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“Makers”型生産システムと
 日本型コンテンツ産業

  小山友介(芝浦工業大学)
お詫び:実質的に,Makersの書評レジュメ
   コンテンツ産業との絡みは殆ど書けず・・・

   とりあえず,それでもアップしておきますのでご
    自由に叩いてください
       研究はオープンプラットフォームでやるもの!
MAKERS
         ―21世紀の産業革命が始まる―
   著者:クリス・アンダーソン(Chris Anderson)
       Wired編集長
       “Long Tail”,“Freemium”の言葉の生みの親


   小山主観の超単純な内容要約
     ビットの世界(デジタル/オンライン)でのムーブメ
      ントがとうとうアトムの世界(リアルなものづくり)
      にまで届く
     アトムの世界でのNC化の進展と,ビットの世界での
      オープンかつDIY文化が出会ったとき,世界が変わる
     「オープンソースものづくり」のキラーアプリが3Dプ
    言ったことに責任をとらされる経済・経営系の学者は,こんなことは思っても言いづら
      リンタ
Makers生産システムの特徴
   オープン&モジュール化アーキテクチャ
       自由に議論
       各パーツごとに独立に議論
       組織外の有能な人を集める
           自然と集まると言ってるが,コミュニティ間の激しい競争があ
            るはず
   付加価値の源泉:改善コミュニティ
       協力的でない模倣者にコミュニティは協力しないだろ
        う
       「コミュニティのお墨付き」マークをつける(ココだ
        けは保護)
   小ロット生産
       金型を作るとペイしないレベルの生産
Makersの議論の前提(成立条件)その
1. 物理的インフラ条件 1
        機器:3Dプリンタが本体/利用価格ともに十分安価
            生産手段の民主化:ハッカー的原始共産制?
        情報環境および流通:実用的短納期の実現
            設計図が転送可能な高速ネット
            試作部品が素早く手元に届く流通環境
2.   開発文化的インフラ条件
        開発コミュニティによるオープンな開発
            模倣・改良・混淆が自由に行える
            進化速度最大化
        製品の設計:モジュール化されたパーツの組み合わせ
            各部品のインターフェイス部分が標準化されている
Makersの議論の前提(成立条件)その
3. 試作(or      2
         カスタム)注文発生条件
        マニア需要が存在:成熟した消費社会
        3Dモデリングスキルを持つ人が多数


4.   起業後の持続可能性条件(製品需要条件)
        生存ライン以上の需要:グローバルで数千個のロット
            言語プラットフォーム面の優位性があるとかなり楽(英
             語・・・)
参考:アーキテクチャ特性
                 部品設計の相互依存度
        インテグラル                 モジュラー
       (擦り合わせ)                (組み合わせ)
   クローズド クローズド・インテグラル クローズド・モジュラー
  (囲い込み)
企                 乗用車      メインフレーム
業
を               オートバイ         工作機械
超             軽薄短小型家電
え                     オープン・モジュラー
た
連                                PC
結                         パッケージソフト
   オープン                      新金融商品
  (業界標準)                       自転車

    藤本(2006):
    日本は左上(擦り合わせ型ものづくり)では圧倒的な強さを誇るが、
    それ以外の領域の競争力を長期的に維持できるか難しい

       Makersはオープン・モジュラー型
Makersまとめ
   Makersの議論をざっくりまとめると・・・
       標準的に利用(アクセス)可能なプラットフォーム上
        で
       オープンなアーキテクチャで
       モジュール型設計された高付加価値アイテムを
       グローバル相手に小ロットでつくる
生産システムの発展史の中でのMakers
             消費者の成熟度(≒消費社会の発達度)
    低:欠乏充足         中:消費=個性表現          高:個性化の極相
低
(    フォード型    正統   トヨタ型        セル型
下
      大量生産    発展 多品種少量生産 発展? 多品種少量生産
請
関     システム        システム      システム
係    クローズな     系列+サプライチェーン
                         小型製品向け&高頻度の
)    開発・生産               モデルチェンジにも対応




                 フレキシブルな “ビット”の経験を         3Dプリンタと
                      柔軟化       “アトム”に移植
                                            DIY型企業
(                 Piore & Sabre              “Makers”
対              地域ネットワークによる               グローバル&小ロット
等
)               バーチャルカンパニー             オープンソースものづくり
高
サプライチェーン内企業の自律性
余談:先祖返り?Apple-Foxconn型
                                Apple-Foxconn型システム?
                                    低賃金国での大量生産
                                    オプション数極小:管理コスト削
                                     減
  フォード型                             「垂直立上げ」で一気に低コスト
                  多品種少量生産
   大量生産                              化
                    システム
   システム
                                「オプション」「カスタマイ
                 追加付加価値内製化
                                 ズ」に違い
                                    トヨタ型・セル型
Apple-Foxconn型                          主にハードウェアによる多様化
   大量生産                                 追加付加価値内製化
   システム          先祖返り                       純正品重視,内部組付,クローズ開
                                             発
低賃金国に進出
                                            本体ではなく,オプションが収益源
単一機種大量生産
                                    Apple-Foxconn型
                      ソフトウェアでユーザーがカスタマ
                                     
                      イズ
元々はゲーム機ビジネスのモデル?...いずれにせよ,日本が目指す(勝てる)道では
日本の同人誌コンテンツ消費
1.       物理インフラ条件
        同人誌可の印刷所が日本中に存在,利用料安価
        短納期:データ納品可,最短数日で発送
2.       文化インフラ条件:N次創作の長い伝統
        模倣・改良・混淆自由,標準化・モジュール化されて
         いる
3.       試作(or カスタム)注文発生条件
        マニア需要&趣味的制作需要の存在
        絵(or マンガ)が描ける人:多数存在
4.       持続可能性条件
      成熟した消費者:小ロットかつ多様な需要が存在
       趣味的活動:少額の赤字でも問題なしで継続可能
     ハッカーカルチャーと同人カルチャーの類縁性を考えると,かなり自然な結論
     
議論を踏まえた暫定的?まとめ(1)
   日本の文脈では,正直なところ,珍しくも何とも
    ない
       短納期,単品,リピート生産がB2Bの世界で既に存在
       それに,コンテンツの世界のN次創作も類似
   ただし,彼らの「見せ方」「売り方」は上手い

   イノベーションへの指向の違い?
       Makers:「世界を変える」レベル.ある種の妄想(大
        言壮語)
           エヴァンジェリストが生み出せる文化的土壌がある
       日本的革新:日常を変えていく(演出する)革新
           コンテンツで次々面白いものを生める,という点で革新力はあ
            る
議論を踏まえた暫定的?まとめ(2)
   開発コミュニティ
       この点の苦労が殆ど書かれてない
       著者が英語圏の人で,しかもいい技術に「目利き」が
        出来る人なので、その点のイメージが弱いのかも
       日本はこの手のコミュニティ作りが下手.上手く作れ
        ない
           見知らぬ人のコミュニティより,工場の「現場力」の方が現実
            的
   ファンディング・インキュベーション:日本は絶
    望的
       「目利き」「評価」能力のない人が上にいる
       「目利き」間の競争がない
       クラウドファンディングも含めて,寄付カルチャーが
以下,上手くまとまってな
 いので走り書きメモ
Makers/日本コンテンツ型生産システ
             ムの適用範囲
   Makers:ビジョン提示型,適用範囲の議論が曖昧
       生産規模の議論ぐらいはあるが・・・
       どういったタイプの財で,どういった消費者が居れば
        成立できるかの議論が弱い


   超多様性市場の議論を整理して,両者の議論を寄
    せてみる
超多様性市場論(1)
   『コンテンツ産業論』で提唱された概念
       日本のコンテンツ消費のあり方を示した概念だが,か
        なり多義的に用いられている
           ある意味,日本のコンテンツ産業とイコールに近いぐら
            い・・・
       暗黙の前提条件がかなり多い
   大前提:面白いものが次々生まれてくる
       新しいヒット作品が次々生まれる
           ホームラン級だけでなく,中ヒット,小ヒットさまざま
       ヒット作がどこから出てくるか解らない
           メジャーなメディア/マイナーなメディア問わず
           さらには,プロ/アマ問わず
超多様性市場論の前提条件(例):同人
             音楽
    同人音楽コミュニティの成立条件(井手口2012)
    1.   DTMの普及
    2.   安価なCD-Rメディアの登場
    3.   同人イベント
→全てそろった1990年代に同人音楽コミュが成立

   言い換えれば・・・
    1.   要求スキルの低下:楽器演奏しなくてもOK
    2.   安価なメディア:配布コスト低下
    3.   発表できる場の誕生
商品特性
   個人の嗜好性が強く影響する財
       コンテンツは典型例:食べ物やファッションなど
   継続的に新製品への欲求が発生する消費財
       耐久消費財のように長期にわたって継続的に使用され
        ない
       娯楽作品は典型例
           ファッションはややビミョーだが,季節ものなので一応OKだ
            ろう
   消費者:その製品ジャンルへの需要(嗜好)は継
    続的に持っていることが多い

Makersにもかなり重なりそう??
生産構造
   個々の製品(パッケージ)の限界費用
       少量生産でも大量生産とあまり大きな差がないぐらい
        低
       低コスト生産のためのリソースへのアクセスがオープ
        ン
           ただし,価格に原盤(オリジナル)を制作(開発)するコスト
            が上乗せされるので,若干の規模の経済性がある
   参入障壁は低いため,新規参入者は次々現れる
       生産技術面での参入障壁は低い
       原盤制作のための設備費用という点でも低い
       新規参入者は元(もしくは現役での)消費者が多い
   基本的に,中小(もしくは個人零細)経営
       流通が大手なので,注意しないと買いたたかれる
超多様性市場論(2)概念ブレイク・ダ
             ウン
    「次々とヒット作」が出てくる条件
       「大数の法則」条件:背後に、十分多量の新しい作品
       存続可能条件:新しい作品のうち,それなりの数が
        (少なくとも版元レベルでは)ペイラインを超えてい
        る
       嗜好多様性条件:様々な作品が売れるぐらい,消費者
        の好みが多様(大ヒットの誕生条件とは背反?)
   「ヒット作の出所が多様」となる条件
       メディアアクセス条件:多くの人が作品の発表の場を
        持つ
       評判ネットワーク条件:消費者の間で作品情報が拡散
       制作者数条件:制作者の数が十分多い
       参入可能条件:制作者への参入障壁(技能習得含)が
まとまってないけど強引にまとめると
   Makersの議論:主に生産者側からの議論
       ハッカーのモノ作り


   超多様性市場の議論:主に消費者からの議論
       同人の消費


   表裏で合せて再検討が必要

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ゲーム産業講義2018年12月
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JRC Seminar (History of Video Game Industry)
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The birth of jrpg and its own revolution
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社会情報学会 研究会スライド
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社会システム科学研究会

  • 2. お詫び:実質的に,Makersの書評レジュメ  コンテンツ産業との絡みは殆ど書けず・・・  とりあえず,それでもアップしておきますのでご 自由に叩いてください  研究はオープンプラットフォームでやるもの!
  • 3. MAKERS ―21世紀の産業革命が始まる―  著者:クリス・アンダーソン(Chris Anderson)  Wired編集長  “Long Tail”,“Freemium”の言葉の生みの親  小山主観の超単純な内容要約  ビットの世界(デジタル/オンライン)でのムーブメ ントがとうとうアトムの世界(リアルなものづくり) にまで届く  アトムの世界でのNC化の進展と,ビットの世界での オープンかつDIY文化が出会ったとき,世界が変わる  「オープンソースものづくり」のキラーアプリが3Dプ 言ったことに責任をとらされる経済・経営系の学者は,こんなことは思っても言いづら リンタ
  • 4. Makers生産システムの特徴  オープン&モジュール化アーキテクチャ  自由に議論  各パーツごとに独立に議論  組織外の有能な人を集める  自然と集まると言ってるが,コミュニティ間の激しい競争があ るはず  付加価値の源泉:改善コミュニティ  協力的でない模倣者にコミュニティは協力しないだろ う  「コミュニティのお墨付き」マークをつける(ココだ けは保護)  小ロット生産  金型を作るとペイしないレベルの生産
  • 5. Makersの議論の前提(成立条件)その 1. 物理的インフラ条件 1  機器:3Dプリンタが本体/利用価格ともに十分安価  生産手段の民主化:ハッカー的原始共産制?  情報環境および流通:実用的短納期の実現  設計図が転送可能な高速ネット  試作部品が素早く手元に届く流通環境 2. 開発文化的インフラ条件  開発コミュニティによるオープンな開発  模倣・改良・混淆が自由に行える  進化速度最大化  製品の設計:モジュール化されたパーツの組み合わせ  各部品のインターフェイス部分が標準化されている
  • 6. Makersの議論の前提(成立条件)その 3. 試作(or 2 カスタム)注文発生条件  マニア需要が存在:成熟した消費社会  3Dモデリングスキルを持つ人が多数 4. 起業後の持続可能性条件(製品需要条件)  生存ライン以上の需要:グローバルで数千個のロット  言語プラットフォーム面の優位性があるとかなり楽(英 語・・・)
  • 7. 参考:アーキテクチャ特性 部品設計の相互依存度 インテグラル モジュラー (擦り合わせ) (組み合わせ) クローズド クローズド・インテグラル クローズド・モジュラー (囲い込み) 企 乗用車 メインフレーム 業 を オートバイ 工作機械 超 軽薄短小型家電 え オープン・モジュラー た 連 PC 結 パッケージソフト オープン 新金融商品 (業界標準) 自転車 藤本(2006): 日本は左上(擦り合わせ型ものづくり)では圧倒的な強さを誇るが、 それ以外の領域の競争力を長期的に維持できるか難しい Makersはオープン・モジュラー型
  • 8. Makersまとめ  Makersの議論をざっくりまとめると・・・  標準的に利用(アクセス)可能なプラットフォーム上 で  オープンなアーキテクチャで  モジュール型設計された高付加価値アイテムを  グローバル相手に小ロットでつくる
  • 9. 生産システムの発展史の中でのMakers 消費者の成熟度(≒消費社会の発達度) 低:欠乏充足 中:消費=個性表現 高:個性化の極相 低 ( フォード型 正統 トヨタ型 セル型 下 大量生産 発展 多品種少量生産 発展? 多品種少量生産 請 関 システム システム システム 係 クローズな 系列+サプライチェーン 小型製品向け&高頻度の ) 開発・生産 モデルチェンジにも対応 フレキシブルな “ビット”の経験を 3Dプリンタと 柔軟化 “アトム”に移植 DIY型企業 ( Piore & Sabre “Makers” 対 地域ネットワークによる グローバル&小ロット 等 ) バーチャルカンパニー オープンソースものづくり 高 サプライチェーン内企業の自律性
  • 10. 余談:先祖返り?Apple-Foxconn型  Apple-Foxconn型システム?  低賃金国での大量生産  オプション数極小:管理コスト削 減 フォード型  「垂直立上げ」で一気に低コスト 多品種少量生産 大量生産 化 システム システム  「オプション」「カスタマイ 追加付加価値内製化 ズ」に違い  トヨタ型・セル型 Apple-Foxconn型  主にハードウェアによる多様化 大量生産  追加付加価値内製化 システム 先祖返り  純正品重視,内部組付,クローズ開 発 低賃金国に進出  本体ではなく,オプションが収益源 単一機種大量生産  Apple-Foxconn型 ソフトウェアでユーザーがカスタマ  イズ 元々はゲーム機ビジネスのモデル?...いずれにせよ,日本が目指す(勝てる)道では
  • 11. 日本の同人誌コンテンツ消費 1. 物理インフラ条件  同人誌可の印刷所が日本中に存在,利用料安価  短納期:データ納品可,最短数日で発送 2. 文化インフラ条件:N次創作の長い伝統  模倣・改良・混淆自由,標準化・モジュール化されて いる 3. 試作(or カスタム)注文発生条件  マニア需要&趣味的制作需要の存在  絵(or マンガ)が描ける人:多数存在 4. 持続可能性条件  成熟した消費者:小ロットかつ多様な需要が存在 趣味的活動:少額の赤字でも問題なしで継続可能 ハッカーカルチャーと同人カルチャーの類縁性を考えると,かなり自然な結論 
  • 12. 議論を踏まえた暫定的?まとめ(1)  日本の文脈では,正直なところ,珍しくも何とも ない  短納期,単品,リピート生産がB2Bの世界で既に存在  それに,コンテンツの世界のN次創作も類似  ただし,彼らの「見せ方」「売り方」は上手い  イノベーションへの指向の違い?  Makers:「世界を変える」レベル.ある種の妄想(大 言壮語)  エヴァンジェリストが生み出せる文化的土壌がある  日本的革新:日常を変えていく(演出する)革新  コンテンツで次々面白いものを生める,という点で革新力はあ る
  • 13. 議論を踏まえた暫定的?まとめ(2)  開発コミュニティ  この点の苦労が殆ど書かれてない  著者が英語圏の人で,しかもいい技術に「目利き」が 出来る人なので、その点のイメージが弱いのかも  日本はこの手のコミュニティ作りが下手.上手く作れ ない  見知らぬ人のコミュニティより,工場の「現場力」の方が現実 的  ファンディング・インキュベーション:日本は絶 望的  「目利き」「評価」能力のない人が上にいる  「目利き」間の競争がない  クラウドファンディングも含めて,寄付カルチャーが
  • 15. Makers/日本コンテンツ型生産システ ムの適用範囲  Makers:ビジョン提示型,適用範囲の議論が曖昧  生産規模の議論ぐらいはあるが・・・  どういったタイプの財で,どういった消費者が居れば 成立できるかの議論が弱い  超多様性市場の議論を整理して,両者の議論を寄 せてみる
  • 16. 超多様性市場論(1)  『コンテンツ産業論』で提唱された概念  日本のコンテンツ消費のあり方を示した概念だが,か なり多義的に用いられている  ある意味,日本のコンテンツ産業とイコールに近いぐら い・・・  暗黙の前提条件がかなり多い  大前提:面白いものが次々生まれてくる  新しいヒット作品が次々生まれる  ホームラン級だけでなく,中ヒット,小ヒットさまざま  ヒット作がどこから出てくるか解らない  メジャーなメディア/マイナーなメディア問わず  さらには,プロ/アマ問わず
  • 17. 超多様性市場論の前提条件(例):同人  音楽 同人音楽コミュニティの成立条件(井手口2012) 1. DTMの普及 2. 安価なCD-Rメディアの登場 3. 同人イベント →全てそろった1990年代に同人音楽コミュが成立  言い換えれば・・・ 1. 要求スキルの低下:楽器演奏しなくてもOK 2. 安価なメディア:配布コスト低下 3. 発表できる場の誕生
  • 18. 商品特性  個人の嗜好性が強く影響する財  コンテンツは典型例:食べ物やファッションなど  継続的に新製品への欲求が発生する消費財  耐久消費財のように長期にわたって継続的に使用され ない  娯楽作品は典型例  ファッションはややビミョーだが,季節ものなので一応OKだ ろう  消費者:その製品ジャンルへの需要(嗜好)は継 続的に持っていることが多い Makersにもかなり重なりそう??
  • 19. 生産構造  個々の製品(パッケージ)の限界費用  少量生産でも大量生産とあまり大きな差がないぐらい 低  低コスト生産のためのリソースへのアクセスがオープ ン  ただし,価格に原盤(オリジナル)を制作(開発)するコスト が上乗せされるので,若干の規模の経済性がある  参入障壁は低いため,新規参入者は次々現れる  生産技術面での参入障壁は低い  原盤制作のための設備費用という点でも低い  新規参入者は元(もしくは現役での)消費者が多い  基本的に,中小(もしくは個人零細)経営  流通が大手なので,注意しないと買いたたかれる
  • 20. 超多様性市場論(2)概念ブレイク・ダ  ウン 「次々とヒット作」が出てくる条件  「大数の法則」条件:背後に、十分多量の新しい作品  存続可能条件:新しい作品のうち,それなりの数が (少なくとも版元レベルでは)ペイラインを超えてい る  嗜好多様性条件:様々な作品が売れるぐらい,消費者 の好みが多様(大ヒットの誕生条件とは背反?)  「ヒット作の出所が多様」となる条件  メディアアクセス条件:多くの人が作品の発表の場を 持つ  評判ネットワーク条件:消費者の間で作品情報が拡散  制作者数条件:制作者の数が十分多い  参入可能条件:制作者への参入障壁(技能習得含)が
  • 21. まとまってないけど強引にまとめると  Makersの議論:主に生産者側からの議論  ハッカーのモノ作り  超多様性市場の議論:主に消費者からの議論  同人の消費  表裏で合せて再検討が必要