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News coverage and attitudes on
immigration: Public and commercial
television news compared
2019/5/22
論文輪読会資料
Masanori Takano
Laura Jacobs, Cecil Meeusen, Leen d’Haenens
European Journal of Communication, 2016.
https://doi.org/10.1177/0267323116669456
https://www.researchgate.net/publication/305780412_News_coverage_and_attitudes_on_immigration_Public_and_commercial_t
elevision_news_compared
ニュースのエンターテイメント化と排斥感情
● 報道は徐々にセンセーショナルでタブロイドになってきた。
○ これはニュースの品質を落とす
○ 市民に情報を伝えるというニュースメディアの伝統的な民主主義の機能を損なう
[Blumler & Gurevitch 1995] [Iyengar 2009]
■ 例えば移民関連
● 世論は一般に移民に対して非常に狭量
○ ニュースコンテンツにおける移民に対するネガティブなステレオタイプは、彼らに対する敵意をより
強化してしまう
● 先行研究
○ 「移民に対する世論」を質問紙で定期的に調査し、報道されたニュースによる因果を関係を時系列
解析 [Boomgaaarden & Vliegenthart 2009]
など
○ コンテンツや事業形態の違いなどを検討した研究はない
この論文の焦点: 公共放送 vs 商業放送
● 公共放送と商業放送の違いに焦点(日本だとNHKと民放?)
○ (欧州では)公共放送と商業放送のどちらを好むか?で市民の政治的態度(右 /左)が異なる
[Hooghe 2002] [Stromaback and Shehata 2010]
● 両者の違いは資金がどこからくるかによる
○ 公共放送: 公的の論理。※ KPIは世間の印象(信頼)?
○ 商業放送: 市場の論理。KPIは視聴者数
● 移民関連ニュース
○ 商業放送は公共放送よりも
■ センセーショナルな報道の仕方をする(感情や対立を強調)
■ タブロイド的トピックを扱う(ソフトニュース(≒ ワイドショー的))
○ 公共放送
■ 公共の利益のために、移民の背景や文脈を提供し、社会への移民の付加価値を強調するこ
とによって移民をよりポジティブに描写すると思われる
■ 少数民族に対する寛容な雰囲気作り、多様性を番組に反映することは公共放送の責任とし
て明確にされている in イギリス、オランダ、フランダース(今回の調査地域)
目的
1. 移民や入国管理の報道が公共・商業放送でどのように異なるかを評価する
2. 公共放送・商業放送の視聴者で反移民態度の比較
○ 対象地域: ベルギーのフランダース地方(オランダ語圏)
○ 対象期間: 2009〜2013年でランダムサンプリング
■ ちなみにシャルリー・エブド襲撃事件 @フランスは2015年1月、フランスの同時多発テロは
2015年11月
仮説
● H1: 移民関連の商業放送のニュースは、公共放送のニュースよりもセンセーショナ
リズムが多く含まれる
○ センセーショナリズム : 感情や対立を煽ったりする報道の仕方をする
● H2: 移民関連の商業放送のニュースは、公共放送のニュースよりもタブロイド化し
ている
○ タブロイド的: ソフトニュース的トピックを扱うこと(犯罪・スキャンダルなど)
● H3: 移民に関する公共放送のニュースは、商業放送のニュースよりもポジティブな
要素を含んでいる
● H4: 公共放送のニュースを見ている人は商業放送のニュースを見ている人よりも
移民に対してポジティブな態度を持っている
○ 因果関係は時系列のパネルデータを使って分析することでなんとかする
ニュースコンテンツの分析( H1, 2)
ニュースコンテンツの分析( H3)
質問紙調査
● 対象
○ 2009〜2014年のベルギー選挙パネル調査
○ N=1099 (2009年), 709 (2014年)
■ 4831人を地理的層別ランダムサンプリングしたうちの回答者
■ パネル分析に使える(全部回答した?)のは439人
● 指標
○ 公共放送/商業放送の好み
■ 過去2習慣に最も頻繁に見たニュース放送から指標を作成(4つの放送局から選択)
■ パネル調査で推移を検証
● 2009年から2014年の間に好みを切り替えたのはわずか10%
○ 公共放送→商業放送、商業放送→公共放送それぞれ5%
○ 反移民態度(1つを除いて5段階)
■ 2009年
● ベルギーは亡命希望者に対して国境を閉じるべきである(高いと反移民的)
● 移民は我々の国の福祉に貢献する(低いと反移民的)
■ 2014年
● ベルギーは亡命希望者に対して国境を閉じるべきである(高いと反移民的)
● 一般に様々な国の人がベルギーに住むことは、ベルギー経済にとっていいことである(低いと反移民的)
● 一般に、ベルギーでの文化は様々な国の人が住んでいるために損なわれている(高いと反移民的)
● 移民に対するポジティブ感情(0〜100の101段階)(低いと反移民的)
● ベルギーは様々な国から人が来るので、より良い場所になった(低いと反移民的)
○ コントロール
■ 性別、教育レベル、年齢、宗教、経済的地位、イデオロギー、政治的興味、テレビニュースの視聴頻度、ほかメディアの利用頻度(新聞、
ネットニュース、ラジオなど)
高いと反移民的
低いと反移民的
商業放送好み
との相関
● 質問紙調査結果の回帰分析
○ 基本的には商業放送を好む
ことと反移民態度に相関
○ 経済的驚異と民族多様性は有
意ではない
○ これでわかるのは因果関係では
なく相関なので注意
○ 決定係数が低い…
○ 統制変数: 高い政治的関心、教
育レベル、左派は偏見が少ない
因果関係の分析(交差遅れモデル)
● 2009年の公共放送への選好は2014年の亡命希望者への態度を軟化させる
● 亡命希望者への態度が公共放送/商業放送の選好を左右するわけではない
● 放送局に対する選好や亡命者への態度はかなり安定している
0.673***
0.449***
-0.137***
-0.65
図中の数字は統制変数も使って
推定した回帰係数(表3右カラム)
結果まとめ
● 本研究はニュースの選好による移民への態度に乖離が発生することを示唆
● コンテンツ分析
○ 商業放送のニュースのほうが公共放送よりもセンセーショナルでタブロイド的
■ ネガティブな感情や対立を煽りがち
■ より個人に焦点を当てており、詳細な報道や背景について報道されにくい
■ 犯罪ニュースが多い
● 視聴者の態度
○ 公共放送の視聴者は商業放送視聴者よりも移民に対してポジティブ
○ 公共放送を見ることによって移民に対する態度がポジティブになる
■ その逆ではないわけではない
● 移民に対してポジティブだから公共放送を見るようになるわけでない
● 著者らは「暫定の証拠」と弱い言い方をしている
○ ※ 確かにNを増やしたら、こちらも有意になりそうな気がする
公共放送と商業放送
● 公共放送でもセンセーショナルでタブロイド的なニュースは多い
○ 相対的に少ないだけ
○ とはいえ、本研究の結果は、商業化・多様化の時代でさえも、公共放送は多文化社会のために重
要な義務を追うことを意味する。
Limitation
● ニュースフォーマットの特徴の差異を考慮できていない
○ 画像などの視聴覚的特徴
○ センセーショナル・タブロイド的な要素を含んでいる可能性がある [Kleemans et al 2008]
● 間接的(?)な証拠にとどまる
○ 公共放送/商業放送の移民に対する放送内容、視聴者の放送局の選好、移民に対する態度の関
連を分析
○ さらなる研究では実験的アプローチ?
● とはいえ、移民に対する公共放送と商業放送の仮定された違いを体系的に説明す
る最初の論文(の1つ)なので意義がある

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  • 1. News coverage and attitudes on immigration: Public and commercial television news compared 2019/5/22 論文輪読会資料 Masanori Takano Laura Jacobs, Cecil Meeusen, Leen d’Haenens European Journal of Communication, 2016. https://doi.org/10.1177/0267323116669456 https://www.researchgate.net/publication/305780412_News_coverage_and_attitudes_on_immigration_Public_and_commercial_t elevision_news_compared
  • 2. ニュースのエンターテイメント化と排斥感情 ● 報道は徐々にセンセーショナルでタブロイドになってきた。 ○ これはニュースの品質を落とす ○ 市民に情報を伝えるというニュースメディアの伝統的な民主主義の機能を損なう [Blumler & Gurevitch 1995] [Iyengar 2009] ■ 例えば移民関連 ● 世論は一般に移民に対して非常に狭量 ○ ニュースコンテンツにおける移民に対するネガティブなステレオタイプは、彼らに対する敵意をより 強化してしまう ● 先行研究 ○ 「移民に対する世論」を質問紙で定期的に調査し、報道されたニュースによる因果を関係を時系列 解析 [Boomgaaarden & Vliegenthart 2009] など ○ コンテンツや事業形態の違いなどを検討した研究はない
  • 3. この論文の焦点: 公共放送 vs 商業放送 ● 公共放送と商業放送の違いに焦点(日本だとNHKと民放?) ○ (欧州では)公共放送と商業放送のどちらを好むか?で市民の政治的態度(右 /左)が異なる [Hooghe 2002] [Stromaback and Shehata 2010] ● 両者の違いは資金がどこからくるかによる ○ 公共放送: 公的の論理。※ KPIは世間の印象(信頼)? ○ 商業放送: 市場の論理。KPIは視聴者数 ● 移民関連ニュース ○ 商業放送は公共放送よりも ■ センセーショナルな報道の仕方をする(感情や対立を強調) ■ タブロイド的トピックを扱う(ソフトニュース(≒ ワイドショー的)) ○ 公共放送 ■ 公共の利益のために、移民の背景や文脈を提供し、社会への移民の付加価値を強調するこ とによって移民をよりポジティブに描写すると思われる ■ 少数民族に対する寛容な雰囲気作り、多様性を番組に反映することは公共放送の責任とし て明確にされている in イギリス、オランダ、フランダース(今回の調査地域)
  • 4. 目的 1. 移民や入国管理の報道が公共・商業放送でどのように異なるかを評価する 2. 公共放送・商業放送の視聴者で反移民態度の比較 ○ 対象地域: ベルギーのフランダース地方(オランダ語圏) ○ 対象期間: 2009〜2013年でランダムサンプリング ■ ちなみにシャルリー・エブド襲撃事件 @フランスは2015年1月、フランスの同時多発テロは 2015年11月
  • 5. 仮説 ● H1: 移民関連の商業放送のニュースは、公共放送のニュースよりもセンセーショナ リズムが多く含まれる ○ センセーショナリズム : 感情や対立を煽ったりする報道の仕方をする ● H2: 移民関連の商業放送のニュースは、公共放送のニュースよりもタブロイド化し ている ○ タブロイド的: ソフトニュース的トピックを扱うこと(犯罪・スキャンダルなど) ● H3: 移民に関する公共放送のニュースは、商業放送のニュースよりもポジティブな 要素を含んでいる ● H4: 公共放送のニュースを見ている人は商業放送のニュースを見ている人よりも 移民に対してポジティブな態度を持っている ○ 因果関係は時系列のパネルデータを使って分析することでなんとかする
  • 8. 質問紙調査 ● 対象 ○ 2009〜2014年のベルギー選挙パネル調査 ○ N=1099 (2009年), 709 (2014年) ■ 4831人を地理的層別ランダムサンプリングしたうちの回答者 ■ パネル分析に使える(全部回答した?)のは439人 ● 指標 ○ 公共放送/商業放送の好み ■ 過去2習慣に最も頻繁に見たニュース放送から指標を作成(4つの放送局から選択) ■ パネル調査で推移を検証 ● 2009年から2014年の間に好みを切り替えたのはわずか10% ○ 公共放送→商業放送、商業放送→公共放送それぞれ5% ○ 反移民態度(1つを除いて5段階) ■ 2009年 ● ベルギーは亡命希望者に対して国境を閉じるべきである(高いと反移民的) ● 移民は我々の国の福祉に貢献する(低いと反移民的) ■ 2014年 ● ベルギーは亡命希望者に対して国境を閉じるべきである(高いと反移民的) ● 一般に様々な国の人がベルギーに住むことは、ベルギー経済にとっていいことである(低いと反移民的) ● 一般に、ベルギーでの文化は様々な国の人が住んでいるために損なわれている(高いと反移民的) ● 移民に対するポジティブ感情(0〜100の101段階)(低いと反移民的) ● ベルギーは様々な国から人が来るので、より良い場所になった(低いと反移民的) ○ コントロール ■ 性別、教育レベル、年齢、宗教、経済的地位、イデオロギー、政治的興味、テレビニュースの視聴頻度、ほかメディアの利用頻度(新聞、 ネットニュース、ラジオなど)
  • 9. 高いと反移民的 低いと反移民的 商業放送好み との相関 ● 質問紙調査結果の回帰分析 ○ 基本的には商業放送を好む ことと反移民態度に相関 ○ 経済的驚異と民族多様性は有 意ではない ○ これでわかるのは因果関係では なく相関なので注意 ○ 決定係数が低い… ○ 統制変数: 高い政治的関心、教 育レベル、左派は偏見が少ない
  • 10. 因果関係の分析(交差遅れモデル) ● 2009年の公共放送への選好は2014年の亡命希望者への態度を軟化させる ● 亡命希望者への態度が公共放送/商業放送の選好を左右するわけではない ● 放送局に対する選好や亡命者への態度はかなり安定している 0.673*** 0.449*** -0.137*** -0.65 図中の数字は統制変数も使って 推定した回帰係数(表3右カラム)
  • 11. 結果まとめ ● 本研究はニュースの選好による移民への態度に乖離が発生することを示唆 ● コンテンツ分析 ○ 商業放送のニュースのほうが公共放送よりもセンセーショナルでタブロイド的 ■ ネガティブな感情や対立を煽りがち ■ より個人に焦点を当てており、詳細な報道や背景について報道されにくい ■ 犯罪ニュースが多い ● 視聴者の態度 ○ 公共放送の視聴者は商業放送視聴者よりも移民に対してポジティブ ○ 公共放送を見ることによって移民に対する態度がポジティブになる ■ その逆ではないわけではない ● 移民に対してポジティブだから公共放送を見るようになるわけでない ● 著者らは「暫定の証拠」と弱い言い方をしている ○ ※ 確かにNを増やしたら、こちらも有意になりそうな気がする
  • 12. 公共放送と商業放送 ● 公共放送でもセンセーショナルでタブロイド的なニュースは多い ○ 相対的に少ないだけ ○ とはいえ、本研究の結果は、商業化・多様化の時代でさえも、公共放送は多文化社会のために重 要な義務を追うことを意味する。
  • 13. Limitation ● ニュースフォーマットの特徴の差異を考慮できていない ○ 画像などの視聴覚的特徴 ○ センセーショナル・タブロイド的な要素を含んでいる可能性がある [Kleemans et al 2008] ● 間接的(?)な証拠にとどまる ○ 公共放送/商業放送の移民に対する放送内容、視聴者の放送局の選好、移民に対する態度の関 連を分析 ○ さらなる研究では実験的アプローチ? ● とはいえ、移民に対する公共放送と商業放送の仮定された違いを体系的に説明す る最初の論文(の1つ)なので意義がある