Hyperledgerマルチブロックチェーン基盤戦略構想 3/3

© Hitachi Solutions, Ltd. 2020. All rights reserved.
株式会社日立ソリューションズ
デジタルシフト開発支援本部
モダン開発支援ソリューション部
先端技術グループ
2020/07/22
田辺謙英
小切手のユースケースで学ぶ
デジタルアセットPoC

© Hitachi Solutions, Ltd. 2020. All rights reserved. 1
Profile
技師
田辺謙英（TANABE KENEI）
E-Mail：kenei.tanabe.jg@hitachi-solutions.com
略歴：2002年に入社し、ビッグデータの利活用
促進を目的としたプライバシー情報の匿名化に関
わる研究開発、ソリューションの開発に従事。
2016年より、Bitcoin、Ethereum、
Hyperledger Fabricを活用したプロトタイプの
開発、PoC（Proof of Concept）に関わる提
案／技術支援に従事。

1. 小切手PoC概要
2. デモ
2
Contents
3. 処理方式の勘所
4. 開発体験インタビュー
からに移植しました！

2. デモ
3
Contents

1-1. 小切手豆知識
海外のシンガポールでは法人決済残高の6割が小切手
フォーマット
❏ 表面（振出人が記載）
❏ 裏面（受取人が記載）
D D M M Y Y
Date
Pay
Singapore Dollars
s＄
受取人の名前
1,000.00
One Thousand Only
振出人のサイン
70 2 00 9
XXX Bank
Account number
Name Contact No.
受取人の口座番号（銀行コード＋支店コード＋口座番号）
受取人の名前受取人の連絡先
身近な小切手
❏ 銀行で口座を開くと小切手帳がもらえる。
金額と自らの署名を書いた後、他者へ
振り出すことができる。
❏ 個人でも家賃、保険、学費、給与の支払いで
利用される。
$
CHEQUE
A銀行
振出人
発行
$
CHEQUE
Pay To Bob
振出

小切手交換所
国の決済システム
5
1-2. 現状の小切手の仕組み
いつでも／どこでも支払い可能な小切手
銀行間の小切手交換と決済
個々の小切手取引を
纏めて清算し、差額を支払う
決済のこと
A銀行 B銀行
$
CHEQUE
①発行
振出人受取人
$
CHEQUE
Pay To Bob
②振出
$
CHEQUE
Pay To Bob③取立
④送付⑤受取
⑦ネッティング
⑨ネッティングによる支払 ⑩ネッティングによる受取
-$ +$
-$ +$
⑧ネッティングの結果を通知
①利用者の課題
②銀行間の課題
⑥確認・記録

1-3. ブロックチェーン適用への課題
小切手デジタルアセット化に伴う課題は、
データのプライバシー保護と小切手交換所の自動化
データのプライバシー保護小切手交換所の自動化
❏ 小切手は取引の関係者の中でしか受け渡しの
経緯を知ることができないという、プライバシーに
関わる特徴を持つ。
$
CHEQUE
A銀行
$
CHEQUE
Pay To Bob
B銀行
$
CHEQUE
Pay To Bob
第三者が二人の取引を知ることはできない
振出人受取人
×
❏ 小切手交換所は小切手を一手に引き受けて
清算する中央集権的存在であり、大量の
紙を取り扱っていて非効率。
A銀行 B銀行
D銀行 C銀行
$
CHEQUE
Pay To Bob
$
CHEQUE
Pay To Bob
$
CHEQUE
Pay To Bob
$
CHEQUE
Pay To Bob
×
×

1-4. ブロックチェーン適用への課題を解決する（1）
取引情報は2行間のみで閲覧可能としプライバシーを保護
2行間のみのPrivacy Groupsを生成し取引情報を秘匿化
Private State
❏ 発行銀行と受取銀行の２行間で共有
❏ 受取人氏名や金額などの取引情報
小切手の利用ステータスは全行共有し二重支払を防止
データの種類に応じて格納場所を分ける
D銀行 C銀行
A銀行 B銀行
Public State
❏ 全銀行間で共有
❏ 小切手の公開鍵やステータス（有効/無効、等）
C銀行
A銀行 B銀行
D銀行

現状の小切手交換所のネッティング
：各行の小切手清算金額を合計
：小切手交換所が各銀行と清算金額による決済
No. A銀行 B銀行 C銀行 D銀行
1 -50 50
2 -40 40
3 -50 50
４ 60 -60
5 -10 10
6 40 -40
7 -60 60
8 -30 30
NET 40 -80 60 -20
20
A銀行 B銀行
D銀行 C銀行
Step1
Step2
80
40
60
Step1
Step2
例) A銀行からB銀行へ50$支払う
例) A銀行は40$もらう
自動化する
アイディアとは？
取引の履歴

小切手交換所の自動化
他行へ小切手清算額を知られずに、銀行間でネッティングを完了
：各行の小切手清算金額を合計（同じ）
：全銀行を経由する一筆書き経路を決定し順に清算（例：A→B→C→D）
No. A銀行 B銀行 C銀行 D銀行
1 -50 50
2 -40 40
3 -50 50
４ 60 -60
5 -10 10
6 40 -40
7 -60 60
8 -30 30
NET 40 -80 60 -20
+40⇒-40支払う -80⇒80-40=40支払う
+60⇒-60+40=-20支払う-20⇒20-20=0
-20
40
-40
A銀行 B銀行
D銀行 C銀行
Step1
Step2
Step1
Step2
例) A銀行がＢ銀行から40＄もらう＝-40$支払う
日立特許

Besu
BesuBesu
Besu
10
SmartContractからのEventによって銀行間で一筆書きネッティングを実施、
またその状況を監視可能なエコシステム
C銀行
A銀行 B銀行
D銀行
SmartContract
SmartContractで順序制御
SmartContractからEventを発行
ネッティング情報
15:00 ネッティング
ルート A B C D
実施時刻 15:03 15:07 --:-- --:--
現在時刻 15:21
Event
清算外部プログラム
Event
EventEvent
清算外部プログラムで金額計算
Public State
Step1
Step2
Step3
Step1
Step2
Step3
以降、これらを繰り返すことでネッティングを完了
SC

小切手コンソーシアム
国の決済システム
11
1-8. ブロックチェーン適用後の小切手の仕組み
小切手帳をスマホで管理し利便性を向上
小切手交換所レスの一筆書きネッティングによる効率化
A銀行 B銀行①小切手帳発行
振出人受取人
③振出
④取立
⑥一筆書きネッティング
⑧ネッティングによる支払 ⑨ネッティングによる受取
-$ +$
-$ +$
⑦ネッティングの結果を通知
⑤取引情報登録
②小切手データダウンロード
SC SC

2. デモ
12
Contents

2. デモ
1. 小切手を受け取った人が銀行から取立 2. 二重取立を抑止できている様子
3. 小切手交換所の一筆書きネッティング
DEPOSIT
受取人
（B銀行ユーザ）
取立
B銀行
DEPOSIT
取立
×
〇
-20
40
-40+40⇒-40支払う -80⇒80-40=40支払う
+60⇒-60+40=-20支払う-20⇒20-20=0
B銀行
C銀行

2. デモ
14
Contents

3-1. データをどこに配置するか
コンソーシアムで共有すべき項目はPublic Stateへ
プライバシーを考慮すべき項目はPrivate Stateへ
Private StatePublic State
WebServer
（RDB）
ローカル
（SmartPhone）
❏ 小切手の公開鍵
❏ 小切手の秘密鍵
❏ ユーザ情報 ❏ 小切手の公開鍵
❏ 小切手のステータス
❏ ロックを取得した銀行
❏ 生成・更新日時
❏ 小切手の振出人
❏ 小切手の受取人
❏ 小切手の金額
❏ 取引に関わった銀行
❏ ネッティングID
❏ ネッティング送金行
❏ ネッティング受取行
❏ ネッティング金額
❏ ネッティング日時
❏ ネッティング計画
❏ ネッティング軌跡
❏ ネッティング結果
❏ ネッティング銀行
利用者銀行間
なしなし

Besu
BesuBesu
Besu
16
3-2. Public State
C銀行
A銀行 B銀行
D銀行
Orion
Public State
振出人受取人
Orion
Orion Orion
Bilateral
Manager
SC
SC Multilateral
Manager
❏ 小切手のステータス
❏ ロックを取得した銀行
❏ 生成・更新日時
❏ ネッティング計画
❏ ネッティング軌跡
❏ ネッティング結果
❏ ネッティング銀行
Public State
全ての銀行で共有
銀行間
利用者
SC

Besu
BesuBesu
Besu
17
3-3. Private State
C銀行
A銀行 B銀行
D銀行
Orion
振出人受取人
Orion
Orion Orion
Privacy Group
AB
Privacy Group
BC
Privacy Group
CD
Privacy Group
DA
SCSC
Bilateral
Manager
SC
SC Multilateral
Manager
SC
SC
SCSC
Privacy Group
BD
Privacy Group
AC
Private State
共有先を限定
❏ 小切手の振出人
❏ 小切手の受取人
❏ 小切手の金額
❏ 取引に関わった銀行
❏ ネッティング送金行
❏ ネッティング受取行
❏ ネッティング金額
銀行間
利用者

3-4. BilateralとMultilateralの連携／取立
Multilateral
Manager
振出人受取人
Besu
Orion
Bilateral
Manager
SC SC
①振出
（QRコード）
②取立
③対象の小切手を
ロック
⑤取立を記録
⑥ロックを確認
⑦取立を記録
WebServer
銀行
⑧対象の小切手を
使用済みにする
⑨小切手使用済み
④小切手をロック

3-5. BilateralとMultilateralの連携／ネッティング
Multilateral
Manager
Besu
Orion
Bilateral
Manager
SC SC
②イベント送信
④各銀行のネッティング情報取得
①ネッティング計画決定
A銀行
B銀行
③ネッティング対象の決定
⑤ネッティングの総量計算 ⑥計画上の次の銀行に
総量を通知
⑧ネッティングの完了を報告
⑨ネッティング軌跡更新
⑩イベント送信
⑪ネッティング対象の決定
⑦総量を記録

3-6. 処理方式の勘所のまとめ
1. データの配置を考えよう 2.スマコンを分割して機能設計しよう
3.アプリケーションレイヤで合意形成プロセスを自動化しよう
-20
40
-40
コンソーシアムで共有すべき項目Public Stateへ
プライバシーを考慮すべき項目はPrivate Stateへ
MultilateralManagerと
BilateralManagerによる連携
一筆書き経路によるネッティング(#03,#10,#11)
（身近な例）
ワークフロー(#01)
取引所の売買板による注文のマッチング(#02)
オークションにおけるエスクロー(#02,#08)
Private StatePublic State
Bilateral
Manager
SCSC
Multilateral
Manager
※ #xxは日立ブロックチェーンパターンブックの各パターンに類似する番号

2. デモ
21
Contents

FabricとBesuの印象について
開
開
開
スマコン開発について何か感じたことはあり
ますか？
プライバシー保護の仕組みの違いについては
どうですか？
結局のところ、Fabric派なの？Besu派なの？
Besu(Solidity)は制限が強く、Fabric(Go)の
方が記述できる表現の幅が広いです。Solidityの
制限は、あまり機能を重くしないための設計思想による
印象で、スマコンにそもそも高い表現力を求める事が
妥当なのか、考えさせられます。
BesuのPrivacy GroupsはAPIによって事前に
グループを生成して使用するので、FabricのChannel
に近いですが、より簡単にできる印象。
FabricにはChannelの中にもう一段の秘匿化を実現
するPrivate Data Collectionがあり、より細やかな
データ共有の制御ができますね。
FabricはCentralize寄りで、スマコンも作りやすい。
BesuはPublic Chainの思想が残っていて興味
深いです。どちらも甲乙つけがたいです ❣

他社商標
⚫ Hyperledgerは、The Linux Foundationの登録商標です。
⚫ その他、記載の会社名、製品名はそれぞれの会社の商標または登録商標です。

モダン開発支援ソリューション部
先端技術グループ
小切手のユースケースで学ぶ
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2020/07/22
田辺謙英
END

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