の専門性が世間に理解
されなければ、本来の意味での図書館は滅び
てしまうかも

71. 図書館を取り巻く状況を把握すること無しに、図書館だけの理屈
で理想を並べても理解されにくい

72. 変化に適応し、学習し、自らをデザインして進化し続ける

73. 73
図書館の役割はより重要に
少子化、縮小社会、地域の危機
→持続可能な地域づくりのためには
行政のみならず社会全体が公共性を持つ
必要がある。
住民自ら様々な情報を収集し、多様な人たち
と協働しながら地域づくりを進める必要
→図書館の役割はますます重要になる

74. 74
地域のアクターと共創
図書館から地域へ出て図書館へのニーズ
を掘り起こし、図書館の可能性をひらく
まちの課題はまちに出ないと分からない
ファシリテーター、コーディネーター、
プロデューサーのスキルが必要に

75. 7．これからの図書館運営を考える

76. 76
サービスデザインの考え方
顧客（利用者）中心の考え方
価値＝文脈価値（value in context）
文脈価値はあくまで利用者の文脈に依
存する
利用者との価値共創

77. 利用者との価値共創
77
• セオドア・レビット「顧客は“ドリ
ル”が欲しいのではなく、“ねじの
穴”が欲しいのだ」ドリル自体に興味
がある訳ではなく、ドリルを使った
「結果自体」を求めている
• 得られる便益は、結果のこともあれば、
利用する体験自体、さらにその結果と
しての自己実現、セルフブランディン
グのことも。
長谷川 敦士. サービスデザインの時代 : 顧客価値に基づくこれからの事業開発アプ
ローチ. 情報管理 / 科学技術振興機構 編.. 59(7):2016.10.

78. タッチポイント毎のユーザーの体験を重視
カスタマージャーニーマップ
78

79. 79
オープンデータ 政府の動き
2016年5月 【オープンデータ2.0】官民一体となったデータ流通の促進
～課題解決のためのオープンデータの「実現」～策定
2016年12月 官民データ活用推進基本法施行
11条：国及び地方公共団体等が保有する官民データの容易
な利用等（オープンデータ）
2017年5月 オープンデータ基本方針
※2015年、政府標準利用規約（第2.0 版）はクリエイティブ・コモンズ・
ライセンス互換となり、日本政府（全府省）のウェブサイトに掲載されて
いるコンテンツはすべて「原則オープンデータ」となった。

80. 80
オープンデータ 政府の動き
2016年12月 官民データ活用推進基本法施行
11条：国及び地方公共団体等が保有する官民データの容易
な利用等（オープンデータ）
2017年5月 オープンデータ基本方針

81. 81
オープンデータって？
機械判読に適したデータ形式で、 二次利用が可能
な利用ルールで公開されたデータ
「オープン」の定義
・オープンなライセンス
・オープンなアクセス
・オープンな形式
営利・非営利関係なく
誰でも自由に利用できる。
加工できる。
再配布できる。
数値データだけではなく
文章や画像や映像などあら
ゆる著作物が対象

82. 82
オープンデータでできること
地域経済分析システム（RESAS：リーサス） データの可視化
https://resas.go.jp/

83. おわり
korezumi@gmail.com