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ビジネス・プロセス・マネジメントビジネス・プロセス・マネジメントビジネス・プロセス・マネジメントビジネス・プロセス・マネジメント・ソリューション・ソリューション・ソリューション・ソリューションとは?とは?とは?とは?
SOX 対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される BPM((((Business Process Management) (1)
徳田浩司(徳田浩司(徳田浩司(徳田浩司(Koji Tokuda)))) 2006-07-15 00:00:00
BPM Conference 参加参加参加参加
先月、San Francisco で開催された BPM Conference に参加した。Pegasystem の技術担当 VP
Setrag Khoshafian 博士による、「How to Build Value in your BPM Project」というセッションで
BPM プロジェクト導入方法についての解説があった。BPM は、SOX 対応の重要なソリュー
ションの一つと考えられており、講演内容は SOX 対応にも非常に参考になると思われるので、
ここでご紹介したい。Pegasystem は、Busuiness Process Management の専門ベンダーの1社で
あり、BPMSuite を開発している。日本では取り扱いされていないので知られていないと思う
が、売上は 100 億円、社員は 400 人の Nasdaq 上場企業で、BPM の専業としては大手である。
BPM とは?とは?とは?とは?
BPM とは、業務プロセスを構成し、管理するソリューションである。SOA 対応の中で重要
な位置を占めるソリューションの一つである。しかしながら、コンプライアンス対応におい
て IT 化が重要視されるに従って、SOX 対応においても、重要な IT 化のツールと期待されて
いる。以前、業務プロセスの明確化と IT 化が SOX 法で求められるということを書いたが、
まさにそれをサポートするシステムである。SOX 法では、経理処理に不正やミスが発生しな
いように業務の流れを監視したり、制限を加えたりすることが必要であるが、それを自動化
するものである。
なお、Pegasystem によると来年、日本上陸を計画しているということであり、今後の展開が
期待される。来年からは実際に、日本の公開企業においては業務プロセスを IT 化する動きが
活発になると思われ、そのタイミングでの進出を狙っているものだと思われる。
BPM の歴史の歴史の歴史の歴史
・従来:Workflow の時代
BPM は Workflow システムをスタートとしている。Workflow は、その名の通り業務手順を
管理するツールであり、システムを業務にあわせて可視化するものである。かつては
Lotus Notes とか ERP システムなどがその機能を担っていた。業務自体の自動化が進んでお
らず、そのためエラーが発生しやすかった。また、フローよりもどちらかというとドキュ
メントやコンテンツ管理が中心であった。
・現在:BPM の時代
システム同士を統合し、社外の流通パートナーとの連携も行って、自動化を実現するもの
である。組織の階層(権限)と業務手順がリンクしてくる。現在 BPM と言えばこれを指
す。
・今後:BPMS
BMPSsuite(BPM ソリューション群)は、ワークフローのみならず、ビジネスルール、
EAI(Enterprise Application Integration)、ビジネス同士の統合、ビジネスプロセスのモニタ
リング・分析、などの機能が構成されたものである。ビジネスをモデリングしてシミュレ
ーションしたり、ビジネスのルールの変更・修正を容易にしたり、SOA のサポートなどを
行い、ビジネスと IT を一致させるものである。
なぜなぜなぜなぜ BPM が必要なのか?が必要なのか?が必要なのか?が必要なのか?
BPM は、ビジネス環境の変化への対応を強化するために、ERP や CRM など従来の業務アプ
リケーションから、「ビジネスプロセス」と「ビジネスルール」とを分離し、それらを管理
するものである。それが必要とされてきたのは、ビジネス環境の変化のスピードが速くなっ
たからである。現在のビジネス環境において変化のスピードは速く、ビジネスの基盤となる
IT の開発に手間取っては、ビジネスチャンスを失ってしまうか、あるいはコスト負担が非常
に大きくなってしまう。既に社内にあるシステムを再利用し、再構築できれば、ゼロからス
タートするよりは非常に効率がよい。社内のビジネスプロセスをブレークダウンし、変化の
少ない小さな機能単位にまとめ、システムもそれに応じて分割する。そして、変化のスピー
ドの速い部分を BPM に担当させる。
例えば、クレジットカードの申し込み手続きで言えば、カードの申込書(手書き)を受け取
る⇒スキャナーで読み取る⇒間違いがないかチェックをする⇒間違いがあれば再入力する⇒
各項目の条件を貸出のルール(ビジネスポリシー)に照らし合わす⇒貸し出しできるか判断
する⇒その結果を顧客に通知する、という流れとなるが、その一つ一つの項目が業務機能で
あり、それをつなぐのが、「ビジネスプロセス」である。その一つ一つが機能単位になり、
それぞれの機能の変化は少ない。
そこから、法律、社会、ビジネスのルールが変更になっても対応できるよう、ビジネス上の
ポリシーを分離する。そういうものが「ビジネスルール」であり、ビジネスの判断基準とな
る。ビジネスルールの例としては、オンライン販売において、5 万ドル以上の注文があれば
無条件で 10%値引きするとか、預金が 10 万ドル以上あるローンの申し込み客には優遇レー
トを適応するとか、など。
BPM 導入の目標としては、技術のイノベーションへの対応、生産性の向上、コンプライアン
ス対応という、3つの大きなトレンドへの対応がある。特に、コンプライアンスは大きなド
ライブフォースとなっており、SOX 対応の要請が非常に大きい。
プロセスとルールをアププロセスとルールをアププロセスとルールをアププロセスとルールをアプリケーションから分離リケーションから分離リケーションから分離リケーションから分離
かつての業務アプリケーションでは、ビジネスプロセス、ビジネスルール、データが全て一
体混然となっていた。そのためプロセスやルールに変化があるとその度にソフトの修正や追
加が必要となり、時間とコストをかけて外部スタッフなどを雇って開発を行わなければなら
ない。それでは時間がかかってしまう。できれば、企業内の IT 要員が簡単に修正できるよう
なものが望ましい。現在は、データが分離され、データベースエンジンとして独立している。
しかし、今後の流れとしては、データとアプリケーションの間に、BPMS が加わり、ルール
とプロセスを分離して管理することが期待される。
これからは、ビジネスプロセスとビジネスルールは企業の資産であると認識し、これをきち
んとシステムに組み入れていくことが重要となってくると思われる。これら資産は、拡張、
修正が都度発生するが、それらをアプリケーションとは独立で行うようにすると、ビジネス
プロセス、ビジネスルールが、全てのアプリケーションで共有して使えることができる。そ
うすると、ITとビジネスが連動し、システム開発でのパフォーマンスの向上と、連続的な
改善戦略を実現化できるのである。更には、ビジネスプロセス、ビジネスルールとコンプラ
イアンス対応の改善の証跡をサポートすることが可能となってくるのである。
(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz)
SOX 対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される BPM((((Business Process Management) (2)
徳田浩司(Koji Tokuda) 2006-07-22 22:24:53
前回「SOX 対応ソリューションの要と期待される BPM (1)」では、
BPM(Business Process Management) の特徴と、BPM の必要性、ビジネスプロセスとビジネ
スルールをアプリケーションから分離する必要性について述べた。今回は、BPM を機能アッ
プのトータルソリューションである、BPM スイートにおけるそれぞれの機能についてもう少
し詳しく述べたい。
BPM シートの構成機能シートの構成機能シートの構成機能シートの構成機能
BPM スイートはおおむね、大きく分けて以下の機能で構成されると思われる。
1.Workflow(Business Process)
2.Business Rules
3.Enterprise Application Integration(EAI)
4.Business To Business Integration
5.Business Process Monitoring & Analytics
6.Solution Frameworks
1.1.1.1.Workflow 及び2.及び2.及び2.及び2.BusinessRules
これらは、アプリケーションをブレークダウンして、個々の小さな業務サービスをつなぐも
のである。Workflow 及び BusinessRules は、BPM の基本となるサブシステムとなる。
Workflow は業務フローとかビジネスプロセスとか呼ばれるものである。Workflow を分類す
ると大きく分けて3つあり、1.A⇒B⇒C、という「連続」2.A⇒B 及び A⇒C の「並行」、B
+C⇒D の「結合」、3.A⇒B(if a=b)、A⇒C(if not a=b)という「分岐」である。
ビジネスルールは、Business Rules は、ビジネスポリシーとも言うべき、ビジネスプロセスの
判断の材料となるものであり、3.の a=b という基準を示し、分岐の判断尺度となる。
実際の導入では、まずは、ビジネスをワークフローとビジネスルールをモデル化し、フレー
ムワークをつくる(業務の可視化の作業)。作成したワークフローと社内のシステムを実際
にリンクさせて、日常業務を実行する。それをモニタリングし、分析することで、業務効率
やビジネスの変化に合わせて改善すべき点が出てくれば、ワークフローを修正したり追加し
たりする。それをぐるぐると繰り返すことで、ビジネスの変化に合わせて、システムも改善
していくことが可能となる。これらをうまく日常的にまわしていくことができれば、新しい
変化への対応に即したシステム基盤の提供が可能となり、企業のシステム投資リターン
(ROI)だけでなく、ビジネスでの投資リターンも向上させることが可能となる。
比重を増すコンプライアンス対応比重を増すコンプライアンス対応比重を増すコンプライアンス対応比重を増すコンプライアンス対応
コンプライアンスの対応は、特に最近重要となっており、内部統制のサポートに大きな威力
を発揮する。
・計画と分析:チームの特定化、内部監査及び外部監査の連携、アイデンティティ・コント
ール、統制のカルチャーの醸成、評価の手続きなどの実施。
・ドキュメント:プロセスフロー、ポリシー、手続き、コントロール、リスク評価、自己診
断、診断結果、修正プランなどあらゆる活動を記録。
・レポート:四半期、年次、適時報告の実施。
・テスト:IT 統制、自己診断、統制の信頼性評価、監査テスト
・修正:例外規定、不足部分の修正
・モニタリング:全社のコントロールプロセス、リアルタイム、個別評価の実施
上記が一体化して管理されることで、コンプライアンス対応に必要なレビューのための必要
リソースを減少させることが可能となる。また、全ての要求と承認の手続きが記録されるの
で、内部監査及び外部監査を行う際に、記録を短時間に追跡することが可能となり、透明性
が高まる。更に、リアルタイムでモニタリングを行うことができるために、ルール違反など
の異例操作によるリスクを小さくすることが可能となる。J-SOX 対応が義務づけられたこと
により、BPM 導入の重要性はますます高まっている。
BPM スイートモデリングスイートモデリングスイートモデリングスイートモデリング
BPM スイートを構成する際には、全体のモデリングが必要となる。モデリングは、「戦略ビ
ジョンモデル」、「プロセスモデル」、「ビジネスポリシーモデル(ビジネスルール)」、
「組織モデル」、「情報及びインテグレーションモデル」で構成され、それぞれが密接に関
与してくる。
「戦略ビジョンモデル」は、対象業務に対する会社の取組み方針であり、それにしたがって、
「プロセスモデル」が選定される。これは、例えば、オンラインショップを例に挙げると、
カタログ検索、オーダー指示、請求書発行業務、発送指示、トラッキングなどの業務単位と
なる。「組織モデル」は、トップの CEO から始まって、CFO、COO、CIT などの下部組織に
つながってくる組織図となる。それぞれの業務単位に対し、誰が何を担当するのか(請求を
行う、操作を行う、承認を行うなど)が定められる。「プロセスモデル」においては、各業
務単位がどの順番で行われるか業務フローが定められる。「ビジネスポリシーモデル(ビジ
ネスルール)」は、プロセスの分岐における判断材料となるもので、ポリシー(法令、会社
の方針など)、ベストプラクティス(業務を行うために最適と考えられるもの)、顧客の好
み(クライアントが望むもの)、パートナーの好み(パートナーが望むもの)に分かれる。
「インフォメーション及びインテグレーションモデル」は、それぞれの情報がどこに存在し
ていてどういうふうに関連するかを定めたものである。
コンプライアンスに絡めて若干補足であるが、「戦略ビジョンモデル戦略ビジョンモデル戦略ビジョンモデル戦略ビジョンモデル」は企業によって当然
ながら異なる。決して間違ってはいけないのは、外部から与えられるものではなく、外部環
境と内部のリソースを勘案して、企業のトップが定めるものである。お上、IT ベンダー、監
査法人、コンサルタントが教えてくれるものではない。特に、SOX 対応において重要なポイ
ントであるが、内部統制とは、経営管理そのもののである。経営者は経営とは何か?もう一
度見直す必要がある。ここがあいまいだと、BPM の導入も効果が薄くなってしまう。
3.3.3.3.Enterprise Application Integration((((EAI)と4.)と4.)と4.)と4.Business To Business Integration
ビジネスプロセスの背後には、社内には従来から配備されたバックエンドシステムが動いて
いる。例えば、セールス、サービス、クレーム対応、詐欺対応、パートナー対応など。ある
程度の規模と歴史を有する企業であれば、それぞれにフロントオフィス、ミドルオフィス、
バックオフィスの業務と担当者が存在し、業務アプリケーションが配備されているはずであ
る。更に、外部のビジネスパートナーにも、何らかの業務アプリケーションが配備されてい
るはずである。
それらを BPM の定めたフローにあわせて、個々の業務アプリケーションの個別の機能を有
機的にリンク(インテグレーション)させていく。インテグレーションは、さまざまな技術
が用いられるが、最近では Web サービスが一般的になっている。インテグレーションには、
業務アプリケーションの個別の機能同士を接続するためのアダプターも含まれる。
また、業務アプリケーションとして、パッケージツールである、SAP、People ソフト、Siebel
などさまざまなベンダーが提供するものがあり、外部のビジネスパートナーとのインテグレ
ーション(Business To Business Integration)には、Web サービスを用いた連携が力を発揮する。
部品化された個別機能は一つのサービスと定義され、共通のデータベースとともに、エンタ
ープライズサービスバス(Enterprise Service Bus)と呼ばれるバックボーンで連携される。こ
れは SOA(Service Oriented Architecture)の基本的なコンセプトである。
ツールベンダーであるベンチャー登場への期待ツールベンダーであるベンチャー登場への期待ツールベンダーであるベンチャー登場への期待ツールベンダーであるベンチャー登場への期待
このインテグレーションのツールである、アダプターや、それぞれの業務アプリケーション
の機能を分離するツールについては、BPM スイートのベンダーのみならず、さまざまなツー
ルベンダーから提供されている。更に、業務アプリケーションには、上記のメジャーなパッ
ケージソフトばかりではなく、自社開発のレガシーシステムが配備されているケースが少な
くなく、ビジネスプロセス、ビジネスルール、データベースが、スパゲッティー状態に複雑
に絡み合っているケースが少なくない。これらについては、機能単位を粒度を定めて確定し、
一つづつ手作業で切り離していく作業が必要である。さながらシャム双生児の分離手術のよ
うだ。さまざまなベンダーからツールが提供されつつあり、今後、自動化が進むものと期待
される。いろいろなベンダーの業務アプリケーション同士をつなぐには、個々のベンダーの
システムの癖など裏を熟知している必要があり、大手ベンダーだけではなかなか難しいもの
である。その領域は、大手企業よりも、多様なバックグラウンドを持つ技術者たちの混成部
隊であるベンチャー企業の方がはるかに有利である。エンタープライズソリューションの世
界で今後成長が見込まれる有望な領域であり、ベンチャーの登場と活躍が期待される。
(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz)
SOX 対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される BPM((((Business Process Management) (3)
徳田浩司(Koji Tokuda) 2006-07-29 06:41:52
前回「SOX 対応ソリューションの要と期待される BPM (2)」では、BPMSuite(Business
Process Management Suite)の機能について、1.Workflow(Business Process)、2.Business
Rules、3.Enterprise Application Integration(EAI)、4.Business To Business Integration に
ついて述べた。引き続き残りの機能について見てみたい。
5....Business Process Monitoring & Analytics
企業全体に業務プロセス(ワークフロー)が存在するわけであるが、各組織、そして個人に
も存在する。BPM を使うと、組織図にあわせて、ポジション毎に機能、役割分担、権限と責
任が明確化される。業務分掌とビジネスプロセス及びシステムをドッキングすることができ
る。
個人の活動は、上位者及び管理部門によって監視され、異例操作はアラートが出され、権限
を超える操作を禁じる。また、個人個人の活動が記録されることで、業務の繁忙、個人間で
の分担の偏り(というよりも仕事をしていないのが誰かわかる)、パフォーマンスが、明ら
かになる。管理が厳しくなるのは嫌なものだが、効率化を上げるためには必要である。BPM
のモニタリングと分析機能を活用することにより、業務プロセスや業務分担など問題あると
ころが見えてくる。BPM を用いれば、環境の変化に合わせて、システムの変更もスピーディ
ーな対応が可能となる。それまで、本部からの全社画一的なお仕着せのシステム提供だった
のが、BPM 導入後は、現場からの意見を取り入れながら、実態に合わせて部門毎にきめ細か
く対応することが可能となる。更に、今のビジネスで、システムが十分対応できているか、
無駄は無いか、不足するものは無いか、ということも明らかになる。
BPM は導入後が重要で、ここまでルーティン化できれば、BPM 導入のメリットが目に見え
て出てくる。
6....Solution Frameworks
最後に、BPMSuite 全体のフレームワークが重要となる。これは、BPM を中心とした社内シ
ステムの拡張である。新規のビジネス参入や新しい業務が出てくるたびに、業種別の業務シ
ステムを継ぎ足していくときの、接続方法である。SOA 技術を用いた基盤が出来上がってい
ると、拡張とリンクがしやすくなる。既存のインフラを活用することができるため、開発コ
ストも大幅に下げることが可能となる。
特に金融やオンラインビジネスなど、業界を超えて業務が拡大している。また、合併により
システムの統合が必要となるケースも増えている。BPM を用いた基盤があれば、産業毎に必
要な業種別アプリケーションを継ぎ足すだけで、新規にビジネスを行うことが可能となる。
ゼロから立ち上げるよりもはるかに早いはずだ。米国では、成功事例がたくさん出てきてい
る。
日本での日本での日本での日本での BPM 導入は可能か?導入は可能か?導入は可能か?導入は可能か?
もちろん、これまでの話は SOA 基盤としたシステムのインフラが出来上がっているという前
提で、米国での話である。SOA は儲からない、言っているほど上手くいかない、という話が
つい最近まであったが、ここに来て、効果が出ている、導入が進んでいるというレポートが
出てきている。ZDNetSOA ブログでも「SOA の導入で年間 5%のコスト削減が可能に――最
新調査」「SOA の利用事例数が 2005 年と比べて 2 倍に――最新調査結果」などの記事があ
る。導入のドライビングフォースとなったのは、SOX や HIPPA などコンプライアンス対応
である。日本においては、業務システムは自社開発の独自のシステムでできあがっているこ
とが少なくない。米国と違って日本では人員の流動化が少ないので、同じシステム部員が長
く担当していることから、開発のノウハウなどがきちんと文書化されていないものが少なく
なく、人が異動したりやめれば必要な情報が散逸し、あとからシステムに手を加えることが
簡単に出来ないのかもしれない。BPM 導入が可能となるための SOA のインフラを作り上げ
るまでには大きな苦しみが伴うだろう。
私も思い当たるような経験がある。銀行の子会社にいたときに、オフィスを移転することに
なり、経営企画部門にいた私が引越し業務の統括責任者となった。移転に合わせて、社内シ
ステムも再構築することになり、銀行に接続しているネットワークの移転とか社内システム
の見直しも私が担当することになった。投資先企業を管理するシステムも手直しすることに
なったが、そのシステムは、MS-ACEESS をベースで開発したもので、そんなに複雑なもの
ではなかった。画面のトップページに、一社ごと、企業名、投資金額、投資時期、売上、利
益、業務内容など、概略を表示しているものであった。トップから、一覧で見るにはいくつ
か追加したい情報があって、2、3 新しく情報項目を増やして欲しい、という要請があった。
最初は、表示方法を手直しするだけなので、それほど大変な話だとは思っていなかった。と
ころが、最初に開発を依頼した SI の担当者は既にいなくなっており、更に、ドキュメントも
残っていなかったので、どのように手をつければよいかわからず、お手上げ状態であった。
そこで別の SI に修正をお願いすることになった。全体の構造を一からドキュメント化するこ
ととなり、結局 3 ヶ月ぐらい時間がかかった。もちろん、高額の手数料を支払う羽目となっ
た。非常に分厚いドキュメントができたが、2,3 の修正のためにそこまで必要だというのをな
かなか上に説明できず、当時はかなり高いと思った。しかし、若しそのとき BPM があった
としたら、私の手元で簡単に修正できていたはずで、更なる変更も簡単に出来るので、コス
トは限りなくゼロに近づいたはずだ。
BPM の導入によるコストダウンの導入によるコストダウンの導入によるコストダウンの導入によるコストダウン
BPM を用いて業務フローとシステムを可視化し SOA 対応に移行することは、自社開発とカ
スタマイズを繰り返してきた日本企業にとって大変な困難が伴うと思われる。それならば、
その都度カスタマイズで対応するか、ゼロから作り直した方が早いという意見もある。確か
に、短期的にはその方が有利である。しかし、ユーザの立場からすると、一度、社内のシス
テムがどの業務とリンクしているのか明確にしておくことは、システムにブラックボックス
がなくなるわけで、SI に対する大きな牽制力となる。要るのか要らないのかわからない機能
がふんだんに盛り込まれたソリューションに対して、一括でいくらですといわれて、高いお
金を払う必要がなくなるわけである。また、システムを機能ごとに切り刻むことで、モジュ
ール化が可能となるので、今後 SOA 対応のアドオンのツールがどんどん出てきた時に、不足
する機能だけを、必要になったときに必要なだけ採用することが可能となる。そのため、無
駄な投資が不要になり、メンテナンスコストを減らす効果が出てくる。また、人材の流動化
もどんどん進んでいくことから、これまでのように自社開発だけに頼るのは限界があり、
BPM による標準化は重要である。企業や業種を超えて、BPM を標準化しようとする動きが
出ており、その標準に準拠した基盤を作り上げることで、必要最小限の機能に絞り込まれた
パッケージを低価格で活用することが可能となる。
SOX 対応を錦の御旗に対応を錦の御旗に対応を錦の御旗に対応を錦の御旗に BPM 導入、導入、導入、導入、SOA 対応を進めるべき対応を進めるべき対応を進めるべき対応を進めるべき
新しいことをやろうとすると、最初はお金がかかる。だから簡単には先に進まない。
SOX 対応も後ろ向きな話と捉えられている。元々は、エンロン、ワールドコムに始まって、
ライブドアなど上場企業の粉飾事件がきっかけとなったもので、一般投資家をだます悪者を
締め出し、抑制するものである。一部の不心得者のために、大多数のまじめな会社にとって
は不要なコストが強要され、何億円もお金をかけるなんて本当にばかばかしいものだ。数億
円のコスト負担が、何十億円もの企業価値を下げることになるので、それだけのためであれ
ば、SOX 対応なんてとっととやめるべきと思う。
しかし、ルールはルールで決まったものは従わなければならない。だったら、どうせお金を
かけるならば、継続して効果の現れるような投資を行うべきだろう。責任を逃れをするため
に、監査を通すことだけを考えて、業務フローの文書化を手がけ、ドキュメント作りだけで
おしまい、というのでは本当にもったいない。米国でも、最初はドキュメント化だけで終わ
っているケースは少なくなかったが、今年に入って、IT 化を進めて自動化に結びつけ、SOX
対応のコストを下げようとする動きが出ている。
BPM のようなシステムは、現場は必要だと思っていても、なかなかトップは理解してくれな
いかもしれない。無かったら日常業務に支障が出るようなシステムでないがゆえに、トップ
も、お金をかけてまで整備しようという気にはならないのだと思う。しかし、J-SOX 対応の
ためには必要だという話になれば別で、経営会議は通りやすいだろうし、投資家も説得でき
るだろう。
J-SOX 対応で、IT が必要だという風潮を非難する声がある。もちろん必要ないものを投資す
べきではない。しかし、むしろ逆で、必要なものは積極的に投資しておくべきだと思う。
SOX 対応による IT 化のブームをテイクチャンスして、錦の御旗として、社内稟議を通して
しまうべきである。将来のために社内のシステムを高度化し、リスク軽減とコスト削減、ビ
ジネス変化への対応力を向上させることを考えるべきではないだろうか。更に、不要なスペ
ックを提示して高い開発費をふっかけてきた SI 企業に、今後だまされないようにするために
も、導入を検討する意味は十分あると思うがどうだろうか?
(SI 企業は、SOA とか BPM はコストがかかるし、手間隙かかって上手くいかないので止め
たほうがよい、と言うかもしれない。そのほうが、いつまでも、社内外に大量に抱えるプロ
グラマーを食わすことの出来る、人月のかかる開発プロジェクトが受注できるからである。
ツールベンダー以外は、興味ない話かもしれない。業界の方々ごめんなさい。でも私が言わ
んとすることが理解でき、提案力と技術力のあるシステムコンティング会社には、プラスに
なる話だと思う。)
(徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz)
徳田徳田徳田徳田 浩司(トクダ浩司(トクダ浩司(トクダ浩司(トクダ コウジ)コウジ)コウジ)コウジ)
Fusion Reactor LLC(在米国シリコンバレー)社長
三和銀行、三和総研、三菱商事証券などで、システムコンサルティング、ベンチ
ャー投融資などに従事。2004 年に独立、米国シリコンバレーで、ベンチャーサポ
ート、IT・金融ビジネスのコンサルティング、ワイヤレス・ブロードバンド・ソリュー
ションの開発・ベンチャー経営、老舗スポーティング・グッズ・メーカの米国代表
などに従事。
本件に関するご意見・お問い合わせ
Fusion Reactor LLCFusion Reactor LLCFusion Reactor LLCFusion Reactor LLC
代表代表代表代表;;;; 徳田徳田徳田徳田 浩司浩司浩司浩司
電話電話電話電話 日本日本日本日本 050050050050----5534553455345534----1111111114141414 ((((国内電話で通じます国内電話で通じます国内電話で通じます国内電話で通じます))))
EEEE----mail: info@fusionmail: info@fusionmail: info@fusionmail: info@fusion----reactor.bizreactor.bizreactor.bizreactor.biz

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ビジネス・プロセス・マネジメント・ソリューションとは?

  • 1. ビジネス・プロセス・マネジメントビジネス・プロセス・マネジメントビジネス・プロセス・マネジメントビジネス・プロセス・マネジメント・ソリューション・ソリューション・ソリューション・ソリューションとは?とは?とは?とは? SOX 対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される BPM((((Business Process Management) (1) 徳田浩司(徳田浩司(徳田浩司(徳田浩司(Koji Tokuda)))) 2006-07-15 00:00:00 BPM Conference 参加参加参加参加 先月、San Francisco で開催された BPM Conference に参加した。Pegasystem の技術担当 VP Setrag Khoshafian 博士による、「How to Build Value in your BPM Project」というセッションで BPM プロジェクト導入方法についての解説があった。BPM は、SOX 対応の重要なソリュー ションの一つと考えられており、講演内容は SOX 対応にも非常に参考になると思われるので、 ここでご紹介したい。Pegasystem は、Busuiness Process Management の専門ベンダーの1社で あり、BPMSuite を開発している。日本では取り扱いされていないので知られていないと思う が、売上は 100 億円、社員は 400 人の Nasdaq 上場企業で、BPM の専業としては大手である。 BPM とは?とは?とは?とは? BPM とは、業務プロセスを構成し、管理するソリューションである。SOA 対応の中で重要 な位置を占めるソリューションの一つである。しかしながら、コンプライアンス対応におい て IT 化が重要視されるに従って、SOX 対応においても、重要な IT 化のツールと期待されて いる。以前、業務プロセスの明確化と IT 化が SOX 法で求められるということを書いたが、 まさにそれをサポートするシステムである。SOX 法では、経理処理に不正やミスが発生しな いように業務の流れを監視したり、制限を加えたりすることが必要であるが、それを自動化 するものである。 なお、Pegasystem によると来年、日本上陸を計画しているということであり、今後の展開が 期待される。来年からは実際に、日本の公開企業においては業務プロセスを IT 化する動きが 活発になると思われ、そのタイミングでの進出を狙っているものだと思われる。 BPM の歴史の歴史の歴史の歴史
  • 2. ・従来:Workflow の時代 BPM は Workflow システムをスタートとしている。Workflow は、その名の通り業務手順を 管理するツールであり、システムを業務にあわせて可視化するものである。かつては Lotus Notes とか ERP システムなどがその機能を担っていた。業務自体の自動化が進んでお らず、そのためエラーが発生しやすかった。また、フローよりもどちらかというとドキュ メントやコンテンツ管理が中心であった。 ・現在:BPM の時代 システム同士を統合し、社外の流通パートナーとの連携も行って、自動化を実現するもの である。組織の階層(権限)と業務手順がリンクしてくる。現在 BPM と言えばこれを指 す。 ・今後:BPMS BMPSsuite(BPM ソリューション群)は、ワークフローのみならず、ビジネスルール、 EAI(Enterprise Application Integration)、ビジネス同士の統合、ビジネスプロセスのモニタ リング・分析、などの機能が構成されたものである。ビジネスをモデリングしてシミュレ ーションしたり、ビジネスのルールの変更・修正を容易にしたり、SOA のサポートなどを 行い、ビジネスと IT を一致させるものである。 なぜなぜなぜなぜ BPM が必要なのか?が必要なのか?が必要なのか?が必要なのか? BPM は、ビジネス環境の変化への対応を強化するために、ERP や CRM など従来の業務アプ リケーションから、「ビジネスプロセス」と「ビジネスルール」とを分離し、それらを管理 するものである。それが必要とされてきたのは、ビジネス環境の変化のスピードが速くなっ たからである。現在のビジネス環境において変化のスピードは速く、ビジネスの基盤となる IT の開発に手間取っては、ビジネスチャンスを失ってしまうか、あるいはコスト負担が非常 に大きくなってしまう。既に社内にあるシステムを再利用し、再構築できれば、ゼロからス タートするよりは非常に効率がよい。社内のビジネスプロセスをブレークダウンし、変化の 少ない小さな機能単位にまとめ、システムもそれに応じて分割する。そして、変化のスピー ドの速い部分を BPM に担当させる。 例えば、クレジットカードの申し込み手続きで言えば、カードの申込書(手書き)を受け取 る⇒スキャナーで読み取る⇒間違いがないかチェックをする⇒間違いがあれば再入力する⇒ 各項目の条件を貸出のルール(ビジネスポリシー)に照らし合わす⇒貸し出しできるか判断
  • 3. する⇒その結果を顧客に通知する、という流れとなるが、その一つ一つの項目が業務機能で あり、それをつなぐのが、「ビジネスプロセス」である。その一つ一つが機能単位になり、 それぞれの機能の変化は少ない。 そこから、法律、社会、ビジネスのルールが変更になっても対応できるよう、ビジネス上の ポリシーを分離する。そういうものが「ビジネスルール」であり、ビジネスの判断基準とな る。ビジネスルールの例としては、オンライン販売において、5 万ドル以上の注文があれば 無条件で 10%値引きするとか、預金が 10 万ドル以上あるローンの申し込み客には優遇レー トを適応するとか、など。 BPM 導入の目標としては、技術のイノベーションへの対応、生産性の向上、コンプライアン ス対応という、3つの大きなトレンドへの対応がある。特に、コンプライアンスは大きなド ライブフォースとなっており、SOX 対応の要請が非常に大きい。 プロセスとルールをアププロセスとルールをアププロセスとルールをアププロセスとルールをアプリケーションから分離リケーションから分離リケーションから分離リケーションから分離 かつての業務アプリケーションでは、ビジネスプロセス、ビジネスルール、データが全て一 体混然となっていた。そのためプロセスやルールに変化があるとその度にソフトの修正や追 加が必要となり、時間とコストをかけて外部スタッフなどを雇って開発を行わなければなら ない。それでは時間がかかってしまう。できれば、企業内の IT 要員が簡単に修正できるよう なものが望ましい。現在は、データが分離され、データベースエンジンとして独立している。 しかし、今後の流れとしては、データとアプリケーションの間に、BPMS が加わり、ルール とプロセスを分離して管理することが期待される。 これからは、ビジネスプロセスとビジネスルールは企業の資産であると認識し、これをきち んとシステムに組み入れていくことが重要となってくると思われる。これら資産は、拡張、 修正が都度発生するが、それらをアプリケーションとは独立で行うようにすると、ビジネス プロセス、ビジネスルールが、全てのアプリケーションで共有して使えることができる。そ うすると、ITとビジネスが連動し、システム開発でのパフォーマンスの向上と、連続的な 改善戦略を実現化できるのである。更には、ビジネスプロセス、ビジネスルールとコンプラ イアンス対応の改善の証跡をサポートすることが可能となってくるのである。 (徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz) SOX 対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される BPM((((Business Process Management) (2)
  • 4. 徳田浩司(Koji Tokuda) 2006-07-22 22:24:53 前回「SOX 対応ソリューションの要と期待される BPM (1)」では、 BPM(Business Process Management) の特徴と、BPM の必要性、ビジネスプロセスとビジネ スルールをアプリケーションから分離する必要性について述べた。今回は、BPM を機能アッ プのトータルソリューションである、BPM スイートにおけるそれぞれの機能についてもう少 し詳しく述べたい。 BPM シートの構成機能シートの構成機能シートの構成機能シートの構成機能 BPM スイートはおおむね、大きく分けて以下の機能で構成されると思われる。 1.Workflow(Business Process) 2.Business Rules 3.Enterprise Application Integration(EAI) 4.Business To Business Integration 5.Business Process Monitoring & Analytics 6.Solution Frameworks 1.1.1.1.Workflow 及び2.及び2.及び2.及び2.BusinessRules これらは、アプリケーションをブレークダウンして、個々の小さな業務サービスをつなぐも のである。Workflow 及び BusinessRules は、BPM の基本となるサブシステムとなる。 Workflow は業務フローとかビジネスプロセスとか呼ばれるものである。Workflow を分類す ると大きく分けて3つあり、1.A⇒B⇒C、という「連続」2.A⇒B 及び A⇒C の「並行」、B +C⇒D の「結合」、3.A⇒B(if a=b)、A⇒C(if not a=b)という「分岐」である。 ビジネスルールは、Business Rules は、ビジネスポリシーとも言うべき、ビジネスプロセスの 判断の材料となるものであり、3.の a=b という基準を示し、分岐の判断尺度となる。
  • 5. 実際の導入では、まずは、ビジネスをワークフローとビジネスルールをモデル化し、フレー ムワークをつくる(業務の可視化の作業)。作成したワークフローと社内のシステムを実際 にリンクさせて、日常業務を実行する。それをモニタリングし、分析することで、業務効率 やビジネスの変化に合わせて改善すべき点が出てくれば、ワークフローを修正したり追加し たりする。それをぐるぐると繰り返すことで、ビジネスの変化に合わせて、システムも改善 していくことが可能となる。これらをうまく日常的にまわしていくことができれば、新しい 変化への対応に即したシステム基盤の提供が可能となり、企業のシステム投資リターン (ROI)だけでなく、ビジネスでの投資リターンも向上させることが可能となる。 比重を増すコンプライアンス対応比重を増すコンプライアンス対応比重を増すコンプライアンス対応比重を増すコンプライアンス対応 コンプライアンスの対応は、特に最近重要となっており、内部統制のサポートに大きな威力 を発揮する。 ・計画と分析:チームの特定化、内部監査及び外部監査の連携、アイデンティティ・コント ール、統制のカルチャーの醸成、評価の手続きなどの実施。 ・ドキュメント:プロセスフロー、ポリシー、手続き、コントロール、リスク評価、自己診 断、診断結果、修正プランなどあらゆる活動を記録。 ・レポート:四半期、年次、適時報告の実施。 ・テスト:IT 統制、自己診断、統制の信頼性評価、監査テスト ・修正:例外規定、不足部分の修正 ・モニタリング:全社のコントロールプロセス、リアルタイム、個別評価の実施 上記が一体化して管理されることで、コンプライアンス対応に必要なレビューのための必要 リソースを減少させることが可能となる。また、全ての要求と承認の手続きが記録されるの で、内部監査及び外部監査を行う際に、記録を短時間に追跡することが可能となり、透明性 が高まる。更に、リアルタイムでモニタリングを行うことができるために、ルール違反など の異例操作によるリスクを小さくすることが可能となる。J-SOX 対応が義務づけられたこと により、BPM 導入の重要性はますます高まっている。 BPM スイートモデリングスイートモデリングスイートモデリングスイートモデリング
  • 6. BPM スイートを構成する際には、全体のモデリングが必要となる。モデリングは、「戦略ビ ジョンモデル」、「プロセスモデル」、「ビジネスポリシーモデル(ビジネスルール)」、 「組織モデル」、「情報及びインテグレーションモデル」で構成され、それぞれが密接に関 与してくる。 「戦略ビジョンモデル」は、対象業務に対する会社の取組み方針であり、それにしたがって、 「プロセスモデル」が選定される。これは、例えば、オンラインショップを例に挙げると、 カタログ検索、オーダー指示、請求書発行業務、発送指示、トラッキングなどの業務単位と なる。「組織モデル」は、トップの CEO から始まって、CFO、COO、CIT などの下部組織に つながってくる組織図となる。それぞれの業務単位に対し、誰が何を担当するのか(請求を 行う、操作を行う、承認を行うなど)が定められる。「プロセスモデル」においては、各業 務単位がどの順番で行われるか業務フローが定められる。「ビジネスポリシーモデル(ビジ ネスルール)」は、プロセスの分岐における判断材料となるもので、ポリシー(法令、会社 の方針など)、ベストプラクティス(業務を行うために最適と考えられるもの)、顧客の好 み(クライアントが望むもの)、パートナーの好み(パートナーが望むもの)に分かれる。 「インフォメーション及びインテグレーションモデル」は、それぞれの情報がどこに存在し ていてどういうふうに関連するかを定めたものである。 コンプライアンスに絡めて若干補足であるが、「戦略ビジョンモデル戦略ビジョンモデル戦略ビジョンモデル戦略ビジョンモデル」は企業によって当然 ながら異なる。決して間違ってはいけないのは、外部から与えられるものではなく、外部環 境と内部のリソースを勘案して、企業のトップが定めるものである。お上、IT ベンダー、監 査法人、コンサルタントが教えてくれるものではない。特に、SOX 対応において重要なポイ ントであるが、内部統制とは、経営管理そのもののである。経営者は経営とは何か?もう一 度見直す必要がある。ここがあいまいだと、BPM の導入も効果が薄くなってしまう。 3.3.3.3.Enterprise Application Integration((((EAI)と4.)と4.)と4.)と4.Business To Business Integration ビジネスプロセスの背後には、社内には従来から配備されたバックエンドシステムが動いて いる。例えば、セールス、サービス、クレーム対応、詐欺対応、パートナー対応など。ある 程度の規模と歴史を有する企業であれば、それぞれにフロントオフィス、ミドルオフィス、 バックオフィスの業務と担当者が存在し、業務アプリケーションが配備されているはずであ る。更に、外部のビジネスパートナーにも、何らかの業務アプリケーションが配備されてい るはずである。 それらを BPM の定めたフローにあわせて、個々の業務アプリケーションの個別の機能を有 機的にリンク(インテグレーション)させていく。インテグレーションは、さまざまな技術
  • 7. が用いられるが、最近では Web サービスが一般的になっている。インテグレーションには、 業務アプリケーションの個別の機能同士を接続するためのアダプターも含まれる。 また、業務アプリケーションとして、パッケージツールである、SAP、People ソフト、Siebel などさまざまなベンダーが提供するものがあり、外部のビジネスパートナーとのインテグレ ーション(Business To Business Integration)には、Web サービスを用いた連携が力を発揮する。 部品化された個別機能は一つのサービスと定義され、共通のデータベースとともに、エンタ ープライズサービスバス(Enterprise Service Bus)と呼ばれるバックボーンで連携される。こ れは SOA(Service Oriented Architecture)の基本的なコンセプトである。 ツールベンダーであるベンチャー登場への期待ツールベンダーであるベンチャー登場への期待ツールベンダーであるベンチャー登場への期待ツールベンダーであるベンチャー登場への期待 このインテグレーションのツールである、アダプターや、それぞれの業務アプリケーション の機能を分離するツールについては、BPM スイートのベンダーのみならず、さまざまなツー ルベンダーから提供されている。更に、業務アプリケーションには、上記のメジャーなパッ ケージソフトばかりではなく、自社開発のレガシーシステムが配備されているケースが少な くなく、ビジネスプロセス、ビジネスルール、データベースが、スパゲッティー状態に複雑 に絡み合っているケースが少なくない。これらについては、機能単位を粒度を定めて確定し、 一つづつ手作業で切り離していく作業が必要である。さながらシャム双生児の分離手術のよ うだ。さまざまなベンダーからツールが提供されつつあり、今後、自動化が進むものと期待 される。いろいろなベンダーの業務アプリケーション同士をつなぐには、個々のベンダーの システムの癖など裏を熟知している必要があり、大手ベンダーだけではなかなか難しいもの である。その領域は、大手企業よりも、多様なバックグラウンドを持つ技術者たちの混成部 隊であるベンチャー企業の方がはるかに有利である。エンタープライズソリューションの世 界で今後成長が見込まれる有望な領域であり、ベンチャーの登場と活躍が期待される。 (徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz) SOX 対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される対応ソリューションの要と期待される BPM((((Business Process Management) (3) 徳田浩司(Koji Tokuda) 2006-07-29 06:41:52
  • 8. 前回「SOX 対応ソリューションの要と期待される BPM (2)」では、BPMSuite(Business Process Management Suite)の機能について、1.Workflow(Business Process)、2.Business Rules、3.Enterprise Application Integration(EAI)、4.Business To Business Integration に ついて述べた。引き続き残りの機能について見てみたい。 5....Business Process Monitoring & Analytics 企業全体に業務プロセス(ワークフロー)が存在するわけであるが、各組織、そして個人に も存在する。BPM を使うと、組織図にあわせて、ポジション毎に機能、役割分担、権限と責 任が明確化される。業務分掌とビジネスプロセス及びシステムをドッキングすることができ る。 個人の活動は、上位者及び管理部門によって監視され、異例操作はアラートが出され、権限 を超える操作を禁じる。また、個人個人の活動が記録されることで、業務の繁忙、個人間で の分担の偏り(というよりも仕事をしていないのが誰かわかる)、パフォーマンスが、明ら かになる。管理が厳しくなるのは嫌なものだが、効率化を上げるためには必要である。BPM のモニタリングと分析機能を活用することにより、業務プロセスや業務分担など問題あると ころが見えてくる。BPM を用いれば、環境の変化に合わせて、システムの変更もスピーディ ーな対応が可能となる。それまで、本部からの全社画一的なお仕着せのシステム提供だった のが、BPM 導入後は、現場からの意見を取り入れながら、実態に合わせて部門毎にきめ細か く対応することが可能となる。更に、今のビジネスで、システムが十分対応できているか、 無駄は無いか、不足するものは無いか、ということも明らかになる。 BPM は導入後が重要で、ここまでルーティン化できれば、BPM 導入のメリットが目に見え て出てくる。 6....Solution Frameworks 最後に、BPMSuite 全体のフレームワークが重要となる。これは、BPM を中心とした社内シ ステムの拡張である。新規のビジネス参入や新しい業務が出てくるたびに、業種別の業務シ ステムを継ぎ足していくときの、接続方法である。SOA 技術を用いた基盤が出来上がってい ると、拡張とリンクがしやすくなる。既存のインフラを活用することができるため、開発コ ストも大幅に下げることが可能となる。
  • 9. 特に金融やオンラインビジネスなど、業界を超えて業務が拡大している。また、合併により システムの統合が必要となるケースも増えている。BPM を用いた基盤があれば、産業毎に必 要な業種別アプリケーションを継ぎ足すだけで、新規にビジネスを行うことが可能となる。 ゼロから立ち上げるよりもはるかに早いはずだ。米国では、成功事例がたくさん出てきてい る。 日本での日本での日本での日本での BPM 導入は可能か?導入は可能か?導入は可能か?導入は可能か? もちろん、これまでの話は SOA 基盤としたシステムのインフラが出来上がっているという前 提で、米国での話である。SOA は儲からない、言っているほど上手くいかない、という話が つい最近まであったが、ここに来て、効果が出ている、導入が進んでいるというレポートが 出てきている。ZDNetSOA ブログでも「SOA の導入で年間 5%のコスト削減が可能に――最 新調査」「SOA の利用事例数が 2005 年と比べて 2 倍に――最新調査結果」などの記事があ る。導入のドライビングフォースとなったのは、SOX や HIPPA などコンプライアンス対応 である。日本においては、業務システムは自社開発の独自のシステムでできあがっているこ とが少なくない。米国と違って日本では人員の流動化が少ないので、同じシステム部員が長 く担当していることから、開発のノウハウなどがきちんと文書化されていないものが少なく なく、人が異動したりやめれば必要な情報が散逸し、あとからシステムに手を加えることが 簡単に出来ないのかもしれない。BPM 導入が可能となるための SOA のインフラを作り上げ るまでには大きな苦しみが伴うだろう。 私も思い当たるような経験がある。銀行の子会社にいたときに、オフィスを移転することに なり、経営企画部門にいた私が引越し業務の統括責任者となった。移転に合わせて、社内シ ステムも再構築することになり、銀行に接続しているネットワークの移転とか社内システム の見直しも私が担当することになった。投資先企業を管理するシステムも手直しすることに なったが、そのシステムは、MS-ACEESS をベースで開発したもので、そんなに複雑なもの ではなかった。画面のトップページに、一社ごと、企業名、投資金額、投資時期、売上、利 益、業務内容など、概略を表示しているものであった。トップから、一覧で見るにはいくつ か追加したい情報があって、2、3 新しく情報項目を増やして欲しい、という要請があった。 最初は、表示方法を手直しするだけなので、それほど大変な話だとは思っていなかった。と ころが、最初に開発を依頼した SI の担当者は既にいなくなっており、更に、ドキュメントも 残っていなかったので、どのように手をつければよいかわからず、お手上げ状態であった。 そこで別の SI に修正をお願いすることになった。全体の構造を一からドキュメント化するこ ととなり、結局 3 ヶ月ぐらい時間がかかった。もちろん、高額の手数料を支払う羽目となっ た。非常に分厚いドキュメントができたが、2,3 の修正のためにそこまで必要だというのをな かなか上に説明できず、当時はかなり高いと思った。しかし、若しそのとき BPM があった
  • 10. としたら、私の手元で簡単に修正できていたはずで、更なる変更も簡単に出来るので、コス トは限りなくゼロに近づいたはずだ。 BPM の導入によるコストダウンの導入によるコストダウンの導入によるコストダウンの導入によるコストダウン BPM を用いて業務フローとシステムを可視化し SOA 対応に移行することは、自社開発とカ スタマイズを繰り返してきた日本企業にとって大変な困難が伴うと思われる。それならば、 その都度カスタマイズで対応するか、ゼロから作り直した方が早いという意見もある。確か に、短期的にはその方が有利である。しかし、ユーザの立場からすると、一度、社内のシス テムがどの業務とリンクしているのか明確にしておくことは、システムにブラックボックス がなくなるわけで、SI に対する大きな牽制力となる。要るのか要らないのかわからない機能 がふんだんに盛り込まれたソリューションに対して、一括でいくらですといわれて、高いお 金を払う必要がなくなるわけである。また、システムを機能ごとに切り刻むことで、モジュ ール化が可能となるので、今後 SOA 対応のアドオンのツールがどんどん出てきた時に、不足 する機能だけを、必要になったときに必要なだけ採用することが可能となる。そのため、無 駄な投資が不要になり、メンテナンスコストを減らす効果が出てくる。また、人材の流動化 もどんどん進んでいくことから、これまでのように自社開発だけに頼るのは限界があり、 BPM による標準化は重要である。企業や業種を超えて、BPM を標準化しようとする動きが 出ており、その標準に準拠した基盤を作り上げることで、必要最小限の機能に絞り込まれた パッケージを低価格で活用することが可能となる。 SOX 対応を錦の御旗に対応を錦の御旗に対応を錦の御旗に対応を錦の御旗に BPM 導入、導入、導入、導入、SOA 対応を進めるべき対応を進めるべき対応を進めるべき対応を進めるべき 新しいことをやろうとすると、最初はお金がかかる。だから簡単には先に進まない。 SOX 対応も後ろ向きな話と捉えられている。元々は、エンロン、ワールドコムに始まって、 ライブドアなど上場企業の粉飾事件がきっかけとなったもので、一般投資家をだます悪者を 締め出し、抑制するものである。一部の不心得者のために、大多数のまじめな会社にとって は不要なコストが強要され、何億円もお金をかけるなんて本当にばかばかしいものだ。数億 円のコスト負担が、何十億円もの企業価値を下げることになるので、それだけのためであれ ば、SOX 対応なんてとっととやめるべきと思う。 しかし、ルールはルールで決まったものは従わなければならない。だったら、どうせお金を かけるならば、継続して効果の現れるような投資を行うべきだろう。責任を逃れをするため に、監査を通すことだけを考えて、業務フローの文書化を手がけ、ドキュメント作りだけで おしまい、というのでは本当にもったいない。米国でも、最初はドキュメント化だけで終わ
  • 11. っているケースは少なくなかったが、今年に入って、IT 化を進めて自動化に結びつけ、SOX 対応のコストを下げようとする動きが出ている。 BPM のようなシステムは、現場は必要だと思っていても、なかなかトップは理解してくれな いかもしれない。無かったら日常業務に支障が出るようなシステムでないがゆえに、トップ も、お金をかけてまで整備しようという気にはならないのだと思う。しかし、J-SOX 対応の ためには必要だという話になれば別で、経営会議は通りやすいだろうし、投資家も説得でき るだろう。 J-SOX 対応で、IT が必要だという風潮を非難する声がある。もちろん必要ないものを投資す べきではない。しかし、むしろ逆で、必要なものは積極的に投資しておくべきだと思う。 SOX 対応による IT 化のブームをテイクチャンスして、錦の御旗として、社内稟議を通して しまうべきである。将来のために社内のシステムを高度化し、リスク軽減とコスト削減、ビ ジネス変化への対応力を向上させることを考えるべきではないだろうか。更に、不要なスペ ックを提示して高い開発費をふっかけてきた SI 企業に、今後だまされないようにするために も、導入を検討する意味は十分あると思うがどうだろうか? (SI 企業は、SOA とか BPM はコストがかかるし、手間隙かかって上手くいかないので止め たほうがよい、と言うかもしれない。そのほうが、いつまでも、社内外に大量に抱えるプロ グラマーを食わすことの出来る、人月のかかる開発プロジェクトが受注できるからである。 ツールベンダー以外は、興味ない話かもしれない。業界の方々ごめんなさい。でも私が言わ んとすることが理解でき、提案力と技術力のあるシステムコンティング会社には、プラスに なる話だと思う。) (徳田浩司 koji.tokuda at www.fusion-reactor.biz) 徳田徳田徳田徳田 浩司(トクダ浩司(トクダ浩司(トクダ浩司(トクダ コウジ)コウジ)コウジ)コウジ) Fusion Reactor LLC(在米国シリコンバレー)社長 三和銀行、三和総研、三菱商事証券などで、システムコンサルティング、ベンチ ャー投融資などに従事。2004 年に独立、米国シリコンバレーで、ベンチャーサポ ート、IT・金融ビジネスのコンサルティング、ワイヤレス・ブロードバンド・ソリュー ションの開発・ベンチャー経営、老舗スポーティング・グッズ・メーカの米国代表 などに従事。
  • 12. 本件に関するご意見・お問い合わせ Fusion Reactor LLCFusion Reactor LLCFusion Reactor LLCFusion Reactor LLC 代表代表代表代表;;;; 徳田徳田徳田徳田 浩司浩司浩司浩司 電話電話電話電話 日本日本日本日本 050050050050----5534553455345534----1111111114141414 ((((国内電話で通じます国内電話で通じます国内電話で通じます国内電話で通じます)))) EEEE----mail: info@fusionmail: info@fusionmail: info@fusionmail: info@fusion----reactor.bizreactor.bizreactor.bizreactor.biz