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20210731知財学会研究会
- 2. 自己紹介:
2
● 1983 - 2009 日本IBM東京基礎研究所
○ 1996-1997 米国インターネット事業部
○ 1997-2000 東京工業大学客員助教授
○ 2004-2005 IBMビジネス・コンサルティング・サービス
● 2009 - 2010 キヤノン株式会社 デジタルプラットフォーム開発本部
● 2011 - 2016 統計数理研究所
● 2016 - Preferred Networks
○ 2020 - 東京大学 人工物工学研究センター
○ 2020 - 花王株式会社 エグゼクティブフェロー
黒字: 研究開発
青字: アカデミア
緑字: ビジネス
- 3. 本講演では…
● 学問 -- 知識の体系化(関連付けられ、記録され、伝承される)
○ 人類文明の礎となるもの
○ どんなに有用であっても、体系化されない知識は(ここでは)学問と呼ばない
■ e.g., 職人(企業)のノウハウ
● 学術 -- 職業としての学問
○ 趣味で行う学問は、(ここでは)学術と呼ばない
● アカデミア -- 学術コミュニティ
○ 主に、学会(学協会)に代表される
○ 論文が体系化のツール
- 12. リニアモデルの呪縛
● 研究開発のリニアモデル
○ 研究→開発→生産→販売
○ アカデミアによる研究開発→ 企業による事業化
● アンチパターン
○ 蒸気機関の発明(1712年)→ 熱力学(1820年代)
○ 深層学習の発展(2014年) → 深層学習の理論的解明(?年)
● 多くの場合、ニーズとシーズは同時発生的(リドレー
, 2021)
○ イノベーションとは小さい改良の積み重ね
○ 試行錯誤を高速に反復することでイノベーションを起こす(例:エジ
ソンの電球)
ISBN-13 : 978-4910063157
- 13. ニーズ取り込みへの方策(1): 戦略的競争的資金
● 国が戦略目標としてニーズを示す
○ SIP、IMPACT、Moon Shotなど
○ 委託 - 受託モデル
● 委託側が、戦略目標が狙う社会変革事業の
当事者でない
● 受託側は、自分の研究テーマを無理やり戦
略目標に合わせて提案
○ 論文になりにくい細部は取り残される
○ 目標を達成しなくても提案者は職を失
わない
● 一度採択されてしまうと、社会情勢が変わっ
ても計画変更がやりにくい
https://www.jst.go.jp/moonshot/program/index.html
- 22. その他の学術領域におけるプロトコル
● 統計的に十分なデータが得られない領域
○ 例: 経営学におけるケーススタディ
● 再現実験・ランダム化比較試験が行えない領域
○ 例: 社会学における自然実験、タバコの肺がんへの影響に関する因果推論
● 推論過程が複雑すぎて手作業で追えない領域
○ 例: 数学における4色問題の証明(計算機による自動証明)、材料探索における数値シミュレー
ション
共通するのは「批判的検証に基づく合意形成」
アカデミアの人間は、自己の誤謬を常に意識しているから
- 23. 意思決定(合意形成)の違い
● 社会における意思決定
○ 民主主義: 多数決に基づく
■ (多くの)政治家は自己無謬性を主張する
■ エコーチャンバー効果など、人々のバイアスに左右されやすい
(笹原, 2019)
○ 階層的統治構造(会社、軍隊など): 上位の者の判断に基づく
■ 相互牽制の仕組みが必要
● 会計監査、社外取締役、…
● アカデミアにおける合意形成
○ 批判的検証に基づく(自己の誤りを常に意識している)
○ 自己組織的な学会と論文が、相互検証の仕組みを提供する
- 27. 2項対立を超えて -- 社会における研究者の役割
● イノベーションの担い手として
○ 市民としての研究者
○ 社会課題解決の主体であること
● 合意形成のプロとして
○ 自己の誤謬にオープンな態度
○ TEAL型組織へのノウハウ
https://japan.cnet.com/blog/maruyama/2020/08/04/
entry_30023014/
- 28. 人材の交流
● 現在の日本では、アカデミア ⇒ 民間のキャリアパ
スが少ない
○ 企業の側の問題: 新卒を企業色に染めるやり方を好む
○ 研究者側の問題: アカデミアを離れることを「キャリアの失
敗」とみなす風潮
● 例:ノースイースタン大学の Co-Op
○ 学生を数カ月間、企業や国際機関に派遣して現業を経験さ
せる