4. Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.13
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次代を創り、
人を動かすリーダーの在り方
FRONT RUN
intervie
NER
w
Yaskawa ELEctric
1
Mechatronics company
Cinnamon
2
Start up company
Asubito Fukushima
3
Entrepreneur NPO
Special
JSUG INFO
VOL.13
FEATURE
株式会社安川電機
小笠原 浩
株式会社シナモン
平野 未来
一般社団法人あすびと福島
半谷 栄寿
不透明で、不確実な時代のなかで、業界を牽引するフロントランナー企業。
そのリーダーたちはどのような発想で、何を見つめ、改革を実行しているのか。
「JSUG INFO」では、編集委員たちが 2021 年度の JSUG スローガンである
「我々が今立っているのは歴史の転換点。変化を愉しみ、自らの意思と力で
未来を創ることに共に挑戦しよう!」を実践するヒントを得るために
世界的メカトロニクス企業・スタートアップ企業・社会起業家育成 NPO の
代表者たちの原動力やルーツ、リーダーとしての信条について取材してきました。
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5. Japan SAP Usersʼ Group Information Magazine Vol.13
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──さまざまなプロジェクトのリーダー
を自ら務められていますが、小笠原社長
はどのようなモットーで改革に取り組ま
れているのでしょうか?
2つあって、1つは社長に就任して最
初に社員に伝えたこと。それは「世界の
共通言語はデータ」。みんなは何の話?
と思ったかもしれない。もう1つは、心
がけとして『情熱を持って、明るく前進
あるのみ』である。社長になったときや
今も座右の銘はありますか?と聞かれる
ことがあるが「格好いい四文字熟語のよ
うな座右の銘はない!」と答えながら、
強いて言うなら『(情熱を持って)明る
く前進あるのみ』と答えている。ただ明
るくではない。情熱を持って進むことを
大事にしている。機会があれば格好いい
四文字熟語を考えてるが、未だに思いつ
いてない。
──データを重んじる心情に至った経緯
があれば教えてください。
『世界の共通言語はデータ』というの
は、私が韓国で仕事をしていたときの体
験が元になっている。今の安川電機は、
産業用ロボットとかモーターなどのイ
メージが強いと思うが、私が1979年に
技術者として入社したときは、当時はシ
ステムエンジニアリング全盛期で仕事は
製鉄所のプラントを立ち上げるなどの泥
臭いものが大部分だった。それでも私は
コンピューターで製鉄所の設備を動かす
担当だったから、当時としては先進的
な仕事だったと思う。しかし、当時コ
ンピューターをやるというのは大変だっ
た。ソフトもハードも全部担当しないと
いけない。設計・社内試験・現地での組
み立て・試験・現地の研修、それらをこ
なしてようやく納品。このような大変な
仕事を韓国で数年間200日/年滞在して
やっていた。
当時、私は一言も韓国語がしゃべれな
い状態で韓国に向かったわけだが、現地
のお客さまも日本語は単語程度しかわか
らないし、お互い英語も中途半端だっ
た。それでも、コンピューターや設備の
稼働のために作業を進めないといけな
い。そこで何をベースに作業をしたのか
というと「データ」だった。数字と絵図は
通じる。ジェスチャーと合わせて試行錯誤
してコミュニケーションを図っていった。
結果、きちんとプラントは完成した。
帰国して思ったのは、中途半端に言葉
が通じていると思って進めると、曖昧な
定義で前に進むことが多くうまくいかな
いことがよくある。だからこそ『世界の
共通言語はデータ』と感じた。世界中の
皆が、物事を本質的に理解し、前に進め
ていくベースになるものは「データ」で
あるのが一番いい。韓国での経験は今の
私の基本をつくる貴重なものだった。
──もう1つの『情熱を持って、明るく前
進あるのみ』というモットーはどのよう
な経験から生まれたのでしょうか?
これも韓国にいるときに感じたことが
ベースになっている。現地で作業をして
いたらあるとき原因不明のトラブルが発
生した。ひとつずつ問題点をつぶしてい
くと、おそらく原因はハードにあると。
しかし、ハードの専門家ではない私たち
では修理はできない。日本に連絡すると
「専門家を派遣するまでビザの関係で
2カ月待ってくれ」と言う。私たち現場
は激怒した。今動かなくて困っているの
に、2カ月も待てるはずがないと。そこで
提示されたのが自分たちで修理するとい
う選択肢だった。聞けば日本語のマニュ
アルが付いた予備品があることが分か
り、そこから読み解いて対応することに
なった。そのマニュアルはものすごい巻
数で、背表紙を合わせると3mに達するほ
どだった。それを見て途方に暮れた。だ
けど、内容が分かれば絶対に修理できる
と信じ3人でマニュアルを読んでいくこと
にした。1日中読んで終わったら、皆で
宿舎に帰って飲食なども一緒に多くの時
間を過ごした。夜が明けたらまたマニュ
アル読むという毎日を繰り返していっ
た。そしたらなんとか修理が無事に完了
した。その後も韓国や中国などアジアを
中心に仕事をしてきたが、同じような体
験が何度もある。『情熱を持って、明る
く前進あるのみ』というモットーはこれ
らの経験からきている。経営でも技術で
も何でもそう。前進していけばなんとか
なる。どんなに見通しが暗くても、景気
が悪くても、探せば絶対に良い点があ
る。そこに向かって、明るく前進するこ
とが大事だ。
前に立ち、引き受けることで
周囲をまとめるスタイル
──技術者として入社されてさまざまなご
経験をされましたがリーダーとしての意識
が芽生えたきっかけなどを教えて下さい。
そういった瞬間は一切なかった。た
だ、さっきのプラントの現場とか社内プ
1
FRONT RUNNER
interview
2020 年を DX 元年として「YDX(YASKAWA Digital Transformation)
」を実施し、
グループ連結約 70 社の受注
・
売上・利益といった主な経営情報をタイムリーに把握できるようになり、デジタル経営に向けた DX 化を力強く
確実に進めている株式会社安川電機。2021 年には技術開発の機能を集約した
「安川テクノロジーセンタ (YTC)」
を開設するなど、さまざまな改革を実現させています。プロジェクトを成功に導くために現場をどのように牽引
しているのか。自ら旗振り役を務めている小笠原浩社長にお話を伺いました。
「誰かがしないといけない」と引き受けると周りが付いてきた
H I R O S H I
H I R O S H I
O G A S A W A R A
Yaskawa ELEctric
小笠原 浩
株式会社安川電機 代表取締役社長
兼 ICT 戦略推進室長 CEO/CIO/CDO※
※ Chief Data Officer ( 最高データ責任者 )
1979年に安川電機に入社。システム系に強みを発揮し
ながら、一貫して技術畑を歩む。技術者としてさまざ
まなプロジェクトに参加。2006年に取締役に就任。
2014年取締役・常務執行役員・技術開発本部長を務
めて2016年に代表取締役社長 兼技術開発本部長に就
任。2018年からは安川電機独自のDXである“YDX”を
推進するICT戦略推進室長を兼務している。
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