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企画編集委員
大募集
JSUG INFO では次期企画編集委員メンバーを募集しています。
一緒に JSUG INFO を作り上げませんか?
好奇心旺盛な方、幅広い業界で人脈を広げたい方、
ものづくりが好きな方等々、エネルギーに満ち溢れるそこのあなた!
ぜひ一緒に誌面を作り上げましょう。
記事の企画・編集なんてやったことない…という方も大丈夫です。
今年の企画編集委員メンバーは企画も編集も未経験でした。どなたでも大歓迎です。
ゼロからの企画・編集は決して簡単なものではありませんが、
自分の企画が形となって読者の皆様と共有できることには
とても大きなやりがいを感じます。
社外の人脈を
広げたい
雑誌を
作ってみたい
取材で話を聞いて
みたい人がいる
こんな方にオススメ!
制作の様子は
P94の
「JSUG INFO の裏側」
をチェック !
件名に< JSUG INFO 企画編集委員 申し込み>と入れていただき
下記の 1 ~ 5 を明記して JSUG 事務局へ送信してください。
1. お名前 2. 会社名 3. 電話番号 4. メールアドレス 5. ご応募の動機
メールにてご応募ください
ご応募は
コ
チ
ラ
か
ら
!
E-Mail:
info@jsug.org
Vol.14
2022
JAPAN
SAP
USERS’
GROUP
応募の条件:JSUG 会員企業に所属の方
第一特集
次のトビラを開く!
Next Stageへのヒント!!
第二特集
SAP創業50年
・
日本進出30年 特別記念企画
SAP JAPANのつく
り方
酒造界のイノベーシ
ョンが
生んだ
『獺祭』
メタバースで叶う5つの夢
[ジェイサグインフォ]
Japan sap users’ group information magazine
Vol.14 Winter 2022
ポストコロナの新時代の幕開け!
もっともっと多様なメンバーが刺激し合い
楽しく自分らしさを追求する新たなステージへ
53ヶ国・16,000名以上のSAPエキスパートがお客様をサポートします。
53ヶ国・16,000名以上のSAPエキスパートがお客様をサポートします。
6 第一特集
		次のトビラを開く!
		 Next Stageへのヒント!!
DX請負人の仕事術
パナソニック ホールディングス(株)
執行役員(グループCIO) 玉置 肇
強く優しい企業が目指すべきリターンを生む
SDGs活動の在り方とは
サステナブル
・
ラボ(株) 代表取締役CEO 平瀬 錬司
個性を纏めあげ、
強いチームをつくる。
アスリートに聞く、
多様性の生かし方
浦安D-Rocks ラグビー選手 トンプソンルーク
20 第二特集
		SAP創業50年
・
日本進出30年 特別記念企画
		SAP JAPANのつくり方
		 3人のキーパーソンに聞いたSAPの過去
・
現在
・
未来
(株)コンカー 代表取締役社長 三村 真宗
SAP ジャパン(株) 常務執行役員 佐野 太郎
SAP ジャパン(株) 代表取締役社⻑ 鈴木 洋史
26 酒造界のイノベーションが生んだ
『獺祭』
		 廃業寸前の酒蔵 を"人"と"データ"で大逆転の口開け
旭酒造
(株)
代表取締役社長 桜井 一宏
28 イノベーションや社会課題解決のヒントがココにある⁉
		ゲノム情報を元にしたバイオDXのススメ
広島大学 教授 山本 卓
30 SNSはもう古い? 次世代のコミュニケーションはこう変わる
!
		メタバースで叶う5つの夢
通勤時間が0秒になる!?/悩んでいたコンプレックスを克服!? /
私の
「好き」
がおカネに変わる/自宅がライブ会場になる/
ゲームを極めて本物のカーレーサーになる
36 コレを導入したら劇的変化
!
		 わが社の自社事例
(プラチナサポーター紹介)
48 JSUG NEWS
News topics/DX銘柄2022に会員企業が多数選出
部会Report/新部会紹介/新規入会企業
54 世界中のSAPユーザーグループは今
フィンランド/シンガポール/コロンビア
94 編集後記 ~JSUG INFOの裏側~
広告掲載企業
2 (株)エヌ
・
ティ
・
ティデータ/3 三井金属ユアソフト(株)/24 SAPジャパン
(株)
/47 (株)レイヤーズ
・
コンサルティング/
53 クレスコ
・
イー
・
ソリューション(株)/69 JFE システムズ(株)/70 キャップジェミニ(株)/71 アクセンチュア(株)/72 (株)ベリサーブ/
73 日鉄日立システムエンジニアリング(株)/93 クラウドコンサルティング(株)/96 グーグル
・
クラウド
・
ジャパン合同会社/97 富士通(株)
57 Case Study 注目の事例紹介
57 (株)アイ
・
ピー
・
エス/58 アビームコンサルティング(株)/59 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社/
60 EYストラテジー
・
アンド
・
コンサルティング(株)/61 (株)シグマクシス/62 日本アイ
・
ビー
・
エム(株)/63 (株)BeeX/
64 ビジネスエンジニアリング(株)/65 (株)日立製作所/66 富士通(株)/67 ブラックライン(株)/68 丸紅ITソリューションズ(株)
74 Solutions 注目のソリューション
74 ウィングアーク1st(株)/75 WalkMe(株) /76  (株)SNP Japan/77 SCSK(株) /78 FPTジャパンホールディングス(株) /
79 オープンテキスト(株) /80 グーグル
・
クラウド
・
ジャパン合同会社/81 コベルコシステム(株) /82 (株)ソフテス/83 TIS(株) /
84 デロイトトーマツコンサルティング合同会社/85 (株)電通国際情報サービス/86 日鉄日立システムエンジニアリング(株) /
87 日本タタ
・
コンサルタンシー
・
サービシズ(株) /88 日本電気(株) /89 日本ヒューレット
・
パッカード合同会社/
90 (株)野村総合研究所/91 (株)ベリサーブ/92 三井情報(株)
JSUG Awardは、
JSUGの活動に多大な貢献のあった方々に感謝の意を表し、
MVP賞、
ベストサポーター賞、
プラチナサポーター継続賞、
事例ダウンロード賞、
特別功労賞、
特別賞の
6つの区分で表彰を行うものです。
2022年度の受賞者および企業は以下のとおりです。
ポストコロナの新時代へ。
変化の兆しを感じて
平素よりJSUGの活動に多大なご尽力、ご協力を
賜り、誠にありがとうございます。年次会報「JSUG
INFO」をお届けいたします。
「JSUG INFO」は今年
で14回目の刊行となりましたが、この3年間は新型
コロナウイルスの感染者が増加と減少を繰り返す中で
の取材、編集、刊行を余儀なくされました。取材や編
集会議のほとんどをリモートで行わねばならなかっ
た2年前とは異なり、今年はほとんどの取材をオンサ
イトで行うことができました。取材をオンサイトで行
う一方、オンラインの打合せも組み合わせながら効率
的に作業を進めていく中に、まさにウィズコロナの時
代、そしてポストコロナ時代への変化を感じることの
できる「JSUG INFO」作成となりました。SAPが創
業50周年、
SAPジャパンも創業30周年を迎えた今年、
Globalでも日本でも記念イベントが行われ、そこに
もポストコロナ時代への移行が伺えることとなりまし
た。
今年のJSUGはその活動方針に、
「ポストコロナの
新時代の幕開け!もっともっと多様なメンバーが刺激
しあい、自分らしさを追求する新たなステージへ。
」
を掲げています。まさにポストコロナの新時代へと向
かう今、企業やわたしたち個人は、なにを考え、なに
を行うべきなのか? 次のステージに進むためにはな
にが必要なのか? 多方面で活躍される方々への取材
を通じ、読者の皆様が次のステージへ進むためのヒン
トやアイディアを考える一助となれれば、そのような
思いで本誌を刊行いたしました。ぜひ、お楽しみいた
だければ幸いです。
JSUG 事務局長
上田 耕太郎氏
MVP賞
Next-Gen Boost
Boost Designer
KNT-CTホールディ
ングス(株) 宮石 貴弘 様
(株)荏原製作所 小川 恭弘 様
(株)NYK Business System 加瀨 佑樹 様
トラスコ中山(株) 渡邊 美波 様
(株)電通国際情報サービス 畑中 昂淳 様
ビジネスエンジニアリ
ング(株) 木下 千尋 様
アクセンチュア(株) 韓 瑜 様
WalkMe(株) 赤津 美紀 様
SAPジャパン(株) 川邉 未来 様
SAPジャパン(株) 木村 優希 様
SAPジャパン(株) 小泉 隆太朗 様
ベス
トサポーター賞 プラチナサポーター継続賞
富士通株式会社 (株)アイ
・
ピー
・
エス、
アクセンチュア(株)、
アビームコンサルティ
ング(株)、
E
Yス
トラテジー
・
アン
ド
・
コンサルティ
ング(株)、
S
C
S
K(株)、
(株)エヌ
・
ティ
・
ティ
・
データ、
グーグル
・
クラウ
ド
・
ジャパン(合)、
(株)シグマクシス、
日本アイ
・
ビー
・
エム(株)、
日本タタ
・
コンサルタンシー
・
サービシズ(株)、
日本電気(株)、
日本ヒューレッ
ト
・
パッカード(合)、
(株)B
e
e
X、
(株)日立製作所、
富士通(株)、
三井情報(株)、
(株)レイヤーズ
・
コンサルティ
ング
事例ダウンロー
ド賞
東京化成工業株式会社
Global IT 幸村 祥生 様
特別賞
特別功労賞
味の素株式会社
コーポレートサービス本部 DX推進部
基幹システム推進グループ
中村 恵子 様
SAPジャパン(株) アポロREN
堀内 みどり様 、
常盤 誠 様、
西村 洋紀 様、
岡山 直樹 様
SAPジャパン(株) Path to intrapreneurs 事務局
神戸 雄太 様、
中島 千鶴 様
INFO.
[ジェイサグインフォ]
Japan sap users’ group information magazine
Vol.14 Winter 2022
Award
JSUG
2022
発表
!
発行元
:ジャパンSAPユーザーグループ
(JSUG)
1996年設立、
2022年10月末現在、
法人会員
(ユーザー)
466社、
賛助会員
(パートナー)
128社の計594社
の会員企業と、
JSUG NET登録者9,288名、
また計38の部会
・
WG
・
分科会などの活動体で構成。
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 5
4
6 第一特集
		次のトビラを開く!
		 Next Stageへのヒント!!
DX請負人の仕事術
パナソニック ホールディングス(株)
執行役員(グループCIO) 玉置 肇
強く優しい企業が目指すべきリターンを生む
SDGs活動の在り方とは
サステナブル
・
ラボ(株) 代表取締役CEO 平瀬 錬司
個性を纏めあげ、
強いチームをつくる。
アスリートに聞く、
多様性の生かし方
浦安D-Rocks ラグビー選手 トンプソンルーク
20 第二特集
		SAP創業50年
・
日本進出30年 特別記念企画
		SAP JAPANのつくり方
		 3人のキーパーソンに聞いたSAPの過去
・
現在
・
未来
(株)コンカー 代表取締役社長 三村 真宗
SAP ジャパン(株) 常務執行役員 佐野 太郎
SAP ジャパン(株) 代表取締役社⻑ 鈴木 洋史
26 酒造界のイノベーションが生んだ
『獺祭』
		 廃業寸前の酒蔵 を"人"と"データ"で大逆転の口開け
旭酒造
(株)
代表取締役社長 桜井 一宏
28 イノベーションや社会課題解決のヒントがココにある⁉
		ゲノム情報を元にしたバイオDXのススメ
広島大学 教授 山本 卓
30 SNSはもう古い? 次世代のコミュニケーションはこう変わる
!
		メタバースで叶う5つの夢
通勤時間が0秒になる!?/悩んでいたコンプレックスを克服!? /
私の
「好き」
がおカネに変わる/自宅がライブ会場になる/
ゲームを極めて本物のカーレーサーになる
36 コレを導入したら劇的変化
!
		 わが社の自社事例
(プラチナサポーター紹介)
48 JSUG NEWS
News topics/DX銘柄2022に会員企業が多数選出
部会Report/新部会紹介/新規入会企業
54 世界中のSAPユーザーグループは今
フィンランド/シンガポール/コロンビア
94 編集後記 ~JSUG INFOの裏側~
広告掲載企業
2 (株)エヌ
・
ティ
・
ティデータ/3 三井金属ユアソフト(株)/24 SAPジャパン
(株)
/47 (株)レイヤーズ
・
コンサルティング/
53 クレスコ
・
イー
・
ソリューション(株)/69 JFE システムズ(株)/70 キャップジェミニ(株)/71 アクセンチュア(株)/72 (株)ベリサーブ/
73 日鉄日立システムエンジニアリング(株)/93 クラウドコンサルティング(株)/96 グーグル
・
クラウド
・
ジャパン合同会社/97 富士通(株)
57 Case Study 注目の事例紹介
57 (株)アイ
・
ピー
・
エス/58 アビームコンサルティング(株)/59 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社/
60 EYストラテジー
・
アンド
・
コンサルティング(株)/61 (株)シグマクシス/62 日本アイ
・
ビー
・
エム(株)/63 (株)BeeX/
64 ビジネスエンジニアリング(株)/65 (株)日立製作所/66 富士通(株)/67 ブラックライン(株)/68 丸紅ITソリューションズ(株)
74 Solutions 注目のソリューション
74 ウィングアーク1st(株)/75 WalkMe(株) /76  (株)SNP Japan/77 SCSK(株) /78 FPTジャパンホールディングス(株) /
79 オープンテキスト(株) /80 グーグル
・
クラウド
・
ジャパン合同会社/81 コベルコシステム(株) /82 (株)ソフテス/83 TIS(株) /
84 デロイトトーマツコンサルティング合同会社/85 (株)電通国際情報サービス/86 日鉄日立システムエンジニアリング(株) /
87 日本タタ
・
コンサルタンシー
・
サービシズ(株) /88 日本電気(株) /89 日本ヒューレット
・
パッカード合同会社/
90 (株)野村総合研究所/91 (株)ベリサーブ/92 三井情報(株)
JSUG Awardは、
JSUGの活動に多大な貢献のあった方々に感謝の意を表し、
MVP賞、
ベストサポーター賞、
プラチナサポーター継続賞、
事例ダウンロード賞、
特別功労賞、
特別賞の
6つの区分で表彰を行うものです。
2022年度の受賞者および企業は以下のとおりです。
ポストコロナの新時代へ。
変化の兆しを感じて
平素よりJSUGの活動に多大なご尽力、ご協力を
賜り、誠にありがとうございます。年次会報「JSUG
INFO」をお届けいたします。
「JSUG INFO」は今年
で14回目の刊行となりましたが、この3年間は新型
コロナウイルスの感染者が増加と減少を繰り返す中で
の取材、編集、刊行を余儀なくされました。取材や編
集会議のほとんどをリモートで行わねばならなかっ
た2年前とは異なり、今年はほとんどの取材をオンサ
イトで行うことができました。取材をオンサイトで行
う一方、オンラインの打合せも組み合わせながら効率
的に作業を進めていく中に、まさにウィズコロナの時
代、そしてポストコロナ時代への変化を感じることの
できる「JSUG INFO」作成となりました。SAPが創
業50周年、
SAPジャパンも創業30周年を迎えた今年、
Globalでも日本でも記念イベントが行われ、そこに
もポストコロナ時代への移行が伺えることとなりまし
た。
今年のJSUGはその活動方針に、
「ポストコロナの
新時代の幕開け!もっともっと多様なメンバーが刺激
しあい、自分らしさを追求する新たなステージへ。
」
を掲げています。まさにポストコロナの新時代へと向
かう今、企業やわたしたち個人は、なにを考え、なに
を行うべきなのか? 次のステージに進むためにはな
にが必要なのか? 多方面で活躍される方々への取材
を通じ、読者の皆様が次のステージへ進むためのヒン
トやアイディアを考える一助となれれば、そのような
思いで本誌を刊行いたしました。ぜひ、お楽しみいた
だければ幸いです。
JSUG 事務局長
上田 耕太郎氏
MVP賞
Next-Gen Boost
Boost Designer
KNT-CTホールディ
ングス(株) 宮石 貴弘 様
(株)荏原製作所 小川 恭弘 様
(株)NYK Business System 加瀨 佑樹 様
トラスコ中山(株) 渡邊 美波 様
(株)電通国際情報サービス 畑中 昂淳 様
ビジネスエンジニアリ
ング(株) 木下 千尋 様
アクセンチュア(株) 韓 瑜 様
WalkMe(株) 赤津 美紀 様
SAPジャパン(株) 川邉 未来 様
SAPジャパン(株) 木村 優希 様
SAPジャパン(株) 小泉 隆太朗 様
ベス
トサポーター賞 プラチナサポーター継続賞
富士通株式会社 (株)アイ
・
ピー
・
エス、
アクセンチュア(株)、
アビームコンサルティ
ング(株)、
E
Yス
トラテジー
・
アン
ド
・
コンサルティ
ング(株)、
S
C
S
K(株)、
(株)エヌ
・
ティ
・
ティ
・
データ、
グーグル
・
クラウ
ド
・
ジャパン(合)、
(株)シグマクシス、
日本アイ
・
ビー
・
エム(株)、
日本タタ
・
コンサルタンシー
・
サービシズ(株)、
日本電気(株)、
日本ヒューレッ
ト
・
パッカード(合)、
(株)B
e
e
X、
(株)日立製作所、
富士通(株)、
三井情報(株)、
(株)レイヤーズ
・
コンサルティ
ング
事例ダウンロー
ド賞
東京化成工業株式会社
Global IT 幸村 祥生 様
特別賞
特別功労賞
味の素株式会社
コーポレートサービス本部 DX推進部
基幹システム推進グループ
中村 恵子 様
SAPジャパン(株) アポロREN
堀内 みどり様 、
常盤 誠 様、
西村 洋紀 様、
岡山 直樹 様
SAPジャパン(株) Path to intrapreneurs 事務局
神戸 雄太 様、
中島 千鶴 様
INFO.
[ジェイサグインフォ]
Japan sap users’ group information magazine
Vol.14 Winter 2022
Award
JSUG
2022
発表
!
発行元
:ジャパンSAPユーザーグループ
(JSUG)
1996年設立、
2022年10月末現在、
法人会員
(ユーザー)
466社、
賛助会員
(パートナー)
128社の計594社
の会員企業と、
JSUG NET登録者9,288名、
また計38の部会
・
WG
・
分科会などの活動体で構成。
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 5
4
Special Feature
DX
Panasonic Holdings Corporation
T
amaokiHa
jime
SDGs
Sustainable Lab Inc.
HiraseR
enji
Diversity
URAYASU D-Rocks
T
hompson Luke
人々の生活様式や、
社会的価値観に大きな影響を与えた新型コロナウイルス。
新しい時代のニュースタンダー
ドを求め、
企業では様々な模索が行われています。
JSUGでは2022年の活動方針と
して
「ポス
トコロナの新時代の幕開け
!
もっ
と
もっ
と
多様なメ
ンバーが刺激し合い楽しく
自分ら
しさを追求する新たなステージへ」
と定めま
した。
次の
ト
ビラを開く
ために、
今、
必要なこ
とは何なのか。
DX
・
SDGs
・
ダイバーシティの各テーマでさまざまな壁を打ち破り、
その道を切り開いてきた
リーダーたちにNext Stageへ到達するためのヒン
トをうかがってきま
した。
次の
ト
ビラを開く
!
ヒン
ト
!
!
巻頭特集
JSUG
INFO
VOL.
14
への
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 7
6
Special Feature
DX
Panasonic Holdings Corporation
T
amaokiHa
jime
SDGs
Sustainable Lab Inc.
HiraseR
enji
Diversity
URAYASU D-Rocks
T
hompson Luke
人々の生活様式や、
社会的価値観に大きな影響を与えた新型コロナウイルス。
新しい時代のニュースタンダー
ドを求め、
企業では様々な模索が行われています。
JSUGでは2022年の活動方針と
して
「ポス
トコロナの新時代の幕開け
!
もっ
と
もっ
と
多様なメ
ンバーが刺激し合い楽しく
自分ら
しさを追求する新たなステージへ」
と定めま
した。
次の
ト
ビラを開く
ために、
今、
必要なこ
とは何なのか。
DX
・
SDGs
・
ダイバーシティの各テーマでさまざまな壁を打ち破り、
その道を切り開いてきた
リーダーたちにNext Stageへ到達するためのヒン
トをうかがってきま
した。
次の
ト
ビラを開く
!
ヒン
ト
!
!
巻頭特集
JSUG
INFO
VOL.
14
への
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 7
6
HAJIME TAMAOKI
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 9
8
DX 請負人の
仕事術
DX
Interview Theme
これまで数々の企業でデジタル部門の組織
改革を担われてきましたが、その原点はど
のようなものでしょうか。
組織の変革ということを特別意識しはじ
めたのは、2010年頃のことでしょうか。
当時私はP&Gに所属していて、本拠地ア
メリカのHR Tech推進プロジェクトにディ
レクターとしてアサインされました。ミッ
ションは、現地の約150人からなるチーム
をリビルドし、停滞していたプロジェクト
を活性化させること。40歳そこそこの日
本人が、50代ばかりのアメリカ人チーム
を変えようというのですから、それがいか
にタフな仕事であるかはご想像いただける
ことでしょう。
そもそも、世界16万人のP&G社員を管
理する人事情報システムは非常に取り扱
いが難しく、データベースを統合するに
も制度を改革するにもトラブル続きでし
た。そのためチームはすっかり疲弊してお
り、“輝いて仕事をしている”というには程
遠い状態だったのです。その空気を刷新す
るためにまず試みたのが、「マーケットソ
リューションズ」から「デジタルソリュー
ションズ」へ組織の名称を変更すること。
それと並行してロゴやTシャツも作成し、
「We are digital solutions」なんてメッ
セージも入れてみる──これが結構効きま
したね。当時はデジタルなんて言葉も一般
化していませんでしたが、途端にチームが
みずみずしさを取り戻したようになりまし
た。プロジェクトやチームの悪い点をあげ
つらうのではなく、ポジティブな雰囲気を
醸成することが組織変革のキモであること
を学んだ経験でした。
その後、P&Gの各国拠点で組織変革の
キャリアを積み、ファーストリテイリング
ではグローバルの組織をイチからつくるた
めに柳井氏と仕事をご一緒させてもらい、
その次にアクサ生命に移りました。これは
フランス系保険会社ですが、もともとは日
本団体生命との統合で誕生した会社です。
私が参画した時点で、統合からすでに16
年以上も経っているのに、2社は本当に融
合したとはいえない状況でした。その原因
は、フランスから出向してくるCIOやCTO
と、日本団体生命出身の日本人社員との
間に横たわる“亀裂”です。この亀裂を埋め
るため、私はとにかく社員が話しやすい空
気を作ることから始めました。積極的にス
タッフに声をかけ、仕事以外のことも話す
ようにして、彼らの本音を引き出すことに
努めたのです。それから、古いオフィスを
リノベーションしたり、スーツからカジュ
アルな服装に変えたり、次々と環境を変え
ていきました。そうすると、組織ってもの
すごく変わっていくんですね。最もうれし
く思ったのは、みんなが仕事に誇りを持つ
ようになってくれたこと。このとき私はす
でに50代半ばになっていましたが、「変
えるってすごく面白いし、変えることがで
きるんだ」と実感しました。こうした一連
の経験が、私をDX請負人として成長させ
てくれたのでしょう。
持続可能なレガシーを
つくるために必要なこととは
「組織名の変更」「オフィスのリノベー
ション」などの施策は、DXとは直接関係
ないように思われます。
確かに一見そう思われるかもしれません
ね。私は組織変革を3階層のフレームワー
クで捉えています(次頁参照)。第1階層
は「IT・プロセスの変革」、これは業務プ
ロセスやポートフォリオなど、IT構造の
中でも比較的目に見えやすい部分の変革
です。いわゆるERP製品は第1階層に関わ
るソリューションを提供するものですね。
しかし、この変革だけでは数年を経ると陳
腐化して持続しません。そこで第2階層、
「オペレーティングモデルの変革」といっ
てコストの流れや組織構造、協力会社と
の関係にメスを入れることが必要になって
きます。それから「組織名を変える」「オ
フィスをリノベーションする」といった試
みは、その次の第3階層に関わる施策。す
なわち、働き方やマインドセット、組織文
化に影響を及ぼす「カルチャーの変革」で
す。第1・2階層を支える第3階層にまで変
革して「DXが成った」と言えるのです。
ただし第2、第3階層を変えるのは、生
易しいことではありません。しかし、真剣
に組織改革を考えるならば、一過性のもの
ではなく、その企業に根差した持続可能な
変革であることが必要です。システムは5
年とかで古くなる。だから変革を担うリー
ダーは多大なエネルギーを注いででも、第
2階層、第3階層まで掘り進め、レガシー
をつくっていかなければいけないのです。
組織改革の第3階層まで踏み込むために、
リーダーに必要な心構えとはどのようなも
のでしょうか。
変革は痛みが伴うものですから、「みん
なで一緒に組織を変えていこう」とお題目
P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命など、名だたる企業で変革を主導してきた玉置肇氏。
現在はパナソニックグループCIOとして、PX(Panasonic Transformation)を指揮しています。
外資企業や日本企業で、“DX請負人”としてプロジェクトを推進してきた玉置氏に、
DXを成功に導くためのヒントや変革を実現するためのプロセスについて伺ってみました。
システムは 5 年で古くなる。
改革して持続可能なレガシーをつくろう
1993年、現P&Gジャパン合同会社に入社後、システム畑を歩
み、その間、日本・米国・シンガポールで地域CIOやグロー
バル・ディレクターなどの要職を務める。2014年に株式会社
ファーストリテイリングに入社、グループCIOに就任。2017
年にはアクサ生命保険株式会社の執行役員インフォメーション
テクノロジー本部長に。2021年5月より現職。
玉置 肇
パナソニック ホールディングス株式会社
執行役員 グループ・チーフ・インフォメーション・オフィサー (グループCIO)
パナソニックインフォメーションシステムズ株式会社 代表取締役社長
Next Stage Interview
パナソニックホールディングス
HAJIME TAMAOKI
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 9
8
DX 請負人の
仕事術
DX
Interview Theme
これまで数々の企業でデジタル部門の組織
改革を担われてきましたが、その原点はど
のようなものでしょうか。
組織の変革ということを特別意識しはじ
めたのは、2010年頃のことでしょうか。
当時私はP&Gに所属していて、本拠地ア
メリカのHR Tech推進プロジェクトにディ
レクターとしてアサインされました。ミッ
ションは、現地の約150人からなるチーム
をリビルドし、停滞していたプロジェクト
を活性化させること。40歳そこそこの日
本人が、50代ばかりのアメリカ人チーム
を変えようというのですから、それがいか
にタフな仕事であるかはご想像いただける
ことでしょう。
そもそも、世界16万人のP&G社員を管
理する人事情報システムは非常に取り扱
いが難しく、データベースを統合するに
も制度を改革するにもトラブル続きでし
た。そのためチームはすっかり疲弊してお
り、“輝いて仕事をしている”というには程
遠い状態だったのです。その空気を刷新す
るためにまず試みたのが、「マーケットソ
リューションズ」から「デジタルソリュー
ションズ」へ組織の名称を変更すること。
それと並行してロゴやTシャツも作成し、
「We are digital solutions」なんてメッ
セージも入れてみる──これが結構効きま
したね。当時はデジタルなんて言葉も一般
化していませんでしたが、途端にチームが
みずみずしさを取り戻したようになりまし
た。プロジェクトやチームの悪い点をあげ
つらうのではなく、ポジティブな雰囲気を
醸成することが組織変革のキモであること
を学んだ経験でした。
その後、P&Gの各国拠点で組織変革の
キャリアを積み、ファーストリテイリング
ではグローバルの組織をイチからつくるた
めに柳井氏と仕事をご一緒させてもらい、
その次にアクサ生命に移りました。これは
フランス系保険会社ですが、もともとは日
本団体生命との統合で誕生した会社です。
私が参画した時点で、統合からすでに16
年以上も経っているのに、2社は本当に融
合したとはいえない状況でした。その原因
は、フランスから出向してくるCIOやCTO
と、日本団体生命出身の日本人社員との
間に横たわる“亀裂”です。この亀裂を埋め
るため、私はとにかく社員が話しやすい空
気を作ることから始めました。積極的にス
タッフに声をかけ、仕事以外のことも話す
ようにして、彼らの本音を引き出すことに
努めたのです。それから、古いオフィスを
リノベーションしたり、スーツからカジュ
アルな服装に変えたり、次々と環境を変え
ていきました。そうすると、組織ってもの
すごく変わっていくんですね。最もうれし
く思ったのは、みんなが仕事に誇りを持つ
ようになってくれたこと。このとき私はす
でに50代半ばになっていましたが、「変
えるってすごく面白いし、変えることがで
きるんだ」と実感しました。こうした一連
の経験が、私をDX請負人として成長させ
てくれたのでしょう。
持続可能なレガシーを
つくるために必要なこととは
「組織名の変更」「オフィスのリノベー
ション」などの施策は、DXとは直接関係
ないように思われます。
確かに一見そう思われるかもしれません
ね。私は組織変革を3階層のフレームワー
クで捉えています(次頁参照)。第1階層
は「IT・プロセスの変革」、これは業務プ
ロセスやポートフォリオなど、IT構造の
中でも比較的目に見えやすい部分の変革
です。いわゆるERP製品は第1階層に関わ
るソリューションを提供するものですね。
しかし、この変革だけでは数年を経ると陳
腐化して持続しません。そこで第2階層、
「オペレーティングモデルの変革」といっ
てコストの流れや組織構造、協力会社と
の関係にメスを入れることが必要になって
きます。それから「組織名を変える」「オ
フィスをリノベーションする」といった試
みは、その次の第3階層に関わる施策。す
なわち、働き方やマインドセット、組織文
化に影響を及ぼす「カルチャーの変革」で
す。第1・2階層を支える第3階層にまで変
革して「DXが成った」と言えるのです。
ただし第2、第3階層を変えるのは、生
易しいことではありません。しかし、真剣
に組織改革を考えるならば、一過性のもの
ではなく、その企業に根差した持続可能な
変革であることが必要です。システムは5
年とかで古くなる。だから変革を担うリー
ダーは多大なエネルギーを注いででも、第
2階層、第3階層まで掘り進め、レガシー
をつくっていかなければいけないのです。
組織改革の第3階層まで踏み込むために、
リーダーに必要な心構えとはどのようなも
のでしょうか。
変革は痛みが伴うものですから、「みん
なで一緒に組織を変えていこう」とお題目
P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命など、名だたる企業で変革を主導してきた玉置肇氏。
現在はパナソニックグループCIOとして、PX(Panasonic Transformation)を指揮しています。
外資企業や日本企業で、“DX請負人”としてプロジェクトを推進してきた玉置氏に、
DXを成功に導くためのヒントや変革を実現するためのプロセスについて伺ってみました。
システムは 5 年で古くなる。
改革して持続可能なレガシーをつくろう
1993年、現P&Gジャパン合同会社に入社後、システム畑を歩
み、その間、日本・米国・シンガポールで地域CIOやグロー
バル・ディレクターなどの要職を務める。2014年に株式会社
ファーストリテイリングに入社、グループCIOに就任。2017
年にはアクサ生命保険株式会社の執行役員インフォメーション
テクノロジー本部長に。2021年5月より現職。
玉置 肇
パナソニック ホールディングス株式会社
執行役員 グループ・チーフ・インフォメーション・オフィサー (グループCIO)
パナソニックインフォメーションシステムズ株式会社 代表取締役社長
Next Stage Interview
パナソニックホールディングス
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 11
10
だけ繰り返していても意味はありません。
誠意と情熱をもって本心から訴えかけな
ければ、人々が動くことはないでしょう。
本心から発していないスローガンは、上滑
りして人々の心には響くことはないです。
オーセンティック(Authentic)という英
単語があります。正真正銘の、信頼できる
という意味ですが、リーダーが発する言葉
は、まさにオーセンティックであることが
必須と考えています。この改革を成し遂げ
れば、会社だけではなく社員一人ひとりが
幸せになると伝え続ける努力が大切です。
情報システム部門は立場が弱い
その地位を引き上げたい
伝統があって規模が大きい企業では、どう
してもレガシーに固執しがちです。どのよ
うな打ち手があるのでしょうか。
アクサ生命の例をひとつ紹介しましょ
う。同社には1,000億円以上を投入して
作った「ND21」という基幹システムがあ
りました。フランス本社の幹部はこれを古
いシステムだと悪評し、入れ替えを命じ
ました。ですが、そう易々とレガシーを悪
と断じてよいものでしょうか?そこに疑問
を持ちました。実際に過去にさかのぼり仕
様書を調べてみると、先進的な仕様が盛
リングにいたとき学んだ言葉です。事前準
備と段取りを徹底することを意味してい
て、パナソニックに入社するときも2カ月
以上前から準備を進めていました。人・モ
ノ・金の流れや課題など、集められる限り
の情報を集め、今後私がとる施策の原理
原則、どのような順番で実施するかなど、
30ページほどの資料にまとめたうえで初
日を迎えています。改革の請負人が、就任
後の数カ月は現状を把握。まずはお手並み
拝見と悠長に構えていてはコトは動きませ
ん。事前準備に全力を注ぎ、一気呵成にプ
ロジェクトを垂直立ち上げすることが、物
事を上手く進めるためには欠かせない。私
はそう考えています。
成功も負のレガシーも
システムに反映されている
今まさに、日本企業が始めるべきDXの第
一歩(行動や考え方)を教えてください。
まずは自社のレガシーをプレーンな目
線で丁寧に点検してください。その中から
「負のレガシー」を抽出したなら、断固と
り込まれている優れたシステムであるこ
とが分かりましたので、入れ替えからモダ
ナイゼーションへ方針を切り替えました。
つくづく噂や評判で物事を決めず、自ら調
べて評価することが大切ですね。私は“古
くて悪いシステム”というレッテルが貼ら
れてしまった「ND21」を、ブランディン
グによって変えていこうと決めました。
「ND21」の優れた点を外部に向けて発信
していくうちに、システムに関わった社員
たち自身は次第に誇りを感じてくれるよう
になったのです。守るべきものは全力で守
り、変えるべきものは変えていく。そうす
れば、おのずと人々の意識と働き方は変
わっていくものです。
日本では、情報システム部門の立場が弱い
企業が多数見られます。それがDX推進の
妨げることもあるのでしょうか。
情報システム部門は立場が弱い。日本だ
けではなく世界中で同じ傾向にあります。
予算を使うコスト部門に位置づけられてい
るからです。決して止まってはならないク
リティカルなインフラも担っているのです
が、人々がそれを意識することも少ないの
でしょう。+αの価値や利益を生み出す部
門に変わることも必要です。
してそれを壊す覚悟を固めてください。負
のレガシーは商習慣やステークホルダー
との関係性、それにまつわるさまざまな業
務プロセス、組織の在り方など、さまざま
な要素に根ざしています。かつての成功体
験さえも足かせになっているかもしれませ
ん。こうした実情を鏡のように映し出して
いるのが、実はシステムなのです。ですか
ら、情報システムを見れば、その企業がど
のようなレガシーを抱えているのかが分か
ります。情報システムが古いと評される場
合、その原因は情報システム自体よりも、
取り巻く環境に隠されているものです。そ
れを変えなければ、変革は成功しないで
しょう。
ただ、アクサ生命の基幹システムのよう
に、良いレガシーもあります。パナソニッ
クの場合なら松下幸之助さんが築いた経営
理念ですね。これは当然、いつまでも大事
に守り続けるべきものです。何を大事にす
るか、何を変えるかを見定め、変えるべき
ものは断固として変えていく。これが基本
となる考え方です。
また、DXを推進したいがために、情報
システム部門とは別にDX推進室やデジタ
ル推進本部なんて部署を作ってみる。そん
な企業もありますが、私はDX推進を担う
部署は、情報システム部門と分離してはい
けないと考えています。目新しい部署を新
設して、一時的に気運は高まるかもしれま
せんが、持続的に運営していくことはでき
ないでしょう。DXを実現できるのは、企
業の基盤を支える情報システム部門をおい
て他にないと確信しています。ですから、
自社に限らず、あらゆる情報システム部門
の地位を引き上げること。それが私のモチ
ベーションといっても過言ではありません。
DXの請負人として企業にジョインした
後、具体的にどのようにしてプロジェクト
を動かしていきますか。
新しく企業に参画するとき、自分の仲
間を連れてくるCⅹOは少なくありません
が、私は原則一人で現場に臨みます。なぜ
なら、もともと在籍している皆さんの心に
火をつけないことには、変革が定着しない
からです。そうすると入社したては孤軍。
だからその分、必死になって「前始末」に
取り組んでいます。
「前始末」とは、以前ファーストリテイ
組織を改革していくために一般の社員は、
どんなことができますか?
一人ひとりの社員が、現状のレガシーを
盲信するのではなく、つねに疑問を持って
物事にあたることです。欧米企業と比較し
て、日本の企業は生産性が低いです。これ
は能力云々ではなく、内向きの仕事が多す
ぎることに起因します。会議の席順資料を
作成したり、役員にあげる経過報告書を何
度もレビューしたり、事務手続きも段階多
いですよね。これはおもてなしが求められ
るサービス業では良い側面もあります。し
かし、生産性の向上を阻んでいます。それ
から忖度も不要だと思います。忖度で大事
な物事は動きませんから。疑問を持ち、改
革したいとアクションする。それを続けてい
くうちにいずれ道は開けるに違いありませ
ん。共に粘り強く取り組んでいきましょう。
家庭用電化製品、住宅設備、オフィス向けの商品・サービスを提供する総合エレ
クトロニクスメーカー。創業者の松下幸之助は、経営の神様としてあまりにも著
名。近年では「幸せを、チカラに。」をブランドスローガンに掲げ、松下幸之助
が描いた「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を推し進めていく。その一環
として、パナソニックグループのDX推進を経営の重点アジェンダとして定め、
“PX:Panasonic Transformation”を始動。お客様への提供価値を継続的に高
める「お客様サービスのDX」と社内業務を徹底的に洗練させる「事業オペレー
ションのDX」に取り組み、「くらし」と「しごと」の幸せの実現を目指す。
パナソニックホールディ
ングス株式会社
企画 編集委員:
(左)上原 涼
(右)大岩 香緒里
※ Diversity, Equity & Inclusion
守るべきものは全力で守り、変えるべきものは変えていく
情報システムは自社の映し鏡
取り巻く環境を変えなければ
DX も変革も成功しない
HAJIME TAMAOKI
玉置 肇
Interviewee's Voice
Company Introduction
IT の変革
インフラストラクチャーと業務情報システムの刷新、
プロセスとサービスのデジタル化など
オペレーティング・モデルの変革
組織構造、デリバリーの仕組み、
協力会社との関係、コストの最適化など
カルチャーの変革
DEI※
の推進、オープンでフラットな職場、
サイロからの脱却、内向きの仕事の排除
変革のフレームワーク
第1階層
第2階層
第3階層
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 11
10
だけ繰り返していても意味はありません。
誠意と情熱をもって本心から訴えかけな
ければ、人々が動くことはないでしょう。
本心から発していないスローガンは、上滑
りして人々の心には響くことはないです。
オーセンティック(Authentic)という英
単語があります。正真正銘の、信頼できる
という意味ですが、リーダーが発する言葉
は、まさにオーセンティックであることが
必須と考えています。この改革を成し遂げ
れば、会社だけではなく社員一人ひとりが
幸せになると伝え続ける努力が大切です。
情報システム部門は立場が弱い
その地位を引き上げたい
伝統があって規模が大きい企業では、どう
してもレガシーに固執しがちです。どのよ
うな打ち手があるのでしょうか。
アクサ生命の例をひとつ紹介しましょ
う。同社には1,000億円以上を投入して
作った「ND21」という基幹システムがあ
りました。フランス本社の幹部はこれを古
いシステムだと悪評し、入れ替えを命じ
ました。ですが、そう易々とレガシーを悪
と断じてよいものでしょうか?そこに疑問
を持ちました。実際に過去にさかのぼり仕
様書を調べてみると、先進的な仕様が盛
リングにいたとき学んだ言葉です。事前準
備と段取りを徹底することを意味してい
て、パナソニックに入社するときも2カ月
以上前から準備を進めていました。人・モ
ノ・金の流れや課題など、集められる限り
の情報を集め、今後私がとる施策の原理
原則、どのような順番で実施するかなど、
30ページほどの資料にまとめたうえで初
日を迎えています。改革の請負人が、就任
後の数カ月は現状を把握。まずはお手並み
拝見と悠長に構えていてはコトは動きませ
ん。事前準備に全力を注ぎ、一気呵成にプ
ロジェクトを垂直立ち上げすることが、物
事を上手く進めるためには欠かせない。私
はそう考えています。
成功も負のレガシーも
システムに反映されている
今まさに、日本企業が始めるべきDXの第
一歩(行動や考え方)を教えてください。
まずは自社のレガシーをプレーンな目
線で丁寧に点検してください。その中から
「負のレガシー」を抽出したなら、断固と
り込まれている優れたシステムであるこ
とが分かりましたので、入れ替えからモダ
ナイゼーションへ方針を切り替えました。
つくづく噂や評判で物事を決めず、自ら調
べて評価することが大切ですね。私は“古
くて悪いシステム”というレッテルが貼ら
れてしまった「ND21」を、ブランディン
グによって変えていこうと決めました。
「ND21」の優れた点を外部に向けて発信
していくうちに、システムに関わった社員
たち自身は次第に誇りを感じてくれるよう
になったのです。守るべきものは全力で守
り、変えるべきものは変えていく。そうす
れば、おのずと人々の意識と働き方は変
わっていくものです。
日本では、情報システム部門の立場が弱い
企業が多数見られます。それがDX推進の
妨げることもあるのでしょうか。
情報システム部門は立場が弱い。日本だ
けではなく世界中で同じ傾向にあります。
予算を使うコスト部門に位置づけられてい
るからです。決して止まってはならないク
リティカルなインフラも担っているのです
が、人々がそれを意識することも少ないの
でしょう。+αの価値や利益を生み出す部
門に変わることも必要です。
してそれを壊す覚悟を固めてください。負
のレガシーは商習慣やステークホルダー
との関係性、それにまつわるさまざまな業
務プロセス、組織の在り方など、さまざま
な要素に根ざしています。かつての成功体
験さえも足かせになっているかもしれませ
ん。こうした実情を鏡のように映し出して
いるのが、実はシステムなのです。ですか
ら、情報システムを見れば、その企業がど
のようなレガシーを抱えているのかが分か
ります。情報システムが古いと評される場
合、その原因は情報システム自体よりも、
取り巻く環境に隠されているものです。そ
れを変えなければ、変革は成功しないで
しょう。
ただ、アクサ生命の基幹システムのよう
に、良いレガシーもあります。パナソニッ
クの場合なら松下幸之助さんが築いた経営
理念ですね。これは当然、いつまでも大事
に守り続けるべきものです。何を大事にす
るか、何を変えるかを見定め、変えるべき
ものは断固として変えていく。これが基本
となる考え方です。
また、DXを推進したいがために、情報
システム部門とは別にDX推進室やデジタ
ル推進本部なんて部署を作ってみる。そん
な企業もありますが、私はDX推進を担う
部署は、情報システム部門と分離してはい
けないと考えています。目新しい部署を新
設して、一時的に気運は高まるかもしれま
せんが、持続的に運営していくことはでき
ないでしょう。DXを実現できるのは、企
業の基盤を支える情報システム部門をおい
て他にないと確信しています。ですから、
自社に限らず、あらゆる情報システム部門
の地位を引き上げること。それが私のモチ
ベーションといっても過言ではありません。
DXの請負人として企業にジョインした
後、具体的にどのようにしてプロジェクト
を動かしていきますか。
新しく企業に参画するとき、自分の仲
間を連れてくるCⅹOは少なくありません
が、私は原則一人で現場に臨みます。なぜ
なら、もともと在籍している皆さんの心に
火をつけないことには、変革が定着しない
からです。そうすると入社したては孤軍。
だからその分、必死になって「前始末」に
取り組んでいます。
「前始末」とは、以前ファーストリテイ
組織を改革していくために一般の社員は、
どんなことができますか?
一人ひとりの社員が、現状のレガシーを
盲信するのではなく、つねに疑問を持って
物事にあたることです。欧米企業と比較し
て、日本の企業は生産性が低いです。これ
は能力云々ではなく、内向きの仕事が多す
ぎることに起因します。会議の席順資料を
作成したり、役員にあげる経過報告書を何
度もレビューしたり、事務手続きも段階多
いですよね。これはおもてなしが求められ
るサービス業では良い側面もあります。し
かし、生産性の向上を阻んでいます。それ
から忖度も不要だと思います。忖度で大事
な物事は動きませんから。疑問を持ち、改
革したいとアクションする。それを続けてい
くうちにいずれ道は開けるに違いありませ
ん。共に粘り強く取り組んでいきましょう。
家庭用電化製品、住宅設備、オフィス向けの商品・サービスを提供する総合エレ
クトロニクスメーカー。創業者の松下幸之助は、経営の神様としてあまりにも著
名。近年では「幸せを、チカラに。」をブランドスローガンに掲げ、松下幸之助
が描いた「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を推し進めていく。その一環
として、パナソニックグループのDX推進を経営の重点アジェンダとして定め、
“PX:Panasonic Transformation”を始動。お客様への提供価値を継続的に高
める「お客様サービスのDX」と社内業務を徹底的に洗練させる「事業オペレー
ションのDX」に取り組み、「くらし」と「しごと」の幸せの実現を目指す。
パナソニックホールディ
ングス株式会社
企画 編集委員:
(左)上原 涼
(右)大岩 香緒里
※ Diversity, Equity & Inclusion
守るべきものは全力で守り、変えるべきものは変えていく
情報システムは自社の映し鏡
取り巻く環境を変えなければ
DX も変革も成功しない
HAJIME TAMAOKI
玉置 肇
Interviewee's Voice
Company Introduction
IT の変革
インフラストラクチャーと業務情報システムの刷新、
プロセスとサービスのデジタル化など
オペレーティング・モデルの変革
組織構造、デリバリーの仕組み、
協力会社との関係、コストの最適化など
カルチャーの変革
DEI※
の推進、オープンでフラットな職場、
サイロからの脱却、内向きの仕事の排除
変革のフレームワーク
第1階層
第2階層
第3階層
サステナブル・ラボを立ち上げた経緯を
教えてください。
昔は宇宙飛行士を目指していたんです。
子どものころから漫画の世界に憧れてい
て、ヒーローのように世の中をよくした
い願望がありました。そこに宇宙飛行士
が地球を救う映画を見たのが目指すきっか
けとなりました。ところが、大学時代に同
じ夢を目指す優秀な学生たちに囲まれて挫
折したのです。正直そこから就活をしてビ
ジネスパーソンになるという未来はまった
く想像することができませんでした。
ちょうどその頃、友人が学生起業をし
たのを見て、起業家として新しい技術を
開発するのも世の中をよくするひとつの
方法なんだと考えるようになりました。
それ以降は社会起業家として、農業と
介護などいくつかの事業に取り組みまし
た。その一方で、高い志を持っている周
囲の社会起業家が社会に受け入れられず
に苦しんでいるのを見て、「こうして世
の中をよくしようと頑張っている事業家
や企業が評価される社会を作ることはで
きないだろうか?」と考えるようになっ
たんです。そんなときに、ESG投資の研究
をされている加藤康之先生(現同社社外
取締役)にお会いして、SDGsやESGに取
り組む企業データインフラを作るというア
イデアにたどり着きました。
よい企業を “ 照らす ” ために
ESG・SDGs データの Google へ
そうして生まれたESG・SDGs貢献度を可
視化する「TERRAST」のサービスについ
て教えてください。
これは企業のESG・SDGs貢献度とい
う非財務情報を可視化するSaaSツール
です。ESG・SDGsの観点からよい企業
を探そうとしても、情報がバラバラに点
在していて、網羅的なデータインフラが
限られるため難しい。この、霧がもや
もやとかかったような状態の中から、
よい企業を“照らす”という意味を込めて
「TERRAST(テラスト)」と名付けまし
た。
「TERRAST」は、いわばESG・SDGs
データのGoogleのような存在。格付け機
関による一次データと、各企業が出して
いる生データの両方を揃えています。そ
もそも、すべての企業はよい企業になり
たいはずなんですよね。ただ、そのため
に何をすればいいのかという答えを誰も
持っていない。例えば女性役員の比率に
しても、果たして50%が正しい状態なの
かどうかは誰にもわかりません。
そんな状況に対して、評価機関ではな
くデータベンダーである弊社が開発する
「TERRAST β」は企業のサステナビリ
ティ推進の現在地を測るための健康診断
のように機能します。様々なステークホ
ルダーの希望に応えられるよう、多くの
データを多面的に比較分析でき、網羅的
に見られるインフラを目指しています。
私たちは、よい企業やよい社会とは何
かという問いに、唯一絶対の定義はない
という前提に立っています。そのうえ
で、ビジネスとしての強さだけではなく、
ESG・SDGsという“優しさ”をあわせ持っ
た企業を照らし出すことで、無数のよい企
業を発掘できるというのが、今後のビジネ
スのパラダイムになると考えています。
“ もったいない SDGs 活動 ” から
抜け出すために見直すべきものとは
平瀬社長から見て、実態につながらない
“もったいないSDGs活動”をやっている企
業はありますか。
1つ目は、リターンの定義がはっきり
していないケース。例えば、ある企業が
SDGs活動として、会社の休日に社員を集
め、近所の公園の清掃をするとします。
街をきれいにしたいと行動することは良
いことだと思いますがこの活動のリター
ンは?という観点で考えると、企業イ
メージが上がって株価が上がることなの
か、商品の売上なのか。大半の企業は、
SDGsにおけるリターンの部分を定義でき
ていないように見えます。
これは、「何のために企業が存在し、
活動するのか」という存在意義(パーパ
ス)がクリアになっていないために起き
る問題です。「他社がやっているから、
うちもSDGsと言わないと」という理由で
活動している事例が大量に発生していま
すが、骨格がなければ何をやってもチグ
ハグになってしまいます。逆に、パーパ
スがベースにあれば、SDGsのリターンは
自ずと決まってくるものです。
2つ目も、近い内容ですが、企業のパー
パスとSDGs活動が“So-What”の関係に
なっていないケースです。本来は、初め
に企業の存在意義があり、その存在意義
を全うし続けるための長期戦略に則った
かたちでSDGsが埋め込まれる。財務と非
財務は1本の軸によって統合されているは
2030年までに達成すべき世界共通の目標「SDGs」のため企業各社でさまざまな活動が展開されている。
これらのアクションがステークホルダーに認められて有形無形のリターンが生まれるためにはどうすればいいのか。
AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する「TERRAST for Enterprise β」を提供する平瀬錬司社長に
リターンを生むSDGs活動やESG経営をするためのヒントを伺いました。
“ 強く優しい ” 企業をデータサイエンスの力で照らし出す
Sustainable Lab Inc.
大阪大学理学部卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステ
ナビリティ領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして
携わる。これら領域において2社のバイアウト(事業売却)を
経験。京都大学ESG研究会講師。非財務ビッグデータに関する
執筆・講演活動などでも活躍している。
平瀬 錬司 サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役CEO
Next Stage Interview
RENJI HIRASE
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 13
12
強く優しい企業が
目指すべき
リターンを生む
SDGs 活動の在り方とは
SDG
s
Interview Theme
サステナブル・ラボを立ち上げた経緯を
教えてください。
昔は宇宙飛行士を目指していたんです。
子どものころから漫画の世界に憧れてい
て、ヒーローのように世の中をよくした
い願望がありました。そこに宇宙飛行士
が地球を救う映画を見たのが目指すきっか
けとなりました。ところが、大学時代に同
じ夢を目指す優秀な学生たちに囲まれて挫
折したのです。正直そこから就活をしてビ
ジネスパーソンになるという未来はまった
く想像することができませんでした。
ちょうどその頃、友人が学生起業をし
たのを見て、起業家として新しい技術を
開発するのも世の中をよくするひとつの
方法なんだと考えるようになりました。
それ以降は社会起業家として、農業と
介護などいくつかの事業に取り組みまし
た。その一方で、高い志を持っている周
囲の社会起業家が社会に受け入れられず
に苦しんでいるのを見て、「こうして世
の中をよくしようと頑張っている事業家
や企業が評価される社会を作ることはで
きないだろうか?」と考えるようになっ
たんです。そんなときに、ESG投資の研究
をされている加藤康之先生(現同社社外
取締役)にお会いして、SDGsやESGに取
り組む企業データインフラを作るというア
イデアにたどり着きました。
よい企業を “ 照らす ” ために
ESG・SDGs データの Google へ
そうして生まれたESG・SDGs貢献度を可
視化する「TERRAST」のサービスについ
て教えてください。
これは企業のESG・SDGs貢献度とい
う非財務情報を可視化するSaaSツール
です。ESG・SDGsの観点からよい企業
を探そうとしても、情報がバラバラに点
在していて、網羅的なデータインフラが
限られるため難しい。この、霧がもや
もやとかかったような状態の中から、
よい企業を“照らす”という意味を込めて
「TERRAST(テラスト)」と名付けまし
た。
「TERRAST」は、いわばESG・SDGs
データのGoogleのような存在。格付け機
関による一次データと、各企業が出して
いる生データの両方を揃えています。そ
もそも、すべての企業はよい企業になり
たいはずなんですよね。ただ、そのため
に何をすればいいのかという答えを誰も
持っていない。例えば女性役員の比率に
しても、果たして50%が正しい状態なの
かどうかは誰にもわかりません。
そんな状況に対して、評価機関ではな
くデータベンダーである弊社が開発する
「TERRAST β」は企業のサステナビリ
ティ推進の現在地を測るための健康診断
のように機能します。様々なステークホ
ルダーの希望に応えられるよう、多くの
データを多面的に比較分析でき、網羅的
に見られるインフラを目指しています。
私たちは、よい企業やよい社会とは何
かという問いに、唯一絶対の定義はない
という前提に立っています。そのうえ
で、ビジネスとしての強さだけではなく、
ESG・SDGsという“優しさ”をあわせ持っ
た企業を照らし出すことで、無数のよい企
業を発掘できるというのが、今後のビジネ
スのパラダイムになると考えています。
“ もったいない SDGs 活動 ” から
抜け出すために見直すべきものとは
平瀬社長から見て、実態につながらない
“もったいないSDGs活動”をやっている企
業はありますか。
1つ目は、リターンの定義がはっきり
していないケース。例えば、ある企業が
SDGs活動として、会社の休日に社員を集
め、近所の公園の清掃をするとします。
街をきれいにしたいと行動することは良
いことだと思いますがこの活動のリター
ンは?という観点で考えると、企業イ
メージが上がって株価が上がることなの
か、商品の売上なのか。大半の企業は、
SDGsにおけるリターンの部分を定義でき
ていないように見えます。
これは、「何のために企業が存在し、
活動するのか」という存在意義(パーパ
ス)がクリアになっていないために起き
る問題です。「他社がやっているから、
うちもSDGsと言わないと」という理由で
活動している事例が大量に発生していま
すが、骨格がなければ何をやってもチグ
ハグになってしまいます。逆に、パーパ
スがベースにあれば、SDGsのリターンは
自ずと決まってくるものです。
2つ目も、近い内容ですが、企業のパー
パスとSDGs活動が“So-What”の関係に
なっていないケースです。本来は、初め
に企業の存在意義があり、その存在意義
を全うし続けるための長期戦略に則った
かたちでSDGsが埋め込まれる。財務と非
財務は1本の軸によって統合されているは
2030年までに達成すべき世界共通の目標「SDGs」のため企業各社でさまざまな活動が展開されている。
これらのアクションがステークホルダーに認められて有形無形のリターンが生まれるためにはどうすればいいのか。
AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する「TERRAST for Enterprise β」を提供する平瀬錬司社長に
リターンを生むSDGs活動やESG経営をするためのヒントを伺いました。
“ 強く優しい ” 企業をデータサイエンスの力で照らし出す
Sustainable Lab Inc.
大阪大学理学部卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステ
ナビリティ領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして
携わる。これら領域において2社のバイアウト(事業売却)を
経験。京都大学ESG研究会講師。非財務ビッグデータに関する
執筆・講演活動などでも活躍している。
平瀬 錬司 サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役CEO
Next Stage Interview
RENJI HIRASE
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 13
12
強く優しい企業が
目指すべき
リターンを生む
SDGs 活動の在り方とは
SDG
s
Interview Theme
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 15
14
ずなんです。それなのに、SDGs活動がお
まけみたいになっているケースが多い。
日本には素晴らしいパーパス(=企業
の存在意義)を掲げられている会社が多
いと感じています。ところが、先ほどの
例でいう清掃活動が、その企業のパーパ
スに合致していない行動だったとすると
どうか。もちろん、その行動が誰かを幸
せにすることがあり、素晴らしい活動
であることは確かですが、企業のパー
パスとズレてしまうと、結局お金や時間
といった企業のリソースを無理やり引っ
張ってくることになってしまいます。こ
れは非常に“もったいない”活動ですよね。
“もったいないSDGs活動”をよいSDGsに転
換するには会社の存在意義を考えること
が大事とのことですが、一般社員にもで
きることはありますか?
確かに一般社員の方にとって、企業の
存在意義を考えるのは責任の重いことで
す。その場合、所属部署や関わっている
プロダクト、サービスなどの存在意義を
考えてみてはどうでしょうか?
コングロマリット企業では、例えばヘ
ルスケア事業や金融業、通信業など多岐
にわたる事業を展開しています。もちろ
ん企業として大きな存在意義があり、
ないファミリーカンパニーが多い為、長
期的な視点を持ってESG・SDGs対応がで
きているところが多いですね。データを
見ていると、ファミリーカンパニーの方
がESG・SDGs対応ができているところは
多いですね。
もうひとつは情報開示です。日本の企
業は秘密主義的で、女性社員の比率や有
給の取得率など、SDGsに関する報告を
オープンにしていない。欧米はステーク
ホルダーに対する説明責任が文化として
根付いてるので、良いことも悪いことも
開示します。日本の場合、完璧主義なと
ころや生真面目さも影響しているかもし
れませんが、説明責任を背負っている自
覚が相対的に少なく、結果的に非財務項
目の開示公開が遅れてしまっています。
“ 強く優しい ” 企業が
選ばれる仕組みを作る
そうした新しいパラダイムが受け入れら
れる世界では「TERRAST」のようなツー
ルをどう使えばいいですか。
事業が発展してきた。でも、一般社員の
方が全部を見通すのは難しいかもしれま
せん。そんな時は、自分が関わっている
サービスで、お客さんを健康にする、老
後楽しく暮らせるよう備えを蓄える、災
害時に家族とつながって安心できる通信
網を作る、などブレイクダウンする。そ
うすると、企業の大きな存在意義にもつ
なげやすくなります。手触り感のある存
在意義を定義することから始めてみてく
ださい。
ESG 投資が強化される世界で
日本企業がすべきこととは?
平瀬社長は、今後世界的にESGの投資額は
どれくらい増えていくとお考えでしょうか。
昨年(2021年)で約4000兆円でした
が、今は円安で5000兆円ほどになって
おり、金融資本全体の中では2〜3割くら
いを占めています。これは、ESG投資や
SDGs経営が増えているだけではなく、も
はや既存ビジネスがESGに組み込まれてい
るということです。この傾向は、未来に向
かってさらに強化されていくでしょう。
ESG視点の新しい市場も増えています。
例えば、車がEV(電気自動車)以外認め
られなくなってきているように、脱炭素
社会を実現するための市場が成長してい
世界中の投資家や事業会社、または一
般の生活者が、「TERRAST」をインフラ
として天気予報のように使っている世界
が理想ですね。
あらゆる生活者、あらゆる企業や投資
家は常に判断をしています。
その決断にお
いて、
経済合理性、
つまりコストパフォー
マンスを重視します。買い物や投資に限
らず、
行動もコスパがよいほうがいいんで
す。
私たちは、「TERRAST」を通して、そ
うした世の中をアップグレードしたいと
思っています。経済合理性になぞらえて
「人間合理性」という造語を使っている
んですが、コスパのよさに加えて、それ
が自分にとってよいのか、自分の家族に
とってよいのか、社会や地球にとってよ
いのかを考える。経済合理性のもうひと
つ上の人間合理性という概念で物事を判
断するのがあたりまえになる社会を実現
するのが私たちの究極のビジョンです。
それが御社のパーパスである“強く優しい”
ますよね。世の中がサステナビリティ化
するにあたって生まれる新市場は今後伸
びるのが約束されているため、投融資も
増えていきます。
1960年代ごろの高度成長期、人々はお
金を稼げばみんな幸せになれるというシ
ンプルな世界を創造していました。しか
し、先進国がひととおり成熟してしまっ
た現代は、“既存の強さ”いわゆる“お金儲
け”だけの追及には限界があることに誰し
もが気づいています。今後もさらに男女
の不平等や気候変動といった社会問題を
ビジネスの力で解決するSDGs市場は確実
に増加するでしょう。そしてすでに、“強
さ”だけではなく“優しさ”が新しいパラダ
イムとなる準備ができていると私は感じ
ています。
日本は海外と比べて何が足りないと考え
ますか?
ひとつはトップのコミットメントで
す。日本は政治にも顕著ですが、トップ
が数年で変わる短期政権が多い。 そのた
め、短期的な結果を求めることを重視し
てしまい、企業のパーパスを再定義した
り、長期の価値創造の物語を描いたりと
いった取り組みがしづらいんです。
一方、欧州はトップの入れ替わりが少
在り方なのでしょうか。
ビジネスとして強い企業だけが評価さ
れる社会ではなく、強さと優しさをあわ
せ持つ企業こそが選ばれる世の中になっ
てほしいんです。私の好きな言葉に、レ
イモンド・チャンドラー『プレイバック』
に登場する「強くなければ生きていけな
い。しかし、優しくなければ、生きてい
く資格がない」という言葉があります。
社会起業家や環境起業家というのは、
世の中をよくしたいと考えている優しい
人たちです。しかし、世の中をよくしよ
うとするなら、強くもあらねばならな
い。企業で言えば、ちゃんと売上や利益
を上げて経済性を成立させないと、すべ
ては寝言になってしまうということです。
強く優しい企業が選ばれる仕組みを作るの
が、私たちのミッションです。
2019年創業。AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する国
内最大級の非財務データバンク「TERRAST β(テラスト・ベータ)」を提供。1社
あたり700以上の非財務データ項目を収集・分析することで、サステナビリティに貢
献する企業を印象論ではない形式で可視化。経済性における強さだけではなく、人間
性や環境性、社会性をあわせ持つ「強く優しい」企業の在り方=SX(サステナビリ
ティ・トランスフォーメーション)を提案・実現する。アクセラレータープログラム
「SAP.iO Foundry Tokyo」の1社にも採択されており、SAPと共に「真の企業価値
を可視化するサービス」の連携に向けた土台構築などが進行している。
サステナブル・ラボ株式会社 https://suslab.net/
企画 編集委員:
(左)横川 達也 (右)島津 雅子
企業のパーパスによって、SDGs 活動は自ずと決まってく
る
コスパのひとつ上の概念で
物事を判断する社会へ
RENJI HIRASE
平瀬 錬司
Interviewee's Voice
Sustainable Lab Inc.
Company Introduction
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 15
14
ずなんです。それなのに、SDGs活動がお
まけみたいになっているケースが多い。
日本には素晴らしいパーパス(=企業
の存在意義)を掲げられている会社が多
いと感じています。ところが、先ほどの
例でいう清掃活動が、その企業のパーパ
スに合致していない行動だったとすると
どうか。もちろん、その行動が誰かを幸
せにすることがあり、素晴らしい活動
であることは確かですが、企業のパー
パスとズレてしまうと、結局お金や時間
といった企業のリソースを無理やり引っ
張ってくることになってしまいます。こ
れは非常に“もったいない”活動ですよね。
“もったいないSDGs活動”をよいSDGsに転
換するには会社の存在意義を考えること
が大事とのことですが、一般社員にもで
きることはありますか?
確かに一般社員の方にとって、企業の
存在意義を考えるのは責任の重いことで
す。その場合、所属部署や関わっている
プロダクト、サービスなどの存在意義を
考えてみてはどうでしょうか?
コングロマリット企業では、例えばヘ
ルスケア事業や金融業、通信業など多岐
にわたる事業を展開しています。もちろ
ん企業として大きな存在意義があり、
ないファミリーカンパニーが多い為、長
期的な視点を持ってESG・SDGs対応がで
きているところが多いですね。データを
見ていると、ファミリーカンパニーの方
がESG・SDGs対応ができているところは
多いですね。
もうひとつは情報開示です。日本の企
業は秘密主義的で、女性社員の比率や有
給の取得率など、SDGsに関する報告を
オープンにしていない。欧米はステーク
ホルダーに対する説明責任が文化として
根付いてるので、良いことも悪いことも
開示します。日本の場合、完璧主義なと
ころや生真面目さも影響しているかもし
れませんが、説明責任を背負っている自
覚が相対的に少なく、結果的に非財務項
目の開示公開が遅れてしまっています。
“ 強く優しい ” 企業が
選ばれる仕組みを作る
そうした新しいパラダイムが受け入れら
れる世界では「TERRAST」のようなツー
ルをどう使えばいいですか。
事業が発展してきた。でも、一般社員の
方が全部を見通すのは難しいかもしれま
せん。そんな時は、自分が関わっている
サービスで、お客さんを健康にする、老
後楽しく暮らせるよう備えを蓄える、災
害時に家族とつながって安心できる通信
網を作る、などブレイクダウンする。そ
うすると、企業の大きな存在意義にもつ
なげやすくなります。手触り感のある存
在意義を定義することから始めてみてく
ださい。
ESG 投資が強化される世界で
日本企業がすべきこととは?
平瀬社長は、今後世界的にESGの投資額は
どれくらい増えていくとお考えでしょうか。
昨年(2021年)で約4000兆円でした
が、今は円安で5000兆円ほどになって
おり、金融資本全体の中では2〜3割くら
いを占めています。これは、ESG投資や
SDGs経営が増えているだけではなく、も
はや既存ビジネスがESGに組み込まれてい
るということです。この傾向は、未来に向
かってさらに強化されていくでしょう。
ESG視点の新しい市場も増えています。
例えば、車がEV(電気自動車)以外認め
られなくなってきているように、脱炭素
社会を実現するための市場が成長してい
世界中の投資家や事業会社、または一
般の生活者が、「TERRAST」をインフラ
として天気予報のように使っている世界
が理想ですね。
あらゆる生活者、あらゆる企業や投資
家は常に判断をしています。
その決断にお
いて、
経済合理性、
つまりコストパフォー
マンスを重視します。買い物や投資に限
らず、
行動もコスパがよいほうがいいんで
す。
私たちは、「TERRAST」を通して、そ
うした世の中をアップグレードしたいと
思っています。経済合理性になぞらえて
「人間合理性」という造語を使っている
んですが、コスパのよさに加えて、それ
が自分にとってよいのか、自分の家族に
とってよいのか、社会や地球にとってよ
いのかを考える。経済合理性のもうひと
つ上の人間合理性という概念で物事を判
断するのがあたりまえになる社会を実現
するのが私たちの究極のビジョンです。
それが御社のパーパスである“強く優しい”
ますよね。世の中がサステナビリティ化
するにあたって生まれる新市場は今後伸
びるのが約束されているため、投融資も
増えていきます。
1960年代ごろの高度成長期、人々はお
金を稼げばみんな幸せになれるというシ
ンプルな世界を創造していました。しか
し、先進国がひととおり成熟してしまっ
た現代は、“既存の強さ”いわゆる“お金儲
け”だけの追及には限界があることに誰し
もが気づいています。今後もさらに男女
の不平等や気候変動といった社会問題を
ビジネスの力で解決するSDGs市場は確実
に増加するでしょう。そしてすでに、“強
さ”だけではなく“優しさ”が新しいパラダ
イムとなる準備ができていると私は感じ
ています。
日本は海外と比べて何が足りないと考え
ますか?
ひとつはトップのコミットメントで
す。日本は政治にも顕著ですが、トップ
が数年で変わる短期政権が多い。 そのた
め、短期的な結果を求めることを重視し
てしまい、企業のパーパスを再定義した
り、長期の価値創造の物語を描いたりと
いった取り組みがしづらいんです。
一方、欧州はトップの入れ替わりが少
在り方なのでしょうか。
ビジネスとして強い企業だけが評価さ
れる社会ではなく、強さと優しさをあわ
せ持つ企業こそが選ばれる世の中になっ
てほしいんです。私の好きな言葉に、レ
イモンド・チャンドラー『プレイバック』
に登場する「強くなければ生きていけな
い。しかし、優しくなければ、生きてい
く資格がない」という言葉があります。
社会起業家や環境起業家というのは、
世の中をよくしたいと考えている優しい
人たちです。しかし、世の中をよくしよ
うとするなら、強くもあらねばならな
い。企業で言えば、ちゃんと売上や利益
を上げて経済性を成立させないと、すべ
ては寝言になってしまうということです。
強く優しい企業が選ばれる仕組みを作るの
が、私たちのミッションです。
2019年創業。AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する国
内最大級の非財務データバンク「TERRAST β(テラスト・ベータ)」を提供。1社
あたり700以上の非財務データ項目を収集・分析することで、サステナビリティに貢
献する企業を印象論ではない形式で可視化。経済性における強さだけではなく、人間
性や環境性、社会性をあわせ持つ「強く優しい」企業の在り方=SX(サステナビリ
ティ・トランスフォーメーション)を提案・実現する。アクセラレータープログラム
「SAP.iO Foundry Tokyo」の1社にも採択されており、SAPと共に「真の企業価値
を可視化するサービス」の連携に向けた土台構築などが進行している。
サステナブル・ラボ株式会社 https://suslab.net/
企画 編集委員:
(左)横川 達也 (右)島津 雅子
企業のパーパスによって、SDGs 活動は自ずと決まってく
る
コスパのひとつ上の概念で
物事を判断する社会へ
RENJI HIRASE
平瀬 錬司
Interviewee's Voice
Sustainable Lab Inc.
Company Introduction
ラグビーワールドカップ
(以下W杯)
に4大会出場し、
2019年W杯準々決勝南アフリカ戦では日本代表最年長記録となる38歳6か月
での代表キャップを獲得したトンプソンルーク氏。
2015年「ブライトンの軌跡」、
2019年「自国開催のW杯ベスト8」
など、
多様な
バックグランドを持つチームメイト、
ヘッドコーチ
(以下HC)
と協力して勝利を掴んできました。
関西弁を操り、
愛称の
「トモさん」
と親しまれ、
精神的なリーダーとしても活躍してきた鉄人に、
個性を纏めあげ、
強いチームをつくるためのヒントを伺いました。
URAYASU D-Rocks ニュージーランド出身。小さいころからラグビーをプレーし、
各年代の代表にも選出された。その後、アイルランドのクラブ
を経て、2004年に三洋電機に入部。2006年には近鉄へ移籍、
2010年に日本国籍を取得した。日本代表としてワールドカッ
プに4回(2007、11、15、19年)出場。2019年のW杯では日
本のベスト8入りに大きく貢献した。その後、2020年に現役引
退。ニュージーランドで農場を営んでいたが、2022年にシャ
イニングアークスで現役復帰。2022年現在は浦安D-Rocksに
所属。夫人との間に3人の子供がいる。
トンプソンルーク 浦安D-Rocks ラグビー選手
Next Stage Interview
THOMPSON LUKE
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 17
16
個性を纏めあげ、
強いチームをつくる。
アスリートに聞く、
多様性の生かし方
Diversi
t
y
Interview Theme
昨季2021年に現役復帰しました。
シーズンの感想を教えてください。
ラグビーへのPassion(情熱)を感じ
ながら仕事ができて、楽しかったし、興
奮しましたね。今、41歳だから若い人
とプレーするとおじいちゃんみたいです
(笑)。若手に体力的にかなわない部分
もあるけれど、プレーするうえで年齢は
関係ない。負けないようにトレーニング
したり、プレーするのはモチベーション
になりました。入れ替え戦で敗れ、来季
はディビジョン2でプレーすることにな
るのがめっちゃ残念。でも、チームの雰
囲気や結束力は良かったです。複雑な感
情はありますが来季が楽しみ。 もっと強
くなって戻ってきます。
2004年に初めて来日した当時は
どんな心境だったのでしょうか?
日本に来るのはもちろん大きな決断で
したが、当初は2年でNZへ帰るつもり
だったんです(笑)。ただ、日本のこ
とも、発展途上で頑張っている日本ラグ
ビーもめちゃ大好きになったからプレー
を続けることにしました。
最大の転機は2007年です。日本代表
のメンバーに選出されるのですが、お受
けするかどうかすごく悩みました。ラグ
ビーは国の代表に選出されると、簡単に
他の国に移ることができません。だから
一度日本代表になったら、オールブラッ
クス(NZ代表)になることをあきらめな
ければいけないのです。オールブラック
スはNZの子供たちの憧れであり、私の夢
でもありました。だから難しい判断を迫
られたのです。父や母、奥さんとよく話
をして、意見を聞きました。精神的にも
支えてもらいましたね。そして私は、家
族や友人の後押しもあり決断しました。
日本代表としてチャレンジしてW杯に出
ることを選んだんです。今振り返っても
アメージングで、人生のなかでも重大な
決断でした。この転機が今の幸せにつな
がっています。
2015年・2019年の日本代表
チームマネジメントの違い
ラグビー日本代表は、日本人だけでなく
さまざまなバックグランドを持つ選手が
集結していますが、トンプソンルークさ
んの考える多様性とはどんなものでしょ
うか?
例えば、日本人だけの高校生チームで
あっても、育った街や村によって、異な
る人生経験を積んでいる。これも立派な
多様性。異なる国や肌の色、背の高さに
関わらず、多様性とは、様々なバックグ
ラウンド、経験、歴史から生まれるもの
だと考えています。
2015年の日本代表はW杯で「ブライト
ンの軌跡」として歴史的な勝利をあげた
チームですが、どんなチームでしたか?
まさしく多様性を持ったチームでした
ね。選手だけでなくスタッフもいろいろ
なバックグラウンドを持ったメンバー
が、エディ・ジョーンズヘッドコーチ
(以下HC)のビジョンをフォローし、う
まく機能しました。W杯で南アフリカに
勝利し「ブライトンの軌跡」を起こした
2015の代表チームは2つのことを意識して
いました。
1つは、自分たちが新しい歴史を作る
ということ。もう1つはチームのメンタ
リティを変えていくことでした。という
のも、かつての日本代表は、「高望みを
せず、頑張って結果がでなければ仕方
ない」というムードがありました。しか
し、エディHCは「勝つこと、それが一番
重要である」というマインドに変えてい
きました。
新しい考え方を浸透させるために私た
ちはすごく努力しました。エディHCは最
高のトレーニングをハードにどんどんや
る(笑)。どこまでも能力を高めてベス
トな選手、世界最高のチームを目指そう
というやり方でした。私たちは多様な背
景を持つ選手が多数いる中で、ともにト
レーニングに励み、仲間としてリスペク
トしていくようになりました。その中で
団結力を高め、目標を高く持つことで、
選手一人ひとりのマインドセットが変
わっていったんです。
自国開催のW杯でベスト8入りを果たし
た2019年の日本代表チームはどんなチー
ムでしたか?
2019年のチームも多様性に富んでいま
した。日本、NZ、豪州、南アフリカなど
様々な地域で生まれた選手で構成されて
いましたから。でも出身は関係なく、日
本のために、国を代表するチームとして
2015年よりもさらに高い目標を掲げまし
た。 同じことを目標にして止まるのは、
成功とは言いませんからね。
多様性とは育った場所や背景、経験、歴史から生まれる
ラグビーワールドカップ
(以下W杯)
に4大会出場し、
2019年W杯準々決勝南アフリカ戦では日本代表最年長記録となる38歳6か月
での代表キャップを獲得したトンプソンルーク氏。
2015年「ブライトンの軌跡」、
2019年「自国開催のW杯ベスト8」
など、
多様な
バックグランドを持つチームメイト、
ヘッドコーチ
(以下HC)
と協力して勝利を掴んできました。
関西弁を操り、
愛称の
「トモさん」
と親しまれ、
精神的なリーダーとしても活躍してきた鉄人に、
個性を纏めあげ、
強いチームをつくるためのヒントを伺いました。
URAYASU D-Rocks ニュージーランド出身。小さいころからラグビーをプレーし、
各年代の代表にも選出された。その後、アイルランドのクラブ
を経て、2004年に三洋電機に入部。2006年には近鉄へ移籍、
2010年に日本国籍を取得した。日本代表としてワールドカッ
プに4回(2007、11、15、19年)出場。2019年のW杯では日
本のベスト8入りに大きく貢献した。その後、2020年に現役引
退。ニュージーランドで農場を営んでいたが、2022年にシャ
イニングアークスで現役復帰。2022年現在は浦安D-Rocksに
所属。夫人との間に3人の子供がいる。
トンプソンルーク 浦安D-Rocks ラグビー選手
Next Stage Interview
THOMPSON LUKE
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14
Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 17
16
個性を纏めあげ、
強いチームをつくる。
アスリートに聞く、
多様性の生かし方
Diversi
t
y
Interview Theme
昨季2021年に現役復帰しました。
シーズンの感想を教えてください。
ラグビーへのPassion(情熱)を感じ
ながら仕事ができて、楽しかったし、興
奮しましたね。今、41歳だから若い人
とプレーするとおじいちゃんみたいです
(笑)。若手に体力的にかなわない部分
もあるけれど、プレーするうえで年齢は
関係ない。負けないようにトレーニング
したり、プレーするのはモチベーション
になりました。入れ替え戦で敗れ、来季
はディビジョン2でプレーすることにな
るのがめっちゃ残念。でも、チームの雰
囲気や結束力は良かったです。複雑な感
情はありますが来季が楽しみ。 もっと強
くなって戻ってきます。
2004年に初めて来日した当時は
どんな心境だったのでしょうか?
日本に来るのはもちろん大きな決断で
したが、当初は2年でNZへ帰るつもり
だったんです(笑)。ただ、日本のこ
とも、発展途上で頑張っている日本ラグ
ビーもめちゃ大好きになったからプレー
を続けることにしました。
最大の転機は2007年です。日本代表
のメンバーに選出されるのですが、お受
けするかどうかすごく悩みました。ラグ
ビーは国の代表に選出されると、簡単に
他の国に移ることができません。だから
一度日本代表になったら、オールブラッ
クス(NZ代表)になることをあきらめな
ければいけないのです。オールブラック
スはNZの子供たちの憧れであり、私の夢
でもありました。だから難しい判断を迫
られたのです。父や母、奥さんとよく話
をして、意見を聞きました。精神的にも
支えてもらいましたね。そして私は、家
族や友人の後押しもあり決断しました。
日本代表としてチャレンジしてW杯に出
ることを選んだんです。今振り返っても
アメージングで、人生のなかでも重大な
決断でした。この転機が今の幸せにつな
がっています。
2015年・2019年の日本代表
チームマネジメントの違い
ラグビー日本代表は、日本人だけでなく
さまざまなバックグランドを持つ選手が
集結していますが、トンプソンルークさ
んの考える多様性とはどんなものでしょ
うか?
例えば、日本人だけの高校生チームで
あっても、育った街や村によって、異な
る人生経験を積んでいる。これも立派な
多様性。異なる国や肌の色、背の高さに
関わらず、多様性とは、様々なバックグ
ラウンド、経験、歴史から生まれるもの
だと考えています。
2015年の日本代表はW杯で「ブライト
ンの軌跡」として歴史的な勝利をあげた
チームですが、どんなチームでしたか?
まさしく多様性を持ったチームでした
ね。選手だけでなくスタッフもいろいろ
なバックグラウンドを持ったメンバー
が、エディ・ジョーンズヘッドコーチ
(以下HC)のビジョンをフォローし、う
まく機能しました。W杯で南アフリカに
勝利し「ブライトンの軌跡」を起こした
2015の代表チームは2つのことを意識して
いました。
1つは、自分たちが新しい歴史を作る
ということ。もう1つはチームのメンタ
リティを変えていくことでした。という
のも、かつての日本代表は、「高望みを
せず、頑張って結果がでなければ仕方
ない」というムードがありました。しか
し、エディHCは「勝つこと、それが一番
重要である」というマインドに変えてい
きました。
新しい考え方を浸透させるために私た
ちはすごく努力しました。エディHCは最
高のトレーニングをハードにどんどんや
る(笑)。どこまでも能力を高めてベス
トな選手、世界最高のチームを目指そう
というやり方でした。私たちは多様な背
景を持つ選手が多数いる中で、ともにト
レーニングに励み、仲間としてリスペク
トしていくようになりました。その中で
団結力を高め、目標を高く持つことで、
選手一人ひとりのマインドセットが変
わっていったんです。
自国開催のW杯でベスト8入りを果たし
た2019年の日本代表チームはどんなチー
ムでしたか?
2019年のチームも多様性に富んでいま
した。日本、NZ、豪州、南アフリカなど
様々な地域で生まれた選手で構成されて
いましたから。でも出身は関係なく、日
本のために、国を代表するチームとして
2015年よりもさらに高い目標を掲げまし
た。 同じことを目標にして止まるのは、
成功とは言いませんからね。
多様性とは育った場所や背景、経験、歴史から生まれる
WEB-jsug info14_final.pdf
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  • 1. 企画編集委員 大募集 JSUG INFO では次期企画編集委員メンバーを募集しています。 一緒に JSUG INFO を作り上げませんか? 好奇心旺盛な方、幅広い業界で人脈を広げたい方、 ものづくりが好きな方等々、エネルギーに満ち溢れるそこのあなた! ぜひ一緒に誌面を作り上げましょう。 記事の企画・編集なんてやったことない…という方も大丈夫です。 今年の企画編集委員メンバーは企画も編集も未経験でした。どなたでも大歓迎です。 ゼロからの企画・編集は決して簡単なものではありませんが、 自分の企画が形となって読者の皆様と共有できることには とても大きなやりがいを感じます。 社外の人脈を 広げたい 雑誌を 作ってみたい 取材で話を聞いて みたい人がいる こんな方にオススメ! 制作の様子は P94の 「JSUG INFO の裏側」 をチェック ! 件名に< JSUG INFO 企画編集委員 申し込み>と入れていただき 下記の 1 ~ 5 を明記して JSUG 事務局へ送信してください。 1. お名前 2. 会社名 3. 電話番号 4. メールアドレス 5. ご応募の動機 メールにてご応募ください ご応募は コ チ ラ か ら ! E-Mail: info@jsug.org Vol.14 2022 JAPAN SAP USERS’ GROUP 応募の条件:JSUG 会員企業に所属の方 第一特集 次のトビラを開く! Next Stageへのヒント!! 第二特集 SAP創業50年 ・ 日本進出30年 特別記念企画 SAP JAPANのつく り方 酒造界のイノベーシ ョンが 生んだ 『獺祭』 メタバースで叶う5つの夢 [ジェイサグインフォ] Japan sap users’ group information magazine Vol.14 Winter 2022 ポストコロナの新時代の幕開け! もっともっと多様なメンバーが刺激し合い 楽しく自分らしさを追求する新たなステージへ
  • 3. 6 第一特集 次のトビラを開く! Next Stageへのヒント!! DX請負人の仕事術 パナソニック ホールディングス(株) 執行役員(グループCIO) 玉置 肇 強く優しい企業が目指すべきリターンを生む SDGs活動の在り方とは サステナブル ・ ラボ(株) 代表取締役CEO 平瀬 錬司 個性を纏めあげ、 強いチームをつくる。 アスリートに聞く、 多様性の生かし方 浦安D-Rocks ラグビー選手 トンプソンルーク 20 第二特集 SAP創業50年 ・ 日本進出30年 特別記念企画 SAP JAPANのつくり方 3人のキーパーソンに聞いたSAPの過去 ・ 現在 ・ 未来 (株)コンカー 代表取締役社長 三村 真宗 SAP ジャパン(株) 常務執行役員 佐野 太郎 SAP ジャパン(株) 代表取締役社⻑ 鈴木 洋史 26 酒造界のイノベーションが生んだ 『獺祭』 廃業寸前の酒蔵 を"人"と"データ"で大逆転の口開け 旭酒造 (株) 代表取締役社長 桜井 一宏 28 イノベーションや社会課題解決のヒントがココにある⁉ ゲノム情報を元にしたバイオDXのススメ 広島大学 教授 山本 卓 30 SNSはもう古い? 次世代のコミュニケーションはこう変わる ! メタバースで叶う5つの夢 通勤時間が0秒になる!?/悩んでいたコンプレックスを克服!? / 私の 「好き」 がおカネに変わる/自宅がライブ会場になる/ ゲームを極めて本物のカーレーサーになる 36 コレを導入したら劇的変化 ! わが社の自社事例 (プラチナサポーター紹介) 48 JSUG NEWS News topics/DX銘柄2022に会員企業が多数選出 部会Report/新部会紹介/新規入会企業 54 世界中のSAPユーザーグループは今 フィンランド/シンガポール/コロンビア 94 編集後記 ~JSUG INFOの裏側~ 広告掲載企業 2 (株)エヌ ・ ティ ・ ティデータ/3 三井金属ユアソフト(株)/24 SAPジャパン (株) /47 (株)レイヤーズ ・ コンサルティング/ 53 クレスコ ・ イー ・ ソリューション(株)/69 JFE システムズ(株)/70 キャップジェミニ(株)/71 アクセンチュア(株)/72 (株)ベリサーブ/ 73 日鉄日立システムエンジニアリング(株)/93 クラウドコンサルティング(株)/96 グーグル ・ クラウド ・ ジャパン合同会社/97 富士通(株) 57 Case Study 注目の事例紹介 57 (株)アイ ・ ピー ・ エス/58 アビームコンサルティング(株)/59 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社/ 60 EYストラテジー ・ アンド ・ コンサルティング(株)/61 (株)シグマクシス/62 日本アイ ・ ビー ・ エム(株)/63 (株)BeeX/ 64 ビジネスエンジニアリング(株)/65 (株)日立製作所/66 富士通(株)/67 ブラックライン(株)/68 丸紅ITソリューションズ(株) 74 Solutions 注目のソリューション 74 ウィングアーク1st(株)/75 WalkMe(株) /76 (株)SNP Japan/77 SCSK(株) /78 FPTジャパンホールディングス(株) / 79 オープンテキスト(株) /80 グーグル ・ クラウド ・ ジャパン合同会社/81 コベルコシステム(株) /82 (株)ソフテス/83 TIS(株) / 84 デロイトトーマツコンサルティング合同会社/85 (株)電通国際情報サービス/86 日鉄日立システムエンジニアリング(株) / 87 日本タタ ・ コンサルタンシー ・ サービシズ(株) /88 日本電気(株) /89 日本ヒューレット ・ パッカード合同会社/ 90 (株)野村総合研究所/91 (株)ベリサーブ/92 三井情報(株) JSUG Awardは、 JSUGの活動に多大な貢献のあった方々に感謝の意を表し、 MVP賞、 ベストサポーター賞、 プラチナサポーター継続賞、 事例ダウンロード賞、 特別功労賞、 特別賞の 6つの区分で表彰を行うものです。 2022年度の受賞者および企業は以下のとおりです。 ポストコロナの新時代へ。 変化の兆しを感じて 平素よりJSUGの活動に多大なご尽力、ご協力を 賜り、誠にありがとうございます。年次会報「JSUG INFO」をお届けいたします。 「JSUG INFO」は今年 で14回目の刊行となりましたが、この3年間は新型 コロナウイルスの感染者が増加と減少を繰り返す中で の取材、編集、刊行を余儀なくされました。取材や編 集会議のほとんどをリモートで行わねばならなかっ た2年前とは異なり、今年はほとんどの取材をオンサ イトで行うことができました。取材をオンサイトで行 う一方、オンラインの打合せも組み合わせながら効率 的に作業を進めていく中に、まさにウィズコロナの時 代、そしてポストコロナ時代への変化を感じることの できる「JSUG INFO」作成となりました。SAPが創 業50周年、 SAPジャパンも創業30周年を迎えた今年、 Globalでも日本でも記念イベントが行われ、そこに もポストコロナ時代への移行が伺えることとなりまし た。 今年のJSUGはその活動方針に、 「ポストコロナの 新時代の幕開け!もっともっと多様なメンバーが刺激 しあい、自分らしさを追求する新たなステージへ。 」 を掲げています。まさにポストコロナの新時代へと向 かう今、企業やわたしたち個人は、なにを考え、なに を行うべきなのか? 次のステージに進むためにはな にが必要なのか? 多方面で活躍される方々への取材 を通じ、読者の皆様が次のステージへ進むためのヒン トやアイディアを考える一助となれれば、そのような 思いで本誌を刊行いたしました。ぜひ、お楽しみいた だければ幸いです。 JSUG 事務局長 上田 耕太郎氏 MVP賞 Next-Gen Boost Boost Designer KNT-CTホールディ ングス(株) 宮石 貴弘 様 (株)荏原製作所 小川 恭弘 様 (株)NYK Business System 加瀨 佑樹 様 トラスコ中山(株) 渡邊 美波 様 (株)電通国際情報サービス 畑中 昂淳 様 ビジネスエンジニアリ ング(株) 木下 千尋 様 アクセンチュア(株) 韓 瑜 様 WalkMe(株) 赤津 美紀 様 SAPジャパン(株) 川邉 未来 様 SAPジャパン(株) 木村 優希 様 SAPジャパン(株) 小泉 隆太朗 様 ベス トサポーター賞 プラチナサポーター継続賞 富士通株式会社 (株)アイ ・ ピー ・ エス、 アクセンチュア(株)、 アビームコンサルティ ング(株)、 E Yス トラテジー ・ アン ド ・ コンサルティ ング(株)、 S C S K(株)、 (株)エヌ ・ ティ ・ ティ ・ データ、 グーグル ・ クラウ ド ・ ジャパン(合)、 (株)シグマクシス、 日本アイ ・ ビー ・ エム(株)、 日本タタ ・ コンサルタンシー ・ サービシズ(株)、 日本電気(株)、 日本ヒューレッ ト ・ パッカード(合)、 (株)B e e X、 (株)日立製作所、 富士通(株)、 三井情報(株)、 (株)レイヤーズ ・ コンサルティ ング 事例ダウンロー ド賞 東京化成工業株式会社 Global IT 幸村 祥生 様 特別賞 特別功労賞 味の素株式会社 コーポレートサービス本部 DX推進部 基幹システム推進グループ 中村 恵子 様 SAPジャパン(株) アポロREN 堀内 みどり様 、 常盤 誠 様、 西村 洋紀 様、 岡山 直樹 様 SAPジャパン(株) Path to intrapreneurs 事務局 神戸 雄太 様、 中島 千鶴 様 INFO. [ジェイサグインフォ] Japan sap users’ group information magazine Vol.14 Winter 2022 Award JSUG 2022 発表 ! 発行元 :ジャパンSAPユーザーグループ (JSUG) 1996年設立、 2022年10月末現在、 法人会員 (ユーザー) 466社、 賛助会員 (パートナー) 128社の計594社 の会員企業と、 JSUG NET登録者9,288名、 また計38の部会 ・ WG ・ 分科会などの活動体で構成。 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 5 4 6 第一特集 次のトビラを開く! Next Stageへのヒント!! DX請負人の仕事術 パナソニック ホールディングス(株) 執行役員(グループCIO) 玉置 肇 強く優しい企業が目指すべきリターンを生む SDGs活動の在り方とは サステナブル ・ ラボ(株) 代表取締役CEO 平瀬 錬司 個性を纏めあげ、 強いチームをつくる。 アスリートに聞く、 多様性の生かし方 浦安D-Rocks ラグビー選手 トンプソンルーク 20 第二特集 SAP創業50年 ・ 日本進出30年 特別記念企画 SAP JAPANのつくり方 3人のキーパーソンに聞いたSAPの過去 ・ 現在 ・ 未来 (株)コンカー 代表取締役社長 三村 真宗 SAP ジャパン(株) 常務執行役員 佐野 太郎 SAP ジャパン(株) 代表取締役社⻑ 鈴木 洋史 26 酒造界のイノベーションが生んだ 『獺祭』 廃業寸前の酒蔵 を"人"と"データ"で大逆転の口開け 旭酒造 (株) 代表取締役社長 桜井 一宏 28 イノベーションや社会課題解決のヒントがココにある⁉ ゲノム情報を元にしたバイオDXのススメ 広島大学 教授 山本 卓 30 SNSはもう古い? 次世代のコミュニケーションはこう変わる ! メタバースで叶う5つの夢 通勤時間が0秒になる!?/悩んでいたコンプレックスを克服!? / 私の 「好き」 がおカネに変わる/自宅がライブ会場になる/ ゲームを極めて本物のカーレーサーになる 36 コレを導入したら劇的変化 ! わが社の自社事例 (プラチナサポーター紹介) 48 JSUG NEWS News topics/DX銘柄2022に会員企業が多数選出 部会Report/新部会紹介/新規入会企業 54 世界中のSAPユーザーグループは今 フィンランド/シンガポール/コロンビア 94 編集後記 ~JSUG INFOの裏側~ 広告掲載企業 2 (株)エヌ ・ ティ ・ ティデータ/3 三井金属ユアソフト(株)/24 SAPジャパン (株) /47 (株)レイヤーズ ・ コンサルティング/ 53 クレスコ ・ イー ・ ソリューション(株)/69 JFE システムズ(株)/70 キャップジェミニ(株)/71 アクセンチュア(株)/72 (株)ベリサーブ/ 73 日鉄日立システムエンジニアリング(株)/93 クラウドコンサルティング(株)/96 グーグル ・ クラウド ・ ジャパン合同会社/97 富士通(株) 57 Case Study 注目の事例紹介 57 (株)アイ ・ ピー ・ エス/58 アビームコンサルティング(株)/59 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社/ 60 EYストラテジー ・ アンド ・ コンサルティング(株)/61 (株)シグマクシス/62 日本アイ ・ ビー ・ エム(株)/63 (株)BeeX/ 64 ビジネスエンジニアリング(株)/65 (株)日立製作所/66 富士通(株)/67 ブラックライン(株)/68 丸紅ITソリューションズ(株) 74 Solutions 注目のソリューション 74 ウィングアーク1st(株)/75 WalkMe(株) /76 (株)SNP Japan/77 SCSK(株) /78 FPTジャパンホールディングス(株) / 79 オープンテキスト(株) /80 グーグル ・ クラウド ・ ジャパン合同会社/81 コベルコシステム(株) /82 (株)ソフテス/83 TIS(株) / 84 デロイトトーマツコンサルティング合同会社/85 (株)電通国際情報サービス/86 日鉄日立システムエンジニアリング(株) / 87 日本タタ ・ コンサルタンシー ・ サービシズ(株) /88 日本電気(株) /89 日本ヒューレット ・ パッカード合同会社/ 90 (株)野村総合研究所/91 (株)ベリサーブ/92 三井情報(株) JSUG Awardは、 JSUGの活動に多大な貢献のあった方々に感謝の意を表し、 MVP賞、 ベストサポーター賞、 プラチナサポーター継続賞、 事例ダウンロード賞、 特別功労賞、 特別賞の 6つの区分で表彰を行うものです。 2022年度の受賞者および企業は以下のとおりです。 ポストコロナの新時代へ。 変化の兆しを感じて 平素よりJSUGの活動に多大なご尽力、ご協力を 賜り、誠にありがとうございます。年次会報「JSUG INFO」をお届けいたします。 「JSUG INFO」は今年 で14回目の刊行となりましたが、この3年間は新型 コロナウイルスの感染者が増加と減少を繰り返す中で の取材、編集、刊行を余儀なくされました。取材や編 集会議のほとんどをリモートで行わねばならなかっ た2年前とは異なり、今年はほとんどの取材をオンサ イトで行うことができました。取材をオンサイトで行 う一方、オンラインの打合せも組み合わせながら効率 的に作業を進めていく中に、まさにウィズコロナの時 代、そしてポストコロナ時代への変化を感じることの できる「JSUG INFO」作成となりました。SAPが創 業50周年、 SAPジャパンも創業30周年を迎えた今年、 Globalでも日本でも記念イベントが行われ、そこに もポストコロナ時代への移行が伺えることとなりまし た。 今年のJSUGはその活動方針に、 「ポストコロナの 新時代の幕開け!もっともっと多様なメンバーが刺激 しあい、自分らしさを追求する新たなステージへ。 」 を掲げています。まさにポストコロナの新時代へと向 かう今、企業やわたしたち個人は、なにを考え、なに を行うべきなのか? 次のステージに進むためにはな にが必要なのか? 多方面で活躍される方々への取材 を通じ、読者の皆様が次のステージへ進むためのヒン トやアイディアを考える一助となれれば、そのような 思いで本誌を刊行いたしました。ぜひ、お楽しみいた だければ幸いです。 JSUG 事務局長 上田 耕太郎氏 MVP賞 Next-Gen Boost Boost Designer KNT-CTホールディ ングス(株) 宮石 貴弘 様 (株)荏原製作所 小川 恭弘 様 (株)NYK Business System 加瀨 佑樹 様 トラスコ中山(株) 渡邊 美波 様 (株)電通国際情報サービス 畑中 昂淳 様 ビジネスエンジニアリ ング(株) 木下 千尋 様 アクセンチュア(株) 韓 瑜 様 WalkMe(株) 赤津 美紀 様 SAPジャパン(株) 川邉 未来 様 SAPジャパン(株) 木村 優希 様 SAPジャパン(株) 小泉 隆太朗 様 ベス トサポーター賞 プラチナサポーター継続賞 富士通株式会社 (株)アイ ・ ピー ・ エス、 アクセンチュア(株)、 アビームコンサルティ ング(株)、 E Yス トラテジー ・ アン ド ・ コンサルティ ング(株)、 S C S K(株)、 (株)エヌ ・ ティ ・ ティ ・ データ、 グーグル ・ クラウ ド ・ ジャパン(合)、 (株)シグマクシス、 日本アイ ・ ビー ・ エム(株)、 日本タタ ・ コンサルタンシー ・ サービシズ(株)、 日本電気(株)、 日本ヒューレッ ト ・ パッカード(合)、 (株)B e e X、 (株)日立製作所、 富士通(株)、 三井情報(株)、 (株)レイヤーズ ・ コンサルティ ング 事例ダウンロー ド賞 東京化成工業株式会社 Global IT 幸村 祥生 様 特別賞 特別功労賞 味の素株式会社 コーポレートサービス本部 DX推進部 基幹システム推進グループ 中村 恵子 様 SAPジャパン(株) アポロREN 堀内 みどり様 、 常盤 誠 様、 西村 洋紀 様、 岡山 直樹 様 SAPジャパン(株) Path to intrapreneurs 事務局 神戸 雄太 様、 中島 千鶴 様 INFO. [ジェイサグインフォ] Japan sap users’ group information magazine Vol.14 Winter 2022 Award JSUG 2022 発表 ! 発行元 :ジャパンSAPユーザーグループ (JSUG) 1996年設立、 2022年10月末現在、 法人会員 (ユーザー) 466社、 賛助会員 (パートナー) 128社の計594社 の会員企業と、 JSUG NET登録者9,288名、 また計38の部会 ・ WG ・ 分科会などの活動体で構成。 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 5 4
  • 4. Special Feature DX Panasonic Holdings Corporation T amaokiHa jime SDGs Sustainable Lab Inc. HiraseR enji Diversity URAYASU D-Rocks T hompson Luke 人々の生活様式や、 社会的価値観に大きな影響を与えた新型コロナウイルス。 新しい時代のニュースタンダー ドを求め、 企業では様々な模索が行われています。 JSUGでは2022年の活動方針と して 「ポス トコロナの新時代の幕開け ! もっ と もっ と 多様なメ ンバーが刺激し合い楽しく 自分ら しさを追求する新たなステージへ」 と定めま した。 次の ト ビラを開く ために、 今、 必要なこ とは何なのか。 DX ・ SDGs ・ ダイバーシティの各テーマでさまざまな壁を打ち破り、 その道を切り開いてきた リーダーたちにNext Stageへ到達するためのヒン トをうかがってきま した。 次の ト ビラを開く ! ヒン ト ! ! 巻頭特集 JSUG INFO VOL. 14 への Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 7 6 Special Feature DX Panasonic Holdings Corporation T amaokiHa jime SDGs Sustainable Lab Inc. HiraseR enji Diversity URAYASU D-Rocks T hompson Luke 人々の生活様式や、 社会的価値観に大きな影響を与えた新型コロナウイルス。 新しい時代のニュースタンダー ドを求め、 企業では様々な模索が行われています。 JSUGでは2022年の活動方針と して 「ポス トコロナの新時代の幕開け ! もっ と もっ と 多様なメ ンバーが刺激し合い楽しく 自分ら しさを追求する新たなステージへ」 と定めま した。 次の ト ビラを開く ために、 今、 必要なこ とは何なのか。 DX ・ SDGs ・ ダイバーシティの各テーマでさまざまな壁を打ち破り、 その道を切り開いてきた リーダーたちにNext Stageへ到達するためのヒン トをうかがってきま した。 次の ト ビラを開く ! ヒン ト ! ! 巻頭特集 JSUG INFO VOL. 14 への Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 7 6
  • 5. HAJIME TAMAOKI Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 9 8 DX 請負人の 仕事術 DX Interview Theme これまで数々の企業でデジタル部門の組織 改革を担われてきましたが、その原点はど のようなものでしょうか。 組織の変革ということを特別意識しはじ めたのは、2010年頃のことでしょうか。 当時私はP&Gに所属していて、本拠地ア メリカのHR Tech推進プロジェクトにディ レクターとしてアサインされました。ミッ ションは、現地の約150人からなるチーム をリビルドし、停滞していたプロジェクト を活性化させること。40歳そこそこの日 本人が、50代ばかりのアメリカ人チーム を変えようというのですから、それがいか にタフな仕事であるかはご想像いただける ことでしょう。 そもそも、世界16万人のP&G社員を管 理する人事情報システムは非常に取り扱 いが難しく、データベースを統合するに も制度を改革するにもトラブル続きでし た。そのためチームはすっかり疲弊してお り、“輝いて仕事をしている”というには程 遠い状態だったのです。その空気を刷新す るためにまず試みたのが、「マーケットソ リューションズ」から「デジタルソリュー ションズ」へ組織の名称を変更すること。 それと並行してロゴやTシャツも作成し、 「We are digital solutions」なんてメッ セージも入れてみる──これが結構効きま したね。当時はデジタルなんて言葉も一般 化していませんでしたが、途端にチームが みずみずしさを取り戻したようになりまし た。プロジェクトやチームの悪い点をあげ つらうのではなく、ポジティブな雰囲気を 醸成することが組織変革のキモであること を学んだ経験でした。 その後、P&Gの各国拠点で組織変革の キャリアを積み、ファーストリテイリング ではグローバルの組織をイチからつくるた めに柳井氏と仕事をご一緒させてもらい、 その次にアクサ生命に移りました。これは フランス系保険会社ですが、もともとは日 本団体生命との統合で誕生した会社です。 私が参画した時点で、統合からすでに16 年以上も経っているのに、2社は本当に融 合したとはいえない状況でした。その原因 は、フランスから出向してくるCIOやCTO と、日本団体生命出身の日本人社員との 間に横たわる“亀裂”です。この亀裂を埋め るため、私はとにかく社員が話しやすい空 気を作ることから始めました。積極的にス タッフに声をかけ、仕事以外のことも話す ようにして、彼らの本音を引き出すことに 努めたのです。それから、古いオフィスを リノベーションしたり、スーツからカジュ アルな服装に変えたり、次々と環境を変え ていきました。そうすると、組織ってもの すごく変わっていくんですね。最もうれし く思ったのは、みんなが仕事に誇りを持つ ようになってくれたこと。このとき私はす でに50代半ばになっていましたが、「変 えるってすごく面白いし、変えることがで きるんだ」と実感しました。こうした一連 の経験が、私をDX請負人として成長させ てくれたのでしょう。 持続可能なレガシーを つくるために必要なこととは 「組織名の変更」「オフィスのリノベー ション」などの施策は、DXとは直接関係 ないように思われます。 確かに一見そう思われるかもしれません ね。私は組織変革を3階層のフレームワー クで捉えています(次頁参照)。第1階層 は「IT・プロセスの変革」、これは業務プ ロセスやポートフォリオなど、IT構造の 中でも比較的目に見えやすい部分の変革 です。いわゆるERP製品は第1階層に関わ るソリューションを提供するものですね。 しかし、この変革だけでは数年を経ると陳 腐化して持続しません。そこで第2階層、 「オペレーティングモデルの変革」といっ てコストの流れや組織構造、協力会社と の関係にメスを入れることが必要になって きます。それから「組織名を変える」「オ フィスをリノベーションする」といった試 みは、その次の第3階層に関わる施策。す なわち、働き方やマインドセット、組織文 化に影響を及ぼす「カルチャーの変革」で す。第1・2階層を支える第3階層にまで変 革して「DXが成った」と言えるのです。 ただし第2、第3階層を変えるのは、生 易しいことではありません。しかし、真剣 に組織改革を考えるならば、一過性のもの ではなく、その企業に根差した持続可能な 変革であることが必要です。システムは5 年とかで古くなる。だから変革を担うリー ダーは多大なエネルギーを注いででも、第 2階層、第3階層まで掘り進め、レガシー をつくっていかなければいけないのです。 組織改革の第3階層まで踏み込むために、 リーダーに必要な心構えとはどのようなも のでしょうか。 変革は痛みが伴うものですから、「みん なで一緒に組織を変えていこう」とお題目 P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命など、名だたる企業で変革を主導してきた玉置肇氏。 現在はパナソニックグループCIOとして、PX(Panasonic Transformation)を指揮しています。 外資企業や日本企業で、“DX請負人”としてプロジェクトを推進してきた玉置氏に、 DXを成功に導くためのヒントや変革を実現するためのプロセスについて伺ってみました。 システムは 5 年で古くなる。 改革して持続可能なレガシーをつくろう 1993年、現P&Gジャパン合同会社に入社後、システム畑を歩 み、その間、日本・米国・シンガポールで地域CIOやグロー バル・ディレクターなどの要職を務める。2014年に株式会社 ファーストリテイリングに入社、グループCIOに就任。2017 年にはアクサ生命保険株式会社の執行役員インフォメーション テクノロジー本部長に。2021年5月より現職。 玉置 肇 パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 グループ・チーフ・インフォメーション・オフィサー (グループCIO) パナソニックインフォメーションシステムズ株式会社 代表取締役社長 Next Stage Interview パナソニックホールディングス HAJIME TAMAOKI Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 9 8 DX 請負人の 仕事術 DX Interview Theme これまで数々の企業でデジタル部門の組織 改革を担われてきましたが、その原点はど のようなものでしょうか。 組織の変革ということを特別意識しはじ めたのは、2010年頃のことでしょうか。 当時私はP&Gに所属していて、本拠地ア メリカのHR Tech推進プロジェクトにディ レクターとしてアサインされました。ミッ ションは、現地の約150人からなるチーム をリビルドし、停滞していたプロジェクト を活性化させること。40歳そこそこの日 本人が、50代ばかりのアメリカ人チーム を変えようというのですから、それがいか にタフな仕事であるかはご想像いただける ことでしょう。 そもそも、世界16万人のP&G社員を管 理する人事情報システムは非常に取り扱 いが難しく、データベースを統合するに も制度を改革するにもトラブル続きでし た。そのためチームはすっかり疲弊してお り、“輝いて仕事をしている”というには程 遠い状態だったのです。その空気を刷新す るためにまず試みたのが、「マーケットソ リューションズ」から「デジタルソリュー ションズ」へ組織の名称を変更すること。 それと並行してロゴやTシャツも作成し、 「We are digital solutions」なんてメッ セージも入れてみる──これが結構効きま したね。当時はデジタルなんて言葉も一般 化していませんでしたが、途端にチームが みずみずしさを取り戻したようになりまし た。プロジェクトやチームの悪い点をあげ つらうのではなく、ポジティブな雰囲気を 醸成することが組織変革のキモであること を学んだ経験でした。 その後、P&Gの各国拠点で組織変革の キャリアを積み、ファーストリテイリング ではグローバルの組織をイチからつくるた めに柳井氏と仕事をご一緒させてもらい、 その次にアクサ生命に移りました。これは フランス系保険会社ですが、もともとは日 本団体生命との統合で誕生した会社です。 私が参画した時点で、統合からすでに16 年以上も経っているのに、2社は本当に融 合したとはいえない状況でした。その原因 は、フランスから出向してくるCIOやCTO と、日本団体生命出身の日本人社員との 間に横たわる“亀裂”です。この亀裂を埋め るため、私はとにかく社員が話しやすい空 気を作ることから始めました。積極的にス タッフに声をかけ、仕事以外のことも話す ようにして、彼らの本音を引き出すことに 努めたのです。それから、古いオフィスを リノベーションしたり、スーツからカジュ アルな服装に変えたり、次々と環境を変え ていきました。そうすると、組織ってもの すごく変わっていくんですね。最もうれし く思ったのは、みんなが仕事に誇りを持つ ようになってくれたこと。このとき私はす でに50代半ばになっていましたが、「変 えるってすごく面白いし、変えることがで きるんだ」と実感しました。こうした一連 の経験が、私をDX請負人として成長させ てくれたのでしょう。 持続可能なレガシーを つくるために必要なこととは 「組織名の変更」「オフィスのリノベー ション」などの施策は、DXとは直接関係 ないように思われます。 確かに一見そう思われるかもしれません ね。私は組織変革を3階層のフレームワー クで捉えています(次頁参照)。第1階層 は「IT・プロセスの変革」、これは業務プ ロセスやポートフォリオなど、IT構造の 中でも比較的目に見えやすい部分の変革 です。いわゆるERP製品は第1階層に関わ るソリューションを提供するものですね。 しかし、この変革だけでは数年を経ると陳 腐化して持続しません。そこで第2階層、 「オペレーティングモデルの変革」といっ てコストの流れや組織構造、協力会社と の関係にメスを入れることが必要になって きます。それから「組織名を変える」「オ フィスをリノベーションする」といった試 みは、その次の第3階層に関わる施策。す なわち、働き方やマインドセット、組織文 化に影響を及ぼす「カルチャーの変革」で す。第1・2階層を支える第3階層にまで変 革して「DXが成った」と言えるのです。 ただし第2、第3階層を変えるのは、生 易しいことではありません。しかし、真剣 に組織改革を考えるならば、一過性のもの ではなく、その企業に根差した持続可能な 変革であることが必要です。システムは5 年とかで古くなる。だから変革を担うリー ダーは多大なエネルギーを注いででも、第 2階層、第3階層まで掘り進め、レガシー をつくっていかなければいけないのです。 組織改革の第3階層まで踏み込むために、 リーダーに必要な心構えとはどのようなも のでしょうか。 変革は痛みが伴うものですから、「みん なで一緒に組織を変えていこう」とお題目 P&G、ファーストリテイリング、アクサ生命など、名だたる企業で変革を主導してきた玉置肇氏。 現在はパナソニックグループCIOとして、PX(Panasonic Transformation)を指揮しています。 外資企業や日本企業で、“DX請負人”としてプロジェクトを推進してきた玉置氏に、 DXを成功に導くためのヒントや変革を実現するためのプロセスについて伺ってみました。 システムは 5 年で古くなる。 改革して持続可能なレガシーをつくろう 1993年、現P&Gジャパン合同会社に入社後、システム畑を歩 み、その間、日本・米国・シンガポールで地域CIOやグロー バル・ディレクターなどの要職を務める。2014年に株式会社 ファーストリテイリングに入社、グループCIOに就任。2017 年にはアクサ生命保険株式会社の執行役員インフォメーション テクノロジー本部長に。2021年5月より現職。 玉置 肇 パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員 グループ・チーフ・インフォメーション・オフィサー (グループCIO) パナソニックインフォメーションシステムズ株式会社 代表取締役社長 Next Stage Interview パナソニックホールディングス
  • 6. Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 11 10 だけ繰り返していても意味はありません。 誠意と情熱をもって本心から訴えかけな ければ、人々が動くことはないでしょう。 本心から発していないスローガンは、上滑 りして人々の心には響くことはないです。 オーセンティック(Authentic)という英 単語があります。正真正銘の、信頼できる という意味ですが、リーダーが発する言葉 は、まさにオーセンティックであることが 必須と考えています。この改革を成し遂げ れば、会社だけではなく社員一人ひとりが 幸せになると伝え続ける努力が大切です。 情報システム部門は立場が弱い その地位を引き上げたい 伝統があって規模が大きい企業では、どう してもレガシーに固執しがちです。どのよ うな打ち手があるのでしょうか。 アクサ生命の例をひとつ紹介しましょ う。同社には1,000億円以上を投入して 作った「ND21」という基幹システムがあ りました。フランス本社の幹部はこれを古 いシステムだと悪評し、入れ替えを命じ ました。ですが、そう易々とレガシーを悪 と断じてよいものでしょうか?そこに疑問 を持ちました。実際に過去にさかのぼり仕 様書を調べてみると、先進的な仕様が盛 リングにいたとき学んだ言葉です。事前準 備と段取りを徹底することを意味してい て、パナソニックに入社するときも2カ月 以上前から準備を進めていました。人・モ ノ・金の流れや課題など、集められる限り の情報を集め、今後私がとる施策の原理 原則、どのような順番で実施するかなど、 30ページほどの資料にまとめたうえで初 日を迎えています。改革の請負人が、就任 後の数カ月は現状を把握。まずはお手並み 拝見と悠長に構えていてはコトは動きませ ん。事前準備に全力を注ぎ、一気呵成にプ ロジェクトを垂直立ち上げすることが、物 事を上手く進めるためには欠かせない。私 はそう考えています。 成功も負のレガシーも システムに反映されている 今まさに、日本企業が始めるべきDXの第 一歩(行動や考え方)を教えてください。 まずは自社のレガシーをプレーンな目 線で丁寧に点検してください。その中から 「負のレガシー」を抽出したなら、断固と り込まれている優れたシステムであるこ とが分かりましたので、入れ替えからモダ ナイゼーションへ方針を切り替えました。 つくづく噂や評判で物事を決めず、自ら調 べて評価することが大切ですね。私は“古 くて悪いシステム”というレッテルが貼ら れてしまった「ND21」を、ブランディン グによって変えていこうと決めました。 「ND21」の優れた点を外部に向けて発信 していくうちに、システムに関わった社員 たち自身は次第に誇りを感じてくれるよう になったのです。守るべきものは全力で守 り、変えるべきものは変えていく。そうす れば、おのずと人々の意識と働き方は変 わっていくものです。 日本では、情報システム部門の立場が弱い 企業が多数見られます。それがDX推進の 妨げることもあるのでしょうか。 情報システム部門は立場が弱い。日本だ けではなく世界中で同じ傾向にあります。 予算を使うコスト部門に位置づけられてい るからです。決して止まってはならないク リティカルなインフラも担っているのです が、人々がそれを意識することも少ないの でしょう。+αの価値や利益を生み出す部 門に変わることも必要です。 してそれを壊す覚悟を固めてください。負 のレガシーは商習慣やステークホルダー との関係性、それにまつわるさまざまな業 務プロセス、組織の在り方など、さまざま な要素に根ざしています。かつての成功体 験さえも足かせになっているかもしれませ ん。こうした実情を鏡のように映し出して いるのが、実はシステムなのです。ですか ら、情報システムを見れば、その企業がど のようなレガシーを抱えているのかが分か ります。情報システムが古いと評される場 合、その原因は情報システム自体よりも、 取り巻く環境に隠されているものです。そ れを変えなければ、変革は成功しないで しょう。 ただ、アクサ生命の基幹システムのよう に、良いレガシーもあります。パナソニッ クの場合なら松下幸之助さんが築いた経営 理念ですね。これは当然、いつまでも大事 に守り続けるべきものです。何を大事にす るか、何を変えるかを見定め、変えるべき ものは断固として変えていく。これが基本 となる考え方です。 また、DXを推進したいがために、情報 システム部門とは別にDX推進室やデジタ ル推進本部なんて部署を作ってみる。そん な企業もありますが、私はDX推進を担う 部署は、情報システム部門と分離してはい けないと考えています。目新しい部署を新 設して、一時的に気運は高まるかもしれま せんが、持続的に運営していくことはでき ないでしょう。DXを実現できるのは、企 業の基盤を支える情報システム部門をおい て他にないと確信しています。ですから、 自社に限らず、あらゆる情報システム部門 の地位を引き上げること。それが私のモチ ベーションといっても過言ではありません。 DXの請負人として企業にジョインした 後、具体的にどのようにしてプロジェクト を動かしていきますか。 新しく企業に参画するとき、自分の仲 間を連れてくるCⅹOは少なくありません が、私は原則一人で現場に臨みます。なぜ なら、もともと在籍している皆さんの心に 火をつけないことには、変革が定着しない からです。そうすると入社したては孤軍。 だからその分、必死になって「前始末」に 取り組んでいます。 「前始末」とは、以前ファーストリテイ 組織を改革していくために一般の社員は、 どんなことができますか? 一人ひとりの社員が、現状のレガシーを 盲信するのではなく、つねに疑問を持って 物事にあたることです。欧米企業と比較し て、日本の企業は生産性が低いです。これ は能力云々ではなく、内向きの仕事が多す ぎることに起因します。会議の席順資料を 作成したり、役員にあげる経過報告書を何 度もレビューしたり、事務手続きも段階多 いですよね。これはおもてなしが求められ るサービス業では良い側面もあります。し かし、生産性の向上を阻んでいます。それ から忖度も不要だと思います。忖度で大事 な物事は動きませんから。疑問を持ち、改 革したいとアクションする。それを続けてい くうちにいずれ道は開けるに違いありませ ん。共に粘り強く取り組んでいきましょう。 家庭用電化製品、住宅設備、オフィス向けの商品・サービスを提供する総合エレ クトロニクスメーカー。創業者の松下幸之助は、経営の神様としてあまりにも著 名。近年では「幸せを、チカラに。」をブランドスローガンに掲げ、松下幸之助 が描いた「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を推し進めていく。その一環 として、パナソニックグループのDX推進を経営の重点アジェンダとして定め、 “PX:Panasonic Transformation”を始動。お客様への提供価値を継続的に高 める「お客様サービスのDX」と社内業務を徹底的に洗練させる「事業オペレー ションのDX」に取り組み、「くらし」と「しごと」の幸せの実現を目指す。 パナソニックホールディ ングス株式会社 企画 編集委員: (左)上原 涼 (右)大岩 香緒里 ※ Diversity, Equity & Inclusion 守るべきものは全力で守り、変えるべきものは変えていく 情報システムは自社の映し鏡 取り巻く環境を変えなければ DX も変革も成功しない HAJIME TAMAOKI 玉置 肇 Interviewee's Voice Company Introduction IT の変革 インフラストラクチャーと業務情報システムの刷新、 プロセスとサービスのデジタル化など オペレーティング・モデルの変革 組織構造、デリバリーの仕組み、 協力会社との関係、コストの最適化など カルチャーの変革 DEI※ の推進、オープンでフラットな職場、 サイロからの脱却、内向きの仕事の排除 変革のフレームワーク 第1階層 第2階層 第3階層 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 11 10 だけ繰り返していても意味はありません。 誠意と情熱をもって本心から訴えかけな ければ、人々が動くことはないでしょう。 本心から発していないスローガンは、上滑 りして人々の心には響くことはないです。 オーセンティック(Authentic)という英 単語があります。正真正銘の、信頼できる という意味ですが、リーダーが発する言葉 は、まさにオーセンティックであることが 必須と考えています。この改革を成し遂げ れば、会社だけではなく社員一人ひとりが 幸せになると伝え続ける努力が大切です。 情報システム部門は立場が弱い その地位を引き上げたい 伝統があって規模が大きい企業では、どう してもレガシーに固執しがちです。どのよ うな打ち手があるのでしょうか。 アクサ生命の例をひとつ紹介しましょ う。同社には1,000億円以上を投入して 作った「ND21」という基幹システムがあ りました。フランス本社の幹部はこれを古 いシステムだと悪評し、入れ替えを命じ ました。ですが、そう易々とレガシーを悪 と断じてよいものでしょうか?そこに疑問 を持ちました。実際に過去にさかのぼり仕 様書を調べてみると、先進的な仕様が盛 リングにいたとき学んだ言葉です。事前準 備と段取りを徹底することを意味してい て、パナソニックに入社するときも2カ月 以上前から準備を進めていました。人・モ ノ・金の流れや課題など、集められる限り の情報を集め、今後私がとる施策の原理 原則、どのような順番で実施するかなど、 30ページほどの資料にまとめたうえで初 日を迎えています。改革の請負人が、就任 後の数カ月は現状を把握。まずはお手並み 拝見と悠長に構えていてはコトは動きませ ん。事前準備に全力を注ぎ、一気呵成にプ ロジェクトを垂直立ち上げすることが、物 事を上手く進めるためには欠かせない。私 はそう考えています。 成功も負のレガシーも システムに反映されている 今まさに、日本企業が始めるべきDXの第 一歩(行動や考え方)を教えてください。 まずは自社のレガシーをプレーンな目 線で丁寧に点検してください。その中から 「負のレガシー」を抽出したなら、断固と り込まれている優れたシステムであるこ とが分かりましたので、入れ替えからモダ ナイゼーションへ方針を切り替えました。 つくづく噂や評判で物事を決めず、自ら調 べて評価することが大切ですね。私は“古 くて悪いシステム”というレッテルが貼ら れてしまった「ND21」を、ブランディン グによって変えていこうと決めました。 「ND21」の優れた点を外部に向けて発信 していくうちに、システムに関わった社員 たち自身は次第に誇りを感じてくれるよう になったのです。守るべきものは全力で守 り、変えるべきものは変えていく。そうす れば、おのずと人々の意識と働き方は変 わっていくものです。 日本では、情報システム部門の立場が弱い 企業が多数見られます。それがDX推進の 妨げることもあるのでしょうか。 情報システム部門は立場が弱い。日本だ けではなく世界中で同じ傾向にあります。 予算を使うコスト部門に位置づけられてい るからです。決して止まってはならないク リティカルなインフラも担っているのです が、人々がそれを意識することも少ないの でしょう。+αの価値や利益を生み出す部 門に変わることも必要です。 してそれを壊す覚悟を固めてください。負 のレガシーは商習慣やステークホルダー との関係性、それにまつわるさまざまな業 務プロセス、組織の在り方など、さまざま な要素に根ざしています。かつての成功体 験さえも足かせになっているかもしれませ ん。こうした実情を鏡のように映し出して いるのが、実はシステムなのです。ですか ら、情報システムを見れば、その企業がど のようなレガシーを抱えているのかが分か ります。情報システムが古いと評される場 合、その原因は情報システム自体よりも、 取り巻く環境に隠されているものです。そ れを変えなければ、変革は成功しないで しょう。 ただ、アクサ生命の基幹システムのよう に、良いレガシーもあります。パナソニッ クの場合なら松下幸之助さんが築いた経営 理念ですね。これは当然、いつまでも大事 に守り続けるべきものです。何を大事にす るか、何を変えるかを見定め、変えるべき ものは断固として変えていく。これが基本 となる考え方です。 また、DXを推進したいがために、情報 システム部門とは別にDX推進室やデジタ ル推進本部なんて部署を作ってみる。そん な企業もありますが、私はDX推進を担う 部署は、情報システム部門と分離してはい けないと考えています。目新しい部署を新 設して、一時的に気運は高まるかもしれま せんが、持続的に運営していくことはでき ないでしょう。DXを実現できるのは、企 業の基盤を支える情報システム部門をおい て他にないと確信しています。ですから、 自社に限らず、あらゆる情報システム部門 の地位を引き上げること。それが私のモチ ベーションといっても過言ではありません。 DXの請負人として企業にジョインした 後、具体的にどのようにしてプロジェクト を動かしていきますか。 新しく企業に参画するとき、自分の仲 間を連れてくるCⅹOは少なくありません が、私は原則一人で現場に臨みます。なぜ なら、もともと在籍している皆さんの心に 火をつけないことには、変革が定着しない からです。そうすると入社したては孤軍。 だからその分、必死になって「前始末」に 取り組んでいます。 「前始末」とは、以前ファーストリテイ 組織を改革していくために一般の社員は、 どんなことができますか? 一人ひとりの社員が、現状のレガシーを 盲信するのではなく、つねに疑問を持って 物事にあたることです。欧米企業と比較し て、日本の企業は生産性が低いです。これ は能力云々ではなく、内向きの仕事が多す ぎることに起因します。会議の席順資料を 作成したり、役員にあげる経過報告書を何 度もレビューしたり、事務手続きも段階多 いですよね。これはおもてなしが求められ るサービス業では良い側面もあります。し かし、生産性の向上を阻んでいます。それ から忖度も不要だと思います。忖度で大事 な物事は動きませんから。疑問を持ち、改 革したいとアクションする。それを続けてい くうちにいずれ道は開けるに違いありませ ん。共に粘り強く取り組んでいきましょう。 家庭用電化製品、住宅設備、オフィス向けの商品・サービスを提供する総合エレ クトロニクスメーカー。創業者の松下幸之助は、経営の神様としてあまりにも著 名。近年では「幸せを、チカラに。」をブランドスローガンに掲げ、松下幸之助 が描いた「物と心が共に豊かな理想の社会の実現」を推し進めていく。その一環 として、パナソニックグループのDX推進を経営の重点アジェンダとして定め、 “PX:Panasonic Transformation”を始動。お客様への提供価値を継続的に高 める「お客様サービスのDX」と社内業務を徹底的に洗練させる「事業オペレー ションのDX」に取り組み、「くらし」と「しごと」の幸せの実現を目指す。 パナソニックホールディ ングス株式会社 企画 編集委員: (左)上原 涼 (右)大岩 香緒里 ※ Diversity, Equity & Inclusion 守るべきものは全力で守り、変えるべきものは変えていく 情報システムは自社の映し鏡 取り巻く環境を変えなければ DX も変革も成功しない HAJIME TAMAOKI 玉置 肇 Interviewee's Voice Company Introduction IT の変革 インフラストラクチャーと業務情報システムの刷新、 プロセスとサービスのデジタル化など オペレーティング・モデルの変革 組織構造、デリバリーの仕組み、 協力会社との関係、コストの最適化など カルチャーの変革 DEI※ の推進、オープンでフラットな職場、 サイロからの脱却、内向きの仕事の排除 変革のフレームワーク 第1階層 第2階層 第3階層
  • 7. サステナブル・ラボを立ち上げた経緯を 教えてください。 昔は宇宙飛行士を目指していたんです。 子どものころから漫画の世界に憧れてい て、ヒーローのように世の中をよくした い願望がありました。そこに宇宙飛行士 が地球を救う映画を見たのが目指すきっか けとなりました。ところが、大学時代に同 じ夢を目指す優秀な学生たちに囲まれて挫 折したのです。正直そこから就活をしてビ ジネスパーソンになるという未来はまった く想像することができませんでした。 ちょうどその頃、友人が学生起業をし たのを見て、起業家として新しい技術を 開発するのも世の中をよくするひとつの 方法なんだと考えるようになりました。 それ以降は社会起業家として、農業と 介護などいくつかの事業に取り組みまし た。その一方で、高い志を持っている周 囲の社会起業家が社会に受け入れられず に苦しんでいるのを見て、「こうして世 の中をよくしようと頑張っている事業家 や企業が評価される社会を作ることはで きないだろうか?」と考えるようになっ たんです。そんなときに、ESG投資の研究 をされている加藤康之先生(現同社社外 取締役)にお会いして、SDGsやESGに取 り組む企業データインフラを作るというア イデアにたどり着きました。 よい企業を “ 照らす ” ために ESG・SDGs データの Google へ そうして生まれたESG・SDGs貢献度を可 視化する「TERRAST」のサービスについ て教えてください。 これは企業のESG・SDGs貢献度とい う非財務情報を可視化するSaaSツール です。ESG・SDGsの観点からよい企業 を探そうとしても、情報がバラバラに点 在していて、網羅的なデータインフラが 限られるため難しい。この、霧がもや もやとかかったような状態の中から、 よい企業を“照らす”という意味を込めて 「TERRAST(テラスト)」と名付けまし た。 「TERRAST」は、いわばESG・SDGs データのGoogleのような存在。格付け機 関による一次データと、各企業が出して いる生データの両方を揃えています。そ もそも、すべての企業はよい企業になり たいはずなんですよね。ただ、そのため に何をすればいいのかという答えを誰も 持っていない。例えば女性役員の比率に しても、果たして50%が正しい状態なの かどうかは誰にもわかりません。 そんな状況に対して、評価機関ではな くデータベンダーである弊社が開発する 「TERRAST β」は企業のサステナビリ ティ推進の現在地を測るための健康診断 のように機能します。様々なステークホ ルダーの希望に応えられるよう、多くの データを多面的に比較分析でき、網羅的 に見られるインフラを目指しています。 私たちは、よい企業やよい社会とは何 かという問いに、唯一絶対の定義はない という前提に立っています。そのうえ で、ビジネスとしての強さだけではなく、 ESG・SDGsという“優しさ”をあわせ持っ た企業を照らし出すことで、無数のよい企 業を発掘できるというのが、今後のビジネ スのパラダイムになると考えています。 “ もったいない SDGs 活動 ” から 抜け出すために見直すべきものとは 平瀬社長から見て、実態につながらない “もったいないSDGs活動”をやっている企 業はありますか。 1つ目は、リターンの定義がはっきり していないケース。例えば、ある企業が SDGs活動として、会社の休日に社員を集 め、近所の公園の清掃をするとします。 街をきれいにしたいと行動することは良 いことだと思いますがこの活動のリター ンは?という観点で考えると、企業イ メージが上がって株価が上がることなの か、商品の売上なのか。大半の企業は、 SDGsにおけるリターンの部分を定義でき ていないように見えます。 これは、「何のために企業が存在し、 活動するのか」という存在意義(パーパ ス)がクリアになっていないために起き る問題です。「他社がやっているから、 うちもSDGsと言わないと」という理由で 活動している事例が大量に発生していま すが、骨格がなければ何をやってもチグ ハグになってしまいます。逆に、パーパ スがベースにあれば、SDGsのリターンは 自ずと決まってくるものです。 2つ目も、近い内容ですが、企業のパー パスとSDGs活動が“So-What”の関係に なっていないケースです。本来は、初め に企業の存在意義があり、その存在意義 を全うし続けるための長期戦略に則った かたちでSDGsが埋め込まれる。財務と非 財務は1本の軸によって統合されているは 2030年までに達成すべき世界共通の目標「SDGs」のため企業各社でさまざまな活動が展開されている。 これらのアクションがステークホルダーに認められて有形無形のリターンが生まれるためにはどうすればいいのか。 AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する「TERRAST for Enterprise β」を提供する平瀬錬司社長に リターンを生むSDGs活動やESG経営をするためのヒントを伺いました。 “ 強く優しい ” 企業をデータサイエンスの力で照らし出す Sustainable Lab Inc. 大阪大学理学部卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステ ナビリティ領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして 携わる。これら領域において2社のバイアウト(事業売却)を 経験。京都大学ESG研究会講師。非財務ビッグデータに関する 執筆・講演活動などでも活躍している。 平瀬 錬司 サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役CEO Next Stage Interview RENJI HIRASE Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 13 12 強く優しい企業が 目指すべき リターンを生む SDGs 活動の在り方とは SDG s Interview Theme サステナブル・ラボを立ち上げた経緯を 教えてください。 昔は宇宙飛行士を目指していたんです。 子どものころから漫画の世界に憧れてい て、ヒーローのように世の中をよくした い願望がありました。そこに宇宙飛行士 が地球を救う映画を見たのが目指すきっか けとなりました。ところが、大学時代に同 じ夢を目指す優秀な学生たちに囲まれて挫 折したのです。正直そこから就活をしてビ ジネスパーソンになるという未来はまった く想像することができませんでした。 ちょうどその頃、友人が学生起業をし たのを見て、起業家として新しい技術を 開発するのも世の中をよくするひとつの 方法なんだと考えるようになりました。 それ以降は社会起業家として、農業と 介護などいくつかの事業に取り組みまし た。その一方で、高い志を持っている周 囲の社会起業家が社会に受け入れられず に苦しんでいるのを見て、「こうして世 の中をよくしようと頑張っている事業家 や企業が評価される社会を作ることはで きないだろうか?」と考えるようになっ たんです。そんなときに、ESG投資の研究 をされている加藤康之先生(現同社社外 取締役)にお会いして、SDGsやESGに取 り組む企業データインフラを作るというア イデアにたどり着きました。 よい企業を “ 照らす ” ために ESG・SDGs データの Google へ そうして生まれたESG・SDGs貢献度を可 視化する「TERRAST」のサービスについ て教えてください。 これは企業のESG・SDGs貢献度とい う非財務情報を可視化するSaaSツール です。ESG・SDGsの観点からよい企業 を探そうとしても、情報がバラバラに点 在していて、網羅的なデータインフラが 限られるため難しい。この、霧がもや もやとかかったような状態の中から、 よい企業を“照らす”という意味を込めて 「TERRAST(テラスト)」と名付けまし た。 「TERRAST」は、いわばESG・SDGs データのGoogleのような存在。格付け機 関による一次データと、各企業が出して いる生データの両方を揃えています。そ もそも、すべての企業はよい企業になり たいはずなんですよね。ただ、そのため に何をすればいいのかという答えを誰も 持っていない。例えば女性役員の比率に しても、果たして50%が正しい状態なの かどうかは誰にもわかりません。 そんな状況に対して、評価機関ではな くデータベンダーである弊社が開発する 「TERRAST β」は企業のサステナビリ ティ推進の現在地を測るための健康診断 のように機能します。様々なステークホ ルダーの希望に応えられるよう、多くの データを多面的に比較分析でき、網羅的 に見られるインフラを目指しています。 私たちは、よい企業やよい社会とは何 かという問いに、唯一絶対の定義はない という前提に立っています。そのうえ で、ビジネスとしての強さだけではなく、 ESG・SDGsという“優しさ”をあわせ持っ た企業を照らし出すことで、無数のよい企 業を発掘できるというのが、今後のビジネ スのパラダイムになると考えています。 “ もったいない SDGs 活動 ” から 抜け出すために見直すべきものとは 平瀬社長から見て、実態につながらない “もったいないSDGs活動”をやっている企 業はありますか。 1つ目は、リターンの定義がはっきり していないケース。例えば、ある企業が SDGs活動として、会社の休日に社員を集 め、近所の公園の清掃をするとします。 街をきれいにしたいと行動することは良 いことだと思いますがこの活動のリター ンは?という観点で考えると、企業イ メージが上がって株価が上がることなの か、商品の売上なのか。大半の企業は、 SDGsにおけるリターンの部分を定義でき ていないように見えます。 これは、「何のために企業が存在し、 活動するのか」という存在意義(パーパ ス)がクリアになっていないために起き る問題です。「他社がやっているから、 うちもSDGsと言わないと」という理由で 活動している事例が大量に発生していま すが、骨格がなければ何をやってもチグ ハグになってしまいます。逆に、パーパ スがベースにあれば、SDGsのリターンは 自ずと決まってくるものです。 2つ目も、近い内容ですが、企業のパー パスとSDGs活動が“So-What”の関係に なっていないケースです。本来は、初め に企業の存在意義があり、その存在意義 を全うし続けるための長期戦略に則った かたちでSDGsが埋め込まれる。財務と非 財務は1本の軸によって統合されているは 2030年までに達成すべき世界共通の目標「SDGs」のため企業各社でさまざまな活動が展開されている。 これらのアクションがステークホルダーに認められて有形無形のリターンが生まれるためにはどうすればいいのか。 AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する「TERRAST for Enterprise β」を提供する平瀬錬司社長に リターンを生むSDGs活動やESG経営をするためのヒントを伺いました。 “ 強く優しい ” 企業をデータサイエンスの力で照らし出す Sustainable Lab Inc. 大阪大学理学部卒業。在学中から環境、農業、福祉などサステ ナビリティ領域のベンチャービジネスに環境エンジニアとして 携わる。これら領域において2社のバイアウト(事業売却)を 経験。京都大学ESG研究会講師。非財務ビッグデータに関する 執筆・講演活動などでも活躍している。 平瀬 錬司 サステナブル・ラボ株式会社 代表取締役CEO Next Stage Interview RENJI HIRASE Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 13 12 強く優しい企業が 目指すべき リターンを生む SDGs 活動の在り方とは SDG s Interview Theme
  • 8. Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 15 14 ずなんです。それなのに、SDGs活動がお まけみたいになっているケースが多い。 日本には素晴らしいパーパス(=企業 の存在意義)を掲げられている会社が多 いと感じています。ところが、先ほどの 例でいう清掃活動が、その企業のパーパ スに合致していない行動だったとすると どうか。もちろん、その行動が誰かを幸 せにすることがあり、素晴らしい活動 であることは確かですが、企業のパー パスとズレてしまうと、結局お金や時間 といった企業のリソースを無理やり引っ 張ってくることになってしまいます。こ れは非常に“もったいない”活動ですよね。 “もったいないSDGs活動”をよいSDGsに転 換するには会社の存在意義を考えること が大事とのことですが、一般社員にもで きることはありますか? 確かに一般社員の方にとって、企業の 存在意義を考えるのは責任の重いことで す。その場合、所属部署や関わっている プロダクト、サービスなどの存在意義を 考えてみてはどうでしょうか? コングロマリット企業では、例えばヘ ルスケア事業や金融業、通信業など多岐 にわたる事業を展開しています。もちろ ん企業として大きな存在意義があり、 ないファミリーカンパニーが多い為、長 期的な視点を持ってESG・SDGs対応がで きているところが多いですね。データを 見ていると、ファミリーカンパニーの方 がESG・SDGs対応ができているところは 多いですね。 もうひとつは情報開示です。日本の企 業は秘密主義的で、女性社員の比率や有 給の取得率など、SDGsに関する報告を オープンにしていない。欧米はステーク ホルダーに対する説明責任が文化として 根付いてるので、良いことも悪いことも 開示します。日本の場合、完璧主義なと ころや生真面目さも影響しているかもし れませんが、説明責任を背負っている自 覚が相対的に少なく、結果的に非財務項 目の開示公開が遅れてしまっています。 “ 強く優しい ” 企業が 選ばれる仕組みを作る そうした新しいパラダイムが受け入れら れる世界では「TERRAST」のようなツー ルをどう使えばいいですか。 事業が発展してきた。でも、一般社員の 方が全部を見通すのは難しいかもしれま せん。そんな時は、自分が関わっている サービスで、お客さんを健康にする、老 後楽しく暮らせるよう備えを蓄える、災 害時に家族とつながって安心できる通信 網を作る、などブレイクダウンする。そ うすると、企業の大きな存在意義にもつ なげやすくなります。手触り感のある存 在意義を定義することから始めてみてく ださい。 ESG 投資が強化される世界で 日本企業がすべきこととは? 平瀬社長は、今後世界的にESGの投資額は どれくらい増えていくとお考えでしょうか。 昨年(2021年)で約4000兆円でした が、今は円安で5000兆円ほどになって おり、金融資本全体の中では2〜3割くら いを占めています。これは、ESG投資や SDGs経営が増えているだけではなく、も はや既存ビジネスがESGに組み込まれてい るということです。この傾向は、未来に向 かってさらに強化されていくでしょう。 ESG視点の新しい市場も増えています。 例えば、車がEV(電気自動車)以外認め られなくなってきているように、脱炭素 社会を実現するための市場が成長してい 世界中の投資家や事業会社、または一 般の生活者が、「TERRAST」をインフラ として天気予報のように使っている世界 が理想ですね。 あらゆる生活者、あらゆる企業や投資 家は常に判断をしています。 その決断にお いて、 経済合理性、 つまりコストパフォー マンスを重視します。買い物や投資に限 らず、 行動もコスパがよいほうがいいんで す。 私たちは、「TERRAST」を通して、そ うした世の中をアップグレードしたいと 思っています。経済合理性になぞらえて 「人間合理性」という造語を使っている んですが、コスパのよさに加えて、それ が自分にとってよいのか、自分の家族に とってよいのか、社会や地球にとってよ いのかを考える。経済合理性のもうひと つ上の人間合理性という概念で物事を判 断するのがあたりまえになる社会を実現 するのが私たちの究極のビジョンです。 それが御社のパーパスである“強く優しい” ますよね。世の中がサステナビリティ化 するにあたって生まれる新市場は今後伸 びるのが約束されているため、投融資も 増えていきます。 1960年代ごろの高度成長期、人々はお 金を稼げばみんな幸せになれるというシ ンプルな世界を創造していました。しか し、先進国がひととおり成熟してしまっ た現代は、“既存の強さ”いわゆる“お金儲 け”だけの追及には限界があることに誰し もが気づいています。今後もさらに男女 の不平等や気候変動といった社会問題を ビジネスの力で解決するSDGs市場は確実 に増加するでしょう。そしてすでに、“強 さ”だけではなく“優しさ”が新しいパラダ イムとなる準備ができていると私は感じ ています。 日本は海外と比べて何が足りないと考え ますか? ひとつはトップのコミットメントで す。日本は政治にも顕著ですが、トップ が数年で変わる短期政権が多い。 そのた め、短期的な結果を求めることを重視し てしまい、企業のパーパスを再定義した り、長期の価値創造の物語を描いたりと いった取り組みがしづらいんです。 一方、欧州はトップの入れ替わりが少 在り方なのでしょうか。 ビジネスとして強い企業だけが評価さ れる社会ではなく、強さと優しさをあわ せ持つ企業こそが選ばれる世の中になっ てほしいんです。私の好きな言葉に、レ イモンド・チャンドラー『プレイバック』 に登場する「強くなければ生きていけな い。しかし、優しくなければ、生きてい く資格がない」という言葉があります。 社会起業家や環境起業家というのは、 世の中をよくしたいと考えている優しい 人たちです。しかし、世の中をよくしよ うとするなら、強くもあらねばならな い。企業で言えば、ちゃんと売上や利益 を上げて経済性を成立させないと、すべ ては寝言になってしまうということです。 強く優しい企業が選ばれる仕組みを作るの が、私たちのミッションです。 2019年創業。AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する国 内最大級の非財務データバンク「TERRAST β(テラスト・ベータ)」を提供。1社 あたり700以上の非財務データ項目を収集・分析することで、サステナビリティに貢 献する企業を印象論ではない形式で可視化。経済性における強さだけではなく、人間 性や環境性、社会性をあわせ持つ「強く優しい」企業の在り方=SX(サステナビリ ティ・トランスフォーメーション)を提案・実現する。アクセラレータープログラム 「SAP.iO Foundry Tokyo」の1社にも採択されており、SAPと共に「真の企業価値 を可視化するサービス」の連携に向けた土台構築などが進行している。 サステナブル・ラボ株式会社 https://suslab.net/ 企画 編集委員: (左)横川 達也 (右)島津 雅子 企業のパーパスによって、SDGs 活動は自ずと決まってく る コスパのひとつ上の概念で 物事を判断する社会へ RENJI HIRASE 平瀬 錬司 Interviewee's Voice Sustainable Lab Inc. Company Introduction Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 15 14 ずなんです。それなのに、SDGs活動がお まけみたいになっているケースが多い。 日本には素晴らしいパーパス(=企業 の存在意義)を掲げられている会社が多 いと感じています。ところが、先ほどの 例でいう清掃活動が、その企業のパーパ スに合致していない行動だったとすると どうか。もちろん、その行動が誰かを幸 せにすることがあり、素晴らしい活動 であることは確かですが、企業のパー パスとズレてしまうと、結局お金や時間 といった企業のリソースを無理やり引っ 張ってくることになってしまいます。こ れは非常に“もったいない”活動ですよね。 “もったいないSDGs活動”をよいSDGsに転 換するには会社の存在意義を考えること が大事とのことですが、一般社員にもで きることはありますか? 確かに一般社員の方にとって、企業の 存在意義を考えるのは責任の重いことで す。その場合、所属部署や関わっている プロダクト、サービスなどの存在意義を 考えてみてはどうでしょうか? コングロマリット企業では、例えばヘ ルスケア事業や金融業、通信業など多岐 にわたる事業を展開しています。もちろ ん企業として大きな存在意義があり、 ないファミリーカンパニーが多い為、長 期的な視点を持ってESG・SDGs対応がで きているところが多いですね。データを 見ていると、ファミリーカンパニーの方 がESG・SDGs対応ができているところは 多いですね。 もうひとつは情報開示です。日本の企 業は秘密主義的で、女性社員の比率や有 給の取得率など、SDGsに関する報告を オープンにしていない。欧米はステーク ホルダーに対する説明責任が文化として 根付いてるので、良いことも悪いことも 開示します。日本の場合、完璧主義なと ころや生真面目さも影響しているかもし れませんが、説明責任を背負っている自 覚が相対的に少なく、結果的に非財務項 目の開示公開が遅れてしまっています。 “ 強く優しい ” 企業が 選ばれる仕組みを作る そうした新しいパラダイムが受け入れら れる世界では「TERRAST」のようなツー ルをどう使えばいいですか。 事業が発展してきた。でも、一般社員の 方が全部を見通すのは難しいかもしれま せん。そんな時は、自分が関わっている サービスで、お客さんを健康にする、老 後楽しく暮らせるよう備えを蓄える、災 害時に家族とつながって安心できる通信 網を作る、などブレイクダウンする。そ うすると、企業の大きな存在意義にもつ なげやすくなります。手触り感のある存 在意義を定義することから始めてみてく ださい。 ESG 投資が強化される世界で 日本企業がすべきこととは? 平瀬社長は、今後世界的にESGの投資額は どれくらい増えていくとお考えでしょうか。 昨年(2021年)で約4000兆円でした が、今は円安で5000兆円ほどになって おり、金融資本全体の中では2〜3割くら いを占めています。これは、ESG投資や SDGs経営が増えているだけではなく、も はや既存ビジネスがESGに組み込まれてい るということです。この傾向は、未来に向 かってさらに強化されていくでしょう。 ESG視点の新しい市場も増えています。 例えば、車がEV(電気自動車)以外認め られなくなってきているように、脱炭素 社会を実現するための市場が成長してい 世界中の投資家や事業会社、または一 般の生活者が、「TERRAST」をインフラ として天気予報のように使っている世界 が理想ですね。 あらゆる生活者、あらゆる企業や投資 家は常に判断をしています。 その決断にお いて、 経済合理性、 つまりコストパフォー マンスを重視します。買い物や投資に限 らず、 行動もコスパがよいほうがいいんで す。 私たちは、「TERRAST」を通して、そ うした世の中をアップグレードしたいと 思っています。経済合理性になぞらえて 「人間合理性」という造語を使っている んですが、コスパのよさに加えて、それ が自分にとってよいのか、自分の家族に とってよいのか、社会や地球にとってよ いのかを考える。経済合理性のもうひと つ上の人間合理性という概念で物事を判 断するのがあたりまえになる社会を実現 するのが私たちの究極のビジョンです。 それが御社のパーパスである“強く優しい” ますよね。世の中がサステナビリティ化 するにあたって生まれる新市場は今後伸 びるのが約束されているため、投融資も 増えていきます。 1960年代ごろの高度成長期、人々はお 金を稼げばみんな幸せになれるというシ ンプルな世界を創造していました。しか し、先進国がひととおり成熟してしまっ た現代は、“既存の強さ”いわゆる“お金儲 け”だけの追及には限界があることに誰し もが気づいています。今後もさらに男女 の不平等や気候変動といった社会問題を ビジネスの力で解決するSDGs市場は確実 に増加するでしょう。そしてすでに、“強 さ”だけではなく“優しさ”が新しいパラダ イムとなる準備ができていると私は感じ ています。 日本は海外と比べて何が足りないと考え ますか? ひとつはトップのコミットメントで す。日本は政治にも顕著ですが、トップ が数年で変わる短期政権が多い。 そのた め、短期的な結果を求めることを重視し てしまい、企業のパーパスを再定義した り、長期の価値創造の物語を描いたりと いった取り組みがしづらいんです。 一方、欧州はトップの入れ替わりが少 在り方なのでしょうか。 ビジネスとして強い企業だけが評価さ れる社会ではなく、強さと優しさをあわ せ持つ企業こそが選ばれる世の中になっ てほしいんです。私の好きな言葉に、レ イモンド・チャンドラー『プレイバック』 に登場する「強くなければ生きていけな い。しかし、優しくなければ、生きてい く資格がない」という言葉があります。 社会起業家や環境起業家というのは、 世の中をよくしたいと考えている優しい 人たちです。しかし、世の中をよくしよ うとするなら、強くもあらねばならな い。企業で言えば、ちゃんと売上や利益 を上げて経済性を成立させないと、すべ ては寝言になってしまうということです。 強く優しい企業が選ばれる仕組みを作るの が、私たちのミッションです。 2019年創業。AIとビッグデータによって企業のESG・SDGs貢献度を可視化する国 内最大級の非財務データバンク「TERRAST β(テラスト・ベータ)」を提供。1社 あたり700以上の非財務データ項目を収集・分析することで、サステナビリティに貢 献する企業を印象論ではない形式で可視化。経済性における強さだけではなく、人間 性や環境性、社会性をあわせ持つ「強く優しい」企業の在り方=SX(サステナビリ ティ・トランスフォーメーション)を提案・実現する。アクセラレータープログラム 「SAP.iO Foundry Tokyo」の1社にも採択されており、SAPと共に「真の企業価値 を可視化するサービス」の連携に向けた土台構築などが進行している。 サステナブル・ラボ株式会社 https://suslab.net/ 企画 編集委員: (左)横川 達也 (右)島津 雅子 企業のパーパスによって、SDGs 活動は自ずと決まってく る コスパのひとつ上の概念で 物事を判断する社会へ RENJI HIRASE 平瀬 錬司 Interviewee's Voice Sustainable Lab Inc. Company Introduction
  • 9. ラグビーワールドカップ (以下W杯) に4大会出場し、 2019年W杯準々決勝南アフリカ戦では日本代表最年長記録となる38歳6か月 での代表キャップを獲得したトンプソンルーク氏。 2015年「ブライトンの軌跡」、 2019年「自国開催のW杯ベスト8」 など、 多様な バックグランドを持つチームメイト、 ヘッドコーチ (以下HC) と協力して勝利を掴んできました。 関西弁を操り、 愛称の 「トモさん」 と親しまれ、 精神的なリーダーとしても活躍してきた鉄人に、 個性を纏めあげ、 強いチームをつくるためのヒントを伺いました。 URAYASU D-Rocks ニュージーランド出身。小さいころからラグビーをプレーし、 各年代の代表にも選出された。その後、アイルランドのクラブ を経て、2004年に三洋電機に入部。2006年には近鉄へ移籍、 2010年に日本国籍を取得した。日本代表としてワールドカッ プに4回(2007、11、15、19年)出場。2019年のW杯では日 本のベスト8入りに大きく貢献した。その後、2020年に現役引 退。ニュージーランドで農場を営んでいたが、2022年にシャ イニングアークスで現役復帰。2022年現在は浦安D-Rocksに 所属。夫人との間に3人の子供がいる。 トンプソンルーク 浦安D-Rocks ラグビー選手 Next Stage Interview THOMPSON LUKE Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 17 16 個性を纏めあげ、 強いチームをつくる。 アスリートに聞く、 多様性の生かし方 Diversi t y Interview Theme 昨季2021年に現役復帰しました。 シーズンの感想を教えてください。 ラグビーへのPassion(情熱)を感じ ながら仕事ができて、楽しかったし、興 奮しましたね。今、41歳だから若い人 とプレーするとおじいちゃんみたいです (笑)。若手に体力的にかなわない部分 もあるけれど、プレーするうえで年齢は 関係ない。負けないようにトレーニング したり、プレーするのはモチベーション になりました。入れ替え戦で敗れ、来季 はディビジョン2でプレーすることにな るのがめっちゃ残念。でも、チームの雰 囲気や結束力は良かったです。複雑な感 情はありますが来季が楽しみ。 もっと強 くなって戻ってきます。 2004年に初めて来日した当時は どんな心境だったのでしょうか? 日本に来るのはもちろん大きな決断で したが、当初は2年でNZへ帰るつもり だったんです(笑)。ただ、日本のこ とも、発展途上で頑張っている日本ラグ ビーもめちゃ大好きになったからプレー を続けることにしました。 最大の転機は2007年です。日本代表 のメンバーに選出されるのですが、お受 けするかどうかすごく悩みました。ラグ ビーは国の代表に選出されると、簡単に 他の国に移ることができません。だから 一度日本代表になったら、オールブラッ クス(NZ代表)になることをあきらめな ければいけないのです。オールブラック スはNZの子供たちの憧れであり、私の夢 でもありました。だから難しい判断を迫 られたのです。父や母、奥さんとよく話 をして、意見を聞きました。精神的にも 支えてもらいましたね。そして私は、家 族や友人の後押しもあり決断しました。 日本代表としてチャレンジしてW杯に出 ることを選んだんです。今振り返っても アメージングで、人生のなかでも重大な 決断でした。この転機が今の幸せにつな がっています。 2015年・2019年の日本代表 チームマネジメントの違い ラグビー日本代表は、日本人だけでなく さまざまなバックグランドを持つ選手が 集結していますが、トンプソンルークさ んの考える多様性とはどんなものでしょ うか? 例えば、日本人だけの高校生チームで あっても、育った街や村によって、異な る人生経験を積んでいる。これも立派な 多様性。異なる国や肌の色、背の高さに 関わらず、多様性とは、様々なバックグ ラウンド、経験、歴史から生まれるもの だと考えています。 2015年の日本代表はW杯で「ブライト ンの軌跡」として歴史的な勝利をあげた チームですが、どんなチームでしたか? まさしく多様性を持ったチームでした ね。選手だけでなくスタッフもいろいろ なバックグラウンドを持ったメンバー が、エディ・ジョーンズヘッドコーチ (以下HC)のビジョンをフォローし、う まく機能しました。W杯で南アフリカに 勝利し「ブライトンの軌跡」を起こした 2015の代表チームは2つのことを意識して いました。 1つは、自分たちが新しい歴史を作る ということ。もう1つはチームのメンタ リティを変えていくことでした。という のも、かつての日本代表は、「高望みを せず、頑張って結果がでなければ仕方 ない」というムードがありました。しか し、エディHCは「勝つこと、それが一番 重要である」というマインドに変えてい きました。 新しい考え方を浸透させるために私た ちはすごく努力しました。エディHCは最 高のトレーニングをハードにどんどんや る(笑)。どこまでも能力を高めてベス トな選手、世界最高のチームを目指そう というやり方でした。私たちは多様な背 景を持つ選手が多数いる中で、ともにト レーニングに励み、仲間としてリスペク トしていくようになりました。その中で 団結力を高め、目標を高く持つことで、 選手一人ひとりのマインドセットが変 わっていったんです。 自国開催のW杯でベスト8入りを果たし た2019年の日本代表チームはどんなチー ムでしたか? 2019年のチームも多様性に富んでいま した。日本、NZ、豪州、南アフリカなど 様々な地域で生まれた選手で構成されて いましたから。でも出身は関係なく、日 本のために、国を代表するチームとして 2015年よりもさらに高い目標を掲げまし た。 同じことを目標にして止まるのは、 成功とは言いませんからね。 多様性とは育った場所や背景、経験、歴史から生まれる ラグビーワールドカップ (以下W杯) に4大会出場し、 2019年W杯準々決勝南アフリカ戦では日本代表最年長記録となる38歳6か月 での代表キャップを獲得したトンプソンルーク氏。 2015年「ブライトンの軌跡」、 2019年「自国開催のW杯ベスト8」 など、 多様な バックグランドを持つチームメイト、 ヘッドコーチ (以下HC) と協力して勝利を掴んできました。 関西弁を操り、 愛称の 「トモさん」 と親しまれ、 精神的なリーダーとしても活躍してきた鉄人に、 個性を纏めあげ、 強いチームをつくるためのヒントを伺いました。 URAYASU D-Rocks ニュージーランド出身。小さいころからラグビーをプレーし、 各年代の代表にも選出された。その後、アイルランドのクラブ を経て、2004年に三洋電機に入部。2006年には近鉄へ移籍、 2010年に日本国籍を取得した。日本代表としてワールドカッ プに4回(2007、11、15、19年)出場。2019年のW杯では日 本のベスト8入りに大きく貢献した。その後、2020年に現役引 退。ニュージーランドで農場を営んでいたが、2022年にシャ イニングアークスで現役復帰。2022年現在は浦安D-Rocksに 所属。夫人との間に3人の子供がいる。 トンプソンルーク 浦安D-Rocks ラグビー選手 Next Stage Interview THOMPSON LUKE Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.14 17 16 個性を纏めあげ、 強いチームをつくる。 アスリートに聞く、 多様性の生かし方 Diversi t y Interview Theme 昨季2021年に現役復帰しました。 シーズンの感想を教えてください。 ラグビーへのPassion(情熱)を感じ ながら仕事ができて、楽しかったし、興 奮しましたね。今、41歳だから若い人 とプレーするとおじいちゃんみたいです (笑)。若手に体力的にかなわない部分 もあるけれど、プレーするうえで年齢は 関係ない。負けないようにトレーニング したり、プレーするのはモチベーション になりました。入れ替え戦で敗れ、来季 はディビジョン2でプレーすることにな るのがめっちゃ残念。でも、チームの雰 囲気や結束力は良かったです。複雑な感 情はありますが来季が楽しみ。 もっと強 くなって戻ってきます。 2004年に初めて来日した当時は どんな心境だったのでしょうか? 日本に来るのはもちろん大きな決断で したが、当初は2年でNZへ帰るつもり だったんです(笑)。ただ、日本のこ とも、発展途上で頑張っている日本ラグ ビーもめちゃ大好きになったからプレー を続けることにしました。 最大の転機は2007年です。日本代表 のメンバーに選出されるのですが、お受 けするかどうかすごく悩みました。ラグ ビーは国の代表に選出されると、簡単に 他の国に移ることができません。だから 一度日本代表になったら、オールブラッ クス(NZ代表)になることをあきらめな ければいけないのです。オールブラック スはNZの子供たちの憧れであり、私の夢 でもありました。だから難しい判断を迫 られたのです。父や母、奥さんとよく話 をして、意見を聞きました。精神的にも 支えてもらいましたね。そして私は、家 族や友人の後押しもあり決断しました。 日本代表としてチャレンジしてW杯に出 ることを選んだんです。今振り返っても アメージングで、人生のなかでも重大な 決断でした。この転機が今の幸せにつな がっています。 2015年・2019年の日本代表 チームマネジメントの違い ラグビー日本代表は、日本人だけでなく さまざまなバックグランドを持つ選手が 集結していますが、トンプソンルークさ んの考える多様性とはどんなものでしょ うか? 例えば、日本人だけの高校生チームで あっても、育った街や村によって、異な る人生経験を積んでいる。これも立派な 多様性。異なる国や肌の色、背の高さに 関わらず、多様性とは、様々なバックグ ラウンド、経験、歴史から生まれるもの だと考えています。 2015年の日本代表はW杯で「ブライト ンの軌跡」として歴史的な勝利をあげた チームですが、どんなチームでしたか? まさしく多様性を持ったチームでした ね。選手だけでなくスタッフもいろいろ なバックグラウンドを持ったメンバー が、エディ・ジョーンズヘッドコーチ (以下HC)のビジョンをフォローし、う まく機能しました。W杯で南アフリカに 勝利し「ブライトンの軌跡」を起こした 2015の代表チームは2つのことを意識して いました。 1つは、自分たちが新しい歴史を作る ということ。もう1つはチームのメンタ リティを変えていくことでした。という のも、かつての日本代表は、「高望みを せず、頑張って結果がでなければ仕方 ない」というムードがありました。しか し、エディHCは「勝つこと、それが一番 重要である」というマインドに変えてい きました。 新しい考え方を浸透させるために私た ちはすごく努力しました。エディHCは最 高のトレーニングをハードにどんどんや る(笑)。どこまでも能力を高めてベス トな選手、世界最高のチームを目指そう というやり方でした。私たちは多様な背 景を持つ選手が多数いる中で、ともにト レーニングに励み、仲間としてリスペク トしていくようになりました。その中で 団結力を高め、目標を高く持つことで、 選手一人ひとりのマインドセットが変 わっていったんです。 自国開催のW杯でベスト8入りを果たし た2019年の日本代表チームはどんなチー ムでしたか? 2019年のチームも多様性に富んでいま した。日本、NZ、豪州、南アフリカなど 様々な地域で生まれた選手で構成されて いましたから。でも出身は関係なく、日 本のために、国を代表するチームとして 2015年よりもさらに高い目標を掲げまし た。 同じことを目標にして止まるのは、 成功とは言いませんからね。 多様性とは育った場所や背景、経験、歴史から生まれる