日心シンポ企画 ビジュアル・ナラティヴによる教育と支援 題目 ビジュアル・ナラティヴによる教育と支援 企画者 やまだようこ(立命館大学OIC総合研究機構) 司会者 家島明彦(大阪大学全学教育推進機構) 話題提供者, やまだようこ(立命館大学) いとうたけひこ(和光大学) 滑田明暢(静岡大学大学教育センター) 神崎真実(立命館グローバルイノベーション研究機構) 指定討論者 家島明彦(大阪大学全学教育推進機構) 企画趣旨 ナラティヴ(物語・語り)とは,経験の組織化や意味づける行為と定義される。狭義には語られたものや語る行為をあらわすが,広義には建築や音楽なども含む。その中でビジュアル・ナラティヴとは,イメージ(画像・映像)を伴う視覚的なナラティヴをさす。 ビジュアル・ナラティヴは、狭義の言語とは異なる特徴をもつ、優れた語り様式と考えられる。ビジュアル・ナラティヴは、「表現する」「伝える」「共感する」方法として優れているので、社会実践や教育に生かせる。特にワークショップに適している。ビジュアル・ナラティヴは、作品をつくる過程で気づく「リフレクション」プロセスを含み、作品完成のよろこびがあり、できたビジュアル作品を他者と共に見る「三項関係」をつくって語りあうことで多様な視点を得ることができる。ビジュアル・ナラティヴを用いた多様な教育・支援方法を開発して提案するとともに、理論的・方法論的な議論を行いたい。 話題提供 やまだようこ ビジュアル・ナラティヴによるワークショップ:ことばによるナラティヴは対話的二項関係を基本としている。ビジュアル・ナラティヴは、外在化され、ビジュアルを共に見る共同注意の関係、共存的な三項関係をつくり、それについて語りあう共同生成プロセスを生みやすい。イメージ画、絵本、コラージュ、紙芝居、マンガなど、さまざまなWS事例をもとに教育・支援場面で効力を発揮するビジュアル・ナラティヴの特徴を考えたい。 いとうたけひこ ビジュアル・ナラティヴ教材を用いた心理学教育-「ディペックス・ジャパン:健康と病いの語りデータベース」を活用して:認知症、乳がん等の語りの動画公開サイト、ディペックス・ジャパン(https://www.dipex-j.org/)の協力を得て、心理学入門講義において「語りの力を学ぶ」特別授業をおこなった。ビデオを媒介にしてどの様な対話が起こったか紹介し、心理学教育におけるナラティヴの意義を考えたい。 滑田明暢 ビジュアル情報を用いた文化・社会理解の授業実践-フォトボイス、「かわいい」と「キュート」の文化比較2:写真を含めた視覚的イメージは、私たちの日常生活において身近に存在するものである。それゆえに、日々の生活で接していることの理解を深め、拡げることに活用できる可能性もあると考えられる。ビジュアル情報を用いた文化・社会理解の授業実践をもとに、教育実践のなかで視覚的イメージを用いることについて考察したい。 神崎真実 校舎をつくる―掲示物等(ビジュアル)を通じた交流の生成:通信制高校には、不登校経験者が多く在籍している。他者との交流を苦手とする生徒も少なくはない状況にあって、教師たちは日々、生徒の交流の場をつくり続けている。本報告では、今春より新校舎を設置した通信制高校で、掲示物等のレイアウトがつくり変えられていくプロセスに焦点をあて、生徒たちの交流がどのように生成されるのかについて報告・考察する。