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北欧と日本の図書館の比較


     2011 年度 卒業論文
     指導教員 川崎一彦


国際文化学部 国際コミュニケーション学科
    8AWK1128 水沼あやか
要旨を入れて下さい。
目次


はじめに


第一章 図書館のはじまり


第二章 図書館五法則


第三章 デンマークの公共図書館


第四章 北欧のその他の公共図書館


第五章 日本での図書館の取り組み


第六章 これからの図書館のあり方


おわりに


参考文献
第一章 図書館のはじまり
<図書の起源>
 図書は記録された知識であるということができる。人間は大昔から思想や意志や感情、
あるいは知識や情報を伝達し、継承するために、それこそいろんな手段を用いて絵や文字
による記録を作成してきた。
 しかし、単に知識や情報が記録されているだけでは図書とはいえない。図書とは、意思
や感情、知識や情報を伝える意図をもって、一定の材料、つまり粘土板、パピルス、羊皮
紙、紙といった材料に文字や絵で書き記され、著作物としての形態を保っていて、その著
作物が、人間相互のコミュニケーションの手段や方法として機能しているもののことを言
う。
 このように、内容と形態の画面を備えてはじめて図書といえるのである。


<図書館の起源>
 人類最古の図書館といわれているのが、19 世紀末にペンシルバニア大学調査隊によって
発見された、メソポタミア(現在のイラク、シリア、トルコ)のニップール(現在のヌファー
ル)の神殿内に設けられていた図書館である。この図書館がいつごろ、誰によってつくら
れたものかは明らかにはされていないが、たくさんの粘土板図書の中には、神々に捧げた
讃美歌、祈禱文、公文書などにまじって、バイブルにある大洪水の物語によく似たシュメ
ールの伝説を伝える図書があったという。このことからシュメール人によってつくられた
のではないかといわれている。


 建造者がわかっている図書館で最古のものは、アッシリアの都ニネヴェに紀元前7世紀
にアッシュルバニパル王によって建設された図書館である。このニネヴェの図書館には、
粘土板の古文献を解読するための辞書が備えられ、公文書、証書類、医学書、薬学書、宗
教書、神話書、教科書、歴史的記録を伝える本、書簡集など 2 万を超す図書が書庫内に整
然と並べられていた。そして、それらの図書の中に、聖書の中にあるノアの洪水によく似
た物語があったという。
 この図書館は、宮廷の役人や神官をはじめ、広くの知識人たちに公開されていたとされ
るが、当時この図書館で図書を読み、何かを調べるために利用しえた人たちとは。どんな
階級の人だったのであろうか。おそらく、神殿に付設されていた学校で教育を受けたエリ
ートか、あるいは書写を業としていた人に弟子入りをして、字を習い、書写技術を習得し
た人たちぐらいであったろうと思われる。
 当時学校で学びえた人たちについては、ドイツ人シュナイダーの粘土板図書の解読によ
って明らかにされている。それによると、知事、市長、祭司、将軍、主税官、会計官、書
記、学者、法律家などの官僚や専門職といった特権階級の人たちの子弟であった。
このニネヴェの図書館の粘土板図書は、破損していたものは修復再生をし、全蔵書はその
ままイギリスの大英博物館に運ばれて、大切に保存されている。


 日本の最初の図書館は、8世紀も後半のころに芸亭(うんてい)と称する書斎を設けて、所
蔵の書物をこれに収め、学問を志す人々に公開したとされる石上宅嗣(いそのかみのやかつ
ぐ)の文庫であろうといわれている。
 その後、いくつもの朝廷の文庫、公卿の文庫、武家の文庫がつくられた。江戸時代も中
期以降になると諸大名たちは競って藩校をおこし、子弟の教育に力を入れるとともに、藩
校付設文庫の設置が進められた。また、幕府の文庫である紅葉山文庫や、幕臣の教育機関
として重要な役割を果した昌平坂学問所の文庫なども、幕末のころには充実がはかられた。
これらの文庫はいずれも公卿や武士階級を対象としたもので、一般庶民にとっては縁もゆ
かりもない存在であった。しかし、江戸時代の末期になると、庶民の教育の場として寺子
屋が栄え、これによって庶民の読書熱が高まっていった。こうして貸し本屋という庶民の
読書の場が誕生することになった。
 明治の初期となると政府は、しばしば政府の高官を欧米諸国に派遣して、西欧の文物の
調査にあたらせた。これら政府用人たちの多くが欧米の国々の図書館の見聞をもとに、そ
の必要性について建言していた。また、当時の政府がわが国の近代化のための水先案内人
として招いた、いわゆる御雇外国人は明治 5 年には 214 人を数えており、これら御雇外国
人の多くが、日本の近代化にとって図書館が欠かすことのできない重要な機関であること
を説き、速やかに建設すべきだと建言していた。
第二章 図書館学五法則
 1、ランガナータン ShiyaliRamamritaRanganathan, (1892~1972)の略歴
 インドのマドラス出身の数学者、図書館学者である。ロンドン大学の図書館学部に留学
し、帰国後 1944 年までの 23 年間マドラス大学図書館長を務めた。その後、ベナレス・ヒ
ンドゥ大学で図書館学を講じ、理論、管理、図書分類法などについて多くの著作を出版し
た。インド図書館協会会長、マドラス図書館協会会長を務め、国際ドクメンテーション連
盟(FID)の中に分類研究委員会を設置するなど、図書館界に大きな足跡を残した。
 <図書館学の五法則>
 第一法則:図書は利用するためのものである。Books are for use.
 第二法則:いずれの読者にもすべて、その人の図書を。Books are for all.
 第三法則:いずれの図書にもすべて、その読者を。Every book its reader.
 第四法則:図書館利用者の時間を節約せよ。Save the time of the reader.
 第五法則:図書館は成長する有機体である。A library is growing organism.


 1-1、第一法則の内容とその意義
 <開館時間>
 「図書は利用するためのものである」という法則は図書館の開館時間に大きな影響をあ
たえた。この法則が十分に自己主張しなかった段階では、図書館は開館するよりも、しば
しば閉館している方が多かった。この法則が公共心に根ざしている国では、大多数の人が
就寝して図書館を利用しなくなる、その前に図書館が閉館することは許されない。
 図書館側の管理上の制約を優先して考えるのではなく、あくまでも、利用者の利便性を
最優先に、開館時間、開館日を設定することが重要である。
 <図書館家具>
 児童資料については、子どもの身長を配慮して、低書架の導入が不可欠である。また、
資料を書架に排架するばかりではなく、資料の表紙が見えるように平置きする方式も必要
である。
 レファレンス資料のコーナーについては、資料の形態が一般資料に比べて大型のものが
多いことを考慮し、書架の高さは、一般書架より、低いものを使用すべきである。また、
参照利用の便宜を図るために、書架に隣接して書見台を配置することも必要である。
 図書館には、書架、閲覧席など、様々な備品類が必要であるが、その選択にあたっては、
利用者の資料利用行動、資料の利用しやすさを十分に配慮することが重要である。書架に
ついていえば、利用者が手を伸ばして届く範囲の高さに設定する必要がある。
 <図書館職員と学識>
 第一法則によって、図書館には専任で特別の職員が必要であるということを人びとが納
得するようになってからでも、第一法則の要求のすべてを実行するために図書館職員に不
可欠の資質と資格を図書館主管当局に理解させるのには長い時間がかかった。教師は、自
分の教える学科について知らない限り、教師としては認められないであろう。学術研究に
関係し、各人にその人に適した本を見出し、本のなかに隠れている知識から益を得ること
を人びとに説き、単にいたずらっ子たちの教育だけではなく、万人の生涯教育を助けなけ
ればならないような図書館員は、幅広い学識を身につけていなければならない
 <図書館職員と利用者>
 図書館では図書は利用のために収集され、利用のために整理され、利用のために保存さ
れ、利用のために役立てられるということを決して忘れてはならない。整理作業や日常業
務のすべては、利用のためだけに行われるのである。
 第一法則のこの崇高な使命を十分満足いくように果たしていくためには、図書館職員は、
この使命を絶えず想起し、学識や必要な専門教育を獲得するばかりでなく、同様に絶対必
要な確かな姿勢と関心をも育てあげなければならない。
 <図書館員と個人的サービス>
 図書館とは何か。図書館とは利用のために保管された本の集積である。そして、図書館
員は、利用者と本を結びつける。従って、人びとに与えられる個人的サービス、[利用者ひ
とりひとりの要求に合わせたサービス]の中にこそ、まさに図書館の生命が存在するのであ
る。
 図書館員の仕事は利用者を援助することであり、援助するということは、利用者自身の
計画と希望を実行するために利用者に協力することであり、利用者が自分でできるように
彼を助けることである。第一法則が図書館職員に期待するものは、その種の個人的サービ
スである。
 <第一法則における「図書館職員」の位置づけ>
 図書館職員は、利用者の幅広い要求に対応できるような学識と専門知識が必要である。
 図書館職員は、個々の利用者の要求に違いに応じたサービスを提供していく必要がある。
 図書館職員の重要な役割は、資料と利用者を支援することであり、利用者を支援するこ
とが主たる役割である。
 図書館職員による個人的サービスの提供が最も重要である。このことは、人的支援とし
てのレファレンスサービスの重要性を示唆するものである。


 1-2、第二法則の内容とその意義
 第二法則は、本に接する機会、学習する機会、そして楽しむ機会について周到に均等の
原則を守っている地球のあらゆる所から、ことごとくの人-富者と貧者、男性と女性、若
者と老人、健常者と障害者、読み書きのできる人とできない人-これらすべての人を集め
て学問の殿堂へ導きいれるまで、第二法則は休むことはない。
 <図書館サービスの無限定性>
 利用者を、年齢、経済力、思想・信条、障害の有無等によって、差別、限定してはいけ
ない。乳幼児サービスや高齢者サービス、障害者サービス、アウトリーチサービス、施設
入所者、低所得者、非識字者、民族的尐数者など、これまでの図書館サービスが及ばなか
った人々に対して、サービスを広げていく活動が必要である。
 <図書館職員の責務>
 図書館職員の仕事が、単に求められた本をカウンターごしから不承不承与えることでは
ない。逆に、職員の仕事は利用者を知り、「本を知り、いずれの人びとにもすべて、その人
の図書」を見つけるのを積極的に援助することなのである。この種の活動はレファレンス
サービスとして知られている。
 1-3、第三法則の内容とその意義
  第二法則は、それぞれの利用者にふさわしい図書を見つけるということにかかわって
いたが、第三法則は、いずれの図書にもその図書にふさわしい利用者をさがさなければな
らない。第三法則を満足させるために図書館が採用した最もすぐれた方法とは、開架制で
ある。開架ということは、自由に蔵書を見たり調べたりする機会を与えることを意味して
おり、利用者が「図書を発見する」頻度が高くなることが最も重要である。
 開架制は、利用者自身による資料への自由なアクセスが可能であるが、図書館員の必要
性を否定するものではない。しかし、開架制は資料発見の機会を増大させるが、それだけ
で、資料と利用者を結びつける機会をすべて保障するものではないのである。
 レファレンス業務に携わる職員には館内の利用者たちと交わる特別の機会がある。人び
ととの直接のふれあいは、利用者の趣味や要求、言動と反応、及び好き嫌いを観察する機
会をもたらしてくれる。この直接のふれあいの結果として、経験を積んだ司書は、本能的
に利用者を図書に結びつけ、また逆に、図書が、しばしばその図書に魅せられる利用者を
教えてくれる。
 1-4、第四法則の内容とその意義
 最初の三つの法則に対する要求が次第に満たされるにつれて生じてくる状況を扱う際に、
時間の要因が加わってくる。この法則は図書館管理の多くの改善に責任を負ってきたし、
将来も、更に多くの改善に影響を与える大きな可能性を持っている。利用者が正しい書誌
ツールの利用法に通じ、
          「利用者の時間を節約する」ためには、初めに幾らかの個人的な手
ほどきが絶対に必要となる。利用者は、本が排列されている順序に職員と同じ位に精通す
ることはできないので、分類や目録に関する図書館員の詳しい知識は、求めている図書又
は情報に利用者が速やかに到達するのにはかり知れない便宜を与える。
 第四法則は、すべての図書館に適切な参考係職員の必要性を主張する。職員に費やされ
るこのような費用は、最優秀な頭脳の貴重な時間を節約することによって、絶えず増加し
ながら国家に還元されるのである。
1-5、第五法則の内容とその意義
 第一法則から第四法則までは、図書館の機能を取扱うのに対して、第五法則は、施設と
しての図書館の、重要で持続的な特性に関するものであり、図書館の計画と組織化にかか
わる基本的な原理を表明する。
 第五法則は、施設としての図書館が成長する有機体の属性をすべて有しているという事
実にわれわれの注意を喚起する。成長する有機体は、新しい物質を取り入れ、古い物質を
捨て去り、大きさを変え、新しい形を整えていく。有機体の成長する主要な部分は、図書、
利用者及び職員である。近代の図書館はこれらの三位一体からなる。図書も、利用者も、
職員も、その数が増えないものとして図書館を組織しようとすることは、許しがたいこと
である。
 安全対策を講じた開架制と近代的な貸出方法は、カウンター係の増員の必要性を取り除
くし、従業員の数を増やす必要性をごく最小限におさえる。しかし、図書館が成長するに
つれて、図書館職員の必要な増員が保障されない限り、図書館の能率を適切な水準に維持
することはできない。
 <ミツバチの精神>
 職員は、互いに極めて温かい関係になければならない。職員は互いにあらゆる可能な方
法で進んで協力しあうべきであり、排他的に自分の功績であると主張するような性格は完
全に克服されなければならない。
第三章 デンマークの公共図書館
<デンマークの公共図書館の歴史>
 デンマークでは、ヨーロッパの多くの国々と同様、近代的な図書館が設立されるまでは
教会に付設された図書室がコミュニティにある唯一の図書館だったが、そこを利用できる
のは、ごく限られた人々であった。すべての住民に開かれた近代的な公共図書館制度が完
成したのは、19 世紀後半から 20 世紀初期にかけてであった。
 デンマークの公共図書館の歴史を語る上で、最も重要な人物はスティーンベア(Andreas
SchackSteenberg 1854~1929)とランゲ(Hans Ostenfeld Lange 1863~1943)である。
スティーンベアは、コペンハーゲン大学を卒業後、教員生活を送っていた 30 代に、生徒に
読書を薦めるなかで、図書館運動にかかわったことがきっかけで、図書館の世界に入った。
40 代のときにイギリスとアメリカの図書館を視察したことが、スティーンベアの図書館へ
の情熱にさらに火をつけることになった。アメリカの先進的な公共図書館システムをデン
マークに導入したいという決意をもって帰国したスティーンベアは、教員を続けながらも
引き続き図書館運動に没頭し、1905 年「デンマーク民衆図書館連盟
(ForeningenDanmarksFolkebogsamlinger)」(現在のデンマーク図書館協会
(DanmarksBiblioteksforening))を設立した。
 スティーブンベアが政府の公共図書館助成金委員会のメンバーを務めていたときに知り
合ったのが、図書館運動の協力者となったデッスィン(Thomas Dæssing 1882~1947)であ
る。二人は協力して、当時アメリカで使われていた図書館資料の分類法と目録カードの作
成方法をデンマークの図書館に導入し、これがきっかけとなって図書館業務に大きな進歩
がもたらされた。
 一方のランゲは、デンマーク王立図書館の司書として働いたのちに、王立図書館長を勤
めた人物である。現在のデンマークの図書館における成功は、全国に張りめぐらされた図
書館ネットワークをベースと曽田資料の相互貸借によるものであるが、この仕組みを最初
に提唱したのがランゲである。住民の資料要求にこたえるために、「中央館と分館の相互貸
借を基本としたネットワーク」と「中央図書館によるコムーネ(Kommune 日本の市町村レ
ベルに該当する行政地区)図書館のサポート」
                    、さらに、「王立図書館による支援体制」をラ
ンゲが構想したのは 20 世紀初頭のことだった。その後、現在に至るまで、ランゲのアイデ
ィアは一貫してデンマークの図書館システムの基本理念であり続けている。
 今日、デンマークのすべての住民が居住区にかかわらず、図書館の資料にアクセスでき
るのは、20 世紀初頭に繰り広げられたスティーンベアとランゲによる近代図書館運動の賜
物なのである。
<デンマークの公共図書館の数と所蔵資料の内訳>
 2008 年現在、デンマークには 510 ヶ所の公共図書館(王立図書館を除く)のサービスポイ
ントがあり、その内訳は中央館が 97 館、分館や配本所が 380 館,移動図書館が 33 ヶ所と
なっている。2008 年に図書館を訪れた人の数は約 3400 万人、図書館が開設しているウェ
ブサイトへの訪問者は 2400 万人であった。
 図書館の来館者数とウェブサイトへの訪問者数が、ここ 10 年間で徐々に近づきつつある。
これは、ネットワークを介した図書館サービスが徐々に増えてきていることを示している。
特に、音楽のダウンロードサービスの開始によってウェブサイトへのアクセスが一段と増
加した。このような傾向は、今後、電子書籍や映画の配信サービスが本格的になるにつれ
ていっそう強まると予想される。
 とはいえ、公共図書館が保有している資料のうち、図書が占めている割合は約 83 パーセ
ントと群を抜いている。次に、音楽資料 11 パーセント、録音図書 2 パーセント、映像資料
1.8 パーセント、マルチメディア 0.8 パーセント、その他、というシェアになっている。2007
年との比較で見ると、データベース、電子ジャーナルなどのデジタル資料の占める割合が
増加したし、電子書籍、電子ジャーナルのダウンロード貸し出しも 2007 年に比べて著しい
増加となっているが、現在のところ、図書館の主要なメディアはやはり図書である。しか
し、視聴覚資料やデジタル資料の利用が急激に増えつつある状況をふまえると、公共図書
館が扱うメディアは現在大きな変化期にあるといえる。
<開館時間と貸し出し数>
 デンマークの公共図書館は、中央館、分館、そして配本所の数は、この 10 年間一貫して
減り続けている。とりわけ、行政改革によるコムーネ合併の影響を受けた 2007 年に、公共
図書館は 681 館から 550 館に減尐した。2010 年には、全国で 482 カ所だけとなった。
 図書館の数ばかりか、図書館の開館時間も短くなっている。2006 年から 2007 年にかけ
て開館時間は大幅に減尐し、一週間の総開館時間がとうとう 14 時間を割り込んでしまった。
といっても、デジタルサービスの拡大によって、非来館型サービスが増えていることもあ
り、開館時間が短くなったからといって、そのまま図書館サービスが低下したとはいえな
い。
 一方、図書館全体の貸し出し数は、デジタルサービスの増加によって確実に増えている。
2008 年の貸し出し数と更新回数の総数は 7400 万件を数え、前年度より約 280 万件増加し
た。
 音楽資料については、数年前から始まったネットワークを経由した音楽配信サービス
「Netmusik」による貸し出しが急激に伸びている。利用者は、サイトにアクセスして図書
館のユーザーID とパスワードを入れ、このシステムを使って好きな楽曲を選んで簡単にダ
ウンロードすることができる。24 時間いつでも自宅から利用できるということが、このサ
ービスの最大の売りである。
 デンマークの公共図書館の年間貸し出し冊数は、住民一人当たりに換算すると 13.5 にな
る。年間貸し出し冊数が 20 冊に達するフィンランドまでは及ばないまでも、世界的に見る
とかなり高い数値といえる。
<2007 年の行政改革と相次ぐ公共図書館の閉鎖>
 デンマークでは、2007 年 7 月 1 日の地方自治体改革によって、日本の件に相当する 14
の行政地区(Amt)が 5 つのレギオーン(Region 改革後の新しい行政地区)になり、市長村に
相当する行政区であるコムーネが 271 から 98 に減尐した。この大規模名行政区の改革は、
県の業務(権限)を部分的にコムーネに移すことによってコムーネの住民サービスの範囲を
拡大しようとするものであった。
 この自治体統合によって図書館界は、多くの分館が閉鎖に追い込まれているという深刻
な事態にみまわれた。居住区に均等に配置された分館は、利用者にとってはもっとも身近
な図書館であり、情報へのアクセスのために基盤となる場である。だから、分館の閉鎖は
何よりも利用者にとっての打撃となった。
 各図書館では、バスによる移動図書館を利用したり、学校や公共施設を利用した配本所
を設置するなど、分館の閉鎖によって図書館の利用が困難になった利用者へのサービスを
何とか維持しようとした。しかし、それでも今まで受けてきた図書館サービスの質量が低
下することは否めず、図書館としては、その対応に頭を悩ませている。
<デンマークの図書館サービスを支える司書>
 図書館サービスを支える最も重要な要素、それは図書館コレクションでも図書館の建物
でもない。図書館と資料の専門家である司書こそが、図書館サービスの要である。
 2008 年現在、デンマークの公共図書館で働く職員の総数は 4628 人である。その内訳は、
司書が 2229 人、アシスタントが 1906 人、そのほかの職が 493 人となっている。10 年前に
比べると、図書館アシスタントの数は減っている。一方、図書館情報学を選考し、図書館
サービスの専門職としての資格を持つ司書の数は増減はあまりなく、ここ数年、安定した
人数を保っている。
 最近では、図書館が開設しているウェブサイトの管理を行うスタッフや、図書館の企画・
経営に携わる専門家を雇用する図書館も見られるようになった。デジタル化に伴う図書館
サービスの高度化に伴い、資料の専門家である司書と、コンピュータやネットワークの知
識を持つ IT 専門化が連携して図書館サービスを行うようになってきたのである。
 実際、デンマークの公共図書館に行ってみると司書の存在の大きさがよくわかる。どん
な小規模な図書館でも、司書は直接利用者とコミュニケーションをとりながら、要求され
る情報に的確に答えているし、その数の多さには目を見はるものがある。
 司書は利用者への情報サービスを専門に担当するスタッフであり、それ以外の職員が司
書の職務にタッチすることは一切ない。図書館職員のうち、誰が司書であるのかは名札か
らはっきりとわかるので、図書館の利用者に関して困ったことがあれば、利用者は迷うこ
となく司書のもとに直行できる。司書は、情報サービスのプロフェッショナルとして利用
者からとても信頼されているのである。
<「司書を予約しよう(Book en bibliotekar!)」>
2008 年にはじまった「司書を予約しよう(Book en bibliotekar!)」というサービスは、ま
さにデンマークにおける司書の重要性を示しているといえるだろう。これまでの図書館で
は、集会室や学習室、図書館内にあるコンピュータなど、図書館が提供するスペースの機
器の「予約」を受け付けてきた。このような予約サービスをさらに発展させて、
                                   「司書を予
約しよう」というのがこのサービスの趣旨である。
 司書がいるカウンターに次から次へと利用者が訪れ、さまざまな質問をしていく光景を
デンマークの図書館ではとてもよく見かける。どれぐらい混んでいるかというと、司書が
質問を受け付ける机の脇には、銀行にあるような順番待ちの機会が置いてあるくらいだ。
利用者は番号札を引いて、自分の番号が壁にかかっている電光掲示板に示されるまで順番
を待つという仕組みである。
 司書のカウンターが繁盛しているのは大いに結構なことだが、利用者の中には、後ろに
並んでいる人が気になってゆっくりと話ができないと感じる人もいる。司書を予約するこ
とができれば、ほかの利用者のことを気にせず、心ゆくまで質問ができるのではないかと
考えた末に「司書を予約しよう」という新しいサービスがはじまった。図書館側では、こ
のサービスの範囲として、図書館の利用法、インターネットの使い方、読書アドバイスな
どを想定しているようである。
 サービスの対象となるのは、図書館の利用の仕方に不慣れな移民や、図書館離れが目立
つティーンエイジャーといったところである。30 分から 1 時間かけて、司書はじっくりと
利用者からの個別相談に応じる。中には、役所に提出する書類作成を手伝ってもらうため
にこのサービスを利用する移民もいるという。これから、徐々に利用が伸びていくサービ
スといえるだろう。
<専門職としての司書>
 デンマークの図書館で専門職として働くためには、デンマーク唯一の司書養成機関であ
る、デンマーク王率情報アカデミーで所定の図書館情報学の単位を修め学士号を取得し、
その後半年間の実習期間を経験するか、あるいは、図書館情報学の修士号を取得する必要
がある。つまり、デンマークの有資格の司書は、全員が情報学アカデミーの卒業生である
ということである。
 現役の学生だけではなく、すでに司書として働いている人々への再教育を担う継続教育
部門も情報学アカデミーにはあり、リカレント教育のための研修プログラムを企画・実施
している。デンマークの司書にとって、この研修プログラムはとても重要な役割を果たし
ている。なぜなら、図書館サービスの技術的進歩は著しく、司書として現場の最前線で働
いていくためには、時代のニーズにあった新しい知識を継続的に学習していかなければな
らないからである。
 図書館の社会的役割を学ぶ基礎的な講座から、デジタル情報サービスに関する技術的な
スキルを扱う講座や図書館経営の方法論を学ぶプログラムまで、研修内容は図書館の実務
全般を網羅している。ちなみに受講料は、一回の講座で 2000 クローナ(約 3 万円)程度であ
る。講師は基本的には情報学アカデミーの教員が務め、いくつかの講座は外部講師が担当
している。デンマークの司書は、定期的にこうした研修に通って、自分の専門知識をブラ
ッシュアップして図書館サービスに活かすことを心がけている。
 情報学アカデミーが長期にわたって司書を継続的に養成してきたことが、今日のデンマ
ークの高度な公共図書館サービスを支えているということは間違いない。
<ボランティアがいないデンマークの公共図書館>
 デンマークの公共図書館運営の自律性の高さは、図書館におけるボランティア活動に焦
点を当ててみると一段とはっきりする。
図書館サービスの先進国アメリカでは、住民は利用者として図書館を利用するだけではな
く、図書館にかかわるさまざまな活動に参加することで図書館を支援してきた。たとえば、
民間の草の根組織である「図書館の友」がブックセール、バザーなどを通じて図書館へ寄
付金集めをして図書館を支援するほか、ボランティアは図書館内で図書館ガイドツアー、
初夏整理、資料整理などの補助的な業務を担当してきた。「いまや、ボランティアなしの図
書館運営は考えられない」というのが、アメリカにおける一般的な図書館界の状況である。
 一方デンマークでは、住民による業務支援は「存在しない」
                           。図書館業務は専門職務とし
て位置づけられており、図書館ボランティアという概念そのものが存在しないのだ。実際、
図書館業務に携わるのは専門職である司書と、それ以外の特定業務を担当する職員に限ら
れている。もちろんデンマーク図書館職員組合もボランティアの導入に対しては強く反対
している。
 北欧においては専門職とボランティアの業務は完全に分離されている。公的サービスに
おける専門職の役割が確立していて、専門知識を持たないものが業務に携わることはでき
ないことになっている。このことから、図書館業務もすべて専門領域とみなされ、そこに
非専門職がかかわることはありえないのだ。
第四章 北欧のその他の公共図書館
1、スウェーデンの公共図書館
 スウェーデンで図書館法が制定されたのは 1997 年と、ほかの北欧諸国に比べてかなり遅
かった。そして、現在の法律は 2005 年に改正されたものである。スウェーデンの公共図書
館では、居住区、年齢、文化的背景によらず、すべての住民に平等に情報を提供すること
がもっとも重要視されているのだが、これまでの国としての図書館政策をもたなかったた
めに、自治体によって図書館サービスの格差が生じている。
 2013 年の会館を予定している新図書館は、
                      「第二の居間としての図書館」、そして「24 時
間の図書館サービス」大きな目標として掲げている。
 「第二の居間としての図書館」とは、図書館がコミュニティの中で、これまで以上に人々
に親しまれる場所として存在感を高めていくことを表現した目標である。図書館は、家庭
以外のもうひとつの居間となって、利用者が自分自身と向き合う時間と空間を提供するこ
とを目指している。
 たとえば、
     「アラビア語カフェ」の場合は、アラビア語を母語とする人々が集まり、お互
いにおしゃべりを楽しむだけではなく、そこにアラビア語を学習している人が加わって、
自分の勉強の成果を試しながら相互に交流を深めたりしている。
 「24 時間の図書館サービス」は、主に有職者を意識したサービスとなっている。利用者
が図書館の開館時間に左右されず、いつでも図書館を利用できるようにしようというのが
このサービスの主旨であり、デジタルサービスをより強化して、24 時間アクセス可能な図
書館サービスを目指している。
 「第二の居間としての図書館」「24 時間の図書館サービス」は、一見すると方向性が逆
               、
のようにも見える。前者は図書館に実際に来てもらうことを重視し、後者は来館せずに済
むサービスを思考している。しかし、両方ともに一人でも多くの人に図書館サービスを提
供するという点は同じである。スウェーデンの図書館は、伝統とテクノロジーをともに手
放すことなく、そのすべてを包み込む公共空間となることを目指している。
2、ノルウェーの公共図書館
  フィヨルドに代表される多様な自然環境からなるノルウェーでは、移動図書館のブッ
クモービル(バス)やブックボート(船)が図書館サービスの重要な拠点となってきた。しかし
ながら、図書館の予算削除に伴って、こうしたサービスの廃止案が出されることもたびた
びあり、そのたびに署名活動などが行われ、なんとかもちこたえている。すべての人々に
公平な情報へのアクセスを提供するという図書館の理念から考えてみれば、ブックモービ
ル、ブックボートの重要性はいうまでもない。
 ノルウェーでは、日本の漫画やコンピュータゲームの人気は驚くほど高く、ほとんどの
図書館が児童サービスの一環としてコンピュータゲームを提供している。ノルウェーの司
書のなかには、ゲームを単に子供の利用者を増やすための道具としてみるのではなく、メ
ディアとしての新しい可能性を見出して積極的に活用しようとする若い人たちも現れてい
る。コンピュータゲームは単なる娯楽のためのメディアにとどまらず、デジタル情報に対
する子どもたちのスキルを高める可能性があるというのがゲーム擁護の理由である。
3、フィンランドの公共図書館
 経済協力開発機構(OECD)の学習到達調査(PISA)で示された子どもたちの高い学力によ
って、フィンランドは日本でも脚光を浴びている国である。特に、PISA 調査でフィンラン
ドの子どもたちの読解力の高さがクローズアップされたこともあって、図書館に対しても
高い関心が寄せられるようになった。
 フィンランドの公共図書館は、読書熱心なフィンランドの人々の旺盛な読書欲を支える
ために、また、学校図書館が貧弱な地域では、子どもたちの読書を支援するために重要な
役割を果たしてきた。
 フィンランドは国土の割に人口が尐ない国なので、国際競争力をつけるために教育を非
常に重視してきた。しかし、場所によって学校図書館があまり整備されていない所もある
ので、公共図書館が学校教育を保管する重要な役割を担い、学校と連携して児童の読書や
学習を支援している。その成果、すべての自治体に公共図書館が設置されており、一部の
図書館は学校図書館の機能をもち、ブックモービルやブックボートによるサービスも提供
されている。
 フィンランドは国をあげて情報通信の発展と普及に力を注いできたわけだが、その展開
の過程で、全国の公共図書館が重要な役割を果たしてきたことは有名な話である。人口密
度が低く、居住区が偏在するフィンランドにおいては、情報通信ネットワークは人々が平
等にアクセスを確保するための生命線ともなる。ネットワークを活用して生み出された知
的資源が今日の IT 大国フィンランドの基礎を支えていることを考えると、フィンランド社
会における図書館の重要性がよくわかる。
第五章 日本での図書館の取り組み
対象者別サービス
 すべての利用者に対して、公平かつ平等にサービスを提供することが、図書館の本来の
あり方である。しかし、図書館では、特定の利用者集団に対して、他と異なるサービスを
提供することもある。そうしたサービスは、対象ごとに異なり、また、その対照にのみ有
効であることが多いため、対象者別サービスと呼ばれる。


1、児童サービス
 児童サービスは子供にたいして行うサービスであるが、対象となる児童の年齢範囲は必
ずしも確定されていない。一般には、幼児から小学生くらいまでと考えられている。児童
サービスは近年公共図書館の中心的サービスのひとつとして考えられている。これは、子
どもの時の読書経験が、その後の読書週間の形成に大きくかかわると考えられているから
である。


2、ヤングアダルト・サービス
 ヤングアダルトとは、いわゆるティーンエイジャーを指す。この年齢層の読書興味や読
書傾向は、児童や成人とも異なっているという認識から、その層独特の読書要求に基づい
たサービスを行うとする活動がヤングアダルト・サービスである。また、従来図書館にお
いて、児童と成人に対するサービスはそれぞれ展開されてきているが、この年齢層は両者
のはざまにあって、十分なサービスを受けられずにきているとの反省から必要性が主張さ
れている。


3、成人サービス
1、ビジネスマンに対するサービス
  経済・産業界のカレントな動向を知るための資料、入門書やハウツーものの収集・提
  供に配慮する。いわゆるビジネス・インフォメーションのレファレンスを充実させる。
2、勤労者に対するサービス
  勤労者が利用できるように開館時間や開館日に配慮する。また、職場への団体貸し出
  しを積極的に展開させる。
3、主婦に対するサービス
  家事や育児といった家庭生活に関連した資料の収拾・提供に配慮する。


4、アウトリーチサービス
 特定の施設に収容されている人々(病院、障碍者施設、老人ホーム、孤児院、刑務所、尐
年院など)の場合、地域の公共図書館を利用できることはまれである。しかし、一般市民で
ある以上、そうした人々も図書館を平等に利用する権利を有している。
5、障害者サービス
 障害者サービスは、身体に何らかの障害を持つ利用者を対象にしたサービス活動の総称
である。したがって、具体的なサービス活動を検討し、計画する際には、障害の種類を認
識したうえでなくてはならない。
 障害者サービスは、提供する資料、サービスの提供方法、サービスに用いる施設の設備
の 3 点から検討する。
        提供資料       録音図書、点字図書、大型活字本、拡大写本、触る絵本
視覚
        サービス方法     対面朗読、点字による利用案内・館内表示
障害者
        施設・設備・用具   テープレコーダー、拡大図書機、自動朗読機、誘導ブロ
                   ック、誘導チャイム、など
        提供資料       字幕入りフィルム・ビデオ
聴覚・言語
        サービス方法     手話能力を持つ職員による対応
障害者
        施設・設備・用具

        提供資料       大型本よりは小型・軽量の資料が望まれる
肢体
        サービス方法     郵送貸し出し、自宅配本、配架方法の工夫
不自由者
        施設・設備・用具   スロープ、段差のないフロア、自動ドア、エレベーター、
                   トイレ、書架間隔、閲覧座席等の工夫
        提供資料       大型本よりは小型・軽量の資料が望まれる
内部
        サービス方法     郵送貸し出し、自宅配本、配架方法の工夫
障害者
        施設・設備・用具
6、ブックスタート
 ブックスタート(Bookstart)とは赤ちゃんとその保護者に絵本や子育てに関する情報な
どが入ったブックスタート・パックを手渡し、絵本を介して心ふれあうひとときをもつき
っかけをつくる活動である。ブックスタートは、1992 年にイギリスのバーミンガムにおい
て取り組みが始まり、日本では 2001 年から市区町村自治体の事業として行われている。
 地域に生まれた赤ちゃんが集まる 0 歳児健診を主な会場に図書館員、保健師、行政職員、
住民ボランティアなどが活動に携わりブックスタート・パックを手渡している。


ブックスタートの大切な 5 つのポイント
目的   赤ちゃんと保護者が、絵本を介してゆっくり触れ合うひと時を持つきっかけを作る
     ※赤ちゃんに負担をかけたり、保護者にプレッシャーを与えるような、早期教育の活動ではない

対象   地域に生まれたすべての赤ちゃんと保護者
機会   地域に生まれたすべての赤ちゃんと出会える保健センターの 0 歳児検診などで行
     われる
方法   絵本を開く楽しい体験といっしょにあたたかなメッセージを伝え、絵本を手渡す
体制   市町村単位の活動として、地域で連携して実施されている。
     特定の個人や団体の宣伝・営利・政治活動が目的ではない。
 2011 年 12 月 31 日現在、ブックスタートの実施自治体は 807 市区町村、全国の市区町村
数は 1742 である。


<実施において>
 1 組 1 組の赤ちゃんと保護者に、絵本を開く時間の楽しさを体験してもらいながら、丁寧
にパックを手渡すためには、会場づくりやパックの準備、手渡しに至るまで、多くの人の
協力が必要である。健診未受診者など、ブックスタートの実施機会に参加しなかった対象
者へのアプローチを行う際には、特に母子保健や子育て支援の分野との関わりが重要にな
る。
<地域の環境づくりにおいて>
 ブックスタートの前後に、絵本・赤ちゃん・子育てをテーマにしたフォローアップ事業
を開催したり、まちの施設を赤ちゃん連れでも利用しやすくしていくためには、様々な分
野の関わりが必要である。
<事業の継続において>
 ブックスタートを継続していくためには、読書、母子保健、子育て支援やまちづくりな
ど、様々な分野からブックスタートが評価され、支持されることが重要である。また、地
域住民がボランティアとして実際の取り組みに関わり、活動の意義を感じ、ブックスター
トを支持してくれることは、事業継続の大きな力となる。
ブックスタート全体の仕組み




『ブックスタート』より引用




       『ブックスタート』より引用
『ブックスタート』より引用
※パックの内容は、自治体によって異なる。


絵本
「赤ちゃんと絵本を開く時間の楽しさ」を知る最初のきっかけを、すべての赤ちゃんのま
わりに届けるため、パックには、必ず絵本が 1 冊以上入っている。NPO ブックスタートで
は、2 年に一度独立した中立的な「絵本選考会議」を開き、ブックスタートで手渡される絵
本の候補となる 20 冊の“ブックスタート赤ちゃん絵本”を選出している。
イラスト・アドバイス集
「赤ちゃんと絵本を開く時間の楽しさ」を、絵本仕立てで楽しく伝える冊子。絵本にあま
り関心がない保護者に活字の文章で説明をしてもなかなか読んでもらえない。イラストを
まじえて楽しく伝えることで手に取りやすく、冊子を家に持ち帰ることで、他の家族にも
「赤ちゃんと絵本を開く時間の楽しさ」を伝えることができる。
                       ※外国語版もあり。 ヶ国語)
                               (7
コットン・バッグ
図書館バッグとしても活用されているコットン・バッグ。バッグを持って図書館に来た親
子と、図書館員のコミュニケーションのきっかけにもなる。カラーと単色の 2 種類がある。
地域の資料
各自治体で作成される。絵本リストやおはなし会の案内のほか、子育て支援機関の一覧な
ど、子育てに役立つ資料も入っている。
よだれかけ
ラッコがデザインされたよだれかけ。日常生活の中で使われることで、ブックスタートを
思い出す機会が増える。
第六章 これからの図書館のあり方
<地域に図書館が意識されるための図書館員のあり方>
 多くの図書館では、資料を提供するところで仕事が終わっている。大図書館や、大学図
書館、専門図書館であろうと、仕事のやり方は同じである。地域を基盤とした図書館であ
れば、当然地域を意識した取り組みも必要である。自分の分担だけ仕事をすれば、それで
終わりというのではなく、周辺の動きにも敏感に対応する姿勢も必要である。
 地域を知り、地域の人を知ることも必要になる。というよりは、地域との関わりが深ま
れば自然に人も地域を知ることになる。大きな図書館や専門図書館のように細分化された
一部分を補う仕事とは大きく違うのである。地域で何が起きているのか、地域がどのよう
な方向に進もうとしているのかは、当然図書館としても認識する必要がある。図書館職員
としては、常に地域の課題の克服のために意識を持つことが求められている。図書館員の
資質として、「本」が好きで「人」が好きということが前提であり、そして、図書館の仕事
が好きであるということは言うまでもないが、地域の図書館員に望まれることとしては、
「本」が好きであり、「人」が好きであり、「図書館」が好きであり、とりわけ付け加える
とすれば、
    「地域」にどれだけ愛情を持てるかである。はっきり言えば、図書館が存在する
地域に愛情が注げない人は、「地域志向型の図書館」には向いていない。図書館が好きで、
地域の図書館に職を求めながらも地域の図書館から去っていく人の多くが、地域との関係
に失望して去っていくようである。図書館と地域は、密接に繋がっていることを忘れてい
るのである。どのような環境であれ、地域に適合した図書館サービスがあるはずである。
そうした環境の中で、図書館の地域でのあり方を追求するのが専門職の仕事である。
 当然に地域を深く知ることがあって、初めて地域の図書館の仕事が具体的に見える。産
業基盤、教育環境、自然環境、文化環境、交通環境等々の、地域を構成する要素の一つ一
つを掘り下げて知ることが、地域の図書館で働く職員の第一歩なのである。
 図書館以外にどれだけの地域の人脈を持っているかが、地域図書館で働く職員の地域で
の働きのバロメーターでもある。地域のことや、地域外のことを知る人材を、地域の人は
見逃さないのである。そうした蓄えがあれば、必然的にこちらから「お声」がかかるのも
当然である。これまで、司書は学芸員よりはるかに数が多いのに、図書館の専門雑誌には
名前が登場しても、一般のメディアには学芸員並みには取り上げられていないのが実情で
ある。職務を通して培った知識の蓄積を、図書館の中に留まらず、各々が持っている力を
地域に還元するべきである。
 地域を愛し、図書館を良くしようとする気持ちは、何よりも利用者に伝わるものである。
<地域志向型図書館になるための十か条>   これは自分で考えましたか?引用なら引用元
を明記して下さい。
1、図書館システムの完成
 日本全体の図書館システムを考えた場合、離島であろうと大都市であろうと、均質のサ
ービスが提供されて初めて図書館システムとして機能する。これは、図書館以外の行政組
織と比較すればわかりやすい。例えば、税務署の税徴収のシステムや、警視庁のシステム、
防衛庁のシステム等は、日本中のどこにいても網の目のようにシステムが構築されている。
図書館の場合は、都道府県格差、自治体格差が大きく、図書館のない地域、発展途上地域、
先進地等、場所によって様相がまったく異なる。
 医療の現場では、無医地区を解消するために多くの努力がされているが、それと同様に、
図書館のない地域を解消する必要がある。そのためには、自然環境的に一番に図書館が利
用されにくい場所での図書館サービスの展開を考える視点を基本にすれば、システムは完
成するのである。
 そのような条件下で探すと、離島を思い浮かべることができる。離島の人の生涯学習環
境を考えると、図書館の設置は欠かせないのである。どんな離島であっても、義務教育と
しての学校は整備されており、その後の生涯のことを考えれば、終生にわたって学ぶこと
を支援する場として、図書館は絶対に必要なのである。
2、中学校の校舎面積に準拠した床面積の確保
  図書館づくりの運動では、ポストの数ほどの図書館を作ることや、すべての町や村へ
の図書館づくり即ち未設置自治体の解消が目標とされていた。これらの目標は心情的な希
望を良く表している。しかし、どのような図書館かは具体的には見えてこない。一坪図書
館などの取り組みもあり、無人の図書館や図書室の規模の図書館をそれぞれがイメージし
ていたかもしれない。やはり、一定規模以上の床面積があって、図書館のサービスは初め
て機能するものと思われる。居住地域の中学校の校舎面積に比例して、図書館の規模を考
えると適正な規模となるのである。
3、職員の確保
 図書館の現状の姿を見てみると、重要とは言われながらも、地域での地位は必ずしも高
くなはない。多くの図書館職員の与える印象は、図書館と本の管理人のイメージである。
図書館の働きは認知されておらず、正社員が一生働く仕事よりは、パートの職員の職場の
イメージである。これは、そうした仕事しかできなかった環境の結果が招いたのであるが、
こんな状態にしているのは、国民の問題でもある。しかし、図書館のレベルアップをしな
い限り、こうした社会の図書館への認知は改善されないのである。
 現実の中学の制度と図書館の現時点の姿を比較してみると、全国中学校教員は 20 万人以
上いるのに対し、公立図書館の専任職員は 2 万人にもならない。ほとんどの教員は大学で
各教員の免許を持つが、図書館職員の実態は、大半が司書講習を短期間で終えた人々が中
心である。このように、養成問題にもかかわる問題ではあるが、そうした人材の確保を考
えた構造的な課題に着手しない限り、水準向上は解決しない。
4、義務教育を終えた人々の生涯にわたる学習の拠点となりうる質の維持
 これには職員の質・量ともに同水準に近づける必要がある。中学校の修業年数が 3 年し
かないのに比べて、生涯学習が日本人の平均寿命からも 80 年近くに及ぶことからすれば、
たとえ学校教育予算と同列に生涯学習に関する予算を投入したところで、決して法外な金
額になるわけではないのである。
5、蔵書規模が最低 6 万冊以上確保されている
                    6
 日本の総出版数の実態や各分野をみると、 万冊という数字は図書館が図書館としての役
割を担うために最低限度の蔵書規模である。また、中学校の最低限の必要校舎面積が 600
平米であることからも、1 平米あたり 100 冊以上は目安の数値である。
6、図書館を支えるサポート図書館の確立
 地域の図書館が機能していくには、それを支える保存機能を持った図書館の存在が欠か
せない。いわば図書館の図書館である。このシステムは現在の日本では一部の都道府県立
図書館には尐しイメージができるが、完全ではない。保存機能図書館で貸し出ししたりす
る場合があり、やや利用者の図書館観に混乱を与えている。県立図書館の数が尐ない中で、
眼前の要求には対応するが、実情は一部の都道府県レベルの図書館が市立図書館の肩代わ
りをしている状態なのである。大きな県立図書館と県庁所在地にある市立図書館のすみわ
けが不完全で、市立図書館の発展を阻害している側面もある。現在市町村が主に地域に近
い図書館を運営しているが、これらの図書館が地域ごとに保存型の地域図書館サポート図
書館として配置されればいいのである。以前イギリスの図書館でも問題となったが、現在
では支援のための図書館は完全に役割に徹して、直接の貸し出し業務をしていない。
 まだ日本ではそうした考えにはいたっておらず、都道府県立図書館の存在が曖昧である。
また都道府県の取り組みの格差は著しい。自分の県と他県の図書館の 4,5 館を比較すると、
より客観的な姿が把握できるのであるが、県立図書館の支援に向けたあり方を抜本的に改
革することが求められる。
7、地域コーナーの充実
 地域志向型の図書館では、当然のごとく地域関連資料の充実は欠かせない。地域を知る
ツールとして地域コーナーの確保は必要である。例えば、地域掲載記事の切り抜き新聞フ
ァイル、近隣自治体まで視野に入れた市町村氏の配置、自治体が発行した報告書等の刊行
物、古地図、自治体統計など。
8、地域の誰もが利用できる場と設備備品
 地域の人々が誰でも利用できて、初めて公共図書館といえるのである。例えば、赤ちゃ
ん連れのお母さんが気兼ねなく、身体障害者でもハンディを感じることなく、老人でも障
害なく利用できなければ、利用は広がらない。そのためには、トイレ、いす、机、通路、
証明、段差、車椅子、手押し車、標識、空調等々への細かい配慮が欠かせない。
9、展示機能と集会機能
 展示機能と集会機能は、人々が集い交流を深める機能ばかりか、本との繋がりを深める
ことができる。展示会ができるギャラリーとして利用できる空間やイーゼル等の備品の配
置も必要である。特に展示会の開催は、多くの人々に鑑賞の機会を提供でき、図書館の展
示会という気安さから気軽に楽しめる。図書館での定期的な開催は、図書館の魅力の一つ
として市民権を獲得できる。
10、地域関連出版物の発刊と支援
 図書館で地域関連出版物を発刊することは、時間と空間を越えて地域の人々の信頼を勝
ち取るのには有効である。図書館で集めた写真を編集しての写真集、郷土にゆかりの人物
を特集した冊子、方言集、文献目録集等々の発刊は図書館の活動として容易に取り組める。
テーマは地域の中にほぼ無尽蔵に存在する。これらの活動は単に成果物としての本の活用
も意義深いのであるが、資料の記録行為という観点からも意義が見出せる。


<これからの図書館に望まれるもの>
 日本の図書館は現在に至るまで、質・量と飛躍的に前進してきた。しかしながら今なお、
図書館のない地域が存在する。町や村の小さな自治体や、コミュニティの大半には図書館
が設置されていない。日本に図書館のない地域が存在するということは、図書館システム
が日本では未完成であるということでもある。図書館が設置されていても、図書館として
の機能を充分に果たしていない図書館も、残念ながら存在している。
 図書館における課題は、まだ多くある。日本中にいきわたる図書館網を完成させること
や、図書館としての最低基準を確保した図書館を整備することは、最も重要な課題である。
そのほかには、これまでのサービスに加えて、これからは、地域のさまざまな情報の収集
と提供、地域の人々にとっての広場の役割、自治体のさまざまな機関と結びついた活動、
出版活動などの、図書館からの情報発信するサービスが大切になってくる。
 また、図書館の研修制度が不十分な中で、地域に信頼される図書館になるためには、地
域住民の大多数に目に見える職員の専門的な力量を示すことである。どのような学習歴・
研修歴を持った職員集団かは、どのような図書館かということでもある。そのような外部
からの厳しい評価の現実を図書館界は直視し、よりよい図書館作りを目指していかなけれ
ばならない。
参考文献


長澤雅男/小田光宏 共著        1991 『講座 図書館の理論と実際 7
                         利用者サービスと利用者教育』 雄山閣出版株式会社
彌吉光長 1992 『北欧の公共図書館と生涯教育』             日本図書館協会
山本宣親ほか 2005 『図書館森時代!』 株式会社日本地域社会研究所
吉田右子 2010 『デンマークのにぎやかな公共図書館
              ―平等・共有・セルフヘルプを実現する場所―』 株式会社 新評論
渡部幹雄 2006 『地域と図書館 ―図書館の未来のために―』 慧文社
S.R.ランガナータン(著)、渡辺信一(訳)      1981   『図書館学の五法則』   日本図書館協会


『ブックスタート』 http://www.bookstart.net/

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水沼卒業論文

  • 1. 北欧と日本の図書館の比較 2011 年度 卒業論文 指導教員 川崎一彦 国際文化学部 国際コミュニケーション学科 8AWK1128 水沼あやか
  • 2. 要旨を入れて下さい。 目次 はじめに 第一章 図書館のはじまり 第二章 図書館五法則 第三章 デンマークの公共図書館 第四章 北欧のその他の公共図書館 第五章 日本での図書館の取り組み 第六章 これからの図書館のあり方 おわりに 参考文献
  • 3. 第一章 図書館のはじまり <図書の起源> 図書は記録された知識であるということができる。人間は大昔から思想や意志や感情、 あるいは知識や情報を伝達し、継承するために、それこそいろんな手段を用いて絵や文字 による記録を作成してきた。 しかし、単に知識や情報が記録されているだけでは図書とはいえない。図書とは、意思 や感情、知識や情報を伝える意図をもって、一定の材料、つまり粘土板、パピルス、羊皮 紙、紙といった材料に文字や絵で書き記され、著作物としての形態を保っていて、その著 作物が、人間相互のコミュニケーションの手段や方法として機能しているもののことを言 う。 このように、内容と形態の画面を備えてはじめて図書といえるのである。 <図書館の起源> 人類最古の図書館といわれているのが、19 世紀末にペンシルバニア大学調査隊によって 発見された、メソポタミア(現在のイラク、シリア、トルコ)のニップール(現在のヌファー ル)の神殿内に設けられていた図書館である。この図書館がいつごろ、誰によってつくら れたものかは明らかにはされていないが、たくさんの粘土板図書の中には、神々に捧げた 讃美歌、祈禱文、公文書などにまじって、バイブルにある大洪水の物語によく似たシュメ ールの伝説を伝える図書があったという。このことからシュメール人によってつくられた のではないかといわれている。 建造者がわかっている図書館で最古のものは、アッシリアの都ニネヴェに紀元前7世紀 にアッシュルバニパル王によって建設された図書館である。このニネヴェの図書館には、 粘土板の古文献を解読するための辞書が備えられ、公文書、証書類、医学書、薬学書、宗 教書、神話書、教科書、歴史的記録を伝える本、書簡集など 2 万を超す図書が書庫内に整 然と並べられていた。そして、それらの図書の中に、聖書の中にあるノアの洪水によく似 た物語があったという。 この図書館は、宮廷の役人や神官をはじめ、広くの知識人たちに公開されていたとされ るが、当時この図書館で図書を読み、何かを調べるために利用しえた人たちとは。どんな 階級の人だったのであろうか。おそらく、神殿に付設されていた学校で教育を受けたエリ ートか、あるいは書写を業としていた人に弟子入りをして、字を習い、書写技術を習得し た人たちぐらいであったろうと思われる。 当時学校で学びえた人たちについては、ドイツ人シュナイダーの粘土板図書の解読によ って明らかにされている。それによると、知事、市長、祭司、将軍、主税官、会計官、書 記、学者、法律家などの官僚や専門職といった特権階級の人たちの子弟であった。
  • 4. このニネヴェの図書館の粘土板図書は、破損していたものは修復再生をし、全蔵書はその ままイギリスの大英博物館に運ばれて、大切に保存されている。 日本の最初の図書館は、8世紀も後半のころに芸亭(うんてい)と称する書斎を設けて、所 蔵の書物をこれに収め、学問を志す人々に公開したとされる石上宅嗣(いそのかみのやかつ ぐ)の文庫であろうといわれている。 その後、いくつもの朝廷の文庫、公卿の文庫、武家の文庫がつくられた。江戸時代も中 期以降になると諸大名たちは競って藩校をおこし、子弟の教育に力を入れるとともに、藩 校付設文庫の設置が進められた。また、幕府の文庫である紅葉山文庫や、幕臣の教育機関 として重要な役割を果した昌平坂学問所の文庫なども、幕末のころには充実がはかられた。 これらの文庫はいずれも公卿や武士階級を対象としたもので、一般庶民にとっては縁もゆ かりもない存在であった。しかし、江戸時代の末期になると、庶民の教育の場として寺子 屋が栄え、これによって庶民の読書熱が高まっていった。こうして貸し本屋という庶民の 読書の場が誕生することになった。 明治の初期となると政府は、しばしば政府の高官を欧米諸国に派遣して、西欧の文物の 調査にあたらせた。これら政府用人たちの多くが欧米の国々の図書館の見聞をもとに、そ の必要性について建言していた。また、当時の政府がわが国の近代化のための水先案内人 として招いた、いわゆる御雇外国人は明治 5 年には 214 人を数えており、これら御雇外国 人の多くが、日本の近代化にとって図書館が欠かすことのできない重要な機関であること を説き、速やかに建設すべきだと建言していた。
  • 5. 第二章 図書館学五法則 1、ランガナータン ShiyaliRamamritaRanganathan, (1892~1972)の略歴 インドのマドラス出身の数学者、図書館学者である。ロンドン大学の図書館学部に留学 し、帰国後 1944 年までの 23 年間マドラス大学図書館長を務めた。その後、ベナレス・ヒ ンドゥ大学で図書館学を講じ、理論、管理、図書分類法などについて多くの著作を出版し た。インド図書館協会会長、マドラス図書館協会会長を務め、国際ドクメンテーション連 盟(FID)の中に分類研究委員会を設置するなど、図書館界に大きな足跡を残した。 <図書館学の五法則> 第一法則:図書は利用するためのものである。Books are for use. 第二法則:いずれの読者にもすべて、その人の図書を。Books are for all. 第三法則:いずれの図書にもすべて、その読者を。Every book its reader. 第四法則:図書館利用者の時間を節約せよ。Save the time of the reader. 第五法則:図書館は成長する有機体である。A library is growing organism. 1-1、第一法則の内容とその意義 <開館時間> 「図書は利用するためのものである」という法則は図書館の開館時間に大きな影響をあ たえた。この法則が十分に自己主張しなかった段階では、図書館は開館するよりも、しば しば閉館している方が多かった。この法則が公共心に根ざしている国では、大多数の人が 就寝して図書館を利用しなくなる、その前に図書館が閉館することは許されない。 図書館側の管理上の制約を優先して考えるのではなく、あくまでも、利用者の利便性を 最優先に、開館時間、開館日を設定することが重要である。 <図書館家具> 児童資料については、子どもの身長を配慮して、低書架の導入が不可欠である。また、 資料を書架に排架するばかりではなく、資料の表紙が見えるように平置きする方式も必要 である。 レファレンス資料のコーナーについては、資料の形態が一般資料に比べて大型のものが 多いことを考慮し、書架の高さは、一般書架より、低いものを使用すべきである。また、 参照利用の便宜を図るために、書架に隣接して書見台を配置することも必要である。 図書館には、書架、閲覧席など、様々な備品類が必要であるが、その選択にあたっては、 利用者の資料利用行動、資料の利用しやすさを十分に配慮することが重要である。書架に ついていえば、利用者が手を伸ばして届く範囲の高さに設定する必要がある。 <図書館職員と学識> 第一法則によって、図書館には専任で特別の職員が必要であるということを人びとが納 得するようになってからでも、第一法則の要求のすべてを実行するために図書館職員に不 可欠の資質と資格を図書館主管当局に理解させるのには長い時間がかかった。教師は、自
  • 6. 分の教える学科について知らない限り、教師としては認められないであろう。学術研究に 関係し、各人にその人に適した本を見出し、本のなかに隠れている知識から益を得ること を人びとに説き、単にいたずらっ子たちの教育だけではなく、万人の生涯教育を助けなけ ればならないような図書館員は、幅広い学識を身につけていなければならない <図書館職員と利用者> 図書館では図書は利用のために収集され、利用のために整理され、利用のために保存さ れ、利用のために役立てられるということを決して忘れてはならない。整理作業や日常業 務のすべては、利用のためだけに行われるのである。 第一法則のこの崇高な使命を十分満足いくように果たしていくためには、図書館職員は、 この使命を絶えず想起し、学識や必要な専門教育を獲得するばかりでなく、同様に絶対必 要な確かな姿勢と関心をも育てあげなければならない。 <図書館員と個人的サービス> 図書館とは何か。図書館とは利用のために保管された本の集積である。そして、図書館 員は、利用者と本を結びつける。従って、人びとに与えられる個人的サービス、[利用者ひ とりひとりの要求に合わせたサービス]の中にこそ、まさに図書館の生命が存在するのであ る。 図書館員の仕事は利用者を援助することであり、援助するということは、利用者自身の 計画と希望を実行するために利用者に協力することであり、利用者が自分でできるように 彼を助けることである。第一法則が図書館職員に期待するものは、その種の個人的サービ スである。 <第一法則における「図書館職員」の位置づけ> 図書館職員は、利用者の幅広い要求に対応できるような学識と専門知識が必要である。 図書館職員は、個々の利用者の要求に違いに応じたサービスを提供していく必要がある。 図書館職員の重要な役割は、資料と利用者を支援することであり、利用者を支援するこ とが主たる役割である。 図書館職員による個人的サービスの提供が最も重要である。このことは、人的支援とし てのレファレンスサービスの重要性を示唆するものである。 1-2、第二法則の内容とその意義 第二法則は、本に接する機会、学習する機会、そして楽しむ機会について周到に均等の 原則を守っている地球のあらゆる所から、ことごとくの人-富者と貧者、男性と女性、若 者と老人、健常者と障害者、読み書きのできる人とできない人-これらすべての人を集め て学問の殿堂へ導きいれるまで、第二法則は休むことはない。 <図書館サービスの無限定性> 利用者を、年齢、経済力、思想・信条、障害の有無等によって、差別、限定してはいけ ない。乳幼児サービスや高齢者サービス、障害者サービス、アウトリーチサービス、施設
  • 7. 入所者、低所得者、非識字者、民族的尐数者など、これまでの図書館サービスが及ばなか った人々に対して、サービスを広げていく活動が必要である。 <図書館職員の責務> 図書館職員の仕事が、単に求められた本をカウンターごしから不承不承与えることでは ない。逆に、職員の仕事は利用者を知り、「本を知り、いずれの人びとにもすべて、その人 の図書」を見つけるのを積極的に援助することなのである。この種の活動はレファレンス サービスとして知られている。 1-3、第三法則の内容とその意義 第二法則は、それぞれの利用者にふさわしい図書を見つけるということにかかわって いたが、第三法則は、いずれの図書にもその図書にふさわしい利用者をさがさなければな らない。第三法則を満足させるために図書館が採用した最もすぐれた方法とは、開架制で ある。開架ということは、自由に蔵書を見たり調べたりする機会を与えることを意味して おり、利用者が「図書を発見する」頻度が高くなることが最も重要である。 開架制は、利用者自身による資料への自由なアクセスが可能であるが、図書館員の必要 性を否定するものではない。しかし、開架制は資料発見の機会を増大させるが、それだけ で、資料と利用者を結びつける機会をすべて保障するものではないのである。 レファレンス業務に携わる職員には館内の利用者たちと交わる特別の機会がある。人び ととの直接のふれあいは、利用者の趣味や要求、言動と反応、及び好き嫌いを観察する機 会をもたらしてくれる。この直接のふれあいの結果として、経験を積んだ司書は、本能的 に利用者を図書に結びつけ、また逆に、図書が、しばしばその図書に魅せられる利用者を 教えてくれる。 1-4、第四法則の内容とその意義 最初の三つの法則に対する要求が次第に満たされるにつれて生じてくる状況を扱う際に、 時間の要因が加わってくる。この法則は図書館管理の多くの改善に責任を負ってきたし、 将来も、更に多くの改善に影響を与える大きな可能性を持っている。利用者が正しい書誌 ツールの利用法に通じ、 「利用者の時間を節約する」ためには、初めに幾らかの個人的な手 ほどきが絶対に必要となる。利用者は、本が排列されている順序に職員と同じ位に精通す ることはできないので、分類や目録に関する図書館員の詳しい知識は、求めている図書又 は情報に利用者が速やかに到達するのにはかり知れない便宜を与える。 第四法則は、すべての図書館に適切な参考係職員の必要性を主張する。職員に費やされ るこのような費用は、最優秀な頭脳の貴重な時間を節約することによって、絶えず増加し ながら国家に還元されるのである。
  • 8. 1-5、第五法則の内容とその意義 第一法則から第四法則までは、図書館の機能を取扱うのに対して、第五法則は、施設と しての図書館の、重要で持続的な特性に関するものであり、図書館の計画と組織化にかか わる基本的な原理を表明する。 第五法則は、施設としての図書館が成長する有機体の属性をすべて有しているという事 実にわれわれの注意を喚起する。成長する有機体は、新しい物質を取り入れ、古い物質を 捨て去り、大きさを変え、新しい形を整えていく。有機体の成長する主要な部分は、図書、 利用者及び職員である。近代の図書館はこれらの三位一体からなる。図書も、利用者も、 職員も、その数が増えないものとして図書館を組織しようとすることは、許しがたいこと である。 安全対策を講じた開架制と近代的な貸出方法は、カウンター係の増員の必要性を取り除 くし、従業員の数を増やす必要性をごく最小限におさえる。しかし、図書館が成長するに つれて、図書館職員の必要な増員が保障されない限り、図書館の能率を適切な水準に維持 することはできない。 <ミツバチの精神> 職員は、互いに極めて温かい関係になければならない。職員は互いにあらゆる可能な方 法で進んで協力しあうべきであり、排他的に自分の功績であると主張するような性格は完 全に克服されなければならない。
  • 9. 第三章 デンマークの公共図書館 <デンマークの公共図書館の歴史> デンマークでは、ヨーロッパの多くの国々と同様、近代的な図書館が設立されるまでは 教会に付設された図書室がコミュニティにある唯一の図書館だったが、そこを利用できる のは、ごく限られた人々であった。すべての住民に開かれた近代的な公共図書館制度が完 成したのは、19 世紀後半から 20 世紀初期にかけてであった。 デンマークの公共図書館の歴史を語る上で、最も重要な人物はスティーンベア(Andreas SchackSteenberg 1854~1929)とランゲ(Hans Ostenfeld Lange 1863~1943)である。 スティーンベアは、コペンハーゲン大学を卒業後、教員生活を送っていた 30 代に、生徒に 読書を薦めるなかで、図書館運動にかかわったことがきっかけで、図書館の世界に入った。 40 代のときにイギリスとアメリカの図書館を視察したことが、スティーンベアの図書館へ の情熱にさらに火をつけることになった。アメリカの先進的な公共図書館システムをデン マークに導入したいという決意をもって帰国したスティーンベアは、教員を続けながらも 引き続き図書館運動に没頭し、1905 年「デンマーク民衆図書館連盟 (ForeningenDanmarksFolkebogsamlinger)」(現在のデンマーク図書館協会 (DanmarksBiblioteksforening))を設立した。 スティーブンベアが政府の公共図書館助成金委員会のメンバーを務めていたときに知り 合ったのが、図書館運動の協力者となったデッスィン(Thomas Dæssing 1882~1947)であ る。二人は協力して、当時アメリカで使われていた図書館資料の分類法と目録カードの作 成方法をデンマークの図書館に導入し、これがきっかけとなって図書館業務に大きな進歩 がもたらされた。 一方のランゲは、デンマーク王立図書館の司書として働いたのちに、王立図書館長を勤 めた人物である。現在のデンマークの図書館における成功は、全国に張りめぐらされた図 書館ネットワークをベースと曽田資料の相互貸借によるものであるが、この仕組みを最初 に提唱したのがランゲである。住民の資料要求にこたえるために、「中央館と分館の相互貸 借を基本としたネットワーク」と「中央図書館によるコムーネ(Kommune 日本の市町村レ ベルに該当する行政地区)図書館のサポート」 、さらに、「王立図書館による支援体制」をラ ンゲが構想したのは 20 世紀初頭のことだった。その後、現在に至るまで、ランゲのアイデ ィアは一貫してデンマークの図書館システムの基本理念であり続けている。 今日、デンマークのすべての住民が居住区にかかわらず、図書館の資料にアクセスでき るのは、20 世紀初頭に繰り広げられたスティーンベアとランゲによる近代図書館運動の賜 物なのである。 <デンマークの公共図書館の数と所蔵資料の内訳> 2008 年現在、デンマークには 510 ヶ所の公共図書館(王立図書館を除く)のサービスポイ ントがあり、その内訳は中央館が 97 館、分館や配本所が 380 館,移動図書館が 33 ヶ所と
  • 10. なっている。2008 年に図書館を訪れた人の数は約 3400 万人、図書館が開設しているウェ ブサイトへの訪問者は 2400 万人であった。 図書館の来館者数とウェブサイトへの訪問者数が、ここ 10 年間で徐々に近づきつつある。 これは、ネットワークを介した図書館サービスが徐々に増えてきていることを示している。 特に、音楽のダウンロードサービスの開始によってウェブサイトへのアクセスが一段と増 加した。このような傾向は、今後、電子書籍や映画の配信サービスが本格的になるにつれ ていっそう強まると予想される。 とはいえ、公共図書館が保有している資料のうち、図書が占めている割合は約 83 パーセ ントと群を抜いている。次に、音楽資料 11 パーセント、録音図書 2 パーセント、映像資料 1.8 パーセント、マルチメディア 0.8 パーセント、その他、というシェアになっている。2007 年との比較で見ると、データベース、電子ジャーナルなどのデジタル資料の占める割合が 増加したし、電子書籍、電子ジャーナルのダウンロード貸し出しも 2007 年に比べて著しい 増加となっているが、現在のところ、図書館の主要なメディアはやはり図書である。しか し、視聴覚資料やデジタル資料の利用が急激に増えつつある状況をふまえると、公共図書 館が扱うメディアは現在大きな変化期にあるといえる。 <開館時間と貸し出し数> デンマークの公共図書館は、中央館、分館、そして配本所の数は、この 10 年間一貫して 減り続けている。とりわけ、行政改革によるコムーネ合併の影響を受けた 2007 年に、公共 図書館は 681 館から 550 館に減尐した。2010 年には、全国で 482 カ所だけとなった。 図書館の数ばかりか、図書館の開館時間も短くなっている。2006 年から 2007 年にかけ て開館時間は大幅に減尐し、一週間の総開館時間がとうとう 14 時間を割り込んでしまった。 といっても、デジタルサービスの拡大によって、非来館型サービスが増えていることもあ り、開館時間が短くなったからといって、そのまま図書館サービスが低下したとはいえな い。 一方、図書館全体の貸し出し数は、デジタルサービスの増加によって確実に増えている。 2008 年の貸し出し数と更新回数の総数は 7400 万件を数え、前年度より約 280 万件増加し た。 音楽資料については、数年前から始まったネットワークを経由した音楽配信サービス 「Netmusik」による貸し出しが急激に伸びている。利用者は、サイトにアクセスして図書 館のユーザーID とパスワードを入れ、このシステムを使って好きな楽曲を選んで簡単にダ ウンロードすることができる。24 時間いつでも自宅から利用できるということが、このサ ービスの最大の売りである。 デンマークの公共図書館の年間貸し出し冊数は、住民一人当たりに換算すると 13.5 にな る。年間貸し出し冊数が 20 冊に達するフィンランドまでは及ばないまでも、世界的に見る とかなり高い数値といえる。
  • 11. <2007 年の行政改革と相次ぐ公共図書館の閉鎖> デンマークでは、2007 年 7 月 1 日の地方自治体改革によって、日本の件に相当する 14 の行政地区(Amt)が 5 つのレギオーン(Region 改革後の新しい行政地区)になり、市長村に 相当する行政区であるコムーネが 271 から 98 に減尐した。この大規模名行政区の改革は、 県の業務(権限)を部分的にコムーネに移すことによってコムーネの住民サービスの範囲を 拡大しようとするものであった。 この自治体統合によって図書館界は、多くの分館が閉鎖に追い込まれているという深刻 な事態にみまわれた。居住区に均等に配置された分館は、利用者にとってはもっとも身近 な図書館であり、情報へのアクセスのために基盤となる場である。だから、分館の閉鎖は 何よりも利用者にとっての打撃となった。 各図書館では、バスによる移動図書館を利用したり、学校や公共施設を利用した配本所 を設置するなど、分館の閉鎖によって図書館の利用が困難になった利用者へのサービスを 何とか維持しようとした。しかし、それでも今まで受けてきた図書館サービスの質量が低 下することは否めず、図書館としては、その対応に頭を悩ませている。 <デンマークの図書館サービスを支える司書> 図書館サービスを支える最も重要な要素、それは図書館コレクションでも図書館の建物 でもない。図書館と資料の専門家である司書こそが、図書館サービスの要である。 2008 年現在、デンマークの公共図書館で働く職員の総数は 4628 人である。その内訳は、 司書が 2229 人、アシスタントが 1906 人、そのほかの職が 493 人となっている。10 年前に 比べると、図書館アシスタントの数は減っている。一方、図書館情報学を選考し、図書館 サービスの専門職としての資格を持つ司書の数は増減はあまりなく、ここ数年、安定した 人数を保っている。 最近では、図書館が開設しているウェブサイトの管理を行うスタッフや、図書館の企画・ 経営に携わる専門家を雇用する図書館も見られるようになった。デジタル化に伴う図書館 サービスの高度化に伴い、資料の専門家である司書と、コンピュータやネットワークの知 識を持つ IT 専門化が連携して図書館サービスを行うようになってきたのである。 実際、デンマークの公共図書館に行ってみると司書の存在の大きさがよくわかる。どん な小規模な図書館でも、司書は直接利用者とコミュニケーションをとりながら、要求され る情報に的確に答えているし、その数の多さには目を見はるものがある。 司書は利用者への情報サービスを専門に担当するスタッフであり、それ以外の職員が司 書の職務にタッチすることは一切ない。図書館職員のうち、誰が司書であるのかは名札か らはっきりとわかるので、図書館の利用者に関して困ったことがあれば、利用者は迷うこ となく司書のもとに直行できる。司書は、情報サービスのプロフェッショナルとして利用 者からとても信頼されているのである。 <「司書を予約しよう(Book en bibliotekar!)」>
  • 12. 2008 年にはじまった「司書を予約しよう(Book en bibliotekar!)」というサービスは、ま さにデンマークにおける司書の重要性を示しているといえるだろう。これまでの図書館で は、集会室や学習室、図書館内にあるコンピュータなど、図書館が提供するスペースの機 器の「予約」を受け付けてきた。このような予約サービスをさらに発展させて、 「司書を予 約しよう」というのがこのサービスの趣旨である。 司書がいるカウンターに次から次へと利用者が訪れ、さまざまな質問をしていく光景を デンマークの図書館ではとてもよく見かける。どれぐらい混んでいるかというと、司書が 質問を受け付ける机の脇には、銀行にあるような順番待ちの機会が置いてあるくらいだ。 利用者は番号札を引いて、自分の番号が壁にかかっている電光掲示板に示されるまで順番 を待つという仕組みである。 司書のカウンターが繁盛しているのは大いに結構なことだが、利用者の中には、後ろに 並んでいる人が気になってゆっくりと話ができないと感じる人もいる。司書を予約するこ とができれば、ほかの利用者のことを気にせず、心ゆくまで質問ができるのではないかと 考えた末に「司書を予約しよう」という新しいサービスがはじまった。図書館側では、こ のサービスの範囲として、図書館の利用法、インターネットの使い方、読書アドバイスな どを想定しているようである。 サービスの対象となるのは、図書館の利用の仕方に不慣れな移民や、図書館離れが目立 つティーンエイジャーといったところである。30 分から 1 時間かけて、司書はじっくりと 利用者からの個別相談に応じる。中には、役所に提出する書類作成を手伝ってもらうため にこのサービスを利用する移民もいるという。これから、徐々に利用が伸びていくサービ スといえるだろう。 <専門職としての司書> デンマークの図書館で専門職として働くためには、デンマーク唯一の司書養成機関であ る、デンマーク王率情報アカデミーで所定の図書館情報学の単位を修め学士号を取得し、 その後半年間の実習期間を経験するか、あるいは、図書館情報学の修士号を取得する必要 がある。つまり、デンマークの有資格の司書は、全員が情報学アカデミーの卒業生である ということである。 現役の学生だけではなく、すでに司書として働いている人々への再教育を担う継続教育 部門も情報学アカデミーにはあり、リカレント教育のための研修プログラムを企画・実施 している。デンマークの司書にとって、この研修プログラムはとても重要な役割を果たし ている。なぜなら、図書館サービスの技術的進歩は著しく、司書として現場の最前線で働 いていくためには、時代のニーズにあった新しい知識を継続的に学習していかなければな らないからである。 図書館の社会的役割を学ぶ基礎的な講座から、デジタル情報サービスに関する技術的な スキルを扱う講座や図書館経営の方法論を学ぶプログラムまで、研修内容は図書館の実務 全般を網羅している。ちなみに受講料は、一回の講座で 2000 クローナ(約 3 万円)程度であ
  • 13. る。講師は基本的には情報学アカデミーの教員が務め、いくつかの講座は外部講師が担当 している。デンマークの司書は、定期的にこうした研修に通って、自分の専門知識をブラ ッシュアップして図書館サービスに活かすことを心がけている。 情報学アカデミーが長期にわたって司書を継続的に養成してきたことが、今日のデンマ ークの高度な公共図書館サービスを支えているということは間違いない。 <ボランティアがいないデンマークの公共図書館> デンマークの公共図書館運営の自律性の高さは、図書館におけるボランティア活動に焦 点を当ててみると一段とはっきりする。 図書館サービスの先進国アメリカでは、住民は利用者として図書館を利用するだけではな く、図書館にかかわるさまざまな活動に参加することで図書館を支援してきた。たとえば、 民間の草の根組織である「図書館の友」がブックセール、バザーなどを通じて図書館へ寄 付金集めをして図書館を支援するほか、ボランティアは図書館内で図書館ガイドツアー、 初夏整理、資料整理などの補助的な業務を担当してきた。「いまや、ボランティアなしの図 書館運営は考えられない」というのが、アメリカにおける一般的な図書館界の状況である。 一方デンマークでは、住民による業務支援は「存在しない」 。図書館業務は専門職務とし て位置づけられており、図書館ボランティアという概念そのものが存在しないのだ。実際、 図書館業務に携わるのは専門職である司書と、それ以外の特定業務を担当する職員に限ら れている。もちろんデンマーク図書館職員組合もボランティアの導入に対しては強く反対 している。 北欧においては専門職とボランティアの業務は完全に分離されている。公的サービスに おける専門職の役割が確立していて、専門知識を持たないものが業務に携わることはでき ないことになっている。このことから、図書館業務もすべて専門領域とみなされ、そこに 非専門職がかかわることはありえないのだ。
  • 14. 第四章 北欧のその他の公共図書館 1、スウェーデンの公共図書館 スウェーデンで図書館法が制定されたのは 1997 年と、ほかの北欧諸国に比べてかなり遅 かった。そして、現在の法律は 2005 年に改正されたものである。スウェーデンの公共図書 館では、居住区、年齢、文化的背景によらず、すべての住民に平等に情報を提供すること がもっとも重要視されているのだが、これまでの国としての図書館政策をもたなかったた めに、自治体によって図書館サービスの格差が生じている。 2013 年の会館を予定している新図書館は、 「第二の居間としての図書館」、そして「24 時 間の図書館サービス」大きな目標として掲げている。 「第二の居間としての図書館」とは、図書館がコミュニティの中で、これまで以上に人々 に親しまれる場所として存在感を高めていくことを表現した目標である。図書館は、家庭 以外のもうひとつの居間となって、利用者が自分自身と向き合う時間と空間を提供するこ とを目指している。 たとえば、 「アラビア語カフェ」の場合は、アラビア語を母語とする人々が集まり、お互 いにおしゃべりを楽しむだけではなく、そこにアラビア語を学習している人が加わって、 自分の勉強の成果を試しながら相互に交流を深めたりしている。 「24 時間の図書館サービス」は、主に有職者を意識したサービスとなっている。利用者 が図書館の開館時間に左右されず、いつでも図書館を利用できるようにしようというのが このサービスの主旨であり、デジタルサービスをより強化して、24 時間アクセス可能な図 書館サービスを目指している。 「第二の居間としての図書館」「24 時間の図書館サービス」は、一見すると方向性が逆 、 のようにも見える。前者は図書館に実際に来てもらうことを重視し、後者は来館せずに済 むサービスを思考している。しかし、両方ともに一人でも多くの人に図書館サービスを提 供するという点は同じである。スウェーデンの図書館は、伝統とテクノロジーをともに手 放すことなく、そのすべてを包み込む公共空間となることを目指している。 2、ノルウェーの公共図書館 フィヨルドに代表される多様な自然環境からなるノルウェーでは、移動図書館のブッ クモービル(バス)やブックボート(船)が図書館サービスの重要な拠点となってきた。しかし ながら、図書館の予算削除に伴って、こうしたサービスの廃止案が出されることもたびた びあり、そのたびに署名活動などが行われ、なんとかもちこたえている。すべての人々に 公平な情報へのアクセスを提供するという図書館の理念から考えてみれば、ブックモービ ル、ブックボートの重要性はいうまでもない。 ノルウェーでは、日本の漫画やコンピュータゲームの人気は驚くほど高く、ほとんどの 図書館が児童サービスの一環としてコンピュータゲームを提供している。ノルウェーの司 書のなかには、ゲームを単に子供の利用者を増やすための道具としてみるのではなく、メ ディアとしての新しい可能性を見出して積極的に活用しようとする若い人たちも現れてい
  • 15. る。コンピュータゲームは単なる娯楽のためのメディアにとどまらず、デジタル情報に対 する子どもたちのスキルを高める可能性があるというのがゲーム擁護の理由である。 3、フィンランドの公共図書館 経済協力開発機構(OECD)の学習到達調査(PISA)で示された子どもたちの高い学力によ って、フィンランドは日本でも脚光を浴びている国である。特に、PISA 調査でフィンラン ドの子どもたちの読解力の高さがクローズアップされたこともあって、図書館に対しても 高い関心が寄せられるようになった。 フィンランドの公共図書館は、読書熱心なフィンランドの人々の旺盛な読書欲を支える ために、また、学校図書館が貧弱な地域では、子どもたちの読書を支援するために重要な 役割を果たしてきた。 フィンランドは国土の割に人口が尐ない国なので、国際競争力をつけるために教育を非 常に重視してきた。しかし、場所によって学校図書館があまり整備されていない所もある ので、公共図書館が学校教育を保管する重要な役割を担い、学校と連携して児童の読書や 学習を支援している。その成果、すべての自治体に公共図書館が設置されており、一部の 図書館は学校図書館の機能をもち、ブックモービルやブックボートによるサービスも提供 されている。 フィンランドは国をあげて情報通信の発展と普及に力を注いできたわけだが、その展開 の過程で、全国の公共図書館が重要な役割を果たしてきたことは有名な話である。人口密 度が低く、居住区が偏在するフィンランドにおいては、情報通信ネットワークは人々が平 等にアクセスを確保するための生命線ともなる。ネットワークを活用して生み出された知 的資源が今日の IT 大国フィンランドの基礎を支えていることを考えると、フィンランド社 会における図書館の重要性がよくわかる。
  • 16. 第五章 日本での図書館の取り組み 対象者別サービス すべての利用者に対して、公平かつ平等にサービスを提供することが、図書館の本来の あり方である。しかし、図書館では、特定の利用者集団に対して、他と異なるサービスを 提供することもある。そうしたサービスは、対象ごとに異なり、また、その対照にのみ有 効であることが多いため、対象者別サービスと呼ばれる。 1、児童サービス 児童サービスは子供にたいして行うサービスであるが、対象となる児童の年齢範囲は必 ずしも確定されていない。一般には、幼児から小学生くらいまでと考えられている。児童 サービスは近年公共図書館の中心的サービスのひとつとして考えられている。これは、子 どもの時の読書経験が、その後の読書週間の形成に大きくかかわると考えられているから である。 2、ヤングアダルト・サービス ヤングアダルトとは、いわゆるティーンエイジャーを指す。この年齢層の読書興味や読 書傾向は、児童や成人とも異なっているという認識から、その層独特の読書要求に基づい たサービスを行うとする活動がヤングアダルト・サービスである。また、従来図書館にお いて、児童と成人に対するサービスはそれぞれ展開されてきているが、この年齢層は両者 のはざまにあって、十分なサービスを受けられずにきているとの反省から必要性が主張さ れている。 3、成人サービス 1、ビジネスマンに対するサービス 経済・産業界のカレントな動向を知るための資料、入門書やハウツーものの収集・提 供に配慮する。いわゆるビジネス・インフォメーションのレファレンスを充実させる。 2、勤労者に対するサービス 勤労者が利用できるように開館時間や開館日に配慮する。また、職場への団体貸し出 しを積極的に展開させる。 3、主婦に対するサービス 家事や育児といった家庭生活に関連した資料の収拾・提供に配慮する。 4、アウトリーチサービス 特定の施設に収容されている人々(病院、障碍者施設、老人ホーム、孤児院、刑務所、尐 年院など)の場合、地域の公共図書館を利用できることはまれである。しかし、一般市民で ある以上、そうした人々も図書館を平等に利用する権利を有している。
  • 17. 5、障害者サービス 障害者サービスは、身体に何らかの障害を持つ利用者を対象にしたサービス活動の総称 である。したがって、具体的なサービス活動を検討し、計画する際には、障害の種類を認 識したうえでなくてはならない。 障害者サービスは、提供する資料、サービスの提供方法、サービスに用いる施設の設備 の 3 点から検討する。 提供資料 録音図書、点字図書、大型活字本、拡大写本、触る絵本 視覚 サービス方法 対面朗読、点字による利用案内・館内表示 障害者 施設・設備・用具 テープレコーダー、拡大図書機、自動朗読機、誘導ブロ ック、誘導チャイム、など 提供資料 字幕入りフィルム・ビデオ 聴覚・言語 サービス方法 手話能力を持つ職員による対応 障害者 施設・設備・用具 提供資料 大型本よりは小型・軽量の資料が望まれる 肢体 サービス方法 郵送貸し出し、自宅配本、配架方法の工夫 不自由者 施設・設備・用具 スロープ、段差のないフロア、自動ドア、エレベーター、 トイレ、書架間隔、閲覧座席等の工夫 提供資料 大型本よりは小型・軽量の資料が望まれる 内部 サービス方法 郵送貸し出し、自宅配本、配架方法の工夫 障害者 施設・設備・用具
  • 18. 6、ブックスタート ブックスタート(Bookstart)とは赤ちゃんとその保護者に絵本や子育てに関する情報な どが入ったブックスタート・パックを手渡し、絵本を介して心ふれあうひとときをもつき っかけをつくる活動である。ブックスタートは、1992 年にイギリスのバーミンガムにおい て取り組みが始まり、日本では 2001 年から市区町村自治体の事業として行われている。 地域に生まれた赤ちゃんが集まる 0 歳児健診を主な会場に図書館員、保健師、行政職員、 住民ボランティアなどが活動に携わりブックスタート・パックを手渡している。 ブックスタートの大切な 5 つのポイント 目的 赤ちゃんと保護者が、絵本を介してゆっくり触れ合うひと時を持つきっかけを作る ※赤ちゃんに負担をかけたり、保護者にプレッシャーを与えるような、早期教育の活動ではない 対象 地域に生まれたすべての赤ちゃんと保護者 機会 地域に生まれたすべての赤ちゃんと出会える保健センターの 0 歳児検診などで行 われる 方法 絵本を開く楽しい体験といっしょにあたたかなメッセージを伝え、絵本を手渡す 体制 市町村単位の活動として、地域で連携して実施されている。 特定の個人や団体の宣伝・営利・政治活動が目的ではない。 2011 年 12 月 31 日現在、ブックスタートの実施自治体は 807 市区町村、全国の市区町村 数は 1742 である。 <実施において> 1 組 1 組の赤ちゃんと保護者に、絵本を開く時間の楽しさを体験してもらいながら、丁寧 にパックを手渡すためには、会場づくりやパックの準備、手渡しに至るまで、多くの人の 協力が必要である。健診未受診者など、ブックスタートの実施機会に参加しなかった対象 者へのアプローチを行う際には、特に母子保健や子育て支援の分野との関わりが重要にな る。 <地域の環境づくりにおいて> ブックスタートの前後に、絵本・赤ちゃん・子育てをテーマにしたフォローアップ事業 を開催したり、まちの施設を赤ちゃん連れでも利用しやすくしていくためには、様々な分 野の関わりが必要である。 <事業の継続において> ブックスタートを継続していくためには、読書、母子保健、子育て支援やまちづくりな ど、様々な分野からブックスタートが評価され、支持されることが重要である。また、地 域住民がボランティアとして実際の取り組みに関わり、活動の意義を感じ、ブックスター トを支持してくれることは、事業継続の大きな力となる。
  • 20. 『ブックスタート』より引用 ※パックの内容は、自治体によって異なる。 絵本 「赤ちゃんと絵本を開く時間の楽しさ」を知る最初のきっかけを、すべての赤ちゃんのま わりに届けるため、パックには、必ず絵本が 1 冊以上入っている。NPO ブックスタートで は、2 年に一度独立した中立的な「絵本選考会議」を開き、ブックスタートで手渡される絵 本の候補となる 20 冊の“ブックスタート赤ちゃん絵本”を選出している。 イラスト・アドバイス集 「赤ちゃんと絵本を開く時間の楽しさ」を、絵本仕立てで楽しく伝える冊子。絵本にあま り関心がない保護者に活字の文章で説明をしてもなかなか読んでもらえない。イラストを まじえて楽しく伝えることで手に取りやすく、冊子を家に持ち帰ることで、他の家族にも 「赤ちゃんと絵本を開く時間の楽しさ」を伝えることができる。 ※外国語版もあり。 ヶ国語) (7 コットン・バッグ 図書館バッグとしても活用されているコットン・バッグ。バッグを持って図書館に来た親 子と、図書館員のコミュニケーションのきっかけにもなる。カラーと単色の 2 種類がある。 地域の資料 各自治体で作成される。絵本リストやおはなし会の案内のほか、子育て支援機関の一覧な ど、子育てに役立つ資料も入っている。 よだれかけ ラッコがデザインされたよだれかけ。日常生活の中で使われることで、ブックスタートを 思い出す機会が増える。
  • 21. 第六章 これからの図書館のあり方 <地域に図書館が意識されるための図書館員のあり方> 多くの図書館では、資料を提供するところで仕事が終わっている。大図書館や、大学図 書館、専門図書館であろうと、仕事のやり方は同じである。地域を基盤とした図書館であ れば、当然地域を意識した取り組みも必要である。自分の分担だけ仕事をすれば、それで 終わりというのではなく、周辺の動きにも敏感に対応する姿勢も必要である。 地域を知り、地域の人を知ることも必要になる。というよりは、地域との関わりが深ま れば自然に人も地域を知ることになる。大きな図書館や専門図書館のように細分化された 一部分を補う仕事とは大きく違うのである。地域で何が起きているのか、地域がどのよう な方向に進もうとしているのかは、当然図書館としても認識する必要がある。図書館職員 としては、常に地域の課題の克服のために意識を持つことが求められている。図書館員の 資質として、「本」が好きで「人」が好きということが前提であり、そして、図書館の仕事 が好きであるということは言うまでもないが、地域の図書館員に望まれることとしては、 「本」が好きであり、「人」が好きであり、「図書館」が好きであり、とりわけ付け加える とすれば、 「地域」にどれだけ愛情を持てるかである。はっきり言えば、図書館が存在する 地域に愛情が注げない人は、「地域志向型の図書館」には向いていない。図書館が好きで、 地域の図書館に職を求めながらも地域の図書館から去っていく人の多くが、地域との関係 に失望して去っていくようである。図書館と地域は、密接に繋がっていることを忘れてい るのである。どのような環境であれ、地域に適合した図書館サービスがあるはずである。 そうした環境の中で、図書館の地域でのあり方を追求するのが専門職の仕事である。 当然に地域を深く知ることがあって、初めて地域の図書館の仕事が具体的に見える。産 業基盤、教育環境、自然環境、文化環境、交通環境等々の、地域を構成する要素の一つ一 つを掘り下げて知ることが、地域の図書館で働く職員の第一歩なのである。 図書館以外にどれだけの地域の人脈を持っているかが、地域図書館で働く職員の地域で の働きのバロメーターでもある。地域のことや、地域外のことを知る人材を、地域の人は 見逃さないのである。そうした蓄えがあれば、必然的にこちらから「お声」がかかるのも 当然である。これまで、司書は学芸員よりはるかに数が多いのに、図書館の専門雑誌には 名前が登場しても、一般のメディアには学芸員並みには取り上げられていないのが実情で ある。職務を通して培った知識の蓄積を、図書館の中に留まらず、各々が持っている力を 地域に還元するべきである。 地域を愛し、図書館を良くしようとする気持ちは、何よりも利用者に伝わるものである。
  • 22. <地域志向型図書館になるための十か条> これは自分で考えましたか?引用なら引用元 を明記して下さい。 1、図書館システムの完成 日本全体の図書館システムを考えた場合、離島であろうと大都市であろうと、均質のサ ービスが提供されて初めて図書館システムとして機能する。これは、図書館以外の行政組 織と比較すればわかりやすい。例えば、税務署の税徴収のシステムや、警視庁のシステム、 防衛庁のシステム等は、日本中のどこにいても網の目のようにシステムが構築されている。 図書館の場合は、都道府県格差、自治体格差が大きく、図書館のない地域、発展途上地域、 先進地等、場所によって様相がまったく異なる。 医療の現場では、無医地区を解消するために多くの努力がされているが、それと同様に、 図書館のない地域を解消する必要がある。そのためには、自然環境的に一番に図書館が利 用されにくい場所での図書館サービスの展開を考える視点を基本にすれば、システムは完 成するのである。 そのような条件下で探すと、離島を思い浮かべることができる。離島の人の生涯学習環 境を考えると、図書館の設置は欠かせないのである。どんな離島であっても、義務教育と しての学校は整備されており、その後の生涯のことを考えれば、終生にわたって学ぶこと を支援する場として、図書館は絶対に必要なのである。 2、中学校の校舎面積に準拠した床面積の確保 図書館づくりの運動では、ポストの数ほどの図書館を作ることや、すべての町や村へ の図書館づくり即ち未設置自治体の解消が目標とされていた。これらの目標は心情的な希 望を良く表している。しかし、どのような図書館かは具体的には見えてこない。一坪図書 館などの取り組みもあり、無人の図書館や図書室の規模の図書館をそれぞれがイメージし ていたかもしれない。やはり、一定規模以上の床面積があって、図書館のサービスは初め て機能するものと思われる。居住地域の中学校の校舎面積に比例して、図書館の規模を考 えると適正な規模となるのである。 3、職員の確保 図書館の現状の姿を見てみると、重要とは言われながらも、地域での地位は必ずしも高 くなはない。多くの図書館職員の与える印象は、図書館と本の管理人のイメージである。 図書館の働きは認知されておらず、正社員が一生働く仕事よりは、パートの職員の職場の イメージである。これは、そうした仕事しかできなかった環境の結果が招いたのであるが、 こんな状態にしているのは、国民の問題でもある。しかし、図書館のレベルアップをしな い限り、こうした社会の図書館への認知は改善されないのである。 現実の中学の制度と図書館の現時点の姿を比較してみると、全国中学校教員は 20 万人以 上いるのに対し、公立図書館の専任職員は 2 万人にもならない。ほとんどの教員は大学で 各教員の免許を持つが、図書館職員の実態は、大半が司書講習を短期間で終えた人々が中 心である。このように、養成問題にもかかわる問題ではあるが、そうした人材の確保を考
  • 23. えた構造的な課題に着手しない限り、水準向上は解決しない。 4、義務教育を終えた人々の生涯にわたる学習の拠点となりうる質の維持 これには職員の質・量ともに同水準に近づける必要がある。中学校の修業年数が 3 年し かないのに比べて、生涯学習が日本人の平均寿命からも 80 年近くに及ぶことからすれば、 たとえ学校教育予算と同列に生涯学習に関する予算を投入したところで、決して法外な金 額になるわけではないのである。 5、蔵書規模が最低 6 万冊以上確保されている 6 日本の総出版数の実態や各分野をみると、 万冊という数字は図書館が図書館としての役 割を担うために最低限度の蔵書規模である。また、中学校の最低限の必要校舎面積が 600 平米であることからも、1 平米あたり 100 冊以上は目安の数値である。 6、図書館を支えるサポート図書館の確立 地域の図書館が機能していくには、それを支える保存機能を持った図書館の存在が欠か せない。いわば図書館の図書館である。このシステムは現在の日本では一部の都道府県立 図書館には尐しイメージができるが、完全ではない。保存機能図書館で貸し出ししたりす る場合があり、やや利用者の図書館観に混乱を与えている。県立図書館の数が尐ない中で、 眼前の要求には対応するが、実情は一部の都道府県レベルの図書館が市立図書館の肩代わ りをしている状態なのである。大きな県立図書館と県庁所在地にある市立図書館のすみわ けが不完全で、市立図書館の発展を阻害している側面もある。現在市町村が主に地域に近 い図書館を運営しているが、これらの図書館が地域ごとに保存型の地域図書館サポート図 書館として配置されればいいのである。以前イギリスの図書館でも問題となったが、現在 では支援のための図書館は完全に役割に徹して、直接の貸し出し業務をしていない。 まだ日本ではそうした考えにはいたっておらず、都道府県立図書館の存在が曖昧である。 また都道府県の取り組みの格差は著しい。自分の県と他県の図書館の 4,5 館を比較すると、 より客観的な姿が把握できるのであるが、県立図書館の支援に向けたあり方を抜本的に改 革することが求められる。 7、地域コーナーの充実 地域志向型の図書館では、当然のごとく地域関連資料の充実は欠かせない。地域を知る ツールとして地域コーナーの確保は必要である。例えば、地域掲載記事の切り抜き新聞フ ァイル、近隣自治体まで視野に入れた市町村氏の配置、自治体が発行した報告書等の刊行 物、古地図、自治体統計など。 8、地域の誰もが利用できる場と設備備品 地域の人々が誰でも利用できて、初めて公共図書館といえるのである。例えば、赤ちゃ ん連れのお母さんが気兼ねなく、身体障害者でもハンディを感じることなく、老人でも障 害なく利用できなければ、利用は広がらない。そのためには、トイレ、いす、机、通路、 証明、段差、車椅子、手押し車、標識、空調等々への細かい配慮が欠かせない。
  • 24. 9、展示機能と集会機能 展示機能と集会機能は、人々が集い交流を深める機能ばかりか、本との繋がりを深める ことができる。展示会ができるギャラリーとして利用できる空間やイーゼル等の備品の配 置も必要である。特に展示会の開催は、多くの人々に鑑賞の機会を提供でき、図書館の展 示会という気安さから気軽に楽しめる。図書館での定期的な開催は、図書館の魅力の一つ として市民権を獲得できる。 10、地域関連出版物の発刊と支援 図書館で地域関連出版物を発刊することは、時間と空間を越えて地域の人々の信頼を勝 ち取るのには有効である。図書館で集めた写真を編集しての写真集、郷土にゆかりの人物 を特集した冊子、方言集、文献目録集等々の発刊は図書館の活動として容易に取り組める。 テーマは地域の中にほぼ無尽蔵に存在する。これらの活動は単に成果物としての本の活用 も意義深いのであるが、資料の記録行為という観点からも意義が見出せる。 <これからの図書館に望まれるもの> 日本の図書館は現在に至るまで、質・量と飛躍的に前進してきた。しかしながら今なお、 図書館のない地域が存在する。町や村の小さな自治体や、コミュニティの大半には図書館 が設置されていない。日本に図書館のない地域が存在するということは、図書館システム が日本では未完成であるということでもある。図書館が設置されていても、図書館として の機能を充分に果たしていない図書館も、残念ながら存在している。 図書館における課題は、まだ多くある。日本中にいきわたる図書館網を完成させること や、図書館としての最低基準を確保した図書館を整備することは、最も重要な課題である。 そのほかには、これまでのサービスに加えて、これからは、地域のさまざまな情報の収集 と提供、地域の人々にとっての広場の役割、自治体のさまざまな機関と結びついた活動、 出版活動などの、図書館からの情報発信するサービスが大切になってくる。 また、図書館の研修制度が不十分な中で、地域に信頼される図書館になるためには、地 域住民の大多数に目に見える職員の専門的な力量を示すことである。どのような学習歴・ 研修歴を持った職員集団かは、どのような図書館かということでもある。そのような外部 からの厳しい評価の現実を図書館界は直視し、よりよい図書館作りを目指していかなけれ ばならない。
  • 25. 参考文献 長澤雅男/小田光宏 共著 1991 『講座 図書館の理論と実際 7 利用者サービスと利用者教育』 雄山閣出版株式会社 彌吉光長 1992 『北欧の公共図書館と生涯教育』 日本図書館協会 山本宣親ほか 2005 『図書館森時代!』 株式会社日本地域社会研究所 吉田右子 2010 『デンマークのにぎやかな公共図書館 ―平等・共有・セルフヘルプを実現する場所―』 株式会社 新評論 渡部幹雄 2006 『地域と図書館 ―図書館の未来のために―』 慧文社 S.R.ランガナータン(著)、渡辺信一(訳) 1981 『図書館学の五法則』 日本図書館協会 『ブックスタート』 http://www.bookstart.net/