地球研オープンチームサイエンスプロジェクトの会議資料 https://openteamscience.jp/

1. 首都大学東京 都市環境科学研究科
大澤 剛士
<arosawa@tmu.ac.jp>
人が繋ぐ研究と実践
透明性が担保する
倫理的衡平性
2019/8/4 OpenTS Meeting＠広島大学

2. 研究と実践の隔たり
どちらもチーム（サイエンス）
アプローチに似て非なる点
排他的ではない
チーム内で混在してもよい

3. 研究と実践の隔たり
保護区選定や保全労力の配分に関する研究論文のうち、
まったく現場に反映されなかった比率
Knight et al. (2008) Conservation Biology 22:610-617
2/3

4. 研究と実践の隔たり
Impact Factor
Sutherland et al. (2011) PLoSONE 6(11):e27537
Impact Factorと現場における利用性との間に
負の相関関係

5. 研究と実践の隔たり
(自然環境に関する)実務は、
研究者とは別の価値観で動いている
アカデミアにおける意義が主導で
実務が動くことは、現状まずあり得ない
大澤・赤坂（2012）雑草研究 58:22-28
大澤・上野（2017）日本生態学会誌 67: 257-265
大澤ほか（2019）保全生態学研究 24: 135-149
学
術
実
務
いらすとや

6. 研究と実践の隔たり
Research–Implementation Gap
研究と実践の隔たり
Knight et al. (2008) Conservation Biology 22:610-617
大澤・赤坂（2012）雑草研究 58:22-28
研究者 政策決定者、土地管理者 etc
研究者は、この存在を
認めなければいけない！
これが第一歩
いらすとや

7. 研究と実践の隔たり
どうやれば研究と実践は繋がるのか？
ダ鳥獣ギ画

8. 研究と実践の隔たり
小さな事例ができました。
ここから倫理的衡平性を考えてみます。
ダ鳥獣ギ画

9. 研究と実践の隔たり
これに関する管理計画立案、実践
＠大分県玖珠郡九重町
オオハンゴンソウ （特定外来生物）
Rudbeckia laciniata L.

10. 研究と実践の隔たり
市民参加調査の結果が
行政資料に掲載
生物多様性ここのえ戦略

11. 研究と実践の隔たり
実践に向けた管理計画地図が作成大澤・川野（2019）保全生態学研究 24: 135-134.

12. 研究と実践の隔たり
継続的な実践により、
徐々に成果が出てきている駆除の様子：川野智美氏提供

13. 研究と実践の隔たり
Osawa et al.（2017）A crowdsourcing approach to collecting
photo-based insect and plant observation records.
Biodiversity Data Journal 5: e21271
（市民によるデータ収集）
大澤剛士・川野智美（2019）特定外来生物オオハンゴンソウ
（Rudbeckia laciniata L.）のマルチスケールでの管理計画立案
―広域的な管理方針地図と詳細な作業計画地図の作成―.
保全生態学研究 24: 135-134.
（現地における管理優先度付け）
学術論文も出ました

14. 研究と実践の隔たり
ダ鳥獣ギ画
いくつかのきっかけと、
繋いでくれる人がいました

15. OpenTSへの位置づけ
- 倫理的衡平
- ずらし
- 可視化
- 対話
オープンサイエンス
学術の知識生産
システムの開放
超学際研究(TD)
へだたりをこえて
つながる
オープン
チームサイエンス

16. OpenTSへの位置づけ
倫理的
衡平
Ethical Equity
千客万来(inclusive) 来る者拒まず、去る者追わず
多様な主体の参加をうながし、
その潜在能力を引き出す(empowerment)
非対称(搾取)の構造を極力排除する
ずらし
Transcend
一緒に取り組む目標へ位相し、行動を起こす
対立点はずらせばいいし、道筋は複数あってよい
可視化
Visualization
言説やデータを見える化して共有する
• アンケート, 半構造化インタビュー,
GIS, オントロジー(共通語彙),
グラフィックレコーディング など
対話
Dialogue
対等な立場で互いの意見を聞き、考えを深める(Bohm 1996)
• ハテナソン(質問づくりワークショップ),
アンカンファレンス(当日論題設定型ワークショップ) など

17. OpenTSへの位置づけ
倫理的
衡平
Ethical Equity
互いのメリットの担保
ずらし
Transcend
目的と手段の明確化、最終ゴールは共有
可視化
Visualization
課題の視覚化、互いの利害の視覚化、共有
対話
Dialogue
現場で課題にぶつかっている方々との関係構築

18. 研究と実践の隔たり
これまでの歩み

19. 研究と実践の隔たり
ダ鳥獣ギ画
（大澤・赤坂 2007 保全生態学研究 12:151-155）
（大澤・赤坂 2009 保全生態学研究 14:37-43）
http://osawa.nomaki.jp/（Akasaka, Osawa Ikegami 2015 Urban Ecosys.18: 1021-1030）
演者はもともと本種の研究＆
アウトリーチをやっていました

20. 研究と実践の隔たり
富士通FIPの協力を得て実施
（http://jp.fujitsu.com/group/fip/）
大澤ほか (2013) 保全生態学研究 18:157-165.
市民参加型調査の
ツール開発もやっていました
※オープンデータ化を前提
として各地にツール提供

21. 研究と実践の隔たり
大分県玖珠郡九重町
ウチあの花増えて困っ
てまんのや。ちと知恵
貸してもらえまへん？
大澤
あ、えーっすよ。
お役に立てるなら
喜んで
ダ鳥獣ギ画
これらの公表がきっかけで
お声がかかりました

22. 研究と実践の隔たり
助言という形で講演会＆現地視察を
やらせてもらいました
ダ鳥獣ギ画

23. 研究と実践の隔たり
多くの場合、まあ一席やって
おしまいになるのですが・・・

24. 研究と実践の隔たり
大分県玖珠郡九重町
大澤
色々動きました。
次の手打ちたいんで
また来てくれまへん？
あ、えーっすよ。
ええとこでしたし
喜んで
ダ鳥獣ギ画
1回で終わらず、継続的に
声を掛けてもらいました

25. 研究と実践の隔たり
（現在は閉鎖）
提供したツールで
網羅的な調査を実施
※データはオープンデータなので活用歓迎

26. 研究と実践の隔たり
提供した資料を参考に
普及啓発パンフを作成、広く配布

27. 研究と実践の隔たり
大分県玖珠郡九重町
大澤
行政施策に入れたいんで
相談乗ってくれまへん？
あ、えーっすよ。
いい感じになって
嬉しいっすわ
ダ鳥獣ギ画
どんどん進む実務に圧倒されつつ
年1度程度ですが通いました

28. 研究と実践の隔たり
市民参加調査の結果が
行政資料に掲載

29. 研究と実践の隔たり
大分県玖珠郡九重町
大澤
いい季節になってきたんで
そろそろ行きます
おー待ってます
ええ店見つけましたんで
ダ鳥獣ギ画

30. 研究と実践の隔たり
仕事というより個人的な関係が形成
現地の方々と信頼関係が出来てきました

31. 研究と実践の隔たり
継続的な実践により、
徐々に成果が出てきている駆除の様子：川野智美氏提供

32. 研究と実践の隔たり
・インターネット上に情報を掲載したことで
先方からコンタクトあり（オープン化の効用）
・実際に現場を動かしたのは現地の方。
演者はたまに行って情報提供しただけ。
（全て現地の方の功績）
・データがオープンだからできること多数
（オープン化の効用）
・継続性、それに伴う現地との信頼関係が鍵だった

33. 昨日の議論に当てはめる
対話により
・もはや個人的な信頼関係
可視化され
・問題の可視化
・互いの求めるものの可視化
ずらし方が明確化され
・行政施策への実装
・具体的な管理計画（論文化できる）
倫理的衡平が担保された
・互いにメリットが得られた

34. 議論に向けて
ダ鳥獣ギ画
メリットの明確化に必要な信頼関係
メリットとゴールを共有する視覚化、ずらし、
これにより、倫理的衡平が担保される？