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2014 年 7 月 9 日
報道関係各位
日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会
医療情報化推進戦略会議
医療・介護・健康情報の抜本的な利活用強化に向けて
前 文
高齢化社会の進展とともに社会保障費は増加を続け、2014 年度は 31 兆円となり過去最
高を更新する見込みである。我が国の社会保障は医療では世界最高水準を維持しており、
介護、福祉、年金も水準自体には大きな問題はないものの、このままではいずれ崩壊すると
されており、サステナビリティの確保が喫緊の課題である。
サステナビリティを維持するためにはサービスの効率化と同時に、サービスレベルや負担
の見直しが必要になるが、そのような議論を行うためには社会保障の透明性の確保が必須
である。どの分野でもサービスの効率向上や透明性を確保するためには、ニーズの正確な把
握、効果の客観的な測定などが必要で、情報処理は欠かせない。
また、公的サービスを補完する健康サービスの成長や医療を支援する機器開発、創薬に
も情報の活用が必須である。医療面での国民的課題は生活習慣病や悪性疾患への対応で
あり、極めて長期にわたる情報分析が欠かせない。
わが国の医療分野への情報機器の導入は世界トップレベルにある。費用の請求など個々
の施設の事務処理向上のために導入されたものが多く、社会としてのニーズや効果判定、施
設を超えた各種分析など、情報利活用は極めて不十分であり、また個々のデータベース
(DB)を連結するための識別子(ID)が存在しない現状では不可能と言える。このような状況
ではサステナビリティを論じることは難しい。
そこで医療・介護・健康情報の抜本的な利活用強化に向けて提言を行う。
政策提言
医療・介護・健康情報の電子化自体は高いレベルにある。しかしその多くは、報酬請求等
の制度に対応するための電子化か、自施設の業務の合理化のための電子化であり、患者・
利用者へ一貫したサービスを提供し、その効果を評価し、あるいは新たな医療機器開発や創
薬に資するための電子化とは言えない。この部分を抜本的に改革する必要がある。
主な課題は、次の 3 点である。
1. 個々の施設を超えて情報を活用可能とするための標準化を実質的に推進させること
2. 施設や研究プロジェクトを超えて正確に情報の主体を識別し、連携するためのマイナン
バー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を導入すること
3. 国民に不安なく情報の利活用を強化するためのプライバシー保護法制を確立すること
報道発表資料
2
1. 個々の施設を超えて情報を活用可能とするための標準化を実質的に推進させること
医療介護情報の標準自体は産学各種団体や厚生労働省・経済産業省等の努力により一
定の進展をみているが、現場のシステムへの導入は遅れていると言わざるを得ない。個々の
施設の利便性のための導入であれば、それほど急ぐ必要はないが、社会保障のサステナビ
リティに寄与するためには網羅的に導入されなければならない。幸いわが国では情報システ
ムの導入率は高いレベルにあり、システムの更新の際に適切な誘導施策をとることで、確実
に進めることは可能性である。しかし更新は 5 年程度毎に行われることが多く、誘導施策は速
やかに開始する必要がある。
2. 施設や研究プロジェクトを超えて正確に情報の主体を識別し、連携するためのマイナン
バー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を導入すること
個人番号法案が成立し、いわゆるマイナンバーの導入は決まったものの、用途が強く制限
されており、見直しも 2018 年に、主に官民連携の観点で行われることになっている。医療・介
護分野は主に民々連携であり、急速に進展する高齢化社会においては、社会保障制度改革
はさらに急ぐ必要がある。マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を導入する
ことが求められる。
3. 国民に不安なく情報の利活用を強化するためのプライバシー保護法制を確立すること
医療・介護・健康情報は極めて機微性の高い情報であり、マイナンバー(医療分野に適用
する連携用符号を含む)の導入やそれに伴う情報の利活用を強化するためには医療・介護・
健康情報において十分にプライバシーが保護される制度整備が必須である。2015 年の通常
国会での個人情報保護法の見直しが行われる予定となっているが、これと併行して医療・介
護・健康分野のプライバシー保護に関する検討を深め、その利活用を実質的に監督する組織
の検討を含め、制度整備を迅速に推進すべきである。
これらの課題を克服することにより、生涯にわたる継続した健康・医療・介護サービスが可
能になり、また正確なニーズに対応した医療機器の開発や創薬が可能になる。また医療安全
面での対策が容易になり、さらに情報のトレーサビリティが確保されることで、自らの情報の
不正利用の防御や監視も容易になることが期待される。
また、NDB(ナショナルデータベース:レセプト情報・特定健診情報等データベース)、
NCDB(全国がんデータベース)をはじめ、最近になって大規模な医療健康情報 DB が構築さ
れているが、これらは個人情報保護上の懸念から個人識別性を下げるために DB 収容時点
で様々なレベルの匿名化処理が行われ、結果としてそれぞれの情報を結合することが不可
能になっている。その一方で医療健康情報の複雑さから完全な匿名化は困難とされている。
有用性を犠牲にして、十分な安全性も達成されていない。プライバシー保護は実際に使用す
るデータセットで評価し達成すべきもので、DB 同士の結合性を保っても十分な対策は可能で
ある。有用性を犠牲にすることのないように是正すべきと考えられ、この点でもマイナンバー
(医療分野に適用する連携用符号を含む)の導入が必要と考える。
期待される効果
3
 「健康・医療情報大規模データベース」を活用した医療安全の徹底
これまで各所で多様に蓄積されていた健康・医療に関するデータを、相互にネットワーク化
して利活用できれば、年間 475 億円と推計されている 75 歳以上の高齢者の薬の飲み残しが
改善され、また、院外処方の約 2%相当、年間約 1,400 万件の重複投薬が適正に処方される
と期待される。広く薬剤の使用実態並びに疾患の自然経過、種々のイベントの発生状況が把
握可能となることで、重要な副作用リスクの監視と評価が高度化され、患者本位の情報提供
と安全な処方が可能になる。
また、大規模データベースの活用により、開発の成功確率の向上と治験の効率化によって
年間 1,000 億円程度の削減が見込まれる。
 「医療トレーサビリティ」の確立による患者の安全・安心の向上
医薬品や医療機器に関する情報のトレーサビリティを高められれば、患者や医薬品等の
取り違えといった医療過誤の防止、効率化による医療事務経費の削減などが期待できる。
また、医薬品の副作用や医療機器の不具合が発生した際に、標準化された共通の情報プ
ラットフォーム上でトレーサビリティ情報を確認できれば、問題の早期発見・特定・追跡による、
正確で迅速な回収・緊急対応が可能となり、患者の安全・安心に貢献できる。
 マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を活用した「健康ポータル」によ
る健康寿命の延伸
マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を用い、いつでも簡単に自分の生
涯にわたる健康診断データ等にアクセスして健康管理に活用できると、誰もが健康長寿に暮
らせるようになる。たとえば、健康診断データを用いた健康指導に取組めば、新たな人工透析
患者を約 20%、全国レベルでは約 7,000 人が新規の患者にならずに済むと期待される。これ
により医療費増加の 350 億円程度を抑制するだけでなく、患者の通院負担も軽減できる。
 マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を活用した「医療保険者へのリア
ルタイム資格確認」による事務負担の軽減
現在、保険資格の資格誤りレセプトによる保険請求によって、医療機関等、審査支払機関、
保険者において返戻や確認等の事務処理負担や請求不能分となる医療費が発生している
が、医療機関等の受付時にリアルタイムで保険資格の確認を行うことにより、これらにかかる
事務処理負担や請求不能分の抑制が可能であり、年間で約 256 億円の削減効果が期待さ
れる。
4
テーマ 「健康・医療情報大規模データベース(大規模 DB)を創薬、医療安全に活用する」
1. 効果
1.1. 医療安全への活用
① 医薬品安全性監視の強化・効率化
 適正使用の実態評価、副作用発生条件の特定、副作用リスクのシグナル評価
② 薬剤有用性評価(真の評価項目によるベネフィット評価)
1.2. 薬剤使用管理と安全な処方
① 重複処方・相互作用チェック
② 残薬管理(削減)年間 400 億円程度の医療費削減効果
③ 類似症例の参照による臨床診断支援
1.3. 創薬・治験の効率化
① 疾患モデルの構築、被験者リクルートの効率化、eClinical Trial 等により
 治験の成功率が改善され 1 製品の上市当り 11.5 億円の削減が見込まれる
 被験者数算出精度の向上、最適化により 1 治験当り 5~15 億円の削減が期待される
② Modeling と Simulation による創薬プロセス改革の進展
③ ドラッグ・リポジショニングの効率化・普及
2. 算出方法(算出条件)
2.1. 薬剤使用管理と安全な処方関連
① 医薬品安全性監視の強化・効率化
 禁忌、慎重投与、相互作用等の(適正使用情報)の実態の評価、副作用発生リスク要因の新た
な特定によるリスク最小化の実施、副作用自発報告等により認められた重要な副作用リスク
Signal(疑い)(例えば薬剤による発がんリスクの増加など)の評価実施
② 薬剤有用性評価
 治験では評価されない長期の有用性(例えば高血圧症患者の脳心イベント等)の評価等
2.2. 薬剤使用管理と安全な処方
① 重複処方・相互作用チェック
 院外処方の約 3%で重複投薬の疑義紹介がされており(調剤報酬において重複投薬・相互作用
防止加算がなされている)その内約 69%で処方が変更されている。これは年間 1,400 万件以上
に相当する。データによる機械的な照合により確実かつ簡便に重複処方による過量投与、相互
作用の防止が可能
② 残薬管理(削減)
 75 歳以上の高齢者の潜在的飲み残しは年間 475 億円と推計されている(2)
。処方箋の電子化、
e-おくすり手帳を含む ICT により服薬コンプライアンス、残薬管理が改善される
2.3. 創薬・治験関連
① 治験の成功率の向上
 大規模 DB を用いた臨床疫学データの充実並びに治験対象群のモデル化等により組み入れ基
準等を改善することで治験の成功確率の向上が見込まれる
 フェーズⅡの成功確率が 10%改善し成功率が 48%となった場合、1 製品の上市当り 11.5 億円
(毎年約 600 億円)が削減される。(新薬の開発費用は承認される新医薬品・効能効果以外に中
止された開発費用も上乗せされるため(1)
)
② 個々の治験のコスト削減
 1 被験者当りのコストは凡そ 500 万円~1,300 万円程度であることから、被験者数を 10~20%
削減できた場合 5~15 億円程度(毎年 500 億円程度)の治験コストの低減が期待される
③ 創薬プロセスの改革
 フェーズⅠにおいて人固有の安全性の理由で中止されることは少なくない(フェーズⅠ~Ⅱ移行
率 73%)。医薬品の物性、構造と毒性の関連について高品質の臨床データならびにバイオロジ
ックデータを用いることにより創薬プロセスの改革に寄与できる
(1) 八木崇他.医薬品開発の期間と費用-アンケートによる実態調査- 医薬産業政策研究所 政策研ニュース No.29. 2010. を再計算した
(2) 「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」報告書
社団法人 日本薬剤師会 平成 20 年 3 月
期待される効果(1)
5
既に多くのデータベースの構築が進んでおり、マイナンバー
(医療分野に適用する連携用符号を含む)の導入と
標準化を進めることにで、より大きな成果が実現可能となる
PHR
EHR
電子カル
テ
HIS
母子手帳
特定保健
指導
がん検診
予防接種
介護保険
総合DB
NDB
DPC
死亡小票
NCD
臨床効果
DB
全国がん
登録
大規模ゲ
ノムコホート
難病患者
DB
MID・NET
△ △ ○ ○ △ ○ ● ● ● ○ △ △ △
◎ ○ ● ◎ ● ● ● ◎ ◎
難病、アンメッド・メディカルニーズ ○ ○ ○ ● ● ● △ ◎ ●
認知症,アルツハイマー,リウマチ等のADL 評価 ◎ ● ● ◎ ◎ △
 癌 △ △ ◎ ● ● ● ○ ○ ● ◎
生活習慣病等の長期 イベント評価 ○ ◎ ○ ● ● ● △
製薬企業等による
利活用目的と使用するDB
●:必須 ◎:重要 ○:要 △:場合に応じ
医薬品安全監視 ベネフィット・リスク評価全般
治験の効率化・活性化 (EDC、リクルート、MBD等)
特
定
領
域
黄色:共通番号による
突合が必要
リスク集団の特定
評価の難しい 副作用
の特定と検討
日本の安全対策の強化と世界への貢献日本の医薬品産業の開発力の強化
次世代審査治験データ蓄積
eClinical Trials
被験者リクルート
の効率化
民族差検討の補強
疾患モデルの構築
Model Based Drug
Development
より成功確率の高い試験計画
定量的な意思決定
医療ニーズの把握
経済評価
個別化医療への道
安全性
有効性
のモデル化
大規模DBネットワーク
データの2次利用のための
• 法整備(米国HIPAA法参照)
• 標準化、接続、利活用を審査する
機関の設置
• 共通番号導入
薬剤疫学的研究
自発報告
製造販売後調査
モ デ ル の 利 用
バイオマーカー
PK/PDモデル
試験実施モデル
Modeling & Simulations
省力化,高品質化
✔グローバル開発の中での競争力強化(開発の迅速化,成功確率向上)
✔日本初の革新的新薬創出
✔市場を世界に拡大 (国内医療費を抑えながら成長産業に)
✔国民の安全を守る
✔医療の質向上に貢献
✔市場撤退リスクの軽減
攻めの
スパイラル
医師主導 臨床研究
適正使用確保措置
の有用性判定
安全性・有効性の
更なる拡充
EDC
電子カルテ等からE2Eで
エピゲノム
HER
PHR
マイポータル
少数の医療機関
からの情報
PPDA
複数医療機関からのデータ交換を可能にする技術
仮名化
Data Analysis (プライバシ保護データ分析)
仮名化
大規模ゲノムコホート
遺伝子情報
2
PHR
EHR
電子カル
テ
HIS
母子手帳
特定保健
指導
がん検診
予防接種
介護保険
総合DB
NDB
DPC
死亡小票
NCD
臨床効果
DB
全国がん
登録
大規模ゲ
ノムコホート
難病患者
DB
MID・NET
△ △ ○ ○ △ ○ ● ● ● ○ △ △ △
◎ ○ ● ◎ ● ● ● ◎ ◎
難病、アンメッド・メディカルニーズ ○ ○ ○ ● ● ● △ ◎ ●
認知症,アルツハイマー,リウマチ等のADL 評価 ◎ ● ● ◎ ◎ △
 癌 △ △ ◎ ● ● ● ○ ○ ● ◎
生活習慣病等の長期 イベント評価 ○ ◎ ○ ● ● ● △
製薬企業等による
利活用目的と使用するDB
●:必須 ◎:重要 ○:要 △:場合に応じ
医薬品安全監視 ベネフィット・リスク評価全般
治験の効率化・活性化 (EDC、リクルート、MBD等)
特
定
領
域
黄色:共通番号による
突合が必要
 データ登録労力軽減
 データの信頼性、網羅性、精度の向上
 データの蓄積・流通に対する信頼・安心
 信頼性の高い連携医療データの診療への活用
 患者、国民への還元拡大
 研究の活性化、スピードアップ
• ベストプラクティスの抽出、治療の標準化・改善
• 革新的診断・治療方法の確立
• 医療・介護の質の向上
患者・住民
中心の医療
介護事業者
○
○
医
院
かかりつけ医
高度先進
医療機関 地域病院 薬局
かかりつけ
保険等DB
特定健診
特定保健指導
医療レセプト
介護レセプト
要介護認定情報
日常生活圏域
ニーズ調査
医療等現場・データ提供者
行為
情報
目的別DB
死亡小票
全国がん登録
大規模ゲノム
コホート
MID-NET
難病患者DB
NCD臨床効果DB
DPC
テーラーメイド
医療
介護・医療関連
情報の見える化
医療アクセス
の改善
行政等のDB構築本来目的の達成に必要な制度
①共通番号(個人識別子)と情報標準化
②医療健康情報の蓄積・流通、管理と利活用の
統一的ルール
③Index Server、標準化、連携と利活用の審査管理機関
PDCA
立案
運営
評価
改善
地域情報プラットフォーム
EHR、PHR、e-処方せん、e-おくすり手帳
保険者・自治体
健康増進、医療費効率化施策立案/運営/評価
行政機関
データヘルス
計画の実現
行
為
情
報
多
い
診
断
・成
績
情
報
多
い
+
構築予定を含む主なDBの本来目的のためにあるべき姿と利活用
 医薬品等の安全対策・研究開発
共通番号、連携
ルールがない
• 既に多くのDBがある
(構築中)
• 各々独立しており標
準化、連携されていな
い
 多くのDBに重複してデータ
登録必要、負担増大
 得られるデータは限定的、信
頼性、網羅性、精度が低い。
 政策の評価改善不十分
 患者、国民への還元少ない
 開発投資分野が不明確
診断、成績
転帰
現 状
6
テーマ 「患者の安全・安心に向けた医療トレーサビリティの確立」
1. 日本における医療トレーサビリティの取組み
医療分野におけるトレーサビリティ(以下、「医療トレーサビリティ」とする。)は、複雑な流通経路を通って
製品を手にする患者・利用者に対する積極的な情報開示であり、患者の知る権利を保障すると共に、医療
サービス提供者の責任を明確にするものである。
医療トレーサビリティは、「患者の安全・安心」を第一の目的とするが、物流の効率化・高度化、医療事
務の効率化などにより、年々増加を続ける医療・介護に関する費用の負担を軽減する効果も期待されて
いる。
我が国においても、厚生労働省および医療関係者の協力により、医療トレーサビリティの制度化が進め
られてきた。平成 17 年の改正薬事法では、高度管理医療機器、生物由来製品(ヒトや動物を原料とする医
薬品、医療材料)に関して、トレーサビリティ管理を義務化し、バーコード体系をヘルスケア業界の世界標
準である GS1-128 へ統一した。平成 19 年 6 月には、「規制改革推進のための 3 か年計画」が閣議決定
され、その中で医薬品・医療材料へのバーコード表示の推進が求められたことを踏まえ、医薬品に続いて、
医薬機器等についても厚生労働省からバーコード表示のための基準が通知された。
「医療機器等における情報化進捗状況調査」の結果(平成 25 年 3 月公開)によれば、JAN コード(JIS
規格化された共通商品コード)の取得状況は、医療機器全体で 99%、消耗材料 97%、体外診断用医薬品
100%となり、MEDIS-DC データベース(医療機器データベース)の登録状況は、医療機器全体で 80%、
消耗材料 65%、体外診断用医薬品 66%まで進んでいる。バーコード(GS1-128)表示状況も、販売(包装)
単位では、医療機器で 98%、消耗材料 88%、体外診断用医薬品はほぼ 100%で、個装(最少包装)単位
の表示割合も、医療機器で 81%、体外診断用医薬品で 92%となっている。
このように、製品識別コードの登録やバーコードの表示等が進んだことを踏まえて、今後は、これらのデ
ータを医療機関の現場のみならず、流通・販売・在庫管理等においても積極的に活用し、医療トレーサビリ
ティの精度と利便性を向上させることで、さらなる患者の安全・安心に向けた具体的な成果を上げていくこ
とが求められる。
2. 医療トレーサビリティのメリット
医療トレーサビリティのメリットを受けるのは、第一に患者自身である。特に重要なのが「患者の安全・安
心の確保」であり、「臨床現場の三点照合システム(下図)」により、モノ(医薬品、医療機器、消耗材料等)
だけでなく、ヒト(医療従事者、患者、利用者)も含めてデータ管理することで、患者や医薬品等の取り違え
といった医療過誤の未然防止を実現できる。
医療トレーサビリティは、患者のみならず、医療機関、調剤薬局、卸売業、製造業、行政機関など多くの
関係者にもメリットをもたらす。
製造業・卸売業・病院調剤薬局において、医薬品や医療機器に対するトレーサビリティ管理が実施され
ることで、医薬品の副作用や医療機器の不具合が発生した際の発見・特定・追跡が容易となり、正確で迅
速な回収・緊急対応が可能になる。トレーサビリティ管理を、標準化された共通の情報プラットフォーム上
で実施すれば、さらなる回収コストの軽減も期待できる。行政・規制当局においても、国民に対して、副作
用医薬品や不具合医療機器等について、より正確な情報を迅速に提供できるようになる。
期待される効果(2)
7
3. 医療トレーサビリティの範囲
本提言で取り扱う医療トレーサビリティの範囲は、メーカーによる医薬品、医療機器、消耗材料等の製
造から、最終消費者である患者への投薬・販売まで(下図太字部分)とする。ただし、健康ポータル、電子
処方箋、電子お薬手帳、医療ビッグデータの分析・活用など、他の関連サービスや事業との連携について
も考慮する必要がある。
行政 製造業 卸売業 医療機関 介護施設 調剤薬局 患者
認可
情報提供
製造
出荷
保管
販売
出荷
購入、保管
利用、処置
処方、投薬
購入、保管
利用、投薬
購入、保管
調合
販売
購入
服用
4. 医療トレーサビリティの確立に向けた提言
当協議会での検討結果を踏まえて、次の 3 点を提言する。
① 医療トレーサビリティの実現に欠かせない、医療分野の 5W1H(どこで、いつ、誰が・誰に、何を、
どうする・どうした)のデータを記録・保存し、関係者が共同で利用できる「医療トレーサビリティ情
報管理プラットフォーム(仮称)」を、医療・介護関係者の協力の下で、国が中心となって早期に
構築する(3)
。
② 全国の医療機関、調剤薬局、介護施設、医薬品・医療機器等の製造業、流通業、卸売業に国際
標準の「事業所・場所識別番号(GLN)」(4)
を付番する制度を導入する。また、全ての医療用医薬
品、医療機器、消耗部材等の調剤包装単位(または使用単位)識別のために、製品コード表示と
バーコード表示を法令で義務化すると共に、流通業者や医療機関・薬局等にもトレーサビリティ
情報の登録を義務づけていく。
③ 上記①および②の実現に向けて必要となる、技術および制度面における統一化・標準化を推進
する。
図 : 医療トレーサビリティ情報管理プラットフォーム(仮称)
製品の流れ
患者の安全・安心に向けた医療トレーサビリティの確立
 患者に常に安全性の高い医薬サービスを提供できるよう、医薬品、医療機器、消耗材料等
の正確なロット管理や、生産から消費(患者に投与)まで、いつでも追跡(トレース)できる。
 自主回収や副作用報告があった医薬品、医療機器、消耗材料等の製造元、流通工程を即
時に追跡し、正確で迅速な回収・緊急対応ができる。
医療トレーサビリティ情報管理プラットフォーム
製造工場
★… タグ、バーコード など トレーサビリティ情報
患者の安全
・安心の確保
医薬品・医療機器、
消耗材料等をすべ
ての過程で正確に
把握
卸売・問屋 医療機関
患者
医師
調剤薬局
薬剤師
患者
★
★ ★★
★
★
登録
健康ポータル
確認 確認
電子お薬手帳
電子処方箋
ビッグデータ分析
確認 登録 登録
確認
登録
医療機器
DB
追跡(トラッキング)
遡及(トレースバック)
(3) 近年、欧州・米国・トルコなどにおいて、医療用医薬品等に対する製品識別の表示とデータベース登録(規制当局管轄)の義務化が進展し
ており、日本の医療産業の国際化に向けた取り組みとしても、製品の追跡・遡及を管理する医療トレーサビリティの実現が急務と言える。
(4) 国内および国際間取引において相互に企業や事業所等を識別するための国際標準の企業・事業所識別コードとして、GS1 が制定するグ
ローバルロケーション番号(GLN:Global Location Number)がある。中医協が提案する、患者がより利用しやすい「主治医制度」を実現
する際にも、主治医機能を担う中小病院・診療所と、それを後方で支える中核病院・専門病院の場所・事業所識別が有用である。
8
テーマ 「健康ポータルを活用した地域社会での健康管理」
1. 健康ポータルの構成イメージ
健康ポータルは基礎自治体が共同で利用できるシステムであり、国民が、自身の医療情報や健康情報
へアクセスする窓口になる。利用者の認証に必要なアクセスキーの発行、認証サーバーへの登録などの
業務は基礎自治体が行う。
各種機関ならびに民間事業者は、健康ポータルの利用者認証機能を利用して、各種情報やサービスを、
健康ポータルを通して提供する。また、各種機関ならびに民間事業者は、利用者の許諾のもと、健康ポー
タルのデータへアクセスすることも可能である。
2. 健康ポータルのメリット
行政機関、健康保険、製薬企業、薬局、民間事業者等と連携した健康ポータルを整備することで、国民
の健康増進に寄与する。
① 健康保険からの健診・特定健診情報の配信、および受診指導を通して受診率が向上する。また、
きめの細かい生活改善指導が行えるようなる。
② 行政機関からの発せられる健康改善に役立つ地域スポーツイベント情報、健康増進啓蒙活動情
報を住民の健康状況に合わせて的確に提供する。
③ 薬局でのお薬手帳の電子化とともに、服用指導、薬の飲み合わせ、副作用情報を住民に的確に
提供することで、薬を安心して服用できるようになる。
④ 製薬企業からは、副作用の発生や回収薬の情報を、当該薬を服用している住民に直接通知する
ことができ、対象者に確実に情報を伝搬させることで、さらなる副作用・事故を未然に防止できる。
⑤ 民間サービス事業者からの情報提供を認めることで、住民は様々なサービスを受けることができ
る。また民間活力を生かした新産業の創出にもつながる。
 健診データ、ヘルスケア情報、運動量情報の解析を基にした、最適な運動、スポーツのメニュー
の提案
 健診データ、ヘルスケア情報、運動量情報、食事データの解析を基にした、住民の体調や健康
状態にあった、食事メニュー、健康補助食品、サプリメントの提案
 医療機関からの診察情報や薬局からの処方情報、住民の服用履歴を監視することで、薬の飲
み忘れ、飲みすぎのアラームを提供
 医療機関からの診察情報やリハビリ施設などからの情報を基に、最適な介護サービスを提供
3. 健康ポータルの効果
健康ポータルを活用した場合の経済効果の一例を示す。
① 兵庫県尼崎市では、健診データを活用した指導を住民に行ったところ、平成 18 年度から 21 年度
にかけて新規人工透析患者を約 20%減少した。全国規模で、健康ポータルを活用することで、全
国で毎年 3 万 5,000 人を超える新規人工透析患者のうち、7,000 人程度削減できることが期待さ
れ、医療費の増加を 350 億円削減するだけでなく、患者の通院負担、医療機関の処置負担も大き
く削減することができる。
② 上では、1 つの疾患に関しての医療費削減効果を示したが、他の疾患についても全国民レベルで
健康ポータルを活用することで、医療費が削減される。
4. 健康ポータルの整備
4.1. 現状と課題
【現状】
 地域住民の健康増進を目的とした健康ポータルは、先進的な自治体では整備は始まりつつある。
また、健康保険組合、国民健康保険でも同様なサービス提供を目的としたシステムの整備が始
まりつつある。
【課題 1】
 しかしながら、それぞれの団体が個別に整備しているのが現状であり、他の団体で効果を上げ
ている取り組みを全国規模へ迅速に展開するのは困難である。
期待される効果(3)
9
【課題 2】
 また自治体間でのデータの送受信などは考慮されていないため、500 万人(5)
を超える転出入者
は十分なサービスを受けることができない。
4.2. 整備
 各団体で整備している(今後整備する)健康ポータルに共通で利用できる認証システムを整備す
る。認証システムにおいて、利用者の認証に必要なアクセスキーの発行、認証サーバーへの登
録などの業務は基礎自治体が行う体制を整備する。
 認証システムの整備後、各団体が整備している(今後整備する)健康ポータルを認証サーバー
化に結合し、利用者が住居や健保・国保間を移動しても、同一の窓口(ポータル)から同様のサ
ービスを継続して受けられるようにする。
健 康ポ ー タ ル
A県
健 康ポ ー タ ル
B市
健 康ポ ー タ ル
C市
健 康ポ ー タ ル
D町
認 証 シ ス テ ム
健康ポータルを活用した地域社会での健康管理
健康ポータル
行政機関
製薬企業
薬局
健康保険
民間サービス事業者
副作用情報
認証システム
ユーザー認証
(5) 住民基本台帳人口移動報告(2013 年)の都道府県内移動者数 2,713,676 人と都道府県間移動者数 2,301,895 人の合計より算出。
現状の健康ポータル 認証サーバの整備
10
テーマ 「健保・国保の保険証など資格の有無を確認」
1. 効果
現在、被保険者が医療機関等窓口にて古い証を提示する等の理由により資格関係の情報に誤りのあ
るレセプト(以下、資格関係誤りレセプト)が発生した場合、それらの誤りは審査支払機関もしくは保険者に
よる確認によって判明する。
資格関係誤りレセプトは、請求した 1~3 ヶ月後に医療機関に返戻され、医療機関から被保険者に正し
い請求先を確認したのちに、再度審査支払機関に請求される。ただし、被保険者と連絡が取れないケース
においては、レセプトが請求不能となることもある。
資格関係誤りレセプトの発生原因は、「月の途中の資格関係などの変更」や「カルテ又はレセプトの作成
誤り」、「受診時の証の未提示」の理由が、全体の約 95%を占める(6)
。これらの原因は、受診毎に医療機
関等の窓口においてリアルタイムに資格の確認を行い、確認された資格情報をレセプトに自動転記するこ
とで防ぐことが可能となる。
1.1. 主な効果
資格確認による効果は、『第 12 回 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(平成 21 年 3 月 6
日)』や、月刊基金(平成 25 年 9 月号)等を基に試算した結果、1 年あたり約 256 億円となる。
【試算結果】
項番 受益者 年間の効果
1 医療機関等 136 億円/年
2 保険者 113 億円/年
3 審査支払機関 7 億円/年
合 計 256 億円/年
1.2. 副次的な効果
審査支払機関や保険者において資格確認の作業が軽減されるため、人的リソースを有効活用すること
が可能となる。人的リソースを有効活用することで、事務作業や審査の質の向上が見込まれる。
また、医療機関において、1~3 カ月前に受診した被保険者に対して正しい資格情報を問い合わせるこ
とは窓口担当者の精神的な負担が大きく(患者の理解を得るのが難しい、病院の名を騙った不審な連絡と
思われる、など)、それらの負担の軽減も見込まれる。
2. 算出方法(算出条件) (※算出方法の詳細は参考資料を参照)
医療機関等と保険者の効果は、『第 12 回 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(平成 21 年
3 月 6 日)』(以下、検討会)で提示された資料(7)
をベースとした。
ただし、検討会当時に比べてレセプトの総数が増加していること、また、平成 23 年 10 月から社会保険
診療報酬支払基金において「オンラインによる請求前の資格確認」(以下、請求前資格確認)が開始され
ており、検討会当時に比べて保険者における資格関係誤りレセプトの受付件数が減少していることを踏ま
え、再算出した。なお、レセプトの電子化による事務作業への影響は、事務作業の増減量が不明のため本
試算では考慮していない。
審査支払機関の効果は、資格関係誤りレセプトの総件数と、1 件あたりの作業時間を基に算出した。
期待される効果(4)
(6) 出典:月刊基金(平成 25 年 9 月号)
(7) 出典:第12回 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0306-6.html
資料2「検討メモ」(訂正後)および資料3「医療保険資格の確認業務及び諸外国の動向についての調査結果の概要」(訂正後)
11
3. マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)が活用される個所
共通番号を活用する箇所を図 1 に示す。
図 1 マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)の活用イメージ
医療機関
初診時
再診時
の喪失
医療機関
・
初診時
・
の
再診時
に個人番号カード
を利用する
の喪失
に個人番号カード
を利用する
また、資格確認システムの想定システム構成図を図 2 に示す。
図 2 資格確認システムの想定システム構成図
医 療 機 関 等
マイナンバー情報連携
保 険 者 等
診療所
共通番号
紐付
カルテ番号 b
資格DB(仮称)
情報提供ネットワーク
医療 の の の の に を
属性情報
(氏名 等)
共通番号
紐付
カルテ番号 c 属性情報
(氏名 等)
薬局
紐付
記号番号 イ 属性情報
(資格/給付情報 等)
市町村
紐付
記号番号 ロ
紐付
記号番号 ハ
健康保険組合
協会けんぽ
病院
共通番号
紐付
カルテ番号 a 属性情報
(氏名 等)
号番号
共通番号
共通番号
共通番号
属性情報
(資格/給付情報 等)
属性情報
(資格/給付情報 等)
【リアルタイムでの資格確認】
医療機関等から共通番号をもとに、資格DBへ問い合わせる。
資格DBに登録されている保険者番号+記号番号をもとに、
資格DBが該当する保険者へ問い合わせる
保険者は結果を資格DB経由で返却する。
号番号
喪失
・
・・
号番号
医療機関
共通番号 共通番号
確認結果
番号
番号
番号
・・
・
【資格の異動】
旧保険者は資格DBへ共通番号と資格喪失情報を送信する。資格
DBは共通番号をもとに、当該資格情報を更新する。(喪失)
新保険者は資格DBへ共通番号と資格取得情報を送信する。資格
DBは共通番号をもとに、当該資格情報を更新する。(取得)
確認結果
喪失情報(共通番号)DB更新
DB更新 喪失情報(共通番号)

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医療・介護・健康情報の抜本的な利活用強化に向けて

  • 1. 1 2014 年 7 月 9 日 報道関係各位 日本ユーザビリティ医療情報化推進協議会 医療情報化推進戦略会議 医療・介護・健康情報の抜本的な利活用強化に向けて 前 文 高齢化社会の進展とともに社会保障費は増加を続け、2014 年度は 31 兆円となり過去最 高を更新する見込みである。我が国の社会保障は医療では世界最高水準を維持しており、 介護、福祉、年金も水準自体には大きな問題はないものの、このままではいずれ崩壊すると されており、サステナビリティの確保が喫緊の課題である。 サステナビリティを維持するためにはサービスの効率化と同時に、サービスレベルや負担 の見直しが必要になるが、そのような議論を行うためには社会保障の透明性の確保が必須 である。どの分野でもサービスの効率向上や透明性を確保するためには、ニーズの正確な把 握、効果の客観的な測定などが必要で、情報処理は欠かせない。 また、公的サービスを補完する健康サービスの成長や医療を支援する機器開発、創薬に も情報の活用が必須である。医療面での国民的課題は生活習慣病や悪性疾患への対応で あり、極めて長期にわたる情報分析が欠かせない。 わが国の医療分野への情報機器の導入は世界トップレベルにある。費用の請求など個々 の施設の事務処理向上のために導入されたものが多く、社会としてのニーズや効果判定、施 設を超えた各種分析など、情報利活用は極めて不十分であり、また個々のデータベース (DB)を連結するための識別子(ID)が存在しない現状では不可能と言える。このような状況 ではサステナビリティを論じることは難しい。 そこで医療・介護・健康情報の抜本的な利活用強化に向けて提言を行う。 政策提言 医療・介護・健康情報の電子化自体は高いレベルにある。しかしその多くは、報酬請求等 の制度に対応するための電子化か、自施設の業務の合理化のための電子化であり、患者・ 利用者へ一貫したサービスを提供し、その効果を評価し、あるいは新たな医療機器開発や創 薬に資するための電子化とは言えない。この部分を抜本的に改革する必要がある。 主な課題は、次の 3 点である。 1. 個々の施設を超えて情報を活用可能とするための標準化を実質的に推進させること 2. 施設や研究プロジェクトを超えて正確に情報の主体を識別し、連携するためのマイナン バー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を導入すること 3. 国民に不安なく情報の利活用を強化するためのプライバシー保護法制を確立すること 報道発表資料
  • 2. 2 1. 個々の施設を超えて情報を活用可能とするための標準化を実質的に推進させること 医療介護情報の標準自体は産学各種団体や厚生労働省・経済産業省等の努力により一 定の進展をみているが、現場のシステムへの導入は遅れていると言わざるを得ない。個々の 施設の利便性のための導入であれば、それほど急ぐ必要はないが、社会保障のサステナビ リティに寄与するためには網羅的に導入されなければならない。幸いわが国では情報システ ムの導入率は高いレベルにあり、システムの更新の際に適切な誘導施策をとることで、確実 に進めることは可能性である。しかし更新は 5 年程度毎に行われることが多く、誘導施策は速 やかに開始する必要がある。 2. 施設や研究プロジェクトを超えて正確に情報の主体を識別し、連携するためのマイナン バー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を導入すること 個人番号法案が成立し、いわゆるマイナンバーの導入は決まったものの、用途が強く制限 されており、見直しも 2018 年に、主に官民連携の観点で行われることになっている。医療・介 護分野は主に民々連携であり、急速に進展する高齢化社会においては、社会保障制度改革 はさらに急ぐ必要がある。マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を導入する ことが求められる。 3. 国民に不安なく情報の利活用を強化するためのプライバシー保護法制を確立すること 医療・介護・健康情報は極めて機微性の高い情報であり、マイナンバー(医療分野に適用 する連携用符号を含む)の導入やそれに伴う情報の利活用を強化するためには医療・介護・ 健康情報において十分にプライバシーが保護される制度整備が必須である。2015 年の通常 国会での個人情報保護法の見直しが行われる予定となっているが、これと併行して医療・介 護・健康分野のプライバシー保護に関する検討を深め、その利活用を実質的に監督する組織 の検討を含め、制度整備を迅速に推進すべきである。 これらの課題を克服することにより、生涯にわたる継続した健康・医療・介護サービスが可 能になり、また正確なニーズに対応した医療機器の開発や創薬が可能になる。また医療安全 面での対策が容易になり、さらに情報のトレーサビリティが確保されることで、自らの情報の 不正利用の防御や監視も容易になることが期待される。 また、NDB(ナショナルデータベース:レセプト情報・特定健診情報等データベース)、 NCDB(全国がんデータベース)をはじめ、最近になって大規模な医療健康情報 DB が構築さ れているが、これらは個人情報保護上の懸念から個人識別性を下げるために DB 収容時点 で様々なレベルの匿名化処理が行われ、結果としてそれぞれの情報を結合することが不可 能になっている。その一方で医療健康情報の複雑さから完全な匿名化は困難とされている。 有用性を犠牲にして、十分な安全性も達成されていない。プライバシー保護は実際に使用す るデータセットで評価し達成すべきもので、DB 同士の結合性を保っても十分な対策は可能で ある。有用性を犠牲にすることのないように是正すべきと考えられ、この点でもマイナンバー (医療分野に適用する連携用符号を含む)の導入が必要と考える。 期待される効果
  • 3. 3  「健康・医療情報大規模データベース」を活用した医療安全の徹底 これまで各所で多様に蓄積されていた健康・医療に関するデータを、相互にネットワーク化 して利活用できれば、年間 475 億円と推計されている 75 歳以上の高齢者の薬の飲み残しが 改善され、また、院外処方の約 2%相当、年間約 1,400 万件の重複投薬が適正に処方される と期待される。広く薬剤の使用実態並びに疾患の自然経過、種々のイベントの発生状況が把 握可能となることで、重要な副作用リスクの監視と評価が高度化され、患者本位の情報提供 と安全な処方が可能になる。 また、大規模データベースの活用により、開発の成功確率の向上と治験の効率化によって 年間 1,000 億円程度の削減が見込まれる。  「医療トレーサビリティ」の確立による患者の安全・安心の向上 医薬品や医療機器に関する情報のトレーサビリティを高められれば、患者や医薬品等の 取り違えといった医療過誤の防止、効率化による医療事務経費の削減などが期待できる。 また、医薬品の副作用や医療機器の不具合が発生した際に、標準化された共通の情報プ ラットフォーム上でトレーサビリティ情報を確認できれば、問題の早期発見・特定・追跡による、 正確で迅速な回収・緊急対応が可能となり、患者の安全・安心に貢献できる。  マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を活用した「健康ポータル」によ る健康寿命の延伸 マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を用い、いつでも簡単に自分の生 涯にわたる健康診断データ等にアクセスして健康管理に活用できると、誰もが健康長寿に暮 らせるようになる。たとえば、健康診断データを用いた健康指導に取組めば、新たな人工透析 患者を約 20%、全国レベルでは約 7,000 人が新規の患者にならずに済むと期待される。これ により医療費増加の 350 億円程度を抑制するだけでなく、患者の通院負担も軽減できる。  マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)を活用した「医療保険者へのリア ルタイム資格確認」による事務負担の軽減 現在、保険資格の資格誤りレセプトによる保険請求によって、医療機関等、審査支払機関、 保険者において返戻や確認等の事務処理負担や請求不能分となる医療費が発生している が、医療機関等の受付時にリアルタイムで保険資格の確認を行うことにより、これらにかかる 事務処理負担や請求不能分の抑制が可能であり、年間で約 256 億円の削減効果が期待さ れる。
  • 4. 4 テーマ 「健康・医療情報大規模データベース(大規模 DB)を創薬、医療安全に活用する」 1. 効果 1.1. 医療安全への活用 ① 医薬品安全性監視の強化・効率化  適正使用の実態評価、副作用発生条件の特定、副作用リスクのシグナル評価 ② 薬剤有用性評価(真の評価項目によるベネフィット評価) 1.2. 薬剤使用管理と安全な処方 ① 重複処方・相互作用チェック ② 残薬管理(削減)年間 400 億円程度の医療費削減効果 ③ 類似症例の参照による臨床診断支援 1.3. 創薬・治験の効率化 ① 疾患モデルの構築、被験者リクルートの効率化、eClinical Trial 等により  治験の成功率が改善され 1 製品の上市当り 11.5 億円の削減が見込まれる  被験者数算出精度の向上、最適化により 1 治験当り 5~15 億円の削減が期待される ② Modeling と Simulation による創薬プロセス改革の進展 ③ ドラッグ・リポジショニングの効率化・普及 2. 算出方法(算出条件) 2.1. 薬剤使用管理と安全な処方関連 ① 医薬品安全性監視の強化・効率化  禁忌、慎重投与、相互作用等の(適正使用情報)の実態の評価、副作用発生リスク要因の新た な特定によるリスク最小化の実施、副作用自発報告等により認められた重要な副作用リスク Signal(疑い)(例えば薬剤による発がんリスクの増加など)の評価実施 ② 薬剤有用性評価  治験では評価されない長期の有用性(例えば高血圧症患者の脳心イベント等)の評価等 2.2. 薬剤使用管理と安全な処方 ① 重複処方・相互作用チェック  院外処方の約 3%で重複投薬の疑義紹介がされており(調剤報酬において重複投薬・相互作用 防止加算がなされている)その内約 69%で処方が変更されている。これは年間 1,400 万件以上 に相当する。データによる機械的な照合により確実かつ簡便に重複処方による過量投与、相互 作用の防止が可能 ② 残薬管理(削減)  75 歳以上の高齢者の潜在的飲み残しは年間 475 億円と推計されている(2) 。処方箋の電子化、 e-おくすり手帳を含む ICT により服薬コンプライアンス、残薬管理が改善される 2.3. 創薬・治験関連 ① 治験の成功率の向上  大規模 DB を用いた臨床疫学データの充実並びに治験対象群のモデル化等により組み入れ基 準等を改善することで治験の成功確率の向上が見込まれる  フェーズⅡの成功確率が 10%改善し成功率が 48%となった場合、1 製品の上市当り 11.5 億円 (毎年約 600 億円)が削減される。(新薬の開発費用は承認される新医薬品・効能効果以外に中 止された開発費用も上乗せされるため(1) ) ② 個々の治験のコスト削減  1 被験者当りのコストは凡そ 500 万円~1,300 万円程度であることから、被験者数を 10~20% 削減できた場合 5~15 億円程度(毎年 500 億円程度)の治験コストの低減が期待される ③ 創薬プロセスの改革  フェーズⅠにおいて人固有の安全性の理由で中止されることは少なくない(フェーズⅠ~Ⅱ移行 率 73%)。医薬品の物性、構造と毒性の関連について高品質の臨床データならびにバイオロジ ックデータを用いることにより創薬プロセスの改革に寄与できる (1) 八木崇他.医薬品開発の期間と費用-アンケートによる実態調査- 医薬産業政策研究所 政策研ニュース No.29. 2010. を再計算した (2) 「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」報告書 社団法人 日本薬剤師会 平成 20 年 3 月 期待される効果(1)
  • 5. 5 既に多くのデータベースの構築が進んでおり、マイナンバー (医療分野に適用する連携用符号を含む)の導入と 標準化を進めることにで、より大きな成果が実現可能となる PHR EHR 電子カル テ HIS 母子手帳 特定保健 指導 がん検診 予防接種 介護保険 総合DB NDB DPC 死亡小票 NCD 臨床効果 DB 全国がん 登録 大規模ゲ ノムコホート 難病患者 DB MID・NET △ △ ○ ○ △ ○ ● ● ● ○ △ △ △ ◎ ○ ● ◎ ● ● ● ◎ ◎ 難病、アンメッド・メディカルニーズ ○ ○ ○ ● ● ● △ ◎ ● 認知症,アルツハイマー,リウマチ等のADL 評価 ◎ ● ● ◎ ◎ △  癌 △ △ ◎ ● ● ● ○ ○ ● ◎ 生活習慣病等の長期 イベント評価 ○ ◎ ○ ● ● ● △ 製薬企業等による 利活用目的と使用するDB ●:必須 ◎:重要 ○:要 △:場合に応じ 医薬品安全監視 ベネフィット・リスク評価全般 治験の効率化・活性化 (EDC、リクルート、MBD等) 特 定 領 域 黄色:共通番号による 突合が必要 リスク集団の特定 評価の難しい 副作用 の特定と検討 日本の安全対策の強化と世界への貢献日本の医薬品産業の開発力の強化 次世代審査治験データ蓄積 eClinical Trials 被験者リクルート の効率化 民族差検討の補強 疾患モデルの構築 Model Based Drug Development より成功確率の高い試験計画 定量的な意思決定 医療ニーズの把握 経済評価 個別化医療への道 安全性 有効性 のモデル化 大規模DBネットワーク データの2次利用のための • 法整備(米国HIPAA法参照) • 標準化、接続、利活用を審査する 機関の設置 • 共通番号導入 薬剤疫学的研究 自発報告 製造販売後調査 モ デ ル の 利 用 バイオマーカー PK/PDモデル 試験実施モデル Modeling & Simulations 省力化,高品質化 ✔グローバル開発の中での競争力強化(開発の迅速化,成功確率向上) ✔日本初の革新的新薬創出 ✔市場を世界に拡大 (国内医療費を抑えながら成長産業に) ✔国民の安全を守る ✔医療の質向上に貢献 ✔市場撤退リスクの軽減 攻めの スパイラル 医師主導 臨床研究 適正使用確保措置 の有用性判定 安全性・有効性の 更なる拡充 EDC 電子カルテ等からE2Eで エピゲノム HER PHR マイポータル 少数の医療機関 からの情報 PPDA 複数医療機関からのデータ交換を可能にする技術 仮名化 Data Analysis (プライバシ保護データ分析) 仮名化 大規模ゲノムコホート 遺伝子情報 2 PHR EHR 電子カル テ HIS 母子手帳 特定保健 指導 がん検診 予防接種 介護保険 総合DB NDB DPC 死亡小票 NCD 臨床効果 DB 全国がん 登録 大規模ゲ ノムコホート 難病患者 DB MID・NET △ △ ○ ○ △ ○ ● ● ● ○ △ △ △ ◎ ○ ● ◎ ● ● ● ◎ ◎ 難病、アンメッド・メディカルニーズ ○ ○ ○ ● ● ● △ ◎ ● 認知症,アルツハイマー,リウマチ等のADL 評価 ◎ ● ● ◎ ◎ △  癌 △ △ ◎ ● ● ● ○ ○ ● ◎ 生活習慣病等の長期 イベント評価 ○ ◎ ○ ● ● ● △ 製薬企業等による 利活用目的と使用するDB ●:必須 ◎:重要 ○:要 △:場合に応じ 医薬品安全監視 ベネフィット・リスク評価全般 治験の効率化・活性化 (EDC、リクルート、MBD等) 特 定 領 域 黄色:共通番号による 突合が必要  データ登録労力軽減  データの信頼性、網羅性、精度の向上  データの蓄積・流通に対する信頼・安心  信頼性の高い連携医療データの診療への活用  患者、国民への還元拡大  研究の活性化、スピードアップ • ベストプラクティスの抽出、治療の標準化・改善 • 革新的診断・治療方法の確立 • 医療・介護の質の向上 患者・住民 中心の医療 介護事業者 ○ ○ 医 院 かかりつけ医 高度先進 医療機関 地域病院 薬局 かかりつけ 保険等DB 特定健診 特定保健指導 医療レセプト 介護レセプト 要介護認定情報 日常生活圏域 ニーズ調査 医療等現場・データ提供者 行為 情報 目的別DB 死亡小票 全国がん登録 大規模ゲノム コホート MID-NET 難病患者DB NCD臨床効果DB DPC テーラーメイド 医療 介護・医療関連 情報の見える化 医療アクセス の改善 行政等のDB構築本来目的の達成に必要な制度 ①共通番号(個人識別子)と情報標準化 ②医療健康情報の蓄積・流通、管理と利活用の 統一的ルール ③Index Server、標準化、連携と利活用の審査管理機関 PDCA 立案 運営 評価 改善 地域情報プラットフォーム EHR、PHR、e-処方せん、e-おくすり手帳 保険者・自治体 健康増進、医療費効率化施策立案/運営/評価 行政機関 データヘルス 計画の実現 行 為 情 報 多 い 診 断 ・成 績 情 報 多 い + 構築予定を含む主なDBの本来目的のためにあるべき姿と利活用  医薬品等の安全対策・研究開発 共通番号、連携 ルールがない • 既に多くのDBがある (構築中) • 各々独立しており標 準化、連携されていな い  多くのDBに重複してデータ 登録必要、負担増大  得られるデータは限定的、信 頼性、網羅性、精度が低い。  政策の評価改善不十分  患者、国民への還元少ない  開発投資分野が不明確 診断、成績 転帰 現 状
  • 6. 6 テーマ 「患者の安全・安心に向けた医療トレーサビリティの確立」 1. 日本における医療トレーサビリティの取組み 医療分野におけるトレーサビリティ(以下、「医療トレーサビリティ」とする。)は、複雑な流通経路を通って 製品を手にする患者・利用者に対する積極的な情報開示であり、患者の知る権利を保障すると共に、医療 サービス提供者の責任を明確にするものである。 医療トレーサビリティは、「患者の安全・安心」を第一の目的とするが、物流の効率化・高度化、医療事 務の効率化などにより、年々増加を続ける医療・介護に関する費用の負担を軽減する効果も期待されて いる。 我が国においても、厚生労働省および医療関係者の協力により、医療トレーサビリティの制度化が進め られてきた。平成 17 年の改正薬事法では、高度管理医療機器、生物由来製品(ヒトや動物を原料とする医 薬品、医療材料)に関して、トレーサビリティ管理を義務化し、バーコード体系をヘルスケア業界の世界標 準である GS1-128 へ統一した。平成 19 年 6 月には、「規制改革推進のための 3 か年計画」が閣議決定 され、その中で医薬品・医療材料へのバーコード表示の推進が求められたことを踏まえ、医薬品に続いて、 医薬機器等についても厚生労働省からバーコード表示のための基準が通知された。 「医療機器等における情報化進捗状況調査」の結果(平成 25 年 3 月公開)によれば、JAN コード(JIS 規格化された共通商品コード)の取得状況は、医療機器全体で 99%、消耗材料 97%、体外診断用医薬品 100%となり、MEDIS-DC データベース(医療機器データベース)の登録状況は、医療機器全体で 80%、 消耗材料 65%、体外診断用医薬品 66%まで進んでいる。バーコード(GS1-128)表示状況も、販売(包装) 単位では、医療機器で 98%、消耗材料 88%、体外診断用医薬品はほぼ 100%で、個装(最少包装)単位 の表示割合も、医療機器で 81%、体外診断用医薬品で 92%となっている。 このように、製品識別コードの登録やバーコードの表示等が進んだことを踏まえて、今後は、これらのデ ータを医療機関の現場のみならず、流通・販売・在庫管理等においても積極的に活用し、医療トレーサビリ ティの精度と利便性を向上させることで、さらなる患者の安全・安心に向けた具体的な成果を上げていくこ とが求められる。 2. 医療トレーサビリティのメリット 医療トレーサビリティのメリットを受けるのは、第一に患者自身である。特に重要なのが「患者の安全・安 心の確保」であり、「臨床現場の三点照合システム(下図)」により、モノ(医薬品、医療機器、消耗材料等) だけでなく、ヒト(医療従事者、患者、利用者)も含めてデータ管理することで、患者や医薬品等の取り違え といった医療過誤の未然防止を実現できる。 医療トレーサビリティは、患者のみならず、医療機関、調剤薬局、卸売業、製造業、行政機関など多くの 関係者にもメリットをもたらす。 製造業・卸売業・病院調剤薬局において、医薬品や医療機器に対するトレーサビリティ管理が実施され ることで、医薬品の副作用や医療機器の不具合が発生した際の発見・特定・追跡が容易となり、正確で迅 速な回収・緊急対応が可能になる。トレーサビリティ管理を、標準化された共通の情報プラットフォーム上 で実施すれば、さらなる回収コストの軽減も期待できる。行政・規制当局においても、国民に対して、副作 用医薬品や不具合医療機器等について、より正確な情報を迅速に提供できるようになる。 期待される効果(2)
  • 7. 7 3. 医療トレーサビリティの範囲 本提言で取り扱う医療トレーサビリティの範囲は、メーカーによる医薬品、医療機器、消耗材料等の製 造から、最終消費者である患者への投薬・販売まで(下図太字部分)とする。ただし、健康ポータル、電子 処方箋、電子お薬手帳、医療ビッグデータの分析・活用など、他の関連サービスや事業との連携について も考慮する必要がある。 行政 製造業 卸売業 医療機関 介護施設 調剤薬局 患者 認可 情報提供 製造 出荷 保管 販売 出荷 購入、保管 利用、処置 処方、投薬 購入、保管 利用、投薬 購入、保管 調合 販売 購入 服用 4. 医療トレーサビリティの確立に向けた提言 当協議会での検討結果を踏まえて、次の 3 点を提言する。 ① 医療トレーサビリティの実現に欠かせない、医療分野の 5W1H(どこで、いつ、誰が・誰に、何を、 どうする・どうした)のデータを記録・保存し、関係者が共同で利用できる「医療トレーサビリティ情 報管理プラットフォーム(仮称)」を、医療・介護関係者の協力の下で、国が中心となって早期に 構築する(3) 。 ② 全国の医療機関、調剤薬局、介護施設、医薬品・医療機器等の製造業、流通業、卸売業に国際 標準の「事業所・場所識別番号(GLN)」(4) を付番する制度を導入する。また、全ての医療用医薬 品、医療機器、消耗部材等の調剤包装単位(または使用単位)識別のために、製品コード表示と バーコード表示を法令で義務化すると共に、流通業者や医療機関・薬局等にもトレーサビリティ 情報の登録を義務づけていく。 ③ 上記①および②の実現に向けて必要となる、技術および制度面における統一化・標準化を推進 する。 図 : 医療トレーサビリティ情報管理プラットフォーム(仮称) 製品の流れ 患者の安全・安心に向けた医療トレーサビリティの確立  患者に常に安全性の高い医薬サービスを提供できるよう、医薬品、医療機器、消耗材料等 の正確なロット管理や、生産から消費(患者に投与)まで、いつでも追跡(トレース)できる。  自主回収や副作用報告があった医薬品、医療機器、消耗材料等の製造元、流通工程を即 時に追跡し、正確で迅速な回収・緊急対応ができる。 医療トレーサビリティ情報管理プラットフォーム 製造工場 ★… タグ、バーコード など トレーサビリティ情報 患者の安全 ・安心の確保 医薬品・医療機器、 消耗材料等をすべ ての過程で正確に 把握 卸売・問屋 医療機関 患者 医師 調剤薬局 薬剤師 患者 ★ ★ ★★ ★ ★ 登録 健康ポータル 確認 確認 電子お薬手帳 電子処方箋 ビッグデータ分析 確認 登録 登録 確認 登録 医療機器 DB 追跡(トラッキング) 遡及(トレースバック) (3) 近年、欧州・米国・トルコなどにおいて、医療用医薬品等に対する製品識別の表示とデータベース登録(規制当局管轄)の義務化が進展し ており、日本の医療産業の国際化に向けた取り組みとしても、製品の追跡・遡及を管理する医療トレーサビリティの実現が急務と言える。 (4) 国内および国際間取引において相互に企業や事業所等を識別するための国際標準の企業・事業所識別コードとして、GS1 が制定するグ ローバルロケーション番号(GLN:Global Location Number)がある。中医協が提案する、患者がより利用しやすい「主治医制度」を実現 する際にも、主治医機能を担う中小病院・診療所と、それを後方で支える中核病院・専門病院の場所・事業所識別が有用である。
  • 8. 8 テーマ 「健康ポータルを活用した地域社会での健康管理」 1. 健康ポータルの構成イメージ 健康ポータルは基礎自治体が共同で利用できるシステムであり、国民が、自身の医療情報や健康情報 へアクセスする窓口になる。利用者の認証に必要なアクセスキーの発行、認証サーバーへの登録などの 業務は基礎自治体が行う。 各種機関ならびに民間事業者は、健康ポータルの利用者認証機能を利用して、各種情報やサービスを、 健康ポータルを通して提供する。また、各種機関ならびに民間事業者は、利用者の許諾のもと、健康ポー タルのデータへアクセスすることも可能である。 2. 健康ポータルのメリット 行政機関、健康保険、製薬企業、薬局、民間事業者等と連携した健康ポータルを整備することで、国民 の健康増進に寄与する。 ① 健康保険からの健診・特定健診情報の配信、および受診指導を通して受診率が向上する。また、 きめの細かい生活改善指導が行えるようなる。 ② 行政機関からの発せられる健康改善に役立つ地域スポーツイベント情報、健康増進啓蒙活動情 報を住民の健康状況に合わせて的確に提供する。 ③ 薬局でのお薬手帳の電子化とともに、服用指導、薬の飲み合わせ、副作用情報を住民に的確に 提供することで、薬を安心して服用できるようになる。 ④ 製薬企業からは、副作用の発生や回収薬の情報を、当該薬を服用している住民に直接通知する ことができ、対象者に確実に情報を伝搬させることで、さらなる副作用・事故を未然に防止できる。 ⑤ 民間サービス事業者からの情報提供を認めることで、住民は様々なサービスを受けることができ る。また民間活力を生かした新産業の創出にもつながる。  健診データ、ヘルスケア情報、運動量情報の解析を基にした、最適な運動、スポーツのメニュー の提案  健診データ、ヘルスケア情報、運動量情報、食事データの解析を基にした、住民の体調や健康 状態にあった、食事メニュー、健康補助食品、サプリメントの提案  医療機関からの診察情報や薬局からの処方情報、住民の服用履歴を監視することで、薬の飲 み忘れ、飲みすぎのアラームを提供  医療機関からの診察情報やリハビリ施設などからの情報を基に、最適な介護サービスを提供 3. 健康ポータルの効果 健康ポータルを活用した場合の経済効果の一例を示す。 ① 兵庫県尼崎市では、健診データを活用した指導を住民に行ったところ、平成 18 年度から 21 年度 にかけて新規人工透析患者を約 20%減少した。全国規模で、健康ポータルを活用することで、全 国で毎年 3 万 5,000 人を超える新規人工透析患者のうち、7,000 人程度削減できることが期待さ れ、医療費の増加を 350 億円削減するだけでなく、患者の通院負担、医療機関の処置負担も大き く削減することができる。 ② 上では、1 つの疾患に関しての医療費削減効果を示したが、他の疾患についても全国民レベルで 健康ポータルを活用することで、医療費が削減される。 4. 健康ポータルの整備 4.1. 現状と課題 【現状】  地域住民の健康増進を目的とした健康ポータルは、先進的な自治体では整備は始まりつつある。 また、健康保険組合、国民健康保険でも同様なサービス提供を目的としたシステムの整備が始 まりつつある。 【課題 1】  しかしながら、それぞれの団体が個別に整備しているのが現状であり、他の団体で効果を上げ ている取り組みを全国規模へ迅速に展開するのは困難である。 期待される効果(3)
  • 9. 9 【課題 2】  また自治体間でのデータの送受信などは考慮されていないため、500 万人(5) を超える転出入者 は十分なサービスを受けることができない。 4.2. 整備  各団体で整備している(今後整備する)健康ポータルに共通で利用できる認証システムを整備す る。認証システムにおいて、利用者の認証に必要なアクセスキーの発行、認証サーバーへの登 録などの業務は基礎自治体が行う体制を整備する。  認証システムの整備後、各団体が整備している(今後整備する)健康ポータルを認証サーバー 化に結合し、利用者が住居や健保・国保間を移動しても、同一の窓口(ポータル)から同様のサ ービスを継続して受けられるようにする。 健 康ポ ー タ ル A県 健 康ポ ー タ ル B市 健 康ポ ー タ ル C市 健 康ポ ー タ ル D町 認 証 シ ス テ ム 健康ポータルを活用した地域社会での健康管理 健康ポータル 行政機関 製薬企業 薬局 健康保険 民間サービス事業者 副作用情報 認証システム ユーザー認証 (5) 住民基本台帳人口移動報告(2013 年)の都道府県内移動者数 2,713,676 人と都道府県間移動者数 2,301,895 人の合計より算出。 現状の健康ポータル 認証サーバの整備
  • 10. 10 テーマ 「健保・国保の保険証など資格の有無を確認」 1. 効果 現在、被保険者が医療機関等窓口にて古い証を提示する等の理由により資格関係の情報に誤りのあ るレセプト(以下、資格関係誤りレセプト)が発生した場合、それらの誤りは審査支払機関もしくは保険者に よる確認によって判明する。 資格関係誤りレセプトは、請求した 1~3 ヶ月後に医療機関に返戻され、医療機関から被保険者に正し い請求先を確認したのちに、再度審査支払機関に請求される。ただし、被保険者と連絡が取れないケース においては、レセプトが請求不能となることもある。 資格関係誤りレセプトの発生原因は、「月の途中の資格関係などの変更」や「カルテ又はレセプトの作成 誤り」、「受診時の証の未提示」の理由が、全体の約 95%を占める(6) 。これらの原因は、受診毎に医療機 関等の窓口においてリアルタイムに資格の確認を行い、確認された資格情報をレセプトに自動転記するこ とで防ぐことが可能となる。 1.1. 主な効果 資格確認による効果は、『第 12 回 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(平成 21 年 3 月 6 日)』や、月刊基金(平成 25 年 9 月号)等を基に試算した結果、1 年あたり約 256 億円となる。 【試算結果】 項番 受益者 年間の効果 1 医療機関等 136 億円/年 2 保険者 113 億円/年 3 審査支払機関 7 億円/年 合 計 256 億円/年 1.2. 副次的な効果 審査支払機関や保険者において資格確認の作業が軽減されるため、人的リソースを有効活用すること が可能となる。人的リソースを有効活用することで、事務作業や審査の質の向上が見込まれる。 また、医療機関において、1~3 カ月前に受診した被保険者に対して正しい資格情報を問い合わせるこ とは窓口担当者の精神的な負担が大きく(患者の理解を得るのが難しい、病院の名を騙った不審な連絡と 思われる、など)、それらの負担の軽減も見込まれる。 2. 算出方法(算出条件) (※算出方法の詳細は参考資料を参照) 医療機関等と保険者の効果は、『第 12 回 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会(平成 21 年 3 月 6 日)』(以下、検討会)で提示された資料(7) をベースとした。 ただし、検討会当時に比べてレセプトの総数が増加していること、また、平成 23 年 10 月から社会保険 診療報酬支払基金において「オンラインによる請求前の資格確認」(以下、請求前資格確認)が開始され ており、検討会当時に比べて保険者における資格関係誤りレセプトの受付件数が減少していることを踏ま え、再算出した。なお、レセプトの電子化による事務作業への影響は、事務作業の増減量が不明のため本 試算では考慮していない。 審査支払機関の効果は、資格関係誤りレセプトの総件数と、1 件あたりの作業時間を基に算出した。 期待される効果(4) (6) 出典:月刊基金(平成 25 年 9 月号) (7) 出典:第12回 社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/03/s0306-6.html 資料2「検討メモ」(訂正後)および資料3「医療保険資格の確認業務及び諸外国の動向についての調査結果の概要」(訂正後)
  • 11. 11 3. マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)が活用される個所 共通番号を活用する箇所を図 1 に示す。 図 1 マイナンバー(医療分野に適用する連携用符号を含む)の活用イメージ 医療機関 初診時 再診時 の喪失 医療機関 ・ 初診時 ・ の 再診時 に個人番号カード を利用する の喪失 に個人番号カード を利用する また、資格確認システムの想定システム構成図を図 2 に示す。 図 2 資格確認システムの想定システム構成図 医 療 機 関 等 マイナンバー情報連携 保 険 者 等 診療所 共通番号 紐付 カルテ番号 b 資格DB(仮称) 情報提供ネットワーク 医療 の の の の に を 属性情報 (氏名 等) 共通番号 紐付 カルテ番号 c 属性情報 (氏名 等) 薬局 紐付 記号番号 イ 属性情報 (資格/給付情報 等) 市町村 紐付 記号番号 ロ 紐付 記号番号 ハ 健康保険組合 協会けんぽ 病院 共通番号 紐付 カルテ番号 a 属性情報 (氏名 等) 号番号 共通番号 共通番号 共通番号 属性情報 (資格/給付情報 等) 属性情報 (資格/給付情報 等) 【リアルタイムでの資格確認】 医療機関等から共通番号をもとに、資格DBへ問い合わせる。 資格DBに登録されている保険者番号+記号番号をもとに、 資格DBが該当する保険者へ問い合わせる 保険者は結果を資格DB経由で返却する。 号番号 喪失 ・ ・・ 号番号 医療機関 共通番号 共通番号 確認結果 番号 番号 番号 ・・ ・ 【資格の異動】 旧保険者は資格DBへ共通番号と資格喪失情報を送信する。資格 DBは共通番号をもとに、当該資格情報を更新する。(喪失) 新保険者は資格DBへ共通番号と資格取得情報を送信する。資格 DBは共通番号をもとに、当該資格情報を更新する。(取得) 確認結果 喪失情報(共通番号)DB更新 DB更新 喪失情報(共通番号)