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ニコニコ生放送
    「周波数オークションに関する“ウラ”(オモテ?)懇談会」 
                                        
                                        
放送日時:         2010 年 7 月 8 日(金)16:30~17:30 
 
総視聴者数:  13,844 人(2011 年 7 月 25 日現在) 
 
総コメント数:  5,398 
 
出演者: 
        ジョン・キム(座長) 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授
        ハーバード大学法科大学院客員教授。フジテレビ「BS プライムニュース」ブレインキャスタ
        ー。内閣官房、経済産業省、総務省、文化庁等の政府委員会の民間委員歴任。 
      
        夏野 剛(メンバー) 慶應義塾大学政策・メディア研究科 特別招聘教授
        元 NTT ドコモの執行役員・マルチメディアサービス部長で、i モードを立ち上げたメンバーの
        一人として知られる。現在はドワンゴなど、数社の取締役を務める。 
       
        池田 信夫(メンバー) 上武大学特任教授
        経済学者。周波数に関する主な著書に、『電波利権』、『新・電波利権』。 
      
             岩瀬 大輔(メンバー) ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長
             日本の生命保険業界に新規参入を実現した若手起業家として著名。ダボス会議で知られる世
             界経済会議の「ヤング・グローバル・リーダーズ 2010」に選出される。 
          
             吉川 尚宏(第一回ゲスト) A.T.カーニー株式会社 プリンシパル 
             総務省「周波数オークションに関する懇談会」構成員の一人。台湾が実施した周波数オーク
             ションの制度設計に係る。 
      
              
 
要旨: 
    • 本懇談会は、総務省の“周波数オークションに関する懇談会”の議論を検証し、建設的な提言を
         おこなうものである。 
    • 日本政府は、何のために電波を割り当てるのか、まずその立ち位置を明確にすべきである。 
    • 今、日本経済に重要なのは、競争だ。放送や公共目的のところは対象外とし、携帯電話などの成
         長分野の周波数割当に、オークションを導入すべき。 
    • 3GHz や 4GHz の将来の割当について検討する総務省の懇談会は意味がない。これからの競争政
         策に鑑みて、周波数を特定して具体的な制度設計論をすべき。 
    • 700MHz 帯で 100MHz が空くのが、新規参入の最後のチャンス。だからまず空く 900MHz での
         “指定席”への裁量割当を許してはいけない。 
    • すべてのステークホルダーが win‐win になるようなインセンティブ設計を検討する。具体的には、
         700/900MHz において政府が既存事業者から周波数を買い取る“逆オークション”を検討する。 
 
 
本放送は、下記の URL からタイムシフト視聴できます(登録が必要です)。 
http://live.nicovideo.jp/watch/lv55598264 
 
 
 
                                   



                                       1 
 
我々がソーシャルメディアを使って、政府に建設的な提言をしていく時が、
今、来たんじゃないかと思っています (キム氏)
     
    キム氏:   皆さん、こんにちは。これからニコニコ生放送「周波数オークションに関する“ウラ”
    懇談会」を始めたいと思います。 
     
    まずは本日の懇談会を立ち上げた趣旨から申し上げたいと思います。 
 
    最初から宣伝めいたことで恐縮なのですが、4 月にこういう本を出しました・・・『逆パノプディコ
    ン社会の到来』という本です。これは、これから社会の中で情報の透明性というものが高まると。そ
    して市民は、今まで政府や大企業によって監視されていた時代から、ソーシャルメディアを駆使しな
    がら政府や大企業の活動というものをモニタリングしていくと。その一連として今年 1 月から 2 月に
    かけてチュニジア、エジプトを始めとした北アフリカにおいて、若い市民が自らの志を実現していく
    ために、ソーシャルメディアを駆使して 20 年以上続いた独裁政権というものを倒したと。そういう
    革命的なことが日本の中でできるかどうかというのは議論の余地があると思うのですが、少なくとも
    我々がソーシャルメディアを使って、政府の様々な活動に対して理解を深める、または牽制をする、
    または建設的な提言をしていく、そういった手段として使っていく時が、今、来たんじゃないかと思
    っています。 
     
    池田信夫さんもいろんなところで書かれていることでもあるんですが、日本においては三権分立とい
    うものが成立していないと。すべての権限というものが官僚によって支配されている状況であるとい
    うことが、いわれています。今日、議論する周波数オークションや、本来であればすべての政策に対
    しては、立法側が、政治側が立法する能力を持って、民意を反映する政策決定プロセスというものを
    主導していく必要性がある。にも関わらず、そういう政治主導を掲げて誕生した民主党政権は、成立
    して約 2 年が経っていますが、その結果を見ると、かなりがっかりする結果になってしまっているん
    じゃないかという失望感があります。またそうした立法側が、本来の役割であるはずの立法の役割を
    果たしていくためのバックアップ体制が日本ではあまり強くない。そういう背景があって、今日は総
    務省の中で議論されているひとつの懇談会のシャドウ懇談会を立ち上げました。この懇談会、“ウラ”
    懇談会というタイトルを使っているのですが、先程の夏野さんより、 “オモテ”懇談会じゃないか
    という提言があったのですが、政府の懇談会より本質をついた、公共利益に合致するような議論がで
    きるような懇談会を目指して議論を進めていきたいと思います。 
     
    それでは、メンバーの方々の紹介をしたいと思います。また本日はゲストの方もいらしていただいて
    いますので、ご紹介したいと思います。 
     
    まず最初に、上武大学特任教授の池田信夫さんです。その隣が、ライフネット生命保険代表取締役副
    社長の岩瀬大輔さんです。そして慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛さんです。もう一人、東洋大学
    の経済学部教授の山田肇さんがメンバーではありますが、今日は事情で欠席となります。そして私の
    方が慶應義塾大学大学院准教授のジョン・キムです。座長を務めさせていただきます。よろしくお願
    いします。 
     
    続いて、第一回目のゲストをご紹介させていただきます。A.T.カーニーのプリンシパルでいらっしゃ
    います吉川尚宏さんです。吉川さんは総務省の“周波数オークションに関する懇談会”のメンバーで
    もあります。今日は、今朝第 5 回懇談会があったということで、その報告も後ほどしていただきたい
    と思います。 
     
    議論に入る前に、私の方から周波数または周波数オークションについて、十分な理解のない方々もい
    らっしゃると思うので、少し説明申し上げたいと思います。 
     



                          2 
 
電波、周波数というのは有限な公共財です。有限というのは、物理的にも有限でありますが、使いた
    い人に対して電波が十分に豊富ではないという意味でも有限です。また電波を活用した様々なビジネ
    ス等の潜在的な価値が高まっているということで、電波の相対的な希少性が非常に高いというのが現
    状です。そういう非常に巨大な潜在的な価値を秘めている電波というものを、今までは政府が管理を
    してきました。その管理もやり方がいろいろあって、特に、どういった周波数帯を誰に使わせるかと
    いうことにおいて、今まで政府、特に日本政府は“比較審査”、または政府の内部で審査をしたその
    結果として、特定の事業者に対して電波の免許というものを一定期間与えてきたというのが、今まで
    の現状です。 
     
     
OECD 加盟国 34 カ国中、周波数オークションを導入していないのは、日
本をはじめ 4 カ国だけ (キム氏)
     
    キム氏: しかし今、世界の状況を見
    ていきますと・・・ここにひとつの
    表がありますが、OECD の 34 カ国の
    中で周波数オークションを導入して
    いる国が 30 カ国、導入していない
    国が日本を始めとして 4 カ国・・・
    周波数オークションというのは、世
    界的な特に先進諸国における流れで
    あるというのがこの図から確認がで
    きます。果たしてこの周波数オーク
    ションが諸外国で有効でも、特定の
    国においては有効ではない可能性も
    ありますので、周波数オークション
    の導入というものが日本の将来にと
    って公共の利益につながるのかとい
    う点については慎重な議論が必要と
    いうことで、今年 3 月から、総務省の中で “周波数オークションに関する懇談会”が設けられて、
    今日まで 6 回、議論されてきています。それに対して私を含めて今回参加いただいたメンバーは、政
    府での議論というのは本質的な議論ではないと、結論ありきの議論ではないかということで、ある意
    味この懇談会の議論というものを、答申が出てから我々が何かコメントを、緊急声明を出すのではな
    くて、議論の最中に、我々のまた市民からの声というものを政府の方にインプットしていきたいとい
    う趣旨から、今回こうして“ウラ”懇談会を設立し、議論していきたいと思っています。 
     
    それではさっそく議論に入っていきたいと思うのですが、まず池田さん、周波数オークションと電波
    利権の関係、特に日本において何故、世界 OECD の 34 カ国の中で 30 カ国においては周波数オークシ
    ョンを導入しているけれども日本では全然されなかったかという背景等について、少しお話をいただ
    きたいと思います。 
 
 
放送業界は、周波数オークションが彼らの既得権益を侵すものだと勘違
いしている。その初歩的な誤解をまず解くことが必要 (池田氏)
 
    池田氏: 僕は周波数オークションについてはもう 10 年以上前から、鬼木先生とか、或いは東大の奥
    野さんとかと一緒にいい続けてきたわけですけれども、なんでこれが、さっきご紹介のあった先進国
    ではもう当たり前の制度が日本だけこんなに遅れているのかというと、僕の印象では、やはり当初は
    テレビ局の影響が相当強かったと思うんですね。 

                             3 
 
 
    一番印象的だったのは、2000 年頃だったと思うのですが、鬼木さんと奥野さんと僕とで、共同の署
    名活動みたいなものをやったんですね、周波数オークションを第 3 世代の携帯電話の時に導入すべき
    だと、200 人くらい署名を集めてやったことがあるんです。その時に日経新聞の「経済教室」に鬼木
    さんが原稿を書いたんです、あの、1 ページのね。で、普通の経済学者の原稿っていうのは、まあ、
    僕も何回か出しましたけど、そんなに大きく直されることはないんですけど、ビックリした。最初に
    ゲラがあがってから、大幅に直されたんですよ。何を直されたかというとですね、周波数オークショ
    ンは携帯電話に限る、と。なんか見出しがね、「携帯電話にオークションを」という見出しになって、
    最初は「市場メカニズム導入・・・」とかになっていた見出しを、それが直されて、携帯電話に入札
    をだっけな、競売をだっけな、という見出しになって。中のところも、全部、放送というのが全部、
    削除されちゃった。放送という言葉はもともとそんなになかったんですけど、それを全部ね、「通信
    に限って」「通信に限って」というふうに全部直されたんですよ。鬼木さんはさすがにビックリして
    ね。いやまあ、それは当然携帯電話の話だから、別に放送の話はもともとしていないんだけど、もと
    もと書いていないのにね、「放送には必要ない」とか「放送には関係ない」とか、誰が書いたか知ら
    ないけど書き込みがいっぱいあるわけですよ。もうそれを見て、ああ、なるほど、こういう人たちが
    やっているんだと思ったわけ。だから出た原稿には、見出しが「携帯電話に限って市場メカニズムを」
    というよくわからない文章になっているんだけど。(笑) 
     
    つまり、そこらへんから誤解が始まっているわけですね。僕ら、周波数オークションというのはもと
    もと放送の帯域をオークションにかけるということをいってもいないのに、日経新聞が代表ですけれ
    ども、テレビ局と系列化している新聞社にすると、所謂波取り記者というのは周波数を取ることが仕
    事ですから、それを新規参入者に取られたくないという被害妄想が強いんですね。でオークションと
    いうと、要するに放送の帯域をよその携帯電話業者に取られるんじゃないかという妙な被害妄想を持
    ってらっしゃるんですね。その人たちが意味もなく、オークションは良くない制度だというようなこ
    とを、当時の郵政省の方々に吹き込んできたことが、この問題のボタンのかけ違いの始まりで。 
     
    そうはいっても海外ではいろいろやっているもんだから、まあ、郵政省もやらなきゃいけないなとい
    うことで、何回か審議会で・・・特別の作業部会を作ってやったのね、で 1 回目はまだちょっと時期
    尚早だということで見送られて。2 回目は非常に悪いことに 2000 年の欧州の 3G オークションの直後
    にやっちゃったからね。あれはまあ非常にバブルで大変なことになったということで、それでダメに
    なっちゃった。といういろんな悪いことが重なっているんだけど、僕の印象では、放送業界の人はね、
    非常に意味もなく根拠のない被害妄想を抱いて周波数オークションが彼らの既得権益を侵すものだと
    いうふうに勘違いしていることが、未だに尾を引いていて。原口さんもそんなことをチラっとおっし
    ゃったのね、放送に導入するのはいかがなものか、と。その辺の全部初歩的な誤解をまず解くことが
    必要なのかな、という気がしますね。 
     
     
    キム氏: 他の方々に感想をお聞きしたいと思うのですが、まずは、せっかく今日はゲストとして吉川
    さん、今の周波数オークションに関する懇談会のメンバーになっている吉川さんから、今、総務省の
    中ではどういった議論が進んでいて、吉川さん自身がどういった感想を持っていて、こういう方向に
    進んだ方がいいんじゃないかということも含めて少しご報告をいただければ、それをベースにできる
    んじゃないかと思うんですが。 
     
     
    吉川氏: わかりました。改めまして、A.T.カーニーの吉川と申します。私自身は実は 10 年くらい前
    に台湾で第 3 世代携帯電話のオークションの設計に実際に関わっておりまして、そういうこともあっ
    て今回総務省の懇談会に呼ばれたのかな、と。あと昨年話題になりました「光の道のタスクフォース」
    のメンバーで、その時から私は「光の道」というのは、光そのものよりは電磁波というか電波の方に
    注目しないとちょっとまずいことになるなという警鐘を鳴らしていて、そういうことで今回メンバー
    に選ばれたのかな、と思っております。率直なところは、十年前に台湾でオークションの設計をやっ
    た時には、何をやったかというと、政府が予めどのくらいの価格になってくれるといいかという事前


                            4 
 
の、株価でいうとナビゲーションみたいな感じで、そんなに方法論がなかなかなかったものですから、
    土地でいうところの収益還元法とか、そういったものを使いながら、ある程度価格を出して、欧州方
    式、欧米方式のビッドというのを実際やってもらったということがあるんですけれども、10 年ぶり
    に、10 年遅れでこういう議論をしている日本を鑑みると、なんか情けないような、やっとやってき
    たのか、というような感想を持っています。 
     
    で、今日はパワーポイントの資料を用意させていただきま
    したが、どういうメンバーでこの懇談会を実施しているの
    かというところからご紹介致しますと、まず 1 ページにあ
    りますけれども、こういった民間、大学、いろんな方々が
    入っていますということなんですが、座長は、早稲田大学
    の三友先生です。他には鬼木先生も入っていらっしゃいま
    す。毎回、政府主導ということで、平岡総務副大臣、それ
    から森田政務官も出席しておられて、私が知る限り総務省
    の審議会というかタスクフォースの方も休業していますけ
    れども、だいぶ政治指導色というのはなくなってきている
    中で、ちょっと政治指導色の強い、珍しい政治主導型のも
    のなのかな、と思っています。ただ台湾とか、10 年くらい前にいろいろ 3G オークションありました
    けれども、実際に制度設計で活躍していたのは、私も本を読みましたけれども、例えば Paul Milgram
    とか、ゲーム理論、ミクロ経済の専門家というのが欧米ですと参画して検討しています。詳細な制度
    設計をすると、たぶんそういった学者の方にワーキングなりに入っていただかないと、細部の詰めを
    作るところでは難しいだろうなというふうには思っています。 
     
                        次は 2 ページ目になるんですけれども、3 月からこの懇談会
                        はスタートしました。直後に震災があった関係で、1 ヶ月か
                        1ヵ月半くらいスケジュールがちょっと伸びているという
                        か遅れているかなというふうに思います。3 月 5 日の時点で
                        だいたいこの制度の論点というのは明らかになっていたん
                        ですが、その後、5 月 27 日以降、第 3 回、第 4 回、第 5 回
                        と、公開ヒアリングというのが行われまして、通信事業者
                        ですとか、放送事業者ですとか、今日ご欠席の山田先生も
                        公開ヒアリングで意見陳述をしていただきましたけれども、
                        こういった公開ヒアリングが始まりました。総務省の審議
                        の仕方というのは、だいたい最初意見募集をして、広くあ
    まねく意見を集めて、論点整理をして、というスタイルなんですけれども、この公開ヒアリングに私
    は最初出席して、まあ、予想はされていたんですけれども、ある意味でもうなんか聞きたくないな、
    と。要するに払う側の人が最初たくさん出席されるわけですね。携帯電話の事業者、固定通信。当然、
    彼らは反対とは別におっしゃらないんですよ、慎重に議論してくださいとおっしゃるんですけれども、
    こちらとしてはどうやったら良い制度設計ができるかについて、何かいいアイディアを出してくれる
    のかな、という期待感はあったんですけれども、いや、私のところのマイクロ無線は是非例外にして
    いただきたい、放送は、これは非常に公共性が高いから、今回のオークションの対象ではありません
    よね、というような話が延々と続いたものですから、半ばちょっとうんざりしてきたんですけれども。
    今日の午前中は、事務局の方はでもしっかり海外の調査はやってくれていまして、イギリスですとか、
    ドイツ、フランス、アメリカ、それから韓国もこの夏からオークションを入れることになったのです
    が、どういう制度設計にしていくかという報告がなされて、ようやく少し、論点なり、日本でも導入
    する場合は何をしなきゃいけないかというのが明らかになって来た、こういう状況かな、と思ってい
    ます。 
 
 




                              5 
 
実質大手 3 社で、新規参入しやすいような状況を作れるかどうかという
のは、競争政策上、非常に意味のある論点 (吉川氏)
 
    吉川氏: 主だった論点は次の 3 ページ目にあるんですけれども、大きな論点は、ひとつは導入目的。
    日本は今、財源を確保しなければいけないという話があるんですけれども、欧米の例を見ますと、や
    はりほとんどは周波数の効率的利用に対するインセンティブを与えましょうということですから、私
    も、最初から日本でオークションをやると 1 兆円、2 兆円増えます、というような新たな財源として
    期待するよりは、むしろワイヤレス、モバイル産業がちゃんと育つような周波数の効率的利用のイン
    センティブを与える方がいいかなと思うんです。だいたい欧米でも同じような考え方でやっていると
    いうことがわかりました。 
     
                            それから 3 番目の払込金の法的性格、或いはオークションの
                            収入の使途、ここが結構これから問題になると思うんですけ
                            れども、所謂一般会計に入れるのか、特別会計に入れるのか。
                            これは多分これから議論しないといけないと思います。 
                             
                            それから 4 番目の対象範囲。例えばそれこそ放送まで入れる
                            のかどうかと、そういうことをやってはどうかとおっしゃる
                            方もいらっしゃったんですけれども、当面例えば通信という
                            ふうに限った制度設計をこれから具体化していく必要がある
                            かと思います。 
                             
    問題なのは 5 番、細かな制度設計ですね、携帯電話用か、例えば全然違う ITS 用とか、いろんな周波
    数帯が考えられますが、それによって微妙な制度設計、細かいところをこれから注意してやっていく
    必要があるかと思います。特に例えば今携帯電話の場合ですと、大手 3 社・・・イーアクセスや他にも
    いらっしゃいますが、実質大手 3 社で、新規参入しやすいような状況を作れるかどうかというのは、
    競争政策上、非常に意味のある論点になろうかと思います。 
     
    他にも 4 ページの、例えば二次取引をどうするかとか、それ
    から 7 番の電波利用料との関係というのも、実はさっきの財
    源の話と同じで大きな問題になるのですが、今、日本の電波
    利用料というのは年間 712 億円くらい入ってきています。そ
    れが例えば地デジ対策とか研究対策とか、携帯電話のエリア
    を補完するための財源として使われています。712 億円の内
    525 億円を携帯電話の事業者が払っていますから、単純にこ
    れ 15 年分と考えるとこれだけで 7800 億円ありますから、も
    う結構な額、実は携帯電話の事業者は既に払っているという
    ことになりますが、その上にさらにオークション料を払うの
    かどうかという点は、これから論点になっていくかと思って
    います。 
 
 
電波の需要はこれから増える。競争政策などを加味して制度設計しない
と前に進まない (吉川氏)
     
    吉川氏: 最後のページ、5 ページ目なのですが、これまで 6 回懇談会がありました。ですから私は
    “オモテ”懇談会と、どっちが“オモテ”か“ウラ”かわかりませんが(笑)、両方出させていただ
    いています。ですから私は総務省の懇談会の運営にもある意味責任を負っているんですけれども、今
    までの議論を見て思うのは、ちょっと事業者ヒアリング、公開ヒアリングではあまりにも反対派とい


                            6 
 
うか慎重議論派というのが多かったものですから、総論は反対
                     的なニュアンスを皆さん持たれている可能性があるんですね。
                     実はですね、このオークションの制度設計ってやっぱりファイ
                     ン・チューニングしなければいけない、微妙な制度設計のとこ
                     ろがカギでして、ここの良し悪しを早く議論しないことには総
                     論ばっかりいっていてもしょうがないと思っています。 
                      
                     それからいろんな事業者の方の話を聞いていてわかったんです
                     が、去年の「光の道」の時も思っていたのですが、やはり電波
                     への需要はこれから増えるな、と。早くここの制度設計をやっ
                     ておかないと、FTTH のアンバンドルどころの話じゃなくなる
    というふうに思っています。携帯電話は、先程申し上げた通り、競争政策などを加味して制度設計し
    ないとこれは前に進まないのではないかと思いました。 
     
     
700/900MHz という非常に重要な周波数帯が、懇談会の議論の対象に
なっていない (吉川氏)
     
    吉川氏: それから今回実は対象になっていないのが、もともとオークションというのが、白地の、誰
    も使っていない電波を誰が入札するかという、所謂白地のオークションと、誰か既に、土地でいえば
    住んでいる人、その人たちに立ち退いていただいてやるオークションと、二通りあるんですけれども、
    後者の方が難しいはずなんですが、これは実は今回の懇談会の対象になっていないんですね。でも既
    にそれを実現するための改正電波法というのが国会通っていますけれども、これについては、一体誰
    がどこで議論しているかが実はわからないんです。そこで私は第 1 回目の懇談会で平岡副大臣に、こ
    れはいったいどういう状況なのか報告して下さいということはお願いしておいたんです。所謂立ち退
    きの方が 700MHz とか 900MHz という非常に重要な周波数帯を使いますので、重要性は高いんですけ
    れども、誰も議論の経緯を知らないんですね、その後どうなっているか、と。その意味で、ここが正
    に“ウラ”懇談会の皆さんの知恵なりインプットというのが必要な分野ではないかと思うんです。 
     
     
    キム氏: 例えば、議論がされていないと、でもいずれ議論をしなければならない時期が来るというこ
    とだと思うんですね、それはオークションを導入するかどうかは別として。今のまま進んでいくとど
    ういう状況になるんですか。 
     
     
    吉川氏: 突然指針が出て・・・ちゃんとパブリックコメントにかかればいいんですけれど、突然、省
    令とか政令とか規則とかいうかたちで出てくるということになったら困るな、と。ちゃんとやっぱり
    オープンな場で議論して、いろんな人の意見を聞いていい制度を作るということが必要なんですけど、
    これが実は議論する場が、公開の場が、多分今ないんじゃないかと思うんですね。 
     
     
    池田氏: ということは 700/900MHz についてはもうやらないということが実質的にこの間の電波法改
    正で決めたに等しいと理解していいんですか。 
     
     
    吉川氏: そうです。 
     
     
    池田氏: 今は、基本的にはこの懇談会というのは 3GHz とか 4GHz とか上の方で、遠い将来やるための
    懇談会という位置付けですよね。 
     

                            7 
 
 
    吉川氏: そういうことです。 
     
     
    池田氏: そこが問題ですよね。 
     
     
    吉川氏: そうなんですね。実は私、先週、A.T.カーニーのアジアの地域の通信担当と議論したんです
    けれども、韓国が、今までオークションを入れなかった韓国が、オークションを入れる。で、彼らは
    LTE でオークションをやるんですけれど、それはもう 4G(Generation)といっているんですね。シン
    ガポールの連中に聞いても 4G といっている、と。で日本は、LTE は 3.9G といっているんです
    よ。”Three point nine generation”というのは一体何なんだと聞かれてですね(笑)。 
     
    だから 4G という定義もはっきりしないまま、でも日本では“4G からオークション”というような、
    別にそれは決まったわけじゃないですが、なんとなくコンセンサスみたいなものがあって、しかもま
    だちゃんと標準化されていないところで、我々はいったい何年先のどの周波数帯のオークションを議
    論しているのかがわからないので、前にこれ以上進まないじゃないかというのを私たちは懸念してい
    る。だからどっかバンド幅を決めて・・・。 
     
     
    池田氏: そうそう。 
     
     
    吉川氏: 例えば、来年のスマートメーターの 920MHz が 5MHz 幅で比較的小さいので、実験するには
    いいのかな、と個人的には思うんですが、どこか決めないことには制度設計が前に進まないんじゃな
    いかと思っています。 
     
     
    キム氏: 前に進めないというのが懇談会の運営システム側の目的かも知れないというようなニュアン
    スですね。 
     
     
    吉川氏: まぁ、そこまではいいませんけど(笑)。 
     
     
    キム氏: プレゼンの中でひとつ気になったのは、先程吉川さんの説明の中で、今、電波オークション
    ではなくて政府の審査によって割り当てられた免許を使って、例えば携帯電話事業者というのは事業
    を行っていて、毎年毎年電波利用料を払っていて、それが年間 710 億円になった、と。例えばオーク
    ションが、15 年の免許期間のオークションであれば、これはどれくらいになると思われますか。先
    程 710 億円で 15 年かけると 7800 億円・・・。 
     
     
    吉川氏: はい。 
     
     
    キム氏: というと、かなり大きな値段になってくると思うんですが、その周波数帯全体をオークショ
    ンにかけた場合、その経済的な価値というのはどれくらいに・・・。 
     
     
    吉川氏: 今使っているようなものを含めてもう一回オークションにかければそれは何兆円にもなるん
    でしょうけれども。ただこれ、確かに 3G で盛り上がった時とだいぶ状況が違いまして。新しい周波



                              8 
 
数帯、もっと欲しい、でもどうやら ARPU1はあまり増えなさそうだ、消費者の方ももうこれ以上払え
    ません、という状況になってきているので、需要サイドに立つと、すごいバブルが起こる状況かとい
    うと、たぶんそうじゃないんだという、印象を個人的には持っています。供給との兼ね合いがあるの
    で、たくさんバンド幅が供給できれば、携帯電話の事業者がこれ以上たくさん周波数を獲得しても収
    入は増えない、皆さん定額制でスマートフォンとか使っていますから、これ以上収入は増えないとい
    う状況なので、バブルが起こりやすいような状況ではないだろうなと思っています。 
     
     
    夏野氏: ただそれは新規参入がなければの話で、新規参入があると今の携帯電話事業者というのは、
    僕がいうのもなんなんですけど、他の産業に比べるとものすごく利益率が高いので、新規参入を認め
    ると、もう少しいい値段になる可能性がありますよね。 
     
     
    吉川氏: はい、ありますね。 
     
     
    夏野氏: 僕は別にバブルというのは、バブルといういい方はあまり良くないですけど、適切な価格が
    つくのはいいことだと思っていて、そういう意味では新規参入が前提のオークションにしないと意味
    がないと思うんですね。 
     
     
    吉川氏: そういうことですね。 
     
     
    キム氏: それでは、今の吉川さんの話を聞いて、メンバーの皆さんに一人ずつご意見を伺いたいと思
    うんですが、まず今日は第 1 回ということで、総論的な話から。電波オークションをやるべきかどう
    かということと、やる前にどういった目的でやっていくべきであって、今の日本の段階でいわれてい
    る電波オークションをめぐるという議論ものには、どういった課題があるのかを含めて、夏野さんか
    らお願いします。 
 
 
何のために電波を割り当てるのか、産業政策の成長戦略としてやるのか、
規制としてやるのか。政府は立ち位置を明確にすべき (夏野氏)
 
      夏野氏: はい。僕は電波オークションをどうするということの前に、何のために電波を割り当てるん
      だということをもう一度立ち返ってみんな確認しなくちゃいけないんじゃないかと思っています。電
      波の効率的な使用は、基本的には国民のためにやることであって、別に今いる事業者がどうだとか、
      或いは今あるメディアというものがどれくらい新規参入があるべきだとか、そういうことは二次的な
      議論だと思うんですよね。まず、最初に議論されなくちゃいけないのは、やはり一番国民が使いたい
      ようなシステムに対して、最適な周波数を割り当てるというのが本質的なことであるはずだと思って
      いるので、そういう意味でいうと、まず立ち位置が、産業政策としてやるのか、社会的ベネフィット
      のためにやるのかということが、しかもそれを産業政策の伸びる成長戦略としてやるのか、或いはあ
      くまでも規制としてやるのか、このへんの立ち位置が、僕は日本という国は全くはっきりしていない
      ところから始まっていることにこの混乱のもとがあると思っていて。 
       
      例えば、そもそも総務省って、規制省庁じゃないですか。だから、産業育成の観点というのはなかな
      か難しいと思うんですよね。ですからそもそも総務省というのが議論していることが問題だと思って
      いるんですが。まあそれは、今の省庁の割り振りまで変えることはできないと思うので、このままや
                                                            
1
   ARPU:Average Revenue Per User の略、月間電気通信事業収入。通信事業における、加入者一人あたりの月
間売上高。携帯電話事業者の収益性の比較などによく用いられる指標 

                                9 
 
らざるを得ないんでしょうが、少なくとも今後の成長とか産業育成とかを考えるのであれば、先程吉
    川さんがおっしゃったように、まず既存の 700/900MHz、僕は特に 900MHz 帯に関心があるんですけ
    れども、海外との協調もできて非常に効果のある周波数帯なので、ちょっとどいていただかなければ
    いけないけれども、そこのところをまずどうするかという議論をしてもいいんじゃないかと思います
    ね。今、害のない 3GHz、4GHz がどうかというのを議論しても、あまりこう具体的な議論にならない
    のでね。 
     
     
    池田氏: そんなとこ、買いたい人がいないでしょ、4GHz とかね。 
     
     
    夏野氏: 4GHz とかあんまり電波が届かないですからね。ということで、まず何のためにやるのかと
    いうのを、是非政治主導で立ち位置を確認してから、この議論を始めて欲しいな、というのが一点で
    す。 
     
    もう一点どうしてもいいたいのは、国際協調なんですよ。つまり今、日本の企業が日本のためだけに
    モノを作る時代じゃないので。で、Wi‐Fi は 4GHz で世界のメーカーが世界中で作れるからこうやって
    普及するんであって。方式と周波数帯というのが世界とずれると、全く国民的メリット、国民的便益
    が期待通り達成されませんから。国際協調するということを大前提とした議論の上に、このオークシ
    ョンというのを入れて新規参入を入れて、どんどん活性化していく、それで社会ベネフィットをあげ
    ていくということにして欲しいなと思います。 
     
     
    キム氏: 国際協調という面で、今の日本の体制というのはそれに十分対応しきれていない、という意
    識なんですか。 
     
     
    夏野氏: はい。特に 2GHz のところは、3G で 2GHz のところは世界標準ということでスタートしたん
    ですが、結局どこの国でも、例えばヨーロッパの GSM の国ではもう 900MHz を 3G で兼用始まってい
    ました。で日本はもともと、ドコモとか KDDI の持っている周波数帯が 2G のために、もうとっくに
    そちらの方が電波が飛ぶということで、エリアが広いということで、800MHz 帯を 3G に使っている
    わけですね。ところがこの 800MHz 帯というのはヨーロッパの電波と合っていないわけです。たまた
    ま、アメリカと合っていたので、それは良かったんですけれども、それは意図してやったわけじゃな
    いんですね。 
     
    で、昔からアナログテレビはもともと 1 チャンネルから 3 チャンネルのところでは、アメリカでは
    FM で使われていた、世界的には FM で使われていた、とか。もう微妙にずれていて、今回の地デジ
    でもあんまり喜ばしくないのは、方式そのものが日本独自で、携帯電話以上にガラパゴスなものです
    から、国際的な主流と合わせるということとともにじゃないと、なかなか社会的ベネフィットという
    話にならないと思います。 
     
     
    キム氏: はい、じゃあ次に岩瀬さんよろしくお願いします。 
 
 
いろいろなしがらみの中で、みんな正しい答えがわかっているのに動か
ない。どう実現するのかというところに、むしろ知恵と努力を結晶すべき
(岩瀬氏)
 
    岩瀬氏: よろしくお願いします。 
     

                             10 
 
僕は通信の専門家じゃないんで、何をやるのかということについては、たぶん賢い人たちが集まって
    議論すれば答えは出るんじゃないか、或いはもう出ているんじゃないかと思うんです。ただ、どうや
    っていろいろなしがらみの中でひとつ前に進めていくのか、ということに興味があるんです。 
     
    僕はもともと生命保険業界の、ガチガチの規制業種の中でいろいろ商売していまして。あと去年の秋
    から内閣府の IT 戦略本部で「IT 規制緩和に関する専門調査会」というのがあって、そこに入ったん
    ですけれども、そこで医薬品ネット販売という議論を結構やったんですね、それで最後規制仕分けの
    俎上に載って、蓮舫大臣と一緒にテレビが入っている中、厚労省の官僚だとか、いろんな関係者と議
    論しまして。あと専門調査会の中で、あとフェアユース規定について特許庁や関係者と話をしたりし
    まして。で、結局全部同じ話だな、と感じているんですね。通信の話に限らず、いろんな、医薬品で
    あったり著作権であったり、いろんなところで官僚というプレーヤーと事業者と政治家と、いろいろ
    なしがらみの中で、みんな正しい答えがわかっているのに動かないという実態があるんだな、と思っ
    ています。 
     
    それで興味があるのは、どうしたらそこから前に進められるんだろうかということで。ひとつ調査会
    で試みたことなんですけれど、まず専門調査会自体をオープンにしようということで、ニコニコ動画
    の生中継を入れてもらったんですね。通常事業者のヒアリングをする際には、事前に書面で送っても
    らって、質問を一回して返事に返って来たことに対して質問するだけだったんですけれど。そうする
    と結構面白い映像が撮れて、例えば、チェーンドラッグストア業界の副会長さんだったと思うんです
    けれども、かなり感情的に猛反対をされていて。そもそもインターネットとかそういうものはあてに
    ならない、そもそもアポロの月面着陸だってあったかどうかわからないし、そんなデータあてになら
    ないみたいな発言をして、それをビデオが入って撮っているんですよ。いつかそれを使ってもらうと
    いいなと思っているんですけれど。公開の場で議論することによって、どういう議論がされているか
    とかがわかる。議事録を開示してもみんなわからないと思うんですよね、かなりはしょって書かれて
    いますし。 
     
    同じ議論をやるにせよ、国民のメリットを提示するというのはもしかしたらひとついいかも知れない。
    国民にとって何がベネフィットかということがわからないと、なかなか多分一部の専門家以外は強く
    プッシュすることができないでしょう。結局政治のリーダーシップが大事だとしたら、政治家にとっ
    て、じゃそれ票になるの、いう話にならざるを得ないと思うんです。なのでそういう議論に、どうや
    ってもっていくかというのがポイントかと思いまして。 
     
    たぶん正しい答えを詰めていく作業というのはものすごく簡単で、じゃあそれを 60%でもいいから
    どう実現するのかというところに、むしろいろんな知恵と努力を結晶すべきなのかな、と思っていま
    す。 
 
 
700MHz 帯で 100MHz 空く、これが新規参入の最後のチャンス。だから、
900MHz の裁量割り当てを許してはいけない。3GHz とか 4GHz とか、そ
んな懇談会は意味がない (池田氏)
 
    池田氏: 僕も岩瀬さんと似たような感情を持っていて、僕も 10 年以上同じことばかりいい続けてい
    て、いい加減何をやるべきかということについては、今さら議論する必要はないと思っているんです
    ね。むしろ大事なことは、さっきの吉川さんの話にもありましたけれども、もう少し具体的なことを
    議論した方がいいというか、特に 700/900MHz をやらないことを事実上決めて、遠い将来の 3GHz と
    か 4GHz とかね、という話をしても全く意味がない、そんな懇談会はやること自体意味がない。やる
    んだったら、700/900MHz をどうするのかという議論をしてもらわないと、本来の“オモテ”の懇談
    会の方は意味がないと思う。他のことはもういいから、700/900MHz をやるのかやらないのかという
    のを、まず明らかにして欲しい。 
     

                             11 
 
それは何故重要かというと、要するに 700/900MHz でオークションをやるということは、当面空いて
    いるのはソフトバンクの指定席となっている 900MHz・・・そこを、霞ヶ関でいわれている話では、
    ソフトバンクに事実上与えてしまうと。そうすると、900MHz をソフトバンクに与えてしまうと、
    700MHz のところを、さっきの 4G 或いは 3.9G の周波数ということで一体の扱いになる恐れが強いわ
    けですね。そうすると、900MHz を裁量で割り当ててしまうと、700MHz がこれから 100MHz くらい
    空くといわれていますが、そこが全部美人投票でやる恐れが強いわけですよね。それはもう絶対許し
    てはならない。700MHz を美人投票でやったら、あと 3GHz、4GHz なんてやったってほとんど意味な
    いです。そんなところ買いに来るようなのは、既存の 3 社以外のオペレータはまず買いにこないと思
    うから、意味がない。やるんだったら、或いは新規参入が入る余地があるのは、もう 700MHz しかな
    い、100MHz 空くという、後にも先にもおそらくそこしかないというような、非常に大きなチャンス
    なんですね。とにかく 700MHz をオークションでやらなきゃいけない。そのためには、900MHz は裁
    量で割り当ててはいけないということを具体的に議論した方がいいと思うんです。 
     
     
    キム氏: 基本的な質問なのですが、700MHz を美人投票でやってはいけないという話ですが、美人投
    票というのは何故やってはいけないんですか。 
 
 
今、日本経済で何が一番必要か-新しいプレーヤーを入れて、競争を導
入するということ。大事な 700/900MHz で指定席を与えてしまったら、そ
こで終わりになってしまう (池田氏)
 
    池田氏: 今までは美人投票すらおおっぴらにやらなくて、ライセンスの数と同じ数だけ事業者が出て
    きたんですけれど、2.5GHz の時から一応日本でも複数事業者の比較審査になって、けどあの時も結
    局ドコモが落ちて、KDDI とウィルコムが通るという非常に不透明な結果に終わりまして、要するに
    今度 700MHz をやると、おそらく既存 3 社と、あと 1 社くらいイーモバとかが入って、4 社の指定席
    と、いうことになる確率が高い。そうするとさっき夏野さんの話にもあったけれど、日本経済で今何
    が一番必要かというと、新しいプレーヤーが入ってこないと、今までの古い業界の体質というのは変
    わり得ないわけです。このオークションを何のためにやるのかという議論、これは前々回も議論しま
    したけど、それは電波を効率的に使うとか、国庫収入を上げるとかいう部分もないわけじゃないんだ
    けど、一番大きいのは競争を導入するということですね。それを特に大事な 700MHz のところで指定
    席を与えちゃったら、そこでほとんど終わりになっちゃうと思うのね。 
 
    もうひとついわせてもらうと、さっきの戦術レベルでね、どういうふうにすればこの問題なんとかな
    るんだろうか、ということについていうと、この問題は僕らみたいな、というか僕含めてそういう評
    論家的な人がいくらいっても聞いてくれないんですよ、役所の人は。やっぱり実際業をやっている人
    が強烈にいわないと。今のこの懇談会に出てくるような人はみんな、やめてくれというような人ばっ
    かりでしょ。 
 
 
孫さんは、周波数オークションをやれと強烈に主張していたのに。電波を
もらったら、やらない理由ばかり (池田氏)
     
    池田氏: 僕は非常に遺憾に思うのは、孫正義さんとか、森内閣の IT 戦略本部の時に、孫さんと村井
    純さんは、周波数オークションをやれということを強烈に主張したんですよ、それが議事録に残って
    いるんです。それなのに、自分が電波をもらったらやらない理由ばっかり探してね、この間なんか調
    べたら最近は発電のなんか訳のわからないことをいい始めているけど。要するに孫さんくらいの、あ
    れくらいのパワーがあれば、僕は世の中を動かす可能性があると思う。その何よりの証拠は 700MHz
    の周波数の割り当ての時に、一時期はおかしなガラパゴス周波数を割り当てるということを、ここ

                              12 
 
(総務省懇談会)に出ている服部さんが作業部会でいっぺん決めて発表したものを、僕がツイッター
    で「バカヤロー!」といったら孫さんが「その通りだ」といって。それを原口さんがツイッターで受
    けて、翌日の閣議後の記者会見をひっくり返したというね、すごいことが起こったわけですよ。だか
    らこの問題も、孫正義さんが賛成してくれれば僕はひっくり返せる可能性が十分あると思う。孫さん
    はこの問題については誰よりも賢いから、そんなことはいわないでしょうけど、彼が本当に坂本龍馬
    のように天下国家のことをお考えになっているんだったら、周波数オークションについて、やらない
    ならやらない理由を、堂々と天下に発表して欲しい。 
     
     
    キム氏: 熱くなってきました(笑)。 
     
    吉川さんに質問なんですが、今の話の中で、新規参入がない、ダイナミズムがないというのが、日本
    の情報通信産業・・・のみならずだと思うのですが、大きな問題だと思うんですね。よく周波数オー
    クションを導入する際にいわれている批判・反応というのが二つあって、ひとつは欧米の 2000 年前
    後のイギリスやドイツで起こったような 3G オークションみたいに値段が高騰してしまうと、それが
    事業者の負担になって最終的には消費者のサービスの価格に転嫁してしまうんじゃないかという議論
    がひとつ。そしてもうひとつは、資本の論理に任せてしまうと、やっぱりお金を持っている人たちが
    買い占めてしまうんじゃないかということ。それについてはどうお考えでしょうか。 
     
     
    吉川氏: 2000 年くらいの、特にイギリスとドイツの例ですが、これは学ぶところがあって、どうい
    うふうに周波数帯域を割り当てるかということについては、ある意味でドイツは失敗したんじゃない
    かと思うんですが、それからしっかり学んで制度設計をすれば。その時は非常にイギリスとドイツで
    は高騰した。ドイツは、ドイツテレコムが 2 つの周波数枠を取ればいいのに 3 つ目を取りにいこうと
    して、それで均衡が崩れてしまって、12 の枠があって、2 つずつ 6 社だったらちょうど良かったのが、
    1 社が 3 取ると 3 X 4 になりますよね。で 2 社、はじき出されたことで上がったというふうによくい
    われているんですが、そういった枠の与え方、少なくとも 2 つ取りなさいという設計だったんですけ
    れども、ここはちょっと学ぶところが多いかな、と。 
     
    ただ実際どういう影響があったかというと、例えばドイツテレコムなんか結果的に携帯電話事業を奪
    われてしまったということがあったりしましたけれど、それがどう影響しているかは、次回、私それ
    のプレゼンをすることになっているんですけれど、きちっと分析をして、良し悪しというのを評価す
    る必要があります。 
     
     
    キム氏: この図だけを見ると、やっ
    ぱりイギリスとドイツで高騰はして
    いますが、その後いろんな国々にお
    いてオークションが実施されていて、
    ある程度安定したかたちに収束して
    いるところがあったんですね。 
     
     
    吉川氏: そうですね。 
     
     
    キム氏: それはおそらくオークショ
    ンの具体的なデザイン等にもたぶん
    余裕があったからだと思うのですが、
    具体的にはどのようなことがなされ
    ていたと思われますか。もちろん景


                            13 
 
気の影響もあるかと思いますが。 
      
      
     吉川氏: 方法論としては、同時に何段階もやるという方法論がだいぶ取られているので、それでうま
     く回るだろうと。各キャリアも、それこそ我々なんかもたぶん海外では手伝っていて、事前にどのく
     らいの価格だったらビッドするべきか、それ以上超えると自分の会社にとっても損益上マイナスにな
     るかという判断を、かなりきちっとし始めている。 
      
     あとはダメな場合は、例えば卸を受けて提供するとか、そういう代替手段がありますから、そういう
     方法をとれば、変な値段でささないというふうになってきているんじゃないかと思います。 
      
      
     キム氏: それは市場ですので、計算を間違ったら自分の責任で破綻するのもそれこそ一般の市場経済
     の中では当たり前のことで、それに対して政府というか省庁、例えば官僚とかそれ以上の未来の予測
     能力があるかどうかというのも議論しなければいけないところではありますよね。 
 
 
放送や公共的に使っている電波の領域ではなく、価値を生む可能性が高
い成長産業に、オークションを (夏野氏)
  
      夏野氏: この例も、ドイツの例もそうなんですけど、じゃ結果的に価格が転嫁されたか、つまり結果
      的にドイツの通信料金が異常に上がったかというと上がっていないんですね。ですからドイツが、政
      策論としては、ちょっと業界で混乱したとかゲーム理論的にいうとまさに“囚人のジレンマ的”なこ
      とが起こって、社会的ベネフィットにはなっていなかったんじゃなかったとか、理論的な検証はやる
      べきだと僕は思うんですが、結果的に恐れられていたユーザーへの価格の転嫁は起こっていない以上、
      あれを失敗だというのは問題だなとちょっと僕は思っていて。 
       
      何故そんなことをいえるかというと、これは成長産業なのかどうかということの方が重要だというこ
      となんです。つまり携帯電話業界というのは、2000 年の時にバブルになりましたが、バブルになっ
      た時に見通した以上に通信トラフィックは増えていて、十分それがリクープできるビジネスになって
      いるわけですよね。ですからそういうものにはオークションは適していると。つまりみんなが思って
      いる以上価値を生む可能性が高い産業なんですね。一方で公共的に使っているのは軍事利用とか、公
      共的に使っているような電波の領域もあると思うんで、そういうところはオークションは向いていな
      いかも知れない。しかしながら民間ベースでやっているような、特にインターネットとか絡むところ
      は、こういうところはオークションをやっても十分大丈夫、つまり消費者に転嫁されるというところ
      にはいかない可能性が高いんじゃないかと思います。 
       
       
      キム氏: 2 番目の新規利用者等については、後ほど吉川さんにお話しを伺いたいと思うのですが、今
      の話と絡めて、池田先生の方には消費者への価格転嫁問題、前からずっと議論されてきてなかなか理
      解してもらえない人たちも結構いらっしゃると思うのですが、今の夏野さんの話だと、これ総務省の
      資料かどうかわからないのですが、ある調査資料2によると、周波数オークションを実施した国とし
      ない国とのサービス料金を比較したら、実施した国がサービス料金がはるかに低い。今、韓国もフラ
      ンスもオークション導入を決定はしているんですがフランスはまだ実施はしていない。フランスのサ
      ービス料金は非常に高いということは一度出されてはいると思うんですが、池田先生自身はこれはも
      うサンクコストだということを以前からずっとおっしゃって来たと思うんですが、そのサービス、オ
      ークションの値段の高騰と、それが事業者にどういう負担になってそれが最終的に消費者に転嫁され
      るのかどうかという議論に対して、池田先生もう一度。                                   
                                                            
2
   2011 年 6 月 14 日総務省公表『電気通信サービスに係る内外価格差調査-平成 22 年度調査結果-』
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s‐news/01kiban03_01000052.html 

                               14 
 
オークション価格が消費者に転嫁されるという議論は、さすがに役所の
資料にも出てこなくなった。理論的にあり得ないし、実証的にもオークショ
ンを導入した国の方が安くなっている (池田氏)
 
    池田氏: さすがにもう最近役所の資料には価格が上がるっている話はもうあんまり出てこないですよ
    ね。一時期いろいろいわれたんですが、これは理論的にもうあり得ないし、実際に実証的に見ても、
    今おっしゃったように、オークションを実施した国の方が安くなっているわけです。それから 3G の
    オークションについていっても、その後実証的なサーベイがたくさん出ましたが、少なくとも経済学
    者の評価は、あれは成功だという評価ですよね。もちろん業界から見ると相応な災難があって、あれ
    で潰れた会社はいくつかあるわけですけれども、率直にいって経済学者の立場から見ると会社なんか
    潰れるのは当たり前なんだからそんなのはちっとも問題じゃない、と。問題は消費者にとって適正な
    サービスと、良質のサービスと適正な価格が実現したかどうかという基準であって、その基準からい
    うと 3G のオークションは、直後混乱があってサービスが遅れるということがあったものの、結果と
    してはうまくいったというのが本音ですね。 
     
    問題は、はっきりといってそういうところじゃないところ、むしろさっき岩瀬さんがおっしゃったよ
    うな、日本の霞ヶ関特有の、前例踏襲とか業者に対する過剰な配慮とか、非常に日本的なカルチャー
    が極めて当たり前の国政という常識力をブロックしているという状況があるので、そこをどうやって
    こじ開けていくのかということの戦術論だと思います。 
     
    そういう意味では、今度の電波法改正というのは、いったん去年の 9 月に閣議決定で、“オークショ
    ン的なもの”を導入するというふうに民主党が一応政治主導で出した閣議決定を事務方が無視して、
    電波法改正に全くそれを入れないということが起きたんですね。これはいろいろ後から聞いてみると、
    やっぱり事務方としては今までの電波部の中の前例を踏襲するという風潮が強い。ま、民主党なんて
    いつまでやるかわからないからあんなものやってもしょうがない、という雰囲気になっているという
    んですね。ですからまずはそこを変えないと。役所のカルチャーの部分を意識的に変えていかないと。
    おそらく岩瀬さんがおっしゃる、薬のネット販売と同じですよね。お役所がいったんいったんだから
    引っ込みがつかないという、それがものすごい強いんですよね。そこをある意味・・・今の原発のあ
    れですよね、今の首相のやっていること二転三転して無茶苦茶だけど、あそこまで徹底していき当た
    りばったりだと、いくらでもいけるかな、と。前例関係ないじゃないか。ストレステストなんて突然
    出てきて、全然今までと整合性のないこと平気でやっているんだから、あの菅さんとかにね、誰かが
    吹き込んだら、急にこれで突っ込んだらやるんじゃないかと思ったら、もしかしたら前例関係ないこ
    と今の民主党政権だったらやるんじゃないかと思ったりしたんですよね。 
       
 
ファイナンスはつく。後は次の起業家が、変革者が、メインストリームから
出てくること (岩瀬氏)
 
    岩瀬氏: さっきの夏野さんのいわれたこと、これ成長産業なんだという売り込み方が一番良いような
    気がして、やっぱり国として経済成長をしなければいけないけど、ネタに困っているわけじゃないで
    すか、なんか介護が成長産業みたいな。やっぱりそれよりも日本の通信だとかという分野が成長であ
    るというストーリー、ま、実際そうだと思うんですけれども、に仕上げていくのがすごくいいのかな、
    と思いまして。そうすると、じゃそこに入っていく起業家はいるのか或いは資金はつくのかという話
    になってきて。 
     
    考えてみればなんで孫さんが通信をやっていたのかと考えると、僕はリップルウッドというファンド
    にいたんですけれども、僕らはボーダフォンのところにいって 1 年くらいずっと追いかけて、日本テ
    レコムを買い取って来たんですね。孫さんが直接いってもディールがまとまらなかったらしいんです
    けれども、半年後、孫さんが 3000 億円で買われて、そこからまたボーダフォンを 2 兆円くらいで買

                           15 
 
われたわけですよね。それだけファイナンスがつくんだという、金融危機後だったんですけど、やっ
     ぱりみんな良質な貸し出し先には、まだ資金というのはだぶついているので、ファイナンスがつくと
     思うんです。イーモバイルの千本さんとお話した時も、彼も、もともと NTT の中にいた人だったん
     ですが、飛び出して買いにいったと。イーモバイルを作る時は、売上ゼロの段階でゴールドマンから
     2500 億ファイナンスがついたというんですね。なので、ファイナンスはおそらくつくと。 
      
     だとすると、後必要なのは、起業家みたいな人で。孫さんだけに頼るのもなんなんで、もしかしたら
     次の起業家、次の千本さんみたいな人がそれぞれの既存の業者の中にいるのかも知れなくて。やはり
     アウトサイダーが変えていくというのは難しいところもあるような気がして、僕は本当の変革が起こ
     る時というのはメインストリームの中からで、そういう変革者が現れる時かなと思う。お金は絶対つ
     くと思うので、そういう起業家を探してきて煽るということと、あとは成長戦略でこれがいいという
     ことを政治家に一生懸命説得していくこと。その政治のリーダーシップで成長産業のひとつの核とし
     て進めていくということをしないと、結局、現場レベル、事務方レベルというのはコロコロコロコロ
     やっているだけなので何も動かない。池田さんおっしゃる通り、今くらい政治があちこちいっている
     と、誰かの強いリーダーシップで、何かがうっかり変わってしまうかもしれないという期待が持てる
     かもしれないですね。 
      
      
     キム氏: 今の岩瀬さんのお話ですと、例えば新規事業者でも素晴らしいビジネスモデルを持っている
     と資金調達というのはそれほど問題にならないかもしれないというようなニュアンスのお話をされた
     と思うんですが、それでも資金力においてはまだ圧倒的な差があるのも事実だと思うんですが、そう
     いう意味で、周波数オークションを導入した場合、所謂競争的な意味で、資本力だけではないかたち
     で、産業の中にダイナミズムを入れていくために、例えば新規事業者等に対してオークションのデザ
     インの中でどういう工夫があり得るかということについて、お話を。 
      
      
     吉川氏: いくらでも制度設計できます。例えばこの周波数帯域については新規事業者に付与しますと
     いえばいいでしょうし、それから MNO3という通信キャリアの、投資して基地局建ててという、そこ
     までの体力はないですけど、MVNO4になりたいという、バーチャルなオペレータになりたいという人
     が、今回も結構いるんですけれども、じゃ MVNO に開放することを前提にしたオープンな周波数で
     すね、それに対してビッドする人はいますか、というような出方で、バーチャルなキャリアをどんど
     ん呼び集めるような周波数の与え方もできるんですね。どっちかというと新規というのは私が今回事
     業者の方にいろいろ聞いた限りではバーチャルなオペレータになりたいという方が結構いて、その人
     たちがそれこそ今、タブレット PC とかスマートフォンとかどんどん出てきていますし、家庭のいろ
     んな機器に通信のモジュールがつくというのももっと増えそうですよね。そういうのをもっと喚起し
     てあげるというのがこの政策でできるだろうと思っています。 
 
 
オークションを嫌がるテレビ局にインセンティブを与える。ローカル民放の
持っている周波数を、セカンダリーマーケットで買い取ってあげる (池田氏)
 
     池田氏: もうひとつは、一番今こういうものを嫌がっている人たちにインセンティブを与えるという
     ことが考えられるなと思うんですよね。それは何かというと、テレビ局ですよ。僕ね、ここのところ
     アナログ放送が終わるという、雑誌の企画とかしょっちゅう呼ばれるんですけど、そういう時にこの
     間も民放連の人に話聞いたら、民放の人たちは相当自分たちの将来に不安を持っているわけですよ。
     特にローカル民放はもうどう考えたって発展する産業じゃないと。そうしたらね、例えば彼らの持っ

                                                            
3
 Mobile Network Operator の略、移動体通信事業者。 
4
 Mobile Virtual Network Operator の略、仮想移動体通信サービス事業者。MNO から通信設備を借り受けて、通
信サービスを提供する。 

                                                               16 
 
ている帯域をそれこそセカンダリーマーケットでね、買い取る仕組みを作ってあげれば、もう廃業す
    るしかない人々にとっては、いってみれば立ち退き料を取れる可能性があるわけですね。これはおそ
    らく早くやればやるほど高い値段がつく可能性があるでしょう。むしろ北風より太陽でね、つまりは
    っきりいって見通しのない産業にいる人々にとって早く立ち退きインセンティブを与えてあげるとい
    うのも一案じゃないかと思うんです。 
     
     
    キム氏: ほぼ 1 時間以上経ってしまったんですが、残り 5 分ほどだと思うんですが、最後に皆さんに
    コメントいただく前に、1 点だけオークションと関連しての質問をさせていただきたいと思うんです
    が、オークションで得られる収入について最終的にどのように使うのかと、一般財源という話も出て
    いますし、特別財源という話も出ていると思うんですが、それについて何かご意見ありますでしょう
    か。総務省の中では今そういった議論はされているんですか。一応アジェンダの中で出ているという
    ことは、認識はしているんですが。 
     
     
    吉川氏: 論点の中に入っていまして、それこそ韓国の場合、この夏にやるオークション収入は特別会
    計になりまして、平岡副大臣が驚いていて。要するに特別会計にして IT の振興に使うことのようで、
    それにはさすがに事務局というか総務副大臣もびっくりしていて、それくらい韓国は IT に力を入れ
    ようということの現れなので、日本でもこういう論者が現れないかなと総務副大臣はおっしゃってい
    ましたけれども。 
     
     
    キム氏: つまりそれは総務省としてはオークションを実施してそこで得られた収益が何兆円になった
    としても、それが一般財源になってしまうと所謂省益というものが失われてしまうんじゃないかとい
    う懸念がある中で、韓国はそれを特別会計にしたということで、そういった認識に対して少し考えた
    いということの認識でしょうか。 
     
     
    吉川氏: ま、そういうことなんでしょうね。私は本当に総務省の人が電波利用料を守りたいと思って
    いるかどうかも知りませんけれど、それくらい思い切って周波数で、たぶん兆円単位なんでしょう。
    それを特別会計で IT の振興に使う韓国はすごいな、というような見方を今日されていました。 
 
 
一般会計か特別会計かで引っかかっているのは、時間の無駄。既得権
益を持っている人たちに“賄賂”を渡して、新しい人を入れればいい。10
年経てば新しい人が勝つんだから (池田氏)
 
    池田氏: ひとつだけテクニカルなことをいいますと、電波利用料というのは実は本来は一般会計なん
    です、建前は一般会計なんです。ところが事実上総務省が七百何十億は総務省の好きなように使って
    いいという特別会計になっているわけですね。省庁としては今のやり方を守りたい。ところが今の財
    務省ももちろんそうだし、民主党政権も、特別会計はすべて廃止するというのが本来の方針なわけで
    す。そういう中で今、制度改革をやると、特別会計になる情勢にはない。というところで総務省が嫌
    っていると思うんですね。 
     
    だけど僕はね、正直いってそんなのは大した問題じゃないんだから、さっきの話のように、テレビ局
    に立ち退き料を払うとか、総務省が特別会計にしたかったらもうポケットにいれても良いから、とに
    かく競争を導入することが一番大事だから、いってみれば・・・経済学ではこれをブライブといわれ
    るんだけど、既得権を持っている人たちに“賄賂”をどんどん渡してね、新しい人を入れればいいん
    ですよ、だから 10 年経てば新しい人が勝つんだから。 
     

                           17 
 
 
    キム氏: それは一般財源に入れたとしてもまたどこかの省がやっているわけだから結果的には同じだ
    ということなんですね。 
     
     
    池田氏: そんなところで引っかかってるのは無駄ですよ。 
     
     
    キム氏: なるほど。そういうことでよろしいですか。それほど重要な問題ではないと。ま、特別財源
    にした方が省は乗りやすい。あと特別財源にした場合はやっぱり ICT のために使うという名目で使う
    わけですから、ICT の業界の人々にとっても一般財源よりは総体的には歓迎すべきことであるという
    ことで。 
     
     
    池田氏: もうひとつだけ、あえて経済学的に擁護すると、周波数オークションについて反対している
    経済学者も実はいるんですね、Eri Noam という非常に有名な経済学者で。彼がいうのは通信業界とい
    うのは戦略産業である、そういうところに周波数オークションみたいに非常に巨額の課税をするとい
    うのは、産業政策上まずいのではないかという議論があるわけですよ。それについてはもちろん反対
    論もあるんだけど。それこそ Eli  Noam でも呼んできてね、競争的な産業に課税するのはまずいから、
    課税した分は競争的戦略産業に還元しようというね、特別会計に、総務省のポケットに入れろという
    ね、制度改正しても。いや、もちろん好ましくないけどけど、総務省の人たちがそれが嫌でこの周波
    数オークションに抵抗しているとすればね、岸本周平さんがそういっていましたよね、彼の見立ての
    通りだとすれば、そんなつまらない問題のために引っかかっているのは全く無駄だと思いますね。 
     
     
    キム氏: なるほど。課税をするとともに補助金も与えるというようなメカニズムでも最悪いい、とい
    うニュアンスですね。わかりました。もう時間もうなくなっているんですが最後に夏野さんから、今
    日は warming up だったと思うんですが、今後この懇談会を進めていく上で、こういう問題について
    焦点を当てて議論をしていきたいというのがあれば、お願いします。 
     
     
総務省とも連携を取り合って、建設的な提言、行動をして。この会は、い
い方向で影響を与えたい (夏野氏)
     
    夏野氏: 今日は吉川さんに来ていただいていたんで、“ウラ”“オモテ”のつながりができるような
    期待感が持てて、ありがとうございました。ただ、今現在進んでいることに何らかのかたちでやっぱ
    り影響というか提言とかしていかないと、またここでグダグダしゃべっていて終りになっちゃうとも
    ったいないので、なるべく建設的に。今日は吉川さんに来ていただきましたけれども、なるべく総務
    省の方とも連携を取り合って、是非建設的な提案を、言動を我々はしていくということをこの会の基
    本にしてやっていきたいな、と思いますね。本当に影響ができないでグダグダいっているだけだと空
    しいので、何らかのかたちで影響を与えたいと思っています、いい方向で。 
     
     
    キム氏: はい、それじゃ岩瀬さんお願いします。 
     
     




                            18 
 
すべてのステークホルダーにとってオークションがプラスになるような、イ
ンセンティブ作りをしなければいけない (岩瀬氏)
      
     岩瀬氏: 全く同意で、たぶん制度設計論じゃなくてどうやって動かしていくかという話をするべきだ
     という話をしたんですけれど、さっき池田さんの考えでひとつ面白いと思って。要するにすべてのス
     テークホルダーにとってこれがプラスになるようなインセンティブ作りというか仕組み作りをしなけ
     ればいけないと思うんですよね。 
      
     僕ら小さいながら出稿主としていろんなテレビ局と話を聞くんですけれど、かなり苦戦していてどう
     やってキャッシュフローを生もうかというのをものすごく苦労していて、従来では考えられないよう
     な提案とかをいただくので、そういう意味で彼らにとってもこれがキャッシュフローになるような仕
     組みを作るというのは実は建設的な提案だと思いますし、何かそういうかたちで、仕組みそのものが
     ある程度方向性出せれば、詰めてやればすぐ出ると思うんですね。そうじゃなくて今のがんじがらめ
     の中で、事業者なり政治なり官僚なり新規参入者なり、それぞれみんなが win‐win になるような仕組
     みをどうしていくのかということにもう少し時間が使えたら、すごく良い建設的な話し合いなのかな、
     と思いますね。 
      
      
     夏野氏: では、そういう意味ではもう放送を外しちゃっていいかも知れないですよ。放送はもう成長
     産業じゃないから。だからそこはもう今のままでいいからといってあげて、その代り通信のところと
     か家電のところとか、これからの成長部門はどんどんオークションを議論して。 
      
      
     キム氏: これは池田先生もおっしゃったような話でもあると思うんですが、基本的に日本の中でオー
     クションを議論している際に放送を対象にした議論というのは基本的にはないですよね。それに対し
     て過剰反応している部分というのがあるかと思うんですが、たぶんこの中の議論の中では放送用の周
     波数を対象としたオークションの実施是非の議論は基本的にないという理解で。 
      
      
     夏野氏: MMBI とか見てると、僕がいうのもなんですけど、とても成功しそうには思えないですよ、
     どう考えても。でも割り当てられちゃったからやらなきゃいけないというモードになっているんじゃ
     ないかと思うんですよね、もう壮絶な電波の無駄になる可能性がある。成長産業でいきましょう、成
     長産業で。 
      
      
700/900MHz で、政府が周波数を買い取り、立ち退くインセンティブを与
える“逆オークション”を (池田氏)
      
     池田氏: いや、僕は逆にいうと、放送産業を入れてあげた方がいい可能性があると思うんです。例え
     ば、さっきの 700/900MHz の立ち退きの話がありますよね。つまり立ち退きのメカニズムというのは
     実は FCC5でもちゃんと決まっていないんですね。僕は 10 年くらい前に FCC のカウンセルで提案した
     ことがあるんですけど、incumbent から周波数が FCC は返ってくるわけ。そうしたら、Robert Pepper
     氏6が、あ、これは面白いとかいって、700MHz はそれに似たメカニズムを使ったわけ。 
      
     はっきりいって、もう出ていきたい衰退産業の放送ローカル民放というのはいっぱいいるわけですよ。
     この間もラジオ局がひとつなくなったけど、これからどんどんテレビ局が店じまいしていく可能性が

                                                            
5
     Federal Communications Commission の略、米国連邦通信委員会。 
6
     米国の通信政策専門家、FCC において電気通信政策局長などを務めた。 

                                                               19 
 
ある。そういうところを、ただ店じまいするじゃなくて、そういうところを、うまくいったら何兆円
    と入る、まあ何百億はもらって立ち退けるというチャンスを与えてあげる、つまり逆オークションを
    やる。政府が買い取るオークションをやるんですよ。 
     
     
    キム氏: では最後に吉川さんに、“オモテ”懇談会のメンバーとして“ウラ”懇談会のメンバーとし
    ても要望とか何かありましたらお願いします。 
     
     
    吉川氏: まさに 700/900MHz のところ、ここは時間的な制約があってさすがに“オモテ”ではあまり
    議論できないかも知れないんで、そういう放送会社の体質も含めた、新しい、“オモテ”ではあまり
    できないけれども重要なところを是非提言していただけると。私は総務省も実は悩んでいると思いま
    す。もちろん政治家の方も悩んでいると思います。そういう提案だったら非常に建設的になっていい
    んじゃないかと思います。 
     
     
    キム氏: ありがとうございます。 
     
    “ウラ”懇談会ということもあって、若干既得権や“オモテ”懇談会に対して我々刺激的な話もした
    り対立軸を作ったという側面ももちろんあるかと思うんですが、先程最後の皆さんメッセージの軸は、
    やっぱりオークションという新しい実験であると、それに対して懸念を持つのはある意味当たり前で
    あると、そういった懸念に対して具体的なオークションを実施していく中で、デザインの中で、そう
    いった懸念を払拭できるようなメカニズムですね、アイディアですね、また池田先生のお話を聞くと
    インセンディブですね、そしてそれでみんなが win‐win になれるような案がひとつあれば、それをた
    たき台にしてみんなが議論できるような風土というのが初めて形成されるような気がします。我々今
    日は総論的な話はしたと思うんですが、是非 2 回目からは、そういった具体的なところにどのように
    落としていって、最終的にユーザー視点で、国民視点で我々としての周波数政策に対する提言を出し
    ていくかという議論に集中させていきたいと思います。 
     
    これをもちまして今日は周波数オークションに関する“ウラ”懇談会を終了したいと思います。皆さ
    ん、どうもありがとうございました。 
     
     
    一同:  ありがとうございました。 
       
                                ### 




                            20 
 

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20110708 ウラ懇談会第一回会合議事内容

  • 1. ニコニコ生放送 「周波数オークションに関する“ウラ”(オモテ?)懇談会」      放送日時:  2010 年 7 月 8 日(金)16:30~17:30    総視聴者数:  13,844 人(2011 年 7 月 25 日現在)    総コメント数:  5,398    出演者:  ジョン・キム(座長) 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授 ハーバード大学法科大学院客員教授。フジテレビ「BS プライムニュース」ブレインキャスタ ー。内閣官房、経済産業省、総務省、文化庁等の政府委員会の民間委員歴任。    夏野 剛(メンバー) 慶應義塾大学政策・メディア研究科 特別招聘教授 元 NTT ドコモの執行役員・マルチメディアサービス部長で、i モードを立ち上げたメンバーの 一人として知られる。現在はドワンゴなど、数社の取締役を務める。    池田 信夫(メンバー) 上武大学特任教授 経済学者。周波数に関する主な著書に、『電波利権』、『新・電波利権』。    岩瀬 大輔(メンバー) ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長 日本の生命保険業界に新規参入を実現した若手起業家として著名。ダボス会議で知られる世 界経済会議の「ヤング・グローバル・リーダーズ 2010」に選出される。    吉川 尚宏(第一回ゲスト) A.T.カーニー株式会社 プリンシパル  総務省「周波数オークションに関する懇談会」構成員の一人。台湾が実施した周波数オーク ションの制度設計に係る。        要旨:  • 本懇談会は、総務省の“周波数オークションに関する懇談会”の議論を検証し、建設的な提言を おこなうものである。  • 日本政府は、何のために電波を割り当てるのか、まずその立ち位置を明確にすべきである。  • 今、日本経済に重要なのは、競争だ。放送や公共目的のところは対象外とし、携帯電話などの成 長分野の周波数割当に、オークションを導入すべき。  • 3GHz や 4GHz の将来の割当について検討する総務省の懇談会は意味がない。これからの競争政 策に鑑みて、周波数を特定して具体的な制度設計論をすべき。  • 700MHz 帯で 100MHz が空くのが、新規参入の最後のチャンス。だからまず空く 900MHz での “指定席”への裁量割当を許してはいけない。  • すべてのステークホルダーが win‐win になるようなインセンティブ設計を検討する。具体的には、 700/900MHz において政府が既存事業者から周波数を買い取る“逆オークション”を検討する。      本放送は、下記の URL からタイムシフト視聴できます(登録が必要です)。  http://live.nicovideo.jp/watch/lv55598264            1   
  • 2. 我々がソーシャルメディアを使って、政府に建設的な提言をしていく時が、 今、来たんじゃないかと思っています (キム氏)   キム氏:   皆さん、こんにちは。これからニコニコ生放送「周波数オークションに関する“ウラ” 懇談会」を始めたいと思います。    まずは本日の懇談会を立ち上げた趣旨から申し上げたいと思います。    最初から宣伝めいたことで恐縮なのですが、4 月にこういう本を出しました・・・『逆パノプディコ ン社会の到来』という本です。これは、これから社会の中で情報の透明性というものが高まると。そ して市民は、今まで政府や大企業によって監視されていた時代から、ソーシャルメディアを駆使しな がら政府や大企業の活動というものをモニタリングしていくと。その一連として今年 1 月から 2 月に かけてチュニジア、エジプトを始めとした北アフリカにおいて、若い市民が自らの志を実現していく ために、ソーシャルメディアを駆使して 20 年以上続いた独裁政権というものを倒したと。そういう 革命的なことが日本の中でできるかどうかというのは議論の余地があると思うのですが、少なくとも 我々がソーシャルメディアを使って、政府の様々な活動に対して理解を深める、または牽制をする、 または建設的な提言をしていく、そういった手段として使っていく時が、今、来たんじゃないかと思 っています。    池田信夫さんもいろんなところで書かれていることでもあるんですが、日本においては三権分立とい うものが成立していないと。すべての権限というものが官僚によって支配されている状況であるとい うことが、いわれています。今日、議論する周波数オークションや、本来であればすべての政策に対 しては、立法側が、政治側が立法する能力を持って、民意を反映する政策決定プロセスというものを 主導していく必要性がある。にも関わらず、そういう政治主導を掲げて誕生した民主党政権は、成立 して約 2 年が経っていますが、その結果を見ると、かなりがっかりする結果になってしまっているん じゃないかという失望感があります。またそうした立法側が、本来の役割であるはずの立法の役割を 果たしていくためのバックアップ体制が日本ではあまり強くない。そういう背景があって、今日は総 務省の中で議論されているひとつの懇談会のシャドウ懇談会を立ち上げました。この懇談会、“ウラ” 懇談会というタイトルを使っているのですが、先程の夏野さんより、 “オモテ”懇談会じゃないか という提言があったのですが、政府の懇談会より本質をついた、公共利益に合致するような議論がで きるような懇談会を目指して議論を進めていきたいと思います。    それでは、メンバーの方々の紹介をしたいと思います。また本日はゲストの方もいらしていただいて いますので、ご紹介したいと思います。    まず最初に、上武大学特任教授の池田信夫さんです。その隣が、ライフネット生命保険代表取締役副 社長の岩瀬大輔さんです。そして慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛さんです。もう一人、東洋大学 の経済学部教授の山田肇さんがメンバーではありますが、今日は事情で欠席となります。そして私の 方が慶應義塾大学大学院准教授のジョン・キムです。座長を務めさせていただきます。よろしくお願 いします。    続いて、第一回目のゲストをご紹介させていただきます。A.T.カーニーのプリンシパルでいらっしゃ います吉川尚宏さんです。吉川さんは総務省の“周波数オークションに関する懇談会”のメンバーで もあります。今日は、今朝第 5 回懇談会があったということで、その報告も後ほどしていただきたい と思います。    議論に入る前に、私の方から周波数または周波数オークションについて、十分な理解のない方々もい らっしゃると思うので、少し説明申し上げたいと思います。    2   
  • 3. 電波、周波数というのは有限な公共財です。有限というのは、物理的にも有限でありますが、使いた い人に対して電波が十分に豊富ではないという意味でも有限です。また電波を活用した様々なビジネ ス等の潜在的な価値が高まっているということで、電波の相対的な希少性が非常に高いというのが現 状です。そういう非常に巨大な潜在的な価値を秘めている電波というものを、今までは政府が管理を してきました。その管理もやり方がいろいろあって、特に、どういった周波数帯を誰に使わせるかと いうことにおいて、今まで政府、特に日本政府は“比較審査”、または政府の内部で審査をしたその 結果として、特定の事業者に対して電波の免許というものを一定期間与えてきたというのが、今まで の現状です。      OECD 加盟国 34 カ国中、周波数オークションを導入していないのは、日 本をはじめ 4 カ国だけ (キム氏)   キム氏: しかし今、世界の状況を見 ていきますと・・・ここにひとつの 表がありますが、OECD の 34 カ国の 中で周波数オークションを導入して いる国が 30 カ国、導入していない 国が日本を始めとして 4 カ国・・・ 周波数オークションというのは、世 界的な特に先進諸国における流れで あるというのがこの図から確認がで きます。果たしてこの周波数オーク ションが諸外国で有効でも、特定の 国においては有効ではない可能性も ありますので、周波数オークション の導入というものが日本の将来にと って公共の利益につながるのかとい う点については慎重な議論が必要と いうことで、今年 3 月から、総務省の中で “周波数オークションに関する懇談会”が設けられて、 今日まで 6 回、議論されてきています。それに対して私を含めて今回参加いただいたメンバーは、政 府での議論というのは本質的な議論ではないと、結論ありきの議論ではないかということで、ある意 味この懇談会の議論というものを、答申が出てから我々が何かコメントを、緊急声明を出すのではな くて、議論の最中に、我々のまた市民からの声というものを政府の方にインプットしていきたいとい う趣旨から、今回こうして“ウラ”懇談会を設立し、議論していきたいと思っています。    それではさっそく議論に入っていきたいと思うのですが、まず池田さん、周波数オークションと電波 利権の関係、特に日本において何故、世界 OECD の 34 カ国の中で 30 カ国においては周波数オークシ ョンを導入しているけれども日本では全然されなかったかという背景等について、少しお話をいただ きたいと思います。      放送業界は、周波数オークションが彼らの既得権益を侵すものだと勘違 いしている。その初歩的な誤解をまず解くことが必要 (池田氏)   池田氏: 僕は周波数オークションについてはもう 10 年以上前から、鬼木先生とか、或いは東大の奥 野さんとかと一緒にいい続けてきたわけですけれども、なんでこれが、さっきご紹介のあった先進国 ではもう当たり前の制度が日本だけこんなに遅れているのかというと、僕の印象では、やはり当初は テレビ局の影響が相当強かったと思うんですね。  3   
  • 4.   一番印象的だったのは、2000 年頃だったと思うのですが、鬼木さんと奥野さんと僕とで、共同の署 名活動みたいなものをやったんですね、周波数オークションを第 3 世代の携帯電話の時に導入すべき だと、200 人くらい署名を集めてやったことがあるんです。その時に日経新聞の「経済教室」に鬼木 さんが原稿を書いたんです、あの、1 ページのね。で、普通の経済学者の原稿っていうのは、まあ、 僕も何回か出しましたけど、そんなに大きく直されることはないんですけど、ビックリした。最初に ゲラがあがってから、大幅に直されたんですよ。何を直されたかというとですね、周波数オークショ ンは携帯電話に限る、と。なんか見出しがね、「携帯電話にオークションを」という見出しになって、 最初は「市場メカニズム導入・・・」とかになっていた見出しを、それが直されて、携帯電話に入札 をだっけな、競売をだっけな、という見出しになって。中のところも、全部、放送というのが全部、 削除されちゃった。放送という言葉はもともとそんなになかったんですけど、それを全部ね、「通信 に限って」「通信に限って」というふうに全部直されたんですよ。鬼木さんはさすがにビックリして ね。いやまあ、それは当然携帯電話の話だから、別に放送の話はもともとしていないんだけど、もと もと書いていないのにね、「放送には必要ない」とか「放送には関係ない」とか、誰が書いたか知ら ないけど書き込みがいっぱいあるわけですよ。もうそれを見て、ああ、なるほど、こういう人たちが やっているんだと思ったわけ。だから出た原稿には、見出しが「携帯電話に限って市場メカニズムを」 というよくわからない文章になっているんだけど。(笑)    つまり、そこらへんから誤解が始まっているわけですね。僕ら、周波数オークションというのはもと もと放送の帯域をオークションにかけるということをいってもいないのに、日経新聞が代表ですけれ ども、テレビ局と系列化している新聞社にすると、所謂波取り記者というのは周波数を取ることが仕 事ですから、それを新規参入者に取られたくないという被害妄想が強いんですね。でオークションと いうと、要するに放送の帯域をよその携帯電話業者に取られるんじゃないかという妙な被害妄想を持 ってらっしゃるんですね。その人たちが意味もなく、オークションは良くない制度だというようなこ とを、当時の郵政省の方々に吹き込んできたことが、この問題のボタンのかけ違いの始まりで。    そうはいっても海外ではいろいろやっているもんだから、まあ、郵政省もやらなきゃいけないなとい うことで、何回か審議会で・・・特別の作業部会を作ってやったのね、で 1 回目はまだちょっと時期 尚早だということで見送られて。2 回目は非常に悪いことに 2000 年の欧州の 3G オークションの直後 にやっちゃったからね。あれはまあ非常にバブルで大変なことになったということで、それでダメに なっちゃった。といういろんな悪いことが重なっているんだけど、僕の印象では、放送業界の人はね、 非常に意味もなく根拠のない被害妄想を抱いて周波数オークションが彼らの既得権益を侵すものだと いうふうに勘違いしていることが、未だに尾を引いていて。原口さんもそんなことをチラっとおっし ゃったのね、放送に導入するのはいかがなものか、と。その辺の全部初歩的な誤解をまず解くことが 必要なのかな、という気がしますね。      キム氏: 他の方々に感想をお聞きしたいと思うのですが、まずは、せっかく今日はゲストとして吉川 さん、今の周波数オークションに関する懇談会のメンバーになっている吉川さんから、今、総務省の 中ではどういった議論が進んでいて、吉川さん自身がどういった感想を持っていて、こういう方向に 進んだ方がいいんじゃないかということも含めて少しご報告をいただければ、それをベースにできる んじゃないかと思うんですが。      吉川氏: わかりました。改めまして、A.T.カーニーの吉川と申します。私自身は実は 10 年くらい前 に台湾で第 3 世代携帯電話のオークションの設計に実際に関わっておりまして、そういうこともあっ て今回総務省の懇談会に呼ばれたのかな、と。あと昨年話題になりました「光の道のタスクフォース」 のメンバーで、その時から私は「光の道」というのは、光そのものよりは電磁波というか電波の方に 注目しないとちょっとまずいことになるなという警鐘を鳴らしていて、そういうことで今回メンバー に選ばれたのかな、と思っております。率直なところは、十年前に台湾でオークションの設計をやっ た時には、何をやったかというと、政府が予めどのくらいの価格になってくれるといいかという事前 4   
  • 5. の、株価でいうとナビゲーションみたいな感じで、そんなに方法論がなかなかなかったものですから、 土地でいうところの収益還元法とか、そういったものを使いながら、ある程度価格を出して、欧州方 式、欧米方式のビッドというのを実際やってもらったということがあるんですけれども、10 年ぶり に、10 年遅れでこういう議論をしている日本を鑑みると、なんか情けないような、やっとやってき たのか、というような感想を持っています。    で、今日はパワーポイントの資料を用意させていただきま したが、どういうメンバーでこの懇談会を実施しているの かというところからご紹介致しますと、まず 1 ページにあ りますけれども、こういった民間、大学、いろんな方々が 入っていますということなんですが、座長は、早稲田大学 の三友先生です。他には鬼木先生も入っていらっしゃいま す。毎回、政府主導ということで、平岡総務副大臣、それ から森田政務官も出席しておられて、私が知る限り総務省 の審議会というかタスクフォースの方も休業していますけ れども、だいぶ政治指導色というのはなくなってきている 中で、ちょっと政治指導色の強い、珍しい政治主導型のも のなのかな、と思っています。ただ台湾とか、10 年くらい前にいろいろ 3G オークションありました けれども、実際に制度設計で活躍していたのは、私も本を読みましたけれども、例えば Paul Milgram とか、ゲーム理論、ミクロ経済の専門家というのが欧米ですと参画して検討しています。詳細な制度 設計をすると、たぶんそういった学者の方にワーキングなりに入っていただかないと、細部の詰めを 作るところでは難しいだろうなというふうには思っています。    次は 2 ページ目になるんですけれども、3 月からこの懇談会 はスタートしました。直後に震災があった関係で、1 ヶ月か 1ヵ月半くらいスケジュールがちょっと伸びているという か遅れているかなというふうに思います。3 月 5 日の時点で だいたいこの制度の論点というのは明らかになっていたん ですが、その後、5 月 27 日以降、第 3 回、第 4 回、第 5 回 と、公開ヒアリングというのが行われまして、通信事業者 ですとか、放送事業者ですとか、今日ご欠席の山田先生も 公開ヒアリングで意見陳述をしていただきましたけれども、 こういった公開ヒアリングが始まりました。総務省の審議 の仕方というのは、だいたい最初意見募集をして、広くあ まねく意見を集めて、論点整理をして、というスタイルなんですけれども、この公開ヒアリングに私 は最初出席して、まあ、予想はされていたんですけれども、ある意味でもうなんか聞きたくないな、 と。要するに払う側の人が最初たくさん出席されるわけですね。携帯電話の事業者、固定通信。当然、 彼らは反対とは別におっしゃらないんですよ、慎重に議論してくださいとおっしゃるんですけれども、 こちらとしてはどうやったら良い制度設計ができるかについて、何かいいアイディアを出してくれる のかな、という期待感はあったんですけれども、いや、私のところのマイクロ無線は是非例外にして いただきたい、放送は、これは非常に公共性が高いから、今回のオークションの対象ではありません よね、というような話が延々と続いたものですから、半ばちょっとうんざりしてきたんですけれども。 今日の午前中は、事務局の方はでもしっかり海外の調査はやってくれていまして、イギリスですとか、 ドイツ、フランス、アメリカ、それから韓国もこの夏からオークションを入れることになったのです が、どういう制度設計にしていくかという報告がなされて、ようやく少し、論点なり、日本でも導入 する場合は何をしなきゃいけないかというのが明らかになって来た、こういう状況かな、と思ってい ます。      5   
  • 6. 実質大手 3 社で、新規参入しやすいような状況を作れるかどうかという のは、競争政策上、非常に意味のある論点 (吉川氏)   吉川氏: 主だった論点は次の 3 ページ目にあるんですけれども、大きな論点は、ひとつは導入目的。 日本は今、財源を確保しなければいけないという話があるんですけれども、欧米の例を見ますと、や はりほとんどは周波数の効率的利用に対するインセンティブを与えましょうということですから、私 も、最初から日本でオークションをやると 1 兆円、2 兆円増えます、というような新たな財源として 期待するよりは、むしろワイヤレス、モバイル産業がちゃんと育つような周波数の効率的利用のイン センティブを与える方がいいかなと思うんです。だいたい欧米でも同じような考え方でやっていると いうことがわかりました。    それから 3 番目の払込金の法的性格、或いはオークションの 収入の使途、ここが結構これから問題になると思うんですけ れども、所謂一般会計に入れるのか、特別会計に入れるのか。 これは多分これから議論しないといけないと思います。    それから 4 番目の対象範囲。例えばそれこそ放送まで入れる のかどうかと、そういうことをやってはどうかとおっしゃる 方もいらっしゃったんですけれども、当面例えば通信という ふうに限った制度設計をこれから具体化していく必要がある かと思います。    問題なのは 5 番、細かな制度設計ですね、携帯電話用か、例えば全然違う ITS 用とか、いろんな周波 数帯が考えられますが、それによって微妙な制度設計、細かいところをこれから注意してやっていく 必要があるかと思います。特に例えば今携帯電話の場合ですと、大手 3 社・・・イーアクセスや他にも いらっしゃいますが、実質大手 3 社で、新規参入しやすいような状況を作れるかどうかというのは、 競争政策上、非常に意味のある論点になろうかと思います。    他にも 4 ページの、例えば二次取引をどうするかとか、それ から 7 番の電波利用料との関係というのも、実はさっきの財 源の話と同じで大きな問題になるのですが、今、日本の電波 利用料というのは年間 712 億円くらい入ってきています。そ れが例えば地デジ対策とか研究対策とか、携帯電話のエリア を補完するための財源として使われています。712 億円の内 525 億円を携帯電話の事業者が払っていますから、単純にこ れ 15 年分と考えるとこれだけで 7800 億円ありますから、も う結構な額、実は携帯電話の事業者は既に払っているという ことになりますが、その上にさらにオークション料を払うの かどうかという点は、これから論点になっていくかと思って います。      電波の需要はこれから増える。競争政策などを加味して制度設計しない と前に進まない (吉川氏)   吉川氏: 最後のページ、5 ページ目なのですが、これまで 6 回懇談会がありました。ですから私は “オモテ”懇談会と、どっちが“オモテ”か“ウラ”かわかりませんが(笑)、両方出させていただ いています。ですから私は総務省の懇談会の運営にもある意味責任を負っているんですけれども、今 までの議論を見て思うのは、ちょっと事業者ヒアリング、公開ヒアリングではあまりにも反対派とい 6   
  • 7. うか慎重議論派というのが多かったものですから、総論は反対 的なニュアンスを皆さん持たれている可能性があるんですね。 実はですね、このオークションの制度設計ってやっぱりファイ ン・チューニングしなければいけない、微妙な制度設計のとこ ろがカギでして、ここの良し悪しを早く議論しないことには総 論ばっかりいっていてもしょうがないと思っています。    それからいろんな事業者の方の話を聞いていてわかったんです が、去年の「光の道」の時も思っていたのですが、やはり電波 への需要はこれから増えるな、と。早くここの制度設計をやっ ておかないと、FTTH のアンバンドルどころの話じゃなくなる というふうに思っています。携帯電話は、先程申し上げた通り、競争政策などを加味して制度設計し ないとこれは前に進まないのではないかと思いました。      700/900MHz という非常に重要な周波数帯が、懇談会の議論の対象に なっていない (吉川氏)   吉川氏: それから今回実は対象になっていないのが、もともとオークションというのが、白地の、誰 も使っていない電波を誰が入札するかという、所謂白地のオークションと、誰か既に、土地でいえば 住んでいる人、その人たちに立ち退いていただいてやるオークションと、二通りあるんですけれども、 後者の方が難しいはずなんですが、これは実は今回の懇談会の対象になっていないんですね。でも既 にそれを実現するための改正電波法というのが国会通っていますけれども、これについては、一体誰 がどこで議論しているかが実はわからないんです。そこで私は第 1 回目の懇談会で平岡副大臣に、こ れはいったいどういう状況なのか報告して下さいということはお願いしておいたんです。所謂立ち退 きの方が 700MHz とか 900MHz という非常に重要な周波数帯を使いますので、重要性は高いんですけ れども、誰も議論の経緯を知らないんですね、その後どうなっているか、と。その意味で、ここが正 に“ウラ”懇談会の皆さんの知恵なりインプットというのが必要な分野ではないかと思うんです。      キム氏: 例えば、議論がされていないと、でもいずれ議論をしなければならない時期が来るというこ とだと思うんですね、それはオークションを導入するかどうかは別として。今のまま進んでいくとど ういう状況になるんですか。      吉川氏: 突然指針が出て・・・ちゃんとパブリックコメントにかかればいいんですけれど、突然、省 令とか政令とか規則とかいうかたちで出てくるということになったら困るな、と。ちゃんとやっぱり オープンな場で議論して、いろんな人の意見を聞いていい制度を作るということが必要なんですけど、 これが実は議論する場が、公開の場が、多分今ないんじゃないかと思うんですね。      池田氏: ということは 700/900MHz についてはもうやらないということが実質的にこの間の電波法改 正で決めたに等しいと理解していいんですか。      吉川氏: そうです。      池田氏: 今は、基本的にはこの懇談会というのは 3GHz とか 4GHz とか上の方で、遠い将来やるための 懇談会という位置付けですよね。    7   
  • 8.   吉川氏: そういうことです。      池田氏: そこが問題ですよね。      吉川氏: そうなんですね。実は私、先週、A.T.カーニーのアジアの地域の通信担当と議論したんです けれども、韓国が、今までオークションを入れなかった韓国が、オークションを入れる。で、彼らは LTE でオークションをやるんですけれど、それはもう 4G(Generation)といっているんですね。シン ガポールの連中に聞いても 4G といっている、と。で日本は、LTE は 3.9G といっているんです よ。”Three point nine generation”というのは一体何なんだと聞かれてですね(笑)。    だから 4G という定義もはっきりしないまま、でも日本では“4G からオークション”というような、 別にそれは決まったわけじゃないですが、なんとなくコンセンサスみたいなものがあって、しかもま だちゃんと標準化されていないところで、我々はいったい何年先のどの周波数帯のオークションを議 論しているのかがわからないので、前にこれ以上進まないじゃないかというのを私たちは懸念してい る。だからどっかバンド幅を決めて・・・。      池田氏: そうそう。      吉川氏: 例えば、来年のスマートメーターの 920MHz が 5MHz 幅で比較的小さいので、実験するには いいのかな、と個人的には思うんですが、どこか決めないことには制度設計が前に進まないんじゃな いかと思っています。      キム氏: 前に進めないというのが懇談会の運営システム側の目的かも知れないというようなニュアン スですね。      吉川氏: まぁ、そこまではいいませんけど(笑)。      キム氏: プレゼンの中でひとつ気になったのは、先程吉川さんの説明の中で、今、電波オークション ではなくて政府の審査によって割り当てられた免許を使って、例えば携帯電話事業者というのは事業 を行っていて、毎年毎年電波利用料を払っていて、それが年間 710 億円になった、と。例えばオーク ションが、15 年の免許期間のオークションであれば、これはどれくらいになると思われますか。先 程 710 億円で 15 年かけると 7800 億円・・・。      吉川氏: はい。      キム氏: というと、かなり大きな値段になってくると思うんですが、その周波数帯全体をオークショ ンにかけた場合、その経済的な価値というのはどれくらいに・・・。      吉川氏: 今使っているようなものを含めてもう一回オークションにかければそれは何兆円にもなるん でしょうけれども。ただこれ、確かに 3G で盛り上がった時とだいぶ状況が違いまして。新しい周波 8   
  • 9. 数帯、もっと欲しい、でもどうやら ARPU1はあまり増えなさそうだ、消費者の方ももうこれ以上払え ません、という状況になってきているので、需要サイドに立つと、すごいバブルが起こる状況かとい うと、たぶんそうじゃないんだという、印象を個人的には持っています。供給との兼ね合いがあるの で、たくさんバンド幅が供給できれば、携帯電話の事業者がこれ以上たくさん周波数を獲得しても収 入は増えない、皆さん定額制でスマートフォンとか使っていますから、これ以上収入は増えないとい う状況なので、バブルが起こりやすいような状況ではないだろうなと思っています。      夏野氏: ただそれは新規参入がなければの話で、新規参入があると今の携帯電話事業者というのは、 僕がいうのもなんなんですけど、他の産業に比べるとものすごく利益率が高いので、新規参入を認め ると、もう少しいい値段になる可能性がありますよね。      吉川氏: はい、ありますね。      夏野氏: 僕は別にバブルというのは、バブルといういい方はあまり良くないですけど、適切な価格が つくのはいいことだと思っていて、そういう意味では新規参入が前提のオークションにしないと意味 がないと思うんですね。      吉川氏: そういうことですね。      キム氏: それでは、今の吉川さんの話を聞いて、メンバーの皆さんに一人ずつご意見を伺いたいと思 うんですが、まず今日は第 1 回ということで、総論的な話から。電波オークションをやるべきかどう かということと、やる前にどういった目的でやっていくべきであって、今の日本の段階でいわれてい る電波オークションをめぐるという議論ものには、どういった課題があるのかを含めて、夏野さんか らお願いします。      何のために電波を割り当てるのか、産業政策の成長戦略としてやるのか、 規制としてやるのか。政府は立ち位置を明確にすべき (夏野氏)   夏野氏: はい。僕は電波オークションをどうするということの前に、何のために電波を割り当てるん だということをもう一度立ち返ってみんな確認しなくちゃいけないんじゃないかと思っています。電 波の効率的な使用は、基本的には国民のためにやることであって、別に今いる事業者がどうだとか、 或いは今あるメディアというものがどれくらい新規参入があるべきだとか、そういうことは二次的な 議論だと思うんですよね。まず、最初に議論されなくちゃいけないのは、やはり一番国民が使いたい ようなシステムに対して、最適な周波数を割り当てるというのが本質的なことであるはずだと思って いるので、そういう意味でいうと、まず立ち位置が、産業政策としてやるのか、社会的ベネフィット のためにやるのかということが、しかもそれを産業政策の伸びる成長戦略としてやるのか、或いはあ くまでも規制としてやるのか、このへんの立ち位置が、僕は日本という国は全くはっきりしていない ところから始まっていることにこの混乱のもとがあると思っていて。    例えば、そもそも総務省って、規制省庁じゃないですか。だから、産業育成の観点というのはなかな か難しいと思うんですよね。ですからそもそも総務省というのが議論していることが問題だと思って いるんですが。まあそれは、今の省庁の割り振りまで変えることはできないと思うので、このままや                                                              1  ARPU:Average Revenue Per User の略、月間電気通信事業収入。通信事業における、加入者一人あたりの月 間売上高。携帯電話事業者の収益性の比較などによく用いられる指標  9   
  • 10. らざるを得ないんでしょうが、少なくとも今後の成長とか産業育成とかを考えるのであれば、先程吉 川さんがおっしゃったように、まず既存の 700/900MHz、僕は特に 900MHz 帯に関心があるんですけ れども、海外との協調もできて非常に効果のある周波数帯なので、ちょっとどいていただかなければ いけないけれども、そこのところをまずどうするかという議論をしてもいいんじゃないかと思います ね。今、害のない 3GHz、4GHz がどうかというのを議論しても、あまりこう具体的な議論にならない のでね。      池田氏: そんなとこ、買いたい人がいないでしょ、4GHz とかね。      夏野氏: 4GHz とかあんまり電波が届かないですからね。ということで、まず何のためにやるのかと いうのを、是非政治主導で立ち位置を確認してから、この議論を始めて欲しいな、というのが一点で す。    もう一点どうしてもいいたいのは、国際協調なんですよ。つまり今、日本の企業が日本のためだけに モノを作る時代じゃないので。で、Wi‐Fi は 4GHz で世界のメーカーが世界中で作れるからこうやって 普及するんであって。方式と周波数帯というのが世界とずれると、全く国民的メリット、国民的便益 が期待通り達成されませんから。国際協調するということを大前提とした議論の上に、このオークシ ョンというのを入れて新規参入を入れて、どんどん活性化していく、それで社会ベネフィットをあげ ていくということにして欲しいなと思います。      キム氏: 国際協調という面で、今の日本の体制というのはそれに十分対応しきれていない、という意 識なんですか。      夏野氏: はい。特に 2GHz のところは、3G で 2GHz のところは世界標準ということでスタートしたん ですが、結局どこの国でも、例えばヨーロッパの GSM の国ではもう 900MHz を 3G で兼用始まってい ました。で日本はもともと、ドコモとか KDDI の持っている周波数帯が 2G のために、もうとっくに そちらの方が電波が飛ぶということで、エリアが広いということで、800MHz 帯を 3G に使っている わけですね。ところがこの 800MHz 帯というのはヨーロッパの電波と合っていないわけです。たまた ま、アメリカと合っていたので、それは良かったんですけれども、それは意図してやったわけじゃな いんですね。    で、昔からアナログテレビはもともと 1 チャンネルから 3 チャンネルのところでは、アメリカでは FM で使われていた、世界的には FM で使われていた、とか。もう微妙にずれていて、今回の地デジ でもあんまり喜ばしくないのは、方式そのものが日本独自で、携帯電話以上にガラパゴスなものです から、国際的な主流と合わせるということとともにじゃないと、なかなか社会的ベネフィットという 話にならないと思います。      キム氏: はい、じゃあ次に岩瀬さんよろしくお願いします。      いろいろなしがらみの中で、みんな正しい答えがわかっているのに動か ない。どう実現するのかというところに、むしろ知恵と努力を結晶すべき (岩瀬氏)   岩瀬氏: よろしくお願いします。    10   
  • 11. 僕は通信の専門家じゃないんで、何をやるのかということについては、たぶん賢い人たちが集まって 議論すれば答えは出るんじゃないか、或いはもう出ているんじゃないかと思うんです。ただ、どうや っていろいろなしがらみの中でひとつ前に進めていくのか、ということに興味があるんです。    僕はもともと生命保険業界の、ガチガチの規制業種の中でいろいろ商売していまして。あと去年の秋 から内閣府の IT 戦略本部で「IT 規制緩和に関する専門調査会」というのがあって、そこに入ったん ですけれども、そこで医薬品ネット販売という議論を結構やったんですね、それで最後規制仕分けの 俎上に載って、蓮舫大臣と一緒にテレビが入っている中、厚労省の官僚だとか、いろんな関係者と議 論しまして。あと専門調査会の中で、あとフェアユース規定について特許庁や関係者と話をしたりし まして。で、結局全部同じ話だな、と感じているんですね。通信の話に限らず、いろんな、医薬品で あったり著作権であったり、いろんなところで官僚というプレーヤーと事業者と政治家と、いろいろ なしがらみの中で、みんな正しい答えがわかっているのに動かないという実態があるんだな、と思っ ています。    それで興味があるのは、どうしたらそこから前に進められるんだろうかということで。ひとつ調査会 で試みたことなんですけれど、まず専門調査会自体をオープンにしようということで、ニコニコ動画 の生中継を入れてもらったんですね。通常事業者のヒアリングをする際には、事前に書面で送っても らって、質問を一回して返事に返って来たことに対して質問するだけだったんですけれど。そうする と結構面白い映像が撮れて、例えば、チェーンドラッグストア業界の副会長さんだったと思うんです けれども、かなり感情的に猛反対をされていて。そもそもインターネットとかそういうものはあてに ならない、そもそもアポロの月面着陸だってあったかどうかわからないし、そんなデータあてになら ないみたいな発言をして、それをビデオが入って撮っているんですよ。いつかそれを使ってもらうと いいなと思っているんですけれど。公開の場で議論することによって、どういう議論がされているか とかがわかる。議事録を開示してもみんなわからないと思うんですよね、かなりはしょって書かれて いますし。    同じ議論をやるにせよ、国民のメリットを提示するというのはもしかしたらひとついいかも知れない。 国民にとって何がベネフィットかということがわからないと、なかなか多分一部の専門家以外は強く プッシュすることができないでしょう。結局政治のリーダーシップが大事だとしたら、政治家にとっ て、じゃそれ票になるの、いう話にならざるを得ないと思うんです。なのでそういう議論に、どうや ってもっていくかというのがポイントかと思いまして。    たぶん正しい答えを詰めていく作業というのはものすごく簡単で、じゃあそれを 60%でもいいから どう実現するのかというところに、むしろいろんな知恵と努力を結晶すべきなのかな、と思っていま す。      700MHz 帯で 100MHz 空く、これが新規参入の最後のチャンス。だから、 900MHz の裁量割り当てを許してはいけない。3GHz とか 4GHz とか、そ んな懇談会は意味がない (池田氏)   池田氏: 僕も岩瀬さんと似たような感情を持っていて、僕も 10 年以上同じことばかりいい続けてい て、いい加減何をやるべきかということについては、今さら議論する必要はないと思っているんです ね。むしろ大事なことは、さっきの吉川さんの話にもありましたけれども、もう少し具体的なことを 議論した方がいいというか、特に 700/900MHz をやらないことを事実上決めて、遠い将来の 3GHz と か 4GHz とかね、という話をしても全く意味がない、そんな懇談会はやること自体意味がない。やる んだったら、700/900MHz をどうするのかという議論をしてもらわないと、本来の“オモテ”の懇談 会の方は意味がないと思う。他のことはもういいから、700/900MHz をやるのかやらないのかという のを、まず明らかにして欲しい。    11   
  • 12. それは何故重要かというと、要するに 700/900MHz でオークションをやるということは、当面空いて いるのはソフトバンクの指定席となっている 900MHz・・・そこを、霞ヶ関でいわれている話では、 ソフトバンクに事実上与えてしまうと。そうすると、900MHz をソフトバンクに与えてしまうと、 700MHz のところを、さっきの 4G 或いは 3.9G の周波数ということで一体の扱いになる恐れが強いわ けですね。そうすると、900MHz を裁量で割り当ててしまうと、700MHz がこれから 100MHz くらい 空くといわれていますが、そこが全部美人投票でやる恐れが強いわけですよね。それはもう絶対許し てはならない。700MHz を美人投票でやったら、あと 3GHz、4GHz なんてやったってほとんど意味な いです。そんなところ買いに来るようなのは、既存の 3 社以外のオペレータはまず買いにこないと思 うから、意味がない。やるんだったら、或いは新規参入が入る余地があるのは、もう 700MHz しかな い、100MHz 空くという、後にも先にもおそらくそこしかないというような、非常に大きなチャンス なんですね。とにかく 700MHz をオークションでやらなきゃいけない。そのためには、900MHz は裁 量で割り当ててはいけないということを具体的に議論した方がいいと思うんです。      キム氏: 基本的な質問なのですが、700MHz を美人投票でやってはいけないという話ですが、美人投 票というのは何故やってはいけないんですか。      今、日本経済で何が一番必要か-新しいプレーヤーを入れて、競争を導 入するということ。大事な 700/900MHz で指定席を与えてしまったら、そ こで終わりになってしまう (池田氏)   池田氏: 今までは美人投票すらおおっぴらにやらなくて、ライセンスの数と同じ数だけ事業者が出て きたんですけれど、2.5GHz の時から一応日本でも複数事業者の比較審査になって、けどあの時も結 局ドコモが落ちて、KDDI とウィルコムが通るという非常に不透明な結果に終わりまして、要するに 今度 700MHz をやると、おそらく既存 3 社と、あと 1 社くらいイーモバとかが入って、4 社の指定席 と、いうことになる確率が高い。そうするとさっき夏野さんの話にもあったけれど、日本経済で今何 が一番必要かというと、新しいプレーヤーが入ってこないと、今までの古い業界の体質というのは変 わり得ないわけです。このオークションを何のためにやるのかという議論、これは前々回も議論しま したけど、それは電波を効率的に使うとか、国庫収入を上げるとかいう部分もないわけじゃないんだ けど、一番大きいのは競争を導入するということですね。それを特に大事な 700MHz のところで指定 席を与えちゃったら、そこでほとんど終わりになっちゃうと思うのね。    もうひとついわせてもらうと、さっきの戦術レベルでね、どういうふうにすればこの問題なんとかな るんだろうか、ということについていうと、この問題は僕らみたいな、というか僕含めてそういう評 論家的な人がいくらいっても聞いてくれないんですよ、役所の人は。やっぱり実際業をやっている人 が強烈にいわないと。今のこの懇談会に出てくるような人はみんな、やめてくれというような人ばっ かりでしょ。      孫さんは、周波数オークションをやれと強烈に主張していたのに。電波を もらったら、やらない理由ばかり (池田氏)   池田氏: 僕は非常に遺憾に思うのは、孫正義さんとか、森内閣の IT 戦略本部の時に、孫さんと村井 純さんは、周波数オークションをやれということを強烈に主張したんですよ、それが議事録に残って いるんです。それなのに、自分が電波をもらったらやらない理由ばっかり探してね、この間なんか調 べたら最近は発電のなんか訳のわからないことをいい始めているけど。要するに孫さんくらいの、あ れくらいのパワーがあれば、僕は世の中を動かす可能性があると思う。その何よりの証拠は 700MHz の周波数の割り当ての時に、一時期はおかしなガラパゴス周波数を割り当てるということを、ここ 12   
  • 13. (総務省懇談会)に出ている服部さんが作業部会でいっぺん決めて発表したものを、僕がツイッター で「バカヤロー!」といったら孫さんが「その通りだ」といって。それを原口さんがツイッターで受 けて、翌日の閣議後の記者会見をひっくり返したというね、すごいことが起こったわけですよ。だか らこの問題も、孫正義さんが賛成してくれれば僕はひっくり返せる可能性が十分あると思う。孫さん はこの問題については誰よりも賢いから、そんなことはいわないでしょうけど、彼が本当に坂本龍馬 のように天下国家のことをお考えになっているんだったら、周波数オークションについて、やらない ならやらない理由を、堂々と天下に発表して欲しい。      キム氏: 熱くなってきました(笑)。    吉川さんに質問なんですが、今の話の中で、新規参入がない、ダイナミズムがないというのが、日本 の情報通信産業・・・のみならずだと思うのですが、大きな問題だと思うんですね。よく周波数オー クションを導入する際にいわれている批判・反応というのが二つあって、ひとつは欧米の 2000 年前 後のイギリスやドイツで起こったような 3G オークションみたいに値段が高騰してしまうと、それが 事業者の負担になって最終的には消費者のサービスの価格に転嫁してしまうんじゃないかという議論 がひとつ。そしてもうひとつは、資本の論理に任せてしまうと、やっぱりお金を持っている人たちが 買い占めてしまうんじゃないかということ。それについてはどうお考えでしょうか。      吉川氏: 2000 年くらいの、特にイギリスとドイツの例ですが、これは学ぶところがあって、どうい うふうに周波数帯域を割り当てるかということについては、ある意味でドイツは失敗したんじゃない かと思うんですが、それからしっかり学んで制度設計をすれば。その時は非常にイギリスとドイツで は高騰した。ドイツは、ドイツテレコムが 2 つの周波数枠を取ればいいのに 3 つ目を取りにいこうと して、それで均衡が崩れてしまって、12 の枠があって、2 つずつ 6 社だったらちょうど良かったのが、 1 社が 3 取ると 3 X 4 になりますよね。で 2 社、はじき出されたことで上がったというふうによくい われているんですが、そういった枠の与え方、少なくとも 2 つ取りなさいという設計だったんですけ れども、ここはちょっと学ぶところが多いかな、と。    ただ実際どういう影響があったかというと、例えばドイツテレコムなんか結果的に携帯電話事業を奪 われてしまったということがあったりしましたけれど、それがどう影響しているかは、次回、私それ のプレゼンをすることになっているんですけれど、きちっと分析をして、良し悪しというのを評価す る必要があります。      キム氏: この図だけを見ると、やっ ぱりイギリスとドイツで高騰はして いますが、その後いろんな国々にお いてオークションが実施されていて、 ある程度安定したかたちに収束して いるところがあったんですね。      吉川氏: そうですね。      キム氏: それはおそらくオークショ ンの具体的なデザイン等にもたぶん 余裕があったからだと思うのですが、 具体的にはどのようなことがなされ ていたと思われますか。もちろん景 13   
  • 14. 気の影響もあるかと思いますが。      吉川氏: 方法論としては、同時に何段階もやるという方法論がだいぶ取られているので、それでうま く回るだろうと。各キャリアも、それこそ我々なんかもたぶん海外では手伝っていて、事前にどのく らいの価格だったらビッドするべきか、それ以上超えると自分の会社にとっても損益上マイナスにな るかという判断を、かなりきちっとし始めている。    あとはダメな場合は、例えば卸を受けて提供するとか、そういう代替手段がありますから、そういう 方法をとれば、変な値段でささないというふうになってきているんじゃないかと思います。      キム氏: それは市場ですので、計算を間違ったら自分の責任で破綻するのもそれこそ一般の市場経済 の中では当たり前のことで、それに対して政府というか省庁、例えば官僚とかそれ以上の未来の予測 能力があるかどうかというのも議論しなければいけないところではありますよね。      放送や公共的に使っている電波の領域ではなく、価値を生む可能性が高 い成長産業に、オークションを (夏野氏)    夏野氏: この例も、ドイツの例もそうなんですけど、じゃ結果的に価格が転嫁されたか、つまり結果 的にドイツの通信料金が異常に上がったかというと上がっていないんですね。ですからドイツが、政 策論としては、ちょっと業界で混乱したとかゲーム理論的にいうとまさに“囚人のジレンマ的”なこ とが起こって、社会的ベネフィットにはなっていなかったんじゃなかったとか、理論的な検証はやる べきだと僕は思うんですが、結果的に恐れられていたユーザーへの価格の転嫁は起こっていない以上、 あれを失敗だというのは問題だなとちょっと僕は思っていて。    何故そんなことをいえるかというと、これは成長産業なのかどうかということの方が重要だというこ となんです。つまり携帯電話業界というのは、2000 年の時にバブルになりましたが、バブルになっ た時に見通した以上に通信トラフィックは増えていて、十分それがリクープできるビジネスになって いるわけですよね。ですからそういうものにはオークションは適していると。つまりみんなが思って いる以上価値を生む可能性が高い産業なんですね。一方で公共的に使っているのは軍事利用とか、公 共的に使っているような電波の領域もあると思うんで、そういうところはオークションは向いていな いかも知れない。しかしながら民間ベースでやっているような、特にインターネットとか絡むところ は、こういうところはオークションをやっても十分大丈夫、つまり消費者に転嫁されるというところ にはいかない可能性が高いんじゃないかと思います。      キム氏: 2 番目の新規利用者等については、後ほど吉川さんにお話しを伺いたいと思うのですが、今 の話と絡めて、池田先生の方には消費者への価格転嫁問題、前からずっと議論されてきてなかなか理 解してもらえない人たちも結構いらっしゃると思うのですが、今の夏野さんの話だと、これ総務省の 資料かどうかわからないのですが、ある調査資料2によると、周波数オークションを実施した国とし ない国とのサービス料金を比較したら、実施した国がサービス料金がはるかに低い。今、韓国もフラ ンスもオークション導入を決定はしているんですがフランスはまだ実施はしていない。フランスのサ ービス料金は非常に高いということは一度出されてはいると思うんですが、池田先生自身はこれはも うサンクコストだということを以前からずっとおっしゃって来たと思うんですが、そのサービス、オ ークションの値段の高騰と、それが事業者にどういう負担になってそれが最終的に消費者に転嫁され るのかどうかという議論に対して、池田先生もう一度。                                                                2  2011 年 6 月 14 日総務省公表『電気通信サービスに係る内外価格差調査-平成 22 年度調査結果-』 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s‐news/01kiban03_01000052.html  14   
  • 15. オークション価格が消費者に転嫁されるという議論は、さすがに役所の 資料にも出てこなくなった。理論的にあり得ないし、実証的にもオークショ ンを導入した国の方が安くなっている (池田氏)   池田氏: さすがにもう最近役所の資料には価格が上がるっている話はもうあんまり出てこないですよ ね。一時期いろいろいわれたんですが、これは理論的にもうあり得ないし、実際に実証的に見ても、 今おっしゃったように、オークションを実施した国の方が安くなっているわけです。それから 3G の オークションについていっても、その後実証的なサーベイがたくさん出ましたが、少なくとも経済学 者の評価は、あれは成功だという評価ですよね。もちろん業界から見ると相応な災難があって、あれ で潰れた会社はいくつかあるわけですけれども、率直にいって経済学者の立場から見ると会社なんか 潰れるのは当たり前なんだからそんなのはちっとも問題じゃない、と。問題は消費者にとって適正な サービスと、良質のサービスと適正な価格が実現したかどうかという基準であって、その基準からい うと 3G のオークションは、直後混乱があってサービスが遅れるということがあったものの、結果と してはうまくいったというのが本音ですね。    問題は、はっきりといってそういうところじゃないところ、むしろさっき岩瀬さんがおっしゃったよ うな、日本の霞ヶ関特有の、前例踏襲とか業者に対する過剰な配慮とか、非常に日本的なカルチャー が極めて当たり前の国政という常識力をブロックしているという状況があるので、そこをどうやって こじ開けていくのかということの戦術論だと思います。    そういう意味では、今度の電波法改正というのは、いったん去年の 9 月に閣議決定で、“オークショ ン的なもの”を導入するというふうに民主党が一応政治主導で出した閣議決定を事務方が無視して、 電波法改正に全くそれを入れないということが起きたんですね。これはいろいろ後から聞いてみると、 やっぱり事務方としては今までの電波部の中の前例を踏襲するという風潮が強い。ま、民主党なんて いつまでやるかわからないからあんなものやってもしょうがない、という雰囲気になっているという んですね。ですからまずはそこを変えないと。役所のカルチャーの部分を意識的に変えていかないと。 おそらく岩瀬さんがおっしゃる、薬のネット販売と同じですよね。お役所がいったんいったんだから 引っ込みがつかないという、それがものすごい強いんですよね。そこをある意味・・・今の原発のあ れですよね、今の首相のやっていること二転三転して無茶苦茶だけど、あそこまで徹底していき当た りばったりだと、いくらでもいけるかな、と。前例関係ないじゃないか。ストレステストなんて突然 出てきて、全然今までと整合性のないこと平気でやっているんだから、あの菅さんとかにね、誰かが 吹き込んだら、急にこれで突っ込んだらやるんじゃないかと思ったら、もしかしたら前例関係ないこ と今の民主党政権だったらやるんじゃないかと思ったりしたんですよね。      ファイナンスはつく。後は次の起業家が、変革者が、メインストリームから 出てくること (岩瀬氏)   岩瀬氏: さっきの夏野さんのいわれたこと、これ成長産業なんだという売り込み方が一番良いような 気がして、やっぱり国として経済成長をしなければいけないけど、ネタに困っているわけじゃないで すか、なんか介護が成長産業みたいな。やっぱりそれよりも日本の通信だとかという分野が成長であ るというストーリー、ま、実際そうだと思うんですけれども、に仕上げていくのがすごくいいのかな、 と思いまして。そうすると、じゃそこに入っていく起業家はいるのか或いは資金はつくのかという話 になってきて。    考えてみればなんで孫さんが通信をやっていたのかと考えると、僕はリップルウッドというファンド にいたんですけれども、僕らはボーダフォンのところにいって 1 年くらいずっと追いかけて、日本テ レコムを買い取って来たんですね。孫さんが直接いってもディールがまとまらなかったらしいんです けれども、半年後、孫さんが 3000 億円で買われて、そこからまたボーダフォンを 2 兆円くらいで買 15   
  • 16. われたわけですよね。それだけファイナンスがつくんだという、金融危機後だったんですけど、やっ ぱりみんな良質な貸し出し先には、まだ資金というのはだぶついているので、ファイナンスがつくと 思うんです。イーモバイルの千本さんとお話した時も、彼も、もともと NTT の中にいた人だったん ですが、飛び出して買いにいったと。イーモバイルを作る時は、売上ゼロの段階でゴールドマンから 2500 億ファイナンスがついたというんですね。なので、ファイナンスはおそらくつくと。    だとすると、後必要なのは、起業家みたいな人で。孫さんだけに頼るのもなんなんで、もしかしたら 次の起業家、次の千本さんみたいな人がそれぞれの既存の業者の中にいるのかも知れなくて。やはり アウトサイダーが変えていくというのは難しいところもあるような気がして、僕は本当の変革が起こ る時というのはメインストリームの中からで、そういう変革者が現れる時かなと思う。お金は絶対つ くと思うので、そういう起業家を探してきて煽るということと、あとは成長戦略でこれがいいという ことを政治家に一生懸命説得していくこと。その政治のリーダーシップで成長産業のひとつの核とし て進めていくということをしないと、結局、現場レベル、事務方レベルというのはコロコロコロコロ やっているだけなので何も動かない。池田さんおっしゃる通り、今くらい政治があちこちいっている と、誰かの強いリーダーシップで、何かがうっかり変わってしまうかもしれないという期待が持てる かもしれないですね。      キム氏: 今の岩瀬さんのお話ですと、例えば新規事業者でも素晴らしいビジネスモデルを持っている と資金調達というのはそれほど問題にならないかもしれないというようなニュアンスのお話をされた と思うんですが、それでも資金力においてはまだ圧倒的な差があるのも事実だと思うんですが、そう いう意味で、周波数オークションを導入した場合、所謂競争的な意味で、資本力だけではないかたち で、産業の中にダイナミズムを入れていくために、例えば新規事業者等に対してオークションのデザ インの中でどういう工夫があり得るかということについて、お話を。      吉川氏: いくらでも制度設計できます。例えばこの周波数帯域については新規事業者に付与しますと いえばいいでしょうし、それから MNO3という通信キャリアの、投資して基地局建ててという、そこ までの体力はないですけど、MVNO4になりたいという、バーチャルなオペレータになりたいという人 が、今回も結構いるんですけれども、じゃ MVNO に開放することを前提にしたオープンな周波数で すね、それに対してビッドする人はいますか、というような出方で、バーチャルなキャリアをどんど ん呼び集めるような周波数の与え方もできるんですね。どっちかというと新規というのは私が今回事 業者の方にいろいろ聞いた限りではバーチャルなオペレータになりたいという方が結構いて、その人 たちがそれこそ今、タブレット PC とかスマートフォンとかどんどん出てきていますし、家庭のいろ んな機器に通信のモジュールがつくというのももっと増えそうですよね。そういうのをもっと喚起し てあげるというのがこの政策でできるだろうと思っています。      オークションを嫌がるテレビ局にインセンティブを与える。ローカル民放の 持っている周波数を、セカンダリーマーケットで買い取ってあげる (池田氏)   池田氏: もうひとつは、一番今こういうものを嫌がっている人たちにインセンティブを与えるという ことが考えられるなと思うんですよね。それは何かというと、テレビ局ですよ。僕ね、ここのところ アナログ放送が終わるという、雑誌の企画とかしょっちゅう呼ばれるんですけど、そういう時にこの 間も民放連の人に話聞いたら、民放の人たちは相当自分たちの将来に不安を持っているわけですよ。 特にローカル民放はもうどう考えたって発展する産業じゃないと。そうしたらね、例えば彼らの持っ                                                              3  Mobile Network Operator の略、移動体通信事業者。  4  Mobile Virtual Network Operator の略、仮想移動体通信サービス事業者。MNO から通信設備を借り受けて、通 信サービスを提供する。  16   
  • 17. ている帯域をそれこそセカンダリーマーケットでね、買い取る仕組みを作ってあげれば、もう廃業す るしかない人々にとっては、いってみれば立ち退き料を取れる可能性があるわけですね。これはおそ らく早くやればやるほど高い値段がつく可能性があるでしょう。むしろ北風より太陽でね、つまりは っきりいって見通しのない産業にいる人々にとって早く立ち退きインセンティブを与えてあげるとい うのも一案じゃないかと思うんです。      キム氏: ほぼ 1 時間以上経ってしまったんですが、残り 5 分ほどだと思うんですが、最後に皆さんに コメントいただく前に、1 点だけオークションと関連しての質問をさせていただきたいと思うんです が、オークションで得られる収入について最終的にどのように使うのかと、一般財源という話も出て いますし、特別財源という話も出ていると思うんですが、それについて何かご意見ありますでしょう か。総務省の中では今そういった議論はされているんですか。一応アジェンダの中で出ているという ことは、認識はしているんですが。      吉川氏: 論点の中に入っていまして、それこそ韓国の場合、この夏にやるオークション収入は特別会 計になりまして、平岡副大臣が驚いていて。要するに特別会計にして IT の振興に使うことのようで、 それにはさすがに事務局というか総務副大臣もびっくりしていて、それくらい韓国は IT に力を入れ ようということの現れなので、日本でもこういう論者が現れないかなと総務副大臣はおっしゃってい ましたけれども。      キム氏: つまりそれは総務省としてはオークションを実施してそこで得られた収益が何兆円になった としても、それが一般財源になってしまうと所謂省益というものが失われてしまうんじゃないかとい う懸念がある中で、韓国はそれを特別会計にしたということで、そういった認識に対して少し考えた いということの認識でしょうか。      吉川氏: ま、そういうことなんでしょうね。私は本当に総務省の人が電波利用料を守りたいと思って いるかどうかも知りませんけれど、それくらい思い切って周波数で、たぶん兆円単位なんでしょう。 それを特別会計で IT の振興に使う韓国はすごいな、というような見方を今日されていました。      一般会計か特別会計かで引っかかっているのは、時間の無駄。既得権 益を持っている人たちに“賄賂”を渡して、新しい人を入れればいい。10 年経てば新しい人が勝つんだから (池田氏)   池田氏: ひとつだけテクニカルなことをいいますと、電波利用料というのは実は本来は一般会計なん です、建前は一般会計なんです。ところが事実上総務省が七百何十億は総務省の好きなように使って いいという特別会計になっているわけですね。省庁としては今のやり方を守りたい。ところが今の財 務省ももちろんそうだし、民主党政権も、特別会計はすべて廃止するというのが本来の方針なわけで す。そういう中で今、制度改革をやると、特別会計になる情勢にはない。というところで総務省が嫌 っていると思うんですね。    だけど僕はね、正直いってそんなのは大した問題じゃないんだから、さっきの話のように、テレビ局 に立ち退き料を払うとか、総務省が特別会計にしたかったらもうポケットにいれても良いから、とに かく競争を導入することが一番大事だから、いってみれば・・・経済学ではこれをブライブといわれ るんだけど、既得権を持っている人たちに“賄賂”をどんどん渡してね、新しい人を入れればいいん ですよ、だから 10 年経てば新しい人が勝つんだから。    17   
  • 18.   キム氏: それは一般財源に入れたとしてもまたどこかの省がやっているわけだから結果的には同じだ ということなんですね。      池田氏: そんなところで引っかかってるのは無駄ですよ。      キム氏: なるほど。そういうことでよろしいですか。それほど重要な問題ではないと。ま、特別財源 にした方が省は乗りやすい。あと特別財源にした場合はやっぱり ICT のために使うという名目で使う わけですから、ICT の業界の人々にとっても一般財源よりは総体的には歓迎すべきことであるという ことで。      池田氏: もうひとつだけ、あえて経済学的に擁護すると、周波数オークションについて反対している 経済学者も実はいるんですね、Eri Noam という非常に有名な経済学者で。彼がいうのは通信業界とい うのは戦略産業である、そういうところに周波数オークションみたいに非常に巨額の課税をするとい うのは、産業政策上まずいのではないかという議論があるわけですよ。それについてはもちろん反対 論もあるんだけど。それこそ Eli  Noam でも呼んできてね、競争的な産業に課税するのはまずいから、 課税した分は競争的戦略産業に還元しようというね、特別会計に、総務省のポケットに入れろという ね、制度改正しても。いや、もちろん好ましくないけどけど、総務省の人たちがそれが嫌でこの周波 数オークションに抵抗しているとすればね、岸本周平さんがそういっていましたよね、彼の見立ての 通りだとすれば、そんなつまらない問題のために引っかかっているのは全く無駄だと思いますね。      キム氏: なるほど。課税をするとともに補助金も与えるというようなメカニズムでも最悪いい、とい うニュアンスですね。わかりました。もう時間もうなくなっているんですが最後に夏野さんから、今 日は warming up だったと思うんですが、今後この懇談会を進めていく上で、こういう問題について 焦点を当てて議論をしていきたいというのがあれば、お願いします。      総務省とも連携を取り合って、建設的な提言、行動をして。この会は、い い方向で影響を与えたい (夏野氏)   夏野氏: 今日は吉川さんに来ていただいていたんで、“ウラ”“オモテ”のつながりができるような 期待感が持てて、ありがとうございました。ただ、今現在進んでいることに何らかのかたちでやっぱ り影響というか提言とかしていかないと、またここでグダグダしゃべっていて終りになっちゃうとも ったいないので、なるべく建設的に。今日は吉川さんに来ていただきましたけれども、なるべく総務 省の方とも連携を取り合って、是非建設的な提案を、言動を我々はしていくということをこの会の基 本にしてやっていきたいな、と思いますね。本当に影響ができないでグダグダいっているだけだと空 しいので、何らかのかたちで影響を与えたいと思っています、いい方向で。      キム氏: はい、それじゃ岩瀬さんお願いします。      18   
  • 19. すべてのステークホルダーにとってオークションがプラスになるような、イ ンセンティブ作りをしなければいけない (岩瀬氏)   岩瀬氏: 全く同意で、たぶん制度設計論じゃなくてどうやって動かしていくかという話をするべきだ という話をしたんですけれど、さっき池田さんの考えでひとつ面白いと思って。要するにすべてのス テークホルダーにとってこれがプラスになるようなインセンティブ作りというか仕組み作りをしなけ ればいけないと思うんですよね。    僕ら小さいながら出稿主としていろんなテレビ局と話を聞くんですけれど、かなり苦戦していてどう やってキャッシュフローを生もうかというのをものすごく苦労していて、従来では考えられないよう な提案とかをいただくので、そういう意味で彼らにとってもこれがキャッシュフローになるような仕 組みを作るというのは実は建設的な提案だと思いますし、何かそういうかたちで、仕組みそのものが ある程度方向性出せれば、詰めてやればすぐ出ると思うんですね。そうじゃなくて今のがんじがらめ の中で、事業者なり政治なり官僚なり新規参入者なり、それぞれみんなが win‐win になるような仕組 みをどうしていくのかということにもう少し時間が使えたら、すごく良い建設的な話し合いなのかな、 と思いますね。      夏野氏: では、そういう意味ではもう放送を外しちゃっていいかも知れないですよ。放送はもう成長 産業じゃないから。だからそこはもう今のままでいいからといってあげて、その代り通信のところと か家電のところとか、これからの成長部門はどんどんオークションを議論して。      キム氏: これは池田先生もおっしゃったような話でもあると思うんですが、基本的に日本の中でオー クションを議論している際に放送を対象にした議論というのは基本的にはないですよね。それに対し て過剰反応している部分というのがあるかと思うんですが、たぶんこの中の議論の中では放送用の周 波数を対象としたオークションの実施是非の議論は基本的にないという理解で。      夏野氏: MMBI とか見てると、僕がいうのもなんですけど、とても成功しそうには思えないですよ、 どう考えても。でも割り当てられちゃったからやらなきゃいけないというモードになっているんじゃ ないかと思うんですよね、もう壮絶な電波の無駄になる可能性がある。成長産業でいきましょう、成 長産業で。      700/900MHz で、政府が周波数を買い取り、立ち退くインセンティブを与 える“逆オークション”を (池田氏)   池田氏: いや、僕は逆にいうと、放送産業を入れてあげた方がいい可能性があると思うんです。例え ば、さっきの 700/900MHz の立ち退きの話がありますよね。つまり立ち退きのメカニズムというのは 実は FCC5でもちゃんと決まっていないんですね。僕は 10 年くらい前に FCC のカウンセルで提案した ことがあるんですけど、incumbent から周波数が FCC は返ってくるわけ。そうしたら、Robert Pepper 氏6が、あ、これは面白いとかいって、700MHz はそれに似たメカニズムを使ったわけ。    はっきりいって、もう出ていきたい衰退産業の放送ローカル民放というのはいっぱいいるわけですよ。 この間もラジオ局がひとつなくなったけど、これからどんどんテレビ局が店じまいしていく可能性が                                                              5  Federal Communications Commission の略、米国連邦通信委員会。  6  米国の通信政策専門家、FCC において電気通信政策局長などを務めた。  19   
  • 20. ある。そういうところを、ただ店じまいするじゃなくて、そういうところを、うまくいったら何兆円 と入る、まあ何百億はもらって立ち退けるというチャンスを与えてあげる、つまり逆オークションを やる。政府が買い取るオークションをやるんですよ。      キム氏: では最後に吉川さんに、“オモテ”懇談会のメンバーとして“ウラ”懇談会のメンバーとし ても要望とか何かありましたらお願いします。      吉川氏: まさに 700/900MHz のところ、ここは時間的な制約があってさすがに“オモテ”ではあまり 議論できないかも知れないんで、そういう放送会社の体質も含めた、新しい、“オモテ”ではあまり できないけれども重要なところを是非提言していただけると。私は総務省も実は悩んでいると思いま す。もちろん政治家の方も悩んでいると思います。そういう提案だったら非常に建設的になっていい んじゃないかと思います。      キム氏: ありがとうございます。    “ウラ”懇談会ということもあって、若干既得権や“オモテ”懇談会に対して我々刺激的な話もした り対立軸を作ったという側面ももちろんあるかと思うんですが、先程最後の皆さんメッセージの軸は、 やっぱりオークションという新しい実験であると、それに対して懸念を持つのはある意味当たり前で あると、そういった懸念に対して具体的なオークションを実施していく中で、デザインの中で、そう いった懸念を払拭できるようなメカニズムですね、アイディアですね、また池田先生のお話を聞くと インセンディブですね、そしてそれでみんなが win‐win になれるような案がひとつあれば、それをた たき台にしてみんなが議論できるような風土というのが初めて形成されるような気がします。我々今 日は総論的な話はしたと思うんですが、是非 2 回目からは、そういった具体的なところにどのように 落としていって、最終的にユーザー視点で、国民視点で我々としての周波数政策に対する提言を出し ていくかという議論に集中させていきたいと思います。    これをもちまして今日は周波数オークションに関する“ウラ”懇談会を終了したいと思います。皆さ ん、どうもありがとうございました。      一同:  ありがとうございました。    ###  20