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- 16. (参考)リスク調整後CF法
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎15
一般的なDCF法では、将来キャッシュフローのリスクは
割引率に反映
将来キャッシュフローの発生確率を合理的に設定できる
場合には、将来キャッシュフローに発生確率を乗じるこ
とにより、直接リスクを反映することが可能
創薬事業に関するキャッシュフローの評価や、クレジット
デフォルトスワップ(CDS)の評価で用いられる
リスクの反映方法 割引率
通常のDCF法 割引率に反映 リスクフリー+リスクプレミアム
リスク調整後CF法 キャッシュフローに反映 リスクフリー
- 19. Step 1. 事業計画の入手
キャッシュフロー算定の基礎となる事業計画は、(原則
として)クライアントから入手
事業計画を作成するに当たっての前提条件の合理性や、事
業計画の達成可能性を確認・検証することは困難
仮に、弁理士が事業計画作成を支援する場合でも、最終的
に依頼人の確認を得て使用(作成責任は依頼人)
ただし、事業計画の前提条件については、専門家として分
析・検討し、その結果を報告書に記載
182013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 20. Step 1. 事業計画の入手(続)
事業計画の利用に関する留意事項を記載
(記載例)◯◯特許事務所は、×××の算定に際し、△△会
社から提供を受けた情報、一般に公開された情報等を原則
としてそのまま採用し、それが全て正確かつ完全であるこ
とを前提としております。
(記載例)◯◯特許事務所は、提供を受けた情報等につい
て、独自にそれらの正確性および完全性の検証を行ってお
りません。
(記載例)対象会社の財務予測については、対象会社の経
営陣により現時点で得られる最善の予測および判断に基づ
き、合理的に作成されていることを前提としております。
192013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 22. Step 2. 営業利益および法人税額
各期の営業利益に、当該各期の実効税率を乗じて法人税
を算出し、それを控除して税引後営業利益を算出
会社の実力である営業利益に対する法人税額を求めるため、
営業外損益や特別損益は考慮しない
ただし、発生が確実なものは考慮する
実効税率は、復興特別法人税の影響に留意
2015(平成27)年3月期までは約38.0%、その後は約
35.6%
ただし、1年前倒しで終わる可能性
212013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 24. Step 3. 減価償却費および設備投資
減価償却費(無形固定資産やのれんの償却費を含む)は、
フリーキャッシュフローの計算において加算項目となっ
ているが、現金流入があるわけではない
営業利益段階において減価償却費が既に差し引かれている
ため、それを足し戻しているもの
23
減価償却費
控除前
営業利益
減価償却費
営業利益
税引後
営業利益
法人税等
税引後
営業利益
減価償却費
キャッシュ
アウトなし
キャッシュ
アウトあり
キャッシュ
フローの
調整
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 25. Step 3. 減価償却費および設備投資
設備投資は、固定資産の取得に伴うキャッシュアウト
事業を維持していくためは、事業用の固定資産について
定期的な投資が必要
定常的な状態では、減価償却費と設備投資は同額
24
期首
固定資産
残高
償却後
固定資産
残高
減価償却費
償却後
固定資産
残高
設備投資
キャッシュ
アウトなし
キャッシュ
アウトあり
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 27. Step 4. 運転資本投資増減額
運転資本投資は、必要現預金、流動資産(現預金を除
く)および流動負債(有利子負債を除く)のネット額
現預金については、事業運営に必要な額とそれを超える部
分に分け、前者を運転資本、後者を非事業用資産とする
貸借対照表計画がある場合には、計画上の数値を使用
貸借対照表計画がない場合には、過去の売上高に対する
回転期間等から推定
各期の運転資本投資の増減額をフリーキャッシュフロー
の計算に反映(運転資本増→キャッシュフロー減)
262013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 30. Step 5. フリーキャッシュフロー
Step 2からStep 4で求めた、以下の項目を加減算するこ
とにより、事業計画期間におけるフリーキャッシュフ
ローを計算
1. 営業利益
2. 法人税額
3. 減価償却費
4. 設備投資
5. 運転資本投資増減額
292013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 35. 株主資本コストを求めるステップ
1. リスクフリーレート
2. 類似会社の選定
3. 類似会社の(レバード)ベータ
4. 類似会社のD/Eレシオおよび実効税率
5. 類似会社のアンレバード・ベータ
6. 対象会社に適用するアンレバード・ベータおよびD/Eレシオ
7. 対象会社に適用する実効税率および再レバード・ベータ
8. 株式リスクプレミアムおよびサイズプレミアム
9. 株主資本コスト
342013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 36. Step 1. リスクフリーレート
日本国債(10年もの)の利回りを用いるのが一般的
直近日を採用(一定期間の平均とする場合もあり)
データ入手先
Bloomberg
http://www.bloomberg.co.jp/apps/quote?T=jp09/quote.wm&ticker=GJGB10:IND
財務省
http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm
352013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 39. Step 2. 類似会社の選定
同一・類似の事業を営む上場会社(5〜10社程度)
商品・サービス、事業規模(売上高、利益、総資産、純
資産)、事業構成、ビジネスモデル、資本構成、地域
適当な会社が見つからない→類似の範囲を広げてみる
データ入手先
業界団体
会社四季報、日経会社情報
楽天証券業種分類スクリーニング(東洋経済新報社提供)
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/category/
382013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 41. Step 3. 類似会社各社のベータ
市場インデックス(TOPIX等)と類似会社各社の株価の変化率を求めて回
帰分析 → 回帰直線の傾きがベータ
過去2年/3年の週次データで計算するのが一般的
決定係数(R2) → 低い場合には採用できない
修正ベータ(0.67×未修正ベータ+0.33×1) → 将来ベータの推計値
データ入手先
Bloomberg(有料)
エクセルを使った株価ベーター値の算出
http://kabu-data.info/beta-9.htm
SPEEDA(有料)
https://www.ub-speeda.com/
プルータス・コンサルティング(有料)
http://www.plutuscon.jp/delivers/
402013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 42. Step 4-1. 類似会社各社のD/Eレシオ
Step 5で各社の観測されたベータ(レバード・ベータ)
をアンレバード・ベータにするために必要
有利子負債(D)は直近の貸借対照表による帳簿価額、
株式時価総額(E)は自己株式を除く発行済株式数に市
場株価を乗じて算出
ベータの観測期間中に資本構成が大きく変動している場
合には、D/Eレシオを期間平均とすることを検討
データ入手先
株式データ分析サイト等
ヤフーファイナンス、日経ウェブサイト等
412013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 45. Step 4-2. 類似会社各社の実効税率
Step 5でアンレバード・ベータを計算するために必要
各社の有価証券報告書の税効果会計に関する注記を参照
簡便的には38%(現在の法定実効税率)を使用
442013/9/27 弁理士 松本浩一郎
(出所:PwC)
- 47. Step 5. 類似会社のアンレバード・ベータ
Step 3で求めたベータ(レバード・ベータ)は、類似会
社各社の資本構成(有利子負債と株式の割合)の影響を
受けているため、そのままでは横並びで比較できない
このため、レバード・ベータをアンレバード・ベータ
(有利子負債がない場合のベータ)に変換する
βUはアンレバード・ベータ、βLはレバード・ベータ、tは実
効税率
46
( )
E
D
t
L
U
−+
=
11
β
β
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 49. Step 6. 対象会社のアンレバード・ベータ
およびD/Eレシオ
アンレバード・ベータ
Step 5で求めた類似会社各社のアンレバード・ベータを参考に
して、対象会社の株主資本コストの計算に用いるアンレバー
ド・ベータを推定
異常値による影響を避けるため、中央値や異常値を除いた平
均値を検討
D/Eレシオ
対象会社に目標資本構成がある場合には、それを採用。
目標資本構成がない場合には、Step 5で求めた類似会社各社の
D/Eレシオを参考にして、対象会社の株主資本コストの計算に
用いるD/Eレシオを推定
482013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 51. Step 7. 対象会社の実効税率および
再レバード・ベータ
対象会社のベータを算出するための実効税率は、将来(割引
くキャッシュ・フローの発生期間)の実効税率
復興特別法人税の影響に留意
2015(平成27)年3月期までは約38.0%、その後は約35.6%
ただし、1年前倒しとなる可能性
適用するアンレバード・ベータ、D/Eレシオおよび税率から再
レバード・ベータを計算
50
( )
−+=
E
D
tUL 11ββ
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 53. Step 8-1. 株式リスクプレミアム
株式リスクプレミアム(ERP)は、株式の期待リターンか
らリスクフリーレートを差し引いたもの(株式のリスク
を引き受けることに対する追加リターン)
ヒストリカルERP:過去の超長期の実績データから推計
IbbotsonAssociates社(米国:1926年〜)、プルータス・コ
ンサルティング社(日本:1949年〜)等が提供
Ibbotson SBBIValuationYearbook
プルータス・コンサルティング “ValuePro”
実務では、4%〜6%の範囲内で設定される例が多い
522013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 54. Step 8-2. サイズプレミアム
サイズプレミアム(SCP)は、株式時価総額が小さな企業
について適用するプレミアム
ベータが同じである場合に規模の大きな企業よりも小さな
企業の方がリターンが高いという実証研究に基づくもの
実務では、モーニングスター社が毎年公表している資料
を参考に設定
対象会社の株式時価総額の規模に応じて、適用するサイズ
プレミアムを設定
532013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 56. Step 9. 株主資本コスト
CAPM(再掲)
リスクフリーレート(Rf)、ベータ、株式リスクプレミア
ム(ERP)およびサイズプレミアム(SCP)から、株主資本コ
ストを計算
55
SCPERPRk fe +×+= β
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 57. 56
株主資本コストの計算例
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
• リスクフリーレート(Rf)を 0.7 %
• 再レバード・ベータ(β)を 1.38
• 株式リスクプレミアム(ERP)を 6.0%
• サイズプレミアム(SCP)を 3.81%
とすると、
• 株主資本コスト(ke)は12.79%と計算される。
SCPERPRk fe +×+= β
- 61. Step 2. クレジット・スプレッド
クレジット・スプレッドとは、企業の信用力の差に起因
する借り入れコストの差
デフォルト・リスクを反映
格付けと満期までの期間で概ね決まる
対象会社が社債を発行している場合は、その社債の流通
利回りを採用
データ入手先
日本証券業協会ー売買参考統計値
http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
602013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 63. Step 2. クレジット・スプレッド
対象会社が格付けを取得している場合は、その格付けに
対応する利回りを採用
データ入手先
日本証券業協会ー格付マトリクス
http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
622013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 65. Step 2. クレジット・スプレッド
対象会社が社債を発行しておらず、格付けも取得してい
ない場合は、有利子負債残高と支払利息から借入れコス
トを推計
有利子負債の残高は期首・期末の平均
データ入手先
決算短信、有価証券報告書
642013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 66. Step 4. 税効果考慮後負債コスト
負債の利息は、法人税の課税所得の計算において損金と
なるため、負債コストを計算する際にはその効果を考慮
債権者には税引前の利息が支払われるが、同時に利息の支
払いによる税額の減少があるため、事業にかかる実質的な
負債コストはネットとなる
フリーキャッシュフローが税引後となっていることに対応
(計算例)表面利回りが2.0%、税率が35.6%の場合
税効果考慮後負債コストは 2.0% ✕ (1-35.6%)
= 1.288%
652013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 69. 68
WACCの計算例
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
• D/Eレシオを 1.805 とすると、
• 負債割合(D/(D+E))は 64.4%、株主資本割合は
(E/(D+E))は 35.6%
• 負債コスト(kd)を1.288%、株主資本コスト(ke)を12.79%
とすると、
• WACCは 5.38 %と計算される。
- 72. Step 1. 割引率(WACC)
加重平均資本コスト(WACC)の計算式(再掲)
Dは有利子負債の時価
Eは株主資本の時価
kdは(税効果考慮後)負債コスト
keは株主資本コスト
以下、説明の便宜のためWACCを「12%」とします。
712013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 73. Step 2. 残存期間の価値
ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)
対象会社は永続的に事業を継続することが前提となってい
るため、事業計画期間以降を残存期間として計算
事業計画期間の最終事業年度を参考に残存期間を想定
通常、インフレ率等を考慮して永久成長率を設定するが、
日本企業の場合には成長率は通常0%
設備投資は、維持更新投資のみを前提に、減価償却費と同
額とする場合が多い(→固定資産の残高一定)
成長率を考慮する場合、運転資本投資は成長率に応じて増
加
722013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 74. Step 2. 残存期間の価値(続)
残存期間のフリーキャッシュフローの価値(残存価値)
は、以下の公式による(無限等比数列の和)
上記で計算される値は、事業計画期間の最終年度における
価値となっていて、現在価値ではないことに留意
計画期間以降は一定の状態が継続する前提
73
残存価値 =
事業計画最終年度の翌期の
フリーキャッシュフロー
WACC ー 永久成長率
2013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 77. Step 3. ディスカウントファクター
WACCに基づき、各期のフリーキャッシュフローを現在
価値に割引くための係数(ディスカウントファクター)
を算出
評価基準日からキャッシュフローの発生時点までの期間
に応じて割引計算
各期におけるキャッシュフローは各期の中央で発生するも
のと想定 (mid-year convention)
このため、初年度は0.5年分の割引、次年度は1.5年分の割
引
残存価値は、事業計画の最終年度と同じ比率を用いて現在
価値に割引
762013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 79. Step 4. 事業価値
前のセクションのStep 5で求めたフリーキャッシュフ
ローと、本セクションのStep 3で求めたディスカウント
ファクターを乗じて、フリーキャッシュフローの現在価
値を計算し、それを合計して事業価値を求める
なお、得られた事業価値から有利子負債を控除して、営
業外資産を加算することにより、株式価値が得られる
782013/9/27 弁理士 松本浩一郎
- 81. Step 5. 感度分析
前述のとおり、DCF法による価値評価結果は、多くの前
提条件に基づく
前提条件の変化によって結果がどのような影響を受けるか
を理解することが重要
通常、永久成長率とWACCについて0.25%刻みまたは
0.5%刻みでの感応度分析が行われている
感度が高い(少しの変化で結果が大きく動く)パラメー
タについては、より精緻な分析と慎重な設定が必要
具体的な計算については、Excelのデータテーブル機能に
より簡単に実行可能
802013/9/27 弁理士 松本浩一郎