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にゅう

ぼ

さつ

ぎょう

ろん

入 菩 薩 行 論
菩 薩 の 生 き 方 へ の 手 引
(Bodhisattvacharyavatara : A Guide to the Bodhisattva's Way of Life)
寂天菩薩 (Acharya Shantideva) 著 土山仁士 現代超訳

第八品 靜慮

(第八章 瞑想[1])

1.發起精進已 意當住禪定 心意渙散者 危陷惑牙間
精進を始めた私は意識を集中するべきであり、意識が散漫な人は煩悩の牙の間に
危うく陥りそうになります。
【執着や怒り等の煩悩は無意識的に発生するが、意識的に思いやりや忍耐といった
理性を発生させてコントロールすることができる。意識を集中し常に自分の心や感情
を監視、自己中心的又は破壊的な方向へ向かわないように制御する必要がある】

2.身心若遠離 散亂即不生 故應捨世間 盡棄諸俗慮
もし心身が執着を捨て悟りの境界にあれば、即座に乱心は生じません。ですから、
世間を捨てるべきであり、諸々の世俗の考えを破棄し尽くすべきです。
【執着とは自己中心的であり、偏っており、視野が狭く、近視眼的であり、主観的で
あり、相手の態度に左右され、自分だけの幸せを望む心のことである。執着は自分
にとって都合が良い内は機能するが、都合が悪くなると怒りや憎しみに変わるので、
非常に危険である。執着の原因は相互依存の無知である】

3.貪親愛利等 則難捨世間 故當盡棄彼 隨智修觀行
貪欲、愛着、物質的利益等があるため、世間を捨てるのは難しいです。ですから、
これらを破棄し尽くすべきであり、智者に従い観察・分析の瞑想法を身につけます。
【貪欲、執着、傲慢などの自己中心的な心を滅却するために、観察・分析瞑想が役
に立つという趣旨】

4.有止諸勝觀 能滅諸煩惱 知已先求止 止由離貪成
一点集中した観察・分析の瞑想により、諸煩悩を滅却できます。先ず、一点集中の
瞑想法を身につけるべきであり、それは貪欲から離れることによって達成できます。
【諸煩悩とは自己中心的な心と怒りや憎しみなどの破壊的感情であり、これらを滅
却するために一点集中瞑想法をマスターする必要があるという趣旨】

2013
Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
5.自身本無常 猶貪無常人 縱歷百千生 不見所愛人
自分自身は変化しており、相変わらず貪欲な無常人です。何百回何千回もの人生
を経験しても、愛すべき人に出会えません。
【自分は数え切れないほどの輪廻転生を通して変化し続けているが、それでも貪欲
を滅却できていないことを認識している】

6.未遇則不喜 不能入等至 縱見不知足 如昔因愛苦
未だ(愛すべき人に)出会えないことをとりもなおさず喜んでおらず、心を落ち着かせ
ることができません。たとえ出会えたとしても満足せず、昔のように愛着によって苦
しむでしょう。
【貪欲を捨て切れない自分に不満であり、もし貪欲を捨てられたとしても次は執着に
苦しむことを予言している】

7.若貪諸有情 則障實性慧 亦毀厭離心 終遭愁嘆苦
貪欲な心を持つ生きものは、本質を見極めることに支障があり、不愉快で反抗的な
心に悪口を言い、最終的には悲しみに遭い嘆き苦しみます。
【貪欲という自己中心的な心によって視野が狭くなり近視眼的になることより、本質
の見極めができなくなり、欲求不満の心に苦しむことを認識している】

8.若心專念彼 此生將虛度 無常眾親友 亦壞真常法
もし、心が自分のことばかり念じるなら、人生は虚しいものになります。永久ではな
い親戚や友人たちは、真に永久である法(ダルマ)を破壊します。
【自分だけの幸福を望んで祈ることは虚しく、逆に幸福にはなれない。法とは仏陀が
悟り、説いた永久不変の真理だが、これを永久ではない周囲の人々が破っている】

9.行為同凡愚 必墮三惡趣 心欲赴聖境 何需近凡愚
いい加減で愚かな行為をすると、必ず三悪の世界(地獄・餓鬼・畜生)へ堕ちます。
心が聖なる境地へ赴きたいなら、いい加減や愚かさに何の意味があるでしょうか?
【悪行を積むと地獄へ行くことになるので、天国に行きたいなら悪行を積むべきではな
いという趣旨】

10.剎那成密友 須臾復結仇 喜處亦生瞋 凡夫取悅難
一瞬の内に親友になり、次の瞬間には仇になる。喜ぶべきところで怒りを生じる愚
かな人を悦ばせるのは何と難しいことでしょう。
【執着は相手の態度に依存しているので、自分に対する相手の態度が否定的にな

2013 Hitoshi
Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
ると一瞬で怒りに変わり相手を敵とみなすようになる。従って、執着した人への対応
は困難であるという趣旨】

11.忠告則生瞋 反勸離諸善 若不從彼語 瞋怒墮惡趣
愚かな人は忠告をされれば怒りを生じ、反って諸々の善いことから離れることを勧
めます。もし、彼の言うことに従わないなら、彼は怒って悪の世界へ堕ちます。
【愚かな人は他人の忠告を聞く耳を持たず、自分の言う通りにならないと怒る】

12.妒高競相等 傲卑讚復驕 逆耳更生瞋 處俗怎得益
愚かな人は自分より上位の者には嫉妬し、同等の相手とは競い、下位の者には傲
慢になり、称賛されるとうぬぼれ、耳障りなことには怒りを生じます。このような世俗
ではいかに利益を得られるのでしょうか?
【嫉妬、過度な競争、傲慢、驕り、怒りは全て苦しみの原因となる煩悩であり、無知
から生じる自己中心的な心に基づいている。愚かな人が多い世俗は煩悩で溢れて
いるため、幸福になるのが極めて困難であるとの指摘であるが、いつの時代も同じ
である。無知を叡智へ、利己心を利他心へ変容する精神革命が解決策であろう】

13.伴愚必然生 自讚毀他過 好談世間樂 無義不善事
愚かさに伴って、自我自讃、他人軽視、世間の娯楽や非道で善くない事を好んで話
すこと等が必然的に生じます。
【愚かな人は自分が一番で特別だと思っており、その言動は道を踏み外している】

14.是故近親友 徒然自招損 彼既無益我 吾亦未利彼
身近な親戚や友人にも同様に振舞いますので、しみじみ自分が損失を招くのです。
相手が自分に利益をもたらさないので、私もまた相手を利することはありません。
【愚かな人は身近な人達にも同様の言動をするので、誰からも見放されており損を
するという趣旨】

15.故應遠凡愚 會時喜相迎 亦莫太親密 善繫君子誼
いいかげんで愚かな人とは距離をおくべきですので、会う時は喜んで相手を迎えて
も、あまり親密になってはならず、君子との関係のように繋がるのが肝要です。
【愚かな人と親密になるのは危険であり、距離を置くべきであるという助言】

16.猶如蜂採蜜 為法化緣已 如昔未謀面 淡然而處之
ちょうど蜜を採る蜂のように、法(ダルマ)のために見知らぬふりをして、昔一度も会
ったことがないかのように、淡々と取りさばきます。

2013
Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
【愚かな人に対しては感情的にならず、淡々とした態度で接するべきであるという教
え】

17.吾富受恭敬 眾人皆喜我 若持此驕慢 歿後定生懼
自分には尊敬だけでなく富もあり、人々は皆自分に好意を持っているというような驕
りと傲慢をもし持っていたなら、死後きっと恐怖に襲われるでしょう。
【死後、自分に対する尊敬や好意ではなく、自分の富に対する関心であったことに
気付いて人間が恐ろしくなるという趣旨。驕りと傲慢があると人間の本音を見抜けな
い】

18.故汝愚癡意 無論貪何物 定感苦果報 千倍所貪得
あなたの愚かで無知な心は、言うまでもなくどんな物に対しても貪欲であり、きっと
貪欲で得たものの千倍の苦しみを報いとして受けるでしょう。
【貪欲によって富を手に入れたとしても、その千倍の苦しみを味わうという教え】

19.故智不應貪 貪生三途怖 應當堅信解 法性本應捨
貪欲によって三悪道の恐れが生じるので、智者は貪欲に応じず、捨てるべき本性で
あると堅く信じ理解しています。
【賢者は貪欲の誘惑を拒み、捨てるべきだと確信している】

20.縱吾財物豐 令譽遍稱揚 所集諸名利 非隨心所欲
私には豊かな財産、名誉、高名がありますが、どのような名声や利益を集めようとも、
あの世へ持っていくことはできません。
【物質的価値はどれほど多く集めても、墓場へは持っていけないという教え】

21.若有人毀我 讚譽何足喜 若有人讚我 譏毀何足憂
もし、私の悪口を言う人がいれば、称賛されても喜べるでしょうか?もし、私を称賛
する人がいれば、悪口を言われてもつらくなれるでしょうか?
【一人でも別の評価をする人がいれば、もう一方の評価を信じきれないものである】

22.有情種種心 諸佛難盡悅 何況劣如我 故應捨此慮
生きものの様々な心を仏達ですら悦ばせるのが難しいなら、私のような劣る者にで
きるはずがありません。なぜなら、その考えを捨てるべきだからです。
【生きものの心を悦ばそうとする考えは困難なので捨てるべきである】

23.睥睨窮行者 詆毀富修士 性本難為侶 處彼怎得樂
2013
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窮した修行者を横目でにらみつけ、富んだ修行者をけなすような、連れにするには
本性が気難しすぎる人がいかに喜びを得られるでしょうか?
【困窮者には上から目線、富裕者には下から目線で見る人は自己中心的であり、幸
せとは縁遠い】

24.如來曾示 凡愚若無利 鬱鬱終寡歡 故莫友凡愚
如来は以前、いいかげんで愚かな者は利益がなければ憂鬱になり決して喜ばない
ので、友達になるべきではないと言いました。
【経済的価値のみを求める愚かな人はお金にしか関心がないので、友達になるべき
ではないという助言】

25.林中鳥獸樹 不出刺耳音 伴彼心常樂 何時共安居
林の中の鳥や獣や木々は耳を刺すような音は出しませんし、一緒に居ると心は常
に楽しいので、いつから共に気楽にのんびり暮らすこととしましょうか?
【一緒にいるのが常に心地よい相手と共に暮らすのが一番いいという助言】

26.何時住樹下 岩洞無人寺 願心不眷顧 斷捨塵世貪
木々の下や洞窟の無人の寺に住んでいた時は、ひいきしない心を願い、汚れた世
俗の貪欲を思いきって捨てました。
【偏らず、貪欲を捨てる修行をしている様子】

27.何時方移棲 天然遼闊地 不執為我所 無貪恣意行
自然のままのはるかに遠い広い地で、自分のために固執することなく、貪欲もなく自
分の思うままに行動できる所へいつから移り住むこととしましょうか?
【執着や貪欲を持たずに生きられる世界で住みたいという願望】

28.何時居無懼 唯持缽等器 匪盜不需衣 乃至不蔽體
いつから恐れることなく、ただ托鉢用の器を持って、誰も着たくない服を身につける
か、身を隠さないで居られるでしょうか?
【恐れずに恥じることなく、ぼろ布をまとって托鉢できるか自問している】

29.何時赴寒林 觸景生此情 他骨及吾體 悉皆壞滅法
いつ自分が埋葬される墓地へ出発し、この感情を生じる景色に触れることができる
でしょうか?他人の骨と自分の体は皆壊滅することになっています。
【自分の死をいつ受け入れることができるようになるか自問している】

2013
Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
30.吾身速腐朽 彼臭令狐狼 不敢趨前嚐 其變終至此
私の体は速く腐朽し、その臭いは狐にすら敢えて近づかないように命じ、それまでと
は別の状態になります。
【自分の死体が腐敗した状態を想像している】

31.孑然此一身 生時骨肉連 死後各分散 更況是他親
孤立したこの体は骨と肉が連なった時に生じ、死後それぞれが分散しますが、他人
や親戚にもまた同じことが起こります。
【人間の体は骨と肉からできていることを想像している】

32.生既孤獨生 歿復獨自亡 苦痛無人攤 親眷有何益
一人で生まれ、また一人で死んでゆきますが、苦痛を共有してくれる人はいません
ので、親しい身内が何の役に立つでしょうか?
【人間は苦痛を共有してくれる他人を期待できないという趣旨】

33.如諸行路客 不執暫留舍 如是行有道 豈應戀生家
因縁の和合によって作られるこの世の一切の事物・現象は道行く旅人のようなもの
であり、しばし一箇所には留まらず、条件付けられた道を行くように、どうして生まれ
た家を思いこがれることがあるでしょうか?
【この世の出来事は自分の過去の行動と置かれた状況によって生じ、次から次へと
流れてゆくという趣旨】

34.不待眾親友 傷痛且哀泣 四人掮吾體 及時赴寒林
親友達が苦痛で傷つき哀しみ泣くのを待たずに、四人に担がれた私の体は寒々と
した林へ赴くことになります。
【自分の体が修行のため林へ運ばれる様子】

35.無親亦無怨 隻身隱山林 先若視同死 歿已無人憂
親しい人も怨む人もおらず、ほんの少し身体が山林を隠しているだけですので、もし
死人と間違えられたなら、人のいない憂いの中で私は死ぬかもしれません。
【誰も知人のいない山林での修行を心細く思っている】

36.四週既無人 哀傷或為害 故修隨念佛 無人擾令散
既に四週間、哀しみ傷つき、危害を加える人がいませんので、仏陀の姿や徳を心中
に思い浮かべながら修行ができ、騒がしく気を散らす人はいません。

2013
Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
【誰にも邪魔されずに修行ができている様子】

2013年4月21日 土山仁士

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  • 2. 5.自身本無常 猶貪無常人 縱歷百千生 不見所愛人 自分自身は変化しており、相変わらず貪欲な無常人です。何百回何千回もの人生 を経験しても、愛すべき人に出会えません。 【自分は数え切れないほどの輪廻転生を通して変化し続けているが、それでも貪欲 を滅却できていないことを認識している】 6.未遇則不喜 不能入等至 縱見不知足 如昔因愛苦 未だ(愛すべき人に)出会えないことをとりもなおさず喜んでおらず、心を落ち着かせ ることができません。たとえ出会えたとしても満足せず、昔のように愛着によって苦 しむでしょう。 【貪欲を捨て切れない自分に不満であり、もし貪欲を捨てられたとしても次は執着に 苦しむことを予言している】 7.若貪諸有情 則障實性慧 亦毀厭離心 終遭愁嘆苦 貪欲な心を持つ生きものは、本質を見極めることに支障があり、不愉快で反抗的な 心に悪口を言い、最終的には悲しみに遭い嘆き苦しみます。 【貪欲という自己中心的な心によって視野が狭くなり近視眼的になることより、本質 の見極めができなくなり、欲求不満の心に苦しむことを認識している】 8.若心專念彼 此生將虛度 無常眾親友 亦壞真常法 もし、心が自分のことばかり念じるなら、人生は虚しいものになります。永久ではな い親戚や友人たちは、真に永久である法(ダルマ)を破壊します。 【自分だけの幸福を望んで祈ることは虚しく、逆に幸福にはなれない。法とは仏陀が 悟り、説いた永久不変の真理だが、これを永久ではない周囲の人々が破っている】 9.行為同凡愚 必墮三惡趣 心欲赴聖境 何需近凡愚 いい加減で愚かな行為をすると、必ず三悪の世界(地獄・餓鬼・畜生)へ堕ちます。 心が聖なる境地へ赴きたいなら、いい加減や愚かさに何の意味があるでしょうか? 【悪行を積むと地獄へ行くことになるので、天国に行きたいなら悪行を積むべきではな いという趣旨】 10.剎那成密友 須臾復結仇 喜處亦生瞋 凡夫取悅難 一瞬の内に親友になり、次の瞬間には仇になる。喜ぶべきところで怒りを生じる愚 かな人を悦ばせるのは何と難しいことでしょう。 【執着は相手の態度に依存しているので、自分に対する相手の態度が否定的にな 2013 Hitoshi Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 3. ると一瞬で怒りに変わり相手を敵とみなすようになる。従って、執着した人への対応 は困難であるという趣旨】 11.忠告則生瞋 反勸離諸善 若不從彼語 瞋怒墮惡趣 愚かな人は忠告をされれば怒りを生じ、反って諸々の善いことから離れることを勧 めます。もし、彼の言うことに従わないなら、彼は怒って悪の世界へ堕ちます。 【愚かな人は他人の忠告を聞く耳を持たず、自分の言う通りにならないと怒る】 12.妒高競相等 傲卑讚復驕 逆耳更生瞋 處俗怎得益 愚かな人は自分より上位の者には嫉妬し、同等の相手とは競い、下位の者には傲 慢になり、称賛されるとうぬぼれ、耳障りなことには怒りを生じます。このような世俗 ではいかに利益を得られるのでしょうか? 【嫉妬、過度な競争、傲慢、驕り、怒りは全て苦しみの原因となる煩悩であり、無知 から生じる自己中心的な心に基づいている。愚かな人が多い世俗は煩悩で溢れて いるため、幸福になるのが極めて困難であるとの指摘であるが、いつの時代も同じ である。無知を叡智へ、利己心を利他心へ変容する精神革命が解決策であろう】 13.伴愚必然生 自讚毀他過 好談世間樂 無義不善事 愚かさに伴って、自我自讃、他人軽視、世間の娯楽や非道で善くない事を好んで話 すこと等が必然的に生じます。 【愚かな人は自分が一番で特別だと思っており、その言動は道を踏み外している】 14.是故近親友 徒然自招損 彼既無益我 吾亦未利彼 身近な親戚や友人にも同様に振舞いますので、しみじみ自分が損失を招くのです。 相手が自分に利益をもたらさないので、私もまた相手を利することはありません。 【愚かな人は身近な人達にも同様の言動をするので、誰からも見放されており損を するという趣旨】 15.故應遠凡愚 會時喜相迎 亦莫太親密 善繫君子誼 いいかげんで愚かな人とは距離をおくべきですので、会う時は喜んで相手を迎えて も、あまり親密になってはならず、君子との関係のように繋がるのが肝要です。 【愚かな人と親密になるのは危険であり、距離を置くべきであるという助言】 16.猶如蜂採蜜 為法化緣已 如昔未謀面 淡然而處之 ちょうど蜜を採る蜂のように、法(ダルマ)のために見知らぬふりをして、昔一度も会 ったことがないかのように、淡々と取りさばきます。 2013 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 4. 【愚かな人に対しては感情的にならず、淡々とした態度で接するべきであるという教 え】 17.吾富受恭敬 眾人皆喜我 若持此驕慢 歿後定生懼 自分には尊敬だけでなく富もあり、人々は皆自分に好意を持っているというような驕 りと傲慢をもし持っていたなら、死後きっと恐怖に襲われるでしょう。 【死後、自分に対する尊敬や好意ではなく、自分の富に対する関心であったことに 気付いて人間が恐ろしくなるという趣旨。驕りと傲慢があると人間の本音を見抜けな い】 18.故汝愚癡意 無論貪何物 定感苦果報 千倍所貪得 あなたの愚かで無知な心は、言うまでもなくどんな物に対しても貪欲であり、きっと 貪欲で得たものの千倍の苦しみを報いとして受けるでしょう。 【貪欲によって富を手に入れたとしても、その千倍の苦しみを味わうという教え】 19.故智不應貪 貪生三途怖 應當堅信解 法性本應捨 貪欲によって三悪道の恐れが生じるので、智者は貪欲に応じず、捨てるべき本性で あると堅く信じ理解しています。 【賢者は貪欲の誘惑を拒み、捨てるべきだと確信している】 20.縱吾財物豐 令譽遍稱揚 所集諸名利 非隨心所欲 私には豊かな財産、名誉、高名がありますが、どのような名声や利益を集めようとも、 あの世へ持っていくことはできません。 【物質的価値はどれほど多く集めても、墓場へは持っていけないという教え】 21.若有人毀我 讚譽何足喜 若有人讚我 譏毀何足憂 もし、私の悪口を言う人がいれば、称賛されても喜べるでしょうか?もし、私を称賛 する人がいれば、悪口を言われてもつらくなれるでしょうか? 【一人でも別の評価をする人がいれば、もう一方の評価を信じきれないものである】 22.有情種種心 諸佛難盡悅 何況劣如我 故應捨此慮 生きものの様々な心を仏達ですら悦ばせるのが難しいなら、私のような劣る者にで きるはずがありません。なぜなら、その考えを捨てるべきだからです。 【生きものの心を悦ばそうとする考えは困難なので捨てるべきである】 23.睥睨窮行者 詆毀富修士 性本難為侶 處彼怎得樂 2013 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 5. 窮した修行者を横目でにらみつけ、富んだ修行者をけなすような、連れにするには 本性が気難しすぎる人がいかに喜びを得られるでしょうか? 【困窮者には上から目線、富裕者には下から目線で見る人は自己中心的であり、幸 せとは縁遠い】 24.如來曾示 凡愚若無利 鬱鬱終寡歡 故莫友凡愚 如来は以前、いいかげんで愚かな者は利益がなければ憂鬱になり決して喜ばない ので、友達になるべきではないと言いました。 【経済的価値のみを求める愚かな人はお金にしか関心がないので、友達になるべき ではないという助言】 25.林中鳥獸樹 不出刺耳音 伴彼心常樂 何時共安居 林の中の鳥や獣や木々は耳を刺すような音は出しませんし、一緒に居ると心は常 に楽しいので、いつから共に気楽にのんびり暮らすこととしましょうか? 【一緒にいるのが常に心地よい相手と共に暮らすのが一番いいという助言】 26.何時住樹下 岩洞無人寺 願心不眷顧 斷捨塵世貪 木々の下や洞窟の無人の寺に住んでいた時は、ひいきしない心を願い、汚れた世 俗の貪欲を思いきって捨てました。 【偏らず、貪欲を捨てる修行をしている様子】 27.何時方移棲 天然遼闊地 不執為我所 無貪恣意行 自然のままのはるかに遠い広い地で、自分のために固執することなく、貪欲もなく自 分の思うままに行動できる所へいつから移り住むこととしましょうか? 【執着や貪欲を持たずに生きられる世界で住みたいという願望】 28.何時居無懼 唯持缽等器 匪盜不需衣 乃至不蔽體 いつから恐れることなく、ただ托鉢用の器を持って、誰も着たくない服を身につける か、身を隠さないで居られるでしょうか? 【恐れずに恥じることなく、ぼろ布をまとって托鉢できるか自問している】 29.何時赴寒林 觸景生此情 他骨及吾體 悉皆壞滅法 いつ自分が埋葬される墓地へ出発し、この感情を生じる景色に触れることができる でしょうか?他人の骨と自分の体は皆壊滅することになっています。 【自分の死をいつ受け入れることができるようになるか自問している】 2013 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.
  • 6. 30.吾身速腐朽 彼臭令狐狼 不敢趨前嚐 其變終至此 私の体は速く腐朽し、その臭いは狐にすら敢えて近づかないように命じ、それまでと は別の状態になります。 【自分の死体が腐敗した状態を想像している】 31.孑然此一身 生時骨肉連 死後各分散 更況是他親 孤立したこの体は骨と肉が連なった時に生じ、死後それぞれが分散しますが、他人 や親戚にもまた同じことが起こります。 【人間の体は骨と肉からできていることを想像している】 32.生既孤獨生 歿復獨自亡 苦痛無人攤 親眷有何益 一人で生まれ、また一人で死んでゆきますが、苦痛を共有してくれる人はいません ので、親しい身内が何の役に立つでしょうか? 【人間は苦痛を共有してくれる他人を期待できないという趣旨】 33.如諸行路客 不執暫留舍 如是行有道 豈應戀生家 因縁の和合によって作られるこの世の一切の事物・現象は道行く旅人のようなもの であり、しばし一箇所には留まらず、条件付けられた道を行くように、どうして生まれ た家を思いこがれることがあるでしょうか? 【この世の出来事は自分の過去の行動と置かれた状況によって生じ、次から次へと 流れてゆくという趣旨】 34.不待眾親友 傷痛且哀泣 四人掮吾體 及時赴寒林 親友達が苦痛で傷つき哀しみ泣くのを待たずに、四人に担がれた私の体は寒々と した林へ赴くことになります。 【自分の体が修行のため林へ運ばれる様子】 35.無親亦無怨 隻身隱山林 先若視同死 歿已無人憂 親しい人も怨む人もおらず、ほんの少し身体が山林を隠しているだけですので、もし 死人と間違えられたなら、人のいない憂いの中で私は死ぬかもしれません。 【誰も知人のいない山林での修行を心細く思っている】 36.四週既無人 哀傷或為害 故修隨念佛 無人擾令散 既に四週間、哀しみ傷つき、危害を加える人がいませんので、仏陀の姿や徳を心中 に思い浮かべながら修行ができ、騒がしく気を散らす人はいません。 2013 Copyright © 2013, Hitoshi Tsuchiyama. All rights reserved.