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問題提起: 学びとICT活用
堀 良彰
horiyo@cc.saga-u.ac.jp
佐賀大学 全学教育機構
自然科学部門 /
情報通信技術活用教育支援室
2014年佐賀大学
先進的ICT活用教育支援シンポジウム
1
学びの本質=自発性・内発性:
関心・意欲が無ければ始まらない
☆『学ぶ=自ら考え、自分の脳の中に考えを創るこ
と』
• 「真似る」ことから始まるが、その知識・技能を
身に付け使うことができる為には、『能動的活
動』が必要
• 得た知識を自分のものにする「編集」作業が必要
→『深い議論』の必要性
→「表現することによる学び」、
「教えた人が一番良く内容を理解する」
反転授業・討論式授業の有効性の根拠
2近藤弘樹氏メモより
おぼえる vs わかる
3
時間経過
わ
か
る
時間経過
お
ぼ
え
る
お
ぼ
え
た
わ
す
れ
た
わすれる
わかっている
わかった
重苦しい
つらい
明るい!
楽しい
やる気になる
なんだったんだ?
知
ら
な
い
知
ら
な
い
佐伯 胖, “学びの構造”, 東洋館出版社(1975)より
可逆的
非可逆的
平和を教える
歴史から学ぶ
そうだったのか!
経験を通して信じる
わかるとは?
• 「わかる」とは「わからないところがわか
る」ことである
• 「わかる」とは「絶えざる問いかけを行う」
ことでもある
• 「わかる」とは、「無関係であったもの同士
が関連づいてくる」ことでもあろう
• 「わかる」とは、死にいたるまでわかりつづ
けていくことなのであり、また、「ますます
深く、ますます広く」わかりつづけていくこ
となのである
4
佐伯 胖, “学びの構造”, 東洋館出版社(1975)より
学力…学ぶ力
• 教育 … 可能性を信じて行う働きかけ
• 教育への期待 … 学力の向上
• 教育の方法 … 2つの立場
–系統学習 … 学問の体系に従って教育を
行う
• 主体的な学びとなり得るか
–問題解決学習 … 思考錯誤の過程そのも
のが学習
• 話し合いや作業に時間を要す、場当たり的に5
知識と系統的学び
人類がわかっていること
(人類が)わかっていることのうち有用
なことは、先人によって学びやすいよう
に体系づけられている
= 教科書として書かれた本
・○○学の授業
人類がわかっていないこと
未知
既知
学んでいる人が有している知識
問題解決型の学び
わかっていること
実社会の問題の解決を通して
新たにわかること
社会では教科書や参考書のない
問題に取り組まねばならない
わかっていないこと
未知必要に応じて学ぶ
(要求に基づく知識習得)
課題解決のための道具
(知識)への気づき
既知
情報通信技術(ICT)革命とは
• 「人は、群れをつくり助け合って文明を築いて来た」
– 現代は、人の群れがグローバル(地球規模)になる時代
• 「助け合いは、言葉を中心とするコミュニケーションが支えてい
る」
– 学問も、自然や社会を言葉で記述し、法則を見出し、法則の体系を作っている.
– 場所と時間を越えて伝えあったもの.
• 「ICT革命は、コミュニケーションを、場所と時間を超えて、飛躍
的に発展させる」
– コンピュータは、言葉を高速に処理する機械.
– ネットワークは、言葉を高速・大量に伝える.
• ネット社会は、リアルな(現実の)人間社会の反映
• 人々の助け合いも増幅するが、人間社会の歪みも増幅
→ネット社会のマイナス面を減らすように対応が必要
– 『ネット社会のいじめへの対応は、リアル社会での深い話し合いが有効であ
る』
• 「人は、人とのコミュニケーションに生きる喜びを感じる性質を
持っている」
8近藤弘樹氏メモより
「生き抜く」(=生命の本質)
• 学び=生き抜くための道具
• 生き抜く(=生命の本質)
– 人は、他の生物を食べなければ生きて行けない
→人の間でも、「他者より優位に立ちたい」という
欲求があり、勢力争い、他人の蹴落とし、に
行きがち
– 人は群れをつくり、その中で助け合って来た
→人々の協働には、「お互いが納得したルール
の下でのフェアな競争が必要」 (近藤)
9
近藤弘樹氏メモより
『学び合い教え合う仲間づくり』
• 人の「助け合い」を学びの場につくる
– 対象分野: 「学び全般」も「ネットの利活用」も
– システム: 個人が持つ「生き抜く力」を「助け合いの中で実
現」する
• 競争は人の『助け合い』の一形態である
– 「競争は相手を尊重する」 対比:「勢力争いは相手を陥れる
→ モラル・ルールに依る理性的制御が必要
← 人は、他者より優位に立ちたい、という欲求を持っている
• 情報交流: 「仲間(群れ)が情報交流の意味で、社会に開
かれている必要がある」
– 情報交流があれば仲間の健全性が保たれる
– 仲間が社会から見守られている状態
10
近藤弘樹氏メモより
あなたは世界の人、知識と向き合っています
近藤弘樹氏提供
あなたは世界の人、知識と向き合っています
近藤弘樹氏提供
あなたは世界の人、知識と向き合っています
近藤弘樹氏提供
近藤弘樹氏提供
これまでにない新たな学びを
可能にする ICT
• 時間空間の制約を超えて知識へアクセス
– 面白そうなものがどこにあるのか?
• ICT活用以前は、せいぜい自分が目にできる書籍しかなかっ
た。せいぜい百科事典や図書館
• 学びにおける他者の影響
– 物理的に出会うことのない人のメッセージを直接得
ることを可能に
• この人すごい。すごい人がいるんだな。この人のようになり
たい。
• 自分と異なる経験を有する人の感性に触れる
• いろいろな教材にアクセス可能に
– 自分に合う教材を入手 14
コミュニケーションにおけるディ
ジタルメディアの特徴
• (時間経過や伝達により)情報が変化しな
い・なくならない
• 消したくても消えない
– 間違いが許されない
• 文字で伝えることができる情報は限られる
– 相手の真意を把握するのが困難な場合も
いずれも我々が直感的に理解と乖離している
 とまどい
リスクになることも
15
リスクから守られるべき子供
• リスク: 犯罪に巻き込まれる、悪意あるも
ののターゲットとなる、etc.
• 子供のプライバシ保護
– 日本は欧米に比べるとプライバシ保護の制度整備
が遅れていることを認識する必要あり
• 児童オンラインプライバシー保護法(COPPA, 1998,
2013(改正), USA)
• 一般データ保護規則案中の児童プライバシ保護(2012,
EU)
• オンライン上の児童の保護に関する理事会勧告(2012,
OECD)
16
ICT関係デバイスの活用を支える
情報基盤整備
• 使うべき時に使える必携デバイス
– 電源確保
– 故障対策
• 必携デバイスを支える情報システム
– 教材共有と利用(学習者側、教員側)
– 校務・学務支援
• ストレスなく使用できる無線LAN環境
17
この後の講演
13:40 ~ 14:10
ICT と情報モラル・マナーの観点から
渡辺 律子(ハイパーネットワーク社会研究所)
14:10 ~ 14:40
ICT を活用した生徒と先生の上手なつながり方
吉永 伸裕(佐賀県立有田工業高等学校)
15:00 ~ 15:30
学習者用端末の運用とセキュリティ
上原 哲太郎(立命館大学)
18
課題、心配な点?
• 課題や心配な点は共有を
– 「これは問題ではないか?」と考えたあなた
こそ動くべき
• 課題解決のための問いを
• 我々自身の学びがここに
19

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