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- 3. 本日の概要
• 概念の整理
• 走りながら考えたデジタル化事業の紹介
• 解決すべき課題は多数
– 私が見えてないだけ、というものも
• お知恵を拝借したい
• 最終的に問題配置を少しでも俯瞰できるきっかけを
– 多数あって整理しきれない+時間が足りない…
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 4. 0.自己紹介
・京都府立総合資料館庶務課新館担当
歴史資料課行政文書担当兼務
新館構想
京都府行政文書(重要文化財)の管理・運営を担当
→いわゆるArchivist 的な仕事+α
・もとは日本近現代史専攻(!)
非常勤講師/自治体史編纂
・総合資料館職員2005年4月から
任期付職員→ 社会人採用(学芸員試験)
→詳しくはwebで
http://researchmap.jp/fukusima-y/
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 5. 0.MLA複合館としての京都府立総合資料館
• 1963年開館
• 「京都に関する歴史・文化・産業・生活等の資料を
総合的に収集・整理・保存・閲覧・展示し、
府民の調査研究などの利用に供する」
• 多数の図書資料・古文書・公文書・現物資料を所蔵
国宝「東寺百合文書」(1997年指定、18642点)
重要文化財「東寺観智院伝来文書典籍類」(1981年指定、57点)
「京都府行政文書」(2002年指定、15407点)
「革嶋家文書」(2003年指定、2459点)
→京都の記憶を体系的に読み解ける研究拠点
→都道府県立図書館の郷土資料室の巨大版
→現在新施設建設中
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 9. 1.文化資源というとらえ方
~~
選ぶ? or 残ったものでよい?
文化資源として
新たに開拓されるべき部分
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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「資
源
として残
す
」という
意
識
古代近世近代戦後21世紀
- 10. 1.文化資源というとらえ方
「パッケージ化」された文化資源プレ文化資源
・明確なカタマリを成している
・メタデータが付与されている
・明確なカタマリを成していない
・メタデータが付与されていない
ex.既に整理された
書籍
絵画
仏像
古文書など
デジタル化の対象となってきた
ex.未整理の
紙の束
書簡の固まり
雑多なプリント
ノートやメモなど
整理には多くの作業が必要であり、
現在のMLAの機能からもこぼれ落ちている
デジタル化の対象になりにくい
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com) 10
- 11. 1.文化資源というとらえ方
• 世界では文化資源のデジタル化が近年急激に進行
• Googleの各種プロジェクト
現在はアートプロジェクトと
歴史アーカイブ
http://www.google.com/culturalinstitute/project/art-project?hl=ja
http://www.google.com/culturalinstitute/project/historic-moments
• ヨーロピアナhttp://www.europeana.eu/
Googleの動向に対応
EUが運営。フランス・ドイツが中心
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 12. 1.文化資源というとらえ方
• 文化資源をめぐる日本の制度的動向(MとA)
→公文書管理法施行(2011年4月)
公文書等の適切な管理を求める/地方公共団体にも努力義務
→学芸員資格の見直し(2012年4月)
情報・メディア論/資料保存論/展示論/教育論を増設
• 東日本大震災の衝撃
→文化資源に対する大きな打撃
→これまで関係者間でのみ議論されていた問題が可視化
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 13. 2.東寺百合文書のデジタル化百合文
書?
• 東寺百合文書とは、京都市南区の教王護国寺(東寺)に伝えら
れた文書群で、現在は京都府立総合資料館が所蔵
• 「ひゃくごう」と呼びます
• 近世前期に加賀藩が寄進した百あまりの合(蓋付きの箱)に入
れられていたための呼び名
• 奈良時代から江戸時代初期までのおよそ1000年間にわたる
24,147通の文書
• 巨大寺院であり広大な荘園をもつ領主であった東寺の運営に
かかわる資料
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 14. 2.東寺百合文書のデジタル化百合文
書?
• 北は茨城県から南は熊本県にわたって散らばる荘園
• 庶民から時の権力者まで様々な階層の人々の息づかい
を今に伝える
• 日本中世史を研究する上で必須の文書史料群の一つ
→つまり
• 「東寺」の事務書類の集積
• 多くは普段使いの紙に墨書
• 個々は断片の情報/全体としてみるとより意味を持つ
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 16. 2.東寺百合文書のデジタル化整理事業
• 1967年東寺から購入/整理作業開始
• 1967年第1次修理事業開始(~73年約9,000点)
• 1976年目録第1巻刊行(~79年第5巻まで)
• 1980年公開開始/全点マイクロ化開始
• 1980年重要文化財指定
• 1983年第2次修理事業開始(約1,000点)
• 1997年国宝指定
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- 17. 2.東寺百合文書のデジタル化直前の状
況
• 全点のマイクロ撮影。当館やいくつかの大学に
は写真帳あり
• これまでこの文書群にアクセスする場合には、
基本的にこの写真帳を利用
• 利用については許諾が必要
• 資料保存のため、原本の閲覧を制限せざるを得
ず、展覧会も年1回の開催(合計28回)
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- 18. 2.東寺百合文書のデジタル化体制
• デジタル化作業への対応
– 当初は職員が行う
– その後委託で実施
• データベース構築チーム
– 総括
– 百合担当
– 百合担当(システムに詳しい)
– システム担当
– 進行管理(役所と専門家とベンダーのあいだで)
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 19. 2.東寺百合文書のデジタル化撮影作業
• 2013年1月から2014年2月まで、全84,000カットのデジ
タル化作業を行う
• 当館職員の指示のもと、A2サイズのブックスキャナ3
台とA1サイズのブックスキャナ1台で作業
• その際、一紙一紙慎重に扱うのは当然として、墨がつ
いていない(文字が書かれていない)ことを証明する
ために、資料の裏が白紙であっても撮影
• 実用的な画像を作成するために、資料の背景にも工
夫を凝らし、目盛りの入った、なるべく原紙の色に近い
台紙を使用
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 21. 2.東寺百合文書のデジタル化使えるデータ
• 「使えるデジタルデータ」の作成と流通を重視
• システム/利用規則等の仕組みの両面から
• システム面では2013年12月からという短期間
の開発のため要改善部分が残る
• しかし、多様な検索機能のほかに解説・地
図・年表・子供向けコンテンツを搭載
• ダウンロードも方法も簡単に
• また掲載している画像は墨の色や紙の質感
までもわかるような高細密画像
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- 22. 2.東寺百合文書のデジタル化仕組みの工夫
• 特に工夫しようとしたのが利用規則等の仕組み
• コンテンツを「クリエイティブ・コモンズ表示2.1 日本ライセンス」
(CC BY)で提供
• 「京都府立総合資料館所蔵」の明記のみを利用条件に
• クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの採用については様々な議論
• しかし、資料自体の著作権に配慮する必要がないこと世界記憶遺
産の候補である以上、世界との共通ルールにする必要があること
• なによりも「自由に使ってもらいたい」という発想
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 23. 2.東寺百合文書のデジタル化成果還
元
• 「東寺百合文書WEBの掲載コンテンツを利用して
作成された資料類の提供についてのお願い」
– 成果を当館に還元いただく「特段のお願い」
– 「当webサイトのコンテンツを利用して作成された、書
籍・雑誌・論文・パンフレット・映像作品・新聞記事・TV
番組等を当館にご提供ください」
– 当館の収集方針に沿うものを所蔵資料として広く提供
• 1000年前の資料を利用し新たな成果を生み出し
た人々に、次の世代への置き土産をお願いする
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 24. 2.東寺百合文書のデジタル化反響
• CC BYを採用して画像を自由に使えることにし
たことへの「大英断」などの賛意が多い
• 「画像は同資料館の所蔵を示せば,料金や
申請不要で出版物や商品に使える方式で提
供する」という報道のような積極的なもの
• 歴史資料のオープンデータ化を他機関も進
めてほしい、文化遺産オンラインもEuropeana
のようにぜひCC表記に対応してほしい
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 25. 2.東寺百合文書のデジタル化反響
• 大学で古文書の授業を行っている方から「古文書学
の授業をやっている身としては,たいへん有り難い。
古文書の形態・様式のパターンの大部分をカバーして
いる」「鮮明な画像で文書の解説が出来るようになり
ますね。大助かりです。これで後期に集中して読む古
文書が矢野庄に決定です。『相生市史』の翻刻と比較
しながら読めるなんて,良い時代になったものです」
• 「あそこ建物は古いのにやることは新しいな」「検索で
きたり,『百合百話』という説明ページがあったり,
『Kid‘sひゃくごう』というページまで!お役所とは思えな
い!素晴らしい!」など、当館のイメージと違うという
評価
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 26. 2.東寺百合文書のデジタル化反響
• 「往復4時間の通勤時間中に東寺百合文書web
を見たいという理由だけで新しいモバイルを買っ
た」「かつて退職金で東寺百合文書全函の写真
帳を買い揃えようと思っていたが(700万円ぐらい
した)その必要はなくなった」など,今後の活発な
利用が期待される感想
• 極めつけは某博物館の方から
「貝ならぬ百合の函蓋を開け
データとなりぬ桃の節句に」
という狂歌をいただいたこと
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 27. 2.東寺百合文書のデジタル化周囲の状
況
• かなりの反響を巻き起こした今回の公開
– 評価は全部公開+仕組みに集中
• しかし、この試みのすべてが新しい、ということではない
• 文化財の目録データをクリエイティブ・コモンズで出す試み
は各地で始まっている
• 前後して目録所在情報サービス(NACSIS-CAT/ILL)を運営
する国立情報学研究所が総合目録データベースのデータ
をCC BYで公開
• などなど
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 29. 3.デジタル化の諸課題デジタル化の諸段階に即して
• 対象資料の決定
– 需要/著作権/貴重さ/劣化状況/容易さ
• 資料の整理・メタデータの付与
– ここが非常に重要
• デジタルコンバート
– 議論はここに集中しがちだが…
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
• 公開
– 単純な公開で良いか?
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- 30. 3.デジタル化の諸課題対象資料の決定
• 予算組み立ての問題
• 需要の指標??/「事業目標」からの展開?
• 資料の価値判断を巡って
• 重要な要素としての撮影自体の「容易さ」
– 資料に対する配慮(してはいけない事を確認)
• 準備状況とのかねあい
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 32. 3.デジタル化の諸課題公開
• 公開・制限に一定の基準を作成(個人情報等への配
慮) ←対象資料決定の段階でも
• その上で、単なる情報へのアクセスではない段階を
どう想定し、そこに向かってどのような戦略があり得る
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
のか
• 「アクセスと利用・再利用は別の概念であり,アクセス
が保障されただけでは、様々な利用・再利用が必ずし
も十分に行われるようになるものではないだろう」
(http://current.ndl.go.jp/e1571)
• → アクセスと利用・再利用は別概念という段階
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- 33. 3.デジタル化の諸課題公開
• 「データをオープン・バイ・デフォルトにするのは、それ
が公共財だから」(庄司昌彦)
• 文化資源こそ公共財であるはず
• なるべく平易なシステム
• webの動向のなかで
• CCにこだわらずともともかくライセンス表記を
– その際に「使う」立場にたって
– コストも心がける
• 継続性のために、使ってみせること
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 34. 3.デジタル化の諸課題人材の問題
• MLAの間の越えがたい壁
• 専門家(学芸員・司書)の育成ルートや資質
• 今後のデジタル化に必要な人材
– コンテンツが解る/データベースが解る/webの状況が解る/
社会状況が解る
• 自ら育つ
– 情報をとる/手元のリソースで出来るところから
• 連携する/融合する
– そのためのMALUI連携ex)京都市明細図
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 35. 3.デジタル化の諸課題その他諸々
• 存在告知/情報制御/文化資源自体の保存
→上記の原則を守りつつ広く共有(デジタル技術を軸に)
• その他諸々の課題
→個別の小さなデータベースが乱立
→多くの場合、webの動向とは別の発想から構築
→紙芝居の替わりのデータベース
→プロデュースする、という観点
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 36. 4.まとめ多くの課題
• デジタル技術を適切に活用することによって文化資源
を発掘・活用する
→文化資源の「たなおろし」/文化資源の活用→保存へ
→経済成長型社会からの転換
• その環境は整っている
DB環境/クリエイティブ・コモンズなど
• 一方で多くの課題
→人材の問題
→コストの配置転換
→哲学の構築
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 37. 参考1
• 東寺百合文書WEB(http://hyakugo.kyoto.jp/)(2014年3月2日確認)
• 東寺百合文書WEB 利用案内(http://hyakugo.kyoto.jp/guide)(2014年3
月2日確認)
• 国宝「東寺百合文書」のインターネット公開について
(http://www.pref.kyoto.jp/shiryokan/documents/toji_web_koho2014022
8.pdf)(2014年3月2日確認)
• 福島幸宏2013「京都府立総合資料館の新館構想から考える「資料・情
報・人の交通の場」」(http://kasamashoin.jp/2013/12/_55.html )(2014年
3月2日確認)
• 福島幸宏2013「カレントアウェアネス―E[No.242 2013.08.08]トークセッ
ション「新資料館に期待する」」(http://current.ndl.go.jp/e1461 )(2014年3
月2日確認)
• 福島幸宏2014「京都府立総合資料館の取り組み京都-日本のデジタ
ルアーカイブのハブを目指して」(http://www.ameet.jp/digital-archives/
digital-archives_20140114/)(2014年3月2日確認)
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
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- 38. 参考2
• 東京大学史料編纂所データベース選択画面>日本古文書ユニオンカタログ
(東寺百合文書の影写本が含まれている)(http://wwwap.hi.u-tokyo.
ac.jp/ships/shipscontroller)(2014年3月2日確認)
• 生貝直人2013「オープンデータの制度的側面:著作権とライセンスを中心に」
(http://www.nii.ac.jp/userimg/libraryfair2013/2013_LFF_3_2.pdf)(2014年3月2
日確認)
• クリエイティブ・コモンズ表示2.1 日本ライセンス(CC-BY)
(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/)(2014年3月2日確認)
• 北摂アーカイブズ著作権と二次利用について(http://wiki.service-lab.
jp/lib_toyonaka/wiki.form?page=%2F%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E
3%81%A8%E4%BA%8C%E6%AC%A1%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%AB%E3%8
1%A4%E3%81%84%E3%81%A6)(2014年3月2日確認)
• 横手市文化財(オープンデータ)
(http://www.city.yokote.lg.jp/joho/page000027.html)(2014年3月2日確認)
京都府立総合資料館福島幸宏(fukusima-y@nifty.com)
2014/9/5 38
Editor's Notes
- 公共=公立 という構図の崩壊
→忘れられていた?中間団体の復権
→もともと 公共圏は「公立」の独占ではない
誰を、何を対象にしていくか
→目の前の利用者から公共圏の人々へ
→公共圏のとらえ方