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メビウスの輪について問われる問題
下図のような図形 R = [0, 10] × [0, 1] を用意する. 以下の問に答えよ.
1. 図形 R の辺 AB = {0}×[0,1] と辺 CD = {10}×[0,1] とを,すべての t ∈ [0,1] に対して点 (0,t) ∈
AB と点 (10,t) ∈ CD とを同一視することで 貼り合せてできる図形を X とする.このとき整係数
ホモロジー群 H∗(X, Z) を求めよ.
2. 図形 R の辺 AB = {0}×[0,1] と辺 CD = {10}×[0,1] とを,すべての t ∈ [0,1] に対して点 (0,t) ∈
AB と点 (10,1−t) ∈ CD とを同一視すること で貼り合せてできる図形を Y とする.また Y の中
で開円板と同相な近傍 をもたない点の全体を Y の境界 ∂Y とする.このとき整係数ホモロジー
群 H∗(∂Y, Z) を求めよ.
3. (1) の図形 X と (2) の図形 Y とが同相となるかならないかを判定し,そ の証明を与えよ。
R
B(0, 1)
A(0, 0) D(10, 0)
C(10, 1)
下図のような図形 R = [0, 10] × [0, 1] を用意する. 以下の問に答えよ.
1. 図形 R の辺 AB = {0}×[0,1] と辺 CD = {10}×[0,1] とを,すべての t ∈ [0,1] に対して点
(0,t) ∈ AB と点 (10,t) ∈ CD とを同一視することで 貼り合せてできる図形を X とする.
このとき整係数ホモロジー群 H∗(X, Z) を求めよ.
R
B(0, 1)
A(0, 0) D(10, 0)
C(10, 1)
計算
まず連結であることによりH0(X,Z)=Z (基礎事項参照
またF:X×[0,1]→XでF 𝑋, 0 = 𝑖𝑑 𝐹 𝑋, 1 = S
1
でt∈[0,1]を固定しても連続な連続写像が存在するので
H1(X,Z)= H1(S
1
,Z)=Z H2(X,Z)= H2(S
1
,Z)=0 (基礎事項参照
別証明
図のようにオレンジと赤2つに分けてマイヤーヴィートリスを使って計算する。
別証明
三角分割を行い、定義にしたがって計算を行う。
下図のような図形 R = [0, 10] × [0, 1] を用意する. 以下の問に答えよ.
2図形 R の辺 AB = {0}×[0,1] と辺 CD = {10}×[0,1] とを,すべての t ∈ [0,1] に対して点
(0,t) ∈ AB と点 (10,1−t) ∈ CD とを同一視すること で貼り合せてできる図形を Y とす
る.また Y の中で開円板と同相な近傍 をもたない点の全体を Y の境界 ∂Y とする.このと
き整係数ホモロジー群 H∗(∂Y, Z) を求めよ.
R
B(0, 1)
A(0, 0) D(10, 0)
C(10, 1)
計算
まず連結であることによりH0(X,Z)=Z (基礎事項参照
またF:Y×[0,1]→YでF 𝑌, 0 = 𝑖𝑑 𝐹 𝑌, 1 = S
1
でt∈[0,1]を固定しても連続な連続写像が存在するので
H1(Y,Z)= H1(S
1
,Z)=Z H2(Y,Z)= H2(S
1
,Z)=0 (基礎事項参照
別証明
図のようにオレンジと赤2つに分けてマイヤーヴィートリスを使って計算する。
別証明
三角分割を行い、定義にしたがって計算を行う。
下図のような図形 R = [0, 10] × [0, 1] を用意する. 以下の問に答えよ.
R
B(0, 1)
A(0, 0) D(10, 0)
C(10, 1)
3 (1) の図形 X と (2) の図形 Y とが同相となるかならないかを判定
し,そ の証明を与えよ。
答え ならない
証明
もし同相写像f:Y→Xが存在したとすると、Yの部分空間Y’からXの部分
空間f(Y’)への制限写像も同相である。
(1)はグラフK23を埋め込められないが、(2)には埋め込められる。
(1)に埋め込められないことを見るには、(1)に埋め込められた場合、
(1)を平面に埋め込められることから平面にもグラフK23を埋め込めら
れるはずである。そこで5つの頂点の位置を場合分けしてみると平面
には埋め込めないことが示せる。
Y’= K23とすると、f(Y’)は必ず切れている(連結でない)か、単射にする
ことは不可能である。これは制限写像の同相性に矛盾(切れてるとデ
デキント切断より開集合が𝑓−1
で閉集合へ向かうことになる)
K23

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  • 2. 下図のような図形 R = [0, 10] × [0, 1] を用意する. 以下の問に答えよ. 1. 図形 R の辺 AB = {0}×[0,1] と辺 CD = {10}×[0,1] とを,すべての t ∈ [0,1] に対して点 (0,t) ∈ AB と点 (10,t) ∈ CD とを同一視することで 貼り合せてできる図形を X とする. このとき整係数ホモロジー群 H∗(X, Z) を求めよ. R B(0, 1) A(0, 0) D(10, 0) C(10, 1) 計算 まず連結であることによりH0(X,Z)=Z (基礎事項参照 またF:X×[0,1]→XでF 𝑋, 0 = 𝑖𝑑 𝐹 𝑋, 1 = S 1 でt∈[0,1]を固定しても連続な連続写像が存在するので H1(X,Z)= H1(S 1 ,Z)=Z H2(X,Z)= H2(S 1 ,Z)=0 (基礎事項参照 別証明 図のようにオレンジと赤2つに分けてマイヤーヴィートリスを使って計算する。 別証明 三角分割を行い、定義にしたがって計算を行う。
  • 3. 下図のような図形 R = [0, 10] × [0, 1] を用意する. 以下の問に答えよ. 2図形 R の辺 AB = {0}×[0,1] と辺 CD = {10}×[0,1] とを,すべての t ∈ [0,1] に対して点 (0,t) ∈ AB と点 (10,1−t) ∈ CD とを同一視すること で貼り合せてできる図形を Y とす る.また Y の中で開円板と同相な近傍 をもたない点の全体を Y の境界 ∂Y とする.このと き整係数ホモロジー群 H∗(∂Y, Z) を求めよ. R B(0, 1) A(0, 0) D(10, 0) C(10, 1) 計算 まず連結であることによりH0(X,Z)=Z (基礎事項参照 またF:Y×[0,1]→YでF 𝑌, 0 = 𝑖𝑑 𝐹 𝑌, 1 = S 1 でt∈[0,1]を固定しても連続な連続写像が存在するので H1(Y,Z)= H1(S 1 ,Z)=Z H2(Y,Z)= H2(S 1 ,Z)=0 (基礎事項参照 別証明 図のようにオレンジと赤2つに分けてマイヤーヴィートリスを使って計算する。 別証明 三角分割を行い、定義にしたがって計算を行う。
  • 4. 下図のような図形 R = [0, 10] × [0, 1] を用意する. 以下の問に答えよ. R B(0, 1) A(0, 0) D(10, 0) C(10, 1) 3 (1) の図形 X と (2) の図形 Y とが同相となるかならないかを判定 し,そ の証明を与えよ。 答え ならない 証明 もし同相写像f:Y→Xが存在したとすると、Yの部分空間Y’からXの部分 空間f(Y’)への制限写像も同相である。 (1)はグラフK23を埋め込められないが、(2)には埋め込められる。 (1)に埋め込められないことを見るには、(1)に埋め込められた場合、 (1)を平面に埋め込められることから平面にもグラフK23を埋め込めら れるはずである。そこで5つの頂点の位置を場合分けしてみると平面 には埋め込めないことが示せる。 Y’= K23とすると、f(Y’)は必ず切れている(連結でない)か、単射にする ことは不可能である。これは制限写像の同相性に矛盾(切れてるとデ デキント切断より開集合が𝑓−1 で閉集合へ向かうことになる) K23