古いファイルを整理していたら、ATR社に居た際に社内勉強会として開いていたGIS/位置情報講座の資料が出てきました。 第３回、となってますが第３回は「方角について」でもう公開してるので、４回目をやろうとしてお蔵入りになったのかもしれません。 とりあえずみつけたのでアップロードします。

1. ジオメディアに
おける空間セグ
メントの問題
位置情報・地図・GIS講座３

2. 通常のネットメディア
 あらゆる利用者にとってフラットな情報空間
 空間的距離が情報流通の障害とならない
 空間的距離が利用者数の活況度に影響しない
 2ちゃんねる、mixi、Twitter…

3. ジオメディアの困難
 情報や利用者が空間によってセグメントされ
る。
 情報の偏在があれば、情報の得られない地域、
サービスの利用できない地域が発生する。
 利用者の偏在があれば、サイトの活況度が低
くサービスの魅力が伝わらない地域が発生す
る。

4. 問題事例①
地域掲示板サービス
 2003年頃、携帯のGPS位置情報を元に、その地域
でしか見られない掲示板サービスがいくつか立ち
上がった
 スペースタグ社：どこでも伝言板
 ライブドア社：ライブドアナビゲーション
 結果
 数千～万人単位の利用者がいても、セグメントされ
た各地域ではごくごく限られた人数しかユーザがい
ない
 情報を書き込む人もおらず、閑古鳥が鳴いて相次ぎ
サービス終了

5. 問題事例②
位置ゲー（スタンプラリー系）
 弊ブログ記事（位置ゲーをやってきて感じる難し
さとアドバイス：
http://kokogiko.net/m/archives/002260.html）
より
 モバイルサービスにおいて、関東都市圏ユーザの流
入は4割、残り6割は地方ユーザ
 関東優遇のスタンプエリア配置を行うと、半分以上
のユーザを取りこぼす
 少ないエリア数のまま全国画一のエリアサイズにす
ると、ゲームとして面白くない
 かといって、全国画一でエリアサイズを小さくする
と、膨大なエリア数となりユーザのやる気を削ぐ

6. 問題事例③
実用ツール１
 iPhoneアプリ「最寄りバス停」
 奈良交通のバス時刻表は
皆入っており、非常に
便利で使えるツール
 しかし、時刻表の入って
いない地域のユーザから
酷評

7. どうすればよいのか？
 地域のセグメントが問題にならない方法につ
いて知恵を絞る
 活況度が少ない？より活況に見える演出をすれ
ばよい
 ゲーム要素の地域偏在？偏在しないゲーム要素
を使えばよい
 実用ツールデータの地域偏在？そもそもユーザ
をセグメントしてしまえば…

8. 成功事例①
雑踏モデル
 GPSMAN（ふぇちゅいん氏個人運営）
 2003年頃の位置情報掲示板で、唯一盛り上がったサービス
 ユーザが記事を書き込まなくとも、アクセスするだけでその残像がサ
イト内に一定時間残る
 書き込みがなくともアクセスするユーザはいるのだという活況感が得
られる。（書き込みだけだと、アクセスはあるが誰も書き込まないの
か、本当に誰もいないのか判らない）
 知人がアクセスしているのを見かければ、声をかけてコミュニケー
ションを発生させる事もできる
 周辺の不特定多数に情報を送る（シャウト）機能もある
 結果、活況感が生まれ一定の繁栄を見せる（細々とだが現存するサー
ビス）
 雑踏の中で言葉を交わさなくとも他人を感じ、知人がいれば声をかけ、
不特定多数に大道芸を演じる者もいる…といった雑踏の風景に似てい
るため、雑踏モデルと命名（ヒューマンインタフェース学会2008年第
10号、拙稿「立ち上がるジオメディア」）

9. 成功事例②
位置ゲー（移動距離系）
 コロプラ
 スタンプラリーと比較して、地域格差の少ない「移動距離」
をゲームの主要要素に持ってくる
 移動距離に応じて仮想通貨をユーザは得、それを使って街を
育てる
 スタンプを取りに遠出しなくとも、日常のちょっとした移動
がゲームになる。スタンプラリー要素もあるが飽くまでおま
け要素
 全国でフラットに楽しめ、全国のユーザに支持される
 ケータイ国盗り合戦（スタンプラリー系）が25万人（2009年7
月）⇒68万人（2010年12月）の間に、8万人⇒160万人に躍進
 ケータイ国盗り合戦も、城下町ゲームにおいて移動距離要素
導入

10. 成功事例③
地域セグメントメディア
 最初から特定地域専用のアプリとアピールし、データの
存在しない地域を欲するユーザをシャットアウト
 「じゃらん沖縄」アプリを買って「北海道の情報がない」と
いう人はいない
 ちずぶらり系アプリのユーザ評価差
★3.5 ★3.5
★2.5 ★4.5
★3.5
★2 ★2
★3.5
テーマとして地域セグメント済系 非地域セグメント系
初三郎は美術的価値からの
ユーザセグメントで高評価を
得ている点も考慮すると、
明らかにテーマで地域セグメント
されていない方が評価が低い

11. 考えるべきこと
 ジオメディアの特性を理解し、ユーザターゲッ
トを想定／工夫して、よりよいユーザエクスペ
リエンスを与える／ユーザの支持を得る方法を
常に考える