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Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
日本での電子回路の導入教育の
可能性:中国との比較を通して
秋田純一
(金沢大学)
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Contents
中国・深センでのサバティカル研修
深センでの研究活動
深センでの科学技術と社会実装
中国の大学・企業でのエンジニア教育
学生の動向
STEAM教育との関連
日本での「電子回路の導入教育」の可能性
日本のMaker文化
日本の学校・起業でのエンジニア教育の現状と
可能性
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
自己紹介
金沢大学 融合学域(兼:電子情報通信学類)
専門:半導体(イメージセンサ)
「半導体の民主化」の文脈
Maker
開発ボード、グッズ
Makeイベントの運営
※過去のアウトプット:http://akita11.jp/works/
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国・深センでのサバティカル研修
2022/4〜9月:一定期間、研究に専念できる制度
古くは小さな漁村/香港との「緩衝地帯」
1980年〜鄧小平「改革開放」政策
海外企業の誘致、電子機器の工場
1990年〜「华强北」(秋葉原がモデル)
→設計専門会社「方案公司」が誕生
「山寨(シャンザイ)携帯」等の設計情報、
知識経験の交換を通して設計力が向上
電子部品サプライチェーン、
製造工場とも有機的に機能して
「ハードウエアのシリコンバレー」へ
https://github.com/akita11/SZdiary
(まとめ記事、インタビュー記事あり)
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
“Made in China”
古くは「安かろう悪かろう」「コピー品天国」の
代名詞
最先端の科学技術が惜しげもなく投入され、
急速に社会に実装されている
若い人ほど、このイメージを持っている
自動運転タクシーの
営業実証実験
ドローンやロボットが
街中に普通にいる
Ref:例えば高口「中国S級B級論」
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国のインターネット・スマホ事情
「グレート・ファイアウオール(金盾)」
GoogleやTwitterなどが利用不可(若い人には使って
いる?)
海外サービスをうまく進化させた、
独自のインターネットサービス
高精度測位とIoT化バスの実用的な地図アプリ
WeChat(微信)のミニアプリ、電子結佐
金融ビッグデータ実証のAlipay
「スマホ前提社会(+ない人対応は人力)」
←「スマホがない人がいるからやらない」(日本)
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
我々は中国とどう付き合うのがいいか?
確かに政治体制など、とっつきにくい面があるのは
事実
世論調査では、対中感情が悪いほうが圧倒的に多い
技術やビジネスの現場ではあまり感じたことがない
特に若い世代は、挑戦に貪欲
「日本が中国に勝つには」は、たぶん愚問
→「日本が中国とどうつきあうか
(どう利用するか)」が得策
「漢字が読める」というアドバンテージは
圧倒的(論文、技術資料など)
「この先生きのこれるか」を欧米人はすぐに読めない
ある日突然届いたSMS
ぱっと見で、だいたい意味はわかる
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
南方科技大学
深セン市立(2011年)、THEランキング162位
教員は「海亀族」が多い(女性率20%)
研究の国際的バランス感覚、基礎研究に近
い研究プロジェクトも多い
新任教員の補助約1億円/5年
→その後は競争的資金
企業との接点、ビジネス化の
意識が強い
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
オープンイノベーションの素地?
M5Stackで製品企画→設計→販売
広すぎるプリント基板工場
(大規模化で少量多品種に対応)
社外のリソースも積極的に活用
「系列」「下請け」という
概念がない
深セン速度を支えるインフラ
少量多品種にも充分に対応
• 会ったらすぐWeChat(微信)交換→すぐ連絡
(人ごとに連絡方法を考えなくていい)
• 「最近のことはわからん」というエンジニアには
会ったことがない
• 「社会の成長」が、すべての根源のような気はする
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国でみた半導体業界
中国には3000社以上の半導体メーカ
(大半はファブレス)
最先端SoCから安価な互換IC、ディスクリート半
導体まで、企業の幅は非常に広い
ファブもいくつかある
米国の(アンフェアな)規制(EUV等)から、
5nmクラスは量産できなくなっているが、
SMICが7nm量産など徐々に内製化へ進んでい
る
EDAツールはCadence等が主流
180nm〜65nm程度の、
やや古めのプロセスがアツい
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
やや古めの技術の半導体(1)
低価格の汎用品や互換品
基本、レッドオーシャン市場
差別化や方案公司としてトータル設計
STmicroのSTM32F030と、その互換マイコン(明らかに別設計)
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
やや古めの技術の半導体(2)
市場のニーズをうまく捉える/新たな市場を
開拓している製品
無線通信SoC、電源管理SoCなど
少量多品種のSoC市場が成立している
Bluetoothイヤホン専用SoC
空間オーディオDSP、LiPo充電、
タッチ検出など必要機能が一式
(65nmプロセス、別フラッシュのSiP)
写真提供:高須正和氏
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国/深センの科学技術政策
役人はよく技術を勉強して、
「技術が活躍するのに必要な政策」を考える
「やらない・できない」言い訳が出ない(出せない、
のかもしれない)
例)RISC-V研究開発2億円以上に20%補助金、半
導体材料40%、国産EDは70%、国産チップにも売
上に応じて補助金
https://www.ithome.com/0/645/898.htm
LSI関係のマネージャ給与の20%補助金
LSI関係の外国人技術者のビザや生活優遇
LSI関係の学校創立に4億円補助
IP購入に20%補助金
自社チップ販売額の15%補助金
Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国でのエンジニア教育
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
全体的にエンジニア不足
半導体設計の大卒初任給は1000万円程度
学生はよく勉強している
=「社会の成長」を実感できる、のも大きい?
「儲かるから」 >> 「面白いから」の傾向?
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
エンジニアもよく勉強している
「系列」の概念がない=多様な経験を積む
「最近のことはわからない」という人は皆無
とはいえ、特に”STEAM教育“が活発でもない
Makerバブルの名残で「DIY」という言葉は普及
電子工作ホビイストは人口比で見ると少ない
华强北には「秋月電子」はない
MakerFaire Shenzhenも「ビジネス寄り」
中国の「ものづくり」は、あくまでもビジネス文脈とみるのが自然
Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
日本のMaker文化と
エンジニア導入教育の可能性
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
最近の日本の「ものづくり」
エンジニア経歴がなくても「作りたいもの」を
作るがいる(世界的にみても日本が特異)
「技術で遊ぶ・親しむ」という文化
「作りたい」→「学ぶ」の順
かつての「ウオークマン」も机の下から
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“How to Make”からの”Made in Japan”
「与えられた仕様をしっかりつくる」教育
“Made in Japan”が高品質の代名詞に
技術が大半の市場ニーズを満たすようになった
PCのカタログの表紙にCPUスペックは載っていない
成長の目標を見失った、と言われて久しい
「iPhone?そんなものは日本でもつくれる」
「仕様をくれれば」という仮定がないか?
本当にいまでも「高品質」なのか?
「Blu-ray vs HD-DVD」の争い←→「ネット配信」
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エンジニア教育の悩み
技術の複雑化・高度化=学ぶことが多すぎる
「ブラックボックス化」の功と罪
機能をブロック化して高度な設計が可能に
モジュール化設計=「誰でも設計できる製品」
Apple/HiSilicon等の「すきまがない」SoC
←→配線領域だらけのSoC
「必要に応じてブラックボックスの中にも手を
入れる」という選択肢
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エンジニア教育の悩み
「失敗をする機会」を奪っていないか?
「系列」のために「特定の仕事」しかできない
「失敗しないように」という大人の配慮が、逆に興味
を失わせていないか?
(プラモデル、理科実験、電子工作キット)
「興味を持ってもらう」という大人の事情はないか?
「楽=Fun」を求めている
「楽=Easy」だけではものたりない
“Fun”のためには危険も苦労も厭わない
(最近のMakerをみていれば自明)
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
「最近の若いもん」は・・・
実に、うらやましい。
「総合的学習・アクティブラーニング」ネイティブ(柔軟な発想)
「アツい思い」というイノベーションの種
それを具現化できる「技術の民主化」
「技術の素養を持った○○」でいい
「エンジニア」という職種である必要はない
「理系文系」という区分けこそ無意味で弊害
「技術で遊ぶ」からで入ったっていい
「素人の工作」はあなどれない
こういう人たちが活躍できるよう、大人は伴走したい
実際、技術を極めるのは、とてつもなく難しいから
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
まとめ
中国・深センとの現状
「社会の成長」を皆が実感して、元気がいい
エンジニア教育にも影響
日本での「電子回路の導入教育」の可能性
日本の旧来のエンジニア教育の功と罪
日本のMaker文化と「最近の若いもん」
その時代における大人の役割
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
ゼロコロナ政策
ビル・マンション区画ごとに
警備員がいて健康コードをチェック
PCR検査は街中いたるところに(平時は10人で1本)
アプリ登録→検体採取(のど、10秒で終わる)
→数時間後にアプリに結果
24h/48h陰性証明がないと生活上不便が多い
場所コードをスキャンしないと中に入れない
→人の動きが記録→濃厚接触は健康コードが黄色になる
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日本での電子回路の導入教育の可能性:中国との比較を通して

  • 1. Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 日本での電子回路の導入教育の 可能性:中国との比較を通して 秋田純一 (金沢大学)
  • 2. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ Contents 中国・深センでのサバティカル研修 深センでの研究活動 深センでの科学技術と社会実装 中国の大学・企業でのエンジニア教育 学生の動向 STEAM教育との関連 日本での「電子回路の導入教育」の可能性 日本のMaker文化 日本の学校・起業でのエンジニア教育の現状と 可能性
  • 3. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 自己紹介 金沢大学 融合学域(兼:電子情報通信学類) 専門:半導体(イメージセンサ) 「半導体の民主化」の文脈 Maker 開発ボード、グッズ Makeイベントの運営 ※過去のアウトプット:http://akita11.jp/works/
  • 4. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国・深センでのサバティカル研修 2022/4〜9月:一定期間、研究に専念できる制度 古くは小さな漁村/香港との「緩衝地帯」 1980年〜鄧小平「改革開放」政策 海外企業の誘致、電子機器の工場 1990年〜「华强北」(秋葉原がモデル) →設計専門会社「方案公司」が誕生 「山寨(シャンザイ)携帯」等の設計情報、 知識経験の交換を通して設計力が向上 電子部品サプライチェーン、 製造工場とも有機的に機能して 「ハードウエアのシリコンバレー」へ https://github.com/akita11/SZdiary (まとめ記事、インタビュー記事あり)
  • 5. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ “Made in China” 古くは「安かろう悪かろう」「コピー品天国」の 代名詞 最先端の科学技術が惜しげもなく投入され、 急速に社会に実装されている 若い人ほど、このイメージを持っている 自動運転タクシーの 営業実証実験 ドローンやロボットが 街中に普通にいる Ref:例えば高口「中国S級B級論」
  • 6. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国のインターネット・スマホ事情 「グレート・ファイアウオール(金盾)」 GoogleやTwitterなどが利用不可(若い人には使って いる?) 海外サービスをうまく進化させた、 独自のインターネットサービス 高精度測位とIoT化バスの実用的な地図アプリ WeChat(微信)のミニアプリ、電子結佐 金融ビッグデータ実証のAlipay 「スマホ前提社会(+ない人対応は人力)」 ←「スマホがない人がいるからやらない」(日本)
  • 7. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 我々は中国とどう付き合うのがいいか? 確かに政治体制など、とっつきにくい面があるのは 事実 世論調査では、対中感情が悪いほうが圧倒的に多い 技術やビジネスの現場ではあまり感じたことがない 特に若い世代は、挑戦に貪欲 「日本が中国に勝つには」は、たぶん愚問 →「日本が中国とどうつきあうか (どう利用するか)」が得策 「漢字が読める」というアドバンテージは 圧倒的(論文、技術資料など) 「この先生きのこれるか」を欧米人はすぐに読めない ある日突然届いたSMS ぱっと見で、だいたい意味はわかる
  • 8. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 南方科技大学 深セン市立(2011年)、THEランキング162位 教員は「海亀族」が多い(女性率20%) 研究の国際的バランス感覚、基礎研究に近 い研究プロジェクトも多い 新任教員の補助約1億円/5年 →その後は競争的資金 企業との接点、ビジネス化の 意識が強い
  • 9. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ オープンイノベーションの素地? M5Stackで製品企画→設計→販売 広すぎるプリント基板工場 (大規模化で少量多品種に対応) 社外のリソースも積極的に活用 「系列」「下請け」という 概念がない 深セン速度を支えるインフラ 少量多品種にも充分に対応 • 会ったらすぐWeChat(微信)交換→すぐ連絡 (人ごとに連絡方法を考えなくていい) • 「最近のことはわからん」というエンジニアには 会ったことがない • 「社会の成長」が、すべての根源のような気はする
  • 10. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国でみた半導体業界 中国には3000社以上の半導体メーカ (大半はファブレス) 最先端SoCから安価な互換IC、ディスクリート半 導体まで、企業の幅は非常に広い ファブもいくつかある 米国の(アンフェアな)規制(EUV等)から、 5nmクラスは量産できなくなっているが、 SMICが7nm量産など徐々に内製化へ進んでい る EDAツールはCadence等が主流 180nm〜65nm程度の、 やや古めのプロセスがアツい
  • 11. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ やや古めの技術の半導体(1) 低価格の汎用品や互換品 基本、レッドオーシャン市場 差別化や方案公司としてトータル設計 STmicroのSTM32F030と、その互換マイコン(明らかに別設計)
  • 12. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ やや古めの技術の半導体(2) 市場のニーズをうまく捉える/新たな市場を 開拓している製品 無線通信SoC、電源管理SoCなど 少量多品種のSoC市場が成立している Bluetoothイヤホン専用SoC 空間オーディオDSP、LiPo充電、 タッチ検出など必要機能が一式 (65nmプロセス、別フラッシュのSiP) 写真提供:高須正和氏
  • 13. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国/深センの科学技術政策 役人はよく技術を勉強して、 「技術が活躍するのに必要な政策」を考える 「やらない・できない」言い訳が出ない(出せない、 のかもしれない) 例)RISC-V研究開発2億円以上に20%補助金、半 導体材料40%、国産EDは70%、国産チップにも売 上に応じて補助金 https://www.ithome.com/0/645/898.htm LSI関係のマネージャ給与の20%補助金 LSI関係の外国人技術者のビザや生活優遇 LSI関係の学校創立に4億円補助 IP購入に20%補助金 自社チップ販売額の15%補助金
  • 14. Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国でのエンジニア教育
  • 15. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 全体的にエンジニア不足 半導体設計の大卒初任給は1000万円程度 学生はよく勉強している =「社会の成長」を実感できる、のも大きい? 「儲かるから」 >> 「面白いから」の傾向?
  • 16. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ エンジニアもよく勉強している 「系列」の概念がない=多様な経験を積む 「最近のことはわからない」という人は皆無 とはいえ、特に”STEAM教育“が活発でもない Makerバブルの名残で「DIY」という言葉は普及 電子工作ホビイストは人口比で見ると少ない 华强北には「秋月電子」はない MakerFaire Shenzhenも「ビジネス寄り」 中国の「ものづくり」は、あくまでもビジネス文脈とみるのが自然
  • 17. Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 日本のMaker文化と エンジニア導入教育の可能性
  • 18. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 最近の日本の「ものづくり」 エンジニア経歴がなくても「作りたいもの」を 作るがいる(世界的にみても日本が特異) 「技術で遊ぶ・親しむ」という文化 「作りたい」→「学ぶ」の順 かつての「ウオークマン」も机の下から
  • 19. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ “How to Make”からの”Made in Japan” 「与えられた仕様をしっかりつくる」教育 “Made in Japan”が高品質の代名詞に 技術が大半の市場ニーズを満たすようになった PCのカタログの表紙にCPUスペックは載っていない 成長の目標を見失った、と言われて久しい 「iPhone?そんなものは日本でもつくれる」 「仕様をくれれば」という仮定がないか? 本当にいまでも「高品質」なのか? 「Blu-ray vs HD-DVD」の争い←→「ネット配信」
  • 20. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ エンジニア教育の悩み 技術の複雑化・高度化=学ぶことが多すぎる 「ブラックボックス化」の功と罪 機能をブロック化して高度な設計が可能に モジュール化設計=「誰でも設計できる製品」 Apple/HiSilicon等の「すきまがない」SoC ←→配線領域だらけのSoC 「必要に応じてブラックボックスの中にも手を 入れる」という選択肢
  • 21. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ エンジニア教育の悩み 「失敗をする機会」を奪っていないか? 「系列」のために「特定の仕事」しかできない 「失敗しないように」という大人の配慮が、逆に興味 を失わせていないか? (プラモデル、理科実験、電子工作キット) 「興味を持ってもらう」という大人の事情はないか? 「楽=Fun」を求めている 「楽=Easy」だけではものたりない “Fun”のためには危険も苦労も厭わない (最近のMakerをみていれば自明)
  • 22. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 「最近の若いもん」は・・・ 実に、うらやましい。 「総合的学習・アクティブラーニング」ネイティブ(柔軟な発想) 「アツい思い」というイノベーションの種 それを具現化できる「技術の民主化」 「技術の素養を持った○○」でいい 「エンジニア」という職種である必要はない 「理系文系」という区分けこそ無意味で弊害 「技術で遊ぶ」からで入ったっていい 「素人の工作」はあなどれない こういう人たちが活躍できるよう、大人は伴走したい 実際、技術を極めるのは、とてつもなく難しいから
  • 23. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ まとめ 中国・深センとの現状 「社会の成長」を皆が実感して、元気がいい エンジニア教育にも影響 日本での「電子回路の導入教育」の可能性 日本の旧来のエンジニア教育の功と罪 日本のMaker文化と「最近の若いもん」 その時代における大人の役割
  • 24. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
  • 25. 2022/12/9 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ ゼロコロナ政策 ビル・マンション区画ごとに 警備員がいて健康コードをチェック PCR検査は街中いたるところに(平時は10人で1本) アプリ登録→検体採取(のど、10秒で終わる) →数時間後にアプリに結果 24h/48h陰性証明がないと生活上不便が多い 場所コードをスキャンしないと中に入れない →人の動きが記録→濃厚接触は健康コードが黄色になる 人口1700万人の深センで陽性10人で不穏になる 陽性者が出たマンションは封鎖など (弁当宅配はできるので生活はできる)