暫定版2020年9月22日

1. レポート構成の組み立て方
國學院大學経済学部
尾田 基
各科目共通資料
2020年9月22日 暫定版

2. 目次
2020/9/22Hajime Oda2
 因果関係をどういう順序で書くか
 結果変数を先に書く場合
 原因変数を先に書く場合
 関心が確定していない場合は
 接続のさせ方
 応用例：戦略提案レポートの場合
 文献案内
 その他の構成モジュール（まだ書いてない）

3. 因果関係の記述順序
2020/9/22Hajime Oda3

4. 社会科学は因果関係に関する記述なので…
2020/9/22Hajime Oda4
 因果マップは2次元で書けるが文章は１次元なので、順序をき
めないといけない…
 因果関係を文章で記述するための方法
 ①原因→②結果の順で書くか
 ①結果←②原因の順で書くか
 のいずれか
 どうやって選ぶか？
 基本的には確定している側から書いて、確定していない側へと続
ける
 観察できる現象から始めて、推論へとつなげていく
 何を検討したいのかという問題設定にも大きく依存

5. 検討したい結果変数側が確定している場合
（戦略分析などで一般的）
2020/9/22Hajime Oda5
検討したい
結果変数
例
・市場規模が成長した
・利益が上がった、赤字になった
・企業や事業の存続
・複数企業間比較（逆転が起きた）
原因変数の候補
（仮説）①
原因変数の候補
（仮説）②
原因変数の候補
（仮説）③
マーケティング戦略が良かった？
偶然生じた自然現象（地震、感染症）？
競合企業の失敗？ こういう場合は、先に結果変数について記述して、
「なぜこういう結果になったのか？」
という状況と問いを明らかにしましょう

6. 結果変数を先に書くべき状況の例
2020/9/22Hajime Oda6
 いつぞやのレポートお題「諸外国で普及しているのに、日本で普及していない製品や
サービスをひとつ挙げ、なぜ普及していないのかその理由を説明しなさい」
 まずはある製品やサービスについて「諸外国では普及しているのに日本で普及してい
ないこと」を証拠付きで示す必要がある
 やりがちなだめなレポートの例
「日本は女性の子宮頸がん検診の割合が低いので、その対策についてまとめる。」
 結果を自明視してレポートを始めてしまっている。結果変数の状況を記述して、それを読み手に
伝えることも執筆者の仕事です。
 改善例
「厚生労働省（2019）によると、女性の子宮頸がん検診受診割合（20-69歳）は日本が42.1％
（2013年）であり、OECD諸国が5割～8割であるので、諸外国と比較してがん検診の受診率が
低い状況にある。」
 参考文献：厚生労働省（2019）「令和元年度 がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペー
ン」https://www.gankenshin50.mhlw.go.jp/campaign_2019/outline/low.html （2020年9月22日閲覧）。

7. 検討したい原因変数側が確定している時
（組織論で多いかも？）
2020/9/22Hajime Oda7
検討したい
現象・概念がある
例
・働く人々のモチベーション
について考えたい
・OCB（組織市民行動）
について考えたい
望ましい結果の
候補①
望ましい結果の
候補②
望ましい結果の
候補③
組織成果
タスク成果の向上
離職率の低下
成果は特定の何かでなくてもよいと思っていて、
それよりもモチベーションの計測とか識別に
関心があるような状況
この場合は原因変数側を先に（かつ長く）記述

8. 確定していない時はどうする？
2020/9/22Hajime Oda8
 どちらかから始めて、違っていたら書き直す
 調査・研究を進めるうちに問題関心が変わることもある
 ずっとずれていかないように、今は何を調べているのか
を自覚する必要はある
 原因と結果を混在させないように注意
 「コミュニケーション能力」について検討したい時に、
「良好に終わったコミュニケーションの結果」と「コ
ミュ力」を識別すること自体が結構難しい

9. 応用例）現状分析→戦略提案 型のレポート
2020/9/22Hajime Oda9
 「ビジネスプランを建ててください」とか、「特定の企業について、状況を改善するための戦略
提案をしてください」という類いのレポートのお題が出された時。この場合は現状分析と戦略提
案で、因果関係を2回考えることになる。まずは確定している現状分析から。
 ①現状分析（なぜ現状のような状態になったのか？なぜ現状のような問題が生じているのか？）
 赤字になったのはなぜか？（原因→赤字）
 少子化になったのはなぜか？（原因→少子化）
 ②解決策の提案
 現状分析で分析した、どの原因変数を操作すると、結果変数の改善が見込まれるか
 その操作をするためにはどのようなプランがありうるか
 他の操作よりも望ましいと考えるのはなぜか（対抗仮説の除去）
 ①と②で全然違う因果関係を想定しないように
 ①で「この企業は組織構造に問題がある」と考えているのに、②で「インスタグラムで宣伝を強化し
ましょう」みたいな思いつきベースの提案をするレポートはよくある

10. 想定している因果を明確に章や節をつなげま
しょう
2020/9/22Hajime Oda10
 やりがちだが、「まず、」「次に、」でつなげる構成は避け
た方が良い
 「まず、同社の近年の財務成果について確認する。」
 「次に、同社のインターネット通販戦略について記述する。」
 この接続の書き方では筆者がどのような因果関係を想定している
かが自明ではない（順序が整理されていれば一応推測はできるが
…）
 因果関係について考えているのだということを明示的に書く
 「なぜ、このように近年の利益率が悪化しているのだろうか。そ
の理由として考えられる原因は3つある。…」
 「以上のように検討してきた原因の候補の中で、特に重要だと思
われるのは…」

11. （参考）実証研究論文の一般的な構成
2020/9/22Hajime Oda11
 問題背景・リサーチクエスチョン
 想定している変数間関係について
 先行研究
 学部生だとここを厳密に書くのは難しいが、例えば教科書にはこう書いてあるということをメ
モしておくことは重要
 研究設計
 各変数の定義と操作化
 どのような調査対象に、どう調査したか
 結果
 考察
 インプリケーション

12. 文献案内
2020/9/22Hajime Oda12
 一橋MBA 戦略分析ケースブックシリーズ（著者：一
橋MBA戦略ワークショップで検索）は、主に「結果
→原因（戦略）」の順の書き方の参考になる

13. その他の構成モジュール
・定義と具体例
・構成概念と操作化
・主張と証拠
2020/9/22Hajime Oda13
そのうち書く