1. 超高層大気の長期変動を研究するため
のインフラ整備の概要について
新堀淳樹
京都大学生存圏研究所・特定研究員
宇宙地球惑星科学若手会
夏の学校2011
2011/09/12-14

2. 0. 基本データ
所属：京都大学生存圏研究所
生年月日：1976年6月27日
役職：特定研究員
出身：神奈川県鎌倉
⇒正月は鶴岡八幡宮に人が大
勢集まる(観光地)
1．趣味：旅行、鉄道関係、自然観察
映画鑑賞、野球観戦など多数
2. 好きな言葉：何事も為せばなる
3. 出身高校：神奈川大学付属中・高
等学校(私立)(1989-1995)
授業履修方法が大学に類似(遊
びすぎた高3時代)
自己紹介-1
京都で開かれた国際会議のバンケット
中に撮った舞子さんとIUGONETメン
バーとの集合写真(2011/09/06)
私は前列の左側

3. 自己紹介-2
4. 地球物理学を志した理由
1986年11月の伊豆大島の噴火を実体験(小4)
→地球のダイナミックな運動・現象に感動、そし
て興味を持つことになった
地震計・磁力計データを眺めていた?
5. 現在の研究・職務内容
大学や研究機関に分散して存在する超高層大気地上観測データを効率的
に検索・取得するためのインフラの整備
主に、太陽、電磁気、気象分野のデータ整備
1986年11月21日16:15(JST)
当初は地震・火山に興味をもって東北大学に2年かけて無事に入
学
研究室選びでじゃんけんに負けて地震・火山の研究室には入れず、宇宙
空間を研究する宇宙地球電磁気学の研究室に入った(やりたいテーマの
変更)
→やる気・根気があればOK
しかしながら
…

4. 地球大気圏の上下間結合
◎温室効果ガスの影響
対流圏の温暖化
超高層大気の寒冷化
◎極域現象
オーロラ帯へのエネ
ルギー流入と熱圏加
熱
極域から赤道域に設置した各種地上観測器による広い領域での風速・プラ
ズマ・温度などの観測からより正確な気候変動のシグナルを検出し、地球
大気の大規模な振る舞いの定量化が必要

5. プロジェクトの目的と参加メンバー
参加機関・組織
 大学や研究機関に分散して存在する超高層大気地上観測データを効率的
に検索・取得するためのインフラを整備する
 IGY以来の国際共同観測事業で蓄積された多様かつ膨大な観測データ
(アナログ・デジタル)の流通
 分野横断型のデータ解析による超高層大気長期変動研究の進展
名大
STEL
国立極地
研究所
東北大
PPARC
京大
天文台
RISH
WDC
九大
SERC
地磁気研究
コミュニティ
磁気圏研究
コミュニティ
赤道大気研究
コミュニティ
太陽物理学
コミュニティ
地磁気研究
コミュニティ
極域研究
コミュニティ
電磁気圏研究
コミュニティ

6. IUGONET参加機関の観測ネットワーク
スバールバル
ISレーダー
流星レーダー
オーロラ観測 飯館・女川観測所
SuperDARNレーダー
昭和基地
SuperDARNレーダー２台
MFレーダー
オーロラ観測
地磁気多点観測網
昭和・女川ELF 同時観測
飛騨天文台
ペルー国立イカ大学
北海道HFレーダー
（観測範囲）
トロムソ
ISレーダー
流星レーダー
MFレーダー
アイスランド
オーロラ観測所 （２点）
地磁気観測所 （３点）
フレアモニタ望遠鏡
太陽磁場活動望遠鏡
惑星シンクロトロン電波望遠鏡
Equatorial Atmosphere Radar
EISCATレーダー
フラックスゲート磁力計システム
MAGDAS観測点
赤道大気観測所
赤道大気レーダー

7. プロジェクト概要
京大
生存研
京大
理・附属天文台
京大 理・地磁気センター
大学間・研究者
間の連携強化
観測DB
(+解析ソフ
ト)
極地研
名大
STE研
地磁気研究
コミュニ
ティ 赤道大気研究
コミュニティ
国内・海外の
一般ユーザー
他の地球惑星科
学分野へ展開
太陽物理学
コミュニ
ティ
電磁気圏研究
コミュニティ
極域研究
コミュニ
ティ
磁気圏研究
コミュニ
ティ
九大
宙空研
地磁気研究
コミュニ
ティ
XML
XML
XML
XML
XML
XML
XML
メタデータDB超高層大気科学
バーチャル情報拠点
衛星、数値モデル
データへの拡張
東北大
PPARC
多様かつ膨大な量の
観測データが各研究
機関に分散して存在
メタデータのデータベースを
構築し、ネットワーク上で情
報を共有する
各機関が所有する観測
データの可視化・解析
ツールの開発も行う
メタデータ（メタ情報）
のデータベースで横
断検索を可能に
分野を横断したデータ
の総合解析による新し
い研究を促進

8. メタデータの検索方法
<メタデータの検索システム>
日時による検索
例: 2006/12/01 – 2006/12/31 の範
囲でデータがあるもの
キーワードによる検索
データの名前、観測器の名前、観測器の種類
(地磁気、レーダーなど)、また観測領域(電離
圏、成層圏、など)をキーにして検索できる
観測領域の緯度・経度
範囲の条件検索
例: 緯度60-70N, 経度
200-250Eを観測してい
た機器のデータ
出力データの指定
http://search.iugonet.org/iugonet/

9. メタデータの種類と意味
 各研究リソースを別々のxmlファイルとし
てアーカイブ
 他にもRegistry, Service, Documentなどの
カテゴリーのメタデータもある
<?xml version="1.0"
encoding="UTF-8"?>
<NumericalData>
…
<?xml version="1.0"
encoding="UTF-8"?>
<DisplayData>
…
<?xml version="1.0"
encoding="UTF-8"?>
<Catalog>
…
データセットを記述
<?xml version="1.0"
encoding="UTF-8"?>
<Observatory>
…
地上観測サイト・観測衛星
<?xml version="1.0" encoding="UTF-
8"?>
<Granule>
…
個々のデータファイル
<?xml version="1.0"
encoding="UTF-8"?>
<Instrument>
…
観測機器
<?xml version="1.0"
encoding="UTF-8"?>
<Person>
…
研究者など人的リソース
<?xml version="1.0"
encoding="UTF-8"?>
<Repository>
…
実データDB
<メタデータのカテゴリー>

10. 解析ソフトの利用法
○異なる大気層間の相関に関
する発見的研究が促進され
る？
異種データが検索できる
並列プロットも可能
○古いデータの発掘、DB整備
も行われる
より長期の変動に対する
解析研究可能
○長期変動という見方でデー
タを見る
間欠イベントをたくさん
見ることで特性を抽出
< 統合解析ソフトでどのような研究が可能になるか？>
地磁気指数
柿岡地磁気
昭和地磁気
EAR
電離圏
流星
コトタバン
MF
パムンプク
2005/08/24-31

11. 解析ソフトとその使い方
< TDAS (THEMIS Data Analysis Software suite) >
1. 開発元
・UCB, UCLA
2. 言語
・IDL（太陽・地球惑星科学分
野で広く使われている。）
3. データのファイルフォーマット
・CDFフォーマット
4. 特徴
・時系列データの表示・解析に
強い。
・初心者向けのGUI機能があり。
・ERG衛星ミッションの解析ソ
フトウェアとして、採用が決
定。
・IDL Virtual Machineで解析
http://themis.ssl.berkeley.edu/

12. 解析ソフトとその使い方
< TDAS/UDAS の特徴>
データーのダウンロード～読み込みが非常に簡単
たった3つのコマンドだけでプロットまでできる
> timespan, ‘yyyy-mm-dd’, 13(日数)
> thm_load_○○○
> tplot, △△△
ユーザーのPC
TDAS/UDAS
on IDL
ローカル
HDD
ユーザーは、データファイルがどこにあるかを気にせずに解析できる
データをIDL上
にtplot変数と
してロード
自動でディレ
クトリを作成
し、整理して
保存
SSL Berkeley
THEMIS, GBO
データサーバー群
CDAWeb
OMNI, ACE, Wind
etc.
WDC, Kyoto
Dst, AU/AL
Tohoku U
NIPR
STEL, Nagoya U
RISH, Kyoto U
SERC, Kyushu U
インターネット越
しに自動ダウン
ロード
(by http)
日時、欲しいデータ
種を指定するだけで、
①－③を自動実行
①
③
②

13. 解析ソフトとその使い方
データロード画面(最新版)
地磁気指数・観測装置の選
択
現在では、以下の項目が選
択可となっている
1．境界層レーダー
2．EAR(対流圏・電離圏)
3．地磁気(fluxgate)
4．地磁気指数
5．飯舘宇宙電波望遠鏡
6．下部対流圏レーダー
7．流星レーダー
8．流星レーダー
9．信楽MUレーダー
10． SuperDARN
データプロッ
ト・ロードの日
付範囲を指定
<GUIを用いたデータ解析・プロット>

14. IUGONETアウトリーチ活動
 ホームページの管理、進捗情報等の更新
 日本地球惑星科学連合大会における団体展示
 プロジェクトのパンフレットの更新
 SNS(Social Networking Service)を利用したアウトリーチ活動
JpGU2011における団体展示(5/22-27)の様子

15. IUGONETアウトリーチ活動
研究集会等のアナウンスやプロ
ジェクトに関連する内容について
つぶやく
MDBや解析ソフトのチュートリ
アル等の動画コンテンツをアーカ
イブ
http://twitter.com/#!/iugonet http://www.youtube.com/user/iugonet

16. まとめ
○超高層大気の長期変動に関する研究を推進するためのインフ
ラ整備することを目的としてメタデータベースの作成、検索シス
テム・解析ソフトの開発を行っている。
〇メタデータベース検束システムの一般公開
1. ベータ版に対する各ユーザーからの意見に従った改良・追加
開発を行い、今年度末の正式版を完成させる予定である。
2. 以下のアドレスにアクセスして、改良点や追加点等の意見を
言ってほしい。
http://search.iugonet.org/iugonet/
〇解析ソフト開発と一般公開
1. 現在、IUGONETで整備・登録している観測データについて
解析が可能
以下のURLからダウンロード可能(ただし、IDLがPCインス
トールされていることが必要条件)
http://www.iugonet.org/software.html

17. 結びの言葉-1
一流で、かつすばらしい分野横断的な地球物理学の研究を進
めていくにはどうしたらよいか？
①基礎学力=研究対象とする分野の基
礎事項、物理法則・原理
英語の読み書き、(listening,
speaking)
②素直さ
=過去に構築された基礎概念、枠組
みにとらわれずに観測データ等
を観察できるか?
⇒たいていの科学者の場合、過去
に構築された基礎概念に合わな
い結果を無視してしまう
◎真実を写し出すのはやはり観測
データ!!
思わぬものを偶然発見しよう
③多種多様なことへの好奇心・興味
自分の研究分野以外のことを少し
覗いてみよう
⇒思わぬヒント(未知の問題解決策)
が転がっている場合も!?
④人との出会いと会話力
=人の集まる場所(学会・研究会)に
は貴重な情報が多く集積
⇒積極的に学会等に参加していろ
いろな研究者と議論しよう
⇒⇒将来、信頼のできる先生・先
輩・後輩が多くできます
⑤豊かな感性、大きな器、忍耐力、執
念、決断力

18. 結びの言葉-2
全体像を統一的に解釈する基本原理の理解
基本原理の欠陥部分の存在
=部品はかなりあるが製品へ
の組み立て方がわからない
現代の研究では、細
分化されているので、
いかに適切な素材を
見つけるかがカギ
知識量×創造力
基本原理の理解
過去の研究の時代
背景・問題点
多種多様なことに興味を持つこ
と
(研究分野以外も含めて)
目的以外のことでの偶然の大発
見
思わぬものを偶然発見する能力
人との出会い
学会・研究会・夏の学校の利
点を最大限に生かしましょう
足し算でないことに注
意
非線形
応答

19. 超高層大気変動に関連した代表的な現象
〇地磁気日変化
磁気的静穏時の地磁気変化
= Sq (Geomagnetic Solar daily Quiet
variation)
[原因]
電離圏高度の中性風によって駆動
される電離圏電流
Matsushita, 1975

20. 超高層大気変動に関連した代表的な研究例
Elias et al., JGR, 2010
Rishbeth, PSS, 1992
1960 2001
Hermanous
●Sq振幅の増加：9.9%(Her)
地磁気変化に伴う増加：7.0%(Her)
●温室効果ガスによる電離圏の影響
CO2の量：200%増
⇒電離圏電子密度:5%増
〇これまでの地磁気日変化の長期トレンドの研究
地球温暖化による電離圏変動がSq場の変動に存在する可能
性 400
340
280
160
100
220
500
400
300
200
-90 -60 -30 0 30 60 90
100
太陽活動極大期
太陽活動極小期

21. 本発表の趣旨
[問題点]
○使用している地磁気観測点の長期解析の不足
○分野間の観測データを用いた統合解析の不足
○解析手法やそれに至る仮定の問題
〇これまでの問題点と目的
[目的]
IUGONETプロジェクトから提供される長期の地磁気と熱圏・
中間圏の風速データを用いて、全球的なSq場の振幅の長期変
動の要因を明らかにする
(1) 多点の地磁気観測点や熱圏風速の長期データ解析
IUGONETで開発したメタデータ検索と解析ソフトを基に研究推進の効率
(2) 解析手法の改良
地磁気静穏日の閾値の具体化(Kp指数の利用)
太陽活動依存性の指としてF10.7フラックスを利用

22. 超高層大気の上下間結合
〇太陽活動と超高層大気変動との関わり
22
磁力計
太陽活動による地球大気の
応答を調べることは、
○気候変動
○惑星大気
の理解へとつながる

23. プロジェクトの目的と参加メンバー
参加機関・組織
 東北大学理学研究科附属惑星プラズマ・大気研究センター
小野 高幸、寺田 直樹、加藤 雄人、笠羽 康正、岡野 章一、熊本 篤志、坂野井 健、
三澤 浩昭、米田 瑞生 (鍵谷 将人)
 国立極地研究所
佐藤 夏雄、中村 卓司、宮岡 宏、岡田 雅樹、冨川 喜弘、田中 良昌、元場 哲郎 (田所 裕康)
 名古屋大学太陽地球環境研究所
藤井 良一、荻野 竜樹、三好 由純、堀 智昭、大塚 雄一、 河野 貴久[7月より東大へ]
 九州大学宙空環境研究センター
湯元 清文、池田 大輔、阿部 修司
 京都大学生存圏研究所
津田 敏隆、林 寛生、新堀 淳樹、橋口 典子
 京都大学理学研究科附属地磁気世界資料解析センター
家森 俊彦、能勢 正仁、藤 浩明、竹田 雅彦、小山 幸伸 (吉田 大紀)
 京都大学理学研究科附属天文台
柴田 一成、上野 悟、金田 直樹
 大学や研究機関に分散して存在する超高層大気地上観測データ
を効率的に検索・取得するためのインフラを整備する
 IGY以来の国際共同観測事業で蓄積された多様かつ膨大な観測データ
(アナログ・デジタル)の流通
23
 分野横断型のデータ解析による超高層大気長期変動研究の進展