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LRGライブラリー・リソース・ガイド 第5号/2013年 秋号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
Library Resource Guide
ISSN 2187-4115
特別寄稿 内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大
特集 嶋田綾子
司書名鑑 No.1
井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
本と人、人と人をつなぐ
仕掛けづくり
本と人をつなぐ図書館の取り組み
LRG Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第5号/2013年 秋号
発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社
特別寄稿 内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大
本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり
特集 嶋田綾子
本と人をつなぐ図書館の取り組み
司書名鑑 No.1
井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
2 巻頭言 ライブラリー・リソース ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 秋号
ようやく『ライブラリー・リソース・ガイド』第 5 号を刊行することができました。
2012 年 11 月に創刊した本誌は、ちょうど 1 年を経て、第 2 期ともいえる 2 年目
に入ることができました。
この 1 年、本誌にもさまざまなことがありました。創刊と同時に開催した第 14
回図書館総合展のフォーラム「図書館 100 連発 フツーの図書館にできること」は、
満員御礼、好評のうちに終了しました。その後も、研修などで「図書館 100 連発
の話をしてほしい」とのご要望をいただいています。
また、2013 年の秋に開催した第 15 回図書館総合展では、「第 1 回 LRG フォー
ラム」と銘打って、「図書館の資金調達」をテーマにフォーラムを開催しました。
このフォーラムでは、小誌の第 3 号と第 4 号で取り上げた事例の関係者、寄稿者
にお話をしていただき、より実践的に議論を深めています。
さて、今 5 号では、
●特別寄稿「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」
 内沼晋太郎、アサダワタル、谷口忠大
●特集「本と人をつなぐ図書館の取り組み」
 嶋田綾子
●司書名鑑No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
の 3 本立てとなっております。
巻頭言
図書館をひらくために
3巻 頭 言   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
今号では、特別寄稿と特集がほぼ同一のテーマとなっております。これまで図
書館に求められているのは、個人の営みである「読書」が中心でしたが、これから
は図書館から始まるコミュニティ機能も求められています。このような潮流のな
かで、図書館で取り組める「人と人をつなぐ仕掛けづくり」を、本に関わる人々か
ら学ぶ、というのが今号の狙いです。
内沼晋太郎さんは、下北沢で「Book&Beer」をコンセプトにした街の書店「B&B」
を経営しています。発見のある「小さな街の本屋」を目指して、日々、棚づくり、
イベント開催に励んでいらっしゃいます。気鋭のブック・コーディネーターとし
て、「本」をめぐるさまざまな試行的実践と、これからの「書店」のあり方をビジネ
スとして模索するその思いを伺いました。
アサダワタルさんは、図書館業界では 2011 年の Library of the Year2011 受賞
が記憶に新しいところです。自宅を少しだけ「ひらい」てコミュニティをつくる
「住み開き」、そして、「日常編集」というユニークな活動のなかで、「本」を媒介と
した、図書館の再編集につながるような話を語っていただいています。
谷口忠大さんは、図書館でも近年行われるようになってきた、書評を使った本
の紹介ゲーム「ビブリオバトル」の発案者です。ビブリオバトルは、人の紹介を通
して面白い本に出会うこと、面白い本を紹介する人に出会うことに醍醐味があり
ます。簡単なルールを守るだけで誰もが実践でき、図書館でも注目される「ビブ
リオバトル」を楽しむ秘訣を伺いました。
4 巻頭言 ライブラリー・リソース ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 秋号
特集「本と人をつなぐ図書館の取り組み」では、本と人をつなぐために図書館
が行っているさまざまなイベントや本を紹介する取り組みについて、紹介してい
ます。古くから行われている定番の取り組みから新しい試みまで、「本と人をつな
ぐ」をキーワードに、事例を紹介しています。新しい試みはそのまま実践できる
ように、定番の取り組みはよりよい実践のヒントとなるような事例をピックアッ
プしています。
図書館でも、書店でも、本を紹介する取り組みは、新旧さまざまにあります。そ
してそのいずれの取り組みも、本を一人で読むだけではなく、そこから人々がつ
ながっていき、新たなコミュニティが生まれることを目指しています。
そして、今 5 号から、新企画が始まります。それは「司書名鑑」です。
記念すべき連載第 1 回は、関西学院 聖和短期大学図書館の井上昌彦さんにご登
場いただきました。井上さんといえば、「図書館員のセルフブランディング」の必
要性を説き、自らの「ミッション」を掲げて、精力的に活動しています。仕事のこ
と、ミッションを掲げるにいたった過程、そして「情報の持つ力」への思いを語っ
ていただきました。
「司書名鑑」では、今後も図書館の内外で活躍しているライブラリアンにご登場
いただき、その仕事や図書館への思いを語っていただきます。図書館は決して個
人の活動で成り立っているものではありませんが、そこには、多くのライブラリ
アンの努力と思いがあります。限られた紙面のなかで、その活躍の全てを記すの
はかないませんが、一人でも多くのライブラリアンの活躍を微力ながらもご紹介
できれば幸いです。
編集兼発行人:岡本真
責任編集者:嶋田綾子
5巻 頭 言   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
巻 頭 言 図書館をひらくために[岡本真+嶋田綾子] …………………………………………… 2
特別寄稿 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり[内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大]……… 7
     「本」をめぐる冒険[内沼晋太郎]…………………………………………………………… 10
     「本」が生み出す、これからのコミュニティ[アサダワタル]………………………………… 30
     図書館でのビブリオバトル実施アドバイス[谷口忠大]…………………………………… 50
特  集 本と人をつなぐ図書館の取り組み[嶋田綾子] …………………………………… 65
LRG CONTENTS
Library Resource Guide
ライブラリー・リソース・ガイド 第5号/2013年 秋号
一日図書館員
ブックスタート
ぬいぐるみのおとまり会
夏の自由研究サポート
おはなし会
図書館ツアー(図書館見学)、館長懇談会
図書館福袋
読書会、ビブリオバトル
参加型POPづくり、参加型しおりkumori
サイエンスカフェ、ライブラリーカフェ、作家の講演会
郷土資料講座、文学散歩
図書館コンサート
図書館まつり
選書ツアー
上映会
司書名鑑 No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績定期報告
定期購読・バックナンバーのご案内
次号予告
……………………………… 146
……………………………………… 152
………………………………………………………………… 156
……………………………………………………………………………………………… 158
………………………………………………………………………………… 66
………………………………………………………………………………… 70
……………………………………………………………………… 76
……………………………………………………………………… 80
…………………………………………………………………………………… 84
…………………………………………………… 90
…………………………………………………………………………………… 96
……………………………………………………………………… 100
………………………………………………… 106
…………………………………… 112
…………………………………………………………………… 118
…………………………………………………………………………… 124
………………………………………………………………………………… 128
………………………………………………………………………………… 134
……………………………………………………………………………………… 140
特別寄稿
内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大
本と人、人と人をつなぐ
仕掛けづくり
10 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
「本」をめぐる冒険
これからの本屋「B&B」を
生み出した試行と実践とは
1980年生まれ。一橋大学商学部商学科卒。numabooks代表。ブック・コーディ
ネイターとして、異業種の書籍売り場やライブラリーのプロデュース、書店・取
次・出版社のコンサルティング、電子書籍関連のプロデュースをはじめ、本に
まつわるあらゆるプロジェクトの企画やディレクションを行う。
2012年、下北沢に本屋「B&B」を博報堂ケトルと協業で開業。ほか、読書用品ブ
ランド「BIBLIOPHILIC」プロデューサー、これからの執筆・編集・出版に携わる
人のサイト「DOTPLACE」編集長など。著書に『本の未来をつくる仕事/仕事
の未来をつくる本』『本の逆襲 』(ともに朝日新聞出版)。
内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう)
2012 年、下北沢南口からすぐのところに「これからの街の本屋」をコンセプト
にした本屋が生まれた。店内にはクラシック音楽が静かに流れ、30 坪ほどの店内
には、シックな書棚に個性的な本が並べれられている。
「B&B」はお酒が飲めるブックショップ。アルコールを手にしながら、好きな本
を選び、未知の世界に心を踊らす時間……。
ふつうの書店とはその趣きを異にするここ「B&B」は、ブックコーディネイター
として活躍する内沼晋太郎さんが共同プロデュースした街の本屋である。
内沼さんはそのキャリアのほとんどを、「本」をめぐる試行と実践に費やされて
きた。その「本」をめぐる冒険には、「本」の存在を拡張するための表現が、「本」と
の出会いを生み出すための実験が、「本」が置かれている困難な状況を打破するた
めの問題提起が、常にある。
長らく低迷していた本の業界を、驚きの発見とともに面白くしている人の一人
である内沼晋太郎さんに、本をめぐるさまざまな試行と実践、その思いを伺う。
11本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
僕は 1980 年に生まれたのですが、僕たちの世代は「最近の若い者は、本を読ま
なくてけしからん」といったことを、上の世代から常に浴びせられてきたんです。
僕自身は本が好きで読んでいたのですが、仲のいい友達のなかには、本を全く読
まないのも確かにいました。でも僕は、そういった活字離れ世代への嘆きを聞く
たびに「それは、本当に自分たちが悪いんだろうか?」って漠然と感じていたん
です。本を読まない友達の多くは、新しい知や情報に対して鈍感ではなく、むし
ろ敏感なんです。では「なぜ、彼らが本を読まないのか」というと、それまでの人
生のなかで「本と出会う機会がなかったから」だけなのではないかと思ったのです。
僕たちの世代というのは、ちょうど中高生の頃にポケットベルがはやって、そ
れが PHS になって、やがて携帯電話になったり、パソコン通信がインターネッ
トになって、電話回線から日進月歩で光回線になったり、ゲーム機や音楽メディ
アもめまぐるしく進化していったのを、多感な年齢の時に身をもって体験し
てきた世代なんです。通信やエンターテインメントの世界で、できることや面
白いことが加速度的に増えていく、そうすると本は生まれたときからあるので
「あってあたりまえ」なのですが、ほかのものは目新しく身の周りに飛び込んでき
て、それらを中心に毎日をおくっていたら、本と出会わなくても無理もないと思
うんです。
こういうふうに考えると、悪いのは僕たち世代の側だけにあるのではなくて、
本を届けている側にも問題があるのではないかということに気がつきます。つま
りそうした状況において、出版社も、取次も、書店も、図書館も、出版業界と呼ば
れる本に関わる人たちは、「ゲームよりも本のほうが面白い」とか、「携帯電話よ
りも本のほうが夢中になれる」といったメッセージなり仕掛けを、本から離れて
いる世代に向けて発してこなかったと思うんです。こういった状況に気がついた
ことが、僕の活動の原点かもしれません。
必要なのは「本との出会いをつくる」仕事
そもそも「本と出会う機会」がない――その視点に気がついたときに、「本の出
会い」を生み出す必要があると思ったんです。つまり、書評家がやるような「この
活動の原点は、活字離れ世代からの問題提起
12 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
本が面白いよ」を伝えるもっと手前の、「本って面白いんだよ」ということを伝え
るための仕組みや仕掛けを考える仕事です。「この本が面白いよ」というメッセー
ジは、本を読む人にしか届かないんです。もちろん、当時はそれが仕事になるか
分かりませんでしたし、ここまで明確に言葉にできていませんでしたが、そうい
うことこそが必要だなと思いました。
ですから、就職活動をする頃には、出版社や書店とかに入っては駄目だと思っ
たんです。たとえば出版社の採用面接で「出版業界をなんとかしたいので、本の
面白さを伝える仕事がしたいんです」と言ったとしても、「なにを言ってるんだ。
まず売れる本をつくれ」と言われるに決まっています。ファッション雑誌の編集
部に所属したら、新人のうちは原宿あたりを歩いているおしゃれな子をみつけて
スナップ写真を撮らせてもらうみたいな毎日のなかから、「本の面白さ」を伝える
ところにいくまでには何十年もかかるだろうと思いました。
そこで、本と少し離れた場所から本と関われる仕事がしたいと思って、ブック
フェアなども手がける某国際見本市の主催会社に入社しました。面接の時に「出
文庫本葉書
13本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
版業界をなんとかしたいから、ブックフェアをやりたい」と言ったら、面白がら
れて採用されたんです。「展示会ビジネスが伸びているから」といった志望理由が
大方だったそうなので、僕みたいなのは珍しかったみたいですね。ですが、僕自
身がたぶん会社員に向いてないこともあって、2 ヶ月半で辞めました。
会社は辞めたものの、「本の面白さを伝える」という視点はもち続けていたの
で、学生時代に一緒に活動していた仲間と、本と人との出会いを提供するユニッ
ト「book pick orchestra(ブックピックオーケストラ)」※ 1
をつくりました。
本に興味のない人が、どうやって本と出会うか
「book pick orchestra(ブックピックオーケストラ)」は、ネットの古本屋とし
て活動を始めました。そのころはアマゾンのマーケットプレイスがない頃で、ラ
イターの北尾トロさんを先陣に※ 2
、個人のネット古本屋がたくさんあったんです。
僕たちはむしろ後発組でしたし、ただ古本を売って稼ぐことよりも、「本と人との
出会い」を意識しながら、面白いことやまだやられていないことを仕掛けていこ
うと思っていました。
たとえば「文庫本葉書」というのがあります。これは文庫を 1 冊ずつクラフト
紙に包んで、クラフト紙の表面にハガキのような宛名欄、裏面にその本から抜き
出した印象的な一節を印刷したものです。手にした人は、裏面に印刷された引用
文を眺めて、心に響いたら買ってもいいし、切手を貼って誰かに送ってもいい。
本を読まない人にとっては、「あってあたりまえ」すぎて気にとめることもなかっ
た本の存在が、包まれて見えなくなることで本と出会い直せるし、本を読む人に
とっては、出版社やメディアの売り文句などの先入観を介さないことで、普段は
手にしない本と出会えるはずです。「包む」ということでは、横浜の馬車道ほかで
企画した会員制・予約制・入場料制の期間限定の本屋< encounter. >も同じで、
これはもともと横浜の BankART というアートギャラリーで、作品として発表し
た企画です。
また、渋谷パルコのロゴスギャラリーで行われたイベント「新世紀書店・仮店
舗営業中」では、本が苦手だと思っている人に、どうしたら本を楽しんでもらえ
るかを考えて、< she hates books >< her best friends >という企画をしました。
14 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
< she hates books >は、「本嫌いの彼女に本を読ませる本屋」というコンセプト
のもと、選曲した音楽の気分に合わせた古本を CD とともにセットで販売したり、
< her best friends >では本を並べるのではなく、その本をお薦めした人の顔写
真を壁に貼って、本を販売しました。お薦めした人の顔写真には「好きな食べも
の、出身地、本の値段」などのプロフィールがあって、お客さんはそれを手がかり
に本を買うという仕組みです。
「book pick orchestra」での活動を通して僕が重要にしていた問題意識の一つと
いうのは、「本に興味のない人が、どうやって本と出会うか」ということです。自
分で本を選べる人というのはもう読者ですから、そこにだけ向けて発信していて
も、本に興味がない人へは届かない。ではどうすればいいかというと、それは音
楽などのほかのジャンルからのアプローチが有効かもしれないし、自分と気の合
いそうな人からのリコメンドかもしれない。方法は多様にあると思います。
こういったことは、出版社も、取次も、書店も、やってられないわけです。「確
かに面白いけど、手間ひまがかかりすぎる。ビジネスにならないよね」となって、
本を隠して売るようなことを思いついたとしても、自分の立場とか、やる意味と
かを考えて、やってこなかったと思うんです。でも、僕たちはそれが必要だと思っ
たし、誰もやっていなかったからやったんです。
僕は大学では商学部に在籍し、ブランド論を専攻していたのですが、ブランド
論を学んだことは今の自分の仕事に非常に役に立っています。ブランディングと
いうのは、商業的な意味での付加価値を考えることなのですが、そうした勉強を
しているうちに「本屋って、洗練されてない店が多いな」とか、「出版社ってコン
セプトがみえないな」とか、出版業界はとてもブランディングが下手だというこ
とに気がついたんです。ブランド論の教科書に出てくるブランディングの事例は、
飲食やファッション、車などの業界からばかりで、本に関わりのある業界からは
一つも出てこないんです。
ブランディング力のない出版業界
15本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
例えば「スターバックスコーヒー」にはコンセプトがきちんとありますが、「『講
談社』のコンセプトって、なんだろう?」とか、最近でこそコンセプトをもった新
書シリーズはありますけど、当時は「この新書だったら、全部買い揃える」みたい
なことには、まったくなっていませんでした。でも音楽だと、たとえば「ブルー
ノート・レコード」といったジャズレーベルなら、「○○番台は全部、集めている」
みたいな人がいるでしょう。
紙の本は再販制により、全国一律の定価販売が維持されているので、良くも悪
くも競争したり、差別化する必要がなかったのだと思います。だからこそ、つま
らない状況になってしまった部分もあるのだと思います。
僕は、音楽も、美術も、映画も好きでしたが、とりわけ本を仕事にしようと思っ
たのは、ひと言でいうなら、出版業界がまだまだ未開拓で、やれることが沢山あ
ると思ったからです。「ただの斜陽産業」という人もいましたけど、「この本屋が
かっこいい」とか「この出版社の、このレーベルが面白い」とか、そういったメッ
セージをきちんと伝えることとか、やれていないことがたくさんあるなと思いま
した。
「読書用品のブランド」という発想
たとえば「ビブリオフィリック」※ 3
は、「ディスクユニオン」と立ち上げた「本
のある生活」を楽しむための読書用品のブランドです。「ディスクユニオン」は関
東圏の方はご存知の通り、中古 CD の販売をメインにしている会社です。「ディス
クユニオン」にはジャズ館やロック館など、ジャンルごとに専門特化した館があ
り、そのなかに「CD・アクセサリー館」というのがあって、レコードの針とか袋
とか CD を入れる専用の袋やラックなど、音楽を聞くための周辺機器や道具だけ
を販売しているのですが、それがうまくいっていたんです。
ある日、以前から付き合いのあった「ディスクユニオン」の社長に、「内沼さん、
本でこういうのって、できないかな?」と尋ねられたんです。 実は、僕もその頃
同じようなことを考えていたのです。それは、電子書籍がこれから盛り上がるこ
とによって「データでいいものはデータで読むけど、紙で読みたいものは書籍で
ほしい」というふうに二極化するだろうということです。つまり、紙で読んでい
る人というのは、「モノとして」大事にしたいということになるので、大事に本を
保管するための道具が必要になるはずだ、と。
16 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
本がモノ化するこの感じは CD とかレコードが辿ってきた道と似ていて、「デー
タでいいものはデータで聴くけど、アナログで聴きたいものはレコード盤で買
う」といったことと似ているんです。ですから社長の言っていることはよく理解
できたので「今はまだないけど、絶対にやるべきだ」と思って、僕が提案をしまし
た。「ビブリオフィリック」では、本棚、しおり、ブックカバー、付箋のほか、読書
用の音楽も販売しています。
「道具のブランド」というのは、アウトドアブランドを意識していて、例えば
「キャンプをしよう」となったときに、キャンプそのものの魅力もあるのですが
「このテントを張りたい」とか、「この飯ごうを使いたい」とか、道具から入る人は
結構いますよね。いま、アウトドアの雑誌もたくさんありますが、モノ自体の格
好良さが入り口でその世界に入っていくということが、ある種の趣味にはあるわ
けです。
下北沢南口すぐにある書店「B&B」
17本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
読書というのも、もはやその種の趣味になりつつあるとすると「あの素敵な
ブックカバーを電車のなかで広げたいから、本を読もう」というような、そうい
う方向だってありうると思いました。こういうことを考える僕のモチベーション
には、やはり「本を読む人を増やしたい」というのがあります。
「B&B」は僕が代表をする「numabooks」※ 4
と、嶋浩一郎さんが代表をする「博
報堂ケトル」が、下北沢の駅前に恊働して 2012 年に開業した「街の本屋さん」です。
僕も嶋さんも、街の本屋だけに特別な思い入れがあるわけでなく、ネット書
店も利用するし、電子書籍にも期待しているし、大型書店にもよく行くし、街の
本屋も好きなんです。ですから二人でいろいろな仕事をするなかで「本屋をやろ
う!」となったとき、共通する視点としてもっていたのが「本を楽しむ環境がい
ろいろあるのが、一番豊かだよね」ということでした。選択肢がたくさんある未
来をつくりたいと思いました。だから、そのなかで消えてなくなりそうだった「街
の小さな本屋」をやることにしたんです。
「街の小さな本屋」のビジネスモデルはもう崩壊していて、20 ∼ 30 坪のスペー
スで新刊の本だけを売っていては、とっくに成り立たなくなっているんです。当
然、僕も嶋さんも、新刊書店の経営者という意味では素人だったのですが、素人
だからこそ、その生き残り方が見つけられそうな気がしたんです。では具体的に
「街の小さな本屋の生き残り方」とはなにかというと、僕たちがしていることはた
いしたことではなくて、本を売るというメインのビジネスに対して、イベントを
やったり、ドリンクを出したり、家具を売ったり、最近では英会話教室も始めた
のですが、こうした相乗効果のある複数のビジネスを組み合わせて、全体として
成り立たせるということです。どんなビジネスでもそうですが、利益を得られる
ものが複数あるとリスクヘッジになるわけです。
僕は、「B&B」の事業を成り立たせることで、街の小さな新刊書店が置かれてい
る状況を更新したいと思っています。「こういうやり方であれば、まだやっていけ
るんだよ」というメッセージを発信し 、どんどんこのモデルを真似してもらいた
いと思っています。
「街の小さな本屋」のビジネスモデルを提案する
18 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
他のビジネスで収益をあげて、個性的な棚をつくる
70 年代から 90 年代初めは、書店業界はバブル期でした。棚に本を置けば飛ぶ
ように売れた時代があって、その頃のほうが街の本屋に個性があったんです。つ
まり売り上げが立っているから、本好きな店員が本棚に手をかけられた。でも本
が売れなくなって売り上げが立たなくなると、人件費の削減のために社員が少な
くなって、バイトが増えて、業務を効率化するので、個性的な棚がつくれなくなっ
たんです。
たとえばレストランだったら、売り上げが下がったときに、食材を良いものに
して単価を上げて高級路線にいくとか、逆に原価を下げるとか、やれることがた
くさんあるでしょう。でも本というのは、どこで買っても同じ商品だし、日本全
国仕入れ値もほとんど、売値はまったく同じです。ビジネス上の工夫がしにくい
業態なんです。ですから、経営が悪くなったときにやれることは、本を返品する
か、人件費を削減するしかない。 ある本屋の棚がどんどんスカスカになって面白
くなくなっていくときには大抵、その店の経済的な事情がとても影響しています。
「B&B」では、個性的な棚をつくってきた先陣たちをお手本にして、文脈棚をつ
くっています。文脈棚というのは、僕がかつてアルバイトをしていた千駄木にあ
る往来堂書店の初代の店長・安藤哲也さんが提唱した棚づくりの方法で、「この
本の隣にこの本があって、その隣にこの本がある」という文脈が面白みになって
いくような本棚のつくり方です。いわゆる「人文」「科学」「料理」といった一般の
本屋の分類に従えばバラバラに置かれるはずの本を、ある文脈に沿って同じ棚に
並べることで、ストーリーやメッセージを生み出すことができます。文脈棚とい
うのは、その店の個性を出しやすいのですが、どこの書店でもできるわけではな
いんですね。つまり、それをやる余裕がないんです。きっとどの書店員さんも、棚
に手をかけたいはずだと思うのですが、なにせ時間がない。なぜ時間がないのか
というと、儲かってないからなんです。
「B&B」は複数のビジネスをしていますが、あくまでメインは「本屋」です。です
から、商品である本を置く棚には手をかけますし、「 B&B」でそれができているの
は、イベントやドリンクなどの他のビジネスで成り立っているからなんです。
継続するための循環の仕組み
「B&B」では、毎晩イベントをやっています。これはなにがなんでも絶対と決め
19本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
ていて、なぜかというと「B&B に行けば、夜はいつもなにかやっているよね」と
お客さんに認識してもらうことが、一番重要だと思っているからです。前日にイ
ベントが決まっていなかったら僕ひとりでも出ますし、「たとえお客さんが3人
でもやる」ということを徹底しています。こういうことは徹底しないと「儲かっ
てきたから、イベントは週3日でいいかな」と思ってしまうかもしれないし、担
当者が辞めたとたんに、イベントのスケジュールに穴が出てしまうということは、
よくあることなんです。「B&B」ではイベントを毎日やって、売り上げや集客の目
標があることを前提としています。それ以外はわりと自由で、本と関係のあるイ
ベントであればオッケーです。基本はその本の著者や編集者が来て、それに関連
して売る書籍があることですね。今、10 月上旬ですが、僕たちがいつぐらいのイ
ベントを企画しているかというと、11 月末くらいです。つまり 10 月は、もう空
きがない。11 月の上旬もほとんど埋まっている。イベントが決まれば、関連本を
出版社に発注してストックしています。
イベントで「B&B」に来るお客さんは、ある著者のファンで足を運んでくれて、
店内でドリンクを飲んでいく。イベントで過ごす時間が心地良ければ、「B&B」の
店内には、ビアサーバつきのカウンターがある
20 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
ファンになってくださるかもしれない。ファンになってくだされば、また足を運
んでくれて本が売れていくという、こういう循環のための相乗効果が重要だと
思っています。
「B&B」という名前の由来は「Book&Beer」です。僕も嶋さんもビールが好きだっ
たので、「本屋で昼間からビールを飲みながら、棚の本を選べたらすごくいいよ
ね」みたいなところから発想しました。こういうことをやると、「いや、俺もやろ
うと思っていたよ」みたいなことを言う人が現れるんですが、やろうと思うのと、
実際にやるのは違うわけです(笑)。
たいていはやろうと思っても「商品にビールをこぼされたら困るな」とか、「昼
間からビールを出したら、店のなかでお客さんが泥酔しちゃうんじゃないか」と
か、脳内で勝手に完結して諦めちゃうんですよ。でも、本屋でビールが飲めたら
すごくいい。「すごくいいことには人がたくさん来るし、話題にもなるはずだ」
というところに、僕も嶋さんも自信がありました。重要なのはそこから先です。
「どうしたら、それができるのか」を、考えなくてはいけない。
僕たちはいろいろ工夫しているのですが、一つは店内の空間デザインです。た
とえば「ビレッジヴァンガード」のような、雑多な空間デザインをコンセプトにし
ている書店でビールを出したら、もっとこぼされると思うんですよ。でも「B&B」
は、とてもゆったりと整然としていて、音楽もクラシックやジャズなどを静かに
流しています。こういう空間で、人は酔っぱらいたいと思わないんです。つまり、
僕たちは「ここで何杯も飲んで、倒れたり、吐いたりしてほしくない」ので、そん
なことをしたくなくなる空間を設計すればいいわけです。 もちろん、店内で気持
ちよくビールを飲んでもらいたい。でもそれは、ビールを飲んで、ちょっといい
気持ちで本を選ぶくらいのことがしたくなる空間なんです。
とはいえ、実際に開店するときは、きっとこぼされるだろうと思っていました
し、ある程度は覚悟していたのですが、実際には本にビールがこぼれて売り物に
ならなくなったのは、月に 1 回もないです。「B&B」ではビールを 500 円で販売し
ビジネス/美意識/情報の観点から、空間をディレクションする
21本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
ているのですが、ビールの原価は 100 円台です。でも、文庫本を 500 円で売って
も書店が得られる利益は、だいたい 100 円です。ビールを売ることによって出る
利益を考えれば、たとえ 2000 円の本が 1 ヶ月に1冊駄目になっても、ビジネス
としては問題ないんです。こういうことはまずやってみて、駄目ならやめればい
いんです。やってみることが大事なんです。
ポップを貼らずに、伝える工夫
「B&B」は、店内に POP を貼っていません。いま「B&B」では「月の本」のフェア
を開催しているのですが、棚に「月の本」という POP をつけることなく、いかに
並んでいる本をパッと見ただけで、その棚のテーマをお客さんに伝えられるかを
常に意識しています。
POP をつけずにその棚がなんの棚なのかを伝えるためには、「全体として分か
る」ようにすることです。こういうのはディスプレイ技術です。よく陥りがちな
のが、選書する側にその本についての知識があると、逆に分かりづらい展示をし
てしまうということです。たとえば「月のフェア」をつくる際に、「その作品のな
かで、月が重要なモチーフとして出てくる」という知識があると、書名に「月」が
入っていない本を選んで、工夫なく棚に置いてしまうんです。そうすると、当然
ながらその作品を読んでいないお客さんには、それが月と関係のある本だという
ことが伝わらないんです。
では、どうやって伝えるかというと、どう本を置くかです。例えば『月光仮面』
を置いて、その隣に「美しい月」みたいな本があって、さらに「月の写真集」を置
けば、その隣にある本の書名に「月」というワードが入ってなくても、「きっと、
月の本なんだろうな」と、棚の文脈からお客さんが想像できますよね。こういう
ことが結構、重要です。
表紙に「月」のイラストや写真があるものを、ドンと面出しするのも有効ですね。
月をテーマに 100 冊選書するのであれば、60 冊はタイトルに「月」と関連する言
葉が入っていないと分からないと思います。
ワクワク感を演出する
あと棚づくりで心がけていることは、「B&B」の店内スペースは 30 坪くらいと、
「B&B」店内
24 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
さほど広くはありません。そうすると「この本が欲しい」と言って来てくださる
お客さんに対して、面積の大きい大型書店や amazon に、品揃えの面で圧倒的に
勝てないのです。また「B&B」は、あるジャンルに特化した専門書店ではないので、
例えば建築を専門とする書店の棚に勝てるかというと勝てないわけです。
そうなれば、僕たちのような 20 ∼ 30 坪の本屋がやらなくてはいけないことは、
買う本が明確に決まっている人ではなくて、「なにか面白い本がないかな?」っ
て思っている人に来てもらって、ちゃんと見つけてもらうことです。となると、
棚にワクワクするような感じがないと駄目なんですよ。しかも、店内に置ける限
られた冊数のなかで、なるべく棚の中に「広い世界」をつくらなくてはいけない。
たくさん本があれば広い世界がつくれて当たり前なのですが、数十冊しか本が置
けないなかで、いかにジャンプするかということです。棚をつくる際には、そう
いったワクワク感や広がりに気を配るようにスタッフと意識しています。
手づくり感をもてはやさない
空間をつくるうえで「トータルディレクションができているか」は、とても大
切だと思います。どんなに洗練された建築をつくっても、建物の中の空間で司書
さんが書いた手書きの POP がベタベタと貼られていたら台無しです。よく思う
のですが、本屋や図書館というのは「手書き=よいこと」みたいな錯覚が、ほか
の業界よりもまかり通っていると思います。たとえばアパレルショップの「ビー
ムス」で、「この T シャツはかっこいい!」みたいなことを、店員が手書きで POP
に書かないですよね。「スターバックス」でも手書きをしていい場所は、看板とか、
黒板の一部です。
でも、これは致し方ないところもあるとは思います。なぜ、書店で手書きが多
くなるかというと、本屋は現場に入ってくるものが毎日変わるので、アピールし
なくてはならないものが日々、変わるわけです。そうすると現場が一番わかって
いるので、現場のスタッフが手書きしたものを貼らざるを得ないのでしょう。つ
まり、トータルディレクションとしての本部機能が効かせにくいんです。これが
「スターバックス」ならば、毎日、新商品が入るわけではないので、日々、言わな
くてはいけないことってあんまりなくて、季節ごとに情報を出せばいい。だから
ルールがつくりやすいんです。
25本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
本屋や図書館は「手づくり感」みたいなものがもてはやされやすいのですが、
手づくり感があれば全てがよいなんてことは絶対にないんです。もちろん手書き
を一概に悪いと言っているわけではなくて、例えば「ビレッジヴァンガード」では、
「赤い線が入った黄色い紙」に手書きで POP を書いていますよね。そういうルー
ルさえあれば、全体が奇麗にみえます。
こうしたディレクションはクールにやらなくてはいけなくて、「誰々さんは字
がうまいから」みたいなところでやるのは、やはり仕事ではなくて趣味の発想な
んです。図書館でもせめてロゴの運用を決めるとか、館内サインのデザイン、つ
まりフォント、大きさ、色などを、ロジカルに統一するべきだと思います。当たり
前のことですが、「大分類」よりも「中分類」が大きく書かれていたらおかしいん
です。「中分類」を指し示している時点で、すべての「中分類」を示すサインのフォ
ントは同じはずなのに、他の場所ではフォントが変わっていたり、大きくなって
いたり、色まで違っていたり、こういうのは絶対に駄目なんです。
館内のフォントは統一するなり、手書きの場合でもフォーマットを決めるだけ
でだいぶ印象が違います。これは「なんでもかんでも洗練して、奇麗にすればい
い」ということではありません。図書館に来た人に、伝えるべきメッセージをス
トレスなく伝えるための「情報のデザイン」と、アットホームに館内で過ごして
もらうための「雰囲気づくり」を、分けて考えないといけません。どちらにせよ、
誰も管理せずにフリーダムにやるのではなくて、こういうことを意識的にやる必
要はあると思います。
もし僕が図書館の館長だったら、その地域に住んでいる知的好奇心のある人
たちが集まるような空間をつくるために、今、自分たちの図書館に「どういう人
たちが来ていて、どういう人たちが来ていない」のか、「来ていない人のなかには、
来てほしい人がいるのか」「なぜ、その人たちは来ていないのか」「どういうこと
をしたら、その人たちが来てくれるのか」など、地域の特性を考えながら、とにか
く考えて、考えたことをひたすら実行していくと思います。
図書館という「場」としての魅力
26 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
図書館の本の電子書籍化がいわれて久しいですが、保存の観点からはとても意
味のあることだと思いますし、「図書館というリアルな場所が、いずれ個人の PC
のサイト上に生まれる電子図書館になるんだ」ということであれば、そちらに向
かうのもあり得ると思いますが、リアルな場所がある前提で図書館の本を電子化
していくのは、サービスとしてはあまり意味がないことだと僕は思っています。
データというのは自分の PC とか携帯などの端末で見るものだし、複製可能であ
ることに意味があるからです。すでに場があるのですから、場の魅力をつくって
いくことだと思います。
データの本にできなくて、紙の本にできること。それは、空間を直接つくるこ
とができるということです。そういう場の魅力というのは、質量がある紙の本な
らではなのです。
人が本を好きになるプロセスには、大きな本棚を前にして「世の中にはこんな
にいろいろな本があるんだ」とか「難しすぎて今は読めないけど、いつか読める
店内には、座って本が読める空間もある
27本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
ようになりたい」とか、物理的に圧倒された経験みたいなものがあると思うんで
す。今までは、そういう経験を生み出す「場としての役割」を、家にある本棚とか、
街の本屋が担っていたと思うんですけど、街から書店がなくなったり、親も本棚
をもっていなかったりするなかで、そういう経験を子どもができるのは図書館く
らいしかないでしょう。図書館という場所はいろんな役割があると思いますが、
「知的好奇心がわっと芽を出す場」として、ますます重要な役割があると思ってい
ます。
できるところから、「人のやっていないこと」をやり続ける
図書館の場合は行政との関係があるでしょうから、書店とは違う苦労がいろい
ろあると思います。でも行政にだって自治体ごとに癖があると思うので、「こうい
うところでは、そんなに厳しくは言ってこないだろう」というポイントをみつけ
たら、そこで違うことをやればいいのではないでしょうか。それはもうケース・
バイ・ケースなので一概には言えないですけど、できるところから「人のやって
いないこと」をするしかないと思います。「なにもできない」ということは、絶対
にないと思いますから。
なにも大きな予算のかかることではなくても、街に住んでいる読書家の高齢者
が、図書館に来る子どもたちに本読みをして交流を生んだり、著者を呼んで人を
集めたりして「この図書館、面白いよね」って言われるようなことを積み上げて
いけばいいと思います。
あとは、こういう媒体に取り上げられるような図書館にすることだと思いま
す。他館とは違うことをして注目を集めて、「あそこはなにか違うぞ」と思われる
ような評判をつくっていく。評判というのは、評判が評判を呼ぶみたいなところ
があって、一度取り上げられるようになると、何度も取り上げられていくんです。
やはり、そうなるにはやり続けることしかないと思います。
28 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
※ 1 2003 年にメンバー 3 人で結成。2006 年末まで代表を内沼氏がつとめ、現在の代表
は川上洋平氏。渋谷のギャラリースペース SUNDAY ISSUE、新宿のシェアオフィス
HAPONのブックコーナーの選書や企画運営、オリジナル商品「文庫本葉書」の販売、
図書館や文学館での本のワークショップなど、各地で人と本が出会う偶然を生む
ための活動を行う。
http://www.bookpickorchestra.com/
※2 北尾トロ『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』(風塵社、2000年)
※ 3 2011 年よりディスクユニオンが展開した読書家のための読書用品ブランド。内
沼氏がプロデューサーをつとめ、さまざまなクリエイターや有識者とコラボレー
ションをしている。
http://diskunion.net/bibliophilic/
※ 4 内沼氏が代表をつとめる「本とアイデアのレーベル」。書籍売り場やライブラリー
のプロデュース、本にまつわるプロジェクト企画や作品制作、書店や出版社のコン
サルティング、電子書籍関連のプロデュースなどを手がける。
http://numabooks.com/
文中注釈
29本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
30 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
「本」が生み出す、
これからのコミュニティ
1979年生まれ。大阪市立大学法学部卒。「日常編集家」として公私の狭間、
異分野間を漂泊しながら、既存の価値観を再編集する表現を、文章、音楽、
プロジェクトを通じて創作する。神戸女学院大学キャリアデザインプログラ
ム、立命館大学映像学部などで講師。著書に『住み開き 家から始めるコミュ
ニティ』(筑摩書房)『編集進化論 editするのは誰か』『クリエイティブ・コミュ
ニティ・デザイン』(共にフィルムアート社、共著)。「マガジン航」(ボイ
ジャー)、「学芸カフェ」(学芸出版社)、「ソトコト」(木楽舎)など各メディアに
て連載中。ユニットSjQ++(HEADZ)ドラム担当。
アサダワタル
各地域に滞在しながら、コミュニティプロジェクトの構想演出や教育・福祉現
場における音楽ワークショップの実施、それらにまつわる文筆活動など、幅広い
フィールドで活動されるアサダワタルさんは、もともとバンドのドラマーとして
キャリアを始められている。その後、表現活動を「音」から「場/事」に広げ、多彩
に活動するアサダさんのベースには、日常にこびりついた既存の価値観を再編集
する目線が常にある。
2009 年、アサダさんが提唱した「住み開き」は、「住む」というありふれた空間
をほんの少し編集することで、日常や社会の風景を一新し、多方面に影響を与え
た。図書館業界も例外ではなく、「住み開き」は 2011 年の Library of the Year を
受賞した。
本インタビューでは、アサダさんが実践したさまざまなプロジェクトを伺いな
がら、「本」や「本屋」をつかったコミュニティの生み出し方を考えたい。
31本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
僕はもともとミュージシャンとして、バンドでドラムしか叩いてなかったの
ですが、音楽だけではなく、映像とか美術などのイベントをオーガナイズしたり、
スペースの運営とかに関わりだすうちに、街の人たちとつながって、いつしか「ま
ちづくり」みたいなことにもつながったんです。そして、そうした活動のなかで、
文章を書いたり、滞在制作をしたり、司会をしたり、大学で講義をしたり、自分の
専門がどんどん脱領域化して、もはや自分の肩書きが名付けられなくなったので、
「日常編集家」と勝手に名乗るようになりました。
「日常編集」というのは、簡単に言うと「日常」と「非日常」のボーダーをいじっ
たり、ずらしたりすることです。アートが持つ力の一つに、「日常の見え方を変
える」というものがありますが、僕はアートに関わることが多かったせいもあり、
「日常」と「非日常」のボーダーを考えることにとても興味があるんです。例えば、
休日にミュージシャンのライブを聞きに行く体験は、非日常的な体験です。その
とき、僕が気になるのは「ライブに行く人の日常は、いつの時点から非日常に切
り替わっているのか」ということです。きっとライブに行く数ヶ月前から、ライ
ブで聴く歌手の曲を iPod で再生してワクワクしたり、当日、着ていく服装を選
んでウキウキする……こういった音楽にまつわるさまざまな行為を、アメリカの
音楽学者 、クリストファー・スモールは「ミュージッキング」と呼んだのですが、
その時、すでに日常とは違った非日常の感覚を味わっているんだと思います。
こういう非日常の感覚を個々人が意識し、コントロールできるようになったら、
日常の風景が変わるはずだと思うのです。僕は「日常編集家」として、ありふれた
日常行為を意識的に捉え、刺激的に読み直すための試みを、妄想レベルから具体
的な実践までさまざまに行っています。
「日常」と「非日常」のボーダーをいじるその試みの一つとして、僕は 2009 年
に「住み開き」を提唱しました。「住み開き」というのは、夫婦や家族で暮らしたり、
友人たちと住んだりする住居のようなプライベートな空間の一部を、本来の用途
以外の新しいアイデアを盛り込み、無理をしない範囲で限定的に開放することに
よって、いろいろな人が集まるセミパブリックな空間を生み出す活動や現象のこ
とです。たとえば絵を描く人であれば、自分の家をアトリエにすることがあるで
「住み開き」で、他者と他者をつなぎ直す
32 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
しょう。その延長で家の一部をギャラリーにするうちに、知らない人が家に入っ
てきて、サロン化していったりする。
「住む」というのは、いわば「日常」なのですが、住居の一部を、音楽でも、手芸
でも、読書会でも、子育てでもなんでもいいのですが、自分の好きなことや携わっ
ていることをきっかけに少しだけ開放すると、住人以外の第三者が入ってきて、
家が共有空間になっていく。そこに非日常が生まれます。
僕自身、大阪市北区南森町の住居用マンションを知り合いのクリエイターた
ちと借りて、自分たちのスタジオとしても利用しながら、定期的なトークサロン、
ワークショップ、上映会などをしていくという「住み開き」を 2006 年から 2010
年までしていました。そして、こういう活動を広げていけば、「日常から生まれる
文化」のいろいろなバリエーションがつくれるだろうと思ったんです。
そこで、2009 年頃から「住み開き」をアートプロジェクトにしました。「住み開
大阪市西区九条「ぶんぶん文庫」。遊びにきた子どもたちと絵本を読む
33本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
き」的な現象をリサーチし、全国を訪問取材したのです。本に関わる「住み開き」
の事例としては、大阪市の西区にある「ぶんぶん文庫」があります。主宰者はこ
この家に住む駒崎順子さんで、彼女は大学で教育学を学び、図書館や学校におけ
るボランティアでの読み聞かせ活動などもされていた方です。駒崎さんは、絵本
や児童文学が楽しめる個人図書館として、定期的に自宅の一部を開放し、自由な
文脈で子どもたちと出会う場を生み出していました。そのほかにも、自宅で本を
使ったワークショップをやっている人とか、独立して家を出ていった子どもの部
屋をカフェにして子育てをキーワードにしたサロンにしたり、自宅を水族館にし
ていたり、ユニークな事例がたくさんありました。
そのあり方はさまざまですが、「住み開き」をしている人たちに共通しているの
は、お金に還元されない役割として自分たちの社会活動を展開し、他者と他者を
つなぎ直しているということです。そして、そういう人たちが「住み開いた場」は、
「もてなす側/もてなされる側」、「受け手/送り手」といった硬直した関係性を超
えて、とても風通しのよいコミュニケーションを生み出していました。
もともと「住み開き」にある問題意識というのは、固定化した関係性を無意識
に受け入れることで生まれるコミュニケーションの硬直化でした。たとえば都市
のなかにあるさまざまな空間――会社、自宅、ショッピングモール、公園、図書館
などで、私たちはその空間における役割を無意識につくりあげて、ある時はサー
ビスの提供側になり、ある時はサービスを受けるお客側になり、お金を交換する
だけのお互いの役割のなかで、形式的なコミュニケーションを成立させていない
でしょうか。もちろん、こういう役割の空間が、一定の秩序や快適さも与えてく
れるので、そのこと自体の善悪を言いたいわけではありません。そういう空間の
役割を意識的にずらしてみることで、新しいコミュニケーションや人と人とのつ
ながりが見えてくるのではと思ったのです。
「住み開き」の根底にあるこうした問題意識は、アートのフィールドだけではな
く、若い人たちが集まるシェアハウス入居への動機づけや、高齢化社会において
図書館と「住み開き」
34 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
問題化する老人の孤立を防ぎ、多世代間の交流を促すなど、福祉や教育、街づく
りなど、全国の自治体、公的団体などから注目を浴びることになりました。
さらに 2011 年には、図書館のあり方を示唆する先進的な活動を行っている機
関・団体・活動に対して、NPO 法人「知的資源イニシアティブ(IRI)」が毎年、授
与する「Library of the Year」の優秀賞に「住み開き」が選ばれました。この賞では、
自薦・他薦されたなかから、選考委員の審査を経て優秀賞が決まります。大賞を
決める最終選考では、プレゼンターがそれぞれの候補を紹介するのですが、「住み
開き」のプレゼンターは紹介する理由について、「図書館という場が本を貸すだけ
ではなくて、レファレンス機能のなかに地域の相談が盛り込まれたり、地域の図
書館が個人の図書館やミニライブラリーといった活動とつながる仕組みをもった
りするといった、「これからの図書館」を考える際に『住み開き』は有効だと思う
から、この言葉を図書館側に強く知ってもらいたい」と仰って下さって、非常に
嬉しかったです。IRI は「住み開き」を「公からの一方的な情報提供から市民同士
による情報提供への変化の一形態として、これからの図書館のあり方にとって参
考になる点」を評価して下さいました。
僕自身が書き手であることもあり、以前から本というメディアに興味を持って
いたのですが、今年から「本と出版の未来」を考える Web マガジン「マガジン航」
に「本屋はブギーバック」(http://www.dotbook.jp/magazine-k/boogieback_01/)
という連載を始めたことがきっかけで、「本がある場をどうやって再編集するか」
とか、「本を使って新しいコミュニケーションが生まれるきっかけってなんだろ
う?」ということを深く考えるようになりました。
僕がこの連載で書いているのは、「本と出版の未来」をダイレクトにテーマにし
ているというよりも、「人と人とをつなぐメディアとしての本のあり方」といった
ことをテーマに書いているんです。図書館もそうですが、書店というのは膨大な
数の書籍という文化的なリソースが眠っていますよね。そういう場所で、個人が
好きに自分の買いたい本を選んで買って帰るなり、借りて帰るなりするのもいい
メディアを使ってなにができるか
35本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
のですが、そこにある本を使って、そこの地域にいて普段は出会わないような人
たちが会話をしてみたりとか、会話の少なかった子どもとおじいちゃんが、本を
介することで会話が変わったりとか、そういう現象を生み出す可能性があるので
はないかと思っています。
こういうことを考えるのには実は下地があって、僕は音楽の活動をするプロセ
スにおいて、かつてのように曲をつくったり、自分で演奏をすることよりも、「音
楽を日常生活に投げこんで、どうコミュニケーションを生み出すか」みたいなこ
とのほうに興味を持ち始めたんです。詳しくは「マガジン航」でも書いているので、
ぜひそちらで読んでいただきたいのですが、つまり僕はメディアをつくることよ
りも、「すでにあるメディアの使い方を発明すること」に興味があるんですね。
わかりやすく言うと、本であれば文章を書いたり、編集をしてオリジナルな 1
冊の本をつくる「一次創作」(本の編集行為そのものが「二次創作」であるという
考えもありますが、ここではそれは便宜上「一次創作」として捉えます)ではなく、
「本を使ってなにをするか」を考える「二次創作」、あるいはメディアの創造的転
『KPPL(借りパクプレイリスト)』展の風景(大阪アートコートギャラリー)
36 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
用に興味があるのです。音楽の世界には、二次創作の方法として、曲の一部を改
変して演出しなおすリミックスのテクニックや、2 曲以上の曲を混ぜ合わせて 1
曲に仕立て上げるマッシュアップなどといった、デジタル音楽での手法がありま
すが、僕が二次創作を考えるときに重要にしているのは、「もう一度、人と人が対
峙して、目の前にある本なり CD で今からどんな面白いコミュニケーションを起
こそうか」といったアナログな姿勢です。
たとえば、僕が試みた企画に「KPPL(借りパクプレイリスト)」というのがあり
ます。「借りパク」というのは、かしこまって説明するのも変ですが、「人から借り
た物を、そのまま自分の物にしてしまう(パクってしまう)こと」を指す言葉です。
なんらかの事情により返しそびれ、結果的に私物になった CD を未だに捨てられ
ずにもっている人ってけっこう多いと思うのですが、僕も引っ越しや進学の際に、
友人やかつての恋人からたくさんの CD を借りパクし、同時に同じくらいの品々
を借りパクされてきたんです。
ある日、借りパクしてしまった CD を眺めながら、その持ち主の顔を思い出
し、その時代の思い出をその音楽とともに回想しているうち、「借りパクエピソー
ドとともに借りパク CD を試聴展示したら、どんな感じで音楽を楽しめるのだろ
う !?」と思いついたんです。そこで、自分の借りパク CD のほかに公募でも集め
た合計 100 枚で、期間限定の借りパク専門の CD 屋を大阪のアートコートギャラ
リーでたちあげました。展示する CD には、その CD にまつわる思い出を書いた
POP をデザインして、試聴機も置きました。さらに会場では、借りパクの思い出
を語り合うトークサロンも開催したんです。
トークでは「当時、付き合っていた恋人から借りたんだけど、別れてしまった
ので返せなくなった」とか、「兄弟から借りたんだけど、自分が留学したから返せ
ないままになった」とか、その CD にまつわる個人の思いを語り合いました。興味
深いのはある特定の CD(小沢健二『LIFE』など)を背景にして、個々人がまったく
別々の記憶をシェアし合うんですが、そこにはその時代を反映した集合的な記憶
が確かに垣間見えるんです。そういった世代共通の音楽を音楽社会学者の小泉恭
子さんは「コモン・ミュージック」と名付けたのですが、まさに、音楽に限らずメ
ディアを通じた語りのプロセスで、公私が入り交じる独特なコミュニケーション
が発生するのです。
37本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
この企画は、本にも転用できると思います。借りパク本は、もはや本の中身と
は直接は関係ないのですが、読み手の人間臭さが如実に、かつユニークに立ち現
れる行為になると思うんです。そこから「日常生活における本との付き合い方」や、
「人と人とをつなぐメディアとしての本のあり方」など、色々なことが見えてくる
はずです。でも、図書館の本は借りパクしちゃダメですよ(笑)。
目の前にある 1 枚の CD なり1冊の本を使ってなにかしようとするとき、僕の
感覚では、メディアの有史以前に人間がごくふつうに行っていたあり方のほうへ、
歴史的に戻っていく作業が重要だと思っています。どういうことかというと、あ
る音楽をレコードに記録する技術ができる前は、当然ながら現在のように「オリ
ジナル」といった発想が十分には出てきていないわけです。楽譜がない時代まで
遡れば事態は一層わかりやすいでしょう。今は音楽業界も崩れてきて、音源を買
うことよりもライブに行くことの価値が相対的に上がってきているので一概に
は言えませんが、レコードが正典、つまりオリジナルになって、ライブがそのプ
ロモーションのために準備されるという構造が存在するわけです。多くの文化活
動がレコードであれ CD であれ、DVD であれ、はたまた mp3 データであれ、なに
かしらのメディアをつくることを目的とするのは、メディアにすることで金銭を
得る、つまり産業にしないといけないからですよね。でも、メディアのない時代
は、それを誰かに伝えたり、聞いてもらうためには自分が実演して表現するしか
なかったんですよ。
明治の終わりから昭和の初期、自由民権運動が盛んな頃に、「演歌師」と呼ば
れる人たちがいたのをご存知でしょうか。彼らは街なかで、政治的な主張やメッ
セージを聞いてもらうために節にのせて、歌うというか、がなりたてているんで
す。手にはその歌詞を書いた「歌本」というのを持っていて、歌を気に入った人
は歌本を買っていき、「さっき、演歌師のおっちゃん、あんなふうに歌っていたよ
な」とか言って、歌本を見ながら自分なりに歌うんです。替え歌なんかも生まれて、
勝手に歌が書き換えられていくんです。そうやって文化が回っていくという状況
があったんです。
パフォーマティブなコミュニケーション
『KPPL(借りパクプレイリスト)』展より
撮影:井上嘉和
40 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
つまり、なにが言いたいかというと、人々がメディアに頼る前というのは、各々
が身体を使って演じたり、書いたり、歌ったり、会話したり、「パフォーマティブ」
なことが起きていたのだと思うんです。
僕がやりたいことは、一見ポストモダン的にも捉えられるのですが、メディア
を使いこなしつつ、こういったある意味ではプレモダン的ともいえるパフォーマ
ティブなコミュニケーションを生み出すことなのです。
たとえば、2010 年に行った「モヤモヤ読書」というものがあります。NPO 法人
アート NPO リンクの 樋口貞幸さんと、京都精華大学の都市社会学者の山田創平
さんと僕の3人で企画したのですが、「モヤモヤ読書」というのは、あるルールに
従って進められる「読書会とまち歩き」のプログラムです。どういうプログラム
かというと、
①参加者はその本を事前に読み、読書会当日に「モヤモヤするところ」(最も気に
なるところ)を発表
②みんなでモヤモヤを語り合う。語り合うことでモヤモヤが明確になったことを
付箋にメモしてもらい、机の好きなところに貼る
③全員がモヤモヤを発表し終えたら、休憩をとり、そのあいだに次の発表の準備
をする
④ 2 回目の発表。今度は本を読んだ所感など、大きなストーリーを捉え、思うと
ころを話す。それをみんなでシェアする(共感したり、同意したり、違う意見を
言ってみたり)。そのとき、自由にメモしてもらい、机に貼付けてもらう
⑤最後に机の付箋を見直して、振り返りをナビゲーターが行う
⑥話し合ったことを考えながら、みんなで街を歩く
こんな流れです。このプログラムは「読書会とまち歩き」がセットであること
がけっこう重要で、読書会で読む本とそのあとでまち歩きをする場所が、ゆるや
かに関連しています。
『忘れられた日本人』(宮本常一、岩波書店 、1984 年)が選書された読書会では、
西成釜ヶ崎(大阪府大阪市)を歩きました。読書会の会場は、同じ西成にある商店
街「動物園前一番街」のなかにある「ココルーム」という、アート NPO が運営する
41本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
サロンスペースで行ったのですが、この場所にはドヤ街の日雇いで働くおじさん
なんかも集まるんです。読書会をやっているときに、ぶらっとココルームに来た
西成のおじさんも、なんとなく興味をもって話に参加してくれるんです。そうす
るとそのおじさんたちの話が面白いんですね。彼らは高度経済成長期の西成の街
を体感していたり、その時代に多数建てられた日本中のさまざまな建物の現場作
業をしてきた人たちなんです。多少時代は違えど、労働を通じていまの日本を支
えてきた人たちという意味で本の中に出てくる人たちのエピソードと重なってく
るんですよ。
『忘れられた日本人』という本は、著者で民俗学者の宮本常一が、人生の大半を
日本各地くまなく歩いて、その土地の農作業や漁業における労働のあり方や民間
の伝承を克明に調査して1冊の本にしたものなのですが、それぞれの地域に住ん
でいた人々の人生を万華鏡のように捉えていて、非常に感動的な本なんです。こ
「モヤモヤ読書」開催のチラシ(大阪 / 2010 年 11 月 12 月)
42 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
うした本の内容もあって、このときの読書会では、自分の人生に引き寄せたエピ
ソードを語る人が非常に多かったんです。
読書会でみんなの記憶とか思いをシェアしたあと、西成の街を歩くのですが、
これは良い意味でわりと危なっかしいんです。本の世界が残像として頭のなかを
グルグル、モヤモヤしている状態のまま街を歩くので、軽い酩酊状態なんですよ
(笑)。こういう状態で街を歩いていると、「ここの曲がり角は、本のなかのあの場
面に近いよね」みたいなことを言う人がでてきたりします。
西成のほかに、大阪梅田の近くにある堂山町では、アントニオ・タブッキの『イ
ンド夜想曲』(白水社、1993 年)を読んでまち歩きをしました。この街はとても雑
多な雰囲気の街で、本のイメージともシンクロするんです。堂山町と同じ梅田界
隈で、もう少し雰囲気が違う下町で本庄という街では、レヴィ・ストロースの『悲
しき熱帯』(中央公論新社、2001 年)を読みました。いずれも選書は、地域コミュ
ニティとアートの活動に造詣が深い、アサヒビール芸術文化財団事務局長(当時)
の加藤種男さん、そして山田創平さんと僕がファシリテーターになって、その場
に 10 人くらいが集まって実施しました。
本を読んだときに生まれる「モヤモヤする感覚」を他者と共有していくやりと
りのなかで、参加者は五感を開いたり、自分の中から生まれる言葉を探したり、
身体を使って街に身を委ねたり、表現したりして、「パフォーマティブ」になって
いくんです。そしてパフォーマティブな行為というのは、少し誤解を招く言葉で
もあるのですが「儀礼的」になっていくと思います。
儀礼的というのはどういうことかというと、たとえばアニメファンが「聖地巡
礼」をやるじゃないですか。「アニメ聖地巡礼」というのは、アニメの舞台となっ
た場所をそれぞれの思いなり、物語の文脈を携えながら訪問して楽しむものなの
ですが、言ってみれば妄想の固まりなんです。最近では、観光社会学者の岡本健
さんが、地域に新しい文化的・観光的コンテクストを付与してゆく「N 次創作観
光」という言葉を提唱されています。一見、すごく突飛で、良い意味でばかばかし
くもあるのだけど、でもよく考えてみると、古来からある宗教的な「儀式」とか「祭
り」というのは、そういうものなんじゃないかと思うんです。つまり目に見えな
い神様という記号を、日本の場合であれば、石だったり、木だったり、自然を祀っ
て聖地をつくっていく。つまりそういった目に見えないコンテクストをその地
43本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
域に付与していき、そのフィルターを通じて住む人、観る人が地域に対してアプ
ローチをしていく。そうした構造はあまり変わらないんですよ。
だから、自分の内に文化的なものをインプットした状態で、世界や物事に介入
していくことは、「儀礼」ととても近い。実際、「モヤモヤ読書」って儀礼っぽいく
ないですか。みんなで本を読んで、街を集団でそぞろ歩くわけですからね(笑)。
本というのは、同じ本を読んでもそれぞれ読み方、感じ方が違うし、そうした
ソフトの部分だけじゃなくても、「この本はお母さんからプレゼントしてもらっ
た」とか、「入院中の辛いときに読んだ」とか、「古本屋で偶然、手にした」とか、複
数の角度から個人的な記憶をパッケージしていると思います。それを広げていけ
ば、地域の歴史といったところにまでリンクが張られていく可能性があると思い
ます。モヤモヤ読書のような企画は、図書館でもできますよね。図書館員がファ
シリテーションしながら本に圧縮された記憶を解凍し、図書館を地域によりひら
いていくことができれば素晴らしいと思います。
あと補足的なことですが、こういった読書会で重要なことは、みんなで読んだ
あと、もう一度ひとりで読むことだと思うんです。これは僕だけが言ってるの
ではなく、「本を使った対話の会」を行っている mogu book(http://mogubook.
net/)のサトウアヤコさんも言っています。
mogu book(よく噛んで= mogu)は「ひとりで読む。みんなで読む。またひと
りで読む」がコピーになっているのですが、僕もこのコピーにとても共感してい
て、みんなで読んでたくさん話して、いろんな読み方とか、感じ方、本との付き
合い方をシェアして集合的な記憶を結んだあと、もう一度ひとりで読んだときに、
違う発見があると思うのです。ひとりで読んだものをひらいて、もう一回、孤独
に返していくということが、すごく重要だと思っています。
僕は、本であれば「注釈」や「引用」、音楽なら「サンプリング」「カットアップ」
的な感覚がとても好きなのですが、本屋とか図書館というのは、こういう感覚、
本屋で社会実験をする
44 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
つまり会話をしているとき、その会話の参照ネタにリンクボタンが張られていく
ような感覚が楽しめる格好の場所だと思っています。
大阪の心斎橋に「スタンダードブックストア」という本屋があります。「本屋で
すが、ベストセラーはおいていません。」をキャッチコピーにしているとても個性
的な本屋なのですが、僕はこの店の社長・中川和彦さんと意気投合して「本屋で
なにか社会実験をしたい」と大それたことを提案し、実践させてもらっています。
その実験の幾つかをご紹介すると、一つは「本屋でラジオ」です。これは、来年か
ら始める予定なのですが、「スタンダードブックストア」の地下 1 階にあるカフェ
併設のイベントスペースをスタジオにして、月に1回、僕と雑誌「IN/SECTS」編
集長の松村貴樹さんがパーソナリティとなって本屋内でラジオを流します。まぁ、
いわゆる館内放送です。「スタンダードブックストア」は地下 1 階と、地上階の2
フロアからなる書店なのですが、ラジオのオンエア中はどちらのフロアにもラジ
オが流れます。店内にいるお客さんは、カフェでラジオを聞くのもよし、本棚で
本を選びながら聞いてもいい。ラジオの会話を聞いて気になった本があれば、本
棚に行って手にとることもできます。
トークの話題は「なんでもあり」です。これは中川さんの言い方なのですが、「本
屋だからこそ、いろんな文脈の棚がある」と。つまり棚というのは、文脈の宝庫
なので、この空間には話題に火のつくものはなんだってあるんだから、という考
え方に僕はすごく賛同しています。料理であろうが、建築であろうが、子育てで
あろうが、お酒の話であろうが、なんの話をしてもいいのが本屋だと思うんです。
それってすごいことですよね。
同じく「スタンダードブックストア」で、現代編集者の米田智彦さんが出され
た『僕らの時代のライフデザイン』(ダイアモンド社、2013 年)の出版イベントの
際に、mogu book のサトウアヤコさんが考案した「本棚ツアー」というものをや
りました。当日、出版イベントは 12 時開演だったのですが、米田さんと僕たちは
店が開く10時から店内に入り、スタンダードブックストアの本棚をくまなく回っ
て、米田さんにかつて読んで気になった本を選んでもらったんです。米田さんは
フリーランスのエディターなのですが、1 年間、家やオフィス、家財道具を持た
ずに旅をし、そこで出会ったさまざまな「ライフデザイナー」の働き方や暮らし
出版記念トークの前に「本棚ツアー」に出る米田智彦さん
46 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
方を紹介する 生活実験プロジェクト「ノマド・トーキョー」を行ったユニークな
人で、僕たちは米田さんがどうやったら今の米田さんになったのか、その片鱗を
「米田さんが選んだ本」から知りたいと思ったんです。つまり、米田さんをつくっ
ている「背景本」です。
米田さんは「うわー、この本で泣いたな」とか、「めっちゃ懐かしいな。実はこ
の本って云々…」とか言いながら 店内の本棚から 10 冊を選び出し、最終的には
3 冊が「米田さんをつくっている背景本」となりました。
本棚ツアーが面白いのは、即興で本を選ぶので、米田さんのいろいろな意識や
無意識が選書に出てくるのです。例えば米田さんの場合、建築の棚の前で「僕が
一番、苦手な棚はここですね」となりました。どうも米田さんには、建築という
ジャンルに関心はあるけど、少し複雑な思いも持っているみたいで、こういうこ
とも浮き彫りなるんですね。それは、米田さんに「米田さんをつくっている本を
3冊持ってきてください」と事前にお願いするのとでは、全く違う結果になった
と思うんですね。
イベントに来たお客さんには、米田さんが本棚ツアーをしている様子をスライ
ドで見せながら、米田さんの背景本を紹介しました。
当日は『僕らの時代のライフデザイン』の「背景本」として、安藤忠雄さんの本
も販売しました。売れなかったですけどね(笑)。こういう選書は、Amazon のお
すすめ本機能からは絶対に生まれないでしょう。スタンダードブックストアでの
一連の試みは、文字通り「本屋を編集する」ことを実感しました。
2000 年から兵庫県宝塚市で開催されている市民映画祭に、「宝塚映画祭」とい
うのがあるのですが、この映画祭は市民が中心となって企画・運営しています。
宝塚はかつて日本最大級の映画撮影所があった町で、地元の映画館で映画を見る
ということを映画祭で地道にやってきたのですが、集客の面などいろいろ課題
があったようなんです。そこで映画祭のあり方を抜本的に変えようということで、
かつて僕と一緒に大阪で「住み開き」をやった編集者の岩淵拓郎さんがディレク
市民が自律的に図書館を使う
47本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
ションし、映画を通して地域コミュニティや地域文化に対してさまざまな角度か
らアプローチを行う試みをやり始めたんです。
自分たちの好きな場所を街の中で撮影して、一斉に上映するプロジェクトとか、
「シネマハック」といって、街の映画館を楽しくする 100 の方法を映画館のスク
リーンを使ってみんなでプレゼンする企画とか、いろんなことを試みているよう
です。
僕は宝塚映画祭の試みをぜひ、図書館の方にも参考にしていただきたいと思っ
ています。たとえば市民が中心になって「図書館祭」をつくるようなことがあっ
てもいいと思います。つまり、僕は「図書館を自律的に使っていいんだ」と思える
ような感覚を市民が養うことこそが、とても重要だと思っているんです。
図書館を「本を借りるだけの場所」とか、「静かに本を読むための場所」だけだ
と思っている人がまだ多いと思うのです。それは、図書館側にもそういう考えが
当たり前のようにあるのかもしれません。図書館で自律的になにか企画ができる
というのは、僕が知っている図書館だと関西なら奈良県立図書情報館でしょう
か。「図書館でなんかやってよ」と言われて、電子音楽のワークショップ(僕がド
ラマーとして参加している「SjQ」というユニットで 2013 年春に企画した「SjQ ラ
ボ . ∼音による創造のワークショップ∼」)をやれるのも、あの図書館があるから
なんです。それは、職員に乾聰一郎さんというある意味では、図書館界における
異端の存在がいるからだとは思うのですが、そのことは乾さん自身が一番理解し
ていらして、だからこそ「図書館」という場のあり方を変革しているのだと思い
ます。
図書館という場が持つ意義はいろいろあると思います。僕は、図書館で本を探
しているときの司書さんの姿というのは、もの凄くかっこいいと思っています。
文化的なものを扱っている人の姿をリアルに見られる場所って、実は意外とない
んです。たとえば美術館の場合は、警備の目的で座っている人はいますが、キュ
レーターの姿は表では見かけないですよね。美術館やコンサートホールに毎週行
く人はそんなにいないと思いますけど、図書館ならばいるでしょう。しかも無料。
そういう身近な場所で、本という文化的なものを目の前で扱い、知識をもって紹
介してくれる人に触れること自体がとっても重要なことだと思います。
48 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
ですから、図書館の本を電子書籍にして、ネットを使えばすぐに知識や情報に
アクセスできるようにするといった効率的な話よりも、図書館の本を使って、世
界と自分をつないでくれる人がいる、そういう場所の空気から学びとれる情報量
や教育というのは、絶対にあると思います。
もし僕が館長だったら、個人的な本との関わり方や本にまつわる記憶みたいな
ものを、その地域や図書館に集まるコミュニティの財産に変えていくようなプロ
ジェクトがやりたいですね。その人がその本とどういう関わり方を持ったかとい
うことをそれぞれ共有しながら、公開したり、シェアしていくような仕組みを通
じて、地域の図書館に通う人同士が結果的に交流するような場をつくりたい。そ
ういったコンセプトを図書館全体の空気として表すかどうかは別として、なにが
しかそういう仕掛けはするでしょうね。
あとは、「ライター・イン・レジデンス」の仕組みをつくります。すでに海外の
図書館には事例があるそうですが、僕自身がアーティストとしてアーティスト・
イン・レジデンスによく招いていただくんです。地域の商店街の空き店舗にレジ
デンスするとか、あるいは先日も「アーティスト・イン・スクール」といって、札
幌市内の小学校に滞在していました。小学校で滞在制作をするというプロジェク
トで、僕は「大きな転校生」として児童たちと給食を一緒に食べたり、話し合った
り、一緒に音楽で遊んだり、そのプロセスに先生方にも参加をしてもらったりし
ました。
アーティスト・イン・スクール、アーティス・イン・ホスピタルなどがあって、
アーティスト・イン・ライブラリーもありえるでしょう。地域の公共施設という
インフラをアーティストが滞在することによって、地域とのハブを新しくつくっ
たり、地域の人と図書館で働く人がリアルタイムで 1 冊の本をつくり出すような
な状態を、図書館でつくれたら素晴らしいと思います。
49本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
『編集進化論 editするのは誰か?』(仲俣暁生+編集部編、フィルムアート社、2001 年)
『住み開き 家から始めるコミュニティ』(アサダワタル、筑摩書房、2012年)
『ミュージッキング 音楽は“行為”である』(クリストファー・スモール、野澤豊一訳、
西島千尋訳、水声社、2011年)
『新・エディターシップ』(みすず書房、2009年)
『集合的記憶』(M.アルヴァックス、小関藤一郎訳、行路社、1999年)
『メモリースケープ  「あの頃」を呼び起こす音楽』(小泉恭子、みすず書房、2013年)
『サウンドとメディアの文化資源学 境界線上の音楽』(渡辺裕、春秋社、2013年)
『添田唖蝉坊 唖蝉坊流生記』(添田唖蝉坊、日本図書センター、1999年)
『n次創作観光 アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性』(岡本健、
NPO法人北海道冒険芸術出版、2013年)
『ウェブ社会のゆくえ〈多孔化〉した現実のなかで』(鈴木謙介、NHK出版、2013年)
参考図書
50 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
図書館でのビブリオバトル
実施アドバイス
2006年京都大学工学研究科博士課程修了。2008年より立命館大学情報理
工学部助教、2010年より同准教授。個体と組織における記号過程の計算
論的な理解や、共生社会に向けた知能情報学技術の応用についての研究
に従事する。
著書に『コミュニケーションするロボットは創れるか 記号創発システム
への構成論的アプローチ』(NTT出版、2010年)、『ビブリオバトル 本を知
り人を知る書評ゲーム』(文春新書、2013年)がある。
谷口忠大(たにぐち・ただひろ)
1. 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。
2. 順番に一人5分間で本を紹介する。
3. それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2 ∼
3分行う。
4. 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした
投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めたものを「チャンプ本」とする。
これがビブリオバトルの公式ルールだ。たった 4 つのルールと 5 分間のプレゼ
ンで熱く戦い、本を絆に人とつながる新感覚の書評ゲームである。各種メディア
の報道や、堺市立中央図書館などの実施で広く知られているが、「実際に図書館で
実施する時、一体どんなことを心がけたらいいのだろう?」という声も多い。そ
こで今回はビブリオバトルの考案者である谷口忠大さんに「図書館でのビブリオ
バトル実施アドバイス」というテーマでロングインタビューを行った。
図書館での実施方法をはじめ、トラブルシューティング、そしてこれからのビ
ブリオバトルと図書館のつながりまでを一気に語っていただいた。
51本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
――今回はビブリオバトルを図書館で実施していくにあたって、どんなことに気
をつけていけばいいかを中心にお伺いしたいと思います。まず、ビブリオバトル
の普及活動については、どのように行われているのでしょうか?
谷口:僕たちはビブリオバトル普及委員会というのを一応つくっていて、そのメ
ンバーが各地でいろいろ活動しています。ただ、まだまだ人数も少ないですし、
ビブリオバトルに興味を持ってくださった図書館職員の方から「ビブリオバトル
を実施したいので、普及委員の方に手伝って欲しい」といったご意見をいただく
ことも多いのですが、なかなかそうしたリクエストの全てに応えきれないのが現
状です。
また、ビブリオバトル普及委員はみんなボランティアなんですね。ボランティ
アのもとの意味である「voluntary(=自由意志の、自発的な)」の通り、自分たちが
自発的に面白い、こう普及活動をしたい、と思われたことに関わっていくという
スタイルで動いています。みんな給料が払われているわけではないですからね∼。
そういう意味で、それぞれに独立性も高く、それぞれにビブリオバトルのフィー
ルドを持っています。書店や大学、中高等学校、会社の中など、それぞれの関心の
フィールドはさまざまです。図書館のビブリオバトルに興味を持つメンバーはそ
の一部なので、人数は多くはなく、図書館でのビブリオバトル実施のお手伝いも
なかなかできるわけでもありません。皆さん平日は本職のお仕事がありますしね。
ただ、それ以前に、ビブリオバトルはやっぱりやりたいと思った人が、その組
織の中で自ら開催すべきだという思いを僕は強く持っています。
僕自身、ビブリオバトルは「だれでも簡単に実施できる」ことを大切に生み育
ててきました。ですから「ビブリオバトルを実施したい」というお声がけをもらっ
ても、基本的には図書館が主体的
に実施していただくことを前提と
してお話します。
ビブリオバトルの開催自体はメ
チャクチャ簡単ですからね。上司
の説得は難しかったりするでしょ
うが……。
公共図書館でのビブリオバトル
求められるのは図書館の主体性
有隣堂本店で行われたビブリオバトルの様子(2013 年 5 月)
『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』第5号(2013年12月)
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  • 1. LRGライブラリー・リソース・ガイド 第5号/2013年 秋号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 Library Resource Guide ISSN 2187-4115 特別寄稿 内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大 特集 嶋田綾子 司書名鑑 No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館) 本と人、人と人をつなぐ 仕掛けづくり 本と人をつなぐ図書館の取り組み
  • 2. LRG Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第5号/2013年 秋号 発行/アカデミック・リソース・ガイド株式会社 特別寄稿 内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり 特集 嶋田綾子 本と人をつなぐ図書館の取り組み 司書名鑑 No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館)
  • 3. 2 巻頭言 ライブラリー・リソース ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 秋号 ようやく『ライブラリー・リソース・ガイド』第 5 号を刊行することができました。 2012 年 11 月に創刊した本誌は、ちょうど 1 年を経て、第 2 期ともいえる 2 年目 に入ることができました。 この 1 年、本誌にもさまざまなことがありました。創刊と同時に開催した第 14 回図書館総合展のフォーラム「図書館 100 連発 フツーの図書館にできること」は、 満員御礼、好評のうちに終了しました。その後も、研修などで「図書館 100 連発 の話をしてほしい」とのご要望をいただいています。 また、2013 年の秋に開催した第 15 回図書館総合展では、「第 1 回 LRG フォー ラム」と銘打って、「図書館の資金調達」をテーマにフォーラムを開催しました。 このフォーラムでは、小誌の第 3 号と第 4 号で取り上げた事例の関係者、寄稿者 にお話をしていただき、より実践的に議論を深めています。 さて、今 5 号では、 ●特別寄稿「本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり」  内沼晋太郎、アサダワタル、谷口忠大 ●特集「本と人をつなぐ図書館の取り組み」  嶋田綾子 ●司書名鑑No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館) の 3 本立てとなっております。 巻頭言 図書館をひらくために
  • 4. 3巻 頭 言   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 今号では、特別寄稿と特集がほぼ同一のテーマとなっております。これまで図 書館に求められているのは、個人の営みである「読書」が中心でしたが、これから は図書館から始まるコミュニティ機能も求められています。このような潮流のな かで、図書館で取り組める「人と人をつなぐ仕掛けづくり」を、本に関わる人々か ら学ぶ、というのが今号の狙いです。 内沼晋太郎さんは、下北沢で「Book&Beer」をコンセプトにした街の書店「B&B」 を経営しています。発見のある「小さな街の本屋」を目指して、日々、棚づくり、 イベント開催に励んでいらっしゃいます。気鋭のブック・コーディネーターとし て、「本」をめぐるさまざまな試行的実践と、これからの「書店」のあり方をビジネ スとして模索するその思いを伺いました。 アサダワタルさんは、図書館業界では 2011 年の Library of the Year2011 受賞 が記憶に新しいところです。自宅を少しだけ「ひらい」てコミュニティをつくる 「住み開き」、そして、「日常編集」というユニークな活動のなかで、「本」を媒介と した、図書館の再編集につながるような話を語っていただいています。 谷口忠大さんは、図書館でも近年行われるようになってきた、書評を使った本 の紹介ゲーム「ビブリオバトル」の発案者です。ビブリオバトルは、人の紹介を通 して面白い本に出会うこと、面白い本を紹介する人に出会うことに醍醐味があり ます。簡単なルールを守るだけで誰もが実践でき、図書館でも注目される「ビブ リオバトル」を楽しむ秘訣を伺いました。
  • 5. 4 巻頭言 ライブラリー・リソース ・ ガ イ ド 2 0 1 3 年 秋号 特集「本と人をつなぐ図書館の取り組み」では、本と人をつなぐために図書館 が行っているさまざまなイベントや本を紹介する取り組みについて、紹介してい ます。古くから行われている定番の取り組みから新しい試みまで、「本と人をつな ぐ」をキーワードに、事例を紹介しています。新しい試みはそのまま実践できる ように、定番の取り組みはよりよい実践のヒントとなるような事例をピックアッ プしています。 図書館でも、書店でも、本を紹介する取り組みは、新旧さまざまにあります。そ してそのいずれの取り組みも、本を一人で読むだけではなく、そこから人々がつ ながっていき、新たなコミュニティが生まれることを目指しています。 そして、今 5 号から、新企画が始まります。それは「司書名鑑」です。 記念すべき連載第 1 回は、関西学院 聖和短期大学図書館の井上昌彦さんにご登 場いただきました。井上さんといえば、「図書館員のセルフブランディング」の必 要性を説き、自らの「ミッション」を掲げて、精力的に活動しています。仕事のこ と、ミッションを掲げるにいたった過程、そして「情報の持つ力」への思いを語っ ていただきました。 「司書名鑑」では、今後も図書館の内外で活躍しているライブラリアンにご登場 いただき、その仕事や図書館への思いを語っていただきます。図書館は決して個 人の活動で成り立っているものではありませんが、そこには、多くのライブラリ アンの努力と思いがあります。限られた紙面のなかで、その活躍の全てを記すの はかないませんが、一人でも多くのライブラリアンの活躍を微力ながらもご紹介 できれば幸いです。 編集兼発行人:岡本真 責任編集者:嶋田綾子
  • 6. 5巻 頭 言   ラ イ ブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号
  • 7. 巻 頭 言 図書館をひらくために[岡本真+嶋田綾子] …………………………………………… 2 特別寄稿 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり[内沼晋太郎・アサダワタル・谷口忠大]……… 7      「本」をめぐる冒険[内沼晋太郎]…………………………………………………………… 10      「本」が生み出す、これからのコミュニティ[アサダワタル]………………………………… 30      図書館でのビブリオバトル実施アドバイス[谷口忠大]…………………………………… 50 特  集 本と人をつなぐ図書館の取り組み[嶋田綾子] …………………………………… 65 LRG CONTENTS Library Resource Guide ライブラリー・リソース・ガイド 第5号/2013年 秋号 一日図書館員 ブックスタート ぬいぐるみのおとまり会 夏の自由研究サポート おはなし会 図書館ツアー(図書館見学)、館長懇談会 図書館福袋 読書会、ビブリオバトル 参加型POPづくり、参加型しおりkumori サイエンスカフェ、ライブラリーカフェ、作家の講演会 郷土資料講座、文学散歩 図書館コンサート 図書館まつり 選書ツアー 上映会 司書名鑑 No.1 井上昌彦(関西学院 聖和短期大学図書館) アカデミック・リソース・ガイド株式会社 業務実績定期報告 定期購読・バックナンバーのご案内 次号予告 ……………………………… 146 ……………………………………… 152 ………………………………………………………………… 156 ……………………………………………………………………………………………… 158 ………………………………………………………………………………… 66 ………………………………………………………………………………… 70 ……………………………………………………………………… 76 ……………………………………………………………………… 80 …………………………………………………………………………………… 84 …………………………………………………… 90 …………………………………………………………………………………… 96 ……………………………………………………………………… 100 ………………………………………………… 106 …………………………………… 112 …………………………………………………………………… 118 …………………………………………………………………………… 124 ………………………………………………………………………………… 128 ………………………………………………………………………………… 134 ……………………………………………………………………………………… 140
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  • 11. 10 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 「本」をめぐる冒険 これからの本屋「B&B」を 生み出した試行と実践とは 1980年生まれ。一橋大学商学部商学科卒。numabooks代表。ブック・コーディ ネイターとして、異業種の書籍売り場やライブラリーのプロデュース、書店・取 次・出版社のコンサルティング、電子書籍関連のプロデュースをはじめ、本に まつわるあらゆるプロジェクトの企画やディレクションを行う。 2012年、下北沢に本屋「B&B」を博報堂ケトルと協業で開業。ほか、読書用品ブ ランド「BIBLIOPHILIC」プロデューサー、これからの執筆・編集・出版に携わる 人のサイト「DOTPLACE」編集長など。著書に『本の未来をつくる仕事/仕事 の未来をつくる本』『本の逆襲 』(ともに朝日新聞出版)。 内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう) 2012 年、下北沢南口からすぐのところに「これからの街の本屋」をコンセプト にした本屋が生まれた。店内にはクラシック音楽が静かに流れ、30 坪ほどの店内 には、シックな書棚に個性的な本が並べれられている。 「B&B」はお酒が飲めるブックショップ。アルコールを手にしながら、好きな本 を選び、未知の世界に心を踊らす時間……。 ふつうの書店とはその趣きを異にするここ「B&B」は、ブックコーディネイター として活躍する内沼晋太郎さんが共同プロデュースした街の本屋である。 内沼さんはそのキャリアのほとんどを、「本」をめぐる試行と実践に費やされて きた。その「本」をめぐる冒険には、「本」の存在を拡張するための表現が、「本」と の出会いを生み出すための実験が、「本」が置かれている困難な状況を打破するた めの問題提起が、常にある。 長らく低迷していた本の業界を、驚きの発見とともに面白くしている人の一人 である内沼晋太郎さんに、本をめぐるさまざまな試行と実践、その思いを伺う。
  • 12. 11本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 僕は 1980 年に生まれたのですが、僕たちの世代は「最近の若い者は、本を読ま なくてけしからん」といったことを、上の世代から常に浴びせられてきたんです。 僕自身は本が好きで読んでいたのですが、仲のいい友達のなかには、本を全く読 まないのも確かにいました。でも僕は、そういった活字離れ世代への嘆きを聞く たびに「それは、本当に自分たちが悪いんだろうか?」って漠然と感じていたん です。本を読まない友達の多くは、新しい知や情報に対して鈍感ではなく、むし ろ敏感なんです。では「なぜ、彼らが本を読まないのか」というと、それまでの人 生のなかで「本と出会う機会がなかったから」だけなのではないかと思ったのです。 僕たちの世代というのは、ちょうど中高生の頃にポケットベルがはやって、そ れが PHS になって、やがて携帯電話になったり、パソコン通信がインターネッ トになって、電話回線から日進月歩で光回線になったり、ゲーム機や音楽メディ アもめまぐるしく進化していったのを、多感な年齢の時に身をもって体験し てきた世代なんです。通信やエンターテインメントの世界で、できることや面 白いことが加速度的に増えていく、そうすると本は生まれたときからあるので 「あってあたりまえ」なのですが、ほかのものは目新しく身の周りに飛び込んでき て、それらを中心に毎日をおくっていたら、本と出会わなくても無理もないと思 うんです。 こういうふうに考えると、悪いのは僕たち世代の側だけにあるのではなくて、 本を届けている側にも問題があるのではないかということに気がつきます。つま りそうした状況において、出版社も、取次も、書店も、図書館も、出版業界と呼ば れる本に関わる人たちは、「ゲームよりも本のほうが面白い」とか、「携帯電話よ りも本のほうが夢中になれる」といったメッセージなり仕掛けを、本から離れて いる世代に向けて発してこなかったと思うんです。こういった状況に気がついた ことが、僕の活動の原点かもしれません。 必要なのは「本との出会いをつくる」仕事 そもそも「本と出会う機会」がない――その視点に気がついたときに、「本の出 会い」を生み出す必要があると思ったんです。つまり、書評家がやるような「この 活動の原点は、活字離れ世代からの問題提起
  • 13. 12 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 本が面白いよ」を伝えるもっと手前の、「本って面白いんだよ」ということを伝え るための仕組みや仕掛けを考える仕事です。「この本が面白いよ」というメッセー ジは、本を読む人にしか届かないんです。もちろん、当時はそれが仕事になるか 分かりませんでしたし、ここまで明確に言葉にできていませんでしたが、そうい うことこそが必要だなと思いました。 ですから、就職活動をする頃には、出版社や書店とかに入っては駄目だと思っ たんです。たとえば出版社の採用面接で「出版業界をなんとかしたいので、本の 面白さを伝える仕事がしたいんです」と言ったとしても、「なにを言ってるんだ。 まず売れる本をつくれ」と言われるに決まっています。ファッション雑誌の編集 部に所属したら、新人のうちは原宿あたりを歩いているおしゃれな子をみつけて スナップ写真を撮らせてもらうみたいな毎日のなかから、「本の面白さ」を伝える ところにいくまでには何十年もかかるだろうと思いました。 そこで、本と少し離れた場所から本と関われる仕事がしたいと思って、ブック フェアなども手がける某国際見本市の主催会社に入社しました。面接の時に「出 文庫本葉書
  • 14. 13本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 版業界をなんとかしたいから、ブックフェアをやりたい」と言ったら、面白がら れて採用されたんです。「展示会ビジネスが伸びているから」といった志望理由が 大方だったそうなので、僕みたいなのは珍しかったみたいですね。ですが、僕自 身がたぶん会社員に向いてないこともあって、2 ヶ月半で辞めました。 会社は辞めたものの、「本の面白さを伝える」という視点はもち続けていたの で、学生時代に一緒に活動していた仲間と、本と人との出会いを提供するユニッ ト「book pick orchestra(ブックピックオーケストラ)」※ 1 をつくりました。 本に興味のない人が、どうやって本と出会うか 「book pick orchestra(ブックピックオーケストラ)」は、ネットの古本屋とし て活動を始めました。そのころはアマゾンのマーケットプレイスがない頃で、ラ イターの北尾トロさんを先陣に※ 2 、個人のネット古本屋がたくさんあったんです。 僕たちはむしろ後発組でしたし、ただ古本を売って稼ぐことよりも、「本と人との 出会い」を意識しながら、面白いことやまだやられていないことを仕掛けていこ うと思っていました。 たとえば「文庫本葉書」というのがあります。これは文庫を 1 冊ずつクラフト 紙に包んで、クラフト紙の表面にハガキのような宛名欄、裏面にその本から抜き 出した印象的な一節を印刷したものです。手にした人は、裏面に印刷された引用 文を眺めて、心に響いたら買ってもいいし、切手を貼って誰かに送ってもいい。 本を読まない人にとっては、「あってあたりまえ」すぎて気にとめることもなかっ た本の存在が、包まれて見えなくなることで本と出会い直せるし、本を読む人に とっては、出版社やメディアの売り文句などの先入観を介さないことで、普段は 手にしない本と出会えるはずです。「包む」ということでは、横浜の馬車道ほかで 企画した会員制・予約制・入場料制の期間限定の本屋< encounter. >も同じで、 これはもともと横浜の BankART というアートギャラリーで、作品として発表し た企画です。 また、渋谷パルコのロゴスギャラリーで行われたイベント「新世紀書店・仮店 舗営業中」では、本が苦手だと思っている人に、どうしたら本を楽しんでもらえ るかを考えて、< she hates books >< her best friends >という企画をしました。
  • 15. 14 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 < she hates books >は、「本嫌いの彼女に本を読ませる本屋」というコンセプト のもと、選曲した音楽の気分に合わせた古本を CD とともにセットで販売したり、 < her best friends >では本を並べるのではなく、その本をお薦めした人の顔写 真を壁に貼って、本を販売しました。お薦めした人の顔写真には「好きな食べも の、出身地、本の値段」などのプロフィールがあって、お客さんはそれを手がかり に本を買うという仕組みです。 「book pick orchestra」での活動を通して僕が重要にしていた問題意識の一つと いうのは、「本に興味のない人が、どうやって本と出会うか」ということです。自 分で本を選べる人というのはもう読者ですから、そこにだけ向けて発信していて も、本に興味がない人へは届かない。ではどうすればいいかというと、それは音 楽などのほかのジャンルからのアプローチが有効かもしれないし、自分と気の合 いそうな人からのリコメンドかもしれない。方法は多様にあると思います。 こういったことは、出版社も、取次も、書店も、やってられないわけです。「確 かに面白いけど、手間ひまがかかりすぎる。ビジネスにならないよね」となって、 本を隠して売るようなことを思いついたとしても、自分の立場とか、やる意味と かを考えて、やってこなかったと思うんです。でも、僕たちはそれが必要だと思っ たし、誰もやっていなかったからやったんです。 僕は大学では商学部に在籍し、ブランド論を専攻していたのですが、ブランド 論を学んだことは今の自分の仕事に非常に役に立っています。ブランディングと いうのは、商業的な意味での付加価値を考えることなのですが、そうした勉強を しているうちに「本屋って、洗練されてない店が多いな」とか、「出版社ってコン セプトがみえないな」とか、出版業界はとてもブランディングが下手だというこ とに気がついたんです。ブランド論の教科書に出てくるブランディングの事例は、 飲食やファッション、車などの業界からばかりで、本に関わりのある業界からは 一つも出てこないんです。 ブランディング力のない出版業界
  • 16. 15本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 例えば「スターバックスコーヒー」にはコンセプトがきちんとありますが、「『講 談社』のコンセプトって、なんだろう?」とか、最近でこそコンセプトをもった新 書シリーズはありますけど、当時は「この新書だったら、全部買い揃える」みたい なことには、まったくなっていませんでした。でも音楽だと、たとえば「ブルー ノート・レコード」といったジャズレーベルなら、「○○番台は全部、集めている」 みたいな人がいるでしょう。 紙の本は再販制により、全国一律の定価販売が維持されているので、良くも悪 くも競争したり、差別化する必要がなかったのだと思います。だからこそ、つま らない状況になってしまった部分もあるのだと思います。 僕は、音楽も、美術も、映画も好きでしたが、とりわけ本を仕事にしようと思っ たのは、ひと言でいうなら、出版業界がまだまだ未開拓で、やれることが沢山あ ると思ったからです。「ただの斜陽産業」という人もいましたけど、「この本屋が かっこいい」とか「この出版社の、このレーベルが面白い」とか、そういったメッ セージをきちんと伝えることとか、やれていないことがたくさんあるなと思いま した。 「読書用品のブランド」という発想 たとえば「ビブリオフィリック」※ 3 は、「ディスクユニオン」と立ち上げた「本 のある生活」を楽しむための読書用品のブランドです。「ディスクユニオン」は関 東圏の方はご存知の通り、中古 CD の販売をメインにしている会社です。「ディス クユニオン」にはジャズ館やロック館など、ジャンルごとに専門特化した館があ り、そのなかに「CD・アクセサリー館」というのがあって、レコードの針とか袋 とか CD を入れる専用の袋やラックなど、音楽を聞くための周辺機器や道具だけ を販売しているのですが、それがうまくいっていたんです。 ある日、以前から付き合いのあった「ディスクユニオン」の社長に、「内沼さん、 本でこういうのって、できないかな?」と尋ねられたんです。 実は、僕もその頃 同じようなことを考えていたのです。それは、電子書籍がこれから盛り上がるこ とによって「データでいいものはデータで読むけど、紙で読みたいものは書籍で ほしい」というふうに二極化するだろうということです。つまり、紙で読んでい る人というのは、「モノとして」大事にしたいということになるので、大事に本を 保管するための道具が必要になるはずだ、と。
  • 17. 16 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 本がモノ化するこの感じは CD とかレコードが辿ってきた道と似ていて、「デー タでいいものはデータで聴くけど、アナログで聴きたいものはレコード盤で買 う」といったことと似ているんです。ですから社長の言っていることはよく理解 できたので「今はまだないけど、絶対にやるべきだ」と思って、僕が提案をしまし た。「ビブリオフィリック」では、本棚、しおり、ブックカバー、付箋のほか、読書 用の音楽も販売しています。 「道具のブランド」というのは、アウトドアブランドを意識していて、例えば 「キャンプをしよう」となったときに、キャンプそのものの魅力もあるのですが 「このテントを張りたい」とか、「この飯ごうを使いたい」とか、道具から入る人は 結構いますよね。いま、アウトドアの雑誌もたくさんありますが、モノ自体の格 好良さが入り口でその世界に入っていくということが、ある種の趣味にはあるわ けです。 下北沢南口すぐにある書店「B&B」
  • 18. 17本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 読書というのも、もはやその種の趣味になりつつあるとすると「あの素敵な ブックカバーを電車のなかで広げたいから、本を読もう」というような、そうい う方向だってありうると思いました。こういうことを考える僕のモチベーション には、やはり「本を読む人を増やしたい」というのがあります。 「B&B」は僕が代表をする「numabooks」※ 4 と、嶋浩一郎さんが代表をする「博 報堂ケトル」が、下北沢の駅前に恊働して 2012 年に開業した「街の本屋さん」です。 僕も嶋さんも、街の本屋だけに特別な思い入れがあるわけでなく、ネット書 店も利用するし、電子書籍にも期待しているし、大型書店にもよく行くし、街の 本屋も好きなんです。ですから二人でいろいろな仕事をするなかで「本屋をやろ う!」となったとき、共通する視点としてもっていたのが「本を楽しむ環境がい ろいろあるのが、一番豊かだよね」ということでした。選択肢がたくさんある未 来をつくりたいと思いました。だから、そのなかで消えてなくなりそうだった「街 の小さな本屋」をやることにしたんです。 「街の小さな本屋」のビジネスモデルはもう崩壊していて、20 ∼ 30 坪のスペー スで新刊の本だけを売っていては、とっくに成り立たなくなっているんです。当 然、僕も嶋さんも、新刊書店の経営者という意味では素人だったのですが、素人 だからこそ、その生き残り方が見つけられそうな気がしたんです。では具体的に 「街の小さな本屋の生き残り方」とはなにかというと、僕たちがしていることはた いしたことではなくて、本を売るというメインのビジネスに対して、イベントを やったり、ドリンクを出したり、家具を売ったり、最近では英会話教室も始めた のですが、こうした相乗効果のある複数のビジネスを組み合わせて、全体として 成り立たせるということです。どんなビジネスでもそうですが、利益を得られる ものが複数あるとリスクヘッジになるわけです。 僕は、「B&B」の事業を成り立たせることで、街の小さな新刊書店が置かれてい る状況を更新したいと思っています。「こういうやり方であれば、まだやっていけ るんだよ」というメッセージを発信し 、どんどんこのモデルを真似してもらいた いと思っています。 「街の小さな本屋」のビジネスモデルを提案する
  • 19. 18 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 他のビジネスで収益をあげて、個性的な棚をつくる 70 年代から 90 年代初めは、書店業界はバブル期でした。棚に本を置けば飛ぶ ように売れた時代があって、その頃のほうが街の本屋に個性があったんです。つ まり売り上げが立っているから、本好きな店員が本棚に手をかけられた。でも本 が売れなくなって売り上げが立たなくなると、人件費の削減のために社員が少な くなって、バイトが増えて、業務を効率化するので、個性的な棚がつくれなくなっ たんです。 たとえばレストランだったら、売り上げが下がったときに、食材を良いものに して単価を上げて高級路線にいくとか、逆に原価を下げるとか、やれることがた くさんあるでしょう。でも本というのは、どこで買っても同じ商品だし、日本全 国仕入れ値もほとんど、売値はまったく同じです。ビジネス上の工夫がしにくい 業態なんです。ですから、経営が悪くなったときにやれることは、本を返品する か、人件費を削減するしかない。 ある本屋の棚がどんどんスカスカになって面白 くなくなっていくときには大抵、その店の経済的な事情がとても影響しています。 「B&B」では、個性的な棚をつくってきた先陣たちをお手本にして、文脈棚をつ くっています。文脈棚というのは、僕がかつてアルバイトをしていた千駄木にあ る往来堂書店の初代の店長・安藤哲也さんが提唱した棚づくりの方法で、「この 本の隣にこの本があって、その隣にこの本がある」という文脈が面白みになって いくような本棚のつくり方です。いわゆる「人文」「科学」「料理」といった一般の 本屋の分類に従えばバラバラに置かれるはずの本を、ある文脈に沿って同じ棚に 並べることで、ストーリーやメッセージを生み出すことができます。文脈棚とい うのは、その店の個性を出しやすいのですが、どこの書店でもできるわけではな いんですね。つまり、それをやる余裕がないんです。きっとどの書店員さんも、棚 に手をかけたいはずだと思うのですが、なにせ時間がない。なぜ時間がないのか というと、儲かってないからなんです。 「B&B」は複数のビジネスをしていますが、あくまでメインは「本屋」です。です から、商品である本を置く棚には手をかけますし、「 B&B」でそれができているの は、イベントやドリンクなどの他のビジネスで成り立っているからなんです。 継続するための循環の仕組み 「B&B」では、毎晩イベントをやっています。これはなにがなんでも絶対と決め
  • 20. 19本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ていて、なぜかというと「B&B に行けば、夜はいつもなにかやっているよね」と お客さんに認識してもらうことが、一番重要だと思っているからです。前日にイ ベントが決まっていなかったら僕ひとりでも出ますし、「たとえお客さんが3人 でもやる」ということを徹底しています。こういうことは徹底しないと「儲かっ てきたから、イベントは週3日でいいかな」と思ってしまうかもしれないし、担 当者が辞めたとたんに、イベントのスケジュールに穴が出てしまうということは、 よくあることなんです。「B&B」ではイベントを毎日やって、売り上げや集客の目 標があることを前提としています。それ以外はわりと自由で、本と関係のあるイ ベントであればオッケーです。基本はその本の著者や編集者が来て、それに関連 して売る書籍があることですね。今、10 月上旬ですが、僕たちがいつぐらいのイ ベントを企画しているかというと、11 月末くらいです。つまり 10 月は、もう空 きがない。11 月の上旬もほとんど埋まっている。イベントが決まれば、関連本を 出版社に発注してストックしています。 イベントで「B&B」に来るお客さんは、ある著者のファンで足を運んでくれて、 店内でドリンクを飲んでいく。イベントで過ごす時間が心地良ければ、「B&B」の 店内には、ビアサーバつきのカウンターがある
  • 21. 20 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ファンになってくださるかもしれない。ファンになってくだされば、また足を運 んでくれて本が売れていくという、こういう循環のための相乗効果が重要だと 思っています。 「B&B」という名前の由来は「Book&Beer」です。僕も嶋さんもビールが好きだっ たので、「本屋で昼間からビールを飲みながら、棚の本を選べたらすごくいいよ ね」みたいなところから発想しました。こういうことをやると、「いや、俺もやろ うと思っていたよ」みたいなことを言う人が現れるんですが、やろうと思うのと、 実際にやるのは違うわけです(笑)。 たいていはやろうと思っても「商品にビールをこぼされたら困るな」とか、「昼 間からビールを出したら、店のなかでお客さんが泥酔しちゃうんじゃないか」と か、脳内で勝手に完結して諦めちゃうんですよ。でも、本屋でビールが飲めたら すごくいい。「すごくいいことには人がたくさん来るし、話題にもなるはずだ」 というところに、僕も嶋さんも自信がありました。重要なのはそこから先です。 「どうしたら、それができるのか」を、考えなくてはいけない。 僕たちはいろいろ工夫しているのですが、一つは店内の空間デザインです。た とえば「ビレッジヴァンガード」のような、雑多な空間デザインをコンセプトにし ている書店でビールを出したら、もっとこぼされると思うんですよ。でも「B&B」 は、とてもゆったりと整然としていて、音楽もクラシックやジャズなどを静かに 流しています。こういう空間で、人は酔っぱらいたいと思わないんです。つまり、 僕たちは「ここで何杯も飲んで、倒れたり、吐いたりしてほしくない」ので、そん なことをしたくなくなる空間を設計すればいいわけです。 もちろん、店内で気持 ちよくビールを飲んでもらいたい。でもそれは、ビールを飲んで、ちょっといい 気持ちで本を選ぶくらいのことがしたくなる空間なんです。 とはいえ、実際に開店するときは、きっとこぼされるだろうと思っていました し、ある程度は覚悟していたのですが、実際には本にビールがこぼれて売り物に ならなくなったのは、月に 1 回もないです。「B&B」ではビールを 500 円で販売し ビジネス/美意識/情報の観点から、空間をディレクションする
  • 22. 21本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ているのですが、ビールの原価は 100 円台です。でも、文庫本を 500 円で売って も書店が得られる利益は、だいたい 100 円です。ビールを売ることによって出る 利益を考えれば、たとえ 2000 円の本が 1 ヶ月に1冊駄目になっても、ビジネス としては問題ないんです。こういうことはまずやってみて、駄目ならやめればい いんです。やってみることが大事なんです。 ポップを貼らずに、伝える工夫 「B&B」は、店内に POP を貼っていません。いま「B&B」では「月の本」のフェア を開催しているのですが、棚に「月の本」という POP をつけることなく、いかに 並んでいる本をパッと見ただけで、その棚のテーマをお客さんに伝えられるかを 常に意識しています。 POP をつけずにその棚がなんの棚なのかを伝えるためには、「全体として分か る」ようにすることです。こういうのはディスプレイ技術です。よく陥りがちな のが、選書する側にその本についての知識があると、逆に分かりづらい展示をし てしまうということです。たとえば「月のフェア」をつくる際に、「その作品のな かで、月が重要なモチーフとして出てくる」という知識があると、書名に「月」が 入っていない本を選んで、工夫なく棚に置いてしまうんです。そうすると、当然 ながらその作品を読んでいないお客さんには、それが月と関係のある本だという ことが伝わらないんです。 では、どうやって伝えるかというと、どう本を置くかです。例えば『月光仮面』 を置いて、その隣に「美しい月」みたいな本があって、さらに「月の写真集」を置 けば、その隣にある本の書名に「月」というワードが入ってなくても、「きっと、 月の本なんだろうな」と、棚の文脈からお客さんが想像できますよね。こういう ことが結構、重要です。 表紙に「月」のイラストや写真があるものを、ドンと面出しするのも有効ですね。 月をテーマに 100 冊選書するのであれば、60 冊はタイトルに「月」と関連する言 葉が入っていないと分からないと思います。 ワクワク感を演出する あと棚づくりで心がけていることは、「B&B」の店内スペースは 30 坪くらいと、
  • 23.
  • 25. 24 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 さほど広くはありません。そうすると「この本が欲しい」と言って来てくださる お客さんに対して、面積の大きい大型書店や amazon に、品揃えの面で圧倒的に 勝てないのです。また「B&B」は、あるジャンルに特化した専門書店ではないので、 例えば建築を専門とする書店の棚に勝てるかというと勝てないわけです。 そうなれば、僕たちのような 20 ∼ 30 坪の本屋がやらなくてはいけないことは、 買う本が明確に決まっている人ではなくて、「なにか面白い本がないかな?」っ て思っている人に来てもらって、ちゃんと見つけてもらうことです。となると、 棚にワクワクするような感じがないと駄目なんですよ。しかも、店内に置ける限 られた冊数のなかで、なるべく棚の中に「広い世界」をつくらなくてはいけない。 たくさん本があれば広い世界がつくれて当たり前なのですが、数十冊しか本が置 けないなかで、いかにジャンプするかということです。棚をつくる際には、そう いったワクワク感や広がりに気を配るようにスタッフと意識しています。 手づくり感をもてはやさない 空間をつくるうえで「トータルディレクションができているか」は、とても大 切だと思います。どんなに洗練された建築をつくっても、建物の中の空間で司書 さんが書いた手書きの POP がベタベタと貼られていたら台無しです。よく思う のですが、本屋や図書館というのは「手書き=よいこと」みたいな錯覚が、ほか の業界よりもまかり通っていると思います。たとえばアパレルショップの「ビー ムス」で、「この T シャツはかっこいい!」みたいなことを、店員が手書きで POP に書かないですよね。「スターバックス」でも手書きをしていい場所は、看板とか、 黒板の一部です。 でも、これは致し方ないところもあるとは思います。なぜ、書店で手書きが多 くなるかというと、本屋は現場に入ってくるものが毎日変わるので、アピールし なくてはならないものが日々、変わるわけです。そうすると現場が一番わかって いるので、現場のスタッフが手書きしたものを貼らざるを得ないのでしょう。つ まり、トータルディレクションとしての本部機能が効かせにくいんです。これが 「スターバックス」ならば、毎日、新商品が入るわけではないので、日々、言わな くてはいけないことってあんまりなくて、季節ごとに情報を出せばいい。だから ルールがつくりやすいんです。
  • 26. 25本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 本屋や図書館は「手づくり感」みたいなものがもてはやされやすいのですが、 手づくり感があれば全てがよいなんてことは絶対にないんです。もちろん手書き を一概に悪いと言っているわけではなくて、例えば「ビレッジヴァンガード」では、 「赤い線が入った黄色い紙」に手書きで POP を書いていますよね。そういうルー ルさえあれば、全体が奇麗にみえます。 こうしたディレクションはクールにやらなくてはいけなくて、「誰々さんは字 がうまいから」みたいなところでやるのは、やはり仕事ではなくて趣味の発想な んです。図書館でもせめてロゴの運用を決めるとか、館内サインのデザイン、つ まりフォント、大きさ、色などを、ロジカルに統一するべきだと思います。当たり 前のことですが、「大分類」よりも「中分類」が大きく書かれていたらおかしいん です。「中分類」を指し示している時点で、すべての「中分類」を示すサインのフォ ントは同じはずなのに、他の場所ではフォントが変わっていたり、大きくなって いたり、色まで違っていたり、こういうのは絶対に駄目なんです。 館内のフォントは統一するなり、手書きの場合でもフォーマットを決めるだけ でだいぶ印象が違います。これは「なんでもかんでも洗練して、奇麗にすればい い」ということではありません。図書館に来た人に、伝えるべきメッセージをス トレスなく伝えるための「情報のデザイン」と、アットホームに館内で過ごして もらうための「雰囲気づくり」を、分けて考えないといけません。どちらにせよ、 誰も管理せずにフリーダムにやるのではなくて、こういうことを意識的にやる必 要はあると思います。 もし僕が図書館の館長だったら、その地域に住んでいる知的好奇心のある人 たちが集まるような空間をつくるために、今、自分たちの図書館に「どういう人 たちが来ていて、どういう人たちが来ていない」のか、「来ていない人のなかには、 来てほしい人がいるのか」「なぜ、その人たちは来ていないのか」「どういうこと をしたら、その人たちが来てくれるのか」など、地域の特性を考えながら、とにか く考えて、考えたことをひたすら実行していくと思います。 図書館という「場」としての魅力
  • 27. 26 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 図書館の本の電子書籍化がいわれて久しいですが、保存の観点からはとても意 味のあることだと思いますし、「図書館というリアルな場所が、いずれ個人の PC のサイト上に生まれる電子図書館になるんだ」ということであれば、そちらに向 かうのもあり得ると思いますが、リアルな場所がある前提で図書館の本を電子化 していくのは、サービスとしてはあまり意味がないことだと僕は思っています。 データというのは自分の PC とか携帯などの端末で見るものだし、複製可能であ ることに意味があるからです。すでに場があるのですから、場の魅力をつくって いくことだと思います。 データの本にできなくて、紙の本にできること。それは、空間を直接つくるこ とができるということです。そういう場の魅力というのは、質量がある紙の本な らではなのです。 人が本を好きになるプロセスには、大きな本棚を前にして「世の中にはこんな にいろいろな本があるんだ」とか「難しすぎて今は読めないけど、いつか読める 店内には、座って本が読める空間もある
  • 28. 27本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ようになりたい」とか、物理的に圧倒された経験みたいなものがあると思うんで す。今までは、そういう経験を生み出す「場としての役割」を、家にある本棚とか、 街の本屋が担っていたと思うんですけど、街から書店がなくなったり、親も本棚 をもっていなかったりするなかで、そういう経験を子どもができるのは図書館く らいしかないでしょう。図書館という場所はいろんな役割があると思いますが、 「知的好奇心がわっと芽を出す場」として、ますます重要な役割があると思ってい ます。 できるところから、「人のやっていないこと」をやり続ける 図書館の場合は行政との関係があるでしょうから、書店とは違う苦労がいろい ろあると思います。でも行政にだって自治体ごとに癖があると思うので、「こうい うところでは、そんなに厳しくは言ってこないだろう」というポイントをみつけ たら、そこで違うことをやればいいのではないでしょうか。それはもうケース・ バイ・ケースなので一概には言えないですけど、できるところから「人のやって いないこと」をするしかないと思います。「なにもできない」ということは、絶対 にないと思いますから。 なにも大きな予算のかかることではなくても、街に住んでいる読書家の高齢者 が、図書館に来る子どもたちに本読みをして交流を生んだり、著者を呼んで人を 集めたりして「この図書館、面白いよね」って言われるようなことを積み上げて いけばいいと思います。 あとは、こういう媒体に取り上げられるような図書館にすることだと思いま す。他館とは違うことをして注目を集めて、「あそこはなにか違うぞ」と思われる ような評判をつくっていく。評判というのは、評判が評判を呼ぶみたいなところ があって、一度取り上げられるようになると、何度も取り上げられていくんです。 やはり、そうなるにはやり続けることしかないと思います。
  • 29. 28 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ※ 1 2003 年にメンバー 3 人で結成。2006 年末まで代表を内沼氏がつとめ、現在の代表 は川上洋平氏。渋谷のギャラリースペース SUNDAY ISSUE、新宿のシェアオフィス HAPONのブックコーナーの選書や企画運営、オリジナル商品「文庫本葉書」の販売、 図書館や文学館での本のワークショップなど、各地で人と本が出会う偶然を生む ための活動を行う。 http://www.bookpickorchestra.com/ ※2 北尾トロ『ぼくはオンライン古本屋のおやじさん』(風塵社、2000年) ※ 3 2011 年よりディスクユニオンが展開した読書家のための読書用品ブランド。内 沼氏がプロデューサーをつとめ、さまざまなクリエイターや有識者とコラボレー ションをしている。 http://diskunion.net/bibliophilic/ ※ 4 内沼氏が代表をつとめる「本とアイデアのレーベル」。書籍売り場やライブラリー のプロデュース、本にまつわるプロジェクト企画や作品制作、書店や出版社のコン サルティング、電子書籍関連のプロデュースなどを手がける。 http://numabooks.com/ 文中注釈
  • 31. 30 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 「本」が生み出す、 これからのコミュニティ 1979年生まれ。大阪市立大学法学部卒。「日常編集家」として公私の狭間、 異分野間を漂泊しながら、既存の価値観を再編集する表現を、文章、音楽、 プロジェクトを通じて創作する。神戸女学院大学キャリアデザインプログラ ム、立命館大学映像学部などで講師。著書に『住み開き 家から始めるコミュ ニティ』(筑摩書房)『編集進化論 editするのは誰か』『クリエイティブ・コミュ ニティ・デザイン』(共にフィルムアート社、共著)。「マガジン航」(ボイ ジャー)、「学芸カフェ」(学芸出版社)、「ソトコト」(木楽舎)など各メディアに て連載中。ユニットSjQ++(HEADZ)ドラム担当。 アサダワタル 各地域に滞在しながら、コミュニティプロジェクトの構想演出や教育・福祉現 場における音楽ワークショップの実施、それらにまつわる文筆活動など、幅広い フィールドで活動されるアサダワタルさんは、もともとバンドのドラマーとして キャリアを始められている。その後、表現活動を「音」から「場/事」に広げ、多彩 に活動するアサダさんのベースには、日常にこびりついた既存の価値観を再編集 する目線が常にある。 2009 年、アサダさんが提唱した「住み開き」は、「住む」というありふれた空間 をほんの少し編集することで、日常や社会の風景を一新し、多方面に影響を与え た。図書館業界も例外ではなく、「住み開き」は 2011 年の Library of the Year を 受賞した。 本インタビューでは、アサダさんが実践したさまざまなプロジェクトを伺いな がら、「本」や「本屋」をつかったコミュニティの生み出し方を考えたい。
  • 32. 31本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 僕はもともとミュージシャンとして、バンドでドラムしか叩いてなかったの ですが、音楽だけではなく、映像とか美術などのイベントをオーガナイズしたり、 スペースの運営とかに関わりだすうちに、街の人たちとつながって、いつしか「ま ちづくり」みたいなことにもつながったんです。そして、そうした活動のなかで、 文章を書いたり、滞在制作をしたり、司会をしたり、大学で講義をしたり、自分の 専門がどんどん脱領域化して、もはや自分の肩書きが名付けられなくなったので、 「日常編集家」と勝手に名乗るようになりました。 「日常編集」というのは、簡単に言うと「日常」と「非日常」のボーダーをいじっ たり、ずらしたりすることです。アートが持つ力の一つに、「日常の見え方を変 える」というものがありますが、僕はアートに関わることが多かったせいもあり、 「日常」と「非日常」のボーダーを考えることにとても興味があるんです。例えば、 休日にミュージシャンのライブを聞きに行く体験は、非日常的な体験です。その とき、僕が気になるのは「ライブに行く人の日常は、いつの時点から非日常に切 り替わっているのか」ということです。きっとライブに行く数ヶ月前から、ライ ブで聴く歌手の曲を iPod で再生してワクワクしたり、当日、着ていく服装を選 んでウキウキする……こういった音楽にまつわるさまざまな行為を、アメリカの 音楽学者 、クリストファー・スモールは「ミュージッキング」と呼んだのですが、 その時、すでに日常とは違った非日常の感覚を味わっているんだと思います。 こういう非日常の感覚を個々人が意識し、コントロールできるようになったら、 日常の風景が変わるはずだと思うのです。僕は「日常編集家」として、ありふれた 日常行為を意識的に捉え、刺激的に読み直すための試みを、妄想レベルから具体 的な実践までさまざまに行っています。 「日常」と「非日常」のボーダーをいじるその試みの一つとして、僕は 2009 年 に「住み開き」を提唱しました。「住み開き」というのは、夫婦や家族で暮らしたり、 友人たちと住んだりする住居のようなプライベートな空間の一部を、本来の用途 以外の新しいアイデアを盛り込み、無理をしない範囲で限定的に開放することに よって、いろいろな人が集まるセミパブリックな空間を生み出す活動や現象のこ とです。たとえば絵を描く人であれば、自分の家をアトリエにすることがあるで 「住み開き」で、他者と他者をつなぎ直す
  • 33. 32 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 しょう。その延長で家の一部をギャラリーにするうちに、知らない人が家に入っ てきて、サロン化していったりする。 「住む」というのは、いわば「日常」なのですが、住居の一部を、音楽でも、手芸 でも、読書会でも、子育てでもなんでもいいのですが、自分の好きなことや携わっ ていることをきっかけに少しだけ開放すると、住人以外の第三者が入ってきて、 家が共有空間になっていく。そこに非日常が生まれます。 僕自身、大阪市北区南森町の住居用マンションを知り合いのクリエイターた ちと借りて、自分たちのスタジオとしても利用しながら、定期的なトークサロン、 ワークショップ、上映会などをしていくという「住み開き」を 2006 年から 2010 年までしていました。そして、こういう活動を広げていけば、「日常から生まれる 文化」のいろいろなバリエーションがつくれるだろうと思ったんです。 そこで、2009 年頃から「住み開き」をアートプロジェクトにしました。「住み開 大阪市西区九条「ぶんぶん文庫」。遊びにきた子どもたちと絵本を読む
  • 34. 33本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 き」的な現象をリサーチし、全国を訪問取材したのです。本に関わる「住み開き」 の事例としては、大阪市の西区にある「ぶんぶん文庫」があります。主宰者はこ この家に住む駒崎順子さんで、彼女は大学で教育学を学び、図書館や学校におけ るボランティアでの読み聞かせ活動などもされていた方です。駒崎さんは、絵本 や児童文学が楽しめる個人図書館として、定期的に自宅の一部を開放し、自由な 文脈で子どもたちと出会う場を生み出していました。そのほかにも、自宅で本を 使ったワークショップをやっている人とか、独立して家を出ていった子どもの部 屋をカフェにして子育てをキーワードにしたサロンにしたり、自宅を水族館にし ていたり、ユニークな事例がたくさんありました。 そのあり方はさまざまですが、「住み開き」をしている人たちに共通しているの は、お金に還元されない役割として自分たちの社会活動を展開し、他者と他者を つなぎ直しているということです。そして、そういう人たちが「住み開いた場」は、 「もてなす側/もてなされる側」、「受け手/送り手」といった硬直した関係性を超 えて、とても風通しのよいコミュニケーションを生み出していました。 もともと「住み開き」にある問題意識というのは、固定化した関係性を無意識 に受け入れることで生まれるコミュニケーションの硬直化でした。たとえば都市 のなかにあるさまざまな空間――会社、自宅、ショッピングモール、公園、図書館 などで、私たちはその空間における役割を無意識につくりあげて、ある時はサー ビスの提供側になり、ある時はサービスを受けるお客側になり、お金を交換する だけのお互いの役割のなかで、形式的なコミュニケーションを成立させていない でしょうか。もちろん、こういう役割の空間が、一定の秩序や快適さも与えてく れるので、そのこと自体の善悪を言いたいわけではありません。そういう空間の 役割を意識的にずらしてみることで、新しいコミュニケーションや人と人とのつ ながりが見えてくるのではと思ったのです。 「住み開き」の根底にあるこうした問題意識は、アートのフィールドだけではな く、若い人たちが集まるシェアハウス入居への動機づけや、高齢化社会において 図書館と「住み開き」
  • 35. 34 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 問題化する老人の孤立を防ぎ、多世代間の交流を促すなど、福祉や教育、街づく りなど、全国の自治体、公的団体などから注目を浴びることになりました。 さらに 2011 年には、図書館のあり方を示唆する先進的な活動を行っている機 関・団体・活動に対して、NPO 法人「知的資源イニシアティブ(IRI)」が毎年、授 与する「Library of the Year」の優秀賞に「住み開き」が選ばれました。この賞では、 自薦・他薦されたなかから、選考委員の審査を経て優秀賞が決まります。大賞を 決める最終選考では、プレゼンターがそれぞれの候補を紹介するのですが、「住み 開き」のプレゼンターは紹介する理由について、「図書館という場が本を貸すだけ ではなくて、レファレンス機能のなかに地域の相談が盛り込まれたり、地域の図 書館が個人の図書館やミニライブラリーといった活動とつながる仕組みをもった りするといった、「これからの図書館」を考える際に『住み開き』は有効だと思う から、この言葉を図書館側に強く知ってもらいたい」と仰って下さって、非常に 嬉しかったです。IRI は「住み開き」を「公からの一方的な情報提供から市民同士 による情報提供への変化の一形態として、これからの図書館のあり方にとって参 考になる点」を評価して下さいました。 僕自身が書き手であることもあり、以前から本というメディアに興味を持って いたのですが、今年から「本と出版の未来」を考える Web マガジン「マガジン航」 に「本屋はブギーバック」(http://www.dotbook.jp/magazine-k/boogieback_01/) という連載を始めたことがきっかけで、「本がある場をどうやって再編集するか」 とか、「本を使って新しいコミュニケーションが生まれるきっかけってなんだろ う?」ということを深く考えるようになりました。 僕がこの連載で書いているのは、「本と出版の未来」をダイレクトにテーマにし ているというよりも、「人と人とをつなぐメディアとしての本のあり方」といった ことをテーマに書いているんです。図書館もそうですが、書店というのは膨大な 数の書籍という文化的なリソースが眠っていますよね。そういう場所で、個人が 好きに自分の買いたい本を選んで買って帰るなり、借りて帰るなりするのもいい メディアを使ってなにができるか
  • 36. 35本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 のですが、そこにある本を使って、そこの地域にいて普段は出会わないような人 たちが会話をしてみたりとか、会話の少なかった子どもとおじいちゃんが、本を 介することで会話が変わったりとか、そういう現象を生み出す可能性があるので はないかと思っています。 こういうことを考えるのには実は下地があって、僕は音楽の活動をするプロセ スにおいて、かつてのように曲をつくったり、自分で演奏をすることよりも、「音 楽を日常生活に投げこんで、どうコミュニケーションを生み出すか」みたいなこ とのほうに興味を持ち始めたんです。詳しくは「マガジン航」でも書いているので、 ぜひそちらで読んでいただきたいのですが、つまり僕はメディアをつくることよ りも、「すでにあるメディアの使い方を発明すること」に興味があるんですね。 わかりやすく言うと、本であれば文章を書いたり、編集をしてオリジナルな 1 冊の本をつくる「一次創作」(本の編集行為そのものが「二次創作」であるという 考えもありますが、ここではそれは便宜上「一次創作」として捉えます)ではなく、 「本を使ってなにをするか」を考える「二次創作」、あるいはメディアの創造的転 『KPPL(借りパクプレイリスト)』展の風景(大阪アートコートギャラリー)
  • 37. 36 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 用に興味があるのです。音楽の世界には、二次創作の方法として、曲の一部を改 変して演出しなおすリミックスのテクニックや、2 曲以上の曲を混ぜ合わせて 1 曲に仕立て上げるマッシュアップなどといった、デジタル音楽での手法がありま すが、僕が二次創作を考えるときに重要にしているのは、「もう一度、人と人が対 峙して、目の前にある本なり CD で今からどんな面白いコミュニケーションを起 こそうか」といったアナログな姿勢です。 たとえば、僕が試みた企画に「KPPL(借りパクプレイリスト)」というのがあり ます。「借りパク」というのは、かしこまって説明するのも変ですが、「人から借り た物を、そのまま自分の物にしてしまう(パクってしまう)こと」を指す言葉です。 なんらかの事情により返しそびれ、結果的に私物になった CD を未だに捨てられ ずにもっている人ってけっこう多いと思うのですが、僕も引っ越しや進学の際に、 友人やかつての恋人からたくさんの CD を借りパクし、同時に同じくらいの品々 を借りパクされてきたんです。 ある日、借りパクしてしまった CD を眺めながら、その持ち主の顔を思い出 し、その時代の思い出をその音楽とともに回想しているうち、「借りパクエピソー ドとともに借りパク CD を試聴展示したら、どんな感じで音楽を楽しめるのだろ う !?」と思いついたんです。そこで、自分の借りパク CD のほかに公募でも集め た合計 100 枚で、期間限定の借りパク専門の CD 屋を大阪のアートコートギャラ リーでたちあげました。展示する CD には、その CD にまつわる思い出を書いた POP をデザインして、試聴機も置きました。さらに会場では、借りパクの思い出 を語り合うトークサロンも開催したんです。 トークでは「当時、付き合っていた恋人から借りたんだけど、別れてしまった ので返せなくなった」とか、「兄弟から借りたんだけど、自分が留学したから返せ ないままになった」とか、その CD にまつわる個人の思いを語り合いました。興味 深いのはある特定の CD(小沢健二『LIFE』など)を背景にして、個々人がまったく 別々の記憶をシェアし合うんですが、そこにはその時代を反映した集合的な記憶 が確かに垣間見えるんです。そういった世代共通の音楽を音楽社会学者の小泉恭 子さんは「コモン・ミュージック」と名付けたのですが、まさに、音楽に限らずメ ディアを通じた語りのプロセスで、公私が入り交じる独特なコミュニケーション が発生するのです。
  • 38. 37本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 この企画は、本にも転用できると思います。借りパク本は、もはや本の中身と は直接は関係ないのですが、読み手の人間臭さが如実に、かつユニークに立ち現 れる行為になると思うんです。そこから「日常生活における本との付き合い方」や、 「人と人とをつなぐメディアとしての本のあり方」など、色々なことが見えてくる はずです。でも、図書館の本は借りパクしちゃダメですよ(笑)。 目の前にある 1 枚の CD なり1冊の本を使ってなにかしようとするとき、僕の 感覚では、メディアの有史以前に人間がごくふつうに行っていたあり方のほうへ、 歴史的に戻っていく作業が重要だと思っています。どういうことかというと、あ る音楽をレコードに記録する技術ができる前は、当然ながら現在のように「オリ ジナル」といった発想が十分には出てきていないわけです。楽譜がない時代まで 遡れば事態は一層わかりやすいでしょう。今は音楽業界も崩れてきて、音源を買 うことよりもライブに行くことの価値が相対的に上がってきているので一概に は言えませんが、レコードが正典、つまりオリジナルになって、ライブがそのプ ロモーションのために準備されるという構造が存在するわけです。多くの文化活 動がレコードであれ CD であれ、DVD であれ、はたまた mp3 データであれ、なに かしらのメディアをつくることを目的とするのは、メディアにすることで金銭を 得る、つまり産業にしないといけないからですよね。でも、メディアのない時代 は、それを誰かに伝えたり、聞いてもらうためには自分が実演して表現するしか なかったんですよ。 明治の終わりから昭和の初期、自由民権運動が盛んな頃に、「演歌師」と呼ば れる人たちがいたのをご存知でしょうか。彼らは街なかで、政治的な主張やメッ セージを聞いてもらうために節にのせて、歌うというか、がなりたてているんで す。手にはその歌詞を書いた「歌本」というのを持っていて、歌を気に入った人 は歌本を買っていき、「さっき、演歌師のおっちゃん、あんなふうに歌っていたよ な」とか言って、歌本を見ながら自分なりに歌うんです。替え歌なんかも生まれて、 勝手に歌が書き換えられていくんです。そうやって文化が回っていくという状況 があったんです。 パフォーマティブなコミュニケーション
  • 40.
  • 41. 40 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 つまり、なにが言いたいかというと、人々がメディアに頼る前というのは、各々 が身体を使って演じたり、書いたり、歌ったり、会話したり、「パフォーマティブ」 なことが起きていたのだと思うんです。 僕がやりたいことは、一見ポストモダン的にも捉えられるのですが、メディア を使いこなしつつ、こういったある意味ではプレモダン的ともいえるパフォーマ ティブなコミュニケーションを生み出すことなのです。 たとえば、2010 年に行った「モヤモヤ読書」というものがあります。NPO 法人 アート NPO リンクの 樋口貞幸さんと、京都精華大学の都市社会学者の山田創平 さんと僕の3人で企画したのですが、「モヤモヤ読書」というのは、あるルールに 従って進められる「読書会とまち歩き」のプログラムです。どういうプログラム かというと、 ①参加者はその本を事前に読み、読書会当日に「モヤモヤするところ」(最も気に なるところ)を発表 ②みんなでモヤモヤを語り合う。語り合うことでモヤモヤが明確になったことを 付箋にメモしてもらい、机の好きなところに貼る ③全員がモヤモヤを発表し終えたら、休憩をとり、そのあいだに次の発表の準備 をする ④ 2 回目の発表。今度は本を読んだ所感など、大きなストーリーを捉え、思うと ころを話す。それをみんなでシェアする(共感したり、同意したり、違う意見を 言ってみたり)。そのとき、自由にメモしてもらい、机に貼付けてもらう ⑤最後に机の付箋を見直して、振り返りをナビゲーターが行う ⑥話し合ったことを考えながら、みんなで街を歩く こんな流れです。このプログラムは「読書会とまち歩き」がセットであること がけっこう重要で、読書会で読む本とそのあとでまち歩きをする場所が、ゆるや かに関連しています。 『忘れられた日本人』(宮本常一、岩波書店 、1984 年)が選書された読書会では、 西成釜ヶ崎(大阪府大阪市)を歩きました。読書会の会場は、同じ西成にある商店 街「動物園前一番街」のなかにある「ココルーム」という、アート NPO が運営する
  • 42. 41本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 サロンスペースで行ったのですが、この場所にはドヤ街の日雇いで働くおじさん なんかも集まるんです。読書会をやっているときに、ぶらっとココルームに来た 西成のおじさんも、なんとなく興味をもって話に参加してくれるんです。そうす るとそのおじさんたちの話が面白いんですね。彼らは高度経済成長期の西成の街 を体感していたり、その時代に多数建てられた日本中のさまざまな建物の現場作 業をしてきた人たちなんです。多少時代は違えど、労働を通じていまの日本を支 えてきた人たちという意味で本の中に出てくる人たちのエピソードと重なってく るんですよ。 『忘れられた日本人』という本は、著者で民俗学者の宮本常一が、人生の大半を 日本各地くまなく歩いて、その土地の農作業や漁業における労働のあり方や民間 の伝承を克明に調査して1冊の本にしたものなのですが、それぞれの地域に住ん でいた人々の人生を万華鏡のように捉えていて、非常に感動的な本なんです。こ 「モヤモヤ読書」開催のチラシ(大阪 / 2010 年 11 月 12 月)
  • 43. 42 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 うした本の内容もあって、このときの読書会では、自分の人生に引き寄せたエピ ソードを語る人が非常に多かったんです。 読書会でみんなの記憶とか思いをシェアしたあと、西成の街を歩くのですが、 これは良い意味でわりと危なっかしいんです。本の世界が残像として頭のなかを グルグル、モヤモヤしている状態のまま街を歩くので、軽い酩酊状態なんですよ (笑)。こういう状態で街を歩いていると、「ここの曲がり角は、本のなかのあの場 面に近いよね」みたいなことを言う人がでてきたりします。 西成のほかに、大阪梅田の近くにある堂山町では、アントニオ・タブッキの『イ ンド夜想曲』(白水社、1993 年)を読んでまち歩きをしました。この街はとても雑 多な雰囲気の街で、本のイメージともシンクロするんです。堂山町と同じ梅田界 隈で、もう少し雰囲気が違う下町で本庄という街では、レヴィ・ストロースの『悲 しき熱帯』(中央公論新社、2001 年)を読みました。いずれも選書は、地域コミュ ニティとアートの活動に造詣が深い、アサヒビール芸術文化財団事務局長(当時) の加藤種男さん、そして山田創平さんと僕がファシリテーターになって、その場 に 10 人くらいが集まって実施しました。 本を読んだときに生まれる「モヤモヤする感覚」を他者と共有していくやりと りのなかで、参加者は五感を開いたり、自分の中から生まれる言葉を探したり、 身体を使って街に身を委ねたり、表現したりして、「パフォーマティブ」になって いくんです。そしてパフォーマティブな行為というのは、少し誤解を招く言葉で もあるのですが「儀礼的」になっていくと思います。 儀礼的というのはどういうことかというと、たとえばアニメファンが「聖地巡 礼」をやるじゃないですか。「アニメ聖地巡礼」というのは、アニメの舞台となっ た場所をそれぞれの思いなり、物語の文脈を携えながら訪問して楽しむものなの ですが、言ってみれば妄想の固まりなんです。最近では、観光社会学者の岡本健 さんが、地域に新しい文化的・観光的コンテクストを付与してゆく「N 次創作観 光」という言葉を提唱されています。一見、すごく突飛で、良い意味でばかばかし くもあるのだけど、でもよく考えてみると、古来からある宗教的な「儀式」とか「祭 り」というのは、そういうものなんじゃないかと思うんです。つまり目に見えな い神様という記号を、日本の場合であれば、石だったり、木だったり、自然を祀っ て聖地をつくっていく。つまりそういった目に見えないコンテクストをその地
  • 44. 43本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 域に付与していき、そのフィルターを通じて住む人、観る人が地域に対してアプ ローチをしていく。そうした構造はあまり変わらないんですよ。 だから、自分の内に文化的なものをインプットした状態で、世界や物事に介入 していくことは、「儀礼」ととても近い。実際、「モヤモヤ読書」って儀礼っぽいく ないですか。みんなで本を読んで、街を集団でそぞろ歩くわけですからね(笑)。 本というのは、同じ本を読んでもそれぞれ読み方、感じ方が違うし、そうした ソフトの部分だけじゃなくても、「この本はお母さんからプレゼントしてもらっ た」とか、「入院中の辛いときに読んだ」とか、「古本屋で偶然、手にした」とか、複 数の角度から個人的な記憶をパッケージしていると思います。それを広げていけ ば、地域の歴史といったところにまでリンクが張られていく可能性があると思い ます。モヤモヤ読書のような企画は、図書館でもできますよね。図書館員がファ シリテーションしながら本に圧縮された記憶を解凍し、図書館を地域によりひら いていくことができれば素晴らしいと思います。 あと補足的なことですが、こういった読書会で重要なことは、みんなで読んだ あと、もう一度ひとりで読むことだと思うんです。これは僕だけが言ってるの ではなく、「本を使った対話の会」を行っている mogu book(http://mogubook. net/)のサトウアヤコさんも言っています。 mogu book(よく噛んで= mogu)は「ひとりで読む。みんなで読む。またひと りで読む」がコピーになっているのですが、僕もこのコピーにとても共感してい て、みんなで読んでたくさん話して、いろんな読み方とか、感じ方、本との付き 合い方をシェアして集合的な記憶を結んだあと、もう一度ひとりで読んだときに、 違う発見があると思うのです。ひとりで読んだものをひらいて、もう一回、孤独 に返していくということが、すごく重要だと思っています。 僕は、本であれば「注釈」や「引用」、音楽なら「サンプリング」「カットアップ」 的な感覚がとても好きなのですが、本屋とか図書館というのは、こういう感覚、 本屋で社会実験をする
  • 45. 44 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 つまり会話をしているとき、その会話の参照ネタにリンクボタンが張られていく ような感覚が楽しめる格好の場所だと思っています。 大阪の心斎橋に「スタンダードブックストア」という本屋があります。「本屋で すが、ベストセラーはおいていません。」をキャッチコピーにしているとても個性 的な本屋なのですが、僕はこの店の社長・中川和彦さんと意気投合して「本屋で なにか社会実験をしたい」と大それたことを提案し、実践させてもらっています。 その実験の幾つかをご紹介すると、一つは「本屋でラジオ」です。これは、来年か ら始める予定なのですが、「スタンダードブックストア」の地下 1 階にあるカフェ 併設のイベントスペースをスタジオにして、月に1回、僕と雑誌「IN/SECTS」編 集長の松村貴樹さんがパーソナリティとなって本屋内でラジオを流します。まぁ、 いわゆる館内放送です。「スタンダードブックストア」は地下 1 階と、地上階の2 フロアからなる書店なのですが、ラジオのオンエア中はどちらのフロアにもラジ オが流れます。店内にいるお客さんは、カフェでラジオを聞くのもよし、本棚で 本を選びながら聞いてもいい。ラジオの会話を聞いて気になった本があれば、本 棚に行って手にとることもできます。 トークの話題は「なんでもあり」です。これは中川さんの言い方なのですが、「本 屋だからこそ、いろんな文脈の棚がある」と。つまり棚というのは、文脈の宝庫 なので、この空間には話題に火のつくものはなんだってあるんだから、という考 え方に僕はすごく賛同しています。料理であろうが、建築であろうが、子育てで あろうが、お酒の話であろうが、なんの話をしてもいいのが本屋だと思うんです。 それってすごいことですよね。 同じく「スタンダードブックストア」で、現代編集者の米田智彦さんが出され た『僕らの時代のライフデザイン』(ダイアモンド社、2013 年)の出版イベントの 際に、mogu book のサトウアヤコさんが考案した「本棚ツアー」というものをや りました。当日、出版イベントは 12 時開演だったのですが、米田さんと僕たちは 店が開く10時から店内に入り、スタンダードブックストアの本棚をくまなく回っ て、米田さんにかつて読んで気になった本を選んでもらったんです。米田さんは フリーランスのエディターなのですが、1 年間、家やオフィス、家財道具を持た ずに旅をし、そこで出会ったさまざまな「ライフデザイナー」の働き方や暮らし
  • 47. 46 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 方を紹介する 生活実験プロジェクト「ノマド・トーキョー」を行ったユニークな 人で、僕たちは米田さんがどうやったら今の米田さんになったのか、その片鱗を 「米田さんが選んだ本」から知りたいと思ったんです。つまり、米田さんをつくっ ている「背景本」です。 米田さんは「うわー、この本で泣いたな」とか、「めっちゃ懐かしいな。実はこ の本って云々…」とか言いながら 店内の本棚から 10 冊を選び出し、最終的には 3 冊が「米田さんをつくっている背景本」となりました。 本棚ツアーが面白いのは、即興で本を選ぶので、米田さんのいろいろな意識や 無意識が選書に出てくるのです。例えば米田さんの場合、建築の棚の前で「僕が 一番、苦手な棚はここですね」となりました。どうも米田さんには、建築という ジャンルに関心はあるけど、少し複雑な思いも持っているみたいで、こういうこ とも浮き彫りなるんですね。それは、米田さんに「米田さんをつくっている本を 3冊持ってきてください」と事前にお願いするのとでは、全く違う結果になった と思うんですね。 イベントに来たお客さんには、米田さんが本棚ツアーをしている様子をスライ ドで見せながら、米田さんの背景本を紹介しました。 当日は『僕らの時代のライフデザイン』の「背景本」として、安藤忠雄さんの本 も販売しました。売れなかったですけどね(笑)。こういう選書は、Amazon のお すすめ本機能からは絶対に生まれないでしょう。スタンダードブックストアでの 一連の試みは、文字通り「本屋を編集する」ことを実感しました。 2000 年から兵庫県宝塚市で開催されている市民映画祭に、「宝塚映画祭」とい うのがあるのですが、この映画祭は市民が中心となって企画・運営しています。 宝塚はかつて日本最大級の映画撮影所があった町で、地元の映画館で映画を見る ということを映画祭で地道にやってきたのですが、集客の面などいろいろ課題 があったようなんです。そこで映画祭のあり方を抜本的に変えようということで、 かつて僕と一緒に大阪で「住み開き」をやった編集者の岩淵拓郎さんがディレク 市民が自律的に図書館を使う
  • 48. 47本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ションし、映画を通して地域コミュニティや地域文化に対してさまざまな角度か らアプローチを行う試みをやり始めたんです。 自分たちの好きな場所を街の中で撮影して、一斉に上映するプロジェクトとか、 「シネマハック」といって、街の映画館を楽しくする 100 の方法を映画館のスク リーンを使ってみんなでプレゼンする企画とか、いろんなことを試みているよう です。 僕は宝塚映画祭の試みをぜひ、図書館の方にも参考にしていただきたいと思っ ています。たとえば市民が中心になって「図書館祭」をつくるようなことがあっ てもいいと思います。つまり、僕は「図書館を自律的に使っていいんだ」と思える ような感覚を市民が養うことこそが、とても重要だと思っているんです。 図書館を「本を借りるだけの場所」とか、「静かに本を読むための場所」だけだ と思っている人がまだ多いと思うのです。それは、図書館側にもそういう考えが 当たり前のようにあるのかもしれません。図書館で自律的になにか企画ができる というのは、僕が知っている図書館だと関西なら奈良県立図書情報館でしょう か。「図書館でなんかやってよ」と言われて、電子音楽のワークショップ(僕がド ラマーとして参加している「SjQ」というユニットで 2013 年春に企画した「SjQ ラ ボ . ∼音による創造のワークショップ∼」)をやれるのも、あの図書館があるから なんです。それは、職員に乾聰一郎さんというある意味では、図書館界における 異端の存在がいるからだとは思うのですが、そのことは乾さん自身が一番理解し ていらして、だからこそ「図書館」という場のあり方を変革しているのだと思い ます。 図書館という場が持つ意義はいろいろあると思います。僕は、図書館で本を探 しているときの司書さんの姿というのは、もの凄くかっこいいと思っています。 文化的なものを扱っている人の姿をリアルに見られる場所って、実は意外とない んです。たとえば美術館の場合は、警備の目的で座っている人はいますが、キュ レーターの姿は表では見かけないですよね。美術館やコンサートホールに毎週行 く人はそんなにいないと思いますけど、図書館ならばいるでしょう。しかも無料。 そういう身近な場所で、本という文化的なものを目の前で扱い、知識をもって紹 介してくれる人に触れること自体がとっても重要なことだと思います。
  • 49. 48 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ですから、図書館の本を電子書籍にして、ネットを使えばすぐに知識や情報に アクセスできるようにするといった効率的な話よりも、図書館の本を使って、世 界と自分をつないでくれる人がいる、そういう場所の空気から学びとれる情報量 や教育というのは、絶対にあると思います。 もし僕が館長だったら、個人的な本との関わり方や本にまつわる記憶みたいな ものを、その地域や図書館に集まるコミュニティの財産に変えていくようなプロ ジェクトがやりたいですね。その人がその本とどういう関わり方を持ったかとい うことをそれぞれ共有しながら、公開したり、シェアしていくような仕組みを通 じて、地域の図書館に通う人同士が結果的に交流するような場をつくりたい。そ ういったコンセプトを図書館全体の空気として表すかどうかは別として、なにが しかそういう仕掛けはするでしょうね。 あとは、「ライター・イン・レジデンス」の仕組みをつくります。すでに海外の 図書館には事例があるそうですが、僕自身がアーティストとしてアーティスト・ イン・レジデンスによく招いていただくんです。地域の商店街の空き店舗にレジ デンスするとか、あるいは先日も「アーティスト・イン・スクール」といって、札 幌市内の小学校に滞在していました。小学校で滞在制作をするというプロジェク トで、僕は「大きな転校生」として児童たちと給食を一緒に食べたり、話し合った り、一緒に音楽で遊んだり、そのプロセスに先生方にも参加をしてもらったりし ました。 アーティスト・イン・スクール、アーティス・イン・ホスピタルなどがあって、 アーティスト・イン・ライブラリーもありえるでしょう。地域の公共施設という インフラをアーティストが滞在することによって、地域とのハブを新しくつくっ たり、地域の人と図書館で働く人がリアルタイムで 1 冊の本をつくり出すような な状態を、図書館でつくれたら素晴らしいと思います。
  • 50. 49本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 『編集進化論 editするのは誰か?』(仲俣暁生+編集部編、フィルムアート社、2001 年) 『住み開き 家から始めるコミュニティ』(アサダワタル、筑摩書房、2012年) 『ミュージッキング 音楽は“行為”である』(クリストファー・スモール、野澤豊一訳、 西島千尋訳、水声社、2011年) 『新・エディターシップ』(みすず書房、2009年) 『集合的記憶』(M.アルヴァックス、小関藤一郎訳、行路社、1999年) 『メモリースケープ  「あの頃」を呼び起こす音楽』(小泉恭子、みすず書房、2013年) 『サウンドとメディアの文化資源学 境界線上の音楽』(渡辺裕、春秋社、2013年) 『添田唖蝉坊 唖蝉坊流生記』(添田唖蝉坊、日本図書センター、1999年) 『n次創作観光 アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性』(岡本健、 NPO法人北海道冒険芸術出版、2013年) 『ウェブ社会のゆくえ〈多孔化〉した現実のなかで』(鈴木謙介、NHK出版、2013年) 参考図書
  • 51. 50 本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 図書館でのビブリオバトル 実施アドバイス 2006年京都大学工学研究科博士課程修了。2008年より立命館大学情報理 工学部助教、2010年より同准教授。個体と組織における記号過程の計算 論的な理解や、共生社会に向けた知能情報学技術の応用についての研究 に従事する。 著書に『コミュニケーションするロボットは創れるか 記号創発システム への構成論的アプローチ』(NTT出版、2010年)、『ビブリオバトル 本を知 り人を知る書評ゲーム』(文春新書、2013年)がある。 谷口忠大(たにぐち・ただひろ) 1. 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる。 2. 順番に一人5分間で本を紹介する。 3. それぞれの発表の後に参加者全員でその発表に関するディスカッションを2 ∼ 3分行う。 4. 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした 投票を参加者全員一票で行い、最多票を集めたものを「チャンプ本」とする。 これがビブリオバトルの公式ルールだ。たった 4 つのルールと 5 分間のプレゼ ンで熱く戦い、本を絆に人とつながる新感覚の書評ゲームである。各種メディア の報道や、堺市立中央図書館などの実施で広く知られているが、「実際に図書館で 実施する時、一体どんなことを心がけたらいいのだろう?」という声も多い。そ こで今回はビブリオバトルの考案者である谷口忠大さんに「図書館でのビブリオ バトル実施アドバイス」というテーマでロングインタビューを行った。 図書館での実施方法をはじめ、トラブルシューティング、そしてこれからのビ ブリオバトルと図書館のつながりまでを一気に語っていただいた。
  • 52. 51本と人、人と人をつなぐ仕掛けづくり  ライブラリー・リソース・ガイド 2013 年 秋号 ――今回はビブリオバトルを図書館で実施していくにあたって、どんなことに気 をつけていけばいいかを中心にお伺いしたいと思います。まず、ビブリオバトル の普及活動については、どのように行われているのでしょうか? 谷口:僕たちはビブリオバトル普及委員会というのを一応つくっていて、そのメ ンバーが各地でいろいろ活動しています。ただ、まだまだ人数も少ないですし、 ビブリオバトルに興味を持ってくださった図書館職員の方から「ビブリオバトル を実施したいので、普及委員の方に手伝って欲しい」といったご意見をいただく ことも多いのですが、なかなかそうしたリクエストの全てに応えきれないのが現 状です。 また、ビブリオバトル普及委員はみんなボランティアなんですね。ボランティ アのもとの意味である「voluntary(=自由意志の、自発的な)」の通り、自分たちが 自発的に面白い、こう普及活動をしたい、と思われたことに関わっていくという スタイルで動いています。みんな給料が払われているわけではないですからね∼。 そういう意味で、それぞれに独立性も高く、それぞれにビブリオバトルのフィー ルドを持っています。書店や大学、中高等学校、会社の中など、それぞれの関心の フィールドはさまざまです。図書館のビブリオバトルに興味を持つメンバーはそ の一部なので、人数は多くはなく、図書館でのビブリオバトル実施のお手伝いも なかなかできるわけでもありません。皆さん平日は本職のお仕事がありますしね。 ただ、それ以前に、ビブリオバトルはやっぱりやりたいと思った人が、その組 織の中で自ら開催すべきだという思いを僕は強く持っています。 僕自身、ビブリオバトルは「だれでも簡単に実施できる」ことを大切に生み育 ててきました。ですから「ビブリオバトルを実施したい」というお声がけをもらっ ても、基本的には図書館が主体的 に実施していただくことを前提と してお話します。 ビブリオバトルの開催自体はメ チャクチャ簡単ですからね。上司 の説得は難しかったりするでしょ うが……。 公共図書館でのビブリオバトル 求められるのは図書館の主体性 有隣堂本店で行われたビブリオバトルの様子(2013 年 5 月)