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  1. 1. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) ビジネスの立ち上げ <コンテンツ> 1. シンプルな疑問から始める (Ask Simple Questions) 2. アイデアとプロトタイプ (Ideas and Prototyping) 3. スローガンを作る (Making a mantra) 4. 様々なビジネスモデル (Business models) 5. ストーリーを語る (Telling a story) 6. 商品のポジショニング (Positioning your product) 7. スケーリング (Adoption vs. scaling) 8. 「溝」の乗り越えかた (Crossing the chasm) 9. インキュベーション (Incubation) 10. 起業家が犯しがちな過ち (Common mistakes Entrepreneurs make) 11. 予測を立てる (How to forecast) 12. まとめ (Conclusion)
  2. 2. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) 1. シンプルな疑問から始める (Ask Simple Questions) 起業家にとって大切なのは、迷わずに、まず事業を立ち上げることです。起業するなら大きなビジョンを持つ べきだと思うかもしれません。「世界をリードする企業になる!」と意気込むでしょう。でも、成功した企業の始 まりはもっとシンプルです。「AppleⅠ」を作った 2 人に Mac や iPhone や iTunes などのビジョンはありません でした。ビル・ゲイツもパソコンの OS を売ると言う素晴らしいアイデアは、後から思い付いたのです。まずは 立ち上げです(Step #1 Launching)。多くの企業が壮大な構想ではなく、シンプルな疑問を抱くことから出発 しています。「もし自分たちにこれができたら?(What if we could do this?)」 「他にもっといい方法があるはず (Is there a better way? )」 「これは面白いかも」など、全て思い通りにならなくても大丈夫です。失敗であって も、他で使えるアイデアになるかもしれません。立ち上げで大切なのは、シンプルな疑問と、いつも好奇心を 持つことです。「他に方法はないか」「自分たちにできないか」「生活をよくするには?」と考えましょう。 Canva 社のシンプルな疑問とは? (How did Canva ask simple questions? Canva 社はオンラインで使えるグラッフィック・ツールを作りました。うちの創業者が抱いた疑問もとてもシンプ ルです。「グラッフィック・ソフト」は難し過ぎる」「値段も高いし、オンラインで使えない」「誰でも簡単にデザイ ンができればいいのに」 シンプルな疑問とその答えが成功する企業を作るのです。 2. アイデアとプロトタイプ (Ideas and Prototyping) 次はコアとなる部分を図に描いて探し出してみましょう。自分のことを考えて下さい。「何ができるか?」「何に 最も興味があるか」 でも「能力」と「情熱」があったとしても「成功できる見込み」がなくては話になりません。 「能力」よ「情熱」と「成功できる見込み」、この 3 つが重なる部分がコアです。そこがスタート地点になります。 アイデアを出す (Coming up with an idea) 会社を立ち上げるスタート視点にあるのはアイデアです。経験してみれば分かりますが、アイデアは起業で 一番簡単な部分です(IDEAS are the easy part of entrepreneurship)。適当な思い付きやデタラメでも勘違い
  3. 3. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) でも何でもありだからです。起業で何より大変なのは、アイデアを考えることではなく、形にしていくことです (The harp part of entrepreneurship is implementing the idea)。成功は思い付いたことを実行できるかどうかに かかっています。アイデアを実現のものにするには、能力やお金相応の努力や犠牲、そして運の強さも必要 です。アイデアを出すだけなら誰にでもできます。例えば電池のもちを抜群によくして沢山のアプリが入って いて電波も繋がりやすい携帯電話はどうでしょう?しかも値段が安くて契約の縛りもないとしたら飛ぶように 売れるでしょう。難しいのは、そんな携帯を作ることで、発想することは簡単なのです。 プロトタイプと検証 (Prototype and Testing) アイデアはどんどん実行していきましょう。何故なら、実行して初めて、そのアイデアの良し悪しが分かるから です。また何かを思い付いた時、他の人に「これを買いますか?」と聞くことはやめましょう。どんな答えが返 ってきても、実際にそうするとは限らないので、聞いても意味がありません。「買う」と言っても買わないことも あるし、「買わない」と言って気が変わることもあります。Apple 製品がいい例ですね。皆、ソフトが少ないから 嫌だとか、買い替える気はないと言います。でも実際に Mac でできることや、作った物の美しさを見ると気が 変わるのです。否定的な意見や疑いは消えて、Apple の魅力にハマってしまいます。とにかくプロトタイプを 作りましょう(It’s all about BUILDING a prototype)。プロトタイプを作ればアイデアは妄想ではなく現実になる からです。良いか悪いかも直ぐに分かります。プロトタイプは誰かの頭の中で思い描いているだけのもので はありません。実際に買える物を作ることで、リアルなデータも手に入ります。プロトタイプとはアイデアが形 になったものです。1 つには手で触れることができるモノ。車やパソコン、カメラなどの製造品があります。クラ ウドファンディングでお金を集めて実際に製品を作るようなパターンです。一方で、サイトやアプリなど、ソフト ウェアのプロトタイプもあります。ソフトウェアの場合はプログラムを作成しますが、モノを製造しない分、簡単 かもしれません。 Canva 社のアイデアを検証する (How to test the idea of Canva?) 「誰でも簡単にデザインできる」をプロトタイプで実現するなら、ソフトウェアの設計から始めることになります。 そして実際に人が使えるようにして、どう使うかを確かめるのです。アプリをインストールしたがる人も出てくる かもしれません。画面はシンプルな方がいいとか、逆に沢山のツールが欲しいとか、或いはオンラインで同 じことができれば、アプリは不要だと思うかもしれません。プロトタイプがあれば、そう言ったことが確認できま す。 3. スローガンを作る (Making a mantra) 多くの企業には経営理念を表す 40 語から 50 語のミッションステートメントがあります。株主と従業員と顧客の 全員に向けて書かれています。「自然を大切に」など余計な内容まで詰め込み、とても長く退屈で覚えきれ ません。私のお勧めは数語の短いマントラ、つまりスローガンを作ることです。私のは「人を力づける」、Nike なら「本物の競技パフォーマンス」、FedEx なら「安心の貨物追跡システム」、Google なら「情報の民主化」、 Apple なら「コンピューターの民主化」、Canva は「デザインの民主化」です。長ったらしいミッションステートメ ントではなく、誰でも理解できる短いスローガンを考えましょう。スローガンを作るのにコンサルタントを雇わな いで下さい。創業者同士で一緒に考えるのが一番です。できるだけ短くて簡潔なスローガンにするため、あ
  4. 4. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) れこれとアイデアを出し合って下さい。自分たちがやろうとしている事や起業する理由を考えます。人々に力 を与えたいのか、暮らしをより良くしたいのか、何の会社か知らなくてもスローガンを聞けば、どんな会社か想 像できるものがいいでしょう。筋が通っていて、短いものでなくてはいけません。 4. 様々なビジネスモデル (Business models) どんな企業にもビジネスモデルは必要です。幾つかのパターンを紹介しましょう。 #1「顧客ソリューション (Individual Solution)」 顧客のことをよく知っている場合のモデルです。馴染みのある特定の顧客が求めるものに合わせるのが特 徴です。ニッチな分野を狙い、顧客の問題に踏み込んで総合的に対応するモデルです。 #2「マルチコンポーネント (Multi Component)」 製品を様々な方法で売るモデルです。例えば、Coca-Cola はスーパーでも自動販売機でも売店でもスポー ツ大会でも売っています。売っている場所だけではなく、サイズや味の種類なども幅広い製品があります。 新規事業にはあまり向かないビジネスモデルかもしれません。沢山の種類の製品や販売経路を確保するの は簡単ではないからです。でも業種によっては使えるモデルだと思います。 #3「マーケット・リーダー・モデル (Market Leader)」 どの起業家も目指しているモデルです。このモデルの歴史上、最も素晴らしい例は Apple 社でしょう。Apple はコンピューターでもタブレットでもスマホでも音楽プレイヤーでもトップを走っています。一番革新的でカッ コよく愛される製品を持っているのがマーケット・リーダーです。一人勝ち状態で、誰もが製品を欲しがり、発 売日には長い行列ができます。実現は難しいですが、上手くいけば、これほど素晴らしいモデルはありませ ん。 #4「重要コンポーネント・モデル (Valuable Component)」 これはある業界において欠かせない製品を提供するというものです。例えば、DOLBY 社が提供する音声技 術は音響製品にとって欠かせないものです。DOLBY 社はステレオや部品そのもの、テレビや家電を作って いるわけではありません。しかし、多くの製品に DOLBY の技術が使われているので利益を上げられるので す。 #5「プリンター&トナー・モデル (Razor and Blades)」 (替え刃モデルとも言われている) プリンター製品は損が出るほど安く売っても問題ありません。何故なら、その後 5 年は確実にトナーで利益を 上げられるからです。古くからある剃刀も同じですね。本体を安くしても替え刃で儲けられます。 Hewlett-Packard 社が典型的なプリンター&トナー型の企業でしょう。 #6「フリーミアム・モデル (Freemium)」 ある程度までのサービスを無料で提供するビジネスモデルです。途中までは無料で使えるオンライン・ストレ
  5. 5. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) ージやデータベースで容量や機能が物足りなくなったら有料になります。Evernote がいい例でしょう。毎月 一定の容量までは無料で、そこから先は課金されます。Dropbox も似たモデルですね。最初は無料でも、そ のうち容量が足らず、お金を払うことになる。これが「フリーミアム・モデル」です。 #7「広告モデル (Eyeballs Model)」 1990 年代後半に広まりました。素晴らしいコンテンツがあり、膨大な数の人がサイトを訪れる場合に使えます。 サイトに集まる人々は広告会社やブランドにとって魅力的です。例えば、Facebook では無数のユーザーが 自ら年齢や性別などのデータを明かしています。ですから、特定の層だけに広告を見せることができるので す。広告モデルに必要なのは、魅力的なコンテンツや大人気のソフト、そしてそこに集まってくる多くの人々 です。そういう人々に向けた広告枠を売るのが広告モデルです。 #8「バーチャル・グッズ・モデル (Virtual Goods)」 うちの娘は私の携帯電話からオンラインゲームのアイテムを勝手に買ってしまったことがあります。2000 ドル 分もですよ。幸い誤って購入したということで返金されましたが。ゲームなどのアイテムに課金するのがこの モデルの特徴です。顧客はゲームで使える宝物や武器などを追加で買います。これは素晴らしいモデルで す。在庫に限りはなく、腐る心配もありません。魚は腐り、花は枯れますが、バーチャルな品物は幾らでも売 ることができます。よくできたビジネスモデルですね。バーチャル・グッズ・モデルは、広告モデルに少し似て います。プレイヤーが多い人気のゲームになれば、バーチャル・グッズを売る相手も増えるからです。大規 模なオンラインゲームで考えてみましょう。回復アイテムや色々な武器などのバーチャル・グッズを売りたいと します。まずはアイテムを買ってくれるプライヤーが沢山いなければ話になりません。利益を出すには大勢 のお客さんが必要なのです。とはいえ、在庫はいらず劣化もしない、利益の大きい最高のビジネスモデルで す。 #9「職人モデル (Craftsman Model)」 誰よりも秀でた自分の才能を使うモデルです。本物の職人技が必要な工芸作家やパン屋、家具職人、写真 家などがこれに当ります。資金は集めにくいかもしれない。でもヴィンテージ車の修理店など、自分の店を持 ちたいなら職人モデルです。 あなたのビジネスモデルは? 私が起業してモデルを選ぶとしたら、現在勤めている会社と同じ「フリーミアム」ですね。何故ならフリーミア ム・モデルの基礎となる哲学は、人々に「価値」を与えることだからです。まず魅力的な製品やサービスを提 供することで、ユーザーとなってくれる人に価値を与えます。すると満足したユーザーは有料の追加機能や 商品を買ってくれます。人々が夢中になるようなものを開発して大勢の顧客を集めると言う考え方が魅力で す。ある程度使ってもらってから有料になるなら、悪い気もしませんよね。Canva 社の場合は有料になると会 社の皆で使えるモデルもあります。社内で使うフォントやデザインを決める時に一貫性を持たせられるので す。Evernote は無料の場合、月間アップロード容量に制限があります。一定の限度を超えると有料になるの がフリーミアム・モデルです。
  6. 6. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) 5. ストーリーを語る (Telling a story) 立ち上げでは「ストーリーを語る」ことがとても重要です。沢山の起業家がここで大きな失敗を犯します。理由 は恐らく大企業のプレゼンの見過ぎです。大抵の大企業は新製品の紹介が下手です。とても高い会場を借 りて、何も分かっていない CEO が話すだけです。そして CEO の言葉は綺麗ごとばかり。自社の製品は「特 許を取れて、人気も鰻登り、高品質で拡張性が高く革新的」と説明します。こんなプレゼンでいいと思ったら 大間違いです。ライバル会社が自社製品を悪く言うと思いますか?きっとライバルも長所を強調したプレゼ ンをするでしょうから目立てません。だから立ち上げではストーリーを語りましょう。何故起業したか話して下 さい。起業するきっかけとなったシンプルな疑問を説明するのです。「もっといい方法があるはずだ」と。アイ デアの始まりを話しましょう(Genesis of your story)。例えば、「大学や政府機関に行かなくてもコンピューター を使える方法があるはず」、「今より効率的に情報を見つける方法があるはず」、「リンクされた数でウェブサイ トの質を測る方がいいのではないだろうか?」 常に始まりから語りましょう。 私の語るストーリー (Stories I’d tell) 例えば Apple 社の物語を話すとしたら次のようになるでしょう。「僕らは大学や職場へいかず、もっと簡単にコ ンピューターを使いたいと思っていました。遠くまで行って順番を待ち許可を取るのはウンザリ。もっと小さく て安く簡単なコンピューターが欲しかった。だから Apple を立ち上げました」と。或いは「僕の恋人はお菓子 の Pez 社の可愛いキャンディー容器を集めていました。彼女は世界中のコレクターと交流し、売買できる場 所を求めていたのです。そこで僕は eBay を始めました。」 ピエール・オミダイヤが語ったストーリーです。実 はデタラメだそうですが、いい話です。皆さんもストーリーを語りましょう。 6. 商品のポジショニング (Positioning your product) 次は商品の位置取りについてお話しします。ポジショニングです。グラフで考えれば簡単です。縦軸であな たの商品の差別化レベル、つまり独自性の度合いを示します。上へ行くほど他社がマネできないモノという ことです。横軸は商品の価値を示し、右へ行くほど価値が高くなります。起業するに当っては独自性があっ て、価値の高いものを目指しましょう。誰もやったことのないものなら、ライバルがいなくても利益があげられる からです。ユニークで価値の高いものを提供できるか、ポジショニングの極意はこれに尽きます。価値があっ てもありふれたものなら値段の勝負になるでしょう。とてもユニークだけど価値のないものなら誰にも買っても らえません。ありふれていて価値のないものなら作る意味もありません。単に愚かなだけ。お客のいないとこ ろで競争をすることになるので最悪です。グラフの右上を狙って、あなたにしか作れない価値のあるものを作 りましょう。 例えば iPod です。発売当初は音楽を合法的に簡単に買える製品は他にありませんでした。ユニークで価値 があったのです。軽のスマートカーを考えてみて下さい。スペースさえあれば、側道に駐車できる車は沢山 あります。でも狭い場所で側道に直角に停められる車があれば、価値もあるしユニークですね。これはウィジ ングス・アクティベテの時計です。読み方は間違っているかもしれません。Withings Activite です。針もあっ てアナログに見えますが、実はデジタル時計です。iPhone と連携し歩数を記録するスマート・ウォッチなので す。薄いしダサくないしボタンもなく操作は簡単です。美しさと高機能デジタルのユニークで価値の高い時 計です。起業を考えるなら、ユニークで価値がある商品やサービスを作りましょう。
  7. 7. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) 7. スケーリング (Adoption vs. scaling) 多くの企業かは立ち上げの段階で事業の規模や展開方法に頭を使い過ぎです。何故そうなるかは分かりま す。とても優秀なプログラマーたちと会社を作ることになったとしましょう。起業家はプログラマーが最高の商 品を予定通りに作り、全て順調の進むと思っています。お客さんが押し寄せると自信があるので、あらかじめ 数字で考えておきたいと思うのです。発表と同時に大ヒットすると信じているので、大きなサーバーなどの設 備やカスタマーサポートまで計算に入れています。でも現実はプログラマーは思ったほどの天才ではなく、 納期は遅れ、商品はバグだらけ、お客もすぐには集まりません。大勢の客をどうさばくか必死に考えて、いざ 店がオープンしたら客はゼロと言う状況です。これだけは覚えておいて下さい。あれこれ見積もるのは、程々 にしましょう。兎に角プロトタイプを作って世の中に出し、規模については後から考えましょう。企業は客が殺 到して混乱するのを恐れます。私の経験では、お客をさばけないことが大きな問題となったことはありません。 私が関わってきた企業の最大の問題は殆どの場合、お客が少ないことでした。「さばけない」なんてことはあ りません。兎に角沢山のお客を集めましょう。最初から完璧でなくても、この世の終わりは来ません。設備や サポートが全て整っていなくてもいいのです。ハッキリ言ってそんな心配はいりません。お客集めの方が大 変なんです。「かもしれない」ということにお金をかて、人を雇い、設備を整える必要はあいません。狩りで言 えば「食べる分だけ殺す」を心掛けましょう。そうすれば自分お状況を越えた設備を整えようとは考えなくなり ます。殺さなければ食べることはできないからです。 一定数の顧客を集める (Achieving Critical Nass) 経営に必要な一定数の客を集めるには、少しずるい手を使う場合もあります。手元にないものは借りたりお 願いしたりしましょう。Udemy を例に考えてみます。Udemy はありとあらゆる授業を受けられるオンライン講座 です。何でも学べるのが売りですが、初めから全て揃ってはいませんでした。一人の講師がどんな些細なこ とまでも知っているなんてあり得ません。プログラミング言語からオムレスの作り方まではカバーできないので す。ですがネット上には恐らくあらゆる種類の教育ビデオがあります。だからそういった教育ビデオを持って いる人たちに協力してもらうのです。何でも揃っているフリですね。大切なのは一定数のお客を確保すること。
  8. 8. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) そうすれば、いつかマーチ・スチュワートを雇えます。ガイ・カワサキの「魅了の伝え方」講座やセス・ゴーディ ンの「目立つためのマーケティング講座」、ロバート・スコーブルの「SNS 活用講座」もできます。でもそれまで は YouTube や Vimeo のビデオを借りましょう。「何でもあるフリ」も大切なのです。 8. 「溝」の乗り越えかた (Crossing the chasm) 会社の立ち上げから成長までの工程には「深い溝」があります。どんな商品であっても新発売の時には、そ れを買う人たちがいるものです。こういった初期の購入者はアーリーアダプターと呼ばれます。「初期のお客 さんから口コミで広がる」と起業家は期待するでしょう。「直ぐに爆発的に売れて Microsoft や Google みたい になる」と。しかしジェフリー・ムーアによると、初期の購入者は何でも買う人たちです。商品を普及させるの はそう簡単ではありません。商品の売れ方はスムーズな曲線ではなく、越えなくてはいけない深い溝がある のです。両親や祖父母、マニアックではない友人にまで、商品が広まっていくまでの危ない難所だと言えま す。これが「キャズム」と言われるもっとも危ない場所です。事業の規模や展開をやたらと見積もる危険もこの 時期です。初期の購入者と一般的なお客を混同してしまうと、商品が直ぐに爆発的に普及すると錯覚してし まうのです。でも深い溝を越えなければ手元に残るのは、僅かなお客と過剰な設備だけでしょう。溝に気を 付けて下さい。 深い溝とは逆の問題 この深い溝に関して問題になるのが「情報は段階的に伝わる」という思い込みです。何でも最初に試す記者 やアナリスト、専門家などの初期の購入者たちが、人々に口コミで伝えます。そして次のグループへと情報 はピラミッド状に広がっていきます。ピラミッドの頂点にいる影響力の大きな人たちに伝われば、下へ下へ口 コミが広がっていくと考えられます。これが「キャズム理論」です。溝を越えてピラミッドの底辺まで届けば商品 は普及し成功をおさめます。そこから生まれたのが「情報は段階的に伝わる」という思い込みです。「ピラミッ ドの下の人は、上の人の意見を聞くものだ」と。頂点にいる人とは The Wall Street Journal や有名な雑誌や サイトの記者たちです。でも現在はソーシャルメディアが発達し、情報の流れ方も伝わる速さも変わりました。 段階的とは限らないのです。出版ビジネスを例に、以前の情報の流れと最近の変化を考えてみましょう。昔 は出版社の名前も本の良し悪しの判断の基準になっていました。大きな出版社が信頼されていたのです。 出版社では新刊を The New York Times や書評家たちに送ります。そして書評家たちが本を評価、人々は その書評を参考にして書店で本を買っていました。有名な出版社で書評家の評価も高ければ良い本である ことが保証されたようなものです。そんな時代はもう終わりました。本は発売初日に Kindle で電子書籍として 購入できます。1 時間後にはレビューが出始めます。別の誰かが本を買おうと Amazon のサイトを見ると、4 つ星、5 つ星、3 つ星といった本の評価が並んでいます。そこに書かれたレビューも読むでしょう。でも誰が 書いたかは分かりません。プロの書評家のレビューとは違います。聞いたこともない素人のレビューで星の 数が決まっているのです。誰でも書評を書ける時代に「深い溝」の理論は通用しません。人々は Amazon の 星の数を参考にして本を買うかどうか決めます。ピラミッドの頂点から情報が流れてくるのを待ったりはしませ ん。誰でも書評を書けるというのは大きな変化です。起業家には厳しい時代とも言えます。昔から有名紙や 有名サイトの記者に取り入れば済みました。誰でもレビューが書けるとなると、誰に商品を売り込めばいいの でしょう?今はどんな人がレビューを書くかも分かりません。専門家に気に入ってもらえばいい時代は遠い
  9. 9. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) 過去です。今では売り込むべき相手も分からない時代になりました。こうなると簡単に使える良い商品を作る のが一番ということになります。平凡な商品でも専門家から推薦されれば売れるかもしれません。でも今はど この誰かも分からない人々があなたの商品を買ってレビューを公表できるのです。しかもその意見は専門家 のものと同じくらい重要です。専門家に取り入らなくていい代わりに、どこの誰に何を言われるか予想もでき ないという新しい時代になりました。私はこれでいいと思います。何故なら、良い商品、分かりやすい説明書、 使い易い商品を作りさえすれば、よいレビューが得られるからです。昔なら有名紙に取り上げてもらうことす らできなかったかもしれません。記者の数や紙面には限りがあるので何もかもは載せられないからです。今 は情報の流れを妨げるものはありません。良い商品さえあれば起業家にはチャンスなのです。 9. インキュベーション (Incubation) 次は起業支援の話です。車庫を仕事場にしていた起業家が起業支援者を訪ねました。様々な助言や資金 を提供してもらってあっという間に Dropbox が誕生しました。適当な会社を買って起業支援者に任せれば、 未公開株に 200 億ドルの資金調達までまっしぐら、Dropbox や Airbnb などの成功例をよく耳にするのは、そ れが例外だからです。起業支援者を使うなとは言いません。経験者によるアドバイスや面倒な経理のサポー トも得られます。まあ同じ調整をする仲間ということで精神面での支えにもなるでしょう。しかし起業家支援者 は成功に不可欠でもなければ、有効なわけでもありません。起業支援を受けるか受けないかは、起業の成 功とは関係ないのです。起業支援を受けるメリットはありますが、そこに固執しないで下さい。また支援を受 けることになっても、成功が保証されたと思ってはいけません。起業支援があろうとなかろうと肝心なのは、良 い商品と巧みなマーケティングです。独自性があって価値の高い商品を作っているか、そして、それが世間 に知ってもらえているか、その 2 つが全てです。 10. 起業家が犯しがちな過ち (Common mistakes Entrepreneurs make) 起業家が犯す過ちで最も多いのは、妄想とも言えるほど楽観的になることです。楽観的過ぎると規模拡大を 考えます。優秀なプログラマーがいるから最高の商品が予定通りにできると自信満々になり、設備やサポー ト体制を整えてしまう。でも現実には作業は遅れ、イマイチな商品ができてきます。コストはかさみ、お客はい ないという状況に陥るのです。予定通りに商品を発売し 1 年目の目標を達成する会社など見たことがありま せん。大抵は発売日を 1 年延ばして売上は 100 分の 1 にするくらいが現実的な数字です。厳しい見方かも しれませんが、私の 30 年の経験ではそれが現実なのです。 2 番目に多い過ちは起業家が自分と似た人ばかりを集めてしまうことです。自分がオタクならオタクを、営業 マンなら営業経験者を雇って似た者ばかりを集めてしまうのです。会社は画一的になり多様性がなくなって いくでしょう。多様性があることが目標ではありませんが、画一的では強みに欠けます。お互いを補い合える チームでなければいけません。モノを作る人、それを売る人、あらゆる人種や年齢の人が混在した方がいい のです。成功には様々な視点が必要です。全員が似たような格好の白人男性では、絶対に成功することは できません。 起業家が犯す過ちで 3 番目に多いものと言えば、自分が会社を支配しなければいけないと思い込むことで
  10. 10. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) す。そういう起業家は、ある数字にこだわります。創業者は会社の 51%以上の決議権を押さえておくべきだと 考えています。過半数を持っていれば何かを決める時に、思い通りにできると信じているのです。でもそう簡 単にはいきません。投資家を思い通りに動かすために必要なのは決議権ではなく、「予測した通りの結果」 です。本当に会社と自分の運命をコントロールしたいなら、きちんとした計画を立てましょう。まともな計画を 立てている会社なら投資家たちは好きにさせてくれます。投資家は問題のある他の会社を何とかすることに 必死だからです。数字を達成さえしていれば絶対に投資家は放っておいてくれます。超巨大企業のほんの 一部だけを自分のものにすればいいのです。ダメな会社の 51%を支配しても仕方ありません。Google 社の創 業者ラリーとセルゲイを目指すか、主導権にこだわって小さな会社の 51%を守り続けるか、どちらがいいです か?起業の目的は、できる限り会社を支配しようとすることではありません。できる限り会社の価値を高めるこ とです(Goal is to make the company as valuable as possible)。価値あるものの一部を手にする方がいいと悟り ましょう。勘違いしてはいけません。あなたの会社に 200 万ドルの価値があるという投資家もいれば、400 万ド ルという人もいます。評価額が高い方がいいとは限りません。自分の持ち株比率がどうであれ、稼げるか失 敗するかの、どちらかです。支配ではなく、会社を大きく成長させることを考えましょう。 11. 予測を立てる (How to forecast) これまでにお話しした通り、起業家がよく犯す過ちの 1つが財務的にあまりにも楽観的な予測をすることです。 期間は 1 年長く、数字は 100 分の 1 に小さくしましょう。それでは、どのように正しい予測を立てるかお話しし ます。まずは 80%から 90%は確実に達成できると思う数字を挙げることです。大きな数字から予測を立てるトッ プダウン式ではダメです。ペットフードを例に考えましょう。アメリカの人口は 3 億人、4 人に 1 人が犬を飼っ ているので、犬の数は 7500 万匹。エサが 1 日 2 缶で 1 億 5000 万缶。そのうちの 1%は顧客にできるだろうと 考える。1 億 5000 万缶の 1%で 150 万缶。それに 365 日をかけると約 5 億缶。1 缶 1 ドルで売ると、かなり控 えめに見積もっても 1 年間で 5 億ドル稼げる。そんな上手くいきません。こんな予測でペットフード業界に参 入するとしたら、どうかしています。「まあ 80%は確実だから初年度は 4 億ドルは堅い」なんて考える人がいた ら大変です。最初の 1 年で 4 億ドルを達成できると思うなら正気を失っています。人生をかけて 80%確かだと 言えるような予測を立てましょう。達成できる数字にするのです。大きな数字から導く楽観的過ぎる予測とは 全然違うはずです。1 日 1 億 5000 万缶なんて予測が甘過ぎます。私が同じ業界に参入するとしたら、次のよ うに数字を積み上げて予測します。ドッグフードを売るウェブサイトを想定して、1 か月間のサイトへの訪問者 数はうまくいって 10 万人くらい。とりあえず 1 か月に 10 万人だとします。控え目に見積もって 1%がドッグフー ドを買うとしたら 1 か月に 1000 ケースが売れる計算です。1 ケースに 25 缶入っていれば、1 か月で 2 万 5000 缶ですね。2 万 5000 缶では、先ほどの 1 日 150 万缶にまったく及びません。実際は 2 万 5000 缶から 150 万缶×30 日の 4500 万缶のどこかで落ち着くはずです。大きな数字から分析し、控え目に見積もると 1 か月 4000 万缶と言う数字が出ました。一番低く見積もれば 1000 万缶。間を取って仮に 2500 万缶としましょう。私 の予測では 10 万人の訪問者のうち 1000 人が 25 缶ずつ買うので 2 万 5000 缶です。私は 2 万 5000 缶、一 方では 2500 万缶。1 か月後の数字はどちらに近いでしょうか?残念ですが、2 万 5000 缶に近い数字になる はずです。数字を積み上げて予測しましょう。
  11. 11. ©Takayuki Yamazaki (2016.06.03) 12. まとめ (Conclusion) 「立ち上げ」のまとめです。まず、数語であなたの事業を説明できるようなスローガンを考えましょう。それから プロトタイプの設計です。事業のテストモデルを構築し検証すれば、プランの実現性が見えてきます。そして 予測は数字を積み上げましょう(Bottom-up analysis)。ドッグフードなら 1 日 150 万缶ではなく、1 か月 2 万 5000 缶という現実的な数字になります。そして事業を語る時は、あなたのストーリーを語りましょう(Tell a story)。成長率や予測の話は後です。自分が買っている犬のために良いドッグフードを求めていたと語るの です。だから愛犬に食べさせたいものを自ら作ったのだと。「ロッキー」など自分の愛犬の名前を出してもい いでしょう。もっといい物を作りたいという個人的な思いから起業したと語るのです。「3 億人のアメリカ人のう ち 4 人に 1 人が犬を飼っており・・・」話すよりずっと効果的です。どっちらにしろ、年間 5000 億ドルの売上な んて実現する訳がありません。立ち上げとは、プロトタイプ、スローガン、そして世に出ることです!

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