26. Organic life is the ultimate technology, and all technology will improve towards biology. http:// www.kk.org/outofcontrol /
27. Thank you for your attention, enjoy your mind trip. Noriyo Asano [email_address] http:// del.icio.us/noriyo/ambient_findability
Editor's Notes
メディアプローブ株式会社 浅野です。 本日はみなさまお忙しい中このカンファレンスにご参加いただきまして、ありがとうございます。 本書の内容についてはおそらく、一読しただけではなんのこっちゃという方も多いかもしれないですね。 実際、 US の Amazon のレビューでも、「何の役に立つのか分からなかった」という批評をしてる人もいます。 おそらく、この本がつかみどころがないと感じられるとしたら、その理由はここに書かれているのが Peter の「理論」ではなく「解釈」であるからでしょう。 私は最近、人間自体が一種のメディアになりつつあるような気がしていて、この本も Peter Morville という「メディア」を通じた現在の IT 社会の姿を記したものではないか、と思うのです。 したがってこの本を楽しむコツは、たとえるなら Peter と一緒に高い展望台にのぼって周りの景色を眺めてみるような、ちょっと非日常を味わうようなスタンスで読んでみること、ですね。 というわけで私のプレゼンでは、本書から浮かび上がってくる 5 つのキーワードをピックアップしつつ、アンビエント・ファインダビリティを探るためのヒントをご紹介できればと思います。 短い時間ですが、よろしくお願いいたします。
まず「アンビエント・ファインダビリティ」という言葉が意味するものは何か?ということですが、これは画面の説明の通り、具体的にはユビキタスコンピューティング環境とインターネットの活用によって、あらゆる人やモノの位置情報が特定できる、つまり「ファインダブル」になるような世界のことを指します。 みなさんお気づきの通り、これはもうある程度まで実現している状況なのですが、いまそのプロセスにおいて非常にさまざまなメリットとデメリットが浮上してきているわけです。 メリットとは、もう少し具体的に言い換えるとビジネスチャンスであり、もっと大きなフレームで考えれば社会に貢献するシステム基盤を生み出す力といえます。たとえば RFID による家畜などのトレーサビリティの実現などがその一例ですね。 逆にデメリットのほうとして一番大きいのは、そうやってあらゆるものの所在が明らかになるとすれば、プライバシーやセキュリティをどう確保していくのかという点です。これは究極的には人間の尊厳や倫理にも関わってくる問題ですから、いずれ無視できなくなる課題です。 もちろん多くのビジネスパーソンにとっては、デメリットを気にするより儲ける方が先だというのは、無理もないことではありますが、中長期的にはアンビエント・ファインダビリティの負の側面をきちんと認識しておかないと、かえって大きなダメージを喰らう恐れもあるわけです。
ところで、ロングテールは EC サイトで扱っている商品だけに関わる現象ではありません。 この「 WORDCOUNT 」というサイトでは、世界最大のコーパスである British National Corpus で収集している書き言葉・話し言葉の中にある 1 億サンプルの英単語の利用状況を分析して、 Flash で視覚化した言語のロングテールを見ることができます。 言語のロングテールは、たとえばフォークソノミーにおいても現れていると言えるでしょう。 Peter も本書の中で、言語という体系におけるロングテールに着目しています。 この図でも分かるように、とにかくロングテールの尻尾はとてつもなく細く長いので、そこでいかに効率的にファインダビリティを実現するかといえば、とにかく検索が重要になってくるわけです。 検索でヒットしさえすれば、尻尾のどこに位置していようと、一瞬でファインダブルになるからです。
コミュニケーションです。 本書を丹念に読んでいただけると、 Peter がいかにコミュニケーションというものを重視しているかが見えてくるはずです。 垂直的コミュニケーションと水平的コミュニケーションのいずれについても、その重要性が語られます。
まず垂直的コミュニケーションについては、コミュニケーションの包括概念であるインタラクションの重要性を示すモデルとして、いま IA の世界で非常に注目を集めている「ペースの多層化」のモデルが登場します。 Peter は情報の分類体系に関して、上層にあるフォークソノミーに類する創発的体系で得られた価値が、時間の経過につれて下層にあるタクソノミーやオントロジーへ埋め込まれていけば、アーキテクチャ全体の健全な進化が生じると論じています。 ただし、ペースの多層化はいままさに議論の渦中にある概念で、 IA の間でも解釈に幅があります。 先日の IA サミットで、タギングが情報アーキテクチャにどう影響するのかを論じた「ペースレイヤリングからレジリアンス理論へ」という非常に興味深い論文が発表されて、いま議論の的になっています。レジリアンス理論と言うのは環境社会学の概念らしいのですが、その論文ではペースの多層化モデルで重要なのはレイヤ間の速度の違いによって生じる摩擦であり、それは破壊力にもつながるということが述べられている。 このモデルの真価についてはまだまだ議論が続きそうですが、情報システムを設計する上で多くのインスピレーションを与えてくれる重要なモデルであることは確かです。
Peter が 3 月の IA サミットで行ったプレゼンの資料に、 Kevin Kelly の「 Out of Control 」という本が登場していました。 これは『「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる 9 つの法則』という邦題で翻訳もされていて、ものすごく面白そうなのでぜひ読みたいと思っているのですが、 Kevin のサイトに行ったら主要なテーマの一つとして上記のような一文がありました。 「有機的生命体こそ、究極のテクノロジーである。 そしてあらゆるテクノロジーは、生態的進化を遂げるだろう」 個人的な見解ですが、ペースの多層化というのも建築物という従来非常にスタティックに捉えられて来た対象を有機的に解釈したモデルだと思いますし、 90 年代から注目されてきたソーシャル・キャピタル理論なども、社会のインフラをハードではなくソフトの面から有機的に捉える試みではないかと思います。 我々が拠って立つネットワークやテクノロジー、果ては社会的インフラが有機的に進化していること、そして我々がそれらを有機的に進化させることについて考えてみるのが、いま一番面白い視点なのではないかと思いますし、 Peter もそこに関心を向けているのかもしれません。