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講義「DICフレーム:コア・ケイパビリティ表現の基本的枠組み」
- 1. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN 1
DICフレームを用いた中核能力定義が
経営資源開発にひらめきをもたらす
名古屋工業大学
産学官連携センター
加藤雄一郎
中核能力表現の基本的枠組み
- 2. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
講師略歴
<学歴>
東京工業大学大学院 社会理工学研究科
価値システム専攻 博士課程修了. 博士(学術)
2003 / 04 -- 広告会社 アクティベーションデザイン推進局 客員研究員
2007 / 04 -- 建機メーカー BMアドバイザー、およびミドルマネジメント研修講師
2017 / 01 -- 産業機器メーカー 事業価値創造プロジェクト アドバイザー
2015 / 04 – 2016 / 09 自動車部品メーカー 価値創造プロジェクト アドバイザー
2011 / 08 -- 2013 / 10 電子機器メーカー BM(ブランドマネジメント)プロジェクト アドバイザー
2009 / 12 -- 2011 / 10 自動車メーカー インターナル・ブランディング アドバイザー
2009 / 08 – 2010 / 04 自動車部品メーカー インターナル・ブランディング アドバイザー
2009 / 04 – 2010 / 03 コンタクトレンズメーカー インターナル・ブランディング アドバイザー
2008 / 07 -- 2009 / 06 化学メーカー 人財育成プログラム 「創塾」 塾長
2006 / 10 -- 2007 / 03 食品メーカー ブランドコンセプト立案アドバイザー
2005 / 10 -- 2007 / 03 トイレタリ・メーカー 新任マネジャー研修講師、および調査手法開発アドバイザー
2004 / 10 -- 2006 / 03 総合商社 プロジェクト担当顧問
2003 / 08 -- 2005 / 03 中小企業庁 繊維産業再生プロジェクト ディレクター
<職歴>
1992 - 93 食品会社 食品工場 製造技術課
1995 - 03 広告会社 マーケティング局
2003 - 15 名古屋工業大学大学院 産業戦略工学専攻 准教授
2015 - デミング賞審査委員
<企業からの委託実績>
加藤 雄一郎
2
名古屋工業大学 産学官連携センター 特任教授
- 3. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
競争力強化に向けて内部資源に着目することの重要性
3
競争優位を考える上で最も貴重な資源は
単独の資源ではなく、資源の束・資源の集合体(スーパー・リソース)である
企業の持続的成長と利益獲得に向けて重要なことは
具体的にどのようなケイパビリティやリソースを選択し、構築するか
という資源の戦略的選択と構築
(D.J.Collis and C.A.Montgomery, 2009: 延岡, 2006)
(藤本, 2004; D.J.Collis and C.A.Montgomery, 2008)
(G.Stalk, P.Evans and L.E.Shulman, 2008; 青島・加藤, 2003)
競合他社から真似されない持続的な差別化を実現し
企業が継続的な業績を獲得するためには、
経営資源やケイパビリティ(能力)を最良かつ最適に積み上げる必要がある
<疑問>
新たな経営資源を創造する際の拠り所は何か?
- 4. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
企業の競争力の階層
4
統合化された経営資源
(組織能力)
組織
パフォーマンス
(裏の競争力)
市場
パフォーマンス
(表の競争力)
市場シェア
・売上
(収益力)
表層的
・組織全体が持っている様々な仕組みが
非常に複雑に絡み合ったシステム
・企業が固有に持つ有形無形に資源と、
それを活用する能力やプロセス
例) ジャストインタイム、リーン生産システム等
組織が製品・サービスを生み出すためのパフォーマンス
例) 生産性や開発スピード等
顧客の評価に基づくパフォーマンス
例) 顧客の知覚した品質、価格(QCD)等
深層的
顧客が評価した結果の表れ
例) 売上高、市場シェア、株価等
裏の競争力を鍛え上げて表の競争力を高めることの重要性が説かれている
表の競争力から裏の競争力を考えるアプローチは
わが国製造業、さらには技術経営に馴染まないと考えられている
○
×
(藤本,2004; 延岡,2006)
藤本(2004)、延岡(2006)を参考に発表者作成
- 5. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
問題意識
5
統合化された経営資源
(組織能力)
組織
パフォーマンス
(裏の競争力)
市場
パフォーマンス
(表の競争力)
表層的
深層的
統合化された経営資源
(組織能力)
組織
パフォーマンス
(裏の競争力)
市場
パフォーマンス
(表の競争力)
表層的
深層的
事業が目指す
ありたい姿
企業価値
○
×
ボトムアップアプローチの偏重は
能力蓄積の歴史に囚われて事業発展機会を自ら失う恐れはないか?
表の競争力と裏の競争力を繋ぐ接点を開発することによって
既有能力を尊重しつつ、新たな経営資源の示唆を得られないか?
- 6. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
競争力向上に向けた新たな着想
6
統合化された経営資源
(組織能力)
組織
パフォーマンス
(裏の競争力)
市場
パフォーマンス
(表の競争力)
表層的
深層的
統合化された経営資源
(組織能力)
組織
パフォーマンス
(裏の競争力)
市場
パフォーマンス
(表の競争力)
表層的
深層的
【新たな着想】
顧客と共に自分達は“どうありたいのか”という観点から
深層レベルのあり方を考える新たな着想
ステークホルダーのうち、企業価値向上に最も寄与する存在は「顧客」と「従業員」
企業価値向上は、長期的展望に立った彼らとの良好な顧客関係性によって齎される
【これまでの考え方】
顧客や従業員など
「企業価値向上に寄与
する利害関係者」が
将来期待と共創欲求を
喚起することの重要性
事業が目指す
ありたい姿企業価値
- 7. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
解決に向けた突破口
7
統合化された経営資源
(組織能力)
組織
パフォーマンス
(裏の競争力)
市場
パフォーマンス
(表の競争力)
表層的
深層的
【新たな着想】
事業が目指す
ありたい姿
表の競争力と裏の競争力を繋ぐ接点の開発
中核能力の規定
要するに自分たちは
総力を結集してどのような力を発揮すべきか?
組織一丸となって発揮すべき
中核的な総合能力は何か?
- 8. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
中核能力を規定する新たな枠組み
8
企業固有の
価値基準
中核能力
各 種 経 営 資 源
事業が
目指す理想
帰納的
アプローチ
演繹的
アプローチ
DICフレーム
Deductively-Organized & Inductively-Generated Capability
中核能力
- 9. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
各ボックスの内容
9
【価値基準】
我々が目指す理想(=A)は
Bを実現すること
我々は理想Aの実現に向けて
要件Cを満たす中核能力を発揮する
要素技術やノウハウ、システム、知識など
上記の要件Cを満たす中核能力発揮に寄与する各種要素
Bを実現する鍵は
要件Cを満たすこと
【理想】
【中核能力】
【経営資源】
Deductively-Organized & Inductively-Generated Capability
- 11. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
実際に起こること
11
要素技術やノウハウ、システム、知識など
上記の要件Cを満たす中核能力発揮に寄与する各種要素
【経営資源】
【価値基準】
事業が目指す理想
価値観
【理想】
発揮すべき
中核能力
いま発揮中の
中核能力 ≠
「演繹的に導かれた中核能力」と「帰納的に導かれた中核能力」は
往々にして一致しない
【現在の中核能力】 【望ましい中核能力】
- 12. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
中核能力のギャップを埋める動機こそが重要
12
要素技術やノウハウ、システム、知識など
上記の要件Cを満たす中核能力発揮に寄与する各種要素
【現在の中核能力】
【経営資源】
【価値基準】
事業が目指す理想
価値観
【理想】
【望ましい中核能力】
発揮すべき
中核能力
いま発揮中の
中核能力 =
だからこそ、両者を一致させるべく
新たな経営資源の必要性に気づく
新規資源
の必要性
- 13. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
DICを用いた資源蓄積の考え方
13
理想実現に向けて
発揮すべき中核能力
いま発揮している
中核能力
<ギャップを解消するための方策>
1) 現行資源のどれをどれだけ高めるか?
2) 新規にどのような経営資源を蓄積するか?
現在発揮中の
中核能力
経営
資源
経営
資源
経営
資源
理想
今後発揮すべき
中核能力
価値基準
「問題解決」の枠組みで経営資源開発の示唆が得られる
- 16. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step1.特徴的な経営資源を選定する
16
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会の理想
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
当事業が保有する主要な経営資源をリストアップし、その中から特徴的なものを転記します。
なお、ここでいう経営資源は、技術やノウハウ、システム、知識など各種シーズがすべて該当します。
【解説】
- 17. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step2.帰納法で中核能力を定める
17
DICフレームに転記した「当事業が保有する特徴的な経営資源」をもとに
帰納的に中核能力を定めます
【解説】
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会の理想
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
- 19. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step3.ビジョンを定める
19
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会の理想
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
ビジョンはいわば、御社が描く「物語」です。物語には、複数の登場人物がいます。「主人公」と「主人公に関わる様々な脇
役」がいます。当事業が最も喜ばせたい主人公を設定し、その主人公にどう在ってほしいのかを描いてください。主人公になりう
るのは、「生活者」、「企業」、「産業界」、「国・地域社会」などの、人(あるいは人々)です。写真やイラストなどを添付していた
だくとより一層深みが増します。自著の推奨になってしまい恐縮ですが、もしよろしければ「ブランドマネジメント―究極的なありた
い姿が組織能力を更に高める」に詳述されていますので第8章をご参考になさってください。
【解説】
- 20. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step4.潮流を読む
20
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会の理想
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
【解説】
前出のビジョンを掲げるみなさんは、これからの時代をどう読んでいますか?ビジョン実現までの道のりは非常に長いです。その
間に潮流の大きな変化がありえます。P(法規制など)、E(経済)、S(社会動態)、T(技術革新展望)など広い視点から、今
後の潮流として当事業が着目すべきことをリストアップしてください。また、単に項目を並べるだけでなく、それら項目から導かれる
ポイントを必ず付記してください。マインドマップを用いて検討すると効果的です。
【注】 本来、当該ボックスは当該事業が組織として有する「価値基準(物事を解釈する際のルール)」を記すのですが、価値基準そのものを記そうと
すると思考停止に陥るケースが散見されるため、初回トライアルでは「価値基準という名のフィルター」を介した着目事項を記すことにいたしましょう。
- 21. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step5.演繹法で中核能力を定める
21
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会の理想
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
ビジョンからみた今後の潮流をふまえ、当事業が発揮すべき能力を演繹的に定めます。すでにStep2で帰納的に中核能力が
定められていますが、その表現内容はあくまで現有経営資源に基づき帰納的に定めたものにすぎず、当該ステップ(Step5)の
演繹的な中核能力の表現としてそのまま使用できるものではありません。むしろ、「帰納的な中核能力設定」と「演繹的な中核
能力設定」はそれぞれ異なる表現になってしかるべきです。本ステップはアプローチ1「帰納的な中核能力設定」とは切り離して
ご検討ください。
【解説】
- 23. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step6.アプローチ違いによる中核能力表現の差異を認識する
23
帰納的に定めた
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会の理想
演繹的に定めた
中核能力
≠
ここまでのところで「帰納的アプローチ」と「演繹的アプローチ」という2つのアプローチから中核能力設定を試みました。
前者は「有力パラメータに基づき、帰納的に設定された中核能力」であり、後者は「ビジョンからみた今後の潮流をふまえ、当
事業が発揮すべき能力」です。どちらも論理的な解釈が施されているわけですが、解釈に用いる材料はそれぞれのアプローチ
によって異なるため、解釈結果としての中核能力表現は当然異なります。そこで、「帰納的な中核能力」と「演繹的な中核能
力」を左右に明示的に並べ、双方が異なる表現内容になっていることを確認してください。
【解説】
- 24. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step7.2つの中核能力表現の接近を図る
24
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会や産業界の理想
演繹的に定めた
中核能力
前述のとおり、「帰納的な中核能力表現」と「演繹的な中核能力表現」はほとんどすべてのケースにおいて異なる表現になっ
ています。ここからの検討がいよいよ本丸です。2つの中核能力表現の接近を図ります。両者のバランスを取った表現は、「ビ
ジョンを起点に潮流を読み、当社の有力パラメータを用いて、当事業は具体的にどのような新たな達成事項を目指すか?」と
いう問いの答えこそ、両者のバランスを取ったDIC(演繹的かつ帰納的に導出された中核能力)なのです。
【解説】
帰納的に定めた
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
中核能力表現の接近を図る
- 25. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step8.DICフレームの完成
25
【潮流】
PEST分析に基づく
今後の時代変化
【ビジョン】
事業が目指す
社会の理想
中核能力
【経営資源】
当事業が保有する特徴的な経営資源
DICは考え続けるためのフレームです。
1か所を修正すれば、芋づる式に別箇所の修正必要性が生じます。
そうして修正を繰り返していくうちに、全体構造が洗練化されていきます。
【解説】
- 26. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
Step9.新・中核能力に基づく新製品・サービスの考案
26
構築されたDICフレームが「単に表すことが目的化した内容に留まっているか」あるいは「今後の更なる事業の発展に示唆をも
たらす内容になっているか」を見極めてみましょう。中核能力の更新がもたらす最大の効用は、「再定義された中核能力に基づ
く、今までにない新たな機能の考案」です。どのような機能を搭載したハード・ソフトをひらめくか試してみてください。せっかく中核
能力を定めたにもかかわらず、考案した新製品・サービスのアイディアが現行製品の延長線上の発想に留まっている場合、構
築されたDICは残念ながら「単に表現してみただけ」ということになります。再定義された中核能力を応用して、新たな機能を備え
た製品・サービスを考案してみてください。
【解説】
<製品名 又は サービス名>
<製品・サービスの概要>
<着目した顧客のDoニーズ> <中核能力を応用して、どのような新たな機能を考案したか>
- 28. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
DIC記入シート
28
PEST分析に基づく
未来課題
事業が目指す「社会の理想」
中核能力
当事業が保有する特徴的な経営資源
- 29. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
企業PRとしての活用
29
ビジョン: 事業が目指す「社会の理想」
上記のビジョンをもつ我々は、未来の潮流を以下のように読んでいます。たとえば、・・・、・・・・・・が挙げられrます。ま
た、・・・・・という観点から見た場合は、・・・・、・・・・・・・・・といったことも、ビジョンの実現に向けて着目すべき潮流といえ
るでしょう。以上の問題意識に基づき、我々は自らが取組むべき未来課題として次のことを考えています。
PEST分析に基づく未来課題
上記の未来課題を達成する上で、決定因となる中核能力は「○○を、●●●する」能力であると我々は考えています。
なぜなら、・・・・・だからです。
未来課題の達成に求められる中核能力
中核能力の根拠しての当事業保有資源
私たちが事業を通して見据える未来、
それは、・・・・
上記の中核能力を発揮するために、我々は、・・・・・、・・・・、・・・・・・・・ といったシーズを蓄積してまいりました。上述の
中核能力は、これら我々のシーズに裏打ちされたものなのです。
DICに記載した内容を用いると企業PR情報になります。
企業ウェブサイトやパンフレット等にご活用ください。
- 30. Nagoya Institute of Technology, BRAND DESIGN
講演、研修、社内プロジェクト等の
相談は下記にお問合せください
30
名古屋工業大学
産学官連携センター
加藤 雄一郎
kato.yuichiro@nitech.ac.jp