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- 2. このビデオの目的 ～総合診療領域における教育での特徴～ 医学教育については様々な理論や議論がありますが、 ここでは、総合診療領域と関係が深いと思われる理論や、考えを取り上げます (Five micro skills、SNAPPS、フィードバックなどの実践スキルは他を参照） • 指導医： 自身の教育を振り返り、よりよい教育とはなにかを考える機会にする • 学生、研修医、専攻医： よく用いいられる教育理論を知り、自身がどのような学習をすればいいか、 また後輩などにどのように伝えることが効果的か考えてみる
- 3. 今回取り上げる内容 １．総合診療領域における教育 • 自己主導型学習：Pedagogy,Andragogy,Heutagogy • 省察的実践 ２．どのようにして自己主導型学習、省察的実践を促すか • Kolbの経験学習 • KorthagenのALACTモデル • 教育実践への落とし込み
- 4. 総合診療領域における教育 総合診療の領域では… • 患者中心の医療：医師である自身とは異なる価値観との遭遇 • 家族、社会、経済など医学のみでは太刀打ちできない問題 • 他医療スタッフや、専門職などとの多職種連携 • 多疾患併存状態などガイドラインや指針がない状況 など、『多様性、不確実性、複雑性 ⇨ 唯一の絶対的な答えが存在しない』 シチュエーションを経験することが多い。 このことから知識や技術のアップデートのみならず、「自らのもつ力に自制的になり、 自らのモラルについて自覚的となり、強い規範意識をもって行動していくこと（日本プライ マリ・ケア連合学会基本研修ハンドブック 第3版 南山堂 2021.）」それ自体の学習やトレーニングを積んで いく必要がある。
- 5. 学習理論の概要 Uday Y. (2019); PEDAGOGY, ANDRAGOGY AND HEUTAGOGY - CONTINUUM AND COMPARISON. Int. J. of Adv. Res. 7 (Aug). 1229-1234] (ISSN 2320-5407). Pedagogy (Teacher-directed) Andragogy (Self-directed) Heutagogy (Self-determined) Some single-loop learning Stronger emphasis on single-loop learning Single and double-loop learning Knowledge transfer and acquisition Competency development Capability development Linear design of courses/curriculum and instructor- directed learning approach Linear design of courses/curriculum with learner-directed learning approach(e.g,organizing his/her lerning) Non-linear design and learner- determined learning approach Instructor-directed Instructor-learner directed Learner-determined Getting students to learn (content) Getting students to learn (content) Getting students to understand how they learn (process)
- 6. Andragogy 1.自己概念 人間は成熟するに連れて、その自己概念が、依存的人格の自己概念から 自己主導性を持った人間の自己概念へと変わっていく 2. 過去の経験 成人は経験を蓄積させていくが、その経験こそが学習の豊かなリソースとなる 3. 学習への レディネス 成人の学習へのレディネスは、その成人の社会的役割をめぐる発達課題に密接に関わる 4. 学習の導入 人々が成熟するにつれて、時間的観念に変化が現れる。将来的に知識を 適用しようとする考え方から、差し迫った場面に適用しようとする考え方への変化である。 このために、成人は学習において教科中心的というより問題解決中心的である 5. 学習動機 成人は、外的要因よりもむしろ内的要因によって学習への動機づけを得る
- 7. Heutagogy Self-determined learning： (自己決定型学習) ・教育者の役割は少なく、必要に応じて学習者へのフィードバックや 学習方法の助言などコーチング的な役割を果たす。 Heutagogyの原則 1.Learner-centered and learner-determined：学習者中心、学習者の自己決定 2. Capability ：不慣れな状況でも力を発揮できる、自己効力感、創造性、チームワーク 3. Self-reflection and metacognition：自己省察とメタ認知 4. Double-loop learning：価値観や信念体系まで含めた振り返り 5. Nonlinear learning and teaching：結果として自身で学ぶ過程を探っていく非線形的な学び Heutagogy: A holistic framework for creating 21st century self-determined learners July 2015 DOI:10.1007/978-3-662-47724-3 Stewart Hase、Chris Kenyon：2001～ （Moving from andragogy to heutagogy: implications for VET） 学習者がさらに自立した状態 Andragogyの中に含まれることもある
- 10. Kolbの経験学習モデルKolb D.A. (1984) “Experiential Learning: Experience as The Source of Learning and Development,” 能動的実践 Active Experimentation 具体的経験 Concrete Experiences 省察的観察 Reflective Observation 抽象的概念化 Abstract Conceptualization ・実際の行動と結果 ・体験から気づく ・客観的に振り返る ・良かったところ、改善点は？ ・他の事例にも応用できる？ ・一般化、パール ・概念化されたものを試す ・実践・適応は可能か？
- 11. KrothagenのALACTモデル F・ コルト ハーヘン,武田信子監訳( 2010) 『 教師教育学: 理論と実践をつなぐリアリスティ ック・ アプローチ』 学文社 より作成 ②→③→④： 振り返りから、本質への気付き 例：揚げ物が多くなってしまうときは、仕事が忙しく疲れ ていたり、帰りがタイムセールの時間のときが多い。疲れ ているときには濃いものが食べたくなるし、“値引き・ お得”にはつられてしまうのかも。 →それを踏まえて対策、選択肢を考える ②→④： 振り返り、選択肢を広げる 例：健診でLDL上昇。最近揚げ物が多かったから、揚げ物 を避けよう。魚を食べよう。
- 12. ALACTモデルに学ぶ "省察を促す” F・ コルト ハーヘン,武田信子監訳( 2010) 『 教師教育学: 理論と実践をつなぐリアリスティ ック・ アプローチ』 学文社 より改変 ③本質的な諸相への気付きにおける援助 ・②行為の振り返りを丁寧に行う：自然とプロセスは発展する ポイントとなる質問＝具体化：あなたは/学習者は、何をしたかったのですか？、何をしたので すか？、何を考えていたのですか？、どのように感じたのですか？ ・向き合わせ：理想と実際の自己と、指導者からどう見えるか、不一致を指摘する 対象は個人の人格ではなく、外見上の行動でなければならない 与えられた情報を受けてが活かせること、また何をすべきかのアドバイスを避ける ・一般化：特定の場面のみに結びつけることから、視点を広げさせる ・今ここの経験：逆に今現在の指導医との対話など、視点を局所にさせる
- 13. トレーニング Q. ここまで扱った内容を教育に組み込むためには（学習者に自己主 導型/自己決定型学習や、省察的実践ができるようになってもら う）、どのような方法・方略をとればよいでしょうか？ 上村が過去に行った実例 ・SEA（Significant Event Analysis）の手法を利用したカンファレンス ・円環的、循環的質問を重視したフィードバック ・指導場面のビデオを供覧し、起こっていることや改善点についてディスカッションする ・映画、絵本、エッセイ、ニュース記事などを題材にして感想を語り合う
- 14. 目的/結果に合わせた教育の一方で… 『発熱』 発熱はこういう風に考えて 対応するのか！ こういうことができることが 優れた医師なんだな こんなレクチャーだと 退屈だなぁ… “学習者は常に正しい” Keller, F. S. (1968). Good-bye, teacher.... Journal of Applied Behavior Analysis, 1, 79-89.
- 16. • 総合診療の領域では、唯一の答えが存在しないシチ ュエーションに出会うことが多く、自己主導型学習 (Self-directed lerning)、自己決定型学習(Self- determined lerning)のできる医師になることが、求 められている • 体系化されたトレーニングとして省察的実践、Kolb の経験学習、KorthagenのALACTモデルといった理 論が挙げられるが、それらをどのように臨床現場と、 その教育に落とし込むか考える必要がある • そしてまた指導者も、いち学習者である まとめ