Sports Analyst Meetup #10にて発表

1. サッカーの（行動系列予測に基づく）
チーム守備評価
Sports Analyst Meetup #10
2021/6/26
藤井 慶輔 (@keisuke_fj)
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スライド（過去も含め）： https://www.slideshare.net/KeisukeFujii1/
論文（詳細）： https://arxiv.org/abs/2103.09627
戸田 康介（京大）、寺西 真聖（名大） 、久代 恵介（京大）との共同研究です（敬称略）

2. 集団スポーツ
2
相手と争い、味方と協力する
– 巧みな動きや、柔軟なチームワーク、予測できない結果
– 計測・モデル化技術の発達から、データ解析の発展が期待
– ただし戦術的な解析に関しては未発達
赤がNeymar選手（NHKの撮影協力） [Teranishi et al. 2020]

3. サッカーのチーム・選手の定量的評価の研究
① 得点・失点予測に基づく方法 [例: Lucey+14; Decroos19]
② シュートに至る過程のプレーを評価する方法
– 攻撃： パスの価値[Power+17]、有効攻撃[Ueda+14]など
– 守備：パス奪取[Piersma+20] 、プレスの評価[Robberechts+19]など
③ 選手のポジショニングの評価
– ボロノイ領域[Taki+00]、スペースを作る動き[Fernandez+18]など
問題点：
①得点は希少なため評価が安定せず、得失点に至るまでの
多様なプレーが評価しにくい
①②の多くは、 主にボール周りのデータを使用しており、
ボールから離れた選手の評価やチーム全体の評価が困難
②③の手法ではチームの成績と関連付けて評価することが難しい
本研究：上記の問題を解決するチーム守備の評価方法の提案
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4. 提案手法：VDEP（Valuating Defense by Estimating Probabilities）
全選手・ボールの位置を用いて行動予測を利用した評価方法
アプローチ（詳細は後ほど）：
得点予測に基づくVAEP（Valuating Actions by Estimating Probabilities）
[Decroos+19]の手法を、ボール奪取や被有効攻撃に適用してチーム守備
の過程を評価できるように修正
良い点：
1. 希少な得失点より発生頻度の多いイベントの予測に基づく
2. ボールから離れた選手の位置情報も利用できる
3. チーム成績と関連づけて、チームの守備評価を行える
方法の評価：
• 実際の試合の得失点との関係
• シーズンを通したチームの成績との関係
• 具体的なチームの試合分析やシーズン総括の使用例
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5. 使用したデータ
統計コンペ（※1）で利用したJ1リーグ2019シーズンの計45試合
• イベントデータ（パス・シュート等19種類の行動ラベル）
• トラッキングデータ（選手全員とボールの座標）
※1 情報・システム研究機構統計数理研究所 医療健康データ科学研究センター、データスタジアム
株式会社より提供、コンペではサッカー部門で優秀賞を受賞
※2 有効攻撃： シュートに、クロスなどでペナルティエリア侵入したイベントなどを加えたもの
※3 ボール奪取： そのプレーの前後で有効攻撃以外により攻撃チームが変わること
• 45試合（30-34節）のデータ：
• 得点（失点）： 106点
• シュート数： 1,174回
• 有効攻撃（※2）： 3,701回
• ボール奪取（※3）：9,408回
• 検証
• 5分割交差検証の要領で、
最終的に45試合全部を予測・評価
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6. 提案手法：VDEP（Valuating Defense by Estimating Probabilities）
ボール奪取や被有効攻撃の予測確率に基づく守備の価値
𝑉𝑉𝐷𝐸𝑃 𝑆𝑖 = 𝑃𝑟𝑒𝑐𝑜𝑣𝑒𝑟𝑖𝑒𝑠(𝑆𝑖) − 𝐶 ∗ 𝑃𝑎𝑡𝑡𝑎𝑐𝑘𝑒𝑑(𝑆𝑖)
（𝑃𝑟𝑒𝑐𝑜𝑣𝑒𝑟𝑖𝑒𝑠を上げる or 𝑃𝑎𝑡𝑡𝑎𝑐𝑘𝑒𝑑 を下げると高評価）
𝑆𝑖: 𝑖番目と𝑖 − 1番目の行動とその時の座標を含む状態の集合
C : ボール奪取と被有効攻撃の価値を調整する定数（発生頻度で調整）
𝑃𝑟𝑒𝑐𝑜𝑣𝑒𝑟𝑖𝑒𝑠や𝑃𝑎𝑡𝑡𝑎𝑐𝑘𝑒𝑑は分類器（XGBoost）により推定
• 入力：イベント発生時のトラッキングデータ（選手・ボール）、
イベントの種類、時間、点差、ゴールまでの距離・角度
• 出力：その後k (=5) イベント以内にボール奪取or被有効攻撃が起きる確率
（ボール周りのVAEP[Decroos+19]も同様に得失点の期待値から算出）
守備の価値 ボール奪取確率 有効攻撃される確率
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7. 分類器の妥当性の検証
F1スコアで真陽性を分類できたか評価
F1スコア= (2×Precision×Recall) / (Precision + Recall)
※Precision : 陽性と分類したもののうち、真陽性であった割合
※Recall : 陽性と分類すべきものを正しく分類できた割合
• VDEP： ボール奪取35,286回、被有効攻撃 13,353回 ／ 総イベント97,335回 (k = 5)
• VAEP： 得点：753回、失点：227回 ／ 総イベント97,335回 (k = 10)
VDEPは正確な予測に基づく評価が可能であることが示唆された
実際有 実際無
予測有 真陽性 偽陽性
予測無 偽陰性 真陰性
Precision
Recall
0.00
0
0.2
0.4
0.6
VDEP VAEP
𝑅𝑟𝑒𝑐𝑜𝑣𝑒𝑟𝑖𝑒𝑠 𝑅𝑎𝑡𝑡𝑎𝑐𝑘𝑒𝑑 𝑆𝑠𝑐𝑜𝑟𝑒𝑠 𝑆𝑐𝑜𝑛𝑐𝑒𝑑𝑒𝑠
（提案） （既存）
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8. VDEPの使用例① 試合分析
第34節 横浜F・マリノス vs FC東京
試合は3-0で横浜が勝ったが、点差ほどの差はみられなかった
• シュート本数が同じ
-0.05
0
0.05
0.1
VDEP
横浜 東京
0
0.1
0.2
0.3
0.4
recoveries attacked
横浜 東京
• VDEPの総和（特にattacked）は東京の方が良い数値を示した
• このように守備の評価が良かったのに（シュートの質が良くて）
得点される場合がある
𝑅𝑟𝑒𝑐𝑜𝑣𝑒𝑟𝑖𝑒𝑠 𝑅𝑎𝑡𝑡𝑎𝑐𝑘𝑒𝑑
↑
良い
守備
↑
良い
守備 良い
守備
↓
8

9. VDEPの使用例② プレー分析
第34節 横浜F・マリノス vs FC東京 の1点目のシーンを紹介
VDEPは、正の時は良い守備を、負の時は悪い守備をしていると解釈できる
悪い守備ではなかったが失点してし
まったと推察される
（結果にとらわれない評価ができる）
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10. VDEPの使用例③ 複数試合の評価とシーズン成績の関係
• 横浜（得点最多）：ボール奪取と被有効攻撃の確率が高い
• 広島（失点最少）：ボール奪取確率は高く被有効攻撃は低い
プレッシング
ブロック形成
ボール奪取確率高い（良い）→
有効攻撃
される
確率低い
（良い）
↓
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11. まとめ
• チームの守備を定量的に評価するVDEPを提案
• VDEPは既存手法より頻度の多いボール奪取や被有効攻撃
を予測可能な方法を用い、信頼性が高いことを示した
• （今回は割愛）VDEPは長期的な成績とも安定して相関がある
ことにより、勝敗より安定した評価指標となる可能性
展望：
個人の貢献への分解・評価手法の評価
謝辞
• データ提供：情報・システム研究機構統計数理研究所 医療健康データ
科学研究センター、データスタジアム 株式会社
• 議論：Scott Atom氏、大西 正輝氏
• 科研費：20H04075, 20H04087, JSTさきがけ JPMJPR20CA
Kosuke Toda, Masakiyo Teranishi, Keisuke Kushiro &
Keisuke Fujii, arXiv preprint arXiv:2103.09627, 2021
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