前講演で「三つの対策」についてお話をしましたが、ラッセルの論理主義に基づいた型理論は、ゲーデルによって「無意味に複雑である」と評されたように、現代の多くの啓蒙書では歴史的な遺物と思われかねないような書きっぷりで紹介されることも多い用に思います。
ところがその後、1972年にマーティンレーフが構成的型理論を発表し、論理主義と直観主義(構成主義)の両派を束ねる形で、新たな流れが始まりました。構成的型理論は数学の基礎としてだけではなく、計算機科学の基礎理論(有限ステップで計算が終わるプログラムのための基礎理論)として大きな役割を果たすようになります。
この進展は、論理学における証明論的意味論の進展と手を携えて進んでいます。証明論的意味論における命題の意味はその証明であると見なす立場から、『証明のデータ型としての命題』という考え方が生まれ、構成的型理論はその表現の一つであると見なすことができるからです。
技術的な観点からは、マーティンレーフらの構成的型理論の最大の特徴は、データ型の帰納的な構成法を許す点にあり、このアイディアこそ、帰納的な構成と解体という構成主義の基本的なアイディアを表現し、再帰関数の定義を自然に行うことを可能にするのです。
本講演では、その基礎理論となる、直観主義論理において「命題を証明すること」と「計算をすること」が同一視できるという「カリー・ハワード対応」、および証明を命題の意味と見なす『証明のデータ型としての命題』観を説明します。
https://youtu.be/q02uYIc0s6g