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Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国と深センでの
半導体とRISC-V業界事情
秋田純一(金沢大)
@akita11
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
Contents
中国・深センでのサバティカル研修
深センでの生活
深センでの科学技術と社会実装
中国の半導体業界・RISC-V業界
中国の半導体業界
中国のRISC-V業界
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
自己紹介
金沢大学 融合学域(兼:電子情報通信学類)
専門:半導体(イメージセンサ)
「半導体の民主化」の文脈
Maker
開発ボード、グッズ
Makeイベントの運営
※過去のアウトプット:http://akita11.jp/works/
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国・深センに行ってきた
サバティカル研修(2022/4月〜9月)
一定期間、研究に専念できる制度
https://github.com/akita11/SZdiary
(まとめ記事、インタビュー記事あり)
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
深センの歴史
古くは小さな漁村/香港との「緩衝地帯」
1980年〜:鄧小平「改革開放」政策
海外企業の誘致、電子機器の工場
1990年〜:「华强北」(秋葉原がモデル)
徐々に設計専門会社「方案公司」が誕生
「山寨(シャンザイ)携帯」などの設計データ、
知識経験の交換を通して設計力が向上
電子部品サプライチェーン、製造工場とも
有機的に機能して
「ハードウエアのシリコンバレー」へ
ファーチャンベイ
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
南方科技大学
深セン市立(2011年)、THEランキング162位
教員は「海亀族」が多い(女性率20%)
研究の国際的バランス感覚、基礎研究に近
い研究プロジェクトも多い
新任教員の補助約1億円/5年
→その後は競争的資金
企業との接点、ビジネス化の
意識が強い
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
“Made in China”
古くは「安かろう悪かろう」「コピー品天国」の
代名詞
最先端の科学技術が惜しげもなく投入され、
急速に社会に実装されている
若い人ほど、このイメージを持っている
自動運転タクシーの
営業実証実験
ドローンやロボットが
街中に普通にいる
Ref:例えば高口「中国S級B級論」
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
行政と科学技術政策
 産・官・学が「科学技術で社会を良くする」という目的に
能動的に動く
「もうかる」も一つの目標
行政も、よく科学技術のことを勉強している
「やらない・できない」言い訳が出ない(出せない、のかもしれな
い)
「深セン速度」でものごとが進む
 例:ドローンの「空中回廊」制度
8月のシンポジウムで議論
10月には飲食物配達の実証実験
 例:QRコード決済
×「スマホを使えない人がいるから、やらない」
○「ほとんどスマホを持っているから導入。持っていない人には
個別対応」
元は高層ビル建設が3日で1階進むことを
みて鄧小平が言った言葉(らしい)
転じて、あらゆることが素早く進むことを指す
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
中国のインターネット・スマホ事情
「グレート・ファイアウオール(金盾)」
GoogleやTwitterなどが利用不可(若い人には使って
いる?)
海外サービスをうまく進化させた、
独自のインターネットサービス
高精度測位とIoT化バスの実用的な地図アプリ
WeChat(微信)のミニアプリ、電子結佐
金融ビッグデータ実証のAlipay
「スマホ前提社会(+ない人対応は人力)」
←「スマホがない人がいるからやらない」(日本)
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ゼロコロナ政策
ビル・マンション区画ごとに
警備員がいて健康コードをチェック
PCR検査は街中いたるところに(平時は10人で1本)
アプリ登録→検体採取(のど、10秒で終わる)
→数時間後にアプリに結果
24h/48h陰性証明がないと生活上不便が多い
場所コードをスキャンしないと中に入れない
→人の動きが記録→濃厚接触は健康コードが黄色になる
人口1700万人の深センで陽性10人で不穏になる
陽性者が出たマンションは封鎖など
(弁当宅配はできるので生活はできる)
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オープンイノベーションの素地?
M5Stackで製品企画→設計→販売
広すぎるプリント基板工場
(大規模化で少量多品種に対応)
社外のリソースも積極的に活用
「系列」「下請け」という
概念がない
深セン速度を支えるインフラ
少量多品種にも充分に対応
• 会ったらすぐWeChat(微信)交換→すぐ連絡
(人ごとに連絡方法を考えなくていい)
• 「最近のことはわからん」というエンジニアには
会ったことがない
• 「社会の成長」が、すべての根源のような気はする
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我々は中国とどう付き合うのがいいか?
確かに政治体制など、とっつきにくい面があるのは
事実
世論調査では、対中感情が悪いほうが圧倒的に多い
技術やビジネスの現場ではあまり感じたことがない
特に若い世代は、挑戦に貪欲
「日本が中国に勝つには」は、たぶん愚問
→「日本が中国とどうつきあうか
(どう利用するか)」が得策
「漢字が読める」というアドバンテージは
圧倒的(論文、技術資料など)
「この先生きのこれるか」を欧米人はすぐに読めない
ある日突然届いたSMS
ぱっと見で、だいたい意味はわかる
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全体的にエンジニア不足
半導体設計の大卒初任給は1000万円程度
学生はよく勉強している
=「社会の成長」を実感できる、のも大きい?
「儲かるから」 >> 「面白いから」の傾向?
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エンジニアもよく勉強している
「系列」の概念がない=多様な経験を積む
「最近のことはわからない」という人は皆無
とはいえ、特に”STEAM教育“が活発でもない
Makerバブルの名残で「DIY」という言葉は普及
電子工作ホビイストは人口比で見ると少ない
华强北には「秋月電子」はない
MakerFaire Shenzhenも「ビジネス寄り」
中国の「ものづくり」は、あくまでもビジネス文脈とみるのが自然
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中国でみた半導体業界
中国には3000社以上の半導体メーカ
(大半はファブレス)
最先端SoCから安価な互換IC、ディスクリート半
導体まで、企業の幅は非常に広い
ファブもいくつかある
米国の(アンフェアな)規制(EUV等)から、
5nmクラスは量産できなくなっているが、
SMICが7nm量産など徐々に内製化へ進んでい
る
EDAツールはCadence等が主流
180nm〜65nm程度の、
やや古めのプロセスがアツい
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やや古めの技術の半導体(1)
低価格の汎用品や互換品
基本、レッドオーシャン市場
差別化や方案公司としてトータル設計
STmicroのSTM32F030と、その互換マイコン(明らかに別設計)
2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/
やや古めの技術の半導体(2)
市場のニーズをうまく捉える/新たな市場を
開拓している製品
無線通信SoC、電源管理SoCなど
少量多品種のSoC市場が成立している
Bluetoothイヤホン専用SoC
空間オーディオDSP、LiPo充電、
タッチ検出など必要機能が一式
(65nmプロセス、別フラッシュのSiP)
写真提供:高須正和氏
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中国/深センの科学技術政策
役人はよく技術を勉強して、
「技術が活躍するのに必要な政策」を考える
例)RISC-V研究開発2億円以上に20%補助金、半
導体材料40%、国産EDは70%、国産チップにも売
上に応じて補助金(現在、バブコメ募集中)
https://www.ithome.com/0/645/898.htm
LSI関係のマネージャ給与の20%補助金
LSI関係の外国人技術者のビザや生活優遇
LSI関係の学校創立に4億円補助
IP購入に20%補助金
自社チップ販売額の15%補助金
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国・メーカにとってのオープンソース
全方向、活発に攻めている
ハイエンド・ローエンド
大企業・中小企業
政府のバックアップ
技術国産化&貿易戦争回避の観点から、
オープンソースのRISC-Vに期待
以前から国産CPU・国産OSに熱心だったが、
国営企業だからか、いまいち市場でみかけない
 TRO・・・いやなんでもないです
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アカデミアも参入している
包云岗氏(中科院计算所副所长、北京开源
芯片研究院首席科学家)など
AIoTの時代、半導体/SoCへの要求も細分化
中国のスマホアプリは449万種類、
半導体もそうなる(すでに会社数は3000社以上)
詳しくは:
https://github.com/kaiyuanshe/CNOSSTranslationJP/blob/main/translation/20221008_RISCV_SZ_Publiccomment.md
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中小企業にとってのRISC-V
少量・多品種がファブ的に可能に
RISC-VをコアにもつSoC
用途は幅が広い
Bluetooth、マイニング、・・・
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大企業にとってのRISC-V
Alibaba、Huawei等が半導体子会社をもつ
Alibaba→T-Head(平头哥)(2018)
玄铁(XuanTie)シリーズ:単純制御用ローエンド
からLinuxが動くハイエンドまで
参考:https://gihyo.jp/dev/serial/01/china-oss-frontline/0008
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かつての日本と実は似ている?
垂直統合が進む(設計→製造→製品)
SunのSPARC-Java-NetworkComputerに
通じるものもありそう
内需の比率がかなり多い
官製オープンイノベーション
(かつてのDRAM組合のようだ)
(たぶん大きな)違い:
クラウド、それにつながるIoTもセットで開発
GitHub等でデータ公開&issue/プルリクでオー
プンに改善を進めるスタイル
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まとめ
中国・深センの最近の様子
基本的に、活気がある
「成長」を実体を伴って実感できるのが大きそう
若い人も、そうでない人も「老けてない」
オープンソースの活用
行政も着目し、強力にバックアップ
=「やらない言い訳」がない
大企業も中小企業もRISC-Vに着目し活用
かつての日本企業のように垂直統合が進む

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  • 1. Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国と深センでの 半導体とRISC-V業界事情 秋田純一(金沢大) @akita11
  • 2. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ Contents 中国・深センでのサバティカル研修 深センでの生活 深センでの科学技術と社会実装 中国の半導体業界・RISC-V業界 中国の半導体業界 中国のRISC-V業界
  • 3. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 自己紹介 金沢大学 融合学域(兼:電子情報通信学類) 専門:半導体(イメージセンサ) 「半導体の民主化」の文脈 Maker 開発ボード、グッズ Makeイベントの運営 ※過去のアウトプット:http://akita11.jp/works/
  • 4. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国・深センに行ってきた サバティカル研修(2022/4月〜9月) 一定期間、研究に専念できる制度 https://github.com/akita11/SZdiary (まとめ記事、インタビュー記事あり)
  • 5. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 深センの歴史 古くは小さな漁村/香港との「緩衝地帯」 1980年〜:鄧小平「改革開放」政策 海外企業の誘致、電子機器の工場 1990年〜:「华强北」(秋葉原がモデル) 徐々に設計専門会社「方案公司」が誕生 「山寨(シャンザイ)携帯」などの設計データ、 知識経験の交換を通して設計力が向上 電子部品サプライチェーン、製造工場とも 有機的に機能して 「ハードウエアのシリコンバレー」へ ファーチャンベイ
  • 6. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 南方科技大学 深セン市立(2011年)、THEランキング162位 教員は「海亀族」が多い(女性率20%) 研究の国際的バランス感覚、基礎研究に近 い研究プロジェクトも多い 新任教員の補助約1億円/5年 →その後は競争的資金 企業との接点、ビジネス化の 意識が強い
  • 7. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ “Made in China” 古くは「安かろう悪かろう」「コピー品天国」の 代名詞 最先端の科学技術が惜しげもなく投入され、 急速に社会に実装されている 若い人ほど、このイメージを持っている 自動運転タクシーの 営業実証実験 ドローンやロボットが 街中に普通にいる Ref:例えば高口「中国S級B級論」
  • 8. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 行政と科学技術政策  産・官・学が「科学技術で社会を良くする」という目的に 能動的に動く 「もうかる」も一つの目標 行政も、よく科学技術のことを勉強している 「やらない・できない」言い訳が出ない(出せない、のかもしれな い) 「深セン速度」でものごとが進む  例:ドローンの「空中回廊」制度 8月のシンポジウムで議論 10月には飲食物配達の実証実験  例:QRコード決済 ×「スマホを使えない人がいるから、やらない」 ○「ほとんどスマホを持っているから導入。持っていない人には 個別対応」 元は高層ビル建設が3日で1階進むことを みて鄧小平が言った言葉(らしい) 転じて、あらゆることが素早く進むことを指す
  • 9. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国のインターネット・スマホ事情 「グレート・ファイアウオール(金盾)」 GoogleやTwitterなどが利用不可(若い人には使って いる?) 海外サービスをうまく進化させた、 独自のインターネットサービス 高精度測位とIoT化バスの実用的な地図アプリ WeChat(微信)のミニアプリ、電子結佐 金融ビッグデータ実証のAlipay 「スマホ前提社会(+ない人対応は人力)」 ←「スマホがない人がいるからやらない」(日本)
  • 10. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ ゼロコロナ政策 ビル・マンション区画ごとに 警備員がいて健康コードをチェック PCR検査は街中いたるところに(平時は10人で1本) アプリ登録→検体採取(のど、10秒で終わる) →数時間後にアプリに結果 24h/48h陰性証明がないと生活上不便が多い 場所コードをスキャンしないと中に入れない →人の動きが記録→濃厚接触は健康コードが黄色になる 人口1700万人の深センで陽性10人で不穏になる 陽性者が出たマンションは封鎖など (弁当宅配はできるので生活はできる)
  • 11. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ オープンイノベーションの素地? M5Stackで製品企画→設計→販売 広すぎるプリント基板工場 (大規模化で少量多品種に対応) 社外のリソースも積極的に活用 「系列」「下請け」という 概念がない 深セン速度を支えるインフラ 少量多品種にも充分に対応 • 会ったらすぐWeChat(微信)交換→すぐ連絡 (人ごとに連絡方法を考えなくていい) • 「最近のことはわからん」というエンジニアには 会ったことがない • 「社会の成長」が、すべての根源のような気はする
  • 12. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 我々は中国とどう付き合うのがいいか? 確かに政治体制など、とっつきにくい面があるのは 事実 世論調査では、対中感情が悪いほうが圧倒的に多い 技術やビジネスの現場ではあまり感じたことがない 特に若い世代は、挑戦に貪欲 「日本が中国に勝つには」は、たぶん愚問 →「日本が中国とどうつきあうか (どう利用するか)」が得策 「漢字が読める」というアドバンテージは 圧倒的(論文、技術資料など) 「この先生きのこれるか」を欧米人はすぐに読めない ある日突然届いたSMS ぱっと見で、だいたい意味はわかる
  • 13. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 全体的にエンジニア不足 半導体設計の大卒初任給は1000万円程度 学生はよく勉強している =「社会の成長」を実感できる、のも大きい? 「儲かるから」 >> 「面白いから」の傾向?
  • 14. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ エンジニアもよく勉強している 「系列」の概念がない=多様な経験を積む 「最近のことはわからない」という人は皆無 とはいえ、特に”STEAM教育“が活発でもない Makerバブルの名残で「DIY」という言葉は普及 電子工作ホビイストは人口比で見ると少ない 华强北には「秋月電子」はない MakerFaire Shenzhenも「ビジネス寄り」 中国の「ものづくり」は、あくまでもビジネス文脈とみるのが自然
  • 15. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国でみた半導体業界 中国には3000社以上の半導体メーカ (大半はファブレス) 最先端SoCから安価な互換IC、ディスクリート半 導体まで、企業の幅は非常に広い ファブもいくつかある 米国の(アンフェアな)規制(EUV等)から、 5nmクラスは量産できなくなっているが、 SMICが7nm量産など徐々に内製化へ進んでい る EDAツールはCadence等が主流 180nm〜65nm程度の、 やや古めのプロセスがアツい
  • 16. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ やや古めの技術の半導体(1) 低価格の汎用品や互換品 基本、レッドオーシャン市場 差別化や方案公司としてトータル設計 STmicroのSTM32F030と、その互換マイコン(明らかに別設計)
  • 17. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ やや古めの技術の半導体(2) 市場のニーズをうまく捉える/新たな市場を 開拓している製品 無線通信SoC、電源管理SoCなど 少量多品種のSoC市場が成立している Bluetoothイヤホン専用SoC 空間オーディオDSP、LiPo充電、 タッチ検出など必要機能が一式 (65nmプロセス、別フラッシュのSiP) 写真提供:高須正和氏
  • 18. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中国/深センの科学技術政策 役人はよく技術を勉強して、 「技術が活躍するのに必要な政策」を考える 例)RISC-V研究開発2億円以上に20%補助金、半 導体材料40%、国産EDは70%、国産チップにも売 上に応じて補助金(現在、バブコメ募集中) https://www.ithome.com/0/645/898.htm LSI関係のマネージャ給与の20%補助金 LSI関係の外国人技術者のビザや生活優遇 LSI関係の学校創立に4億円補助 IP購入に20%補助金 自社チップ販売額の15%補助金
  • 19. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 国・メーカにとってのオープンソース 全方向、活発に攻めている ハイエンド・ローエンド 大企業・中小企業 政府のバックアップ 技術国産化&貿易戦争回避の観点から、 オープンソースのRISC-Vに期待 以前から国産CPU・国産OSに熱心だったが、 国営企業だからか、いまいち市場でみかけない  TRO・・・いやなんでもないです
  • 20. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ アカデミアも参入している 包云岗氏(中科院计算所副所长、北京开源 芯片研究院首席科学家)など AIoTの時代、半導体/SoCへの要求も細分化 中国のスマホアプリは449万種類、 半導体もそうなる(すでに会社数は3000社以上) 詳しくは: https://github.com/kaiyuanshe/CNOSSTranslationJP/blob/main/translation/20221008_RISCV_SZ_Publiccomment.md
  • 21. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 中小企業にとってのRISC-V 少量・多品種がファブ的に可能に RISC-VをコアにもつSoC 用途は幅が広い Bluetooth、マイニング、・・・
  • 22. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ 大企業にとってのRISC-V Alibaba、Huawei等が半導体子会社をもつ Alibaba→T-Head(平头哥)(2018) 玄铁(XuanTie)シリーズ:単純制御用ローエンド からLinuxが動くハイエンドまで 参考:https://gihyo.jp/dev/serial/01/china-oss-frontline/0008
  • 23. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ かつての日本と実は似ている? 垂直統合が進む(設計→製造→製品) SunのSPARC-Java-NetworkComputerに 通じるものもありそう 内需の比率がかなり多い 官製オープンイノベーション (かつてのDRAM組合のようだ) (たぶん大きな)違い: クラウド、それにつながるIoTもセットで開発 GitHub等でデータ公開&issue/プルリクでオー プンに改善を進めるスタイル
  • 24. 2022/12/4 Interface Device Laboratory, Kanazawa University http://ifdl.jp/ まとめ 中国・深センの最近の様子 基本的に、活気がある 「成長」を実体を伴って実感できるのが大きそう 若い人も、そうでない人も「老けてない」 オープンソースの活用 行政も着目し、強力にバックアップ =「やらない言い訳」がない 大企業も中小企業もRISC-Vに着目し活用 かつての日本企業のように垂直統合が進む