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☆副作⽤を考える
発現機序 特徴 チェック 対策
薬理作⽤
発現頻度が⼤きい
投与量に依存して発現
症状の観察
減量
より緩和な他剤へ変更
対症療法
薬物毒性
投与量・投与期間に
依存して発現
定期的な問診
定期的な検査
減量
中⽌
他剤に変更
薬物過敏症
発現頻度は少ない
投与量に⾮依存
6ヶ⽉以内に発現
6ヶ⽉間は初発症状の
問診や検査を実施
発現時即時中⽌
菅野 彊 著,実践副作⽤学―くすりの副作⽤をどう考えどうとらえたらよいのか?医薬ジャーナル社 より
19. 機能的原因
(動的障害)
中枢神経
延髄嚥下中枢障害 球⿇痺
両側上位運動ニューロン障害 偽性球⿇痺
末梢神経 喉頭⿇痺
筋疾患 筋⼒低下
器質的原因
(静的障害)
先天的構造異常:奇形など
後天的構造異常:腫瘍,炎症,外部からの圧迫,外傷,術後
⼝腔・喉頭
脳⾎管障害,脳腫瘍,頭部外傷
脳膿瘍,脳炎,多発性硬化症
パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症
末梢神経炎(ギランバレー症候群など)
重症筋無⼒症,筋ジストロフィー
筋炎(各種),代謝性疾患(糖尿病な
ど)
薬剤の副作⽤,その他
⾷道
脳幹部病変
アカラジア
筋炎
強⽪症,全⾝性エリテマトーデス
薬剤の副作⽤,その他
⼝腔・喉頭
⾆炎,アフタ性⼝内炎,⻭周病
扁桃炎,扁桃周囲腫瘍
咽頭炎,喉頭炎,咽後腫瘍
⼝腔・咽頭腫瘍(良性・悪性)
⼝腔咽頭部の異物,術後
外からの圧迫(頸椎症,腫瘍など)
その他
⾷道
⾷道炎,潰瘍
⾷道ウェブ,ツェンカー憩室
狭窄,異物
腫瘍(良性,悪性)
⾷道裂孔ヘルニア
外からの圧迫(頸椎症,腫瘍など)
その他
このほか,⼼理的原因による嚥下障害も臨床上重要である。
(神経性⾷欲不振症,認知症,拒⾷,⼼⾝症,うつ病,うつ状態など)
② 薬学的観点における摂⾷・嚥下機能-04
20. 機能的原因
(動的障害)
中枢神経
延髄嚥下中枢障害 球⿇痺
両側上位運動ニューロン障害 偽性球⿇痺
末梢神経 喉頭⿇痺
筋疾患 筋⼒低下
器質的原因
(静的障害)
先天的構造異常:奇形など
後天的構造異常:腫瘍,炎症,外部からの圧迫,外傷,術後
⼝腔・喉頭
脳⾎管障害,脳腫瘍,頭部外傷
脳膿瘍,脳炎,多発性硬化症
パーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症
末梢神経炎(ギランバレー症候群など)
重症筋無⼒症,筋ジストロフィー
筋炎(各種),代謝性疾患(糖尿病な
ど)
薬剤の副作⽤,その他
⾷道
脳幹部病変
アカラジア
筋炎
強⽪症,全⾝性エリテマトーデス
薬剤の副作⽤,その他
⼝腔・喉頭
⾆炎,アフタ性⼝内炎,⻭周病
扁桃炎,扁桃周囲腫瘍
咽頭炎,喉頭炎,咽後腫瘍
⼝腔・咽頭腫瘍(良性・悪性)
⼝腔咽頭部の異物,術後
外からの圧迫(頸椎症,腫瘍など)
その他
⾷道
⾷道炎,潰瘍
⾷道ウェブ,ツェンカー憩室
狭窄,異物
腫瘍(良性,悪性)
⾷道裂孔ヘルニア
外からの圧迫(頸椎症,腫瘍など)
その他
このほか,⼼理的原因による嚥下障害も臨床上重要である。
(神経性⾷欲不振症,認知症,拒⾷,⼼⾝症,うつ病,うつ状態など)
② 薬学的観点における摂⾷・嚥下機能-04
動き(働き)の問題構造の問題
医療⾏為に伴う医原性の嚥下障害
(Iatrogenic Dysphagia)
35. 0.0
5.0
10.0
0 5 20 40 60
⽔
お茶
温かいお茶
スポーツ飲料
ジュース
⽜乳
味噌汁
とある「とろみ剤」の経時変化
② 薬学的観点における摂⾷・嚥下機能-18
ポイントは、時間と素材
20分が肝か?
36. とろみの強さ ++++ ++++ ++++
とろみのイメージ とんかつソース状 ケチャップ状 マヨネーズ状
使⽤量の
⽬安
⽔
(20℃)
1.5g 2.2g 2.7g
⽜乳
(10℃)
1.5g 2.2g 2.7g
味噌汁
(60℃)
1.5g 2.0g 2.5g
とろみのイメージ とんかつソース状 ヨーグルト状
お茶 1.0~1.2g 1.8~2.0g
スポーツ飲料・⽜乳
温かいお茶・味噌汁
1.3~1.5g 1.8~2.0g
ハイトロミール
スルーキング i
② 薬学的観点における摂⾷・嚥下機能-19
37. とろみの強さ ++++ ++++ ++++
とろみのイメージ とんかつソース状 ケチャップ状 マヨネーズ状
使⽤量の
⽬安
⽔
(20℃)
1.5g 2.2g 2.7g
⽜乳
(10℃)
1.5g 2.2g 2.7g
味噌汁
(60℃)
1.5g 2.0g 2.5g
とろみのイメージ とんかつソース状 ヨーグルト状
お茶 1.0~1.2g 1.8~2.0g
スポーツ飲料・⽜乳
温かいお茶・味噌汁
1.3~1.5g 1.8~2.0g
ハイトロミール
スルーキング i
② 薬学的観点における摂⾷・嚥下機能-19
と
ろ
み
に
も
と
ろ
み
な
ら
で
は
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奥
深
さ
が
あ
る
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Art and Strategy of TOROMI(
笑
)
京滋 摂⾷・嚥下を考える会
http://keiji-enge.wix.com/ksgd
45. ③ 5期型嚥下モデルによる各論-04
【先⾏期-c】
p 意識レベルの低下
p 認知機能の問題
p ⾷欲不振(&感覚器異常・疼痛)
p 振戦など運動機能の異常
覚醒
認知
意欲
動作
※⾷事中の眠気、動作緩慢など
※味覚異常や⼝渇による摂⾷拒否または意欲の低下も含む
POINT
1)まずどの時相に障害があるのか確認し、障害を上記に分類、そのうえで
「疾患・症状や環境に問題がないかどうか」
「薬が悪影響を及ぼしていないかどうか」
2)新たな薬剤が使⽤される場合に、先⾏期に悪影響を及ぼす可能性の薬剤で
あるかどうか、どの機能に影響するか(⽣活の場にどのような形で⾒えるか)
関係者間で把握しておく
それぞれ考え、すり合せる}
47. ③ 5期型嚥下モデルによる各論-06
【先⾏期-e】
□薬剤性摂⾷嚥下障害の経験があると答えたのは
看護師 104/127 (82%)
薬剤師 7/56 (13%)
その他の医療職 42/48 (87%)
□薬剤性摂⾷嚥下障害の症状(複数回答あり)
⾷事中の眠気 124
動作緩慢 70
誤嚥 67
むせ 66
流涎 46
⼝腔内残渣 42
薬の嚥下動作ができない 32
振戦 23
リスペリドン 76
ハロペリドール 13
クエチアピン 6
チアプリド 6
アルプラゾラム 5
ジアゼパム 5
□原因薬剤上位6位
1-3⽇ 49
4-7⽇ 34
8⽇以降 5
1-3 34
4-7 28
2週間以内 20
数週間から半年 5
回復せず 3
□服⽤開始後、摂⾷嚥下
障害発症までの期間
(判明しているもの)
□服薬中⽌から摂⾷嚥下機
能回復までの期間
51. ③ 5期型嚥下モデルによる各論-09
【準備期-c】
種類 代表的薬物 機序
⼝
腔
乾
燥
向
精
神
薬
向精神薬 クロルプロマジン,ハロペリドール 中枢神経系の抑制
唾液腺細胞のα,β,M 受容体を抑制
抗うつ薬 三環系抗うつ薬,MAO 阻害薬,四環系抗うつ薬 中枢神経系の抑制
唾液腺細胞のα,β,M 受容体を抑制
躁病治療薬 炭酸リチウム 細胞内モノアミン代謝促進による伝達物
質の減少.受容体感受性低下.
抗不安薬
ベンゾジアゼピン類(ジアゼパム,フルマゼニ
ル,クロナゼパム,ミダゾラム)
中枢神経系の抑制
GABAA/CBR の活性化,PBR の活性化
⼩胞体からのCa2+放出の抑制
PLC 活性の抑制,IP3 の産⽣抑制
抗パーキンソン薬 塩酸アマンタジン
ドパミンの放出促進作⽤・再取り込み
作⽤・合成促進作⽤によりシナプス
間隙 のドパミン量の増加が起こり、
顎下神経節の節後細胞の D2 受容体に
作⽤して, K+の透過性を亢進するため
過分極がおこり神経伝達を抑制すること
が考えられる.
脳代謝賦活薬 塩酸アマンタジン
利
尿
薬
浸透圧性 D- マンニトール ⾎清浸透圧を⾼めるので,腺房細胞への
⽔の供給が減少する.
サイアザイド
トリクロロメチアジド,ヒドロクロロチアジド,
ベンチルヒドロクロロチアジド ⽔と電解質の輸送系に影響を与え、唾液
の形成が減少する. しかし、唾液腺には
各種利尿薬の作⽤点とは異なる他の輸送
系が存在し、代償性に働くと考えられて
るため唾液分泌の低下は必ずしも顕著に
あらわれない。
ループ利尿薬
フロセミド,ブメタニド,
エタクリン酸
カリウム保持性 スピロノラクトン,トリアムテレン
炭酸脱⽔素酵素阻害薬 アセタゾラミド
川⼝ 充ら,薬物療法と⼝腔内障害,⽇薬理誌127,447453(2006)より引⽤改変
52. ③ 5期型嚥下モデルによる各論-10
【準備期-d】
種類 代表的薬物 機序
⼝
腔
乾
燥
受
容
体
遮
断
薬
向コリン薬(ムスカリン
受容体遮断薬)
アトロピン,ホマトロピン,
ピレンゼピン
唾液分泌に関わる受容体を遮断する.β1-β2遮断薬 プロプラノロール
抗ヒスタミン薬 クロルフェニラミン
アドレナリン作動性ニューロン
遮断薬
グアネチジン,ベタニジン,
デブリソキン,レセルピン
交感神経による唾液分泌を抑制する.
カルシウム拮抗薬
ニフェジピン,ジルチアゼム,
ベラパミル
細胞内 Ca2+の減少による,細胞内情報伝達の低下.
川⼝ 充ら,薬物療法と⼝腔内障害,⽇薬理誌127,447453(2006)より引⽤改変
⾃律神経遮断薬による⼝腔乾燥症状の発現は顕著で、その作⽤機序も
受容体に対するアンタゴニストとして遮断作⽤を⽰すためである。
!
⼝腔乾燥を起こす薬物は、⼆次的に⼝腔内の機能不全を惹き起こし、
味覚障害、粘膜の炎症、菌交代現象などの原因となる.
53. ③ 5期型嚥下モデルによる各論-11
【準備期-e】 川⼝ 充ら,薬物療法と⼝腔内障害,⽇薬理誌127,447453(2006)より引⽤改変
種類 代表薬物 機序
味
覚
障
害
抗悪性腫瘍薬 テガフール,メトトレキサート,シスプラチン 細胞障害
Zn キレート
抗菌薬
塩酸テトラサイクリン,塩酸ドキシサイクリ
ン,スルベニシリンナトリウム Zn キレート
抗リウマチ薬 D-ペニシラミン Zn キレート
抗パーキンソン薬 レボドパ Zn キレート,唾液分泌低下
降圧利尿薬 フロセミド Zn キレート,唾液分泌低下
⾎圧降下薬 カプトプリル Zn キレート
冠⾎管拡張薬 塩酸ジルチアゼム,ニフェジピン Zn キレート,唾液分泌低下
抗炎症薬 エテンザミド,アスピリン,インドメタシン Zn キレート
⻭⾁
肥⼤
抗てんかん薬 フェニトイン 線維性増⽣を特徴とする⻭⾁増殖症を惹き起こす.
線維性の増殖の⼀因として,⻭⾁の線維芽細胞の
コラーゲンファゴサイトーシスを抑制すると考えら
れている.
⾼⾎圧治療薬
狭⼼症治療薬
ニフェジピン,塩酸ジルチアゼム,塩酸ベラパ
ミル
免疫抑制薬 シクロスポリン
⻭の
着⾊
形成
不全
抗菌薬 塩酸テトラサイクリン, 塩酸ミノサイクリン
ハイドロオキシアパタイト結晶構造中にとりこまれ
エナメル質の透過性に影響する.
痛⾵発作治療薬 コルヒチン
胎⽣期,⽣後の⻭の形成期に摂取すると,有⽷分裂
阻害作⽤によって⻭の形成不全をおこす
66. ③ 5期型嚥下モデルによる各論-22
まとめ
1. 意識レベルに影響を与える薬剤は主に先⾏期〜準備期に
影響を与える
2. 消化管機能の低下は先⾏期(意欲)にも影響する
3. 運動機能に影響を与える薬剤は先⾏期〜準備期(咀嚼・
送り込み)に影響を与える
4. 潤滑性に影響を与える薬剤は5つのどの時相にも影響
を与える
5. 感覚器が冒されると準備期だけでなく先⾏期(⾷欲)
にも悪影響をおよぼす
6. 筋⼒の低下に関連する薬剤はどの時相にも悪影響をお
よぼす
7. 抗コリン作⽤薬は全ての時相に悪影響をおよぼす
8. 向精神薬・抗不安薬のなかでは特にベンゾジアゼピン
系薬剤に注意が必要
9. ⾷道期の影響は⼝腔内にあらわれることが少なくない
69. ④ 薬効分類による各論-03 向精神薬-a
薬物
(代表的商品名)
※
⽤量/⽇
摂⾷・嚥下障害発⽣のリスク その他の副作⽤
鎮静
※※
EPS
※※※
ACH
※※※※
B/P
体重
増加
痙攣 不整脈
オランザピン
(ジプレキサ)
5~20mg +++ 0 ++++ + ++ 0/+ +
クエチアピン
(セロクエル)
50~800mg ++ + ++++ +++ + 0 +
リスペリドン
(リスパダール)
4~16mg + +/++ 0 +++ + 0 ++
アリピプラゾール
(エビリファイ)
15~30mg + + ++ + 0 0 +
クロルプロマジン
(コントミン)
30~800mg +++ ++ ++ +++ 0 +++ ++
ペルフェナジン
(ピーゼットシー)
12~64mg ++ ++ + + 0 0 +
ハロペリドール
(セレネース)
1~15mg + +++ + + 0 0 0
ピモジド
(オーラップ)
1~10mg + +++ + + 0 0 ++
※分服、※※錐体外路症状、※※※抗コリン作⽤、※※※※起⽴性低⾎圧
0:副作⽤発⽣の可能性はほとんどない、+:副作⽤発⽣の可能性がわずかにある、
++:副作⽤発⽣の中等度の可能性がある、++++:副作⽤発⽣の可能性が特に⾼⽤量では⾼い、
++++:副作⽤発⽣の可能性が⾮常に⾼い
70. ④ 薬効分類による各論-04
向精神薬-b
⻄窪 加緒⾥, 兵頭 政光. 向精神薬による薬剤性嚥下障害例の検討.⼝腔・
咽頭科. Vol. 17 (2004-2005) No. 3 P 399-405
向精神薬の投与により嚥下障害をきたした15例について臨床的検討を⾏った.
症例は男性9例, ⼥性6例で年齢は平均65.6歳であった.原疾患はうつ病が10例
と最も多く, その他は, ⾮定型精神病, ⾝体表現性障害, アルコール依存症など
であった.全例がベンゾジアゼピン催眠鎮静薬, 抗うつ薬, 抗精神病薬などを1種
類以上投与されていた.6例では嚥下性肺炎の既往があった.嚥下造影検査では多
くの例で咽頭クリアランスが低下しており, 8例で明らかな誤嚥を認めた.また,
造影剤の⼝腔移動時間が有意に延⻑しており, これらの結果, ⼝腔期および咽頭
期嚥下が障害されていた.投与薬剤の減量や変更が⾏えた症例では, 嚥下機能の
改善が得られた.
表3.嚥下造影検査の定量的評価
⼝腔移動時間(秒)
咽頭移動時間(秒)
咽頭挙上遅延時間(秒)
嚥下障害例
(n=14)
対照群
(n=10)
0.67±0.48
0.38±0.17
0.44±0.38
0.24±0.09
0.24±0.11
0.21±0.06
※
※:p<0.05
72. ④ 薬効分類による各論-06
【対策】
1)抗コリン作⽤薬 ⇒ 減量・変更・中⽌
・⼝腔乾燥症に対して、中⽌後の治癒率は決して良好ではない。
(おおよそが1〜4ヶ⽉、1年経過しても治癒しない報告もある)
・消化管運動の低下に関しては2週〜3ヶ⽉で軽快する報告が多い。
・意識レベルでは、中⽌・減量後速やかに〜1ヶ⽉に改善する報告が多い。
!
2)ベンゾジアゼピン系薬剤
・各種の悪影響は上の抗コリン作⽤薬に準ずるケースが多い。
・錐体外路障害はハロペリドールなど他の薬剤によって改善する報告もある。
!
3)味覚異常
・治癒率は総じて低い(40%以下の報告が多い)。
・⼝腔ケアを併⽤して改善したという報告もある。
・⾎清亜鉛の低下と⼝腔乾燥症と、原因を鑑別する必要がある。
・今後は⻭科⼼⾝症を視野に含めた介⼊・原因究明も必要と考える。
!
4)嚥下障害(ベンゾジアゼピン系薬剤・抗コリン薬)
・⼝腔期〜咽頭期の障害について、その多くが減量・中⽌によって改善している。
・サルコペニアに⾄ったケースではリハビリテーションも必須となる