1. 若手アトツギ向け
新規事業基礎講座
（考え方編）
2021年3月13日
中本 卓利（Nakamoto Takuto）
一般社団法人ベンチャー型事業承継 エヴァンジェリスト

2. はじめに

3. 家業前提
本スライドはゼロからイチを生み出す起業のプロセスではなく、家業を持つ若
手アトツギが経営資源を活かして新規事業を生み出すプロセスに関して
書き記すものである。
ゼロからイチを
生み出す起業
家業の経営資源を
活かした新規事業

4. 新規事業の要素とは

5. 新規事業の要素とは
新規事業を始めるためにはアイデアに加え、チーム、プロダクト（製品やサー
ビス）、そして資金を揃える必要がある。もちろん、それらを推し進める若手
アトツギ自身も欠かせない。
アイデア チーム プロダクト 資金
1 2
若手アトツギ
3

6. スライドの進め方
以上の前提に基づき、本スライドは以下のように進める。
家業の経営資源を
活かした新規事業
アイデアの考え方
若手アトツギとして
新規事業の進め方
1 2
若手アトツギが秘める
新規事業への可能性
3
アイデアとして満たすべき要素は何
か。またそれらはどんな順番で考え
れば良いか。加えて要素毎に気を
付けるべき箇所について説明する。
家業として進めるには抵抗がある
中でどうやってアイデアをカタチにす
べきなのか。リソース制限下での取
り組み方について説明する。
中堅以上のアトツギではなく、何故
若手アトツギこそ新規事業に取り
組むべきなのか。若手アトツギが持
つ力について説明する。

7. 家業の経営資源を活かした
新規事業アイデアの考え方
1

8. 家業の経営資源を活かした新規事業アイデア
課題 解決策 経営資源
家業の経営資源を活かした新規事業アイデアは、以下三つの要素を満た
すものである。

9. 若手アトツギが
陥りやすいミス①
経営資源からアイデアを考える

10. 若手アトツギが
心掛けるべきこと①
課題からアイデアを考える

11. 家業の経営資源を活かした新規事業アイデア
課題 解決策 経営資源
家業の経営資源を活かした新規事業アイデアは、以下三つの要素を左か
ら順に考える必要がある。

12. 1.1 課題とは
課題とは、顧客のニーズである。「何かを解決したい」「何かを叶えたい」と
我慢できないほどに強く思う感情たちである。どれだけ家業の経営資源を活
かして解決策（製品やサービス）を作り上げたとしても、顧客にニーズがな
ければ売上が立つことはないため、課題から始めることが重要である。
課題 売上

13. 多い
少ない
軽
い
重
い
1.1.1 選ぶべき課題
課
題
の
重
さ
顧客の見込み数

14. 重
い
軽
い
多い
少ない
1.1.2 選ぶべき課題のメリット
課
題
の
重
さ
顧客の見込み数
①
②
①課題が重いメリット
顧客が高単価で購入する確率が高い
顧客が試作の製品やサービスを導入し
フィードバックを返してくれる確率が高い
②顧客が少ないメリット
競合が参入する確率が下がる
顧客獲得戦略の解像度が上がる

15. 1.2 解決策とは
解決策とは、課題を解決する製品やサービスである。製品やサービスを考
えてから課題を探すことも可能ではあるものの、それは鍵を作ってから鍵穴を
探すようなものであり難易度は極めて高い。
鍵を作ってから
鍵穴を探す
鍵穴を見つけてから
鍵を作る

16. 1.2.1 適切な解決策
適切な解決策であれば、顧客が製品やサービスを耳にしただけで詳細を聞
かせて欲しいと問い合わせも起こり得る。また試作の段階であったとしても喜
んで対価を支払う顧客が登場する可能性が高い。
*台詞引用 Futurama
https://www.syfy.com/futurama
Shut up and take my money！*
これ以上説明してなくてもいい！
今すぐその商品が欲しいんだ！
お金ならあるから持っていけ！

17. 1.3 経営資源とは
経営資源とは、事業に寄与する自社の資産である。ヒト・モノ・カネに加え、
取引先や信頼といった情報も含まれる。他社がお金で手に入れたり簡単に
模倣できないものが望ましい。ちなみに他社も資金調達も行えるためカネは
優位を築く条件となり辛い。
カネ
ヒト モノ 情報

18. 整理
家業の経営資源を活かした新規事業アイデアは、以下の三要素を左から
順に考えれば良い。そうすることで「誰も欲しがらない製品やサービスを作
り上げ、新規事業を失敗に終わらせる」というリスクを下げることが出来る。
課題 解決策 経営資源

19. 若手アトツギとして
新規事業の進め方
2

20. 若手アトツギとして新規事業の進め方
家業の経営資源を活かした新規事業アイデアを考案後、チーム作りやプロ
ダクト開発、資金調達などを進める必要があるものの、若手アトツギには新
規事業の足枷となる制限が存在する。以下三つが代表的なものである。
資金制限
人員制限 時間制限

21. 2.1 人員の制限とは
人員の制限とは、家業の人員を割けないことである。先代や古参社員から
アイデアへの賛同を得られなかったり、また若手アトツギが社内で人脈を築け
ておらず、社内の人員を新規事業に回せないことは稀ではない。
若手アトツギ 家業の人員

22. 2.2 資金の制限とは
資金の制限とは、家業の資金を割けないことである。先代や古参社員から
アイデアへの賛同を得られなかったり、 また若手アトツギが動かせる予算が限
られることから、新規事業に潤沢な資金を準備できないことは稀ではない。
若手アトツギ 家業の資金

23. 2.3 時間の制限とは
時間の制限とは、家業の時間を割けないことである。先代や古参社員から
アイデアへの賛同を得られなかったり、 また若手アトツギが既存業務で手一
杯であることから、業務時間中に新規事業に取り組めることは稀である。
家業の時間
若手アトツギ

24. 若手アトツギが
陥りやすいミス②
制限を取り払うため
社内を説得して家業で
取り組もうとする

25. 若手アトツギが
心掛けるべきこと②
社内の説得にこだわらず
家業外での取り組みを
選択肢に入れる

26. 2.4 家業外のメリット 其の一
家業外（家業の人員や資金や時間を割かず）で新規事業に取り組むこ
とは、顧客・解決策・経営資源に対する若手アトツギ自身の理解を深め、
また若手アトツギの想いに賛同する仲間の獲得にも繋がる。
若手アトツギ自ら顧客を掴まえる
若手アトツギ自ら製品やサービスを作る
若手アトツギ自ら仲間を募る
若手アトツギ自ら経営資源を活用する

27. 2.5 家業外のメリット 其の二
家業外で取り組むことで、制限と引き換えに他のメリットも生じる。
家業内 家業外
成功角度が高いアイデアしか取り組めない 成功するか分からないアイデアに取り組める
先代や古参社員の顔色を伺う必要がある 顧客と解決策にのみ集中することができる
家業内の関係各位に定例報告等が必要となる 家業内に関係者が少なく報告時間を削れる
失敗すると次のチャンスが中々に与えられない 失敗しても次のアイデアを自由に試せる

28. 補足
家業外での取り組みは、家業へ貢献出来ていることが大前提である。も
し仮に家業の既存事業と強い関わりを持っていなければ、家業外に傾倒し
て現経営陣の逆鱗に触れた暁には家業から追放の可能性もゼロではない。
家業へ貢献 家業外で
家業を疎か 家業外で

29. 整理
家業の経営資源を活かした新規事業アイデアは、家業外で取り組むこと
も一つの選択肢である。制限がある中で若手アトツギ自身が手と足を使い
小さく始めることで、有益な気付き学びや仲間を得ることができる。加えその
プロセスを通じ若手アトツギ自身の新規事業への本気度をも確かめられる。
資金制限
人員制限 時間制限

30. 若手アトツギが秘める
新規事業への可能性
3

31. 若手アトツギが
陥りやすいミス③
家業で長年研鑽を積まなければ
新規事業を立ち上げれない

32. 若手アトツギが
心掛けるべきこと③
家業での経験年数は問わず
若手の内に新規事業に取り組む

33. 若手アトツギが秘める新規事業への可能性
若手アトツギは、新規事業に寄与する三つの力を持つ。
応援を集める力
行動を重ねる力 変化を認める力

34. 3.1 行動を重ねる力とは
行動を重ねる力とは、若手故に取れる大量の行動である。年老いてしまう
と本業だけで精一杯で心も体も中々に動かせない。物事を成し遂げようと
する強い気力と昼夜問わず働ける溢れる体力は若手の特権である。
若手アトツギ
気力 体力

35. 3.2 応援を集める力とは
応援を集める力とは、若手故に応援を受けられることである。まだ何も出
来ないと思われがちな若手アトツギが夢や目標を掲げて一所懸命に努力
を重ねることでファンや味方が登場し始める。それらは若手アトツギのモチ
ベーション向上や新規事業のリソース確保にも繋がる。
若手アトツギ
ファン 味方

36. 3.2.1 応援を集める機会
応援を集める機会の一つとして、若手アトツギが家業の経営資源を活か
した新規事業アイデアをピッチする場が世の中には数多存在する。それら
を活用することで業界を横断した若手アトツギ同士の繋がりを得られたり、
また家業内からも思わぬ仲間を得たりすることもある。
アトツギ甲子園 https://atotsugi-koshien.jp/
スタ★アトピッチ Japan https://staatpitch.nikkei.co.jp/
アトツギピッチ https://atotugi34.peatix.com/

37. 3.3 変化を認める力とは
変化を認める力とは、若手故に持つ新しい取り組みへの柔軟性である。
家業の伝統として守られてきた既存のプロセスや文化や技術のみを是とせ
ず、社外のベストプラクティスから最先端のテクノロジーまでフラットな目線で
検討し、導入することが出来る。
若手アトツギ
ベストプラクティス テクノロジー

38. 3.3.1 変化の重要性
家業の既存のプロセスや文化や技術は家業成立当初にとっては合理的で
あったかもしれないが、時代の流れと共に不合理となっている可能性が高い。
世の中は常に変化し続けており、変化しないことは退化と同義である。
変化
肯定
若手アトツギ 業績好転へ
変化
否定
中堅以降のアトツギ* 業績低迷へ
*すべての中堅以降のアトツギがそうというわけではなく、あくまで傾向として

39. 3.4 若手アトツギと中堅以降のアトツギの比較
若手アトツギは中堅以降のアトツギに比べ新規事業への親和性が高い。
若手アトツギ 中堅以降のアトツギ*
経営への関与が浅く、既存業務に縛られない 経営への関与が深く、既存業務に縛られる
業界内の付き合いが少なく、しがらみが少ない 業界内の付き合いが多く、しがらみが多い
年を重ねておらず革新的な考えが出来る 年を重ねているため保守的な考えになりがち
業務経験が短く加点方式の思考で取り組める 業務経験が長く減点方式の思考になりがち
*すべての中堅以降のアトツギがそうというわけではなく、あくまで傾向として

40. 整理
若手アトツギが持つ三つの力は新規事業に寄与する。また若手アトツギは
既存業務や経営領域と馴染んだ中堅以降のアトツギよりも革新的な思考
や行動を取れるため新規事業に対する親和性が高い。
応援を集める力
行動を重ねる力 変化を認める力

41. まとめ
若手アトツギ向け
新規事業基礎講座
（考え方編）

42. まとめ
若手アトツギが新規事業を進める上で外せない三つのポイント
①家業の経営資源を活かした新規事業アイデアは課題から考える。
②家業に貢献した上で家業外で新規事業に取り組む選択肢を持つ。
③家業の経験年数に依らず若手アトツギは新規事業に寄与する力を持つ。
家業の経営資源を
活かした新規事業
アイデアの考え方
若手アトツギとして
新規事業の進め方
1
2
若手アトツギが秘める
新規事業への可能性
3
課題 解決策 経営資源
応援を集める力
行動を重ねる力 変化を認める力
資金制限
人員制限 時間制限

43. 最後に

44. 若手アトツギが
陥りやすいミス④
家業は遺産を預かり、
前例を踏襲するものである。

45. 若手アトツギが
心掛けるべきこと④
家業は未来を預かり、
革新を実現するものである。