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児童養護施設における暴力問題の現状と有効な対応について.pptx

  1. 児童養護施設における暴力問題の 現状と 有効な対応について
  2. 今日の流れ 1.施設内加害についての全体像や分かっていること 2.施設内加害があった時、施設と児相はどう動くの? 3.なぜ施設内加害がダメなの? 3-1.加害の連鎖 3-2.子どもの心への影響 3-3.子どもの脳への影響 3-4.子どもの行動への影響 4.問題行動が多発する子どもにどうやって接したらいいの? 4-1.子どもの感情の取り扱い 4-2.問題行動が繰り返される科学的根拠と再発防止策
  3. 1.施設内加害についての 全体像や分かっていること
  4. 職員が負担を感じる児童の問題行動 規則違反的行動と攻撃的行動(佐藤,2019) • 規則違反的行動 「性的問題」「放火」「盗み」「器物破壊」「飲酒」「病気のため でなく薬を使用」「家出」「やってはいけない事をした後でも悪い とは思わないようだ」といった項目 • 攻撃的行動 「人に暴力をふるう」「他人をいじめたり、いじわるしたりする」 「人を脅す」「家族や他人の持ち物を壊す」といった項目
  5. 施設内加害についての統計 • 児童→職員の加害の統計 回答者のほぼ6割(569人)が児童から職員への暴力(身体的暴力、言葉による脅 し,器物損壊,凶器による脅し)を経験 つまり多くの職員が児童からの暴力を経験している(東京都社会福祉協議会児童部会,2007) • 児童→児童の加害の統計 経験していた児童の比率は最大56%,心理的暴力は最大73%(Attar-Schwartz & Khoury- Kassabri, 2015; Khoury-Kassabri & Attar-Schwartz, 2014; Sekol & Farrington, 2009) • 職員→児童の加害(≒被措置児童虐待)の統計 89%が少なくとも1回の虐待経験を報告 (Hermenau, Hecker, Elbert, & Ruf-Leuschner, 2014) ⇒施設内加害は起こる前提で対応することが必要
  6. 児童間暴力の要因1 • 児童間暴力の原因 家庭内暴力(身体的虐待・DV目撃) ⇒暴力規範を受け入れやすく、暴力的な仲間と関わりやすく、 再被害を受けやすい(Xia, Li & Liu,2018) 仲間からの暴力被害 ⇒精神的な障害、低い自尊心、社会的スキルの欠如を持ちやすい (Fox & Boulton, 2005; Postigo, González, Mateu, & Montoya, 2012; Shetgiri, 2013). 虐待全般 ⇒低い自尊心や社会的スキルの欠如を持ちやすく、仲間関係への 向社会的参加を妨げ、他者との対立リスクが上がる(Hong, Espelage, Grogan-Kaylor, & Allen-Meares, 2012) 暴力によるコミュニケーションの輪に入れられてきた
  7. 児童間暴力の要因2 • 攻撃の誤学習として理解 支配的環境(虐待環境とか)で育った子どもは、他者との 操作的な関わりや攻撃性を学習し(Snyder & Dishion, 2016) 逸脱行動を示す仲間集団に所属し(Forgatch, Patterson, Degarmo, & Beldavs, 2009) それによって仲間内暴力を経験する可能性が高くなる • その他(古典的心理学) ストレス発散のための攻撃 自分を守るための攻撃・・・など
  8. 児童間暴力モデル(これまでのまとめ) 家庭内暴力 支配的関係 低い自尊心 社会的スキル欠如 他児との対立 他児からの暴力 他児への暴力・操作性  暴力規範を受け入れやすい  関係性のスキルの低さ  仲間関係への向社会的参加困難  他者からの攻撃に対する恐怖心  「他者を操作・攻撃」して 身を守ることを誤学習  フラストレーション蓄積
  9. 他者からの攻撃に対する恐怖心が 攻撃につながるとき(扁桃体と前頭葉) 1. 虐待や暴力被害などを継続して受ける 2. 扁桃体と前頭葉系(攻撃などの認知的制御)の体積減少 3. 些細な刺激に扁桃体が過剰反応し恐怖・不安が喚起 4. 前頭葉機能が低いため、扁桃体の過剰反応を抑えられない 5. 攻撃的な反応により自己防衛を行う(扁桃体反応) 扁桃体の機能 • 好き、嫌いの感情 • 攻撃性、怖れの表情などの表出 • 不安や恐怖に対する反応の表出 • 他者の感情の理解 2-9歳の虐待⇒前頭葉系および扁桃体の体積減少 (Suffren et al., 2021) 早期虐待⇒扁桃体が過活動になる(Hein & Monk, 2017) 扁桃体は感情的な攻撃反応を引き起こし, 前頭葉系は攻撃衝動を抑制(Potegal, 2012; Siever, 2008) 攻撃性の高さと扁桃体の体積減少が関連(Pardini et al., 2014;Thijssen et al.,2015)
  10. 児童間暴力モデル(脳をベースに) 虐待 扁桃体が未発達 前頭葉系が未発達 高い攻撃性 衝動的な行動 過度な防衛的行動 扁桃体が過活動⇒些細な刺激に対し、不安や恐 怖を過度に感じてしまうようになる 前頭葉機能が弱い⇒攻撃衝動を抑えられない
  11. 事例 子供の問題行動の機序は?1 <主訴と経過> 2歳以前から両親の暴力が継続していた。顔や腹を殴られたり土下座を強要されたりする などだけでなく、真冬や真夏の戸外締め出し、食事を与えないといった複数の虐待が確認 されている。 本児が6歳になり親族宅に本児が預けられてから、最初のうちは落ち着いた生活だった。 しかし徐々に本児に落ち着きがなくなり、試し行動のような暴言が目立つようになって いった。感情的になりやすい親族は、本児に虐待により統制するようになった。本児はこ の親族から日常的な殴るけるのみならず、顔を刃物で切られ、髪をライターであぶられる など、極めて危険な虐待が継続していた。学校でも徐々に落ち着きがなくなり、他児との トラブルだけでなく、奇声をあげて暴れまわるなどの行動も表出するようになっていった。 8歳のころに一時保護となり、児童養護施設へ入所。数か月経過してから、他児への暴言 や暴力が頻発し、服薬治療を開始。しかし行動は終息せず、施設内で個別対応を実施。児 相の心理司がかかわりを開始し、「イラッとしたときにタイムアウト」をとる練習をした。 しかし効果はなく、集団の中に入り、些細なきっかけで他児への攻撃が継続しており、個 別場面でも枠を崩そうと好き勝手な行動をとり続けるため、対応に苦慮している。 <心理検査結果> ・WISC-Ⅳ:全検査90 言語理解100 知覚推理80 ワーキングメモリ80 処理速度100
  12. 事例 子供の問題行動の機序は?2 <状態像> ・対人・情緒面 笑顔が多く、他者と関わりを積極的に求める一方で、挑発的な言動により注意を引き、 トラブルに発展する傾向が強い。他者感情を想定して行動することが困難であり、自 我を通すことを優先してしまいがちであるため、その傾向もトラブルへの発展しやす さに寄与している。 バカにされる、小言を言われる等の些細なきっかけで、他児への暴力に発展する。振 り返りでは「自分では止められない」「頭が真っ白になる」と話す。 ・家族関係 実親宅では、本児は家族から疎外されていた。本児が発言するたびに否定され、暴言を吐 かれるといった状況であった。親戚宅では、本児が家庭に慣れ、行動化が表出するように なって以降は、親戚は当職の指導を受け入れず、本児の行動化を暴力、または「言うこと を聞かないと児相に連れていかれるよ」という脅しを用いて行動を統制することを頑なに 続けた。本児は親戚宅に戻りたいと話しており、虐待を「自分がいうことを聞けないか ら」「自分が悪い子だから仕方ない」と話す。 【5分間】①なぜ問題行動を出すのか?過去の虐待と現在の状態を総合して ②どのような関りで問題行動をケアしたらよいか?
  13. 2.施設内加害があった時 施設と児相はどう動くの?
  14. 施設内で暴言暴力が発生したら 1.施設から最初に動く • 事故の概要を児相に電話連絡(簡単な概要+対応内容を伝える) ※この時点で、児相判断で一時保護などになることも • 施設職員が詳細調査 • 事故報告書をまとめて • 児相に送付したら、しばらくして児相(の担当者)から連絡が入る。 2.児相が聞き取りに来る(目的:子どもへの影響と再発防止策の確認) • 子どもや職員に事故の詳細や、その後の対応や施設の意向の確認・検討 ※この時点で、児相判断で一時保護などになることも • 「OKです」「通所指導しましょう」「もっとアセスメントしよう」などになる
  15. 暴言暴力は全部報告するの? • します
  16. 虐待としつけの境界ってなによ ●「厚生労働省・児童虐待の定義と現状」より 身体的虐待:殴る、蹴る、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、 縄などにより一室に拘束する など 心理的虐待:言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの面前でのD V、きょうだいへの虐待など ●「被措置児童等虐待対応ガイドライン」より 心理的虐待 ・ことばや態度による脅かし、脅迫を行うなど ・児童を無視したり、拒否的・差別的な態度を示すなど ・児童の心を傷つけることを繰り返し言う ・適正な手続き(強制的措置)をすることなく子どもを特定の場所に閉じ込め隔離する ・感情のままに、大声で指示したり、叱責したりする などの行為を指す つまり、自分の負の感情に任せて対応してしまうこと全般=虐待
  17. 虐待としつけの違いについて ChatGPT(AIチャット)に聞いてみた しつけの目的:子どもの行動を 導き、前向きな成長を促す • 明確なルールと境界線を設定 • 誤った行動には適切な結果を 与える • 良い行動には積極的に強化 虐待の目的:子供をコントロール・支配 https://openai.com/blog/chatgpt
  18. 子どもの問題行動の対処を一緒に考えてほし いとき(施設側の児相へのニーズ) • まず電話欲しい ↓伝えてほしい情報 ①問題行動の具体的な内容 ②児相に何をしてほしいのか、(できれば)具体的な希望・対応 例:子どもの無断外出について子どもと話してほしい 他害がひどいので、子どもにアプローチして暴力を止めてほしい ③②が分からないなら、そこも含めて一緒に考えてほしいという熱い気持ち • 担当が動いてくれない!あ、もみ消そうとしている! ⇒「施設支援担当」に電話してみてはいかがでしょうか。大体「支援課」? 子どもへのアプローチはできませんが、大変な子どもへの対応方法についてお話 しするという名目で関わることは可能 ※施設支援=施設の職員や施設環境に対する支援・サポートが主な業務
  19. 子どもに話を聞いてあげて欲しい 子どもに指導してほしい、と思ったら… • 第3者的な位置から子供に話をしてほしい場面で、児相に協力依頼 アプローチ先:担当福祉司?心理がいたら心理司の方がいいかも?? • 可能な限り児相の役割を明確にしてほしい 例:万引きに対する刑事司法的な指導 夢を語りがちな児童への進路指導 など、先生の話を補強する役割とか?
  20. 一旦休憩
  21. 3.なぜ施設内加害がダメなの? 一般家庭における虐待研究を参考に考える
  22. 加害の連鎖(図は再掲) 家庭内暴力 支配的関係 低い自尊心 社会的スキル欠如 他児との対立 他児からの暴力 他児への暴力  暴力規範を受け入れやすい  関係性のスキルの低さ  仲間関係への向社会的参加困難  他者からの攻撃に対する恐怖心  「他者を操作・攻撃」して 身を守ることを誤学習  フラストレーション蓄積 • 暴力の被害者は 低い自尊心や社会的スキルの欠如を持ちやすい(Fox & Boulton, 2005; Postigo, González, Mateu, & Montoya, 2012; Shetgiri, 2013) 暴力規範を受け入れやすく、暴力的な仲間と関わりやすく、その結 果、再被害を受けやすい(Xia, Li & Liu,2018)
  23. 子どもの心への影響 • 暴力を受ける・暴力を目撃することによる影響 感情的な苦痛(不安、抑うつ、恐怖、自尊心の低下、PTSD) 行動上の問題(攻撃性、引きこもり、自傷、薬物乱用、学習の問題) 身体的健康問題(慢性的な痛み、頭痛、胃腸障害、睡眠障害) 人間関係の問題(友人や恋人など、他者と健全な関係構築の困難) ⇒暴力を受けることだけでなく 暴力を目撃させるのも×
  24. 子どもの脳への影響 施設内加害=虐待という視点 • 小児期の虐待の影響↓(覚える必要はないです) 扁桃体(感情)が過活動になる(Hein & Monk, 2017) 海馬(記憶)体積が小さくなる(Hanson et al.,2015; Henicx-Riem, Alink, Out, Van Ijzendoorn, & Bakermans-Kranenburg, 2015) 前頭葉系(人間の認知能力、IQなど):前頭前野が脳のさまざまな部分に伝わるメッセー ジを調節する能力を破壊(Davis et al.,2015;Teicher et al.,2002)、背外側前頭前皮質で6%,前帯 状皮質で12%,皮質の体積減少(Underwood, Bakalian, Escobar, Kassir, Mann, & Arango, 2019)、眼窩前 頭皮質の変化(Hanson et al ,2010 ; Thomaes et a, 2010 ; Gerritsen et al, 2012) 前帯状皮質(行動モニタリング・行動調節・社会的認知など)の体積・結合性の減少(Heim et al., 2013 ; Cohen et al, 2006 ; Baker et al ,2013 ; Thomaes et a, 2010 ; Teicher, Anderson, Ohashi, & Polcari, 2014 ; van der Werff et al, 2013) 複雑性PTSDでは,右海馬,右背側ACC,右眼窩前頭皮質(OFC)の灰白質濃度低下 (Thomaes et al.,2010) 他:尾状核,被殻,前頭前野の一部,黒質,側坐核の血流変化(Chugani et al ,2001 ; Sheu, Polcari, Anderson, & Teicher, 2010)、線条体体積減少(Dannlowski et al, 2012 ; Edmiston et al ,2011 ; Baker et al ,2013) ・・・感情・記憶・IQ・行動など、非常に多くの負の影響
  25. 子どもの脳への影響 施設内加害=虐待という視点 • 【心理的虐待】 DV目撃の視点:DVを複数回目撃した場合,視覚野の体積が減少 (Tomoda, Polcari, Anderson, & Teicher, 2012) 被暴言虐待:被虐待児の脳画像解析で聴覚野の機能低下と関連 • 【性的虐待】 小児期の性的虐待を複数回受けた成人でも視覚野体積が減少 (Tomoda, Navalta, Polcari, Sadato, & Teicher, 2009)。 脳への影響=目に見えない影響が相当出る(+影響は遅れて出る)
  26. 子どもの行動への影響 複雑性PTSD(C-PTSD) ※被虐児に多い!! • 主症状 3つの古典的PTSD症状(外傷性再体験、回避、過敏性)+ 3つの自 己組織化障害の症状 ①感情調節の障害(例:感情統制の問題、ストレス耐性の低下) ②対人関係の問題(例:人間関係の回避) ③否定的自己認知(例:自分は失敗作なんだ、という考えなど) • ICD-11における複雑性PTSDの診断基準 否定的自己認知、感情の制御困難及び対人関係上の困難といった症 状が、PTSDの諸症状に加えて認められること (wikipediaより)。 • 複雑性PTSDの原因 長期のトラウマ体験(虐待など)が、 複雑性PTSDと高い相関
  27. 子どもの行動への影響 感情調節困難(障害) • 複雑性PTSD:海馬(記憶)、扁桃体(感情)、前帯状皮質(社会性)などの 体積減少が報告 (Karl et al.,2006; O’Dohertyet al., 2015; Meng, Qiu, Zhu, et al.,2014) • 虐待は機能的な感情調節の獲得を阻害(Dvir et al.,2014) • 虐待による感情調節困難の結果,強烈な否定的感情を伴うPTSDの症 状と関連(Kaczkurkin et al.,2017) 子どもが虐待を体験(扁桃体機能弱)⇒負の感情を感じやすい ⇒①自分の行動コントロール能力低下(衝動性) ②自分で感情の動揺を抑えられないという誤った思考 (Knefel et al.,2019)
  28. 事例(再掲) 子供の問題行動の機序は?1 <主訴と経過> 2歳以前から両親の暴力が継続していた。顔や腹を殴られたり土下座を強要されたりする などだけでなく、真冬や真夏の戸外締め出し、食事を与えないといった複数の虐待が確認 されている。 本児が6歳になり親族宅に本児が預けられてから、最初のうちは落ち着いた生活だった。 しかし徐々に本児に落ち着きがなくなり、試し行動のような暴言が目立つようになって いった。感情的になりやすい親族は、本児に虐待により統制するようになった。本児はこ の親族から日常的な殴るけるのみならず、顔を刃物で切られ、髪をライターであぶられる など、極めて危険な虐待が継続していた。学校でも徐々に落ち着きがなくなり、他児との トラブルだけでなく、奇声をあげて暴れまわるなどの行動も表出するようになっていった。 8歳のころに一時保護となり、児童養護施設へ入所。数か月経過してから、他児への暴言 や暴力が頻発し、服薬治療を開始。しかし行動は終息せず、施設内で個別対応を実施。児 相の心理司がかかわりを開始し、「イラッとしたときにタイムアウト」をとる練習をした。 しかし効果はなく、集団の中に入り、些細なきっかけで他児への攻撃が継続しており、個 別場面でも枠を崩そうと好き勝手な行動をとり続けるため、対応に苦慮している。 <心理検査結果> ・WISC-Ⅳ:全検査90 言語理解100 知覚推理80 ワーキングメモリ80 処理速度100
  29. 事例(再掲) 子供の問題行動の機序は?2 <状態像> ・対人・情緒面 笑顔が多く、他者と関わりを積極的に求める一方で、挑発的な言動により注意を引き、 トラブルに発展する傾向が強い。他者感情を想定して行動することが困難であり、自 我を通すことを優先してしまいがちであるため、その傾向もトラブルへの発展しやす さに寄与している。 バカにされる、小言を言われる等の些細なきっかけで、他児への暴力に発展する。振 り返りでは「自分では止められない」「頭が真っ白になる」と話す。 ・家族関係 実親宅では、本児は家族から疎外されていた。本児が発言するたびに否定され、暴言を吐 かれるといった状況であった。親戚宅では、本児が家庭に慣れ、行動化が表出するように なって以降は、親は当職の指導を受け入れず、本児の行動化を暴力、または「言うことを 聞かないと児相に連れていかれるよ」という脅しを用いて行動を統制することを頑なに続 けた。本児は親戚宅に戻りたいと話しており、虐待を「自分がいうことを聞けないから」 「自分が悪い子だから仕方ない」と話す。
  30. 事例について 問題行動のアセスメント • 診断基準的にはどう? 繰り返される重篤な虐待、感情調整や対人関係の困難さや自己否定的な言動など、自己 組織化障害の症状(=感情調節障害、対人関係の問題、否定的自己概念)から、複雑性 PTSDに合致する可能性が浮上します。 • 不適応行動の機序 本児が自分の問題で不適応行動に至っている× 虐待の影響で感情調節困難の結果の不適応行動〇 他者からの攻撃的・差別的な言動がリマインダー(虐待記憶を呼び起こすもの)となってフ ラッシュバックが起こり、攻撃反応(扁桃体過覚醒による防御反応)により自分を守った? • 関わりの方針 複雑性PTSDの見立てが可能である以上、環境調整や本児へのソーシャル・スキル・ト レーニング的なものでなく、少なくとも心理療法などの治療見込みのあるケアが求めら れるのではないでしょうか。日常的な関わり方法は次以降(注:複雑性PTSDに服薬は効かない)
  31. 4.問題行動が多発する子どもに どうやって接したらいいの? ――心理療法以外の、日常のかかわり方や環境設定
  32. 子どもの感情の取り扱い 怒り=上位感情! 下位感情は他にある 怒り 悔しい 焦り 心配 悲しい 不安 怖い 寂しい 恥 徒労感 • 怒る=下位感情を溢れさ せている状態 • 怒っている人に向き合う 時は怒りに目を向けるの でなく、必ず怒りの前に 感じていた下位感情に目 を向ける。「何を感じて いたから怒ったんだ?」 という視点 上位感情 下位感情
  33. 子どもの感情の取り扱い 「感情のラベリング」という技法 • 人々は怒ってる顔・怖い顔の写真を見ると、扁桃体活動が強まる • 「怒っている」という言葉をつけると、扁桃体の反応が減少する • 扁桃体が感情をラベル付けしたときの扁桃体の活動性は低いが、前 頭葉系がより活発であることが示された。 つまり…自分の感情を“怖い”“不安”などラべリングする ⇒扁桃体優位でなく前頭葉優位の状態になる ⇒扁桃体優位な反応=恐怖等への防御反応(攻撃行動)が減少する 子どもが自発的に言語化困難なら、大人側が促しても〇
  34. 子どもの感情の取り扱い 「感情のラベリング」事例と簡易演習 • ケース概要 5歳男児 知的に普通域 能力全般的に普通 主訴:母からの身体的虐待(蹴る)+心理的虐待(怒鳴る、兄弟間差別) • 問題行動内容 他児に「こんなのもできねーのか」と馬鹿にされたことで、叫びながら暴力をふる う+保育士の「やめなさい!」という静止も聞けない状態 簡易演習【「感情のラベリング」をどのようにしますか?】 ヒント1:前頭葉を覚醒させる(自分や感情を客観視)+扁桃体の覚醒を下げる (共感による安心感) ヒント2:その子にフィットする下位感情を使用 【3分間隣人と共有】
  35. 問題行動が繰り返される科学的根拠と 再発防止策 1.個別的対応 • 性加害 • 窃盗 • 暴力・・・など それぞれ異なる原因と機序がある 1.被虐待歴と誤学習 2.能力面・社会対人面 3.問題行動の意味 4.再発リスク因子が残ってる?ケアされている? ・・・心理担当の専門性の範囲が多い ⇒ 困ったら心理担当へ
  36. 問題行動が繰り返される科学的根拠と 再発防止策 2.環境構築 • 重篤な問題行動の繰り返し=「犯罪行為の繰り返し」という視点 • セントラルエイト リスク・ニーズ要因(Bonta & Andrews,2017) 犯罪歴,犯罪指向的態度,犯罪指向的交友,反社会的パーソナリティ・パターン, 家族・夫婦,学校・仕事,物質乱用,レジャー・レクリエーション(余暇活動) の8つが犯罪行動のリスク因子になるというもの 特に児童養護施設ケースでフォローしていくことになるのは 「犯罪指向的交友」:悪いことやっていいじゃん、という仲間集団に所属 「学校・仕事」:学校適応が悪い・学校に行けない 「レジャー・レクリエーション(余暇活動)」:暇な時間が多い 適宜周辺の地域資源などを活用するような再発防止プランを, 児相と共同して策定していく
  37. 今日の簡単なまとめ 1.施設内加害についての全体像や児童間暴力モデル 2.施設内加害があった時の施設と児相の動き 3.加害による影響 3-1.加害の連鎖 3-2.子どもの心・脳・行動への影響 3-3.複雑性PTSD 4.問題行動が多発する子どもへの接し方 4-1.感情のラベリング 4-2.犯罪リスクの科学的根拠(セントラルエイト・リスク ニーズ要因)