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Integral CardWork Guidebook
インテグラル・カードワーク® ガイドブック
1
インテグラル・カードワークとは
【知の進化レベル】
洞察
Insight
英知
Intelligence
知識
Knowledge
情報
Information
データ
Data
Level5
本質やビジョンを見抜く力
Level4
現実のあるがままの認識
Level3
体系化された情報
Level2
意味を持つ知らせ
Level1
情報処理のもとになる素材
インテグラル・カードワークは、チームの力で
新たな知を生み出すためのとっておきの作法
です。
ものごとの全体像を認識し、新たな価値を創
造するには、知のレベルを進化させていく必
要があります。
単なる情報収集にとどまるのではなく、情報を
もとに自らの頭で考え、対話をすることで、知
が統合されていくのです。
対話の相互作用で
進化させる
©スコラ・コンサルト
2
インテグラル・カードワークでは次のことを大事にします
異質なもの、多様なものを受け入れる
部分ではなく、全体の中での意味を考える・感じる
左脳的なこと(論理、分析など)と右脳的なこと(直感、感情など)をともに重視する
インテグラル・カードワークとは
©スコラ・コンサルト
3
3.カードづくり:Wording
5.メッセージ表現:Messaging
7.インデックス図解:Mapping
9.プレゼンテーション:Presentation
2.アイディア出し:Ideation
4.パートナー探し:Partnering
6.ポジショニング:Positioning
8.マップ展開:Visualization
10.ふりかえり:Reflection
次のテーマへ:Next Inquiry
1.テーマの設定:Inquiry
右脳:Right Brain
左脳:Left Brain
Repeat:もうこれ以上(パートナーが見つからなく)なるまで繰り返す。
9.文章化:Writing
and/or
全体の流れ
L R
L R
©スコラ・コンサルト
4
Step1.テーマ設定 “Inquiry”
チームにとって、「最も切実で関心が湧くテーマ」や「なぜか気に
なっていることを設定し、問いを立てます。
– 問いの内容が、アイデアを発想する際のモチベーションや視
点の広がりに影響を与えるので、一つひとつの言葉の意味
を考えながら明確に定義します。
– 参加メンバーが納得できるように話し合い、今から本気で挑
みたい問いになるようにします。
次のようなやりとりをして問いを設定しました。
• 日本企業にこだわる必要があるか?⇒外資系企業や既に世界を舞台
にしている多国籍企業ではなく、日ごろ自分たちが接点をもち具体的に
知っている日本企業をつぶさに考察することを起点に考えよう。
• 「グローバル化」と言われていることにはいくつか種類があるが、ここで
言っているのはどういう意味か?
• 世間一般で言われていることにとどまらず、深く掘り下げたところに迫ろ
うということで「本質的」という言葉を入れよう。
ファシリテーター・ガイド
✍ 仕事が創造的であるための条件として、川喜田二郎氏は次の3つを
挙げています。
①自発的であること、②モデルがないこと、③自分たちにとって切実な
事柄であること。
つまり、これまで体系化されていない問題について、自発的に、強い
問題意識をもって取り組めるテーマを設定をすることが重要なのです。
✍ 最初の段階でボタンのかけ違いがあると、最後まで影響してしまうの
で、テーマについてメンバーが納得していなかったり、理解できていな
いということがないように注意を払います。
✍ テーマそのものをカードワークによって設定してみるのもお奨めです。
あるワークショップでは次の問いを立てました。
©スコラ・コンサルト
5
Step2.アイデア出し “Ideation”
選択したテーマについて、「心に浮かんでくる」キーワードやイメージをひらめ
くままにメモして、皆で共有します。
文章にする必要はないので、頭に浮かんだキーワードやイメージ(絵や
図)をたくさん書き出します。1枚のカードに1つのアイデアを書くようにし
ます。
何枚使用してかまいません。一見テーマと関係ないように思えても、でき
るだけ数多く出すことを重視します。
アイデアを出したら、カードの内容をメンバーに発表して共有します。アイ
デアを単に説明するだけでなく、それを思いついた背景や、そこに込めら
れた思いやこだわりについても語りましょう。
カードの内容を共有できたら、全てのカードの中から、次のステップで扱う、
重要だと思うカードを選びます(遠慮せずに自分のカードからも選びましょ
う)。
学習の視点
✍ 右脳を使って(絵なども使って手を動かしながら)、自由に発想すること
で、今まで気づいていなかったアイデアが出てくることに気づくでしょう。
✍ 感性の豊かなやメンバーや立場の異なる多様なメンバーの発想が、他
のメンバーの視野を広げることを実感できます(例:男性が多い職場で
女性の意見が役立つなど)。
✍ アイデアをじっくりと共有することは、人の意見を尊重する対話のあり方
を体現しているのです。
ファシリテーター・ガイド
✍ 「何分以内に何枚以上のアイデアを出す」という目標を示すと集中力がアップ
します。
✍ このステップでは、直感を重視するので、絵や図を積極的に歓迎します。あ
いまいなもの、大胆なものも奨励します。何でも許される自由な雰囲気をつく
り、たくさんアイデアを出してもらいましょう(量が質に転換するのです)。
✍ 共有の際には、発表者の思いや背景を引き出すようにファシリテーターや他
のメンバーが質問するようにします。
✍ アイデアを何枚発表するかは、使える時間の長さやテーマに左右されます。
あまりなじみがないテーマの場合は、できるだけ多くのカードを発表し、時間
をかけて色々な情報を共有した方が、この後のステップに役立つでしょう。な
じみがあるテーマの場合は、カードの枚数を厳選して発表してもよいでしょう。
✍ 選び方には、全体の中から(あるいは自分のカードの中から)、1人あたり何
枚までと枚数を決めて選ぶ方法や、全体を眺めて気になるものにフセンや
シールなどで印をつけて多くの支持を集めたものを採用する方法などがあり
ます。その場に応じて使い分けてください。
✍ 次のステップで使うカード選びで判断に迷った時は、意見に幅が出るように、
異彩を放つカードを選ぶと思いがけない結果が生まれるかもしれません。
✍ 枚数を気にせずに重要だと思うカードを選んで使っていくのが理想的ですが、
実際は時間の都合でカードの枚数を限定せざるをえない場合もあります。最
終的に7つ前後のアイデアにまとめるため、カードを10数枚選んだ場合は、
Step4.パートナー探し~Step5.メッセージ表現を1ラウンド、 20数枚選び出し
た場合は2ラウンド行なうことになることを踏まえておいてください。(Step4~5
参照)。
L R
©スコラ・コンサルト
6
自分のカードの背景を語ります
10~20枚程度選びますGIGO(Garbage In, Garbage Out)にならないように、アイデア出しとカードの選択はしっかりやりましょう
絵やキーワードでOK!
©スコラ・コンサルト
7
Step3.カードづくり “Wording”
アイディアが意味することを、「誰が読んでも誤解のない」文章にします。で
きあがったら、すべてのカードを眺めて確認し合います。
あいまいなアイデアが書かれたカードを、誰が読んでも同じ意味にと
らえられる表現に書き換えます。 1文で、30~40字以内を目安に書き
ます。文章だけが独り歩きしたとしても誤解を生まない表現を目指し
ましょう。
できあがったら、そのカードを提示して、アイディアの本質(本当に伝
えたいこと)が抜け落ちていないか、斬新さや鋭さが失われていない
かを皆で確認します。この対話には十分時間をかけます。
表現が不十分な場合は書き直します。意味や定義が共有され、この
後の議論・対話がしやすいレベルの表現になるように、他の人の知
恵を借りてブラッシュアップしましょう。
ファシリテーター・ガイド
✍ 全員が書き終わってから全員でカードの内容を確認していくのが理想的ですが、
最初に書き終わったメンバーの相手をファシリテーターがつとめ、終わったメン
バーが徐々に確認する側にまわるのが現実的でしょう。
✍ ファシリテーターは、カードの背景を質問したり、自ら手本を示したりすることで、
メンバーの表現レベルが上がるようにサポートします。
✍ 次のような特徴があるカードは表現としては不十分です。書いた本人の意図や
他のメンバーの理解度を確認して、書き直してもらいましょう。
✍ 文学的な表現やキャッチコピーのようなあいまいなもの
✍ 個人的な解釈や価値判断で決めつけているようなもの(「○○が悪い」、
「××が原因だ」など)
✍ 世の中でよく使われているマネジメント用語やその組織のみで通用す
る言葉を含んでいて、他のメンバーも一見分かったような顔をしている
✍ なかなか完成せず質問のやりとりが続くことがありますが、深掘りする意味があ
る場面だと思ったらじっくり時間をかけましょう。少なくとも、その場にいる人がわ
かる表現にはしておきましょう。
✍ 議論しているうちに、そのカードは思っていたほど重要ではないと思うかもしれま
せん。その時は思い切ってそのカードを捨てましょう。
学習の視点
✍ これを繰り返しトレーニングすると、自分の考えやイメージを論理的に
表現する力が身につきます。
✍ アイデアの伝わりにくい部分をお互いに聞き合うことで分かりやすくし
ていくプロセスは、コミュニケーション力と関係があります。多様な視
点や異質な意見のありがたさを実感できるため、人の意見に対して
オープンに耳を傾ける姿勢につながります。
✍ 「アイデア出し」と「カードづくり」のステップを行なうと、メンバーの関心
領域や、発想力、論理性など、さまざまな個性が見えてくるので、相互
理解が深まります。
✍ カードが書き手から離れて事実を語るので、鋭く突っ込んだ質問をし
ても、書き手の批判ではなく、純粋に意見を戦わせる格好になります。
そのため侃々諤々の真剣討議がしやすいのです。
L R
©スコラ・コンサルト
8
本当に伝えたいことが対話を通じて分かって
きたらメモをするなどして書き換えます
選ばれたカードの真意が伝わるように表現し
たものを眺めて、確認し合います
なかなか文章にできなくても妥協せず、伝わ
るまで対話と表現を行ないます
「ユニバーサルデザイン」
というキーワードを文章
表現しましたが、対話を
重ねるうちに伝えたいこ
とが明らかになっていき、
右のように書き変わりま
した。
「カードづくり」のステップ終了
1枚目のカードの上に2枚目を重ねて次のス
テップに進みます。
誰が読んでも
分かる表現に
©スコラ・コンサルト
9
Step4.パートナー探し “Partnering”
カードのメッセージに耳を傾けて、同じことを伝えていると感じられるカード
を2枚1組にまとめます。
「理屈」(頭)で考えるのではなく、「感覚」(心)でくっつけます。そのカー
ドが訴えていることを「聴く」イメージです。理屈でくっつけると従来の発
想から抜け出せないので、カード同士の思いがけない「偶然の出会い」
を大事にします。
このカードとパートナーになるカードはどれか?という視点で対になる
カードを探してその組を確定させてしまうのではなく、常に全体のバラ
ンスの中でよりより組み合わせを模索します。いったんパートナーが見
つかっても、他の組み合わせも検討し続けてください。
どれとも結びつかないカードは1枚単独のまま次のステップで使います。
カードをくっつけたり、引き離したりしながら、全員が納得するまで行な
います。
ファシリテーター・ガイド
✍ その後のワークがスムーズに進むように、まずは、全体像を頭に入れる時間を
設けましょう。
✍ 仕事の中ではあまりなじみがない頭の使い方なので、始めは苦労するかもしれ
ませんが、あせらず取組みましょう。最初はとにかくカードを動かしてみて、感覚
で探ることを促します。手を動かすことで頭が活性化することを意図します。
✍ 説明すると左脳が働き、理屈になりやすいので、あえて無言でやるのも手です。
無言でカードを動かし、違和感がある人は無言でそれを引き離します。
✍ 一緒にするのは2枚までです。3枚1組にしたい場面も出てきますが、集めすぎ
ると分類作業に陥る恐れがあるので2枚に限定します。逆に、他と結びつかない
1枚単独のカードが出てきても構いません。そのカードの独自性が最終結果に
良い影響を与えるかもしれません。
✍ 言葉が似ているなどの理由で、安易にカードを結びつけて分類するような動きに
は「待った」をかけます。
✍ 一人でどんどんくっつけようとする人には「待った」をかけます。
✍ くっついた組は端に退けて「完了」にしてしまうのではなく、全体の中に位置づけ
たまま、他の組み合わせになる可能性も残しておきます。
✍ このステップは飛躍を得るために重要なので、安易な分類作業にならないよう注
意を払います。
学習の視点
✍ 理屈で当たり前のものではなく、直感で新しい組み合わせを生み出す
体験です。日頃から見聞きしているものの中に意味を見出す習慣がつ
くようになります。
✍ 言葉が似ているという表面的なことで判断せず、構造的な類似点に注
目するアナロジー(類推)思考が鍛えられます。
✍ 仕事の中ではあまりなじみがない頭の使い方なので、意外な人が活躍
することもあります。
L R
©スコラ・コンサルト
10
情報は互いにくっ
つきたがる
この3つのカードが同じことを発して
いるように感じられました。
とにかく動かしてみる。組み合わせができても、
それで確定とせずに可能性を模索し続けます。
動かしてみて、感覚的にしっくりくる
組み合わせを探りました。それぞれ
共通点は何か、違いは何か。
感覚で結びつけることを重視し、言葉で説明し
すぎないように注意しましょう
その結果、この組み合わせになりました
©スコラ・コンサルト
11
ファシリテーター・ガイド
✍ メンバーは、パートナーになっているカードの中から1組選び、統合的なメッ
セージを生み出します。自分の分が終わった人には残っている組について
も作成してもらいます。
✍ Step3のカードづくりと同じ要領で、最初はファシリテーターが書き終わった
人の相手をしましょう。
✍ うまく作成できない人がいる時は、ファシリテータの腕の見せ所です。アド
バイスや手本を示してサポートします。
✍ 2つのカードだけを見るのではなく、カードと問いの間を巡りながら「要する
に何なのか」という具合に発想を飛躍させるのがコツです。
✍ 人の書いたものに納得しなかったり、自分の考えを譲らなかったりする対
立現象が起こったら、それは本質に迫っている証拠です。安易に妥協させ
ないように進行しましょう。
Step5.メッセージ表現 “Messaging”
対になったカードの中から任意の組を選び、パートナーとして出会ったも
のが、「一緒になって、何を言おうとしているのか」を1つの文章にまと
めます。
元のカードの鋭く尖っていた表現が、単に足し算のようにつなげ
ただけの丸まった表現にならないように気をつけます。元のカード
の本質をとらえた統合的な表現をめざします。
元のカードの真意を無視して、書き手自身の判断や意見、解決
策等が入らないように気をつけます。
ただし、どのように言語化するかについて客観的な正解はないの
で、あまりむずかしく考えすぎずに取り組んでください。
Step4.パートナー探しとStep5.メッセージ表現のステップは、もうこ
れ以上はパートナーが見つからないという段階まで繰り返し行な
います。目安としては、マジカルナンバー7±2枚をめざします。
※マジカルナンバー7プラスマイナス2とは、「人間が短期的に記
憶できる情報の数は7±2個までである」という認知心理学の
理論。
一緒になって、何を
言おうとしているのか
次のような比喩で発想を促します。
① 最大公約数ではなく、最小公倍数に向かって発想を飛躍させるイメージ
A B
B´A´
C´
C
2つを包み込む、
より大きな概念を生み出す
学習の視点
✍ 素直に感じ取る感性と、言語で表現する知性を統合して、メッ
セージを伝えます。
✍ アイデア同士の偶発的な出会いから新たなアイデアを生む、
「創発の瞬間」を再現しているといえます(クリエイターの頭の中
で起こっていることにも通じます)。日頃見聞きしていることの中
にヒントを発見する習慣が身につくようになります。
✍ 物事を概念化し、短いながらも本質を鋭く言い表すような統合
的な表現力のトレーニングになっています。 違うように見える2つのアイデアABの本質(C´)
を探り、そこを起点に発想を広げます(C)
③
A
共通点C´を見つけて満足するのではなく、
ABを包みつつ統合する概念を表現します
BC´
C
②
L R
A B
B´A´
C´
©スコラ・コンサルト
12
枚数が多いときは、パートナー探し&
メッセージ表現をもう1ラウンド繰り返します
各組の統合的なメッセージを作成し、確認し合います
統合メッセージが完成
カードを重ねて(または転記して)次のステップへ
なかなかできない時は、複数案作成して
話し合ってみてもいいでしょう
英語にすることで価値
の本質がわかりやすく
伝えられることがあるよ
うに、日本的マネジメン
トの良い部分を、ユニ
バーサルな方法論に
転化させる
誰でも使いやすいよ
うにすることで自然に
広まっていくというユ
ニバーサルデザイン
の発想が不足してい
る
人間の本性に根ざし
た働き方をグローバ
ルに適用する、
ユニバーサルな方
法論をデザインする
統合的なメッセージを作成
苦しいときは何かが生まれるとき
©スコラ・コンサルト
13
Step6.空間配置 “Positioning”
カード同士の「関係の強弱」を探ります。関係の強いものは近くに、関係
の弱いものは遠くに配置して、おさまりのよい全体の構図を見つけ出し
ます。
ここまでのステップで7枚前後になったカードを観察し、動かしながら、
感覚的におさまりがいい配置を見つけます。新しい構造の発見です。
すぐに既存の枠組みに当てはめようとしたり、上下左右の軸(空間)
に意味をもたせようとせずに、全体を意識しながらカードを2枚ずつ
眺め、その関係を見ます。その積み重ねで全体の構造をつくってい
きます。
バラバラのものから構造をつくるということは、多くの人にとっては
やったことがないことなので、難しいと思われますが、動かしている
うちに、構図が見えてきます。
ファシリテーター・ガイド
✍ 人によって理解度に差があるので、カードの全体像を把握する時間を設
けるとよいでしょう。それによってチームでのワークがスムーズに進みます。
✍ カードの束が厚くなってくるので、扱いやすいように一番上の統合メッセー
ジを転記したものを使うとよいでしょう。人数分転記をして、各自で空間配
置をやってみた後にチームでワークをするのもお奨めです
(よい事例はファシリテータの理解を深めてくれます)。
✍ (とにかく始めはカードを動かして色々な可能性を探るように促します。配
置が決まったように見えても崩すことを奨励します)(いったんつくったら写
真に撮っておくとよいでしょう)。
✍ (安易に既存のフレームにあてはめようとする動きには「待った」をかける。
✍ 既存のフレームの例:原因→結果の因果関係図にすぐにあてはめ
ようとしたり、左から右へ時間が流れる時系列図など)
✍ 最初はなかなか配置が見つからず、沈黙が続くこともありますが、それは
深く考えている時間です。ある時点から急に構図が見えてくるものなので、
沈黙を恐れずあせらず待ちます。
✍ 構図の中に欠けているピースがあると分かることがあります。これも発見
です。あとでその空白地帯を埋めればよい。
✍ 人間はシンメトリーな構図に落ち着きを感じる傾向がある
学習の視点
✍ 新しい構造を自分たちで生み出す体験。これを繰り返すことで既存
の枠組みにとらわれずに、事実を認識する力が身につきます。
✍ これを繰り返しトレーニングすると、日々の仕事の中で複数の事柄
の関係を把握することが容易になります。
✍ 抽象化された情報を扱いながら意思決定する能力が向上します。
できるだけ全ての関係線を意識しながら
1つ1つのカードを位置づけていきます
L R
©スコラ・コンサルト
14
世の中に存在する既存のフレームワーク
にとらわれず、自由な発想でカードを動か
して、新たな構造を探ります。
たくさん描い
てみよう!
©スコラ・コンサルト
15
Step7.インデックス図解 “Mapping”
最も安定した配置ができたら、今度は関係の強弱で
はなく、お互いの「関係の内容」を考えて、その相互関
係を「関係線」で表現します。
ディスカッションしながら、カード同士の関係の意味
を線の種類で表したり、同じカテゴリーに属すカー
ドを枠線で囲ったりして、図の意味を明らかにして
いきます。
考えすぎず、どんどん線や説明を書き換えていき
ましょう。
「関係線」の種類
1. 因果関係
2. 相互関係
3. 反対関係
4. 共通関係
5. 支持関係
6. 同カテゴリーファシリテーター・ガイド
✍ 正解はないので、ホワイトボード上で線を引いたり消
したり試行錯誤を繰り返すのが良い。
✍ 単なる線ではなく、方向にも意味があるので矢印を
引きます。人から指摘されて簡単に向きを変えるよ
うではダメです。意図をもって線を引きましょう。
✍ いい構図が生まれたら写真を撮っておき、さらに新
たな構図を模索するとよいでしょう。
L R
©スコラ・コンサルト
16
Globalization
as Learning
©スコラ・コンサルト
17
Step8.マップ展開 “Visualization”
完成したインデックス図解に基づいて、全てのカードを1段
階ずつ開いていきます。
そこに含まれている個々の問題(カード)がどう位置付
けられているかを全体の体系の中で把握します。
これによって個々の問題の優先順位、レバレッジポイン
トがわかり、戦略的に今後の展開を練ることができます。
学習の視点
✍ もとのカードを見ると、すべての人の意見が反映され、認識が
共有されやすくなっていることを実感できると思います。個人の
問題意識が無駄にされず、必ずどこかに位置づけられている
のです。
✍ この経験を繰り返すと、体感や直感ではなく、統合された情報
体系をもとに意思決定する力が鍛えられていきます。
ファシリテーター・ガイド
✍ 個と全体がきちんと位置付けられない限り優先順位をつ
けることはできないと心得て、ファシリテートします。
✍ ここでメンバーの認識が合っていないと、最後のステップ
のプレゼンテーションや文章化の効果が上がりません。メ
ンバーの理解度、認識の一致感に差が出ていないか確
認してみましょう。
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18
=
=
=
=
=
Visualization
©スコラ・コンサルト
19
Step9.プレゼンテーション and/or 文章化
“Presentation” and/or “Writing”
出来上がった図解が物語っていることをプレゼン
テーション(文章化)します。
プレゼンテーション(文章化)を通じて「図解」の質
を飛躍的に向上させます。
各自が即興でプレゼンテーションをします。
このプレゼンテーションは、「プロトタイプ(試作)」
にすぎません。いざ、話してみるとまだ自分のもの
になっていなかったり、論理的に矛盾する部分が
あることに気づきます。意見交換してブラッシュ
アップしていくことが大事なのです。
ファシリテーション
✍ インデックス図解をもとに全体像をつくり、マップ展開後の
詳細な情報で肉付けするイメージです。
✍ 各自の内容の良いところを活かしてブラッシュアップする
ことを促進します。
✍ 頭の中でイメージできたこと、自分で話したことは実現した
くなるのが人間の心理です。
✍ 完成した文章は、その後、仕事を進める上での判断基準
になったり、マーケティング・メッセージのもとになったりし
ます。活用方法を検討してみましょう。
学習の視点
✍ プレゼンテーションや文章化をすると内容が頭に残り、
自分のものとして定着します。そのため、その後の思考
や行動に影響を与えます。
✍ 「図解」が物語る暗黙知を「文章化」を通じて形式知に
変換するトレーニングです。
✍ 「文章化」により、「論理思考(Logical Thinking)」と「概念
化(Conceptualizing)」の能力が開拓されます。
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©スコラ・コンサルト
20
日本企業の「グローバル化」における本質課題
●前提:
日本企業の「グローバル化」は、国内市場の成長が見込めない中で、海外に進出すること自体が目
的化しているのではないか。これまで培ってきたノウハウをそのまま海外に持ち込もうとしても通用する
ようなものでは全くない。
そもそも日本企業の多くはこれまで本来の意味での戦略を持たずともそれなりにやっていける環境に
あった。わが社が海外の市場において真に実現したいことは何か/その実現を可能にするコンピタン
スは何かについて明らかにしないままグローバル化を図ろうとするのは論外である。
●転換点:
この前提が明確になってはじめて土俵に上がることができるわけだが、海外市場では欧米のメガ
企業の覇権主義や、新興国ローカル企業の飽くなき拡張主義による熾烈な競争が既に蔓延っている。
日本企業は世界の市場に対して、他とは明らかに違う世界観を持つべきだ。つまり、世界がひとつの
エコシステムであることに気づき、悪い意味での「グローバリズム」とは一線を画する世界へのかかわり
方によって、持続可能な社会経済のあり方をリードするべきだと思う。
●キーコンセプト
日本企業では一人ひとりの個を尊重するマネジメントを強みにしてきたが、これは国内に限られたや
り方であった。これからは国籍、人種、文化、言語等の違いを超えた「多様性」の尊重にもとづくマネジ
メントを強みにしていきたい。
また、新たに生み出した知的資本を自社で囲い込むことをせず、「オープン」ソースとして世界中に
活用されるような価値創造サイクルを回し、常にその中心にあり続けることを目指す。
●目的
多様性やオープン性はそもそも人間の本性に根差した「共生的」なあり方と関連が深い。日本企業は
その要素をもともと強みとして持っていた。それをダイナミックに再編し、世界に通用する「ユニバーサ
ル」な方法論としてデザインしていくことが可能なはずである。
そして、この方法論を広げていくことが、グローバル経済の本質的かつ最大の課題である「地域の
自立」と「地球規模のシステム」における対立や矛盾を止揚的に統合し、マインドフルな社会を世界で
実現していくことにつながる。
このように日本企業にとっての「グローバル化」とは、これまでの常識をアンラーニングし、未知の
世界から新たな知を獲得していくという「ダブルループ学習」そのものなのである。
チームに参画する人達
の”多様性”を源泉として、
価値創造と個の成長をス
パイラルアップで実現す
るマネジメント力をつける
付加価値以上に、BASIC
な根幹となる技術が常に
トップかつユニークである
ための努力が日常でなさ
れる仕組みがあるか
これまでの常識をアン
ラーニングし、これまで接
点のなかった世界からの
学びこそ、グローバル化
である
人間の本性に根ざした働
き方をグローバルに適用
する、ユニバーサルな方
法論をデザインする
日本企業のグローバル化
による最大の価値は、「地
域の自律性」と「地球規
模のエコシステム」の統
合を促進するコンピタン
スの獲得である
情報、知的リソース、
マーケットなどをオープ
ンにする発想と仕組みで
地球規模での参画を促
し、新たな価値創造サイ
クルを動かす
組織の垣根を超えて世
界を「自らが主体的に関
わるエコシステム」ととら
え直すことを共に学び、
エネルギーを高め合える
チームをつくる
グローバルにビジネスを
展開にするにあたっては、
グランド戦略(基本スタン
ス)の前に、自社が真に
求めているもの)と実現プ
ロセスを明らかにする必
要がある
戦略がなかったという現
実と向き合い、自社のビ
ジネスに関する思い込み
を捨て、事業の定義その
ものの再構築を含めたグ
ローバル戦略を組み立て
る必要がある
Globalization
as Learning
©スコラ・コンサルト
21
Step10.ふりかえり “Reflection”
図解を観察し、プレゼンテーションやこれまでのプロセス
をふりかえって、得られた気づきや学びを共有します。そ
こから、次の探求のテーマが生まれます。
ふりかえりは、学習の定着のために不可欠なプロセス
です。
解決策や新しいアイデアを生み出せたかという中身の
ことだけでなく、新たな学習体験になっていたかという過
程についても俯瞰的に考察します。
学習の視点
✍ 自分たちのコミュニケーションプロセス、意思決定のプロセスを
ダブルループ的に振り返ることはなかなかないので、このふり
かえりで多くの気づきが得られ、新たな思考行動パターンの獲
得につながります。
✍ 人によって振り返りの視点が違うことを知るのもまた学習になり
ます。
✍ 背景や過程を共有しながらつくっていくので、おのずと出来上
がるものへの共感は強くなります。メンバーに一体感が生まれ
ていると思うか確認してみましょう。
ファシリテーションのポイント
✍ 1回のワークで完成というわけではありません。構造図をも
とに仕事を展開ながら、常に上書きしていくものです。
✍ 今回のワークでは何をきっかけに知の進化が見られたか、
アンラーニング(固定観念からの解放)したことがあったかな
どを振り返ります。
✍ ワークの中でメンバーの特徴や能力、参画度合いがわかる
ので、その後の仕事に活かしましょう。
Double-Loop Learning
知を生み出す
知を生み出している自分たち自身や
その過程を振り返る
ダブルループ・ラーニング
©スコラ・コンサルト
22
? ! ? ! ? ! ? !!2.Ideation:アイデア゙出し
3.Wording:カードづくり
4.Partnering:パートナー探し①
5.Messaging:メッセージ表現①
4.Partnering:パートナー探し②
5.Messaging:メッセージ表現②
7.Mapping:インデックス図解
8.Visualization:マップ展開
=
=
6.Positioning:ポジショニング
Insight
Intelligence
Knowledge
Information
Data
カードの展開
©スコラ・コンサルト
23
インテグラル・カードワークは、オフサイトミーティングに
おける「収束フェーズ」のツールとして、コズミックアート
株式会社の青木孝一氏とスコラ・コンサルトが共同で開発し
たものです。
発散の場から湧き上がってくる多くの知恵やアイデアを、
個々の思いを乗せたそのままに、エネルギ―を損なうこと
なく次のステップに生かしていくためには、方向感や流れ
を大事にした、動的で創造的な収束のプロセスが必要です。
オフサイトミーティングで培った信頼や思考の自由をベース
にして行なうインテグラル・カードワークでは、理性(左
脳)と感性(右脳)をバランスよく使いながら、新しい知
を創造していくチームワークを体感し、統合的に共有された
コンセプトを生み出していきます。
開発の思い
©スコラ・コンサルト
24
インテグラル・カードワーク®ガイドブック
2014年版
制作・発行 株式会社スコラ・コンサルト
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TEL:03-5420-6251 FAX:03-5420-6250
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