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「宇宙⽣命との出会い」へのロードマップ
宇宙⽣命探査には以下の3つのアプローチがそれぞれ検討されている。
1・太陽系の惑星・衛星に⽣命を探す
2・太陽系外の「第⼆の地球」、すなわちハビタブルな惑星に⽣命存在の
証拠を探す
3・地球外の電波⽂明を探す(SETI)
(2)と(3)についてそれぞれ⾒ていく。
ハビタブルな地球型惑星の探査・観測
•ケプラー衛星の後継機であるTESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)
が2018年に打ち上げられた。
•4基の広視野カメラで全天域の80%を繰り返して観測し、太陽近傍にある
50万個の星の光度を2年間モニタリングする。地球サイズの惑星を数⼗
個、スーパーアースを含めれば数百個の惑星のトランジットを検出できる
と期待されている。
•近⾚外線観測に重点を置き、太陽より⼩さくて温度が低い⾚⾊矮星を中⼼
に観測する
→周りを回る惑星が液体の⽔を表⾯に持てるハビタブルゾーンの観測を⽬指
す。
ハビタブルな地球型惑星の探査・観測
2年間の観測時間による観測
領域の分布
https://tess.mit.edu/publications/
地上望遠鏡としては現在活躍中の⼝径8−10m級の望遠鏡を⼀気に⼤型化
して30m級の次世代⼤型望遠鏡の計画が進⾏中。
•⽇本、⽶国、カナダ、インド、中国の共同で建
設を⽬指すTMT(Thirty Meter Telescope)
(完成予想図)
•次世代可視光・近⾚外線望遠鏡は⾚⾊矮星を
周る惑星を重点的に観測する。
•さらにトランジット中の惑星の分光観測を⾏
うことで、惑星⼤気による吸収スペクトルを
観測し、惑星の⼤気成分を調べる。
トランジット分光観測によって、⽐較的近傍にある地球サイズの惑星まで
観測対象を広げる、惑星⼤気情報を得ることを⽬指す。
⽣命の存在が可能そうな惑星を⾒つけたらー海と⼤陸
「ハビタブル」で⽣命存在が有望な地球型惑星を捉えることができるようになったら、
まず調べるべきは本当に海があるかどうか、そして⼤陸があるかどうか。
海は⽣命の発⽣・維持には必須!
とはいえ、惑星地表パターンを直接観測で捉えるのは難しい・・・(10光年の距離か
ら地球を⾒ると、⾒かけの⼤きさは100万分の2秒⾓。その表⾯の地表を捉えるのは難
しい。ALMAの1万倍の分解能。)
より現実的には、測光(光の強度を測る)+分光(波⻑に分けてスペクトルを撮る)
を⾏う
例えば24時間で⾃転する地球を⾚道⽅向から観測すると、海洋、⼤陸、砂漠を⾒
ているときで、光の反射率が異なる。つまり、海と陸の存在を⾒分けることは可
能。
⽣命の存在が可能そうな惑星を⾒つけたらー海と⼤陸
Ford,Seager,Turner (Nature,2001)
氷 砂漠
海
光の反射率の違い
バイオシグナチャーの観測
次の段階は波⻑分解能の⾼い分光観測で、⼤気の化学的・物理的分析を⾏う
•宇宙から観測した、⾦星、地球、⽕星の⾚外線スペク
トル
•地球では海の存在を⽰す⽔蒸気、メタンによる吸収が
⾒える。
太陽系外惑星での⽣命存在の証拠になりうる対象をバイオシグナチャーと呼ぶ
•特筆すべきはオゾン(O3)。オゾンが存在するというこ
とは、オゾンを作り出した(遊離)酸素の存在を⽰唆。
•遊離酸素は海中で⼤量発⽣したバクテリア類による光合成
反応で地球⼤気に酸素分⼦が20億年前から蓄えられてきた
と考えられる。
他には例えば植物の葉緑体が起こす反射光の⾊の変化(レッドエッジ)などが次の観
測対象として研究されている。
地球には⽣命が存在する!
SF作家としても有名なカール・セーガン達の1993年の論⽂。
ガリレオ衛星が地球をスイングバイするときに地球を観測したところ、酸素が⼤量に
存在し、⼤気中のメタンが熱平衡から⼤きくズレており、また⼈⼯的な電波を観測し
たので、地球には⽣命が存在することを⽰唆しているという結果。
地球には⽣命が存在する!
酸素が存在!
地球には⽣命が存在する!
レッドエッジ
光の反射率が急激に変わっている。
地球には⽣命が存在する!
⼈⼯的な電波もある!

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